説明

粉体供給装置

【構成】 下端部に直径3〜10mmの排出口(23)を有する粉体タンク(21)が、モータ等の駆動手段(M)により回転する円盤(14)の上方に配設され、前記粉体タンク(21)の内部に、上下方向に延びる主軸(27)と、該主軸(27)から外方に向かって延びる撹拌部材(29)を有する粉体撹拌器(25)が配されるとともに、平均粒子径が0.5〜150μmの範囲内にある多数のトレーサー粒子からなる粉体(F)が充填され、前記粉体撹拌器(25)の駆動に伴って前記粉体タンク(21)から前記排出口(23)を介して落下した粉体(F)を前記円盤(14)により受け止め、該円盤(14)の回転に伴って前記粉体(F)を粉体送出側に移送してなる粉体供給装置であって、前記撹拌部材(29)の下端部(29a)と前記排出口(23)との間隔を0〜3mmに設定した粉体供給装置(11)。
【効果】 ほぼ球形で凝集性がほとんどなく、カサ比重が小さいサラサラの粒子からなる粉体(F)を用いても、周溝(16)への充填不良は起こらず、確実に周溝(16)に充填することができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、粉体供給装置に関するものであり、詳しくは、平均粒子径が0.5〜150μmの範囲内にある粒子からなる粉体を供給するための装置に関するものであり、さらに詳しくは、前記粉体をガスや液化ガス等の流体に定量的に供給し、該流体における流速の計測、あるいは流体の可視化による広がり分布を計測するための粉体供給装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】例えば、レーザードップラー流速計や写真撮影により行なう流体の計測には、トレーサー粒子を使用するのが一般的である。すなわち、計測しようとするガスや液化ガス等の流体の中に、多数のトレーサー粒子からなる粉体を一定量ずつ供給し、前記トレーサー粒子の流動速度から流体の速度を計測したり、また流体と一緒に流動するトレーサー粒子を写真撮影して流体を可視化することにより、流体の流動分布を計測している。
【0003】図3〜5に粉体供給装置(10)を示す。図3R>3に示すように、ケーシング(12)の内部には、モータ(図示せず)の駆動により回転する円盤(14)が水平状態を保持させて取り付けられている。この円盤(14)の上面(14a)には、周方向に延びる周溝(16)が刻設されている。
【0004】符号(20)は、粉体(F)が収納されているホッパーである。このホッパー(20)の下部は、下方に行くにしたがって先細となっており、前記周溝(16)のすぐ上で開口している。符号(22)はその開口部である排出口を示すものであり、その直径は3〜10mmである。なお、ホッパー(20)の内部には、図5に示すように、ステンレス鋼製の粉体撹拌器(24)が配設されている。粉体撹拌器(24)は縦方向に延びる主軸(26)と、この主軸(26)の下部に取付けられた4本の「く」の字状の撹拌部材(28)とからなっている。粉体撹拌器(24)は、前記撹拌部材(28)の下端(28a)が排出口(22)より7〜10mm上方に位置するように配設されている。モータ等の駆動手段(M)により粉体撹拌器(24)を回転させ、ホッパー(20)の内部の粉体(F)を撹拌すれば、これに伴って、粉体(F)が排出口(22)から周溝(16)に充填されていく。
【0005】符号(30)は板状体からなる吹出しノズルである。この吹出しノズル(30)は、平面から見た形状が扇状であり、図4に示すように、ほぼ中央部にはテーパ状に傾斜した傾斜側面(32)を有する凹部(34)が設けられるとともに、この凹部(34)の中央には吹出しノズル(30)の下面まで貫通した粉体流通用孔(36)が設けられている。
【0006】符号(40)は、ケーシング(12)を貫通し、該ケーシング(12)の内外を連通可能にする粉体供給通路である。この粉体供給通路(40)は、前記粉体流通用孔(36)と連通可能となるように、吹出しノズル(30)に取付けられている。
【0007】なお、ケーシング(12)の内部の空気圧は、外部の空気圧よりも高くなっている。この圧力差により、周溝(16)における前記吹出しノズル(30)にさしかかる地点Xから空気が入り込み、その後、吹出しノズル(30)の下方に位置する周溝(16)に流れ込み、この中を通って粉体流通用孔(36)および凹部(34)を介して粉体供給通路(40)の中に流れ込み、ケーシング(12)の外部に出ていく、といった空気の流れが生じることになる。円盤(14)の回転に従って吹出しノズル(30)にまで移送された周溝(16)内の粉体(F)は、前記した空気の流れにのり、ケーシング(12)の外部に定量的に供給されることになる。
【0008】ところで、従来より用いられているトレーサー粒子は、その形状がいびつであり、凝集しやすいものであったが、トレーサー粒子としての研究開発が進み、ほぼ球形で凝集性がほとんどなく、カサ比重が小さいサラサラの粒子が最近になって登場した。このような粒子からなる粉体を用いることにより、流体への追従性が向上し計測の精度と能率が飛躍的に向上すると期待される。
【0009】しかしながら、このような粉体を上述した粉体供給装置(10)におけるホッパー(20)の内部に充填し、計測対象物である流体に供給しようとしても供給できなかった。説明を加えれば、ホッパー(20)の下端部における排出口(22)から粉体が落下せず、周溝(16)内部への充填不良が起こり、供給できなかった。
【0010】本発明者らは、この原因を探ろうと鋭意検討を重ねた結果、ついに下記の点が原因していることをつきとめた。すなわち、粒子がサラサラであるがゆえに、ホッパー(20)内の粉体撹拌器(24)を回転させてもホッパー(20)における排出口(22)付近の粉体は撹拌されておらず、これによりホッパー(20)内の粉体が排出口(22)付近にて滞り、これが原因となって粉体が周溝(16)の内部にうまく充填されないことをつきとめた。本発明者らはこれに鑑み、装置の改良を重ね、そして本発明に至った。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明の粉体供給装置は、下端部に直径3〜10mmの排出口を有する粉体タンクが、モータ等の駆動手段により回転する円盤の上方に配され、前記粉体タンクの内部に、上下方向に延びる主軸と、該主軸から外方に向かって延びる撹拌部材とを有する粉体撹拌器が配され、前記粉体撹拌器の回転に伴って前記排出口から落下した粉体を前記円盤の上面で受け止め、該円盤の回転に従って前記粉体を粉体送出側に移送するようになした、平均粒子径が0.5〜150μmの範囲内にある多数の粒子からなる粉体を供給するための粉体供給装置であって、前記撹拌部材の下端部が前記排出口より0〜3mm上方に配されてなるものである。
【0012】
【作用】本発明の粉体供給装置において、ホッパー内に配設された粉体撹拌器は、撹拌部材の下端部が前記ホッパーの下端部における排出口より0〜3mm上方に位置するように配されているため、前記粉体撹拌器の回転に伴って、前記排出口付近の粉体が撹拌部材により撹拌されることになる。これにより、ほぼ球形で凝集性がほとんどなく、カサ比重が小さいサラサラの粒子を用いても、周溝への充填不良は起こらず、確実に周溝に充填することができる。
【0013】なお、撹拌部材の下端部が前記排出口より下方に配されていても、すなわち、前記下端部が排出口より下方に突出するように粉体撹拌器を配しても、前述したような充填不良を解消することはできる。しかし、通常、ホッパーと円盤との間は僅かな隙間(1mm未満)しか空けられていないため、上記のようにすれば前記粉体撹拌器と円盤とが接触する可能性があるので避けなければならない。また、前記撹拌部材の下端部が前記排出口より3mmを超える上方に配されている場合、排出口付近の粉体を充分に撹拌することはできず、充填不良を解消する効果が不充分となる。
【0014】本発明の粉体供給装置は、平均粒子径が0.5〜150μmの範囲内にある粒子からなる粉体を取り扱うものであるため、ホッパーの排出口の直径は3〜10mmの範囲内のものに限られる。前記直径が3mm未満である場合、排出口が狭すぎて、粉体撹拌器を回転させても粉体が詰まるおそれがある。また、10mmを超える場合、粉体撹拌器の回転に係わらず、粉体が排出口より排出される可能性がある。
【0015】
【実施例】本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。なお、ホッパーの内部に配設された粉体撹拌器以外は、従来と同じである。
【0016】図1に示したホッパー(21)は、周壁の厚みが5mmであり、高さ28cmである。上から3分の2程度のところまでは直径8cmの筒状をなし、ここから下方にいくに従って径小となり、下端部(21a)の直径は1.6cmとなっている。また、この下端部(21a)には、直径6mmの排出口(23)が開口している。前記ホッパー(21)は、前記排出口(23)が、円盤(14)の上面(14a)より0.5mm上方に位置するように配されている。
【0017】ホッパー(21)の内部には、ステンレス鋼製の粉体撹拌器(25)が配設されている。粉体撹拌器(25)は、駆動手段であるモータ(M)の出力軸と伝動可能に連結された主軸(27)と、該主軸(27)の下部に設けられた棒状で「く」の字に曲がった4本の撹拌部材(29)とからなっており(図2参照)、前記モータ(M)が駆動すれば、粉体撹拌器(25)が回転することになる。本実施例では、撹拌部材(29)として、棒状のものを示したが、これに限らず、主軸(25)に板体を取り付けた翼状のものであってもよく、また羽根状のものでも構わない。粉体撹拌器(25)は、前記撹拌部材(29)の下端部(29a)が前記排出口(23)と同じ高さレベルとなるように、すなわち撹拌部材(29)の下端部(29a)と排出口(23)との間隔が0となるように配されている。
【0018】撹拌部材(29)の下端部(29a)と排出口(23)との間隔を小さくすれば、言い換えれば、撹拌部材(29)の下端部(29a)を排出口(23)に近付ければ、それだけ撹拌部材(29)がホッパー(21)の内面に衝突し撹拌部材(29)が損傷するという危険性が増える。これに対し、本実施例では撹拌部材(29)を若干太くして、該撹拌部材(29)の強度を高めている。具体的に言えば、従来はせいぜい1mmであったのに対し、本実施例では1.5mmとしている。なお、撹拌部材(29)を本実施例のように棒状のもので構成する場合、その直径の好ましい範囲は1.3〜3mmである。
【0019】また、従来の装置(10)における主軸(27)は細く、回転中において該主軸(27)に撓みが生じることがあった。従来の装置(10)にあっては、前記撹拌部材(29)の下端部(29a)が排出口(23)より7〜10mm上方にあったため、前述したような主軸(27)の撓みが起こっても、撹拌部材(29)がホッパー(21)の内面に衝突するような危険性はなかったが、本発明の供給装置(11)にあっては、前述したように、撹拌部材(29)の下端部(29a)が排出口(23)と同じ高さレベルのところに配されているため、主軸(27)が撓めば、撹拌部材(29)とホッパー(21)とが衝突しやすくなる。このため、本実施例では、前記主軸(27)を従来よりも若干太くしている。具体的に言えば、従来はせいぜい2mmであったのに対し、本実施例では3mmとしている。主軸(27)を太くすれば剛性が高まり、その分、該主軸(27)の撓みは起こりにくくなる。しかし、あまり太くし過ぎると、モーター(M)の大型化を招いたり、排出口(23)の閉塞を招くので、むやみに太くすることはできない。主軸(27)の直径の好ましい範囲としては、排出口(23)の内径の40〜80%、本実施例(排出口の直径6mm)に当て嵌めれば、2.4〜4.8mmである。
【0020】上記構成の粉体供給装置(11)と多数の非凝集性中空球状SiO製トレーサー粒子(商品名;MSFタイプ30M、平均粒子径2.7μm、カサ比重0.4、リキッドガス(株)製)からなる粉体(F)を用いて粉体供給テストを行なった。他の諸条件は次の通りである。すなわち、円盤(14)直径;15cm円盤(14)厚さ;0.8cm周溝(16)の幅;0.6cm周溝(16)の深さ;0.1cm円盤(14)中心から周溝中心まで;6cm円盤(14)の回転数;0.8rpm粉体撹拌器(25)の回転数;100rpm。
【0021】また、比較のために、従来の粉体供給装置(10)を使用して上記と同様の粉体供給テストを行なった。従来の装置(10)における主な諸条件は次の通りである。すなわち、ホッパー(21)における排出口(23)の直径;6mm撹拌部材(29)の下端部(29a)と排出口(23)との間隔;10mm粉体撹拌器(25)における主軸(27)の直径;2mm粉体撹拌器(25)における撹拌部材(29)の直径;1mm。
【0022】テストの結果を以下に示す。
本発明の粉体供給装置(11);粉体撹拌器(25)の回転に伴って排出口(23)から継続的に粉体(F)が落下し、周溝(16)へ充填することができた。周溝(16)内の粉体(F)は、円盤(14)の回転に従って吹出しノズル(30)まで達し、粉体供給通路(40)の内部を通って外部に供給された。平均供給量0.414g/min、標準偏差(1分間の供給量を10回測定して算出)0.003g/min。
【0023】従来の粉体供給装置(10);粉体撹拌器(25)を回転させても粉体(F)が排出口(23)から出ず、粉体(F)を周溝(16)に充填することができなかった(供給不可能)。
【0024】なお、撹拌部材(29)の下端部(29a)を排出口(23)より2mm上方に配しても、粉体(F)を周溝(16)に確実に充填することができた。
【0025】
【発明の効果】本発明の粉体供給装置により、トレーサー粒子として、ほぼ球形で凝集性がほとんどなく、カサ比重が小さいサラサラの粒子を用いることができる。これにより、計測精度、能率が飛躍的に向上すると期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の粉体供給装置における粉体撹拌器の配設状態を示すホッパーの断面図である。
【図2】粉体撹拌器の拡大斜視図である。
【図3】ケーシングを一部切り欠き、内部構造を示した粉体供給装置の斜視図である。
【図4】周溝内の粉体が空気の流れにのって粉体供給通路にまで導かれる様子を示した説明図である。
【図5】従来の粉体供給装置における粉体撹拌器の配設状態を示すホッパーの断面図である。
【符号の説明】
F……粉体
11……粉体供給装置
12……ケーシング
14……円盤
16……周溝
21……粉体タンク
23……排出口
25……粉体撹拌器
27……主軸
29……撹拌部材
29a……(撹拌部材の)下端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】下端部に直径3〜10mmの排出口を有する粉体タンクが、モータ等の駆動手段により回転する円盤の上方に配され、前記粉体タンクの内部に、上下方向に延びる主軸と、該主軸から外方に向かって延びる撹拌部材とを有する粉体撹拌器が配され、前記粉体撹拌器の回転に伴って前記排出口から落下した粉体を前記円盤の上面で受け止め、該円盤の回転に従って前記粉体を粉体送出側に移送するようになした、平均粒子径が0.5〜150μmの範囲内にある多数の粒子からなる粉体を供給するための粉体供給装置であって、前記撹拌部材の下端部が前記排出口より0〜3mm上方に配されてなることを特徴とする粉体供給装置。

【図4】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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