説明

粉体分級方法および粉体分級装置

【課題】粉体の分級を安定して正確に行う上で有利な粉体分級方法および装置を提供する。
【解決手段】粉体分級装置10は、容器12と、第1の液媒流生成部14と、第2の液媒流生成部16と、粉体供給部18と、粉体回収部20などを含んで構成されている。第1の液媒流生成部14は、容器12に収容された液媒2の液面202に液面202上の一箇所である粉体回収位置P2に向かって流れる液媒2の横流れを形成するものである。第2の液媒流生成部16は、液面202の下方における液媒2部分の実質上全域において下方に向かって流れる下降流を形成するものである。粉体供給部18は、粉体回収位置P2から離れた液面202上の粉体供給位置P1あるいは粉体回収位置P2から離れた液媒2中の粉体供給位置P1に分級すべき粉体3を供給するものである。粉体回収部20は、粉体回収位置P2に設けられ該粉体回収位置P2に到達する粉体3を回収するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体分級方法および粉体分級装置に関する。
【背景技術】
【0002】
粉体をその粒径や密度などによって区別することを分級という。
粉体の分級方法として、例えば、篩(ふるい)を用いる方法や、液媒(水)中における粉体の沈降速度差を利用した方法(特許文献1参照)、あるいは、遠心分離機を用いた方法などが知られている。
しかしながら、流動性が悪く真密度が1g/cm以下(比重が1以下)の粉体の場合、上述した従来の分級方法の適用が難しかった。
例えば、篩を用いて流動性が悪い粉体を分級する場合、篩が目詰まりを引き起こすため、分級効率の向上を図る上で不利があった。
また、沈降速度差を利用した方法および遠心分離機を用いた方法は、そもそも分級すべき粉体の比重が1よりも大きいこと、言い換えると、粉体が液媒(水)に沈むことが前提であるため、比重が1以下の粉体(真密度が1g/cm以下の粉体)を分級するには適さない。
そこで、本出願人は、容器の上下に延在する収容空間に液媒を収容し、分級すべき粉体を前記収容空間の下部に位置する液媒部分に移送し、前記液媒部分に移送された粉体のうち前記液媒中を浮上して前記収容空間の上部に位置する液媒部分に移動した粉体を回収して取り出すことで、液媒よりも比重の軽い粉体の分級を可能とした粉体分級方法および粉体分級装置を提案している(特願2007−276625)。
【特許文献1】特開2004−113962
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記提案に係る方法および装置では、粉体回収部の近傍を含んだ収容空間の上部の全域において粉体についての濃度が均一となるため、液媒中を浮上する粉体と沈降する粉体とが互いの動きを干渉して妨げる傾向が顕著となり、処理状態が安定せず、一定の分級性能を再現性を持って実現する上で改善の余地があることがわかった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、粉体の分級を安定して正確に行う上で有利な粉体分級方法および粉体分級装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために本発明の粉体分級方法は、容器に液媒を収容し、前記容器に収容された液媒の液面に、液面上の一箇所である粉体回収位置に向かって流れる液媒の横流れを形成すると共に、液面の下方における前記液媒部分の実質上全域において下方に向かって流れる下降流を形成しておき、分級すべき粉体を前記粉体回収位置から離れた液面上の粉体供給位置あるいは前記粉体回収位置から離れた前記液媒中の粉体供給位置において供給し、前記粉体回収位置に到達する粉体を回収することを特徴とする。
また本発明は、液媒が収容される容器と、前記容器に収容された液媒の液面に、液面上の一箇所である粉体回収位置に向かって流れる液媒の横流れを形成する第1の液媒流生成部と、前記液面の下方における前記液媒部分の実質上全域において下方に向かって流れる下降流を形成する第2の液媒流生成部と、前記粉体回収位置から離れた液面上の粉体供給位置あるいは前記粉体回収位置から離れた前記液媒中の粉体供給位置に分級すべき粉体を供給する粉体供給部と、前記粉体回収位置に設けられ該粉体回収位置に到達する粉体を回収する粉体回収部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、粉体が液面近傍の横流れに乗って粉体供給位置から粉体回収位置に移動するため、その間に、浮上する粉体が粉体回収位置に向かって横向きに流れる一方、液媒中を沈降する粉体は粉体回収位置に近づくにつれてこの横流れから排除される。
したがって、液媒中を浮上する粉体と沈降する粉体とが互いの動きを干渉して妨げる傾向を抑制でき、粉体の分級を安定して正確に行う上で有利となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、本発明の実施の形態による粉体分級方法および粉体分級装置について図面を参照して説明する。
まず、本発明方法および装置における前提となる液媒中における粉体の浮上速度について説明する。
液媒中に入れると沈降する粉体(固体)、すなわち、液媒よりも比重が重い粉体の液媒中における粉体の沈降速度Vは、式(1)のstokesの式で示される。
【0007】
【数1】

【0008】
但し、ρは粉体の真密度(固体真密度)、ρ0は液密度、Dは粉体を構成する粒子の直径(固体直径)、μは液粘度、gは重力加速度である。
式(1)によれば、粉体は、その粒子の直径が大きいほど沈降速度Vが速く、また、粉体の真密度が大きいほど沈降速度Vが速いことがわかる。
【0009】
上述した式(1)に対して、液媒中に入れると浮上する粉体(固体)、すなわち、液媒よりも比重が軽い粉体の液媒中における粉体の浮上速度Vは式(2)で示され、この式(2)は式(1)のstokesの式を導出する際の運動方程式において液抵抗力項を沈降する場合とは、逆符号にすることによって導出される。
【0010】
【数2】

【0011】
式(2)によれば、粉体は、その粒子の直径が大きいほど浮上速度Vが速く、また、粉体の真密度が液媒よりも小さいほど浮上速度Vが速いことがわかる。
【0012】
図6は液媒中における粉体の粒子の動きを示す模式図であり、式(2)を具体的に説明している。
図6に示すように、液媒2中に液媒2よりも比重が軽い粉体を入れると、粉体を構成する粒子4のそれぞれは、矢印で示すような浮上速度Vで浮上する。すなわち、矢印の向きが粒子4の移動方向を示し、矢印の長さが浮上速度Vの大きさを示す。
本実施の形態では、液媒2は水であり、その液密度は1g/cmである。
粉体は、液媒2よりも比重が軽い粒子4から構成されており、具体的には、ガラスマイクロバルーンあるいはガラス中空球等と一般的に呼ばれる平均粒径(平均直径)数十ミクロンの粒子からなるものである。なお、このようなガラスマイクロバルーンとしてはグラスバブルス(住友スリーエム株式会社の登録商標)などが挙げられる。
この場合、粒子4のうち、直径Dが大きい(あるいは真密度ρが小さい)粒子4Aの浮上速度は、直径Dが小さい(あるいは真密度ρが大きい)粒子4Bの浮上速度Vよりも大きくなっている。
また、粒子4のうち、製造のばらつきなどによって生じる比重が液媒2の比重よりも重い粒子4Cは、液媒2中を沈降する。
また、ガラスマイクロバルーンが破損して生じた破片6は中空でないことから比重が液媒2の比重よりも重く、したがって、液媒2中を沈降する。
したがって、液媒2に入れた粉体の粒子4が、浮上する粒子4(4A、4B)と、沈降する粒子4(4C)および破片6とに分かれることから、浮上する粒子4のみを回収することで粉体の分級を行うことができることは無論のこと、上述した式(2)で示されているように、粒子4の直径Dおよび粉体の真密度ρの大きさの違いが、液媒2中の粉体の粒子4の浮上速度Vに反映されるので、浮上速度Vに基づいて粉体の粒子を選別すれば、粉体の分級をより精密に行うことができる。
本発明方法および装置は式(2)で示される液媒2中の粉体の粒子4の浮上速度Vの大きさに基づいて粉体の分級を行うものであり、以下具体的に説明する。
【0013】
図1は本実施の形態の粉体分級装置10の構成を示す説明図、図2は図1のA矢視図である。
以下、本発明の実施の形態による粉体分級方法をこの粉体分級装置10と共に説明する。
粉体分級装置10は、図1、図2に示すように、容器12と、第1の液媒流生成部14と、第2の液媒流生成部16と、粉体供給部18と、粉体回収部20などを含んで構成されている。
【0014】
(容器12)
容器12は、液媒2を収容する収容空間Sを形成するものである。
本実施の形態では、図2に示すように、収容空間Sは、平面視した状態で、対向する2つの短辺と、対向する2つの長辺を有する矩形状を呈し、言い換えると、幅Wと、該幅Wより大きな寸法で形成された長さLとを有している。
容器12は、上下に延在し上方が開放された側壁1202と、側壁1202の下部を閉塞する底壁1204とを備えている。
【0015】
収容空間Sの2つの短辺のうち一方の短辺側に臨む側壁1202の上下方向の中間の箇所に粉体供給口1222が形成されている。
収容空間S2の2つの短辺のうち他方の短辺側に臨む側壁1202の上下方向の中間の箇所に粉体回収口1224が形成されている。
本実施の形態では、粉体回収口1224は、収容空間Sの短辺のほぼ全長にわたって細長状に延在形成されている。
【0016】
液媒2は、収容空間Sに収容されている。
本実施の形態では、液媒2は水であり、その液密度ρは1g/cmである。
なお、本実施の形態では、粉体供給口1222と粉体回収口1224は、収容空間Sに収容された液媒2の液面202を含んだ箇所で互いに対向する箇所に設けられている。
【0017】
(第1の液媒流生成部14)
第1の液媒流生成部14は、容器12に収容された液媒2の液面202に、液面202上の一箇所である粉体回収位置P2に向かって流れる液媒2の横流れを形成するものである。
本実施の形態では、第1の液媒流生成部14は、粉体回収口1224と、液媒供給部26を含んで構成されている。
すなわち、液媒2の横流れは、粉体回収口1224から液媒2を容器12外に導くことにより形成され、言い換えると、粉体回収位置P2から液媒2を、液面202上に浮上する粉体3と共に容器12外に導くことにより形成され、この横流れは、液面202の全域に形成される。
液媒供給部26は、容器12に収容された液媒2の上部に液媒2を供給するものである。
本実施の形態では、液媒供給部26は、液面202の上方に位置する容器12の箇所に設けられた複数の孔開き液媒供給手段を含んで構成されている。
すなわち、液媒供給部26は、液面202と対向し平面上を延在する平板2602に複数の吐出孔2604が千鳥状に形成されることで構成され、各吐出孔2604によって前記孔開き液媒供給手段が構成されている。
液媒供給部26は、各吐出孔2604から液媒2を吐出することにより、液面202の上方から液面202の全域にわたって液媒2を一定の流量でシャワー状に降り注ぐように構成されている。
【0018】
(第2の液媒流生成部16)
第2の液媒流生成部16は、液面202の下方における液媒2部分の実質上全域において下方に向かって流れる下降流を形成するものである。
本実施の形態では、第2の液媒流生成部16は、上述の液媒供給部26と、液媒排出部28とを含んで構成されている。
液媒排出部28は、容器12に収容された液媒2の下部から液媒2を、下方に向かって移動する粉体3と共に排出するものある。
本実施の形態では、液媒排出部28は、底壁1204の幅方向中央に設けられた排出口1210で構成されている。
本実施の形態では、液媒供給部26によって液媒2を容器12の上部に供給すると共に、液媒排出部28が液媒2を粉体3と共に容器12の下部から排出することで液媒2の下降流の流れが安定した状態に(一定の状態に)作られるように図られている。
【0019】
(粉体供給部18)
粉体供給部18は、粉体回収位置P2から離れた液面202上の粉体供給位置P1に分級すべき粉体3を供給するものであり、粉体供給口1222、粉体供給路2202、粉体供給源2204を含んで構成されている。
本実施の形態では、粉体供給部18は、粉体3を予め液媒2と混合することによりスラリー状としておき、このスラリー状とされた粉体3を、粉体回収位置P2から離れた液面202上の粉体供給位置P1に粉体供給口1222から供給するように構成されている。
また、粉体供給路2202は粉体供給口1222に連通しており、粉体供給路2202は粉体供給口1222から粉体供給源2204に向かって上方に傾斜している。
したがって、粉体供給源2204から粉体供給路2202に導かれたスラリー状とされた粉体3は、粉体供給路2202に沿って下方に移送され粉体供給口1222から液面202上の粉体供給位置P1に供給される。
【0020】
(粉体回収部20)
粉体回収部20は、粉体回収位置P2に設けられ該粉体回収位置P2に到達する粉体3を回収するものである。
本実施の形態では、粉体回収部20は、図1に示すように、粉体回収口1224、粉体回収路2402、粉体回収タンク2404を含んで構成されている。
粉体回収路2402は粉体回収口1224から粉体回収タンク2404に向かって下方に傾斜している。
また、粉体回収口1224は、図2に示すように、容器12の側壁1202の全域にわたって延在形成され、粉体回収路2402は粉体回収口1224から粉体回収タンク2404に至るにつれて幅が狭くなるように形成されている。
したがって、粉体回収位置P2に到達した粉体3は、粉体回収口1224に導かれ、粉体回収路2402に沿って下方に移送され粉体回収タンク2404に回収される。
【0021】
次に粉体分級装置10の動作について説明する。
予め、収容空間Sには液媒2が収容されているものとする。
ここで、第1の液媒流生成部14により、液媒2の液面202に粉体回収位置P2に向かって流れる液媒2の横流れが形成されると共に、第2の液媒流生成部16により、液面202の下方における液媒2部分の実質上全域において下方に向かって流れる下降流が形成される。
この状態で、粉体供給部18から粉体供給位置P1にスラリー状の粉体3が供給されると、粉体3は液面202に沿って分散し、粉体3を構成する粒子4は液媒2中において浮上あるいは沈降する。
すなわち、前述の式(2)による浮上速度Vと液媒2の流速Vの関係から、
V<Vとなる粒子4は、液媒2中を沈降する。
V=Vとなる粒子4は、液媒2中で浮上も沈降もせず液媒2中に留まる。
V>Vとなる粒子4は、液媒2中を浮上し、液面202の近傍に浮上する。
言い換えると、液媒2の下降流の速度Vよりも大きな浮上速度Vを持つ粉体3のみが(言い換えると液媒2の下降流に逆らって液媒2中を浮上する粉体3のみが)液面202に浮上することになる。
なお、本実施の形態では、粉体供給部18によって粉体3を予め液媒2と混合することによりスラリー状としてから液面202上の粉体供給位置P1へ供給するため、液媒2に供給されたスラリー状の粉体3のうち液媒2よりも比重が軽い粒子4(図3)は、液媒2に供給された時点で既に液面202近傍で浮上している。
【0022】
図3は液媒2中における粉体3の動きを示す説明図である。
ここで、図3に示すように、液面202に形成された液媒2の横流れにより、液媒2中の粉体3は、粉体供給位置P1から粉体回収位置P2に向かって移動しつつ、液媒2中を浮上あるいは沈降する。
したがって、粉体3は、狭い範囲に留まらず、粉体供給位置P1から粉体回収位置P2にわたった広い範囲に分散しつつ、浮上あるいは沈降し、浮上する粉体3は液面202近傍で横に流れ、沈降する粉体3は下方に沈降するので、液媒2中を浮上する粉体3と沈降する粉体3とが互いの動きを干渉して妨げる傾向を抑制することができる。
液面202に浮上した粉体3は、液媒2の横流れにより粉体回収位置P2に到達し、液媒2と共に粉体回収部20によって回収される。
【0023】
また、本実施の形態では、図3に示すように、液面202の上方から液面202の全域にわたってシャワー状に降り注がれる液媒2により、粉体3が液面202近傍の液媒2とが共に撹拌される。
したがって、粉体3を構成する複数の粒子4がくっついた状態で浮上したとしても、粒子4同士が強制的に分離されるため、上述した浮上速度Vと液媒2の流速Vの関係に基づいて浮上すべき粒子4は浮上し、沈降すべき粒子4は液媒2中を沈降して液媒排出部28から排出される。
また、浮上すべき粒子4に破片6がくっついた状態で浮上したとしても、上述した液媒2の撹拌によって粒子4から破片6が強制的に分離されるため、浮上すべき粒子4は浮上し、破片4は液媒2中を沈降して液媒排出部28から排出される。
【0024】
以上説明したように、本実施の形態によれば、容器12に収容された液媒2の液面202に、粉体回収位置P2に向かって流れる液媒2の横流れを形成すると共に、液面202の下方における液媒2部分の実質上全域において下方に向かって流れる下降流を形成しておき、分級すべき粉体3を粉体回収位置P1から離れた液面202上の粉体供給位置P1の粉体供給位置P1において供給し、粉体回収位置P1に到達する粉体3を回収するようにした。
したがって、粉体3が横流れに乗って粉体供給位置P1から粉体回収位置P2に移動するため、その間に、液媒2中を沈降する粉体3はこの横流れから排除され、粉体回収位置P1に近づくにつれて粉体3の分級が進行する。
したがって、液媒2中を浮上する粉体3と沈降する粉体3とが互いの動きを干渉して妨げる傾向を抑制でき、粉体3の分級を安定して正確に行う上で有利となり、言い換えると、分級の処理状態の安定化を図り、一定の分級性能を再現性を持って実現する上で有利となる。
【実施例】
【0025】
次に、粉体3の分級結果を、実施例1乃至3の粉体分級装置と、比較例1乃至3の粉体分級装置とで比較し、比較結果を図4に示す。
(実施例1乃至3)
容器12のサイズは、図2、図5に示すように、W=140mm、L=550mm、排出口1210から液面202までの高さ(液媒2の深さ)H=150mmとした。
液媒2は水であり、液媒2の容量は約12リットルとした。
供給スラリー濃度、単位時間当たりスラリー供給量、単位時間当たり液媒供給量、単位時間当たり液媒排出量、粉体回収部20による単位時間当たりの液媒および粉体の回収速度は図5に示すとおりである。
【0026】
(比較例1乃至3)
本出願人が提案した粉体分級装置(特願2007−276625)によるものである。
図7に示すように、比較例における粉体分級装置100は、容器102と、粉体供給部104と、粉体回収部106と、液媒供給部108と、液媒排出部120と、撹拌部122と、上整流部124Aと、下整流部124Bなどを含んで構成されている。
粉体供給部114は、分級すべき粉体3を容器102の外部から、液媒2中の下部の箇所である下部液媒部2Bに供給するものである。
粉体供給部114は、粉体を予め液媒2と同じ液媒と混合することによりスラリー状とした状態で下部液媒部2Bに供給する。
粉体回収部116は、粉体供給部114から液媒部分に移送された粉体3のうち液媒2中を浮上して収容空間Sの上部に位置する液媒部分に移動した粉体3を回収して容器112の外部に取り出すものである。
液媒供給部118は、液媒2の液面202の上方から液媒2を一定の流量で供給するものである。
液媒排出部120は、収容空間Sの下部から液媒2を一定の流量で排出するものである。
液媒排出部120と上記の液媒供給部18とにより液媒2が収容空間S内のほぼ全域にわたり上方から下方に向かって一定の流速で流れるように図られている。
撹拌部122は、液媒2を撹拌するものであり、中間液媒部2Cに設けられている。
上整流部124Aおよび下整流部124Bは、撹拌部122の上方および下方にそれぞれ設けられ、液媒2の流れを整えるものである。
粉体分級装置100の動作は次のようになされる。
収容空間Sには液媒2が収容されている。
液媒供給部18から収容空間Sの液媒2に一定量の液媒2が供給されると同時に、液媒排出部20から前記一定量の液媒2が排出されることにより、収容空間S内の液媒2は一定の流速Vで上方から下方に向かって流れる。
この状態で、粉体供給部14からスラリー状の粉体3が下部液媒部2Bに供給されると、粉体3を構成する粒子4は液媒2中において浮上あるいは沈降する。
すなわち、前述の式(2)による浮上速度Vと液媒2の流速Vの関係から、
V<Vとなる粒子4は、液媒2中を沈降して液媒排出部20から排出される。
V=Vとなる粒子4は、液媒2中で浮上も沈降もせず下部液媒部2Bに留まる。
V>Vとなる粒子4は、液媒2の流れに沿って浮上し、上部液媒部2Aから回収される。
【0027】
比較例1乃至3の容器112は円筒状を呈し、図5に示すように、直径140mm、高さ660mmの大きさを有している。
液媒2は水であり、容器112に収容されている液媒2の容量は約10リットルとした。
供給スラリー濃度、単位時間当たりスラリー供給量、単位時間当たり液媒供給量、単位時間当たり液媒排出量、粉体回収部による単位時間当たりの液媒および粉体の回収速度は図5に示すとおりである。
【0028】
図4に示すように、粉体分級装置の稼働時間に対する回収された粉体の密度(分離後浮上成分の密度)の変化を見ると、比較例1乃至3では、回収された粉体の密度のばらつきが大きいことがわかる。
これは、比較例1乃至3においては、液媒中を浮上する粉体と沈降する粉体とが互いの動きを干渉して妨げることに起因するものである。
これに対して、実施例1乃至3では、回収された粉体の密度が安定していることがわかる。
すなわち、本発明方法および装置によれば、粉体回収位置P1に近づくにつれて粉体3の濃度は低下するので、粉体3の分級を安定して正確に行う上で有利となっている。
【0029】
なお、本実施の形態では、液媒2の下降流の速度Vよりも大きな浮上速度Vを持つ粉体3のみを回収することで粉体3の分級を行っている。したがって、厳密に言うと、粉体3を構成する粒子4の粒子径D、あるいは、粒子4の真密度ρそのものに基づいた分級を行うわけではない。
しかしながら、例えば、分級すべき粉体3(粒子4)がガラスマイクロバルーンの場合、粒子径Dが大きいものは真密度ρが小さく、逆に、粒子径Dが小さいものは真密度ρが大きいという相関関係が存在していることから、式(2)に示す浮上速度Vの関係に基づいた分級、すなわち、液媒2の下降流の速度Vよりも大きな浮上速度Vを持つ粉体3のみを回収することによって、実質的には粒子4の粒子径Dおよび粒子4の真密度ρに基づいた高い精度の分級を行うことができる。
したがって、分級すべき粉体の粒子径Dおよび真密度ρの相関関係がガラスマイクロバルーンの粒子径Dおよび真密度ρの相関関係と同様であれば、本発明方法および装置を用いることによって高い精度で分級を行うことができる。
【0030】
なお、液媒2の、容器12に収容された液媒2の上部への供給は、液媒2の上方に設けた孔開きパイプから液媒2を液媒2の上部に注ぎ込むようにして行うようにしてもよい。
しかしながら、本実施の形態のように、液面202の上方から液面202の全域にわたって液媒2をシャワー状に降り注ぐことにより液面202近傍の粉体3と共に液媒2が撹拌されるようにすると、特に凝集しやすい(ダマになりやすい)性質の粉体3を精度よく分級する上で有利となる。
【0031】
また、本実施の形態では、粉体供給部18による粉体3の粉体供給位置P1への供給を、粉体3を予め液媒2と混合することによりスラリー状としてから行うようにしたが、粉体3をスラリー状とすることなく粉体供給位置P1へ供給するようにしてもよい。
しかしながら、本実施の形態のようにスラリー状とした粉体3を供給すると、粉体3に気泡が混ざり粒子4が気泡と共に浮上することを防止できるので、気泡が粒子4の浮上速度Vに及ぼす影響を排除でき、粉体3の分級を正確に行う上で好ましい。
また、本実施の形態では、液面202上の粉体供給位置P1に分級すべき粉体3を供給する場合について説明したが、液媒2中の粉体供給位置P1に分級すべき粉体3を供給するようにしてもよい。
【0032】
本実施の形態では、分級する粉体3がガラスマイクロバルーンである場合について説明したが、本発明方法および装置によって分級する粉体は、液媒2よりも比重が軽く液媒2中を浮上する粉体を含む粉体3であればよく、どのような粉体を分級するかは任意である。
粉体3は、ガラスで形成されたマイクロバルーンに限定されるものではなく、従来公知のさまざまな無機物あるいは有機物を用いたものであってもよい。
無機物としては、ホウケイ酸ガラス、シリカ、カーボン、セラミックなどが挙げられる。
有機物としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂などが挙げられる。
また、本実施の形態では、液媒2が水である場合について説明したが、液媒2は分級すべき粉体3が浮上するものであればよく、液媒2として何を使用するかは任意である。
また、本発明方法および装置を用いて、粉体以外の材料を比重に応じて区別するなど任意である。例えば、チップ状に形成された合成樹脂材料などをそれらの比重に応じて区別するなど任意である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本実施の形態の粉体分級装置10の構成を示す説明図である。
【図2】液媒中における粉体の粒子の動きを示す模式図である。
【図3】液媒2中における粉体3の動きを示す説明図である。
【図4】粉体分級装置の稼働時間に対する回収された粉体の密度(分離後浮上成分の密度)の測定結果を示す線図である。
【図5】比較例1乃至3と実施例1乃至3の粉体分級装置の測定条件を示す図である。
【図6】液媒中における粉体の粒子の動きを示す模式図である。
【図7】比較例1乃至3における粉体分級装置の構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0034】
2……液媒、202……液面、3……粉体、10……粉体分級装置、12……容器、14……第1の液媒流生成部、16……第2の液媒流生成部、18……粉体供給部、20……粉体回収部、P1……粉体供給位置、P2……粉体回収位置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に液媒を収容し、
前記容器に収容された液媒の液面に、液面上の一箇所である粉体回収位置に向かって流れる液媒の横流れを形成すると共に、液面の下方における前記液媒部分の実質上全域において下方に向かって流れる下降流を形成しておき、
分級すべき粉体を前記粉体回収位置から離れた液面上の粉体供給位置あるいは前記粉体回収位置から離れた前記液媒中の粉体供給位置において供給し、
前記粉体回収位置に到達する粉体を回収する、
ことを特徴とする粉体分級方法。
【請求項2】
前記下降流は、前記容器に収容された液媒の上部に供給されつつかつ前記容器に収容された液媒の下部から排出されることでなされる、
ことを特徴とする請求項1記載の粉体分級方法。
【請求項3】
前記液媒の、前記容器に収容された液媒の上部への供給は、前記液面の上方から前記液面に液媒をシャワー状に降り注ぐことにより行われる、
ことを特徴とする請求項2記載の粉体分級方法。
【請求項4】
前記粉体の前記粉体供給位置への供給は、前記粉体を予め前記液媒と混合することによりスラリー状とした状態でなされる、
ことを特徴とする請求項1乃至3に何れか1項記載の粉体分級方法。
【請求項5】
前記粉体の前記粉体供給位置への供給は、前記粉体を予め前記液媒と混合することによりスラリー状としておき、このスラリー状とされた粉体を前記粉体回収位置から離れた液面上の粉体供給位置に供給することで行われる、
ことを特徴とする請求項1乃至4に何れか1項記載の粉体分級方法。
【請求項6】
前記横流れは、前記粉体回収位置から前記液媒を前記容器外に導くことにより形成される、
ことを特徴とする請求項1乃至5に何れか1項記載の粉体分級方法。
【請求項7】
液媒が収容される容器と、
前記容器に収容された液媒の液面に、液面上の一箇所である粉体回収位置に向かって流れる液媒の横流れを形成する第1の液媒流生成部と、
前記液面の下方における前記液媒部分の実質上全域において下方に向かって流れる下降流を形成する第2の液媒流生成部と、
前記粉体回収位置から離れた液面上の粉体供給位置あるいは前記粉体回収位置から離れた前記液媒中の粉体供給位置に分級すべき粉体を供給する粉体供給部と、
前記粉体回収位置に設けられ該粉体回収位置に到達する粉体を回収する粉体回収部と、
を備えることを特徴とする粉体分級装置。
【請求項8】
前記第2の液媒流生成部は、
前記容器に収容された液媒の上部に前記液媒を供給する液媒供給部と、
前記容器に収容された液媒の下部から前記液媒を排出する液媒排出部とを含んで構成されている、
ことを特徴とする請求項7記載の粉体分級装置。
【請求項9】
前記液媒供給部は、前記液面の上方に位置する前記容器の箇所に設けられた複数の孔開き液媒供給手段を含んで構成されている、
ことを特徴とする請求項8記載の粉体分級装置。
【請求項10】
前記容器は、底壁と、前記底壁の周囲から起立する側壁とを有し、
前記液面を含む前記側壁の互いに対向する箇所に前記粉体供給部と前記粉体回収部とが設けられている、
ことを特徴とする請求項7乃至9に何れか1項記載の粉体分級装置。
【請求項11】
前記液媒の液密度が略1g/cmである、
ことを特徴とする請求項7乃至10に何れか1項記載の粉体分級装置。
【請求項12】
前記液媒は水である、
ことを特徴とする請求項7乃至11に何れか1項記載の粉体分級装置。
【請求項13】
前記粉体は中空のガラス球状体である、
ことを特徴とする請求項7乃至12に何れか1項記載の粉体分級装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−17680(P2010−17680A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−182428(P2008−182428)
【出願日】平成20年7月14日(2008.7.14)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】