説明

粉体噴射撹拌工法及び装置

【目的】セメント等の粉体改良材を軟弱地盤中に噴射して掘削土壌と撹拌混合させて経時的に固化して地盤改良を行うに際し、粉体の輸送通路から排出される空気等の気体を地盤中の砂礫層等に逸走させないようにする。
【構成】中空パイプ4の下端部に下段の撹拌翼5' を設けて土圧と自重により所定ストローク上下動自在にし、撹拌翼5' 内に長手方向に沿って設けた噴射ノズル15' の先端部を下向きにし、中空パイプ4により地盤を掘削する所定深度等で下降するプロセスで、或いは、切り換えて上昇プロセスに移ってから所定量少量の粉体を噴射する等し、輸送に供された気体の地上への排出に際し、該チューブ状シールド内から上昇させて排出し、砂礫層等に逸走しないようにし、又、次段の円柱体の杭体形成時に該杭体の外側面にチューブ状シールドが補強体として一体的に接合されて杭体の強度をアップし、杭体の損傷や摩耗等が生じないようにする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】開示技術は、河川,湖沼,遠浅海岸等の軟弱地盤等の改良をセメント等の粉体の地盤内噴射によって行う技術の分野に属する。
【0002】
【従来の技術】周知の如く、国土の狭隘な我が国にあっては土地の有効利用は極めて重要であり、旧くから、各種の建設技術が研究開発改良され、種々実用化されるに至ってきている。
【0003】しかしながら、地勢的に山岳,森林地域が多く、平野は入りくんだ海岸線の近部等に沿って散在する現実においては各種の施設が利用可能な地域に既存の態様で集中しているこから、又、広大な山林原野地域の開発は環境保全,自然保護等の観点から限度があり、したがって、河川,湖沼,遠浅海岸等の流域の所謂軟弱地盤の改良による開発利用が有意義とされ、これらの地域の埋立て,干拓,浚渫の併用と共に実効を有する施工として実用化されている。
【0004】又、地盤改良は軟弱地盤に対するのみばかりでなく、既存の多くの構築物等の施設の改修や取壊し等に伴い当該地盤の改良を行う場合もある。
【0005】そして、当業者に周知の如く、かかる軟弱地盤の改良工事においては当該地盤内に中空パイプを用いて掘削,削孔させて、その上昇、或いは、下降プロセスにて所定の改良材を地盤中に注入させて経時的に固化を図るようにする技術が用いられ、これまで主として所定のゲルタイムを有する薬液の注入による改良工事が主流をなしており、水ガラス等の薬液が採用されてきた。
【0006】しかしながら、地下水汚染等の公害問題がクローズアップされるようになり、かかる薬液の注入による改良工事は次第に種々の条件から制約を受け、これに代えるにセメント,生石灰,スラグ等の粉体の改良材を地盤内に噴射して掘削土壌と撹拌作用を介して混合させ、経時的に固化を図る粉体噴射撹拌技術が実用化され、特に、中層,深層等の地盤の改良において多くの実績が得られるようになってきている。
【0007】又、用途によっては噴射する粉体は上記スラグ等の産業廃棄物をも用いることが出来ることから、公害問題解決の一助とも成り得るメリットも有している。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】ところで、かかる粉体改良材を地上から所定深度の地盤内に噴射すべく輸送するにはブリッジ等の目詰り等を生ずる等の点から該粉体改良材自身の中空パイプ内の圧送は不可能であることにより、一般に空気等の気体を介し気体輸送する方式が主流となっている。
【0009】そして、粉体はセメント,生石灰やスラグ等の産業廃物のみならず、スラリー状のものまでを利用し得る技術的改良も開発されてきており、例えば、特公平3−60969号公報発明の如く、改良効率が向上にするような研究もなされている。
【0010】ところで、かかる粉体噴射撹拌による地盤改良工事は改良材としての粉体が気体輸送されることから特殊性があり、中空パイプをしてその先端部に設けた撹拌翼を介して地盤を下降プロセスで掘削し、上昇プロセスにて該中空パイプ内に設けた粉体の気体輸送通路から粉体を撹拌翼の基部等に設けた噴射ノズルより地盤内に噴射させ、該撹拌翼により掘削土壌と一体的に撹拌して混合させ、円柱状の素材を形成させて経時的に固化するようにし、輸送に供された気体は地上に排出するようにしていたが、当該気体はその排出プロセスにおいて剰余の粉体、或いは、地盤自体中の微粉体等を浮遊状態に混在していることから、直接的に地表部で逸散すると、作業環境や周囲に大気汚染等の公害を引き起す虞があるために、図12に示す様に、当該地盤の地表1' に防塵フード2をセットし、そのシール3を介し中空パイプ4の昇降を許容し、該中空パイプ4の先端に固設した撹拌翼5,5で下降プロセスでの掘削、及び、上昇プロセスでの粉体との撹拌混合を図るようにし、その間、粉体の輸送に供された気体は中空パイプ4の側面に沿う等して地表1' に上昇し、フード2内から排出ポンプ7を介しバッグフィルター等の濾過装置8により粉体分を除塵されて清浄な空気のみを大気に逸散するように対処していた。
【0011】ところで、地盤1内は負岩層や砂礫層等複数の地層から成っているのが一般的であり、負岩層等では上昇する気体が側方に散気しないものの、当該図12に示す様に、砂礫層9が存在すると、粉体の輸送に供された気体は円柱状の土壌6部分からのみ上昇するとは限らず、被圧状態のために砂礫層9中に逸走し、該砂礫層9の低圧部位から地表1' に上昇して空気中に逸散する虞があり、輸送済みの気体が任意に噴出する現象が民有地や各種施設に生ずると、所謂住民パワー等の問題を喚起するようになり、スムースな施工が図り難く、又、設定量の粉体の充分な所定部位への噴射が不充分であったり、供給不足等のクレーム等にも結びつきかねないという不都合さがあった。
【0012】そして、地盤改良の重要な円柱状の杭体の造成プロセスにおいて、予め該杭体を成す内側の撹拌土壌に充分に粉体改良材を混入しなければ該杭体外側面に強度不充分による損傷等が生じて該杭体形成の基礎となる円柱体の設計通りの形成が出来ず、又、円柱状の土壌や該土壌に対する粉体の撹拌混合プロセスにおける気体リークが避けられないという欠点もあった。
【0013】かかる問題は対象とする改良地盤が中層,深層であるほどその虞があるものであった。
【0014】したがって、粉体噴射撹拌施工においては中空パイプ近くの地表部分からのみ確実に輸送済みの気体を排出し、除塵を行うことが出来、そのうえ、砂礫層等を介して散気することがないような施工技術が広く望まれていたにもかかわらず、これまでの改良技術ではこれに対処することが出来ないという不具合があった。
【0015】
【発明の目的】この出願の発明の目的は上述従来技術に基づくセメント等の粉体改良材の噴射撹拌による地盤改良における粉体輸送に供せらる空気等の気体の上昇プロセスでの逸散等の問題点を解決すべき技術的課題とし、地盤内での撹拌翼の掘削を介しての中空パイプ挿入プロセスでの最終構築物を形成する撹拌土壌の円柱体の外側面にチューブ状シールドを形成させ、粉体輸送気体の砂礫層等への側部への不測の逸散を防止し、該円柱体の杭体の外側面の損傷等によるトラブルを防止するようにし充分な強度を有する設計通りの地盤改良が行われるようにして建設産業における土木技術利用分野に益する優れた粉体噴射撹拌工法、及び、該工法に直接使用する装置を提供せんとするものである。
【0016】
【課題を解決するための手段・作用】上述目的に沿い先述特許請求の範囲を要旨とするこの出願の発明の構成は、前述課題を解決するために、軟弱地盤等の地盤内への所定の粉体改良材の噴射により地盤改良するに際し、所定の中空パイプをして当該地盤内へ挿入し、その先端部に一体的に外延して設けられた撹拌翼により掘削を行ってゆき、その下降プロセスにおいて、例えば、下側の撹拌翼にその外端部で下向に彎曲して設けられた粉体噴射ノズルから中空パイプ内部に設けられた粉体輸送通路を介し、所定圧の気体によりセメント等の粉体改良材を気体輸送し、掘削領域の土壌の円柱体の外側面に粉体噴射によってチューブ状シールドを形成させ、又、上昇プロセスにおいては撹拌翼に長手方向に沿って設けられた他の粉体噴射ノズルから該撹拌翼の撹拌領域内に粉体を噴射して掘削土壌と確実に撹拌し、可及的に均一に混合し、更に、再度下降するプロセスでは粉体噴射を行わないようにし、適宜の上昇プロセスにおいて再度粉体噴射が行われるようにする等し、そこで、最初に形成した粉体によるチューブ状シールドが粉体上昇に供せられる気体をして砂礫層等に逸散しないように確実に掘削領域内で上昇し、地上にて混入されている粉体を除去し清浄な気体として大気に逸散させるようにして杭体の円柱体外側面が確実にチューブ状シールドを形成されて該杭体の強度が充分に保持されるようにし、該外側面に損傷等も生じないようにし、而して、上述粉体によりチューブ状シールドの形成に際しては撹拌翼を中空パイプの回転軸にスライドするスリーブや撹拌翼に上下方向位相差をもたせて上昇プロセス、或いは、下降プロセスにおける粉体の噴射の切り換えを行えるようにしたり、シリンダやバルブにより行ったり、スライド翼による拡縮を介してのチューブ状シールドの形成を所望に行うことが出来るようにして確実に地盤改良が出来るようにした技術的手段を講じたものである。
【0017】
【実施例】次に、この出願の発明の実施例を図1、乃至、図11を参照して説明すれば以下の通りである。
【0018】尚、図12と同一態様部分は同一符号を用いて説明するものとする。
【0019】図1、乃至、図5に示す実施例は二段の撹拌翼5による軟弱地盤1の改良装置100の態様であり、100' は上下二段の撹拌翼5,5' による地盤改良装置の態様であり、前述した如く、地盤1中に砂礫層9が層在する場合の粉体改良材と土壌の混合撹拌による杭体を形成するに、その外側面にチューブ状シールド6' を形成し、撹拌混合による杭体の円柱体の強度を充分に確保し、その外側面を確実に保護し、且つ、改良中に粉体輸送に供された気体としての空気を地上1'に排出し、フード2から濾過装置8により除塵して外気に逸散させるプロセスで砂礫層9中に逸散しないようにシールド作用を行うに供されるものであって、図1に示す実施例では中空パイプ4を回転させて下降プロセスで撹拌翼5により掘削を行い、所定深度まで掘削した後、上昇プロセスに切り換えて該撹拌翼5内に設けた噴射ノズル11' から相対的に所定量少量の粉体改良材の噴射を行って撹拌翼5の先端部分で薄い肉厚のチューブ状シールド6' を形成させ、2回目の下降プロセスにて比較的に多量の粉体の気体輸送噴出を行い、掘削土壌と撹拌混合して予め形成させたチューブ状シールド6' 内に中実状の円柱体の杭体を経時的に凝固形成させるようにし、その際、粉体輸送に供された気体の空気は予め形成されたチューブ状シールド6' にシールドされて砂礫層9には逸走せず、したがって、掘削孔内を上昇し、図3に示す様に、フード2内からポンプ7を介し濾過装置8にて粉体を除塵され、正常化されて大気に逸散するようにされ、したがって、改良領域外の民有地に気体が噴出する等の虞は全く生じない。
【0020】そして、図3,図4,図5によって図2に示す態様を詳細に説明すると、当該上下二段の撹拌翼5,5' を有する粉体噴射撹拌装置100' に於いては上段の撹拌翼5は中空パイプ4内部に同心的に設けられた気体輸送通路10に接続するセメント等の粉体改良材の噴射ノズル11が撹拌翼5に沿って縦方向に延在され、該撹拌翼5の外端部分にはバルクヘッド12が設けられて噴射ノズル5には所定ピッチで下向きにノズル本体16,16…が開口されており、又、下段の撹拌翼5' はその基部にスリーブ13が一体的に設けられ中空パイプ4に対し該スリーブ13がスプライン機構14を介し所定ストロークスライド自在にされ、ストッパ15,15' でそのストロークを規制されており、その所定ピッチのストロークエンドに設けられた長手方向位相の異なるポート10' ,10''に杭体形成用の噴射ノズル11とチューブ状シールド6' 形成用の噴射ノズル11' を選択的に接続可能であるようにされている。
【0021】而して、該スリーブ13は下段の翼5' が中空パイプ4と共に一体的に回転して下降プロセスで地盤1を掘削するに掘削抵抗、或いは、土圧を受けると、中空パイプ4に対しスプライン機構14を介し上昇し、又、地盤1中で引き上げられるプロセスでは所定ストローク下降し、図示しない地上に於ける気体輸送通路10に対するバルブ切り換えにより下降の掘削プロセスでは所定量少量の粉体をノズルポート10' から噴射ノズル11' に供給し、その外端部の下向きに彎曲するノズル16' から噴射して図2に示す様に、チューブ状シールド6' を形成し、下段の撹拌翼5' の上昇プロセスにて噴射ノズル11より該撹拌翼5' 内の全ての領域に設定量の粉体を可及的均一濃度で噴射して土壌と撹拌混合し円柱体の杭体を形成するに際し、その外側面を滑かに保護し、確実な杭体を形成するようにし、又、その間の輸送気体のエアーの砂礫層9への逸走を阻止するようにする。
【0022】したがって、当該実施例においては下段の撹拌翼5' の地盤1の掘削の下降,上昇プロセスにおける昇降切り換えによりチューブ状シールド6' を形成出来、又、上段の撹拌翼5によってはその内側の中実状の円柱体の杭体を形成することが出来る。
【0023】そして、地盤改良における粉体の輸送気体の砂礫層9への逸走を避け、又、設計通りの確実で健全な円柱体の杭体を形成させることが出来る。
【0024】而して、上述実施例は下段の撹拌翼5' の下降上昇プロセスにおける土圧,自重を介しての自動切り換えによる態様であるが、図6に於ける実施例では相対向する一対の撹拌翼5' ,5' に一方側は円柱体の杭体形成用の噴射ノズル11を、他方にはチューブ状シールド6' 形成用のノズル11'(その先端部分は上述実施例同様に下向きに彎曲されたノズル16' を形成されている。)を設け、スリーブ13' は中空パイプ4内部に設けたシリンダ17のピストン18に下側で一体的に連結され、該シリンダ17は作動流体の通路19、及び、バルブ20を介し中空パイプ4内でピストン18、即ち、スリーブ13' を昇降させて中空パイプ4内の気体輸送通路10に連通する噴射ノズル11へのポート21、及び、噴射ノズル11' へのポート21' に選択的に切り換え自在にして接続させて該中空パイプ4の上昇プロセスではチューブ状シールド6' を、又、上昇プロセスでは中実状の杭体の円柱体の全体を土壌と粉体と撹拌混合により形成させるようにする態様であり、作用効果は実質的に上述実施例と変りはないものである。
【0025】次に、図7に示す実施例において、中空パイプ4に設けた上下の撹拌翼5、及び、5' で円柱体の杭体を形成する噴射ノズル11,11には専用の各気体輸送通路10,10を各々固定的に接続させ、下段の撹拌翼5' のチューブ状シールド6' 形成用の噴射ノズル11' には別の気体輸送通路10' を接続させ、その地上での選択的な切り換えバルブ22,22' に接続し、所定の下降プロセス,上昇プロセスにてチューブ状シールド6' 、中実状の円柱体の杭体の形成を確実に形成するようにすることが出来る。
【0026】又、図8、乃至、図11に示す実施例はこの出願の発明の主要なポイントであるチューブ状シールド6' の形成に際し、撹拌翼5' の先端部に長手方向に変位自在なスライド翼12を設け、該スライド翼12にチューブ状シールド6' 形成用の下向きに彎曲した噴射ノズル22を付設して該撹拌翼5' 内の噴射ノズル11' に接続し、例えば、中空パイプ4の下降プロセス、或いは、所定深度からの上昇プロセスにて所定量少量の粉体を噴射してチューブ状シールド6' を形成させて、前述同様に地盤1中の砂礫層9への輸送気体のエアーの逸走を防止したり、中実状の円柱体の形成に際し土壌と粉体の撹拌混合を行って杭体の形成に際し、その外側面保護を行うようにする等に供されるチューブ状シールド6' の形成時にはスライド翼22をして図示する様に、撹拌翼5' の外端部に所定量外方へ向け突出させ中実状の円柱体の杭体の形成時には端部から内側に該スライド翼22が退行するようにし、その切り換え制御に際しては、図8,図9の実施例に於いて中空パイプ4内に気体輸送通路10とは別個に他の回転駆動軸23を設けてカム24を撹拌翼5' の部位に設け、撹拌翼5' 内のスライド翼22についてはそのロッド25の既端部にカム24に対するカムフォロワーローラ26を当接させてスライド翼22をして撹拌翼5' の外端部に進退自在にし、チューブ状シールド6' の形成時には進出させ、円柱体の杭体形成時には退行するようにする態様であり、図12R>2に示す実施例では該スライド翼22と中空パイプ4との間に適宜のシリンダ等のアクチュエータ27を介装し、同様に該スライド翼22の進退を行うようにするものである。
【0027】又、図11に示す実施例に於いては該スライド翼22の下向き噴射ノズル16' 対する開閉を適宜のチェックバルブ28により行うようにしたものであり、その奏する作用効果は上述各実施例と実質的な差はないものである。
【0028】尚、この出願の発明の実施態様は上述各実施例に限るものでないことは勿論であり、例えば、チューブ状シールドの形成は中空パイプの下降、又は、上昇のいずれかのプロセスにて行うばかりでく、昇降プロセスの2回目からのプロセスで行うかを予め地盤の状況に応じて決められ得る等種々の態様が採用可能である。
【0029】設計変更的には撹拌翼の段数を3段以上にする等も可能であることは勿論のことである。
【0030】
【発明の効果】以上、この出願の発明によれば、基本的に軟弱地盤等の地盤改良において薬液注入等と異なり、セメント等の粉体改良材を地盤中に噴射することにより地下水汚染等も避けられ、産業廃棄物を粉砕したスラグ等の粉体を用いることにより、公害問題や環境問題にプラスするという基本的な効果は確実に維持され、しかも、粉体の中空パイプを介して撹拌翼に沿って設けられた噴射ノズルに対する輸送気体の空気等が地盤中の砂礫層に逸散することが避けられ、設計改良領域外の地上に上昇して噴出する等による環境破壊等の虞もなくなるという優れた効果が奏される。
【0031】而して、撹拌翼の先端部から輸送気体を噴出し、これに設定量少量の粉体を供給することにより輸送気体は粉体に形成されるチューブ状シールド内で上昇して砂礫層等に逸走せず、地盤中に粉体改良に供される輸送気体の上昇通路を形成させる効果があり、又、掘削プロセスにおいてチューブ状シールドを形成させることから次段の円柱体の杭体を内部に形成する粉体と土壌の撹拌混合時の円柱体の外側面がチューブ状シールドに囲繞されて一体化されることにより該チューブ状シールドが杭体の外側面を一体的にカバーして補強し、円柱体の外側面の破壊や損耗等を防止し、確実に滑かな外側面を形成し設計通りの地盤改良が出来るという効果がある。
【0032】又、地盤改良装置においては中空パイプの下端部に設けた少くとも一段の撹拌翼の端部にチューブ状シールド形成用の噴射ノズルを下向きに開口させていることにより設定深度からの上昇、或いは、下降プロセスにおいて、確実にチューブ状シールドが形成され、上述の如く、輸送気体の砂礫層等への逸走が避けられ、又、次段の円柱体形成時にその外側面にチューブ状シールドを形成させて損傷や破壊等を生じない補強を行うことが出来るという優れた効果が奏される。
【0033】又、かかる下向きの噴射ノズルに換えて該撹拌翼の先端部にて変位自在なスライド翼を設け、該スライド翼をして旋回させるようにしてチューブ状シールドの形成と本体としての円柱体の形成時に粉体を設定量掘削噴射して円柱体、或いは、チューブ状シールドを選択的に形成することが出来るという優れた効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【図1】この出願の発明のチューブ状シールド形成の1実施例の模式断面図である。
【図2】同、他の実施例の模式断面図である。
【図3】この出願の発明により軟弱地盤改良施工の全体概略模式部分断面図である。
【図4】装置の1実施例の要部拡大部分断面図である。
【図5】図4のIII − IV 断面図である。
【図6】同、装置の他の実施例の要部拡大部分断面図である。
【図7】別の実施例の装置の要部拡大断面図である。
【図8】他の実施例の部分拡大断面図である。
【図9】図8の要部部分断面平面図である。
【図10】図9の他の実施例の模式平面図である。
【図11】同、更に他の実施例の部分断面平面図である。
【図12】従来技術に基づく噴射撹拌の部分断面模式図である。
【符号の説明】
1 軟弱地盤
4 中空パイプ
5,5' 撹拌翼
6' チューブ状シールド
16 掘削土壌円柱体
9 砂礫層
10 気体輸送通路
11,11' 噴射ノズル
100,100' 粉体噴射撹拌装置
16 下向き開口噴射ノズル
22 スライド翼
27 アクチュエータ
28 開閉バルブ
13 スリーブ
17 シリンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】軟弱地盤中に中空パイプを挿入し該中空パイプ内を介して気体輸送した粉体改良材を地盤中に噴射して掘削土壌と混合撹拌し、その間輸送気体を地上に排出するようにした粉体噴射撹拌工法において、撹拌翼にて地盤掘削を行うプロセスで掘削土壌の円柱体の外側面に沿って粉体改良材によるチューブ状シールドを形成させるようにすることを特徴とする粉体噴射撹拌工法。
【請求項2】上記チューブ状シールドの形成を撹拌翼の下降プロセスで行うようにすることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の粉体噴射撹拌工法。
【請求項3】上記チューブ状シールドの形成を地盤中の砂礫層のレベルにて行うようにすることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の粉体噴射撹拌工法。
【請求項4】上記チューブ状シールドの形成を土壌の円柱体に対する粉体改良材の混合撹拌プロセスに伴って行うようにすることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の粉体噴射撹拌工法。
【請求項5】上記チューブ状シールドの形成を撹拌翼の上昇プロセスで行うようにすることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の粉体噴射撹拌工法。
【請求項6】軟弱地盤中に挿入する中空パイプが粉体改良材の気体輸送通路を内部に有し、又、その基部には掘削兼用の撹拌翼が一体的に側延させると共に該撹拌翼に上記粉体改良材の噴射ノズルが併設されている粉体噴射撹拌装置において、上記撹拌翼に設けられ、粉体改良材の気体輸送通路に接続される改良材の噴射ノズルがその先端を下向きに開口されていることを特徴とする粉体噴射撹拌装置。
【請求項7】上記先端を下向きに開口された噴射ノズルが撹拌翼の先端にてその長手方向に変位自在なスライド翼に付設されていることを特徴とする特許請求の範囲第6項記載の粉体噴射撹拌装置。
【請求項8】上記スライド翼と中空パイプとの間に該スライド翼進退用のアクチュエータが介設されていることを特徴とする特許請求の範囲第7項記載の粉体噴射撹拌装置。
【請求項9】上記先端が下向きに開口された噴射ノズルに開閉バルブが付設されていることを特徴とする特許請求の範囲第7項記載の粉体噴射撹拌装置。
【請求項10】軟弱地盤中に挿入する中空パイプが粉体改良材の気体輸送通路を内部に有し、又、その基部には掘削兼用の撹拌翼が一体的に側延させると共に該撹拌翼に粉体改良材の噴射ノズルが併設されている粉体噴射撹拌装置において、上記撹拌翼に設けられ、上記改良材の気体輸送通路に接続される改良材の噴射ノズルがその先端を下向きに開口され、上記中空パイプにスライドするスリーブを介し上記改良材の気体輸送通路に連通遮断自在にされていることを特徴とする粉体噴射撹拌装置。
【請求項11】上記スリーブが土圧感応式にされていることを特徴とする特許請求の範囲第10項記載の粉体噴射撹拌装置。
【請求項12】上記スリーブがシリンダ式にされていることを特徴とする特許請求の範囲第10項記載の粉体噴射撹拌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図6】
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【図7】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開平5−179637
【公開日】平成5年(1993)7月20日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−356816
【出願日】平成3年(1991)12月26日
【出願人】(000152642)株式会社日東テクノ・グループ (6)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)