説明

粉体塗料の塗装方法

【課題】 絶縁性を有する被塗物における帯電量のばらつきの発生を抑制する。
【解決手段】 絶縁性を有する被塗物を準備する工程と、被塗物上を摺動可能に設けられた導電ローラに第1の極性を有するバイアス電圧を印加し被塗物が帯電するように導電ローラを被塗物に接触させる工程と、帯電した前記被塗物に、第1の極性と逆極性を有する粉体塗料を静電付着させる工程と、を含み、導電ローラは、導電性を有する繊維を備え、繊維は被塗物と接触し、繊維は、レーヨン繊維、アクリル繊維、及びナイロン繊維を含み、繊維は、1.0重量%から10.0重量%のカーボン濃度を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂等の絶縁性を有する被塗物に粉体塗料を塗装する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、粉体塗料は有機溶剤を含んでいないことから、環境負荷が最も低い塗料として注目されている。しかし、絶縁性を有する被塗物、例えばプラスチックに粉体塗装する場合、被塗物の表面に予め粉体塗料に対する被塗物表面の接着性を改善するプライマー処理を施す必要がある。
【0003】
ところが、プライマー処理によって被塗物表面の粉体塗料に対する接着性を改善しても、プライマー処理により形成された塗布物の膜厚のばらつきを抑制することは困難である。塗布物の膜厚のばらつきに依存して、塗布物に対する粉体塗料の付着量のばらつきが発生する。塗布物に対する粉体塗料の付着量のばらつきに伴い、粉体塗料の塗装膜厚のばらつきが発生する。粉体塗料の塗装膜厚のばらつきに伴い、塗装ムラが発生してしまう。
【0004】
そこで、プライマー処置を施さずに行う粉体塗料の塗装方法において、絶縁性を有する被塗物に対して接触電位差を有する摩擦帯電性粒子を、該被塗物に衝突させて被塗物を帯電させ、被塗物が有する極性と逆極性を有する粉体塗料を被塗物に静電塗着させる方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、このような粉体塗料の塗装方法において、粉体粒子を被塗物における帯電量のばらつきが発生しないように、被塗物に対する摩擦帯電性粒子の衝突量を制御することが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3619010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、絶縁性を有する被塗物における帯電量のばらつきの発生を抑制できる粉体塗料の塗装方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の課題を解決するため、本発明の第1の側面によれば、絶縁性を有する被塗物を準備する工程と、前記被塗物上を摺動可能に設けられた導電ローラに第1の極性を有するバイアス電圧を印加し前記被塗物が帯電するように前記導電ローラを前記被塗物に接触させる工程と、帯電した前記被塗物に、第1の極性と逆極性を有する粉体塗料を静電付着させる工程と、を含むことを特徴とする粉体塗料の塗装方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る粉体塗料の塗装方法によれば、絶縁性を有する被塗物上を摺動可能に設けられた導電ローラに第1の極性を有するバイアス電圧を印加して被塗物に接触させることにより、被塗物と導電ローラとの摩擦量のばらつきの発生を抑制できる。そのため、被塗物における帯電量のばらつきの発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の実施例に係る粉体塗料の塗装方法のフローチャートを示す図である。
【図2】図2A及び図2Bは、本発明の実施例に係る粉体塗料の塗装方法を説明するための模式図である。
【図3】図3は、本発明の実施例に係る粉体塗料の塗装方法を説明するための模式図である。
【図4】図4は、本発明の実施例に係る粉体塗料の塗装方法を用いた試料の評価結果を示す表である。
【図5】図5は、本発明の実施例に係る粉体塗料の塗装方法を用いた試料の評価結果を示す表である。
【図6】図6は、本発明の実施例に係る粉体塗料の塗装方法を用いた試料の評価結果を示す表である。
【図7】図7は、本発明の実施例に係る粉体塗料の塗装方法を用いた試料の評価結果を示す表である。
【図8】図8は、本発明の実施例に係る粉体塗料の塗装方法を用いた試料の評価結果を示す表である。
【図9】図9は、本発明の実施例に係る粉体塗料の塗装方法を用いた試料の評価結果を示す表である。
【図10】図10は、本発明の実施例に係る粉体塗料の塗装方法を用いた試料の評価結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は本実施例に限定されるものではない。
【0012】
図1は、本実施例に係る粉体塗料の塗装方法のフローチャートを示す図である。なお、各工程の説明は後で図面を用いて行う。最初に、絶縁性を有する被塗物が準備される(S1)。次いで、例えばブラシ帯電器を用いて、被塗物が帯電される(S2)。ブラシ帯電器は、導電性を有する繊維を備え、被塗物上を摺動可能に設けられる導電ローラを備える。導電ローラに第1の極性を有するバイアス電圧が印加され、導電ローラが被塗物に接触することによって、被塗物が帯電される。次いで、例えばコロナ帯電型塗装ガンを用いて、帯電された被塗物に粉体塗料が静電付着される(S3)。粉体塗料は、コロナ帯電型塗装ガンによって、第1の極性と逆極性を有するように帯電され、粉体塗料が被塗物に静電付着する。なお、粉体塗料は、コロナ帯電型塗装ガンの代わりに、静電型塗装ガンによって帯電されても良い。次いで、不図示の加熱装置によって粉体塗料が静電付着した被塗物が加熱される(S4)。この加熱工程によって、粉体塗料が被塗物の表面で溶融してから、粉体塗料内の樹脂及び硬化剤が反応して樹脂が硬化することによって、被塗物の表面に粉体塗料の塗膜が形成される。次いで、粉体塗料が表面に付着した被塗物は、公知の冷却装置(不図示)によって、例えば常温まで冷却される(S5)。
【0013】
図2A、図2B、及び図3は、実施例における粉体塗料の塗装方法を詳細に説明するものである。
【0014】
図2Aは、図1のS1に示すように、被塗物1を準備するようすを示す図である。被塗物1は、絶縁性を有することが望ましい。被塗物1は、例えば、エポキシ樹脂、ナイロン−6,6、ナイロン−6、ナイロン−12、ナイロン−11、ナイロン−6,10等のポリアミド樹脂(PA);ポリエチレン(PE);ポリプロピレン(PP);ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)等のポリスチレン系樹脂;塩化ビニル樹脂(PVC);ポリカーボネート(PC)、スチレン−アクリル酸エチル(AES)等からなることが望ましい。
【0015】
なお、図2Aは、被塗物1の代表例として、電子機器筐体40を示す。電子機器筐体40は、例えばノートパソコン、パーソナルデジタルアシスタンス(PDA)、携帯電話、又はカーナビゲーションシステムの筐体として用いられる。
【0016】
図2Bは、図1のS2に示すように、ブラシ帯電器20を用いて被塗物1を帯電させるようすを示す図である。
【0017】
ブラシ帯電器20は、導電ローラ2、電源3、及び可動部8によって構成されている。
【0018】
導電ローラ2は、芯棒2a及び繊維2bを備える。導電ローラ2は、例えば、不図示の回転駆動源によって矢印Aの方向に回転することが望ましい。芯棒2aは、導電性を備えることが望ましい。芯棒2aは、例えばステンレスからなることが望ましい。
【0019】
繊維2bは、芯棒2aの周りに巻き付けられて形成されることが望ましい。繊維2bは、導電性を有することが望ましい。繊維2bは、パイル織りした繊維2bの先端を切り揃えたものであることが望ましい。繊維2bは、例えばレーヨン繊維からなることが望ましい。繊維2bは、例えばアクリル繊維、又はナイロン繊維から形成されても良い。繊維2bは、例えば粒子形状を有するカーボンが繊維2b中に分散されることによって導電性が付与されることが望ましい。
【0020】
電源3は、例えば直流のバイアス電圧を発生する高電圧源であることが望ましい。電源3は、導電ローラ2の芯棒2aと被塗物1との間に直流バイアス成分を含むバイアス電圧を印加する。
【0021】
可動部8は、導電ローラ2が被塗物1上を摺動可能にするために設けられる。可動部8は、例えば、X−Y方向に延在する被塗物1に対し、導電ローラ2をX方向に摺動させるために設けられる。可動部8は、例えば、不図示の回転駆動源によって回転する不図示のギアを備える。可動部8に備えられた不図示のギアは、例えば、導電ローラ2の芯棒2aに設けられた不図示のギアと嵌合するように配置されている。導電ローラ2の芯棒2aは、例えば、可動部8に設けられた不図示のギアが回転することによって、導電ローラ2が可動部8の案内溝8aに沿ってX方向に可動するように配置されている。
【0022】
次に、ブラシ帯電器20に備えられた導電ローラ2を、絶縁性を有する被塗物1に接触させるようすを説明する。
【0023】
先ず、電源3は、導電ローラ2にプラスの直流バイアス成分を有するバイアス電圧を印加する。次いで、導電ローラ2は、不図示の回転駆動源によって、矢印Aの方向に回転する。次いで、導電ローラ2は、直線状の案内溝8aに沿ってX方向に移動する。その際、導電ローラ2が被塗物1に接触し、繊維2bによって被塗物1の表面が摩擦されることによって、被塗物1はプラスの電荷を有するように帯電される。このように、導電性を有する繊維2bを備え、被塗物1上を摺動可能に設けられた導電ローラ2に第1の極性を有するバイアス電圧を印加し被塗物1が帯電するように導電ローラ2を被塗物1に接触させる。
【0024】
図3は、図1のS3に示すように、コロナ帯電型塗装ガン30を用いて、被塗物1に対し粉体塗料4を付着させるようすを示す図である。
【0025】
本実施例において、粉体塗料4は、(1)粉体塗料4が加熱により被塗物1の表面で溶融し、粉体塗料4が被塗物1の表面で溶融してから、粉体塗料4内の樹脂及び硬化剤が反応して樹脂が硬化することによって、被塗物1の表面に塗膜を形成するための樹脂、(2)加熱処理によって樹脂を硬化させる硬化剤、(3)粉体塗料4の帯電性を制御するための帯電制御剤、(4)粉体塗料4の導電性、及び粉体塗料4の帯電性を制御するための針状酸化チタン、(5)粉体塗料4を着色するための着色剤を混合した塗料である。
【0026】
樹脂は、例えば、数平均分子量(Mn)が7200から10800、重量平均分子量(Mw)が40000から60000、ガラス転移点(Tg)が60℃から80℃であるアクリル樹脂を用いることができる。
【0027】
樹脂の数平均分子量が7200未満である場合、ガラス転移点が60℃未満となり、粉体塗料4を加熱して溶融させる際の粘性が低くなり、被塗物1の表面における粉体塗料4の塗膜の形成が困難になる。樹脂の数平均分子量が10800よりも大きい場合、ガラス転移点が80℃よりも大きくなる。そのため、粉体塗料4を加熱して溶融させる際に粉体塗料4の粘度が上昇してしまい、被塗物1の表面における粉体塗料4の塗膜の膜厚のばらつきが発生しやすくなる。樹脂の重量平均分子量が40000未満である場合、粉体塗料4を加熱して溶融させる際に粉体塗料4の粘度が低下してしまい、被塗物1の表面における粉体塗料4の塗膜の形成が困難となる。樹脂の重量平均分子量が60000よりも大きい場合、粉体塗料4を加熱して溶融させる際に粉体塗料4の粘度が上昇してしまい、被塗物1の表面における粉体塗料4の塗膜の膜厚のばらつきが発生しやすくなる。
【0028】
アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸およびその誘導体さらには必要によりこれら以外のエチレン性不飽和結合(C=C)含有モノマーなどを(共)重合したものを用いることができる。
【0029】
(メタ)アクリル酸の誘導体は、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド類、(メタ)アクリロニトリル類を用いることができる。
【0030】
(メタ)アクリル酸エステル類は、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート[ドデシル(メタ)アクリレート]、グリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、β-メタリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、エチル-α-ヒロドキシメチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジアクリルレート、グリセリルトリ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートを用いることができる。
【0031】
(メタ)アクリルアミド類は、例えば、(メタ)アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミドを用いることができる。
【0032】
(メタ)アクリロニトリル類は、例えば、(メタ)アクリロニトリル、エチルシアノ(メタ)アクリレートを用いることができる。
【0033】
このようなアクリル樹脂には、上記以外の「他のモノマー」が共重合されていてもよく、このような「他のモノマー」としては、具体的には、例えば、スチレン、酢酸ビニル、ビニルトルエン、マレイン酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和結合(C=C)含有モノマーを用いることができる。
【0034】
粉体塗料4に含有される樹脂は、アクリル樹脂の他に、例えばエポキシ樹脂を用いることができる。エポキシ樹脂は、分子中に2個以上のエポキシ基を有するものであれば任意のものを用いることができる。エポキシ樹脂は、例えばビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、ビフェニル型、トリスヒドロキシフェニルメタン型、テトラフェニロールエタン型、ナフタレン型、複素環式、脂環式、各種変性等のエポキシ樹脂またはそこにハロゲンを導入したハロゲン化エポキシ樹脂などを用いることができる。
【0035】
上記ビスフェノール型エポキシ樹脂は、例えば、エピコート828、エピコート1001、エピコート1004、エピコート1007、エピコート1009(いずれも商品名、シェルケミカル社製)を用いることができる。
【0036】
粉体塗料4は、樹脂の含有率が87重量%から50重量%であることが望ましい。粉体塗料4における樹脂の含有率が87重量%より大きい場合、粉体塗料4の帯電不良、又は色調不良などが発生する。粉体塗料4における樹脂の含有率が50重量%未満の場合、粉体塗料4による塗膜の形成が困難になる。
【0037】
硬化剤は、粉体塗料4の樹脂の主成分が熱硬化性樹脂の場合、架橋反応を促進するために用いられる。硬化剤は、例えばドデカン二酸又はアミンを用いることできる。ドデカン二酸は、粉体塗料4の樹脂の主成分がアクリル樹脂である場合に硬化剤として用いることができる。アミンは、粉体塗料4の樹脂の主成分がエポキシ樹脂である場合に硬化剤として用いることができる。
【0038】
粉体塗料4は、硬化剤の含有率が例えば10重量%から20重量%であることが望ましい。粉体塗料4における硬化剤の含有率が10重量%未満である場合、粉体塗料4によって形成される塗膜の強度が不足してしまう。粉体塗料4における硬化剤の含有率が20重量%より大きい場合、粉体塗料4によって形成される塗膜の強度が不足してしまう。
【0039】
帯電制御剤は、粉体塗料4の帯電性を制御するために用いられる。帯電制御剤は、カリックスアレン化合物(BONTRON E−89、オリエント化学工業株式会社製)、又はサリチル酸系化合物(BONTRON E−304、オリエント化学工業株式会社製)を用いることができる。
【0040】
粉体塗料4は、帯電制御剤の含有率が例えば1重量%から10重量%であることが望ましい。粉体塗料4における帯電制御剤の含有率が1重量%未満である場合、粉体塗料4が帯電しなくなり,塗装ムラの原因となる。粉体塗料4における帯電制御剤の含有率が10重量%より大きい場合、粉体塗料4によって形成される塗膜の強度が低下してしまう。
【0041】
針状酸化チタンは、粉体塗料4の導電性、及び粉体塗料4の帯電性を制御するために用いられる。針状酸化チタン(FT−1000、石原テクノ株式会社製)は、粉体塗料4に対する導電性の付与の観点から、短軸径に対する長軸径の比が10から150であって、かつ短軸経が0.03μmから0.5μmであることが好ましい。
【0042】
粉体塗料4は、針状酸化チタンの含有率が例えば1重量%から10重量%であることが望ましい。粉体塗料4における針状酸化チタンの含有率が1重量%未満である場合、粉体塗料4の帯電性が低下し塗装ムラの原因となる。粉体塗料4における針状酸化チタンの含有率が10重量%より大きい場合、粉体塗料4によって形成される塗膜の強度が低下してしまう。
【0043】
着色剤は、粉体塗料4を着色するために用いられる。着色剤としては、例えば、二酸化チタン、ベン柄、黄色酸化鉄、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、キナクリドン系赤色顔料等の無機系又は有機系顔料等を用いることができる。
【0044】
粉体塗料4は、着色剤の含有率が例えば1重量%から10重量%であることが望ましい。粉体塗料4における着色剤の含有率が1重量%未満である場合、粉体塗料4によって形成される塗膜において鮮やかな色調が得られない。粉体塗料4における着色剤の含有率が10重量%より大きい場合、粉体塗料4によって形成される塗膜の強度が低下してしまう。
【0045】
本実施例に係る粉体塗料4を製造するためには、上述した樹脂、硬化剤、帯電制御剤、針状酸化チタン、及び着色剤を、ミキサー又はブレンダー等を用いて乾式混合した後、ニーダーにより溶融混練して冷却させることが望ましい。次いで、冷却した混練物を機械式又は気流式の粉砕機を用いて粉砕した後、分級処理することにより粉体塗料4の粒子を得ることができる。
【0046】
粉体塗料4の体積粉体粒径は、例えば10μmから50μmであることが望ましい。粉体塗料4の体積粉体粒径が10μm未満である場合、粉体塗料4における個々の粒子の帯電性が高くなり,塗装ムラが発生する。粉体塗料4の体積粉体粒径が50μmより大きい場合、粉体塗料4によって形成される塗膜にムラが発生するため、均一な塗装ができなくなる。
【0047】
コロナ帯電型塗装ガン30は、噴射ノズル5、荷電圧印加装置6、及びガイド7によって構成されている。
【0048】
噴射ノズル5は、粉体塗料4の塗装に使用できるものであることが望ましい。噴射ノズル5は、例えば公知のコロナ帯電型塗装ガンに使用されるノズルを用いることができる。ガイド7は、帯電された粉体塗料4の噴射方向を変えるために設けられる。荷電圧印加装置6は、粉体塗料4に電圧を印加して、粉体塗料4を帯電させるために設けられる。図3中、荷電圧HVは、荷電圧印加装置6に印加される荷電圧(高電圧)を示す。
【0049】
荷電圧印加装置6に印加される荷電圧HVは、例えば50kVから1000kVであることが望ましい。荷電圧印加装置6に印加される荷電圧HVが50kV未満である場合、粉体塗料4の粒子が帯電せず、塗装できなくなる。荷電圧印加装置6に印加される荷電圧HVが1000kVより大きい場合、粉体塗料4によって形成される個々の粒子の帯電性にムラが発生するため、塗装ムラが発生してしまう。
【0050】
次に、図3に示すように、コロナ帯電型塗装ガン30を用いて粉体塗料4を被塗物1に対して噴射して塗装を行うようすを説明する。
【0051】
先ず、コロナ帯電型塗装ガン30内に充填された粉体塗料4は、Z方向に流れる不図示のガス(例えば空気)により噴射ノズル5の方向に移動する。
【0052】
次いで、粉体塗料4は、荷電圧印加装置6に接触することによって、被塗物1が有する極性と逆の極性に帯電する。本実施例の場合、被塗物1はプラスの電荷を有する。そのため、粉体塗料4は、マイナスの電荷を有するように帯電させることが望ましい。
【0053】
この際、粉体塗料4は、例えば10μC/gから20μC/gの電荷を有するように帯電されることが望ましい。粉体塗料4の帯電量が10μC/g未満の場合、粉体塗料4の帯電量が不足するため、粉体塗料4が静電力によって被塗物1に付着できない。粉体塗料4の帯電量が20μC/gよりも大きい場合、一度帯電した後、粉体塗料4から電荷がリークし、被塗物1に対する粉体塗料4の付着量にばらつきが発生する。
【0054】
次いで、荷電圧印加装置6によって帯電された粉体塗料4は、噴射ノズル5の先端に設けられたガイド7によって噴射方向がZ方向に制御され、塗装面がZ方向に面する被塗物1に向かって噴射される。コロナ帯電型塗装ガン30から噴射された粉体塗料4は静電力によって被塗物1の表面に付着する。
【0055】
被塗物1に対して粉体塗料4が付着する厚みは、例えば80μmから100μmであることが望ましい。粉体塗料4が付着する厚みが80μm未満である場合、下地となる被塗物1の影響が現れ、粉体塗料4によって形成される塗膜にムラが発生してしまう。粉体塗料4が付着する厚みが100μmより大きい場合、被塗物1に対する粉体塗料4の塗膜の密着性が低下するため、塗膜が剥がれやすくなる。
【0056】
そして、図1のS4に示すように、粉体塗料4が表面に付着した被塗物1は、公知の加熱処理装置(不図示)によって、例えば80℃から110℃の温度で、且つ20分から40分の間加熱される。この加熱工程によって、粉体塗料4が被塗物1の表面で溶融してから、粉体塗料4内の樹脂及び硬化剤が反応して樹脂が硬化することによって、被塗物1の表面に、粉体塗料4の塗膜が形成される。次いで、図1のS5に示すように、粉体塗料4が表面に付着した被塗物1は、公知の冷却装置(不図示)によって、例えば常温まで冷却される。
【0057】
図4は、本発明に係る粉体塗料4の塗装方法を行った際に、実施例1から実施例9、及び比較例に係る塗料ムラの評価結果を示す表である。この表は、実施例1から実施例9、及び比較例において、導電ローラ2における電気抵抗、及び導電ローラ2に印加されるバイアス電圧を変更した際の塗料ムラの評価結果を示す。
【0058】
なお、導電ローラ2の電気抵抗は、導電ローラ2に備えられた繊維2bが接触する不図示の電極を被塗物1の表面に配置し、導電ローラ2の芯棒2aと電極との間における電気抵抗を測定して求めた。導電ローラ2の電気抵抗の測定時における導電ローラ2の回転数は500rpmであった。導電ローラ2の繊維2bと不図示の電極との接触長さは2.0mmであった。
【0059】
また、導電ローラ2に印加されるバイアス電圧は、導電ローラ2に備えられた繊維2bが接触する不図示の電極を被塗物1の表面に配置し、導電ローラ2の芯棒2aと電極との間におけるバイアス電圧を測定して求めた。バイアス電圧の測定時における導電ローラ2の回転数は500rpmであった。導電ローラ2の繊維2bと不図示の電極との接触長さは2.0mmであった。
(実施例1)
<粉体塗料4の調製>
以下の5種類の材料を、ヘンシェルミキサー(FM−75型、三井三池化工機社製)に投入し、2,000rpmで1分間混合した。
【0060】
(1)樹脂:アクリル樹脂(数平均分子量(Mn):9000、重量平均分子量(Mw):50000、Tg:72℃):75重量%
(2)硬化剤:ドデカン二酸:15重量%
(3)帯電制御剤:カリックスアレン化合物:3重量%
(4)針状酸化チタン:石原テクノ製“FT−1000”:3重量%
(5)着色剤:白色顔料:チタン工業製“KA−30S”:4重量%
次いで、混合物は、100℃に加熱したニーダー(KH−3−S、井上製作所製)を用いて30分間溶融混練された後に冷却された。次いで、冷却された混練物は、ハンマーミルによって粉砕された。粉砕された混練物は、気流式の粉砕機によって、粉砕分級された。粉砕分級工程によって、体積平均粒径で20μmの粉体塗料4が調製された。
<導電ローラ2の作製>
導電ローラ2は、ステンレスからなる直径5mmの芯棒2aの周りに、導電性の繊維2bを巻き付けて形成された。導電ローラ2のY方向の長さは、120mmであった。
【0061】
導電ローラ2における繊維2bは、パイル織りした繊維2bの先端を切り揃え、繊維長を6mmとした。導電ローラ2における繊維2bは、繊維2bの先端を寝かせることによって、導電ローラ2の外径が15mmとなるように成形した。
【0062】
導電ローラ2における繊維2bは、レーヨン繊維が用いられた。導電ローラ2における繊維2bは、例えばカーボン粒子が繊維2b中に分散されることによって導電性が付与された。繊維2bにおけるレーヨン繊維の太さ(繊度)は、600デニール(666.6デシテックス)/100Fであった。繊維2bの基布上における繊維密度は、100000F/inであるものを用いた。導電ローラ2の電気抵抗は1×10Ωであった。
【0063】
なお、デニール及びテックスは、繊維(フィラメント)の太さを表す単位である。例えば、1デニール/100Fは、9000mの長さを有する繊維100本あたりの重さが1gである繊維の太さを示す。また、1テックス/100Fは、1000mの長さを有する繊維100本あたりの重さが1gである繊維の太さを示す。
【0064】
また、F/inは、単位面積当たりの繊維の本数を表す単位である。例えば、1F/inは、1平方インチ(6.45cm)において繊維の本数が1本であることを示す。
<試料の作製>
先ず、図1のS1及び図2Aに示すように、被塗物1としてエポキシ樹脂が準備された。被塗物1の寸法は、30mm×30mm×5mmであった。
【0065】
次いで、図1のS2及び図2Bに示すように、被塗物1は、ブラシ帯電器20の導電ローラ2によって帯電された。導電ローラ2に印加されたバイアス電圧は0.8kVであった。導電ローラ2の回転数は、500rpmであった。導電ローラ2のX方向における移動量は、1.0mm/secであった。導電ローラ2の繊維2bと被塗物1との接触長は、1.0mmであった。この工程によって、被塗物1は10μC/cmに帯電された。
【0066】
次いで、図1のS3及び図3に示すように、粉体塗料4は、市販のコロナ帯電型塗装ガン30によって、被塗物1上に静電付着された。粉体塗料4の帯電量は、10.0μC/gであった。被塗物1上に粉体塗料4が付着する厚みは、80μmから100μmであった。
【0067】
次いで、図1のS4に示すように、粉体塗料4が表面に付着した被塗物1は、公知の加熱処理装置(不図示)によって、90℃の温度で、且つ30分間加熱された。この加熱工程によって、粉体塗料4が被塗物1の表面で溶融してから、粉体塗料4内の樹脂及び硬化剤が反応して樹脂が硬化することによって、被塗物1の表面に、例えば80μmから100μmの膜厚を有する粉体塗料4の塗膜が形成された。次いで、図1のS5に示すように、粉体塗料4が表面に付着した被塗物1は、公知の冷却装置(不図示)によって、例えば常温まで冷却された。
<試料の評価>
粉体塗料4の塗膜が形成された被塗物1における色差Eの測定を行い、塗料ムラの評価を行った。色差Eは、グレタグマクベス社製の“スペクトロアイ”分光光度計を用いて測定した。被塗物1の表面における粉体塗料4の色差Eのばらつき△Eは、任意の10箇所における色差Eを測定し、各測定箇所における色差Eのばらつき△Eを平均することによって求めた。色差Eのばらつき△Eの測定径は5mmであった。
【0068】
被塗物1における粉体塗料4の塗装ムラを評価する基準は、色差Eのばらつき△Eが3未満である場合を優、色差Eのばらつき△Eが3以上から色差Eのばらつき△E6.5未満である場合を良、色差Eのばらつき△Eが6.5以上から色差Eのばらつき△Eが8未満である場合を可、及び色差Eのばらつき△Eが8以上である場合を劣とした。
(比較例)
実施例1において、ブラシ帯電器20の導電ローラ2に備えられた繊維2bによって被塗物1を帯電させる工程を除いた以外は、実施例1と同様に、粉体塗料4が調製され、試料が作製された。
(実施例2)
実施例1において、電気抵抗が1×10Ωである導電ローラ2を、電気抵抗が1×10Ωである導電ローラ2に変更した以外は、実施例1と同様に、粉体塗料4が調製され、試料が作製された。
(実施例3)
実施例1において、電気抵抗が1×10Ωである導電ローラ2を、電気抵抗が1×10Ωである導電ローラ2に変更した以外は、実施例1と同様に、粉体塗料4が調製され、試料が作製された。
(実施例4)
実施例1において、電気抵抗が1×10Ωである導電ローラ2を、電気抵抗が1×10Ωである導電ローラ2に変更した以外は、実施例1と同様に、粉体塗料4が調製され、試料が作製された。
(実施例5)
実施例1において、電気抵抗が1×10Ωである導電ローラ2を、電気抵抗が1×10Ωである導電ローラ2に変更した以外は、実施例1と同様に、粉体塗料4が調製され、試料が作製された。
(実施例6)
実施例1において、電源3によって導電ローラ2に印加されるバイアス電圧を、0.8kVから0.5kVに変更した以外は、実施例1と同様に、粉体塗料4が調製され、試料が作製された。
(実施例7)
実施例1において、電源3によって導電ローラ2に印加されるバイアス電圧を、0.8kVから1.5kVに変更した以外は、実施例1と同様に、粉体塗料4が調製され、試料が作製された。
(実施例8)
実施例1において、電源3によって導電ローラ2に印加されるバイアス電圧を、0.8kVから0.3kVに変更した以外は、実施例1と同様に、粉体塗料4が調製され、試料が作製された。
(実施例9)
実施例1において、電源3によって導電ローラ2に印加されるバイアス電圧を、0.8kVから2.0kVに変更した以外は、実施例1と同様に、粉体塗料4が調製され、試料が作製された。
【0069】
図4の表に示すように、実施例1における試料の色差Eのばらつき△Eは2.8であった。比較例における試料の色差Eのばらつき△Eは8以上であった。実施例2における試料の色差Eのばらつき△Eは6.5であった。実施例3における試料の色差Eのばらつき△Eは5.9であった。実施例4における試料の色差Eのばらつき△Eは7.2であった。実施例5における試料の色差Eのばらつき△Eは6.8であった。実施例6における試料の色差Eのばらつき△Eは6.4であった。実施例7における試料の色差Eのばらつき△Eは7.1であった。実施例8における試料の色差Eのばらつき△Eは7.3であった。実施例9における試料の色差Eのばらつき△Eは6.8であった。
【0070】
塗装ムラにおいて、実施例1における試料は優判定であった。比較例における試料は、劣判定であった。実施例2、実施例3、及び実施例6における試料は、良判定であった。実施例4、実施例5、実施例7、実施例8、及び実施例9における試料は、可判定であった。
【0071】
したがって、ブラシ帯電器20に備えられた導電ローラ2によって被塗物1を帯電させる工程を実施すれば、本発明の目的である粉体塗料4の塗装における塗装ムラを改善できることを確認できた。また、本発明の目的である粉体塗料4の塗装における塗装ムラを改善するためには、導電ローラ2の電気抵抗が1×10Ωから1×10Ωの範囲であり、且つ導電ローラ2に印加されるバイアス電圧が0.5kVから0.8kVの範囲であることが更に好ましいことが確認できた。
<導電ローラ2における繊維2bの太さ>
図5は、本発明に係る粉体塗料4の塗装方法を行った際に、実施例1、実施例10から実施例13に係る被塗物1表面における電位Vのばらつき△V、及び塗料ムラの評価結果を示す表である。この表は、実施例1、実施例10から実施例13において導電ローラ2の繊維2bの太さを変更した際の被塗物1表面における電位Vのばらつき△V、及び塗料ムラの評価結果を示す。
<被塗物1表面における電位Vのばらつき△Vの測定>
図1のS2及び図2Bに示す被塗物1の帯電工程を行った後に、導電ローラ2によって帯電した被塗物1の表面における電位Vの測定を行い、電位Vのばらつき△Vの評価を行った。電位Vは、トレック・ジャパン社製の表面電位計“MODEL 344”を用いて測定した。被塗物1の表面における電位Vは、任意の10箇所を測定して求めた。各測定箇所における電位Vのばらつき△Vは、各測定箇所における電位Vのばらつき△Vを平均することによって求めた。
(実施例10)
実施例1において、導電ローラ2の繊維2bの太さが600デニール/100F(666.6デシテックス/100F)である導電ローラ2を、繊維2bの太さが350デニール/100F(388.9デシテックス/100F)である導電ローラ2に変更した以外は、実施例1と同様に、粉体塗料4が調製され、試料が作製された。
(実施例11)
実施例1において、導電ローラ2の繊維2bの太さが600デニール/100Fである導電ローラ2を、繊維2bの太さが400デニール/100F(444.4デシテックス/100F)である導電ローラ2に変更した以外は、実施例1と同様に、粉体塗料4が調製され、試料が作製された。
(実施例12)
実施例1において、導電ローラ2の繊維2bの太さが600デニール/100Fである導電ローラ2を、繊維2bの太さが800デニール/100F(888.8デシテックス/100F)である導電ローラ2に変更した以外は、実施例1と同様に、粉体塗料4が調製され、試料が作製された。
(実施例13)
実施例1において、導電ローラ2の繊維2bの太さが600デニール/100Fである導電ローラ2を、繊維2bの太さが900デニール/100F(999.9デシテックス/100F)である導電ローラ2に変更した以外は、実施例1と同様に、粉体塗料4が調製され、試料が作製された。
【0072】
図5の表に示すように、実施例1において、被塗物1表面における電位Vのばらつき△Vは30Vであった。実施例10において、被塗物1表面における電位Vのばらつき△Vは80Vであった。実施例11において、被塗物1表面における電位Vのばらつき△Vは50Vであった。実施例12において、被塗物1表面における電位Vのばらつき△Vは50Vであった。実施例13において、被塗物1表面における電位Vのばらつき△Vは65Vであった。
【0073】
実施例1における試料の色差Eのばらつき△Eは2.8であった。実施例10における試料の色差Eのばらつき△Eは6.7であった。実施例11における試料の色差Eのばらつき△Eは5.0であった。実施例12における試料の色差Eのばらつき△Eは5.5であった。実施例13における試料の色差Eのばらつき△Eは6.8であった。
【0074】
塗装ムラにおいて、実施例1における試料は優判定であった。実施例11及び実施例12における試料は良判定であった。実施例10及び実施例13における試料は可判定であった。
【0075】
したがって、本発明の目的である粉体塗料4の塗装における塗装ムラを改善するためには、導電ローラ2の繊維2bの太さが400デニール/100F(444.4デシテックス/100F)から800デニール/100F(888.8デシテックス/100F)の範囲であることが更に好ましいことが確認できた。
<繊維2bの基布上における繊維密度>
図6は、本発明に係る粉体塗料4の塗装方法を行った際に、実施例1、実施例14から実施例17に係る被塗物1表面における電位Vのばらつき△V、及び塗料ムラの評価結果を示す表である。この表は、実施例1、実施例14から実施例17において、繊維2bの基布上における繊維密度を変更した際の被塗物1表面における電位Vのばらつき△V、及び塗料ムラの評価結果を示す。
(実施例14)
実施例1において、繊維2bの基布上における繊維密度が100000F/inである導電ローラ2を、繊維密度が40000F/inである導電ローラ2に変更した以外は、実施例1と同様に、粉体塗料4が調製され、試料が作製された。
(実施例15)
実施例1において、繊維2bの基布上における繊維密度が100000F/inである導電ローラ2を、繊維密度が50000F/inである導電ローラ2に変更した以外は、実施例1と同様に、粉体塗料4が調製され、試料が作製された。
(実施例16)
実施例1において、繊維2bの基布上における繊維密度が100000F/inである導電ローラ2を、繊維密度が150000F/inである導電ローラ2に変更した以外は、実施例1と同様に、粉体塗料4が調製され、試料が作製された。
(実施例17)
実施例1において、繊維2bの基布上における繊維密度が100000F/inである導電ローラ2を、繊維密度が200000F/inである導電ローラ2に変更した以外は、実施例1と同様に、粉体塗料4が調製され、試料が作製された。
【0076】
図6の表に示すように、実施例1において、被塗物1表面における電位Vのばらつき△Vは30Vであった。実施例14において、被塗物1表面における電位Vのばらつき△Vは90Vであった。実施例15において、被塗物1表面における電位Vのばらつき△Vは45Vであった。実施例16において、被塗物1表面における電位Vのばらつき△Vは50Vであった。実施例17において、被塗物1表面における電位Vのばらつき△Vは65Vであった。
【0077】
実施例1における試料の色差Eのばらつき△Eは2.8であった。実施例14における試料の色差Eのばらつき△Eは6.9であった。実施例15における試料の色差Eのばらつき△Eは4.7であった。実施例16における試料の色差Eのばらつき△Eは5.1であった。実施例17における試料の色差Eのばらつき△Eは6.6であった。
【0078】
塗装ムラにおいて、実施例1における試料は優判定であった。実施例15及び実施例16における試料は良判定であった。実施例14及び実施例17における試料は可判定であった。
【0079】
したがって、本発明の目的である粉体塗料4の塗装における塗装ムラを改善するためには、繊維2bの基布上における繊維密度が50000F/inから150000F/inの範囲であることが更に好ましいことが確認できた。
<導電ローラ2の繊維2bにおけるカーボン濃度>
図7は、本発明に係る粉体塗料4の塗装方法を行った際に、実施例1、実施例18から実施例21に係る被塗物1表面における電位Vのばらつき△V、及び塗料ムラの評価結果を示す表である。この表は、実施例1、実施例18から実施例21において、導電ローラ2の繊維2bにおけるカーボン濃度を変更した際の被塗物1表面における電位Vのばらつき△V、及び塗料ムラの評価結果を示す。
(実施例18)
実施例1において、導電ローラ2の繊維2bにおけるカーボン濃度が5.0重量%である導電ローラ2を、カーボン濃度が0.5重量%である導電ローラ2に変更した以外は、実施例1と同様に、粉体塗料4が調製され、試料が作製された。
(実施例19)
実施例1において、導電ローラ2の繊維2bにおけるカーボン濃度が5.0重量%である導電ローラ2を、カーボン濃度が1.0重量%である導電ローラ2に変更した以外は、実施例1と同様に、粉体塗料4が調製され、試料が作製された。
(実施例20)
実施例1において、導電ローラ2の繊維2bにおけるカーボン濃度が5.0重量%である導電ローラ2を、カーボン濃度が10.0重量%である導電ローラ2に変更した以外は、実施例1と同様に、粉体塗料4が調製され、試料が作製された。
(実施例21)
実施例1において、導電ローラ2の繊維2bにおけるカーボン濃度が5.0重量%である導電ローラ2を、カーボン濃度が12.0重量%である導電ローラ2に変更した以外は、実施例1と同様に、粉体塗料4が調製され、試料が作製された。
【0080】
図7の表に示すように、実施例1において、被塗物1表面における電位Vのばらつき△Vは30Vであった。実施例18において、被塗物1表面における電位Vのばらつき△Vは100Vであった。実施例19において、被塗物1表面における電位Vのばらつき△Vは50Vであった。実施例20において、被塗物1表面における電位Vのばらつき△Vは50Vであった。実施例21において、被塗物1表面における電位Vのばらつき△Vは60Vであった。
【0081】
実施例1における試料の色差Eのばらつき△Eは2.8であった。実施例18における試料の色差Eのばらつき△Eは7.0であった。実施例19における試料の色差Eのばらつき△Eは5.2であった。実施例20における試料の色差Eのばらつき△Eは5.1であった。実施例21における試料の色差Eのばらつき△Eは7.3であった。
【0082】
塗装ムラにおいて、実施例1における試料は優判定であった。実施例19及び実施例20における試料は良判定であった。実施例18及び実施例21における試料は可判定であった。
【0083】
したがって、本発明の目的である粉体塗料4の塗装における塗装ムラを改善するためには、導電ローラ2の繊維2bにおけるカーボン濃度が1.0重量%から10.0重量%の範囲であることが更に好ましいことが確認できた。
<導電ローラ2の回転数>
図8は、本発明に係る粉体塗料4の塗装方法を行った際に、実施例1、実施例22から実施例25に係る被塗物1表面における電位Vのばらつき△V、及び塗料ムラの評価結果を示す表である。この表は、実施例1、実施例22から実施例25において、導電ローラ2の回転数を変更した際の被塗物1表面における電位Vのばらつき△V、及び塗料ムラの評価結果を示す。
(実施例22)
実施例1において、導電ローラ2の回転数である500rpmを、150rpmに変更した以外は、実施例1と同様に、粉体塗料4が調製され、試料が作製された。
(実施例23)
実施例1において、導電ローラ2の回転数である500rpmを、200rpmに変更した以外は、実施例1と同様に、粉体塗料4が調製され、試料が作製された。
(実施例24)
実施例1において、導電ローラ2の回転数である500rpmを、800rpmに変更した以外は、実施例1と同様に、粉体塗料4が調製され、試料が作製された。
(実施例25)
実施例1において、導電ローラ2の回転数である500rpmを、1000rpmに変更した以外は、実施例1と同様に、粉体塗料4が調製され、試料が作製された。
【0084】
図8の表に示すように、実施例1における被塗物1表面の電位Vのばらつき△Vは30Vであった。実施例22における被塗物1表面の電位Vのばらつき△Vは70Vであった。実施例23における被塗物1表面の電位Vのばらつき△Vは50Vであった。実施例24における被塗物1表面の電位Vのばらつき△Vは50Vであった。実施例25における被塗物1表面の電位Vのばらつき△Vは80Vであった。
【0085】
実施例1において、試料の色差Eのばらつき△Eは2.8であった。実施例22において、試料の色差Eのばらつき△Eは7.1であった。実施例23において、試料の色差Eのばらつき△Eは5.1であった。実施例24において、試料の色差Eのばらつき△Eは5.2であった。実施例25における試料の色差Eのばらつき△Eは6.6であった。
【0086】
塗装ムラにおいて、実施例1における試料は優判定であった。実施例23及び実施例24における試料は良判定であった。実施例22及び実施例25における試料は可判定であった。
【0087】
したがって、本発明の目的である粉体塗料4の塗装における塗装ムラを改善するためには、導電ローラ2の回転数を200rpmから800rpmの範囲に設定することが更に好ましいことが確認できた。
<導電ローラ2のX方向における移動速度>
図9は、本発明に係る粉体塗料4の塗装方法を行った際に、実施例1、実施例26から実施例29に係る被塗物1表面における電位Vのばらつき△V、及び塗料ムラの評価結果を示す表である。この表は、実施例1、実施例26から実施例29において、導電ローラ2のX方向における移動速度を変更した際の被塗物1表面における電位Vのばらつき△V、及び塗料ムラの評価結果を示す。
(実施例26)
実施例1において、導電ローラ2のX方向における移動速度1.0mm/secを、0.05mm/secに変更した以外は、実施例1と同様に、粉体塗料4が調製され、試料が作製された。
(実施例27)
実施例1において、導電ローラ2のX方向における移動速度1.0mm/secを、0.1mm/secに変更した以外は、実施例1と同様に、粉体塗料4が調製され、試料が作製された。
(実施例28)
実施例1において、導電ローラ2のX方向における移動速度1.0mm/secを、10.0mm/secに変更した以外は、実施例1と同様に、粉体塗料4が調製され、試料が作製された。
(実施例29)
実施例1において、導電ローラ2のX方向における移動速度1.0mm/secを、15.0mm/secに変更した以外は、実施例1と同様に、粉体塗料4が調製され、試料が作製された。
【0088】
図9の表に示すように、実施例1において、被塗物1表面における電位Vのばらつき△Vは30Vであった。実施例26において、被塗物1表面における電位Vのばらつき△Vは80Vであった。実施例27において、被塗物1表面における電位Vのばらつき△Vは50Vであった。実施例28において、被塗物1表面における電位Vのばらつき△Vは50Vであった。実施例29において、被塗物1表面における電位Vのばらつき△Vは80Vであった。
【0089】
実施例1における試料の色差Eのばらつき△Eは2.8であった。実施例26における試料の色差Eのばらつき△Eは6.7であった。実施例27における試料の色差Eのばらつき△Eは5.0であった。実施例28における試料の色差Eのばらつき△Eは4.7であった。実施例29における試料の色差Eのばらつき△Eは7.2であった。
【0090】
塗装ムラにおいて、実施例1における試料は優判定であった。実施例27及び実施例28における試料は良判定であった。実施例26及び実施例29における試料は可判定であった。
【0091】
したがって、本発明の目的である粉体塗料4の塗装における塗装ムラを改善するためには、導電ローラ2のX方向における移動速度を0.1mm/secから10.0mm/secの範囲にすることが更に好ましいことが確認できた。
<導電ローラ2の繊維2bと被塗物1との接触長>
図10は、本発明に係る粉体塗料4の塗装方法を行った際に、実施例1、実施例30から実施例33に係る被塗物1表面における電位Vのばらつき△V、及び塗料ムラの評価結果を示す表である。この表は、実施例1、実施例30から実施例33において、導電ローラ2の繊維2bと被塗物1との接触長を変更した際の被塗物1表面における電位Vのばらつき△V、及び塗料ムラの評価結果を示す。
(実施例30)
実施例1において、導電ローラ2の繊維2bと被塗物1との接触長である1.0mmを、0.3mmに変更した以外は、実施例1と同様に、粉体塗料4が調製され、試料が作製された。
(実施例31)
実施例1において、導電ローラ2の繊維2bと被塗物1との接触長である1.0mmを、0.5mmに変更した以外は、実施例1と同様に、粉体塗料4が調製され、試料が作製された。
(実施例32)
実施例1において、導電ローラ2の繊維2bと被塗物1との接触長である1.0mmを、2.0mmに変更した以外は、実施例1と同様に、粉体塗料4が調製され、試料が作製された。
(実施例33)
実施例1において、導電ローラ2の繊維2bと被塗物1との接触長である1.0mmを、5.0mmに変更した以外は、実施例1と同様に、粉体塗料4が調製され、試料が作製された。
【0092】
図10の表に示すように、実施例1において、被塗物1表面における電位Vのばらつき△Vは30Vであった。実施例30において、被塗物1表面における電位Vのばらつき△Vは80Vであった。実施例31において、被塗物1表面における電位Vのばらつき△Vは50Vであった。実施例32において、被塗物1表面における電位Vのばらつき△Vは50Vであった。実施例33において、被塗物1表面における電位Vのばらつき△Vは80Vであった。
【0093】
実施例1における試料の色差Eのばらつき△Eは2.8であった。実施例30における試料の色差Eのばらつき△Eは6.9であった。実施例31における試料の色差Eのばらつき△Eは5.3であった。実施例32における試料の色差Eのばらつき△Eは5.0であった。実施例33における試料の色差Eのばらつき△Eは7.3であった。
【0094】
塗装ムラにおいて、実施例1における試料は優判定であった。実施例31及び実施例32における試料は良判定であった。実施例30及び実施例33における試料は可判定であった。
【0095】
したがって、本発明の目的である粉体塗料4の塗装における塗装ムラを改善するためには、導電ローラ2の繊維2bと被塗物1との接触長を0.5mmから2.0mmの範囲に設定することが更に好ましいことが確認できた。
【0096】
本発明に係る粉体塗料4の塗装方法によれば、絶縁性を有する被塗物1上を摺動可能に設けられた導電ローラ2に第1の極性を有するバイアス電圧を印加して被塗物1に接触させることにより、被塗物1と導電ローラ2との摩擦量のばらつきの発生を抑制できる。そのため、被塗物1における帯電量のばらつきの発生を抑制できる。
【符号の説明】
【0097】
1 被塗物
2 導電ローラ
2a 芯棒
2b 繊維
3 電源
4 粉体塗料
5 噴射ノズル
6 荷電圧印加装置
7 ガイド
8 可動部
8a 案内溝
20 ブラシ帯電器
30 コロナ帯電型塗装ガン
40 電子機器筐体
HV 荷電圧(高電圧)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性を有する被塗物を準備する工程と、
前記被塗物上を摺動可能に設けられた導電ローラに第1の極性を有するバイアス電圧を印加し前記被塗物が帯電するように前記導電ローラを前記被塗物に接触させる工程と、
帯電した前記被塗物に、第1の極性と逆極性を有する粉体塗料を静電付着させる工程と、
を含むことを特徴とする粉体塗料の塗装方法。
【請求項2】
前記導電ローラは、導電性を有する繊維を備え、前記繊維は前記被塗物と接触することを特徴とする請求項1記載の粉体塗料の塗装方法。
【請求項3】
前記繊維は、レーヨン繊維、アクリル繊維、及びナイロン繊維を含み、前記繊維は、1.0重量%から10.0重量%のカーボン濃度を有することを特徴とする請求項2に記載の粉体塗料の塗装方法。
【請求項4】
前記粉体塗料は、帯電制御剤及び針状酸化チタンを含み、前記粉体塗料における前記帯電制御剤の含有率が1重量%から10重量%であり、前記粉体塗料における前記針状酸化チタンの含有率が1重量%から10重量%であることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の粉体塗料の塗装方法。
【請求項5】
前記帯電制御剤は、カリックスアレン系化合物、又はサリチル酸系化合物を含むことを特徴とする請求項4記載の粉体塗料の塗装方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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