説明

粉体塗装装置

【課題】オーバースプレー粉の付着量が、格段に少なく、しかも付着したオーバースプレー粉の清掃が非常に簡単に行える粉体塗装装置を提供する。
【解決手段】粉体塗装ブースの内面やダクトの内面の材料として、平滑な表面を持つ非導電性樹脂材料ではなく、ザラザラの凹凸面、より具体的には、中心線平均粗さRaが2.0μm〜18.0μmの凹凸面を持つ非導電性樹脂材料を用いた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、オーバースプレー粉が付着しにくく、清掃作業が容易な粉体塗装装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
粉体塗装設備では、被塗物に付着しなかったオーバースプレー粉を回収、精選し、再利用することが一般に行われている。
したがって、オーバースプレー粉が接触する粉体塗装ブースの内面やダクトの内面に、オーバースプレー粉が付着しやすいと、回収粉の回収量が低減し、不経済であり、また、色替えの際に、清掃に時間が掛かると共に、清掃が不十分になり易く、混色が起こるという問題もある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このため、従来、粉体塗装ブースの内面やダクトの内面の材料としては、静電気を帯びたオーバースプレー粉が付着しにくいように、平滑な表面を持つ非導電性樹脂材料を用いるのが一般的である。
【0004】
しかしながら、粉体塗装ブースの内面やダクトの内面を平滑な表面の非導電性樹脂材料で形成しても、非導電性樹脂材料の表面には、相当量のオーバースプレー粉が付着するという問題があった。
【0005】
そこで、この発明は、オーバースプレー粉の付着量が、格段に少なく、しかも付着したオーバースプレー粉の清掃が非常に簡単に行える粉体塗装装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、この発明は、粉体塗装ブースの内面やダクトの内面の材料として、平滑な表面を持つ非導電性樹脂材料ではなく、ザラザラの凹凸面、より具体的には、中心線平均粗さRaが2.0μm〜18.0μmの凹凸面を持つ非導電性樹脂材料を用いたものである。
この発明において、中心線平均粗さRaとは、JIS B 0601−1982で規定される、粗さ曲線からその中心方向に測定長さLの部分を抜取り、この抜取り部分の中心線と粗さ曲線との偏差の絶対値を算術平均した値であり、次式により計算される。
【0007】
【数1】

【0008】
中心線平均粗さRaが2.0μm〜18.0μmの凹凸面を持つ非導電性樹脂材料としては、発泡条件の異なる種々の発泡樹脂パネルや、平滑な樹脂パネルの表面をショットブラストなどにより粗面処理したものを使用することができる。
【0009】
上記ザラザラの表面を持つ非導電性樹脂材料によって、粉体塗装装置の内面を形成した場合に、オーバースプレー粉の付着量が格段に少なくなる理由としては、オーバースプレー粉は静電気を帯びているので、凹凸の表面の凸部の先端に、オーバースプレー粉が付着しても、凹部内にはオーバースプレー粉が入り難いからではないかと考えられる。そして、凹部内にオーバースプレー粉が入り難い理由としては、凹部内は閉鎖空間であるため、凹部内にオーバースプレー粉が入り込む空気流が生じ難いことや、凹部の両端の角部で生じるファラデーケージ現象により、電気的に凹部内にオーバースプレー粉が入り込み難いことなどが考えられる。
次に、付着したオーバースプレー粉の清掃が非常に簡単に行える理由としては、オーバースプレー粉は上記のように凹凸の表面の凸部の先端に付着していると考えられ、清掃エアーの噴き付けや雑巾掛けなどによって、容易にオーバースプレー粉が剥離するためであると考えられる。
【発明の効果】
【0010】
上記のように、この発明によれば、オーバースプレー粉の付着量が、格段に少なく、しかも付着したオーバースプレー粉の清掃が非常に簡単に行える粉体塗装装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
静電粉体塗装装置で使用される粉体塗料の平均粒子径は、通常15μm〜45μmである。
この平均粒子径が、15μm〜45μmの4種類の粉体塗料を使用し、各種の表面粗さを有する一辺が1000mmの正方形樹脂パネルに、コロナガンにて、1Pass又は3Passの塗装を行い、樹脂パネルの表面に付着する粉体塗料の付着量を測定し、樹脂パネルの表面の凹凸状態の相違によって付着量がどのように変化するかを確認する実験を行なった。
【0012】
樹脂パネルは、ポリエステル、塩化ビニール、ポリエチレン、ポリプロピレン製で、発泡度により異なる表面粗さを有する発泡パネルと、平滑パネルの表面を粗面処理したものを使用した。
塗装条件は、次の通りであり、付着実験は5回行い、その平均値を1枚当たりの付着量(g)として示す。1Passとは、1回塗り、3Passは3回重ね塗りした場合を示す。
i )吐出量:206g/min
ii )コロナガンエアー:0.15Mpa、電圧85KV
iii)レシプロ設定は、コロナガンの先端から被塗物までの距離を300mmにして、コロナガンを800mmのストロークで、25m/minの速度で上下動させながら、被塗物を0.5m/minのコンベア速度で移動して行なった。
【0013】
【表1】

【0014】
【表2】

【0015】
【表3】

【0016】
【表4】

【0017】
【表5】

【0018】
【表6】

【0019】
【表7】

【0020】
【表8】

【0021】
【表9】

【0022】
【表10】

【0023】
【表11】

【0024】
【表12】

【0025】
【表13】

【0026】
【表14】

【0027】
【表15】

【0028】
【表16】

【0029】
上記表1〜表16に示す実験結果から、ザラザラの表面を有する、より具体的には、中心線平均粗さが2.0μm〜18μmである凹凸面を有する非導電性樹脂パネルの場合、帯電させた粉体塗料の付着量が、平滑な表面の非導電性樹脂パネルや、中心線平均粗さが20μmという大きな凹凸面を有する非導電性樹脂パネルよりも約1/2であるということが確認できた。
【0030】
次に、ザラザラの表面を有する、より具体的には、中心線平均粗さが2.0μm〜18μmである凹凸面を有する非導電性樹脂パネルの場合、平滑な表面の非導電性樹脂パネルや、中心線平均粗さが20μmという大きな凹凸面を有する非導電性樹脂パネルよりも付着した粉体塗料が、エアーブローによって簡単に除去でき、清掃後の非導電性樹脂パネルの表面の残粉が少ないということを下記実験により確認した。
清掃実験は、表9〜表16の付着実験において、3回重ね塗りにより粉体塗料を付着させた樹脂パネルと、1枚あたりに40gの粉体塗料を付着させた樹脂パネルを清掃実験パネルとして使用し、この清掃実験パネルの表面からエアーブロー装置のノズルの先端を20mm離した状態で、清掃実験パネルの下方に回収ダクトを設置し、エアーブロー装置(エアー入力:0.1Mpa)を、1.0m/minの速度で上下動させる自動清掃を行なった後の樹脂パネルに付着した粉体塗料の残粉量(g)を測定した。実験は、5回行いその平均値を示した。
【0031】
【表17】

【0032】
【表18】

【0033】
【表19】

【0034】
【表20】

【0035】
【表21】

【0036】
【表22】

【0037】
【表23】

【0038】
【表24】

【0039】
【表25】

【0040】
【表26】

【0041】
【表27】

【0042】
【表28】

【0043】
【表29】

【0044】
【表30】

【0045】
【表31】

【0046】
【表32】

【0047】
上記表17〜表32に示す清掃実験結果から、ザラザラの表面を有する、より具体的には、中心線平均粗さが2.0μm〜18μmである凹凸面を有する非導電性樹脂パネルの場合、エアーブローによって樹脂パネルの表面に残る粉体塗料の量が、平滑な表面の非導電性樹脂パネルや、中心線平均粗さが20μmという大きな凹凸面を有する非導電性樹脂パネルよりも格段に少なく、エアーブローによる清掃効果が良好であることが確認できた。
【0048】
次に、この発明を回収ダクトの内面に適用した場合の効果を確認するために、直径450φ、厚さ0.8t、長さ5000mmの鉄管の内面に、種々の表面粗さの厚さ3tの非導電性樹脂パネルを貼り合わせたダクトを形成し、このダクトの一端からコロナガンで、吐出量:400g/min、連続吐出:20分、風速:16m/secの条件で、平均粒径35μmの粉体塗料を通過させた後に、ダクト内に付着する粉体塗料の量を測定する実験を行なった。その結果を表33、表34に示す。
【0049】
【表33】

【0050】
【表34】

【0051】
上記表33〜表34に示す付着実験の結果、ザラザラの表面を有する、より具体的には、中心線平均粗さが2.0μm〜18μmである凹凸面を有する非導電性樹脂パネルを内面に貼り合わせたダクトの場合、内面に付着する粉体塗料の量は、平滑な表面の非導電性樹脂パネルや、中心線平均粗さが20μmという大きな凹凸面を有する非導電性樹脂パネルを内面に貼り合わせたダクトよりも格段に少ないことが確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オーバースプレー粉と接触する非導電性樹脂材料からなる壁面が、中心線平均粗さRaが2.0μm〜18.0μmの凹凸面である粉体塗装装置。
【請求項2】
上記非導電性樹脂材料が、発泡材料である請求項1記載の粉体塗装装置。

【公開番号】特開2006−212576(P2006−212576A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−29455(P2005−29455)
【出願日】平成17年2月4日(2005.2.4)
【出願人】(000117009)旭サナック株式会社 (194)
【Fターム(参考)】