説明

粉体流量測定装置

【課題】輸送管内を流れる粉体の流量を精度よく、非接触方式で測定できる装置を提供する。
【解決手段】輸送管と同一の内径を有する誘電体製筒体を一対、所定の間隔で挿入するとともに、各筒体の外側にマイクロ波の送受信を行うためのアンテナを配置し、一方のアンテナにマイクロ波の送受信を行うマイクロ波送受信手段を接続し、他方のアンテナにマイクロ波受信手段を接続する。そして、マイクロ波送受信手段からのマイクロ波をマイクロ波受信手段で受信し、予め求めておいた粉体密度と受信強度との関係から粉体の密度を求め、マイクロ波送受信手段から送信され、粉体で反射されたマイクロ波をマイクロ波送受信手段で受信し、送信されたマイクロ波と受信されたマイクロ波との周波数の差から粉体の速度を求め、密度と速度を乗じて粉体の流量を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸送管内を流れる粉体の流量を測定するための装置に関し、例えば製鉄所の高炉微粉炭吹き込み装置に使用される粉体流量測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉設備では、高炉の補助燃料として羽口から微粉炭を吹き込み、鉄鉱石の還元用に使用している。羽口は通常数十程度あり、高炉の安定運転のために、各羽口に接続する微粉炭供給パイプ内を流れる微粉炭の流量の把握と、各パイプへの分配精度の高性能化が求められている。
【0003】
輸送管内を流れる粉体の流量を測定する技術として、輸送管内に一対の測定用電極を対向配置し、この測定用電極に電圧を印加して電極間に流れる電流の変化を求めることが知られている(例えば、特許文献1参照)。しかし、輸送管内を流れる粉体が測定用電極に衝突するため、粉体が大径になるほど、また流速が高まるほど測定用電極が損傷しやすくなる。
【0004】
また、静電容量式の流量計も知られている(例えば、特許文献2参照)。この静電容量式流量計は、一対の電極の間に粉体を流通させ、電極間の静電容量が粉体の密度に応じて変化することを利用する。そのため、電極に粉体が衝突することがない非接触方式であり、特許文献1で懸念されるような電極が破損する恐れがない。しかし、粉体の密度変化に伴う静電容量の変化量が少なく、速度検出が不安定で精度面で十分とはいえない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−278180号公報
【特許文献2】特開昭61−153526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の状況に鑑みてなされたものであり、輸送管内を流れる粉体の流量を精度よく、非接触方式で測定できる装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、下記の粉体流量測定装置を提供する。
(1)輸送管内を流れる粉体の流量を測定するための装置であって、
輸送管と同一の内径を有する誘電体製筒体を一対、該輸送管に所定の間隔で挿入するとともに、各筒体の外側にマイクロ波の送受信を行うためのアンテナを配置し、一方のアンテナにマイクロ波の送受信を行うマイクロ波送受信手段を接続し、他方のアンテナにマイクロ波受信手段を接続してなり、かつ、
マイクロ波送受信手段から送信したマイクロ波を、輸送管内を伝搬させてマイクロ波受信手段で受信し、予め求めておいた粉体密度と受信強度との関係から、輸送管を流れる粉体の密度を求め、
マイクロ波送受信手段から送信され、輸送管を流れる粉体で反射されたマイクロ波を該マイクロ波送受信手段で受信し、送信されたマイクロ波と受信されたマイクロ波との周波数の差から粉体の速度を求め、
密度と速度を乗じて粉体の流量を算出することを特徴とする粉体流量測定装置。
(2)検出した粉体の速度信号の中から所定の速度以下の信号を除去することを特徴とする上記(1)記載の粉体流量測定装置。
(3)粉体の密度を、キャリアガスの湿度で補正することを特徴とする上記(1)または(2)記載の粉体流量測定装置。
(4)粉体の密度と速度を連続して測定して出力するか、あるいは一定時間毎に測定し、平均化して出力することを特徴とする上記(1)〜(3)の何れか1項に記載の粉体流量測定装置。
(5)高炉微粉炭吹き込み装置の微粉炭流量測定装置に使用することを特徴とする上記(1)〜(4)の何れか1項に記載の粉体流量測定装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明の粉体流速測定装置によれば、輸送管内を流れる粉体の流量を非接触で、精度良く測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る粉体流量測定装置の構成を示す概略図である。
【図2】粉体密度と受信電力との関係を求めるための試験方法を説明するための図である。
【図3】図2に示す試験方法で測定した微粉炭の粉体密度と受信電力との関係を示すグラフである。
【図4】微粉炭の落下速度を測定した結果を示すグラフである。
【図5】本発明に係る粉体流量測定装置の原理を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に関して図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明の粉体流量測定装置の構成を示す概略図である。粉体流量測定装置1では、輸送管100と同一内径の誘電体、例えばセラミックス製の円筒10,11が、輸送管100の適所に所定の間隔で挿入されており、各円筒10,11の外側にマイクロ波の送受信を行うためのアンテナ20,21が配置される。また、粉体の流れる方向を矢印Fで示すと、下流側のアンテナ20にマイクロ波の送受信を行うマイクロ波送受信手段30が接続され、上流側のアンテナ21にマイクロ波受信手段31が接続される。アンテナ20とマイクロ波送受信手段30とは導波管25で接続され、アンテナ21とマイクロ波受信手段31とは導波管26で接続される。尚、円筒10とアンテナ20、円筒11とアンテナ21との隙間は、リング状のカバー27,28で閉塞してもよい。
【0012】
また、マイクロ波送受信手段30及びマイクロ波受信手段31は、マイクロ波送受信手段30の制御回路、マイクロ波受信手段31の制御回路、受信信号の処理回路等で構成される信号処理回路50とともにケース40に収容されている。
【0013】
また、円筒10,11、アンテナ20,21及び導波管25,26は、取付座15,16で包囲され、取付座15,16が輸送管100に固定される。
【0014】
尚、輸送管100は、その両端に設けたフランジ101を介して他の輸送管や、ブロワー等の粉体輸送源等(何れも図示せす)に接続される。
【0015】
上記の如く構成される粉体流量測定装置1では、マイクロ波送受信手段30で発信されたマイクロ波を、アンテナ20から送信して輸送管100の内部を伝搬させる。この送信マイクロ波M1は、符号M2、M3で示されるように、アンテナ20の両側に広がるように伝搬する。円筒10の両側には伝搬抵抗がないため、マイクロ波M1はほぼ均等に両側に分岐して管内を伝搬する。そして、マイクロ波受信手段31が配置されている側に伝搬したマイクロ波M3は、符号M4で示されるように、アンテナ21を通じてマイクロ波受信手段31で受信される。
【0016】
尚、図示は省略するが、セラミックス製の円筒10,11でなく、輸送管100の内壁全体をセラミックス層にすると、マイクロ波はセラミックス層を伝搬してマイクロ波受信手段31へと向かうため、マイクロ波受信手段31では常時、セラミックス層を伝搬するマイクロ波を受信するようになる。セラミックス層を伝搬するマイクロ波は、粉体量に無関係であり、しかもマイクロ波M3やマイクロ波M4と干渉するため、マイクロ波受信手段31での受信強度が大きく増減するようになり、安定した検出ができなくなる。
【0017】
このとき、マイクロ波受信手段31における受信電力と、管内の粉体密度との関係を予め求めておき、この関係に実際の受信電力を当てはめて粉体密度を算出する。粉体密度と受信電力との関係は、図2に示すようにして求めることができる。
【0018】
セラミックス製の2つの円筒200,200を所定間隔で鉄管210に挿入してなる管体220に、一方の円筒200にマイクロ波送信手段250をアンテナ255を介して取り付け、他方の円筒200にマイクロ波受信手段260をアンテナ265を介して取り付け、床面上に、管体220ごとマイクロ波送信手段250が床側になるように鉛直に立てる。そして、粉体280を管体220の上面開口220aから投入して管内に堆積させ、所定の堆積高さ、例えば10cm毎にマイクロ波Mの送受信を行い、粉体280の堆積高さ280aと、マイクロ波受信手段260の受信電力とを測定する。
【0019】
粉体280の密度は、マイクロ波送信手段250に接続するアンテナ255の中心と、マイクロ波受信手段260に接続するアンテナ265の中心との間の管内体積と、アンテナ255の中心よりも堆積している粉体280の重量とから求められ、粉体280の堆積高さ280aがアンテナ255の中心よりも低い場合には密度0となり、アンテナ255の中心よりも堆積高さ280aが高くなるのに比例して密度は大きくなり、堆積高さ280aがアンテナ265の中心に達すると密度が1になる。また、マイクロ波は粉体により減衰するため、アンテナ255の中心とアンテナ265の中心との間に粉体280が存在しないとき(密度0)に受信電力が最大となり、粉体280の堆積量が増すのに比例して受信電力も少なくなる。
【0020】
粉体280は、実際に測定する粉体と同じものを用いる。例えば、製鉄所の高炉微粉炭吹き込み装置で使用する場合は、粉体280として吹き込み用の微粉炭を用いて粉体密度と受信電力との関係を求めておく。
【0021】
図3は、粉体280として微粉炭を用い、その堆積量を徐々に増したときの受信電力を測定した結果を示している。堆積量の増加、即ち配管中の微粉炭の密度が大きくなるのに伴って受信電力が低減しているのがわかる。
【0022】
尚、図2に示す装置では、マイクロ波Mは床側にも伝搬し、マイクロ波受信手段260は床面で反射されたマイクロ波も同時に検出する。そのため、図示されるような折れ線グラフになっているが、マイクロ波送信手段250を床面から十分に離れた位置に設置することにより、床面で反射されたマイクロ波による受信電力が弱まり直線に近くなる。また、実際上も、図1に示す装置においてマイクロ波受信手段31の反対側に向かうマイクロ波M2が反射して受信されることは、無視できる範囲である。
【0023】
また、マイクロ波の伝搬は、空気中の水分量により影響を受ける。そのため、測定精度を高めるには、粉体のキャリアガスである空気の湿度により、上記の粉体密度と受信電力との関係を補正することが好ましい。補正量を求めるには、図2に示した装置の全体を恒湿容器に収容し、湿度を変えながら粉体280の堆積量と受信電力とを測定すればよい。
【0024】
再び図1を参照して説明すると、アンテナ20から送信され、マイクロ波受信手段31が配置された側に伝搬するマイクロ波M3は、その一部が管内を流れる粉体70で反射され、その反射波M5がアンテナ20で捕獲されてマイクロ波送受信手段30で受信される。従って、このときのマイクロ波M3の周波数(=マイクロ波M1の周波数)と、反射波M5の周波数との差(ドップラー周波数)から、ドップラーの原理により粉体70の速度を求めることができる。ドップラー周波数が大きいほど、粉体70はより高速で管内を流れていることを示す。
【0025】
図4は、図2に示す装置を用い、管体220の上面開口220aから微粉炭を連続して自然落下させたときの受信強度と、ドップラー周波数とを測定した結果を示すグラフである。尚、測定には周波数24GHzのマイクロ波を用いており、ドップラー周波数447.2Hzが10km/hに相当する。図示されるように、300Hz付近に大きなピークAが現れており、微粉炭の平均落下速度が約6.7km/hであることがわかる。
【0026】
また、図4には、ピークAよりも低周波数側(低速度側)に比較的大きなノイズが多数現れているが、これらはマイクロ波送信手段250のアンテナ255と対面する管体内壁による反射波である。これら低速側のノイズ成分は、ハイパスフィルターで除去することができる。
【0027】
本発明の粉体流量測定装置1では、図5にその測定原理を示すが、輸送管100のマイクロ波送受信手段30とマイクロ波受信手段31との間の空間を流れる粉体70の密度を、マイクロ波M4の受信強度を測定し、予め求めておいた図3に示すような粉体密度と受信強度との関係から求め、更にキャリアガスの湿度で補正する。それと同時に、マイクロ波送受信手段30でマイクロ波M5を受信して、そのピーク信号に対応するドップラー信号から粉体70の平均速度を求める。そして、密度と平均速度とを乗じることにより、輸送管100のマイクロ波送受信手段30とマイクロ波受信手段31との間の空間を流れる粉体70の流量が得られる。
【0028】
そして、得られた流量を、輸送管全体を流れる粉体の平均流量と見做し、例えば高炉微粉炭吹き込み装置に送り、微粉炭の吹き込み量を制御する。
【0029】
尚、上記の密度及び平均速度の測定は、連続して行ってもよく、所定時間毎に行ってその平均を求めてもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 粉体流量測定装置
10,11 セラミックス製円筒
20,21 アンテナ
25,26 導波管
30 マイクロ波送受信手段
31 マイクロ波受信手段
50 信号処理回路
70 粉体
100 輸送管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
輸送管内を流れる粉体の流量を測定するための装置であって、
輸送管と同一の内径を有する誘電体製筒体を一対、該輸送管に所定の間隔で挿入するとともに、各筒体の外側にマイクロ波の送受信を行うためのアンテナを配置し、一方のアンテナにマイクロ波の送受信を行うマイクロ波送受信手段を接続し、他方のアンテナにマイクロ波受信手段を接続してなり、かつ、
マイクロ波送受信手段から送信したマイクロ波を、輸送管内を伝搬させてマイクロ波受信手段で受信し、予め求めておいた粉体密度と受信強度との関係から、輸送管を流れる粉体の密度を求め、
マイクロ波送受信手段から送信され、輸送管を流れる粉体で反射されたマイクロ波を該マイクロ波送受信手段で受信し、送信されたマイクロ波と受信されたマイクロ波との周波数の差から粉体の速度を求め、
密度と速度を乗じて粉体の流量を算出することを特徴とする粉体流量測定装置。
【請求項2】
検出した粉体の速度信号の中から所定の速度以下の信号を除去することを特徴とする請求項1記載の粉体流量測定装置。
【請求項3】
粉体の密度を、キャリアガスの湿度で補正することを特徴とする請求項1または2記載の粉体流量測定装置。
【請求項4】
粉体の密度と速度を連続して測定して出力するか、あるいは一定時間毎に測定し、平均化して出力することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の粉体流量測定装置。
【請求項5】
高炉微粉炭吹き込み装置の微粉炭流量測定装置に使用することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の粉体流量測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−13434(P2012−13434A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147559(P2010−147559)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(593207271)株式会社ワイヤーデバイス (15)
【Fターム(参考)】