説明

粉体測定装置用衝撃付与装置

【課題】崩潰角測定に必要な所定回数の衝撃を、ばらつきなく一定の強さで生じさせることが可能な粉体測定装置用衝撃付与装置を提供する。
【解決手段】粉体物性測定装置1に設けられる衝撃付与装置50は、安息角測定テーブル32やスパチュラ角測定ブレード39のような粉体堆積層支持装置が連結されるベース51と、ベース51に立設されたガイドポール52と、ガイドポール52に上下自在に支持された衝撃錘53と、垂直面内で回動し、衝撃錘53を持ち上げた後、衝撃錘53をガイドポール52の根元に落下させるリフトバー55と、リフトバー55に垂直面内での回動を与えるステッピングモータ54と、ステッピングモータ54がリフトバー55に与える回動の角度を制御する制御装置60と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粉体測定装置用衝撃付与装置に関する。
【背景技術】
【0002】
粉体の物性値は、安息角、崩潰角、スパチュラ角、ゆるめ・固めかさ密度、圧縮度、凝集度、分散度、差角など、様々なパラメータをもって測定される。これらの物性値を測定する装置については、特許文献1、2に例を見ることができる。
【0003】
特許文献1記載の装置は、安息角、崩潰角、ゆるめ・固めかさ密度、圧縮度、スパチュラ角、凝集度、分散度、差角等の粉体の物性の内少なくとも1種を測定するための測定手段と、測定手段での測定に必要な制御と演算処理を行う制御手段を備える。測定手段は、堆積した試料粉体の傾斜面と平行になるよう角度測定アームをパルスモータで回転駆動する角度測定治具を含む。制御手段は、パルスモータを駆動パルスで駆動制御し、駆動パルス数のカウントにより角度測定アームの角度算出を行う。
【0004】
特許文献2記載の装置は、ベースの上にカメラを備える。安息角測定時にはカメラの前にバックライトパネルを背にする形で安息角測定テーブルを置く。スパチュラ角測定時にはカメラの前にバックライトパネルを背にする形でスパチュラを置く。カメラで撮影を行うと、安息角測定テーブル上の粉体堆積層のシルエット画像、又はスパチュラ上の粉体堆積層のシルエット画像を得ることができる。この画像をコンピュータで解析し、粉体堆積層の傾斜角度を求める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2798827号公報
【特許文献2】特許第4155942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
崩潰角やスパチュラ角を測定する場合には、安息角測定テーブルやスパチュラ角測定ブレードに衝撃を与えて粉体堆積層を崩潰させる必要がある。特許文献1には崩潰角測定
又はスパチュラ角測定時に衝撃付与具(ショッカー)で衝撃を与える構成が開示されている。
【0007】
特許文献1記載の衝撃付与具は、錘を案内棒に沿って一定の高さまで持ち上げた後落下させ、衝撃を発生させる。崩潰角やスパチュラ角の測定には、衝撃を所定回数与える必要があるが、従来は錘を人の手でつまんで持ち上げていたため、持ち上げる高さにばらつきが生じることを避けられなかった。また、持ち上げる途中で手が震えたりすると、錘と案内棒とが接触し、その時の振動で崩潰が始まることもあり、崩潰角測定又はスパチュラ角測定に正確性を期すことが困難であった。
【0008】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、崩潰角測定又はスパチュラ角測定に必要な衝撃を、ばらつきなく一定の強さで生じさせることが可能な粉体測定装置用衝撃付与装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の粉体測定装置用衝撃付与装置は、粉体堆積層支持装置が連結されるベースに立設されたガイドポールと、前記ガイドポールに上下自在に支持された衝撃錘と、垂直面内で回動し、前記衝撃錘を持ち上げた後、当該衝撃錘を前記ガイドポールの根元に落下させるリフトバーと、前記リフトバーに垂直面内での回動を与えるステッピングモータと、前記ステッピングモータが前記リフトバーに与える回動の角度を制御する制御装置と、を備える。
【0010】
本発明の粉体測定装置用衝撃付与装置において、前記リフトバーの先端には、前記衝撃錘を持ち上げるローラと、前記ローラが前記衝撃錘に接触するときの衝撃を緩和するバンパーが装着されている。
【0011】
本発明の粉体測定装置用衝撃付与装置において、前記バンパーは、前記ローラと並列に、且つ当該ローラよりも前記衝撃錘に向かって突き出すように前記リフトバーに装着されたスプリングにより構成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、モータにより回動せしめられるリフトバーで衝撃錘を持ち上げるものであるから、手で持ち上げる場合に比べてふらふらすることなく、安定した持ち上げを達成することができる。また、モータがステッピングモータであることから、リフトバーに与える回動の角度を比較的自由に設定することができる。このため、試料の物性や測定の目的に合わせて衝撃錘の持ち上げ高さを変更するのが容易である。衝撃付与回数が複数回にわたる場合であっても、毎回ばらつきのない高さにまで衝撃錘を持ち上げて、均一な強さの衝撃を発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】粉体物性測定装置の概略正面図である。
【図2】粉体物性測定装置の概略側面図である。
【図3】安息角測定について説明する概略断面図である。
【図4】スパチュラ角測定について説明する概略断面図である。
【図5】衝撃付与機構の概略側面図である。
【図6】衝撃錘の持ち上げ動作を説明する第1の説明図である。
【図7】衝撃錘の持ち上げ動作を説明する第2の説明図である。
【図8】衝撃錘の持ち上げ動作を説明する第3の説明図である。
【図9】粉体物性測定装置のブロック構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る衝撃付与装置は、粉体堆積層の安息角、崩潰角、差角、及びスパチュラ角
の測定を可能とする粉体物性測定装置1の構成要素として実現されている。
【0015】
粉体物性測定装置1の外観を構成する二大要素は、本体2と、その前部を覆うカバー3である。本体2は図示しない架台構造の外側を板金製の筐体4で囲んだものであり、高さ調整可能な複数の支持脚5により支持面の上に支持される。カバー3は透明な合成樹脂により主要部が形成されており、左右一対のアーム6で本体2の左右両側面に取り付けられる。アーム6の先端は本体2に連結する支点部7となり、カバー3は支点部7を中心として垂直面内で回動する。
【0016】
カバー3を下ろすと図2の実線状態となる。この時カバー3で囲い込まれる空間が図3に示す測定室10となる。前述の通りカバー3は主要部が透明であるため、カバー3を下ろした状態でも測定室10の内部を見通すことができ、作業者は試料の状況等を目視で確認しながら、粉塵の影響を受けることなく測定作業を行うことができる。
【0017】
カバー3の正面には手掛け部3aが形成されており、そこに手を掛けて、カバー3を図2の仮想線の位置まで引き上げることができる。図2の仮想線の位置まで引き上げたときは、カバー3は手を離してもその位置に留まっている。このように測定室10を開放状態にした上で、作業者は測定済みの試料や測定に供した用具の片付け、新たな測定作業のセッティング、保守点検作業などを行う。測定室10を開放状態にしておく必要がなくなったときはカバー3を下ろす。支点部7でカバー3を支える軸にはダンパーが組み合わせられており、下ろす途中で手を離せばカバー3はゆっくりと降下し、衝撃を与えることなく静かに閉じる。
【0018】
粉体物性測定装置1には、試料粉体を振動篩にかける振動装置が設けられている。振動装置の本体部分は筐体4内に存在し、その本体部分が備える篩取付枠20の一部分のみが、図3に示す通り測定室10に突き出している。篩取付枠20には、図9に示す電磁石21により上下方向の振動が与えられる。
【0019】
図3には安息角測定用のセッティングが示されている。篩30には篩押さえ41を重ね、篩取付枠20の下面には安息角測定用漏斗31を取り付け、これらを締結具43で篩取付枠20に固定している。安息角測定用漏斗31の下方にはブラケット33により支持された安息角測定テーブル32が配置されている。安息角測定テーブル32の下にはそこからこぼれた試料を受けるバット34が配置されている。バット34は筐体4の内部から測定室10に突き出す垂直な支持軸35により支持されている。支持軸35は図9に示す支持軸昇降モータ36により昇降せしめられる。支持軸昇降モータ36はモータドライバ37で駆動される。
【0020】
図4にはスパチュラ角測定用のセッティングが示されている。図3の安息角測定用セッティングで安息角測定用漏斗31であったものがスパチュラ角測定用シュート38に置き換えられ、安息角測定テーブル32とそれを支えるブラケット33の組み合わせがスパチュラ角測定ブレード39とそれを支えるブラケット40の組み合わせに置き換えられている。バット34上には、スパチュラ角測定ブレード39を囲む囲枠42が設置されている。なお、スパチュラ角測定に際して試料粉体を供給する場合、スパチュラ角測定ブレード39を囲枠42内にセットした後、試料粉体を振動篩にかけないで直接手でスパチュラ角測定ブレード39上に盛るようにしてもよい。
【0021】
粉体堆積層支持装置、すなわち安息角測定テーブル32とスパチュラ角測定ブレード39は、ブラケット33または40により、衝撃付与装置50のベース51に連結される。
【0022】
衝撃付与装置50は、筐体4の内部に水平に配置されたベース51と、ベース51から垂直に立ち上がるガイドポール52を有する。衝撃錘53を持ち上げてガイドポール52の根元に落下させることにより、ベース51に振動が生じ、その振動がブラケット33またはブラケット40を介して安息角測定テーブル32またはスパチュラ角測定ブレード39に伝わる仕組みである。
【0023】
図5に示すように、衝撃錘53を持ち上げるのはステッピングモータ54によって回動されるリフトバー55である。ステッピングモータ54は水平方向に突き出すモータ軸54aを備え、モータ軸54aには先端にローラ56を備えるリフトバー55が直結されている。ローラ56は衝撃錘53の下面に当たる。モータ軸54aが回転するとリフトバー55は垂直面内で回動し、その回動角に応じて衝撃錘53が持ち上がる。ローラ56が回転しながら衝撃錘53が持ち上げられるため、ローラ56と衝撃錘53との間に生ずる抵抗が小さくなり、衝撃錘53をスムーズに持ち上げることができる。
【0024】
ステッピングモータ54は図9に示すモータドライバ57で駆動される。モータドライバ57に対し制御装置60が制御信号を送ると、制御信号に応じた駆動パルスがモータドライバ57から出力され、モータ軸54aは駆動パルス数に応じた角度だけ回転する。すなわち、ステッピングモータ54がリフトバー55に与える回動の角度は、制御装置60によって制御される。
【0025】
制御装置60は、パーソナルコンピュータ61と、パーソナルコンピュータ61より指令を受けて各構成要素を制御するメイン制御部62を含む。制御装置60には、図9に示す通り、電磁石21、支持軸昇降モータ36とモータドライバ37、ステッピングモータ54とモータドライバ57といった既出の構成要素の他に、表示装置70が接続される。表示装置70は外付けのモニター装置などにより構成され、測定データや計算結果などの表示を行う。
【0026】
安息角は次のようにして測定する。図3のセッティングにおいて、篩押さえ41及び篩30に試料粉体を投入し、篩取付枠20を振動させると、篩30を通過した試料粉体が安息角測定用漏斗31から落下し、安息角測定テーブル32上に円錐形に堆積する。そこから、例えば特許文献2に開示された計算手法で、安息角を求める。
【0027】
安息角測定後、衝撃付与装置50のリフトバー55で衝撃錘53を持ち上げる。衝撃錘53を所定の高さまで持ち上げ、その後リフトバー55を衝撃錘53の落下速度よりも速く降下させることにより、衝撃錘53はガイドポール52の根元に落下する。衝撃錘53が落下すれば衝撃が発生する。所定回数(3回)衝撃を発生させて、安息角をなしていた粉体堆積層を崩潰させる。この状態で崩潰角を測定し、その後差角を算出する。ここで、差角とは、安息角から崩潰角を引いた角度のことで、その大きさから粉体の噴流性(フラッシング性)を推測することができる。
【0028】
スパチュラ角は次のようにして測定する。図4のセッティングにおいて、バット34をブラケット40にほぼ密着する高さまで持ち上げる。その状態で篩押さえ41及び篩30に試料粉体を投入し、篩取付枠20を振動させる。篩30を通過した試料粉体はスパチュラ角測定用シュート38から落下し、スパチュラ角測定ブレード39の上に積もる。スパチュラ角測定ブレード39がすっかり試料粉体に埋もれたところでバット34と囲枠42を降下させると、スパチュラ角測定ブレード39の上には連続した山形状の粉体堆積層が残る。そこから、例えば特許文献2に開示された計算手法で、粉体堆積層の傾斜角を求める。
【0029】
その後、衝撃付与装置50のリフトバー55で衝撃錘53を持ち上げる。衝撃錘53を所定の高さまで持ち上げ、その後リフトバー55を衝撃錘53の落下速度よりも速く降下させることにより、衝撃錘53はガイドポール52の根元に落下する。衝撃錘53が落下すれば衝撃が発生する。所定回数(1回)衝撃を発生させて、粉体堆積層を崩潰させる。この状態で崩潰後の傾斜角を測定する。そして、崩潰前と崩潰後の傾斜角の平均値を算出する。この値がスパチュラ角である。
【0030】
衝撃錘53を持ち上げるのはステッピングモータ54によって回転せしめられるリフトバー55であるから、作業者が指で持ち上げるのと異なり、持ち上げ高さを正確に設定でき、衝撃の強さを一定にできる。また、衝撃錘53がガイドポール52に引っ掛かりながらぎこちなく上昇するという、手で持ち上げる場合に生じがちな現象が生じにくく、スムーズに衝撃錘53を持ち上げることができる。なお、衝撃錘53をさらにスムーズに持ち上げることができるように、衝撃錘53の中心に無給油軸受を取り付け、ガイドポール52との間の抵抗を小さくするようにしてもよい。
【0031】
ステッピングモータ64は、リフトバー55に与える回動の角度を比較的自由に設定することができる。このため、試料の物性や測定の目的に合わせて衝撃錘53の持ち上げ高さを変更するのが容易であり、衝撃付与装置50の使い勝手が向上する。
【0032】
衝撃を発生させるときは、ベース51の上に載置されている衝撃錘53を、衝撃が生じないように持ち上げねばならない。衝撃錘53にローラ56が衝撃を伴う形で当たったりすると、その時点で崩潰が生じかねないからである。そのため、リフトバー55の先端にはローラ56が衝撃錘53に接触するときの衝撃を緩和するバンパー58が装着されている。
【0033】
図6にバンパー58が示されている。バンパー58を構成するのは1本の線材からなるスプリング59である。スプリング59は、ローラ56と並列に、且つローラ56よりも衝撃錘53に向かって突き出すようにリフトバー55に装着されている。
【0034】
図6の状態では、ローラ56もバンパー58も衝撃錘53から離れている。衝撃錘53を持ち上げるため、リフトバー55が回動を開始すると、まず図7に示すようにバンパー58が衝撃錘53の下面に当たり、次いで図8に示すようにローラ56が衝撃錘53に当たる。ローラ56が衝撃錘53に当たるときの衝撃はバンパー58で緩和され、ソフトなものになる。このため、ローラ56が衝撃錘53に当たる時点で崩潰が生じるといったことはない。
【0035】
上記のような効果を得るためには、バンパー58を構成するスプリング59の弾発力と撓み代とのバランスが重要である。すなわち、スプリング59が衝撃錘53に接触する際には、軽くしなるように撓みつつ衝撃錘53への圧力を増して行き、その圧力で衝撃錘53が持ち上がる寸前に、ローラ56が衝撃錘53に当たるのが理想的である。しかしながら、スプリング59の弾発力をそこまで精密に調整できなくても、リフトバー55の回動速度との兼ね合いで、スプリング59が衝撃錘53に接触してからローラ56が衝撃錘に当たるまでにライムラグが生じるだけでも、十分な衝撃緩和効果のあることが実証できている。
【0036】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は粉体測定装置用衝撃付与装置に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 粉体物性測定装置
2 本体
3 カバー
10 測定室
20 篩取付枠
30 篩
32 安息角測定テーブル
39 スパチュラ角測定ブレード
42 囲枠
43 締結具
50 衝撃付与装置
51 ベース
52 ガイドポール
53 衝撃錘
54 ステッピングモータ
55 リフトバー
56 ローラ
57 モータドライバ
58 バンパー
59 スプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体堆積層支持装置が連結されるベースに立設されたガイドポールと、
前記ガイドポールに上下自在に支持された衝撃錘と、
垂直面内で回動し、前記衝撃錘を持ち上げた後、当該衝撃錘を前記ガイドポールの根元に落下させるリフトバーと、
前記リフトバーに垂直面内での回動を与えるステッピングモータと、
前記ステッピングモータが前記リフトバーに与える回動の角度を制御する制御装置と、
を備えることを特徴とする粉体測定装置用衝撃付与装置。
【請求項2】
前記リフトバーの先端には、前記衝撃錘を持ち上げるローラと、前記ローラが前記衝撃錘に接触するときの衝撃を緩和するバンパーが装着されていることを特徴とする請求項1に記載の粉体測定装置用衝撃付与装置。
【請求項3】
前記バンパーは、前記ローラと並列に、且つ当該ローラよりも前記衝撃錘に向かって突き出すように前記リフトバーに装着されたスプリングにより構成されることを特徴とする請求項2に記載の粉体測定装置用衝撃付与装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−225836(P2012−225836A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95141(P2011−95141)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(000113355)ホソカワミクロン株式会社 (43)