説明

粉体輸送配管の詰り防止構造

【課題】配管系のエルボ部分での粉体の堆積による配管の詰りを防止でき、安定した粉体供給ができる粉体輸送配管の防止構造を提供する。
【解決手段】気体で粉体を輸送する配管系のエルボ部分3bに、入口部21aから下流側に行くにつれて通路断面積が拡がる上流部21と、該上流部側から出口部22aに行くにつれて通路断面積が狭くなる下流部22とからなる胃袋形状の中継ボックス2を設ける。上流部と下流部とは、100〜120度の角度θをなすように連結されている。また、上流部の入口部と下流部の出口部と配管3との接続は、接続部の内面に段差が生じないように接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体を気体によって輸送する配管構造において、エルボ部分での配管の詰りを防止する粉体輸送配管の詰り防止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に配管内の粉体の輸送には、空気又はその他の気体によって粉体を輸送することが行われている。例えば、熱交換器のろう付けに用いられるアルミろう付用粉体フラックス(主成分はフッ化アルミ)を、下方の補給タンクから上方の供給タンクに供給する場合には、図2に示されるような粉体ポンプ1を使用して空気によって輸送している。このような下方から上方への輸送配管3系では、必然的にエルボ部分(L字状曲管部)3bを含むことになる。このような配管構造において、粉体ポンプ1に供給している空気供給が停止し、フラックス輸送が停止したとき、エルボ部分3bよりも上方の配管3内にある供給中のフラックスが落下して、エルボ部分3bに堆積して、図2に示すように配管内を詰らせ、次に空気供給を開始しても、堆積したフラックスの抵抗が大きく、フラックスの供給ができなくなるという問題があった。
【0003】
このような問題の対策として、堆積したフラックスを図2に示す状態から吹き上げるために供給する空気圧を上げる方法があるが、この方法では、乾燥空気(ドライエア)を使っていること及びその使用量が多いため空気圧を上げることができないという問題がある。また供給される側の供給タンク内の内圧が上昇するために、フラックスの固化が予想される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、現状の設備・機器の変更を伴なうことなく、そのままの状態で、エルボ部分での粉体の堆積による配管の詰りを防止でき、安定した粉体供給ができる粉体輸送配管の詰り防止構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、特許請求の範囲の各請求項に記載の粉体輸送配管の詰り防止構造を提供する。
請求項1に記載の粉体輸送配管の詰り防止構造は、気体で粉体を輸送する配管系のエルボ部分3bに、入口部21aから下流側に行くにつれて通路断面積が拡がる上流部21と、この上流部側から出口部22aに行くにつれて通路断面積が狭くなる下流部22とからなる胃袋形状の中継ボックス2を設けるようにしたものであり、これにより、粉体の供給停止時における落下粉体の堆積による配管の閉鎖(詰り)を防止でき、安定した粉体供給を行うことができる。
【0006】
請求項2の該詰り防止構造は、中継ボックス2の胃袋状の容積をエルボ部分での粉体の堆積量Qに基づいて決めたものであり、これは、粉体供給停止時における落下粉体の堆積量Qより中継ボックス2の内容積を多少大きくすることによって、粉体堆積時においても、中継ボックス内部に僅かな気体の通り道gが確保でき、詰ることなく粉体の安定した供給が可能となる。
請求項3の該詰り防止構造は、中継ボックスの上流部21と下流部22とのなす角度θを100〜120度に規定したものである。エルボ部分の角度θを100度より小さい角度にすると流路抵抗が大きくなり、圧力損失が大きく有効な粉体輸送を行うことができない。また、角度θを120度より大きくすると、移送タンク間の間隔が大きくなり、設備の設置面積の増加をもたらす。
【0007】
請求項7の該詰り防止構造は、中継ボックス2の入口部21a及び出口部22aと配管3との接続を締め込み式とし、接続部の内面に段差が形成されないように入口部21aと出口部22aに受け部21bを設けたものであり、これにより、内壁面で気体の流れが乱されることなく、スムーズに粉体を搬送することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態の粉体輸送配管の詰り防止構造について説明する。なお、本発明においては、粉体として熱交換器のろう付けに使用されるアルミろう付け用粉体フラックスを例として説明するが、本発明は種々の粉体にも利用可能である。図1は、本発明の実施の形態の粉体輸送配管の詰り防止構造とこれに接続される粉体ポンプとを示す断面図である。フラックス(粉体)は、低位置にある補給タンク(図示せず)から高位置にある供給タンク(図示せず)に輸送配管を通って送られる。そのため、輸送配管には必然的にエルボ部分(屈曲部)が存在する。本発明は、この輸送配管のエルボ部分にフラックスの詰り防止構造として中継ボックス2を設けたものである。
【0009】
符号1は、粉体ポンプである。粉体ポンプ1として、例えばべンチュリーポンプが使用される。粉体ポンプ1には、気体として0.4Mpの乾燥空気(ドライエア)が供給されており、ベンリュリ効果によって補給タンクより送られるフラックスがこの気体内に取り込まれ、気体と一緒になって粉体ポンプ1より排出される。粉体ポンプ1から排出された、フラックスが混入した気体は輸送配管3及び中継ボックス2を経由して供給タンクに運ばれ、ここで気体とフラックスとが分離し、フラックスが供給タンク内に貯留される。なお、気体として、空気以外の気体も適宜使用可能である。
【0010】
ここで供給タンクが満杯になった等の理由で、粉体ポンプ1への気体の供給が止められ、フラックスの供給が停止すると、供給途上にあって、輸送配管3のエルボ部分よりも下流側(供給タンク側)にあるフラックスが、エルボ部分3bに落下して堆積する。従来は、図2に示すようにエルボ部分3bに単純な屈曲管を使用しているために、この落下堆積によりエルボ部分3bが詰り、閉塞される恐れがあった。エルボ部分がフラックスで詰ると次回のフラックスの供給ができなくなる。そこで、本発明では、このエルボ部分に中継ボックス2を使用して、フラックス供給停止時のフラックスによるエルボ部分の詰りを防止するようにしている。
【0011】
中継ボックス2は、入口部21aから下流側に行くにつれて通路断面積が拡がる上流部21と、この上流部21側から出口部22aに行くにつれて通路断面積が狭くなる下流部22とからなる。上流部21と下流部22とは、所定の角度θ、好ましくは100〜120度の角度θをなすように連結されていて、その結果、中継ボックス2内には略胃袋形状の通路が形成される。上流部21と下流部22は、樹脂材、例えばアクリルで形成され、両者は接着によって結合されている。なお、上流部21と下流部22とは一体成形により形成してもよい。
【0012】
中継ボックス2の胃袋形状の通路の容積は、フラックスの供給停止時におけるフラックスの落下堆積量に基づいて決められる。この落下堆積量Qは、輸送配管3の内径d、中継ボックス2よりも下流側(供給タンク側)の輸送配管長さl、輸送されるフラックス(粉体)密度P=10%とすると、以下の式(1)で与えられる。
Q=1/4・πd2×l×P…(1)
即ち、中継ボックス2内の通路容積は、上記式(1)に基づいて求められたフラックスの落下堆積量Qだけ堆積されても、通路には多少の隙間g又は気体の通過し易い状態が確保され、完全に中継ボックス2内の通路が閉塞されないように決められる。
【0013】
したがって、気体の供給が再開されると、気体は中継ボックス2内の上部の隙間gから通過しながら、堆積フラックスを取り除き、時間の経過と共に内部全体の堆積フラックスを押し上げることになり、詰ること無く、フラックスの安定した供給が可能となる。
【0014】
次に中継ボックス2と輸送配管3との接続構造について説明する。中継ボックス2と輸送配管3との接続は、基本的にその接続部分の内面に段差が出来ないような接続構造であれば、どのような接続構造を採用してもよい。本実施形態では、接続構造として締め込み式を採用している。即ち、中継ボックス2の上流部21の入口部21aには、内面に段差21dを有する受け部21bと、内面に雌ネジが螺刻された螺子部21cとが形成されている。受け部21bの段差21dは、輸送配管3の肉厚tに等しい高さに形成されている。これによって、輸送配管3が入口部21aに接続された場合、輸送配管3の先端3aが受け部21bの段差21dに当接し、接続部の内面に段差が形成されることなく滑らかな内面となって、両者は接続されることになる。
【0015】
一方、輸送配管3側には、継手部31と締め込み用のナット部32が、輸送配管3の先端の一部3aを残して固着されている。即ち、継手部31には、輸送配管3を挿通する挿通孔が形成されていて、その外周面には、雄ネジが螺設されている。ナット部32は、継手部31に螺合して取り付けられている。なお、輸送配管3は、例えば塩化ビニールによって形成されている。また、継手部31及びナット部32は、金属材によって形成されることが好ましい。
【0016】
輸送配管3と中継ボックス2の入口部21aとの接続においては、輸送配管3の継手部3を入口部21aの螺子部21cに螺入する。この場合、輸送配管3の先端3aが、入口部21aの受け部21bの段差21dに当接するまで螺入する。その後、ナット部32を入口部21aに当接するまで締め込む。このようにして、輸送配管3と中継ボックス2の上流部21とは、その接続部の内面に段差が生じることなく滑らかに、かつしっかりと接続される。
中継ボックス2の出口部22aと輸送配管3との接続構造は、入口部21a側の接続構造と全く同じであり、説明を省略する。
【0017】
以上説明したように、本発明では、輸送配管のエルボ部分に中継ボックスを設けることによって、現状の設備・機器に変更を加えることなく、そのまま使用しても、気体供給停止時における粉体の落下堆積による配管の詰り(閉塞)を防止することができ、粉体を安定して供給することができる。また、詰り復帰作業に要する労力も不要となり、省人化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態の粉体輸送配管の詰り防止構造を説明する断面図である。
【図2】従来の粉体輸送配管におけるエルボ部分での詰りを説明する図である。
【符号の説明】
【0019】
1 粉体ポンプ
2 中継ボックス(詰り防止構造)
21 上流部
21a 入口部
21b 受け部
22 下流部
22a 出口部
3 輸送配管
31 継手部
32 ナット部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体ポンプ(1)により、気体で粉体を輸送する配管系のエルボ部分(3b)での粉体による配管(3)の詰りを防止するための粉体輸送配管の詰り防止構造において、
入口部(21a)から下流側に行くにつれて通路断面積が拡がる上流部(21)と、前記上流部側から出口部(22a)に行くにつれて通路断面積が狭くなる下流部(22)とからなる胃袋形状の中継ボックス(2)を、前記配管系のエルボ部分に設けることを特徴とする粉体輸送配管の詰り防止構造。
【請求項2】
前記中継ボックス(2)の胃袋形状の容積が、エルボ部分での粉体の堆積量Qに基づいて決められることを特徴とする請求項1に記載の粉体輸送配管の詰り防止構造。
【請求項3】
前記中継ボックス(2)の上流部(21)と下流部(22)とのなす角度θが、100〜120度であることを特徴とする請求項1又は2に記載の粉体輸送配管の詰り防止構造。
【請求項4】
前記中継ボックス(2)の前記入口部(21a)及び前記出口部(22a)と配管(3)との接続は、締め込み式とし、接続部の内面に段差が形成されないように前記入口部(21a)と出口部(22a)に受け部(21b)を設けたことを特徴とする請求項1,2又は3に記載の粉体輸送配管の詰り防止構造。

【図1】
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【図2】
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