説明

粉塵抑制システムおよび粉塵抑制方法

【課題】油圧ショベルで土木工事を行いながら、土木工事に伴う粉塵の発生を効果的に抑制することが可能な粉塵抑制システムおよび粉塵抑制方法を提供することを目的とする。
【解決手段】油圧ショベル10のバケット15付近に配置されるとともに、粉塵の発生源に向けて該粉塵を抑制するための液体20aを噴射するノズル21と、このノズル21に液体20aを供給するための供給手段22と、を有する液体噴射装置20と、この液体噴射装置20による液体20aの噴射動作と前記バケット15の動作とを連動制御する制御手段30とを備えている。これにより、土砂を湿潤化できるとともに、発生した粉塵に液体を付着させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土木工事に伴う粉塵の発生を抑制する粉塵抑制システムおよび粉塵抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルによる土砂の掘削作業や、運搬車両への土砂の積載作業等の土木工事が行われる際に発生する粉塵は、作業員の健康や周辺住民への影響があるため、作業員がホース等を用いて散水し、粉塵の抑制を行っていた。しかしながら、手作業による散水であるため、人手をかける割には効果が薄く、その上、安全性の確保にも注力しなければならなかった。
そこで、建物の解体等で使用されるような散水装置(例えば、特許文献1参照)を使用して、土木工事に伴って発生する粉塵の抑制を行う場合があった。これにより、人の手作業での散水を行う必要がなくなるとともに、安全性を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−202048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1のような散水専用の散水装置を使用するとなると、この散水装置と、土木工事を行うための油圧ショベルとを用意しなければならず、コスト増加や、大型機械設置による現場面積の狭小化等の問題が生じる場合があった。
【0005】
本発明の課題は、油圧ショベルで土木工事を行いながら、土木工事に伴う粉塵の発生を効果的に抑制することが可能な粉塵抑制システムおよび粉塵抑制方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、粉塵抑制システムであって、油圧ショベルのアーム先端に取り付けられたバケット付近に配置されるとともに、粉塵の発生源に向けて該粉塵を抑制するための液体を噴射するノズルと、このノズルに液体を供給するための供給手段と、を有する液体噴射装置と、
この液体噴射装置による液体の噴射動作と前記バケットの動作とを連動制御する制御手段とを備えていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の粉塵抑制システムにおいて、前記ノズルの液体噴射方向は、前記アームの長さ方向に対して該アームの下面側に傾斜するように設定されていることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の粉塵抑制システムにおいて、前記液体噴射装置は、前記ノズルに圧縮空気を供給するための給気手段を有しており、
前記ノズルは、液体を、圧縮空気と混合することによってミスト状に噴射可能に構成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の粉塵抑制システムにおいて、前記供給手段によって供給される液体には界面活性剤が混入されていることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の粉塵抑制システムによって、油圧ショベルの作業に伴う粉塵の発生を抑制する粉塵抑制方法であって、
前記バケットによって土砂を掘削し掬い上げる際に、前記液体噴射装置によって、前記バケットの開口部に向けて液体を噴射することを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の粉塵抑制方法において、前記バケットによって掬い上げられた土砂を運搬車両の荷台に積載する際に、前記液体噴射装置によって、前記荷台に向けて液体を噴射することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、油圧ショベルのアーム先端に取り付けられたバケット付近に配置されるとともに、粉塵の発生源に向けて該粉塵を抑制するための液体を噴射するノズルと、このノズルに液体を供給するための供給手段と、を有する液体噴射装置と、この液体噴射装置による液体の噴射動作と前記バケットの動作とを連動制御する制御手段とを備えているので、前記油圧ショベルによって例えば土砂の掘削作業や、掘削した土砂を運搬車両の荷台に積載する作業等を行いながら、前記液体噴射装置によって粉塵の発生を効果的に抑制することができる。
すなわち、例えば油圧ショベルによって土砂を掘削し掬い上げる際や、掬い上げた土砂を運搬車両の荷台に積載する際に、土砂に向かって液体を噴射することによって土砂を湿潤化できるとともに、発生した粉塵に液体を付着させることによって重力沈降を向上させて粉塵の拡散を防止することができる。さらに、前記液体噴射装置による液体の噴射動作と前記バケットの動作とを連動させることで、必要な時だけ土砂に液体を噴射することができるので、液体の噴射量を低減することができる。
これによって、従来のように、油圧ショベルとは別に散水専用の散水装置を用いて土木工事を行う場合に比して、コストを確実に抑えることができるとともに、現場面積の狭小化を確実に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る粉塵抑制システムの概要を示す図である。
【図2】油圧ショベルおよび液体噴射装置の動作の一例を示す説明図である。
【図3】油圧ショベルおよび液体噴射装置の動作の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0015】
本実施の形態の粉塵抑制システムは、図1〜図3に示すように、油圧ショベル10のアーム14先端に取り付けられたバケット15付近に配置されるとともに、粉塵の発生源に向けて該粉塵を抑制するための液体20aを噴射するノズル21と、このノズル21に液体20aを供給するための供給手段22と、を有する液体噴射装置20と、この液体噴射装置20による液体20aの噴射動作と前記バケット15の動作とを連動制御する制御手段30とを備えている。
【0016】
前記油圧ショベル10は、図2および図3に示すように、移動体11と、この移動体11の上部に旋回可能に設けられた旋回体12と、この旋回体12の前部に、上下方向に回動可能に軸支されたブーム13と、このブーム13の先端に、前後方向に回動可能に軸支されたアーム14と、このアーム14の先端に前後方向に回動可能に軸支されたバケット15とを備えている。
また、これらブーム13と、アーム14と、バケット15とからなる作業腕体は、ブームシリンダ12a、アームシリンダ13a、バケットシリンダ14a等の油圧シリンダを含んで構成される油圧システムによって動作が可能となっている。
前記バケット15は、土砂D等を出し入れするための開口部15aを有しており、この開口部15aが前記ブーム13およびアーム14の下面側を向くようにして、前記アーム14の先端に取り付けられている。
【0017】
前記液体噴射装置20は、図2および図3に示すように、前記ノズル21と、前記供給手段22とを有している。
前記ノズル21は、前記アーム14の側面に取り付けられており、その液体噴射方向は、前記アーム14の長さ方向に対して該アーム14の下面側に傾斜するように設定されている。すなわち、ノズル21の噴射口がアーム14の長さ方向よりも下向きに傾けられるようにして前記アーム14の側面に取り付けられている。
【0018】
前記供給手段22は、前記旋回体12の上部に設置されるとともに液体20aを貯留するためのタンク22aと、このタンク22aから前記ブーム13およびアーム14に沿って配設されるとともにタンク22aとノズル21とを接続するホース22bとを有している。
また、前記タンク22aは、図示はしないが、このタンク22aの下部に接続した導水管を介して設けられ、モーターの駆動により前記タンク22aからの液体20aを、加圧して前記ホース22b・ノズル21側へと送水する送水ポンプと組み合わせて動作するように構成されている。
【0019】
なお、本実施の形態においては、前記タンク22aに貯留された液体20aを、送水ポンプによってホース22b・ノズル21側へと送水することによって前記ノズル21から液体20aを噴射しているが、単に液体20aを噴射するだけでなく、ミスト状に噴射(噴霧)してもよい。
すなわち、このように液体20aをミスト状に噴射するには、前記供給手段22とともに、前記ノズル21に圧縮空気を供給するための給気手段(図示せず)を前記旋回体12の上部に設置するとともに、液体20aを、圧縮空気と混合してミスト状に噴射するノズル21を用いる。つまり、このノズル21としては、2系統に分けられた液体20aと圧縮空気とを混合して噴射する2流体方式のスプレーノズルが採用されており、高速気流によって液体20aを粉砕し、微粒化することができる。
このように液体20aをミスト状にして土砂Dに向かって噴射することによって、土木工事に伴って発生する濁水量を低減することができる。また、油圧ショベル10に搭載した状態となっているので、土砂Dを運搬車両40の荷台40aに積載する時だけでなく、土木工事中においても粉塵の発生を大きく抑制することができる。
【0020】
なお、本実施の形態においては、前記液体20aは水が用いられているが、この液体20aに界面活性剤を混入して前記供給手段22で供給するようにしてもよい。
界面活性剤は、物質との界面の液体の表面張力を低下させる界面活性機能を有しており、界面に吸着してこのような機能を発揮する。そこで、界面活性剤を粉砕して、予め液体20a中に3〜5重量%程度混入しておくと、土砂Dや粉塵に対する沈塵作用が促進されるとともに、土砂Dや粉塵は、水分が付着・吸着しやすくなり、濡れやすくなる。
また、いったん沈下した土砂Dや粉塵は、水分や界面活性剤の重量が付加されるので、舞い上がりにくく再浮遊しにくくなる。
【0021】
前記制御手段30は、図1に示すように、本体である制御部と、前記バケットの前後方向への回動角度を検出するバケット角度検出手段31とを有している。
なお、前記制御部は、前記旋回体12近傍に設けられていてもよいし、前記バケット15付近に設けられていてもよい。
また、前記バケット角度検出手段31は、前記アーム14に沿って設けられるとともに前記バケット15を回動させるためのバケットシリンダ14aの動作を検出することによって、前記バケット15の回動角度を検出している。
すなわち、前記バケットシリンダ14aは、上述のように油圧シリンダとされており、油圧ショベルに採用される油圧シリンダは、シリンダロッドが長さ方向に沿って摺動する動作にリンクして前記バケット15が回動するように構成されている。したがって、前記バケット角度検出手段31によって、バケットシリンダ14aの動作を検出すれば、前記バケット15の回動角度を検出することができるようになっている。
【0022】
そして、制御手段30は、図1に示すように、このようにバケット角度検出手段31からの信号を制御部が受けて前記バケット15の回動角度を判定し、制御部が液体20aを噴射すべき角度であると認識した場合に、前記液体噴射装置20側に信号を送信し、液体20aを噴射させる、といった制御を行うように設定されている。
なお、この制御手段30は、前記液体噴射装置20による液体20aの噴射時間を設定可能に構成されていてもよいものとする。すなわち、液体20aの噴射時間を制御することによって、土砂Dや粉塵に対しては必要な分だけ液体20aを噴射するとともに無駄な液体20aの噴射を防止し、噴射量の低減を図ることができる。
【0023】
次に、以上のような粉塵抑制システムによって、油圧ショベル10の作業に伴う粉塵の発生を抑制する粉塵抑制方法について説明する。
まず、前記油圧ショベル10を走行させて、作業現場の任意の場所に配置する。
続いて、この油圧ショベル10によって土砂Dの掘削作業等の土木工事を行う。
そして、図1に示すように、この土木工事の流れの中で、前記バケット15によって土砂Dを掘削し掬い上げる時がある。その際に、前記液体噴射装置20によって、前記バケット15の開口部15aに向けて液体20aを噴射し、バケット15内の土砂Dを湿潤化させて、粉塵の発生を抑制する。
【0024】
続いて、土木工事の流れの中で、このようにバケット15によって掬い上げられた土砂Dを運搬車両40の荷台40aに積載する時がある。その際に、前記液体噴射装置20によって、前記荷台40aに向けて液体20aを噴射し、荷台40aに積載された土砂Dを湿潤化させて、粉塵の発生を抑制する。
すなわち、このような土砂Dの荷台40aへの積載時、積載前に土砂Dに液体20aを噴射していたとしても、バケット15内に液体20aが滲み渡らない場合がある。このような場合には、土砂Dを荷台40aに積載した時に粉塵が発生する。
本実施の形態の粉塵抑制方法によれば、このような土砂D積載時の粉塵の発生も防止することができる。
【0025】
本実施の形態の粉塵抑制方法によれば、以上のようにして、土木工事中における粉塵の発生を抑制できるようになっている。すなわち、土砂Dを掬い上げたり、掬い上げた土砂Dを運搬車両40の荷台40aに積載したりする際に多くの粉塵が発生する場合があるが、このような時を狙って、前記液体噴射装置20で液体20aを噴射し、粉塵の発生を抑えることができるようになっている。
なお、本実施の形態の粉塵抑制システムおよび粉塵抑制方法は、切土工事、盛土工事等を始め、様々な土木工事に採用することが可能であることは言うまでもない。
【0026】
本実施の形態によれば、前記油圧ショベル10のアーム14先端に取り付けられたバケット15付近に配置されるとともに、粉塵の発生源に向けて該粉塵を抑制するための液体20aを噴射するノズル21と、このノズル21に液体20aを供給するための供給手段22と、を有する液体噴射装置20と、この液体噴射装置20による液体20aの噴射動作と前記バケット15の動作とを連動制御する制御手段30とを備えているので、前記油圧ショベル10によって例えば土砂Dの掘削作業や、掘削した土砂Dを運搬車両40の荷台40aに積載する作業等を行いながら、前記液体噴射装置20によって粉塵の発生を効果的に抑制することができる。
すなわち、例えば油圧ショベル10によって土砂Dを掘削し掬い上げる際や、掬い上げた土砂Dを運搬車両40の荷台40aに積載する際に、土砂Dに向かって液体20aを噴射することによって土砂Dを湿潤化できるとともに、発生した粉塵に液体20aを付着させることによって重力沈降を向上させて粉塵の拡散を防止することができる。さらに、前記液体噴射装置20による液体20aの噴射動作と前記バケット15の動作とを連動させることで、必要な時だけ土砂Dに液体20aを噴射することができるので、液体20aの噴射量を低減することができる。
これによって、従来のように、油圧ショベル10とは別に散水専用の散水装置を用いて土木工事を行う場合に比して、コストを確実に抑えることができるとともに、現場面積の狭小化を確実に防ぐことができる。
【符号の説明】
【0027】
D 土砂
10 油圧ショベル
13 アーム
14 バケット
20 液体噴射装置
20a 液体
21 ノズル
22 供給手段
30 制御手段
40 運搬車両(ダンプトラック)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧ショベルのアーム先端に取り付けられたバケット付近に配置されるとともに、粉塵の発生源に向けて該粉塵を抑制するための液体を噴射するノズルと、このノズルに液体を供給するための供給手段と、を有する液体噴射装置と、
この液体噴射装置による液体の噴射動作と前記バケットの動作とを連動制御する制御手段とを備えていることを特徴とする粉塵抑制システム。
【請求項2】
前記ノズルの液体噴射方向は、前記アームの長さ方向に対して該アームの下面側に傾斜するように設定されていることを特徴とする請求項1に記載の粉塵抑制システム。
【請求項3】
前記液体噴射装置は、前記ノズルに圧縮空気を供給するための給気手段を有しており、
前記ノズルは、液体を、圧縮空気と混合することによってミスト状に噴射可能に構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の粉塵抑制システム。
【請求項4】
前記供給手段によって供給される液体には界面活性剤が混入されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の粉塵抑制システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の粉塵抑制システムによって、油圧ショベルの作業に伴う粉塵の発生を抑制する粉塵抑制方法であって、
前記バケットによって土砂を掘削し掬い上げる際に、前記液体噴射装置によって、前記バケットの開口部に向けて液体を噴射することを特徴とする粉塵抑制方法。
【請求項6】
前記バケットによって掬い上げられた土砂を運搬車両の荷台に積載する際に、前記液体噴射装置によって、前記荷台に向けて液体を噴射することを特徴とする請求項5に記載の粉塵抑制方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−36666(P2012−36666A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−179107(P2010−179107)
【出願日】平成22年8月10日(2010.8.10)
【出願人】(000195971)西松建設株式会社 (329)
【Fターム(参考)】