説明

粉末圧延装置

【課題】密度及び厚さが均一なシート材を安定して製造できる粉末圧延装置を提供する。
【解決手段】金属粉末2を圧延する圧延ロール4A、4Bと、金属粉末2を圧延ロール4Aとの間で予備圧下する予備圧下ロール7Aとを備える粉末圧延装置1であって、上記予備圧下により予備圧下ロール7Aに付着した金属粉末2を除去する除去装置10を有するという構成を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末を圧延ロール間で圧延成形してシート材を製造する粉末圧延装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、厚さに変動が生じることなく薄型のシート材が得られる粉末圧延装置として、例えば、特許文献1及び特許文献2に記載の粉末圧延装置が知られている。
当該粉末圧延装置は、粉末を一対の圧延ロールのいずれか一方との間で予備圧下する予備圧下ロールを有することにより、圧延ロールの咬み込み角に対応する厚さよりも薄型に粉末を圧延することができるため、従来よりも薄いシート材を安定して製造することができる構成となっている。
【特許文献1】特開2002−212608号公報
【特許文献2】特開2005−139536号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記粉末圧延装置において、上記予備圧下の際に予備圧下された粉末の一部が予備圧下ロールに付着する(貼り付く)ことがあり、予備圧下された粉末が予備圧下ロールに付着したまま圧延ロールとの間で再び予備圧下されると、付着部において部分的に密度及び厚さが大きくなり、密度及び厚さが均一でないシート材が製造され、製品の質及び歩留りに影響を与えるという問題があった。
【0004】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、密度及び厚さが均一なシート材を安定して製造できる粉末圧延装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明は、粉末を圧延する圧延ロールと、上記粉末を上記圧延ロールとの間で予備圧下する予備圧下ロールとを備える粉末圧延装置であって、上記予備圧下により上記予備圧下ロールに付着した上記粉末を除去する除去装置を有するという構成を採用する。
このような構成を採用することで、本発明では、予備圧下ロールに付着した粉末を除去することによって、予備圧下ロールに付着した粉末が再び圧延ロールとの間で予備圧下されることを防止することができる。
【0006】
また、本発明では、上記除去装置は、上記圧延ロールと上記予備圧下ロールとの間に上記粉末を供給する供給側に、上記除去した上記粉末を払い落とすという構成を採用する。
このような構成を採用することで、本発明では、除去した粉末を供給側に払い落とすことによって、除去した粉末を廃棄することなくシート材形成用の粉末として再利用することができる。
【0007】
また、本発明では、上記除去装置は、上記予備圧下ロールに付着した上記粉末を払い落として除去するブラシロールを有するという構成を採用する。
このような構成を採用することで、本発明では、ブラシロールによって予備圧下ロールに付着した粉末を効率よく払い落として除去することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、粉末を圧延する圧延ロールと、上記粉末を上記圧延ロールとの間で予備圧下する予備圧下ロールとを備える粉末圧延装置であって、上記予備圧下により上記予備圧下ロールに付着した上記粉末を除去する除去装置を有するという構成を採用することで、予備圧下ロールに付着した粉末を除去し、予備圧下ロールに付着した粉末が再び圧延ロールとの間で予備圧下されることを防止することができる。
したがって、本発明によれば、密度及び厚さが均一なシート材を安定して製造することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の粉末圧延装置および粉末圧延方法の実施形態を、図1を参照して説明する。
図1は、本実施形態における粉末圧延装置1の概略構成図である。
粉末圧延装置1は、水平且つ平行に配した一対の圧延ロール4A、4Bと、一方の圧延ロール4Aの上方に配置され、ベルトフィーダ5Aを介して金属粉末(粉末)2を供給するホッパ3Aと、圧延ロール4Aとの間で金属粉末2を予備圧下する予備圧下ロール7Aと、予備圧下の際に予備圧下ロール7Aに付着した金属粉末2を払い落として除去する除去装置10とを備えており、圧延ロール4A、4B間の下方には圧延成形されたシート材を次工程へ導くための不図示のシートガイドが配設されている。
【0010】
圧延ロール4A、4Bは、それぞれが独立して回転自在、且つ互いに同一の速度で同期回転するように制御されている。また、シート材にせん断力を付加させる目的で別々の一定速度で回転するよう制御する場合もある。また、圧延ロール4A、4B間のギャップは調整自在とされ、圧延されたシート材の厚さを任意に変更できる構成となっている。
【0011】
ホッパ3Aは、断面形状が下方に向かうに従って漸次縮径する中空構造を有し、金属粉末2を貯蓄すると共に底部に接続されたベルトフィーダ5Aを介して圧延ロール4Aの周面に向けて金属粉末2を供給する構成となっている。
【0012】
ベルトフィーダ5Aは、ホッパ3Aの底部に設けられ、不図示の回転駆動機構と接続されて回転駆動することで、ホッパ3Aから金属粉末2を搬送する構成となっている。また、ベルトフィーダ5Aは、搬送先が、圧延ロール4Aの上方に位置しており、金属粉末2を圧延ロール4Aの周面上に供給する構成になっている。さらに、ベルトフィーダ5Aは、圧延ロール4Aの幅と略同一の幅を有しており、圧延ロール4Aの幅方向に亘って均一に、金属粉末2を供給可能な構成となっている。
【0013】
予備圧下ロール7Aは、圧延ロール4A(および4B)よりも小径に、具体的には圧延ロール4A、4Bの直径の20%以下の直径に形成されており、その回転中心は圧延ロール4Aの回転中心に対して鉛直方向上方から圧延ロール4B側へ角度θ1の位置に設置されている。設置角度θ1としては、0゜〜85゜の間で選択できるが、ここではθ1=30゜に設定されている。また、予備圧下ロール7Aの外周面には凹凸が形成されており、供給された金属粉末2を咬み込みやすくなっている。なお凹凸としては、均一なものでも不均一なものでもよい。また、金属粉末2の性質によっては、平滑な外周面を有する平ロールであってもよい。また、平ロールではなく、凹クラウン、凸クラウンがついたロールでもよい。
【0014】
この予備圧下ロール7Aには、回転機構(図示せず)が設けられ、圧延ロール4A、4Bに対して任意の回転速度(周速度)に独立して調整可能になっている。そして、予備圧下ロール7Aと圧延ロール4Aとの軸間距離も任意に調整可能であり、従ってこれらロール間のギャップを微調整できる構成になっている。
【0015】
除去装置10は、予備圧下ロール7Aに付着した金属粉末2を払い落として除去するブラシロール11と、ブラシロール11を回転駆動させる不図示の回転機構とを有する構成になっている。
【0016】
ブラシロール11は、動物性繊維、植物性化学繊維、金属線等がロール周面に植立された構成を有し、周面に設けられたブラシが予備圧下ロール7Aの周面に当接するように設置される。具体的に本実施形態では、予備圧下ロール7Aの回転中心を通る鉛直線よりホッパ3A及びベルトフィーダ5Aが設けられる側の周面に当接するようにブラシロール11が設置される。
また、ブラシロール11は、予備圧下ロール7Aの幅と略同一の幅を有し、幅方向(図1において紙面垂直方向)に延びる回転軸回りにブラシロール11を回転させる回転機構に接続され、予備圧下ロール7Aに対して任意の回転速度で独立して回転駆動する構成となっている。
なお、ブラシに金属線を採用する場合、接触による予備圧下ロール7Aの磨耗・擦傷を避けるため予備圧下ロール7Aを形成する部材より低硬度の金属線材料を選択することが好ましい。
【0017】
回転機構は、対向する予備圧下ロール7Aの周面とブラシロール11の周面とが互いに同じ方向に移動するようにブラシロール11を回転駆動させて、予備圧下ロール7Aに付着した金属粉末2を、圧延ロール4Aと予備圧下ロール7Aとの間に金属粉末2を供給する供給側、言い換えれば、金属粉末2が圧延ロール4Aと予備圧下ロール7Aとの間に供給される前の上流側に払い落とす構成になっている。具体的には、回転機構は、予備圧下ロール7Aの回転駆動による周速度より大きな周速度でブラシロール11を、図1において回転軸を中心とした反時計回りに回転させるように駆動させる構成となっている。
【0018】
続いて、上記の構成の粉末圧延装置1の動作を図1及び図2を参照し、シート材を製造する手順に沿って説明する。
図2は、ブラシロール11が設けられる部分の拡大図である。
先ず、図1に示すように、粉末圧延装置1は、ホッパ3A内に貯蓄された金属粉末2をホッパ3A底部に接続されたベルトフィーダ5Aを介して圧延ロール4Aの周面に向けて、圧延ロール4Aの幅方向に亘り連続的に供給する。
圧延ロール4A上に供給された金属粉末2は、予備圧下ロール7Aと圧延ロール4Aとの間で予備圧下される。ここで、予備圧下ロール7Aは、圧延ロール4Aに対して小径に設定され接触弧長が小さいため、引き込まれる金属粉末2も少なくなり、結果として圧延ロール4A、4B間で圧延する場合に比較して薄く圧延することができる。
そして、金属粉末2は、予備圧下ロール7Aと圧延ロール4Aとの間で予備圧下されることで脱気され、一定の密度及び一定の厚さを有する金属粉末2が定量、圧延ロール4A、4B間に供給されることになる。
【0019】
ここで、予備圧下を受けた金属粉末2の一部が、相対速度がほぼ零の状態で予備圧下ロール7Aの周面に付着する(貼り付く)ことがあるが、予備圧下ロール7Aに付着した金属粉末2は、図2に示すように、予備圧下ロール7Aの周速度より大きな周速度で回転するブラシロール11によって予備圧下ロール7Aの周面から払い落とされて除去される。
【0020】
ブラシロール11は、予備圧下ロール7Aより大きな相対周速度で回転することによって、金属粉末2を下方に払い落とすことができ、除去した金属粉末2の巻き上がりを防止することができる。
除却された金属粉末2は、圧延ロール4Aと予備圧下ロール7Aとの間に金属粉末2を供給する供給側に払い落とされて、予備圧下による密度が高い状態から予備圧下前の密度が低い通常状態に戻り、圧延ロール4Aと予備圧下ロール7Aとの間において再び予備圧下を受けることとなる。
【0021】
そして、圧延ロール4A、4Bは、所定の距離で回転駆動することによって、圧延ロール4A,4B間に供給された金属粉末2と、圧延ロール4A、4Bの間に上方から下方へ挿通されて搬送されるシート状の金属板21とを圧延する。当該圧延によって、金属粉末2は、金属板21に固着されてシート材を形成することとなる。
圧延ロール4A、4B間で所望の厚さに圧延されたシート材は、シートガイドに沿って次工程(例えば焼結工程)に送られる。なお、予備圧下ロール7Aの外周面に形成された凹凸がシート材に転写されていても、圧延ロール4A、4Bによる圧延により平滑に成形されるため、予備圧下ロール7Aの表面形状はシート材の表面光沢に影響を及ぼさない。
【0022】
したがって、上述した本実施形態によれば、金属粉末2を圧延する圧延ロール4A、4Bと、金属粉末2を圧延ロール4Aとの間で予備圧下する予備圧下ロール7Aとを備える粉末圧延装置1であって、上記予備圧下により予備圧下ロール7Aに付着した金属粉末2を除去する除去装置10を有するという構成を採用することで、予備圧下ロール7Aに付着した金属粉末2を除去することによって、予備圧下ロール7Aに付着した金属粉末2が再び圧延ロール4Aとの間で予備圧下されることを防止することができる。
したがって、本実施形態によれば、密度及び厚さが均一なシート材を安定して製造することができる効果がある。
【0023】
また、本実施形態では、除去装置10は、圧延ロール4Aと予備圧下ロール7Aとの間に金属粉末2を供給する供給側に、上記除去した金属粉末2を払い落とすという構成を採用することで、除去した金属粉末2を廃棄することなくシート材形成用の金属粉末2として再利用することができる。
【0024】
また、本実施形態では、除去装置10は、予備圧下ロール7Aに付着した金属粉末2を払い落として除去するブラシロール11を有するという構成を採用する。
このような構成を採用することで、本発明では、ブラシロール11によって予備圧下ロール7Aに付着した金属粉末2を効率よく払い落として除去することができる。
【0025】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0026】
例えば、上記実施形態において、予備圧下ロール7Aに付着した金属粉末2を除去する除去装置10は、ブラシロール11を有する構成であると説明したが、本発明は、上記構成に限定されるものでは無く、例えば、予備圧下ロール7Aの周面に幅方向に亘って当接する固定式のブラシ、フェルト等の部材を有する構成であっても良い。また、気体噴出または吸引により付着した金属粉末2を除去する装置を設ける構成であっても良い。さらに、除去した金属粉末2を一旦吸引して上記供給側に払い落とす装置構成であっても良い。
【0027】
また、例えば、上記実施形態において、ブラシロール11は、予備圧下ロール7Aより大きな相対周速度で回転すると説明したが、本発明は、当該動作をする構成に限定されず、例えば、予備圧下ロール7Aより小さな相対周速度で回転する、または、対向する予備圧下ロール7Aの周面とブラシロール11の周面とが互いに逆方向に移動するように回転するような構成であっても良い。
【0028】
また、上記実施形態において、粉末圧延装置1は、金属粉末2を金属板21の片面に圧延してシート材を形成すると説明したが、圧延ロール4B側にもホッパ3A、ベルトフィーダ5A、予備圧下ロール7A及び除去装置10を圧延ロール4A側と対称的に設ける構成であれば、金属板21の両面の全面に亘って金属粉末2を圧延でき、3層のシート材を形成させることも可能である。
【0029】
なお、上記実施形態において、粉末圧延装置1は、金属粉末2と金属板21とを圧延ロール4A、4Bで圧延すると説明したが、シート材の形成にあたって金属板21は必須では無く、金属板21を用いない構成であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態における粉末圧延装置の概略構成図である。
【図2】本発明の実施の形態における粉末圧延装置のブラシロールが設けられる部分の拡大図である。
【符号の説明】
【0031】
1…粉末圧延装置、2…金属粉末(粉末)、4A,4B…圧延ロール、7A…予備圧下ロール、10…除去装置、11…ブラシロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末を圧延する圧延ロールと、前記粉末を前記圧延ロールとの間で予備圧下する予備圧下ロールとを備える粉末圧延装置であって、
前記予備圧下により前記予備圧下ロールに付着した前記粉末を除去する除去装置を有することを特徴とする粉末圧延装置。
【請求項2】
前記除去装置は、前記圧延ロールと前記予備圧下ロールとの間に前記粉末を供給する供給側に、前記除去した前記粉末を払い落とすことを特徴とする請求項1に記載の粉末圧延装置。
【請求項3】
前記除去装置は、前記予備圧下ロールに付着した前記粉末を払い落として除去するブラシロールを有することを特徴とする請求項1または2に記載の粉末圧延装置。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−235450(P2009−235450A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−80069(P2008−80069)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】