説明

粉末成形プレス機械

【課題】従来よりさらに加工精度が高く均密度の成形品を得られるような粉末成形プレス機械を提案する。
【解決手段】ダイとコアロッドとの間に各1以上の上下パンチを併置してプレス成形を行う粉末成形プレス機械であって、上パンチを取り付ける上パンチプレート及び該プレートに連結される連結ロッドを備えた上パンチセットと、下パンチを取り付ける下パンチプレート及び該プレートに連結される連結ロッドを備えた下パンチセットと、コアロッドの中心軸を中心とした同心円状にして上部プレート103下に配設され、上パンチセットの連結ロッドと連結される上筒状シリンダと、コアロッドの中心軸を中心とした同心円状にしてベースプレート3上に配設され、下パンチセットの連結ロッドと連結される下筒状シリンダと、を含んで構成され、その上下筒状シリンダを流体圧駆動することで、上下パンチを動作させて上下から加圧できるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイ及びパンチを用いた加圧成形によって、粉末焼結部品などの成形品を製造する粉末成形プレス機械に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、成形品に対する高精度・ニアネットシェイプ化の要求が高まる中、成形品の厚さ(高さ)を決定するダイ及びパンチの位置について、サーボ制御の流体圧(気体圧、液体圧)シリンダを用いて制御する粉末成形プレス機械の需要が高まっている。この流体圧シリンダは、プレス時にパンチが受ける負荷荷重を支える受圧シリンダであり、複数のパンチを用いて多段外形の成形品を製造する場合、当該成形品の形状に従って各パンチにかかる負荷荷重が異なるので、パンチごとにそれぞれシリンダが必要である。したがって、成形品の形状が複雑になってパンチ数が増えるに従い、対応するシリンダの数も増えいていく。受圧シリンダ数の増加は粉末成形プレス機械の大型化を招き、成形能力よりも大きな受圧能力が要求される結果となる。一般的に、下3段成形を例にとると、最外殻にダイが1つ、パンチが3本、コアロッドが1本用いられ、受圧シリンダ機構が耐えられる受圧能力の合計は成形能力の1.5〜2倍が要求されるものとなっている。
【0003】
このような粉末成形プレス機械としては、複数のパンチに対応する受圧シリンダを同軸に直列で配置した構造のものが特許文献1に開示されている。特許文献1に開示の粉末成形プレス機械は、受圧シリンダを同軸に直列で積層配置した構造であることから、全高が非常に高いものとなる。したがって、軸方向の各構成部品へ伝わる負荷荷重の伝達距離にばらつきが生じるので、各構成部品ごとに異なる撓みや座屈が発生し、プレス機械を組み立てる際に、その撓みや座屈要素等を細かく計算しなければならない。
【0004】
そこで、多段成形の受圧能力を満たす受圧シリンダ機構を小型化し、粉末成形プレス機械のサイズを縮めることを主な目的として、特許文献2に記載の粉末成形プレス機械が提案されている。特許文献2記載の粉末成形プレス機械は、ダイを最外殻として中央にコアロッドを配し、これらダイとコアロッドとの間に1以上のパンチを配置してプレス成形を行う粉末成形プレス機械であり、次の構成を有する。すなわち、ダイを取り付けるダイプレート及び該ダイプレートと連結される連結ロッドからなるダイセットと、パンチを取り付けるパンチプレート及び該パンチプレートに連結される連結ロッドからなる1以上のパンチセットと、を備えると共に、コアロッドと連結される中心シリンダ及び該中心シリンダを囲繞する1以上の筒状シリンダをベースプレート上に配設し、そして、その筒状シリンダと少なくともパンチセットの連結ロッドとを連結するようにし、流体圧で中心シリンダ及び筒状シリンダを駆動する構成である。
【0005】
この粉末成形プレス機械は、受圧シリンダを筒状にし、往復運動させるパンチに対応する筒状シリンダごとに径を異ならせて中心シリンダを囲繞する構造としている。それまで独立して別個に設けられていた複数のシリンダを同一箇所に集中させて設けたことにより、受圧シリンダ機構を高さ方向に積層することなく低くまとめ且つ幅方向にも小型化を図ることができている。また、このように筒状の受圧シリンダを中央に集中させた構造から、該シリンダを受圧対象のパンチに対して1対1の関係で設けて負荷荷重を中央に集中させることができるので、受圧能力に優れ、バランスの取れたプレス機械を提供することができている。
【0006】
【特許文献1】特公平07−115233号公報
【特許文献2】特開2005−296962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献2記載の粉末成形プレス機械は、上パンチにより加圧して下パンチで受圧する仕組みで、型を形成する複数の下パンチにおける最も内側の下パンチがプレスの位置基準になる。このプレス時、上パンチからダイ(及びコアロッド)に下向き成分の側圧が加わるので、ダイの位置も変化することが知られている(特許文献2段落0045〜0046,図5及び図6参照)。この側圧が成形品の加工精度に影響し、従来の粉末成形プレス機械における下パンチの位置制御を複雑なものにしている。また、上パンチで加圧し下パンチで受圧する仕組みのため、成形品の内部において密度の不均衡が生じ得るという改善点も存在している。
【0008】
本発明は、このような技術背景に鑑みたもので、より加工精度が高く均密度の成形品を得られるような粉末成形プレス機械を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためにここで提案する粉末成形プレス機械は、ダイを最外殻として、該ダイ中に各1以上の上下パンチを配置してプレス成形を行う粉末成形プレス機械である。
【0010】
当該粉末成形プレス機械の第1の態様は、
前記上パンチを取り付ける上パンチプレート及び該上パンチプレートに連結される連結ロッドを備えた1以上の上パンチセットと、
前記下パンチを取り付ける下パンチプレート及び該下パンチプレートに連結される連結ロッドを備えた1以上の下パンチセットと、
前記上パンチの中心軸を中心とした同心円状にして上部プレート下に配設され、前記上パンチセットの連結ロッドと連結される1以上の上筒状シリンダと、
前記下パンチの中心軸を中心とした同心円状にしてベースプレート上に配設され、前記下パンチセットの連結ロッドと連結される複数の下筒状シリンダと、
を含んで構成され、
前記下パンチセットが、前記ベースプレートに立設された複数本の支柱の内側に配設されると共に、当該支柱に前記上部プレートが上下スライド可能に取り付けられており、
前記支柱に固定された上部フレームに上部シリンダが設けられると共に該上部シリンダが耐圧リンク機構を介して前記上部プレートと連結され、
前記上部シリンダによる前記上部プレートの下降動作に伴って前記耐圧リンク機構が伸長し、該伸長する耐圧リンク機構により、成形時に前記上部プレートの位置が維持されるようにしてあり、
前記上下筒状シリンダを流体圧駆動することで、前記上下パンチを動作させて上下から加圧可能になっている。
【0011】
また、上記粉末プレス機械の第2の態様は、
前記上パンチを取り付ける上パンチプレート及び該上パンチプレートに連結される連結ロッドを備えた1以上の上パンチセットと、
前記下パンチを取り付ける下パンチプレート及び該下パンチプレートに連結される連結ロッドを備えた1以上の下パンチセットと、
前記ダイを取り付けるダイプレート及び該ダイプレートに連結される連結ロッドを備えたダイセットと、
前記上パンチの中心軸を中心とした同心円状にして上部プレート下に配設され、前記上パンチセットの連結ロッドと連結される1以上の上筒状シリンダと、
前記下パンチの中心軸を中心とした同心円状にしてベースプレート上に配設され、前記下パンチセットの連結ロッド及び前記ダイセットの連結ロッドと連結される複数の下筒状シリンダと、
を含んで構成され、
前記下パンチセット及び前記ダイセットが、前記ベースプレートに立設された複数本の支柱の内側に配設されると共に、当該支柱に前記上部プレートが上下スライド可能に取り付けられており、
前記支柱に固定された上部フレームに上部シリンダが設けられると共に該上部シリンダが耐圧リンク機構を介して前記上部プレートと連結され、
前記上部シリンダによる前記上部プレートの下降動作に伴って前記耐圧リンク機構が伸長し、該伸長する耐圧リンク機構により、成形時に前記上部プレートの位置が維持されるようにしてあり、
前記上下筒状シリンダを流体圧駆動することで、前記上下パンチを動作させて上下から加圧可能になっている。
【発明の効果】
【0012】
この提案に係る粉末成形プレス機械は、上下パンチプレートを備え且つこれらをそれぞれ上下の筒状シリンダで駆動して加工を行う仕組みになっており、それぞれのパンチの加圧力と位置を任意制御することが可能である。これにより、例えば段付成形であっても、上下のパンチ両方から加圧しての加工ができるので、ダイやコアロッドに対し、従来のように下向き一方向への側圧がかからなくなる。その結果、格段の中立面を基準に加圧量、速度を制御することができ、従来に比べて制御がし易くなり、加工精度が向上する。そして、上下からの均等加圧によって、成形品の均密度化、高密度化も実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態に係る下パンチセット及びダイセットと油圧シリンダ機構を示した要部断面図。
【図2】図1のA−A線断面図。
【図3】図1のB−B線断面図。
【図4】第1実施形態に係る下パンチセット及びダイセットと油圧シリンダ機構を示した一部破断の要部斜視図。
【図5】第2実施形態に係る下パンチセット及びダイセットと油圧シリンダ機構を示した要部断面図。
【図6】第2実施形態に係るパンチプレートの斜視図。
【図7】第3実施形態に係る下パンチセット及びダイセットと油圧シリンダ機構を示した要部断面図。
【図8】第4実施形態に係る下パンチセット及びダイセットと油圧シリンダ機構を示した要部断面図。
【図9】第5実施形態に係る上パンチセットと油圧シリンダ機構を示した要部断面図。
【図10】図8及び図9に示す上下パンチセット及び油圧シリンダ機構を使用した粉末成形プレス機械の全体を示した正面図。
【図11】中立面を基準にした上下パンチの加圧、圧抜動作の第1例を説明する図。
【図12】中立面を基準にした上下パンチの加圧、圧抜動作の第2例を説明する図。
【図13】中立面を基準にした上下パンチの加圧、圧抜動作の第3例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
粉末成形プレス機械における下パンチセット及びダイセットの第1実施形態を、図1〜図4に示している。この第1実施形態の下パンチセット及びダイセットは、特開2005−296962号公報の図1〜図4に示されている下パンチ及びダイセットと同様のものである。
【0015】
なお、以下の実施形態では3段の段付き成形品に対応する上下パンチセットを一例として説明する。また、流体圧シリンダとして油圧プレスを例として説明するが、これに限られるわけではなく、液圧及び気圧の両者を含めた流体圧を利用するプレス機械において本発明を適用可能である。
【0016】
図1は、ダイ10を取り付けるダイプレート20a及びダイプレート20aと連結される連結ロッド21aからなるダイセット2aと、第1〜第3下パンチ11,12,13を取り付ける第1〜第3下パンチプレート20b,20c,20d及び第1〜第3下パンチプレート20b,20c,20dに連結される連結ロッド21b,21c,21dを備えた下パンチセット2b,2c,2dと、ベースプレート3に設けられる油圧シリンダ機構としての下シリンダ4a,4b,4c,4d(4aが下中心シリンダ、4b〜4dが下筒状シリンダ)及び下部シリンダ5と、を連結プレート6a,6b,6c,6dを介して連結した粉末成形プレス機械1の部分縦断面図である。そして、図2は図1のA−A線断面図、図3は図1のB−B線断面図、図4は当該実施形態に係る粉末成形プレス機械1の斜視図である。なお、図2〜図4に示したように、各構成部品は放射状に配置されているので、その構造上、a−a中心線、b−b中心線上に配置されない構成部品もある。したがって、プレス機械の中心線に沿って縦断面図を作成すると、表記されない構成部品もある。そこで、図1では、本実施形態のプレス機械全体像を掴みやすくするべく、図2、図3のc−c線上における各構成部品を中心線であるa−a線に投影し、これを基準にして各構成部品を記載してある。
【0017】
図1及び図2に示すように、下中心シリンダ4aは、パンチの中心軸となるコアロッド14を連結するコアピストン41aと、このコアピストン41aを駆動する作用室を形成するようにベースプレート3に立設された中央円筒壁40aと、を備えている。なお、コアロッドは、成形品に軸孔を設ける場合などに必要とされるもので、成形品によっては不要な場合もある。この場合は、中心シリンダを省くこともできる。
【0018】
下筒状シリンダ4b〜4dは、下中心シリンダ4aの中央円筒壁40aを囲繞するようにして所定間隔でベースプレート3に立設された環状壁40b〜40dと、この環状壁40b〜40dで囲まれた内部空間を作用室として駆動される環状ピストン41b〜41dと、この環状ピストン41b〜41dに立設されて連結プレート6a〜6cに連結されるピストンロッド42a〜42cと、を備えている。そして、下中心シリンダ4aのコアピストン41a及び下筒状シリンダ4b〜4dのピストンロッド42a〜42cを、気密又は液密状態で貫通させ且つ各作用室を密閉する封止蓋43を有している。
【0019】
中央円筒壁40aと環状壁40b〜40dについては、ベースプレート3の上に、中央円筒壁40aを中央に配し、該中央円筒壁40aより径の大きな環状壁40bを同心で配列し、さらに、該環状壁40bより径の大きな環状壁40c及び該環状壁40cより径の大きな環状壁40dを同心で配列して形成されている。そして、立設された中央円筒壁40aによって形成される作用室に、コアロッド14を往復運動させるコアピストン41aを内蔵し、各環状壁40b〜40dによって囲まれた内部空間である作用室に、第1〜第3下パンチ11〜13を往復運動させる環状ピストン41b〜41dを内蔵する構成である。つまり、下筒状シリンダ4b〜4dは、コアロッド14、つまり下パンチの中心軸を中心とした同心円状にしてベースプレート3上に配設されている。各ピストン41a〜41dにはシール部材45が設けられてピストン駆動用の圧油をシールする。
【0020】
環状ピストン41b〜41dのそれぞれには、ピストンロッド42a〜42cが連結されている。このピストンロッド42a〜42cは、環状ピストン41b〜41dが円周方向に比較的薄いため、その構造上、太くすることができない。そこで、図2に示したように、ピストンロッド42a〜42cを、各環状ピストン41b〜41dに対し周方向に複数本ずつ隔設することにより、図2の断面内で見て放射状に配列するようにしている。図2では、ピストンロッド42aは4本、ピストンロッド42bは8本、ピストンロッド42cは12本である。また、ピストンロッド42a〜42cの長さを、図1に示したように、環状ピストン41b〜41dのストロークに対して2倍程度と短くし、加圧成形時にかかる負荷荷重に対し応力変形の少ない構造を実現している。なお、このピストンロッドの数、配置、構造はプレス機械の能力に応じて適宜設計されるものである。また、コアピストン41aについて、筒状シリンダ4b〜4dのピストン41b〜41d及びピストンロッド42a〜42cと同様に、コアピストンと、これに連結されるコア用ピストンロッドとに分けた構造としてもよい。
【0021】
コアピストン41a及びピストンロッド42a〜42cを貫通させる孔を設けた封止蓋43は、ベースプレート3と共にシリンダ全体を挟持して液密状態に密閉し、下シリンダ4a〜4dを構成する。封止蓋43にはシールハウジング44a〜44dが設けられて、コアピストン41a及びピストンロッド42a〜42cと下シリンダ4a〜4dの外端面との間をシールする。また、コアピストン41a及びピストンロッド42a〜42cを上下に駆動する圧油を注入又は排出する配管口46aが封止蓋43に、同じく配管口46bがベースプレート3に設けられている。すなわち、コアピストン41a及び各ピストンロッド42a〜42cを上方へ駆動する場合には、配管口46bから作用室内に圧油を注入すると共に配管口46aから圧油を排出し、下方へ駆動する場合には、配管口46aから作用室内に圧油を注入すると共に配管口46bから圧油を排出する。
【0022】
下部シリンダ5は、中心シリンダ4a及び筒状シリンダ4b〜4dとは別個にベースプレート3の下に設けられて、ダイ10を駆動する。この下部シリンダ5は、図1に示したように、ベースプレート3の下面に設けられたダイ用シリンダ壁50、ダイ10を駆動するダイ用ピストン51、ダイセット2aに連結される可動ロッド52、ダイ用ピストン51と可動ロッド52を連結するダイ用ピストンヘッド53からなる。ダイ用ピストン51にはシール用のシール部材45が設けられている。また、ベースプレート3及びダイ用シリンダ壁50の側壁には、ダイ用ピストン51を駆動するための圧油の配管口46c,46dが設けられている。
【0023】
連結プレート6a〜6dは、ピストンロッド42a〜42cと可動ロッド52のそれぞれと連結される。図1〜図4に示しているように、連結プレート6a〜6dは、下筒状シリンダ4b〜4d及び下部シリンダ5に対応するように設けられている。すなわち、下筒状シリンダ4bに対応して連結プレート6aが、下筒状シリンダ4cに対応して連結プレート6bが、下筒状シリンダ4dに対応して連結プレート6cが、下部シリンダ5に対応して連結プレート6dが、それぞれ設けられ、ピストンロッド42aと連結プレート6aが、ピストンロッド42bと連結プレート6bが、ピストンロッド42cと連結プレート6cが、可動ロッド52と連結プレート6dが、それぞれ連結される。
【0024】
図3に示すように、連結プレート6a〜6cは外側に向かう程、径が大きくなる環状であり、最も外側にある連結プレート6dは外形が四辺形である。ただし、この形は任意であってよい。すなわち、連結プレートの全てを円形や楕円形、四辺形にしてもよく、これらの組み合わせであってもよい。また、連結プレート6a〜6dの上面には以下に説明するユニット化したダイセット2a及び下パンチセット2b〜2dの各連結ロッド21a〜21dを固定する連結孔60d及び連結凹部60a〜60cが設けられている。なお、連結プレート6aの中心にはコアピストン41aを案内するガイド孔61が設けられており、連結プレート6dの連結孔60dは貫通している。
【0025】
次に、ダイ10及び第1〜第3下パンチ11〜13を取り付けるダイセット2a及び下パンチセット2b〜2dについて説明する。図1、図4に示すように、ダイセット2a及び下パンチセット2b〜2dは、最外殻のダイ10を取り付けるダイプレート20a、第1下パンチ11を取り付ける第1下パンチプレート20b、第2下パンチ12を取り付ける第2下パンチプレート20c、第3下パンチ13を取り付ける第3下パンチプレート20d、ダイプレート20aに連結される連結ロッド21a、第1下パンチプレート20bに連結される連結ロッド21b、第2下パンチプレート20cに連結される連結ロッド21c、第3下パンチプレート20dに連結される連結ロッド21dを備えている。
【0026】
ダイセット2a及び下パンチセット2b〜2dは、連結ロッド21a〜21dとコアピストン41aを案内するガイド孔7a〜7eを備えたミドルプレート7をベースにして、各プレート20a〜20dに連結ロッド21a〜21dをネジ22によって連結した構造を有する。連結ロッド21a〜21cは、第1〜第3下パンチプレート20b〜20dに設けられたガイド孔23b〜23d及びミドルプレート7のガイド孔7a〜7dを通して、外段取りでユニット化される。すなわち、ダイプレート2aの連結ロッド21aは第1下パンチプレート20bのガイド孔23bとミドルプレート7のガイド孔7aに挿通され、第1下パンチプレート20bの連結ロッド21bは第2下パンチプレート20cのガイド孔23cとミドルプレート7のガイド孔7bに挿通され、第2下パンチプレート20cの連結ロッド21cは第3下パンチプレート20dのガイド孔23dとミドルプレート7のガイド孔7cに挿通され、第3下パンチプレート20dの連結ロッド21dはミドルプレート7のガイド孔7dに挿通される。なお、図1のダイセット2a及び下パンチセット2b〜2dは、中心線を基準に、右側が連結ロッド21a〜21cとガイド孔23b〜23dの挿通関係を、左側が各プレート20a〜20dと連結ロッド21a〜21dのネジ22による連結関係を示してあるので、左右対称の図として記載していない。しかし、実際には左右対称の構成である。
【0027】
ミドルプレート7において、ガイド孔7aは連結プレート6dの連結孔60dと、ガイド孔7bは連結プレート6cの連結凹部60cと、ガイド孔7cは連結プレート6bの連結凹部60bと、ガイド孔7dは連結プレート6aの連結凹部60aと、ガイド孔7eは連結プレート6aの中心に設けられたガイド孔61と、それぞれ上下方向に対応する位置で設けられている。また、連結ロッド21a〜21dの連結プレート6a〜6dと固定される部分には、固定具62a〜62d(図3参照)を嵌め込む、例えば円周溝形状をした固定具嵌め込み溝24a〜24dが凹設されている。これにより、固定具62aは固定具嵌め込み溝24dに、固定具62bは固定具嵌め込み溝24cに、固定具62cは固定具嵌め込み溝24bに、固定具62dは固定具嵌め込み溝24aに嵌め込まれ、それぞれ連結ロッド21a〜21dを連結プレート6a〜6dに固定している。
【0028】
ダイ10、第1〜第3下パンチ11〜13は、図1に示すように、ダイ押え9a、ダイホルダ9b、パンチ押え9c、パンチ受け板9d等の各アダプタによって、ダイプレート20a及び第1〜第3下パンチプレート20b〜20dにセットされる。
【0029】
以上のダイセット2a及び下パンチセット2b〜2dは、油圧シリンダ機構とは別に、外段取りで構成してユニット化しておく。
【0030】
油圧シリンダ機構としての下筒状シリンダ4b〜4d及び下部シリンダ5と、下パンチセット2b〜2d及びダイセット2aと、を連結する組み立て作業では、まず、外段取りでユニット化したダイセット2a及び下パンチセット2b〜2dのミドルプレート7を、ミドルプレート支持台8に載せる。ミドルプレート支持台8は、ミドルプレート7を、第3下パンチプレート20dと連結プレート6a〜6dとの間に位置させる高さで設けられており、その上端面に、ミドルプレート7をスライドさせるL型形状のスライド部8aが設けられている。したがって、ミドルプレート7をミドルプレート支持台8に載せる場合には、ミドルプレート支持台8に適宜に設けたスライド部8aまでミドルプレート7を持ち上げ、スライド部8aをスライドさせることで設置するようにすれば良い。このようにしてミドルプレート7がミドルプレート支持台8に設置されると、ガイド孔7a〜7dが、連結プレート6a〜6dの連結凹部60a〜60c及び連結孔60dに対応した上方位置に位置決めされ、ガイド孔7eには中心シリンダ4aのコアピストン41aが挿通される。
【0031】
次いで、下筒状シリンダ4b〜4dと下部シリンダ5を駆動して連結プレート6a〜6dを上昇させ、連結ロッド21b〜21dを連結プレート6a〜6cの連結凹部60a〜60cに挿入し且つ連結ロッド21aを連結プレート6dの連結孔60dに貫挿する。そして、図3に示したように、固定具62a〜62dを、連結ロッド21a〜21dの固定具嵌め込み溝24a〜24dに嵌め込み、所定数のボルト63で固定する。本実施形態では、各プレートにつき2個のボルト63で固定具62a〜62dを連結プレート6a〜6d上に固定する。コアロッド14は、コアピストン41aの上端に設けられたネジ穴に螺合される。
【0032】
固定具62a〜62cは連結プレート6a〜6cの上面においてボルト63で固定されているが、固定具62dは、連結プレート6dの下面においてボルト63で固定されている。ダイ10を取り付けるダイセット2aの連結ロッド21aについても、下パンチ11〜13を取り付ける下パンチセット2b〜2cの連結ロッド21b〜21dと同様に連結プレート6a〜6cの上面側で固定してもよいが、ダイ10に対する下部シリンダ5の抜き出し力が下方に大きく働き、ダイ10を取り付けるダイセット2aの連結ロッド21aには引張力が発生するので、連結プレート6dの下面に突き出た連結ロッド21a部分の固定具嵌め込み溝24aに固定具62dを嵌め込み、下面からボルト63で固定する構成とした方が好ましい。
【0033】
以上の簡易な取付作業で、ユニット化したダイセット2a及び下パンチセット2b〜2dと、下筒状シリンダ4b〜4d及び下部シリンダ5と、を連結固定することができる。
【0034】
上述の通り、シリンダ4a〜4d,5は、連結プレート6a〜6dを介して対応する連結ロッド21a〜21dと連結されている。上記の外段取り、ユニット化という点では、連結プレート6a〜6dを使用するのが好ましいが、連結プレートを介さずに各シリンダ4a〜4d,5と連結ロッド21a〜21dとを連結する構成も可能である。
【0035】
図5及び図6は、第1〜第3下パンチプレート20b〜20dについて、単なる平板状ではなく、より撓みに強い形状とした第2実施形態を示している。図5には図1同様の断面図を示してあり、図6には、下パンチプレート20bの斜視図を示してある。
【0036】
第2実施形態の下パンチプレート20b〜20dにおいては、下パンチ11〜13を取り付ける中央部分のパンチ取付部分25b〜25dと、連結ロッド21b〜21dを接続する周囲部分のロッド連結部分26b〜26dとの間に、軸方向(シリンダ及びロッドの動作方向)の段差部分27b〜27dが形成されている。特に、図示の下パンチプレート20b〜20dでは、段差部分27b〜27dが、パンチ取付部分25b〜25dを円形に囲繞する円筒形状であり、これにより下パンチプレート20b〜20dの外形は、スープ皿状(あるいは山高帽子状)になっている(図6参照)。このように段差部27b〜27dを形成したことによって、パンチ取付部分25b〜25dからロッド連結部分26b〜26dへ至る下パンチプレート20b〜20dの断面において、軸方向に伸延する部分が存在することになる。すなわち、この段差部分27b〜27dは、下パンチ11〜13からかかる荷重の方向と同じ方向に延在して、パンチ取付部分25b〜25dを囲繞しているので、この実施形態の下パンチプレート20b〜20dは、単なる平板状とした第1実施形態の下パンチプレートに比べて撓みにくくなる。これにより、パンチ位置の精度を向上させることができ、成形品のさらなる高精度化を実現することができる。
【0037】
段差部分27b〜27dの形状は、図示の円筒形状以外にも可能で、パンチ取付部分25b〜25dを、平面視で多角形に囲繞する筒形状などにすることも可能である。ただし、パンチからかかる荷重を均等に分散させることを考えれば、円筒形状とするのが適している。また、本実施形態の段差部分27b〜27dは上向きに凸(皿を伏せた恰好)としてあるが、下向きに凸としても同様の効果を得ることができる。ただし、上向き凸としてあった方が、次に説明するするように複数の下パンチプレート20b〜20dを入れ子式に重ね合わせることができるので、コンパクト性の点で有利である。
【0038】
第1〜第3下パンチプレート20b〜20dは、上から下へサイズが小さくなるように設計されているが、いずれもほぼ相似形をしている。すなわち、四辺形のロッド連結部分26b〜26d、円筒形の段差部分27b〜27d、及び円形のパンチ取付部分25b〜25dを備えた相似形で、円筒形状の段差部分27b〜27dの直径(円形のパンチ取付部分25b〜25dの直径)が上から下へ小さくなるように形成されている。これによって、図5から分かるとおり、上に位置した第1下パンチプレート20bの段差部分27bの内側へ、下に位置した第2下パンチプレート20cの段差部分27c及びパンチ取付部分25cが入り込めるようになっており、複数のパンチプレートを入れ子式に縮めることができるようになっている。なお、図示の例では、第3下パンチプレート20dについては、その上の第2下パンチプレート20cの段差部分27c内側に、パンチ押え9c及びパンチ受け板9dだけが入り込むサイズとなっているが、各パンチプレートのサイズを調整すれば、全パンチプレートの段差部分及びパンチ取付部分を入れ子式にすることもできる。
【0039】
図7は、下部シリンダを不要とした第3実施形態を図1同様の断面で示している。
【0040】
第3実施形態の場合、第1下パンチ11を取り付ける下パンチセット2bをミドルプレート7に固定し、下パンチセット2bに用いられていた下筒状シリンダ4dを、ダイ10を取り付けるダイセット2aの駆動用に用いている。つまり、下筒状シリンダ4dのピストンロッド42cとダイセット2aを連結プレート6dを介して連結した構成である。この実施形態の場合、ピストンロッド42cは、ダイ10の抜き出し力に対応できるよう、環状ピストン41d上に数多く配されている。すなわち、通常、ダイの駆動には図1に示したような下部シリンダ5を用いて下方に大きな抜き出し力を発生させるので、これによる引張力に耐えられる可動ロッド52(図1)が必要であるが、本実施形態では環状ピストン41d上にピストンロッド42cを数多く配置することにより、ダイ10の抜き出し力に耐えられる構造としている。これは、シリンダを筒状にしてピストンロッドを任意配置できるようにしたことにより、実施可能となるものである。この構成によって下部シリンダが不要となるので、下部シリンダ用にベースプレート下を掘り下げて形成するピットが不要となり、設置が容易で、粉末成形プレス機械1の全高を短縮することができる。
【0041】
なお、第3実施形態では第1下パンチのパンチセット2bをミドルプレート7に固定しているが、他の下パンチのパンチセットを固定してもよい。その他の構成は図1と同様である。
【0042】
図8は、下部シリンダを不要とした第4実施形態を図1同様の断面で示している。
【0043】
この第4実施形態では、1段の下中心シリンダ4a及び4段の下筒状シリンダ4b〜4eを形成して、ダイ10を取り付けるダイセット2a及び第1〜第3下パンチ11〜13を取り付ける下パンチセット2b〜2dの全てを下筒状シリンダ4b〜4eに連結している。最も外側の下筒状シリンダ4eは、所定間隔離れて環状壁40d(図1の最も外側の環状壁)を囲繞するようにして環状壁40eを立設し、この環状壁40eで囲んだ内部空間を作用室として環状ピストン41eを内蔵している。該環状ピストン41eに複数のピストンロッド42dが立設され、封止蓋43により液密封止されている。すなわち、第3実施形態とは異なり、ダイセット用の下筒状シリンダ4eを形成し、この下筒状シリンダ4eのピストンロッド42dとダイセット2aを連結プレート6dで連結している。ピストンロッド42dはダイ駆動用なので、第3実施形態同様に数多く設けることができる。第4実施形態によっても、第3実施形態同等の利点を得ることができる。
【0044】
図9に、上記の下パンチセット及びダイセットに対向させて上方に設けられる上パンチセットについての第5実施形態を、図1相当の断面図で示す。この上パンチセットは、基本的には、ダイセット関連部分を除いて、下パンチセットの上下を逆さまにしたものと考えて良い。また、コアロッドについては要、不要があり、成形品の形状に応じて適宜設けられる。
【0045】
第5実施形態に係る上パンチセット102b,102c,102dは、第1〜第3上パンチ111,112,113を取り付ける第1〜第3上パンチプレート120b,120c,120d及び第1〜第3上パンチプレート120b,120c,120dに連結される連結ロッド121b,121c,121dを備えている。また、本実施形態では上部ラムである上部プレート103の下に、油圧シリンダ機構としての上シリンダ104a,104b,104c,104d(104aが上中心シリンダ、104b〜104dが上筒状シリンダ)が配設されている。そして、これら連結ロッド121b〜121dと上筒状シリンダ104b〜104dとが、連結プレート106a,106b,106cを介して連結されている。なお、コアロッド不要の場合、上中心シリンダ104aを設ける必要はない。あるいは、中心シリンダを使用して最も内側のパンチを駆動する構造とすることも可能である。
【0046】
上中心シリンダ104aは、上コアロッド114を連結するコアピストン141aと、このコアピストン141aを駆動する作用室を形成するように上部プレート103に立設された中央円筒壁140aと、を備えている。また、上筒状シリンダ104b〜104dは、上中心シリンダ4aの中央円筒壁140aを囲繞するようにして所定間隔で上部プレート103に立設された環状壁140b〜140dと、この環状壁140b〜140dで囲まれた内部空間を作用室として駆動される環状ピストン141b〜141dと、この環状ピストン141b〜141dに立設されて連結プレート106a〜106cに連結されるピストンロッド142a〜142cと、を備えている。そして、上中心シリンダ104aのコアピストン141a及び上筒状シリンダ104b〜104dのピストンロッド142a〜142cを、気密又は液密状態で貫通させ且つ各作用室を密閉する封止蓋143を有している。
【0047】
中央円筒壁140aと環状壁140b〜140dについては、上部プレート103の下に、中央円筒壁140aを中央に配し、該中央円筒壁140aより径の大きな環状壁140bを同心で配列し、さらに、該環状壁140bより径の大きな環状壁140c及び該環状壁40cより径の大きな環状壁140dを同心で配列して形成されている。そして、立設された中央円筒壁140aによって形成される作用室に、上コアロッド114を往復運動させるコアピストン141aを内蔵し、各環状壁140b〜140dによって囲まれた内部空間である作用室に、第1〜第3上パンチ111〜113を往復運動させる環状ピストン141b〜141dを内蔵する構成である。つまり、上筒状シリンダ104b〜104dは、上コアロッド114、つまり上パンチの中心軸を中心とした同心円状にして上部プレート103下に配設されている。各ピストン141a〜141dにはシール部材145が設けられてピストン駆動用の圧油をシールする。
【0048】
環状ピストン141b〜141dのそれぞれには、上記実施形態同様のピストンロッド142a〜142cが連結されている。なお、コアピストン141aについて、筒状シリンダ104b〜104dのピストン141b〜141d及びピストンロッド142a〜142cと同様に、コアピストンと、これに連結されるコア用ピストンロッドとに分けた構造としてもよい。
【0049】
コアピストン141a及びピストンロッド142a〜142cを貫通させる孔を設けた封止蓋143は、上部プレート103と共にシリンダ全体を挟持して少なくとも液密封止し、上シリンダ104a〜104dを構成する。封止蓋143にはシールハウジング144a〜144dが設けられて、コアピストン141a及びピストンロッド142a〜142cと上シリンダ104a〜104dの外端面との間をシールする。また、コアピストン141a及びピストンロッド142a〜142cを上下に駆動する圧油を注入又は排出する配管口146aが封止蓋143に、同じく配管口146bが上部プレート103に設けられている。すなわち、コアピストン141a及び各ピストンロッド142a〜142cを下方へ駆動する場合には、配管口146bから作用室内に圧油を注入すると共に配管口146aから圧油を排出し、上方へ駆動する場合には、配管口146aから作用室内に圧油を注入すると共に配管口146bから圧油を排出する。
【0050】
連結プレート106a〜106cは、ピストンロッド142a〜142cのそれぞれと連結される。上記実施形態と同様に、連結プレート106a〜106cは、上筒状シリンダ104b〜104dに対応するように設けられている。すなわち、上筒状シリンダ104bに対応して連結プレート106aが、上筒状シリンダ104cに対応して連結プレート106bが、上筒状シリンダ104dに対応して連結プレート106cが、それぞれ設けられ、ピストンロッド142aと連結プレート106aが、ピストンロッド142bと連結プレート106bが、ピストンロッド142cと連結プレート106cが、それぞれ連結される。
【0051】
連結プレート106a〜106cは、上記実施形態と同様に、外側に向かう程、径が大きくなる環状である。ただし、この形は任意であってよく、楕円形、四辺形、あるいはこれらの組み合わせであってもよい。この連結プレート106a〜106cの上面には以下に説明するユニット化した上パンチセット102b〜102dの各連結ロッド121b〜121dを固定する連結凹部160a〜160cが設けられている。また、連結プレート106aの中心にはコアピストン141aを案内するガイド孔161が設けられている。
【0052】
第1〜第3上パンチ111〜113を取り付ける上パンチセット102b〜102dは、第1上パンチ111を取り付ける第1上パンチプレート120b、第2上パンチ112を取り付ける第2上パンチプレート120c、第3上パンチ113を取り付ける第3上パンチプレート120d、第1上パンチプレート120bに連結される連結ロッド121b、第2上パンチプレート120cに連結される連結ロッド121c、第3上パンチプレート120dに連結される連結ロッド121dを備えている。
【0053】
上パンチセット102b〜102dは、連結ロッド121b〜121dとコアピストン141aを案内するガイド孔107b〜107eを備えたミドルプレート107をベースにして、各プレート120b〜120dに連結ロッド121b〜121dをネジ122によって連結した構造を有する。連結ロッド121b〜121dは、第2及び第3上パンチプレート120c,120dに設けられたガイド孔123c,123d及びミドルプレート107のガイド孔107b〜107dを通して、外段取りでユニット化される。すなわち、第1上パンチプレート120bの連結ロッド121bは第2上パンチプレート120cのガイド孔123cとミドルプレート107のガイド孔107bに挿通され、第2上パンチプレート120cの連結ロッド121cは第3上パンチプレート120dのガイド孔123dとミドルプレート107のガイド孔107cに挿通され、第3上パンチプレート120dの連結ロッド121dはミドルプレート107のガイド孔107dに挿通される。
【0054】
ミドルプレート107において、ガイド孔107bは連結プレート106cの連結凹部160cと、ガイド孔107cは連結プレート106bの連結凹部160bと、ガイド孔107dは連結プレート106aの連結凹部160aと、ガイド孔107eは連結プレート106aの中心に設けられたガイド孔161と、それぞれ上下方向に対応する位置で設けられている。また、連結ロッド121b〜121dの連結プレート106a〜106cと固定される部分には、上記実施形態と同様に、固定具162a〜162cを嵌め込む固定具嵌め込み溝が凹設され、それぞれ固定具162a〜162cが嵌め込まれている。また、上パンチセット102b〜102dの場合は、連結凹部160a〜160cに挿入された連結ロッド121b〜121dを、連結プレート106a〜106cの反対側からネジ122にて固定している。これによると、固定具162a〜162cの使用が不要な場合もあり得る。
【0055】
第1〜第3上パンチ111〜113は、図示のように、パンチ押え109c、パンチ受け板109d等のアダプタによって、第1〜第3上パンチプレート120b〜120dにセットされる。
【0056】
これら上パンチセット102b〜102dは、油圧シリンダ機構とは別に、外段取りで構成してユニット化しておくことができる。
【0057】
油圧シリンダ機構としての上筒状シリンダ104b〜104dと、上パンチセット102b〜102dと、を連結する組み立て作業では、まず、外段取りでユニット化した上パンチセット102b〜102dのミドルプレート107を、ミドルプレート支持壁108に組み付ける。ミドルプレート支持壁108は、ミドルプレート107を、第3上パンチプレート120dと連結プレート106a〜106cとの間に位置させる高さで設けられており、その下端部内側面に、ミドルプレート107をスライドインさせるコ字形状のスライド溝108aが凹設されている。したがって、ミドルプレート107をミドルプレート支持壁108に組み付ける際には、ミドルプレート支持壁108のスライド溝108aまでミドルプレート107を持ち上げ、スライド溝108aに沿ってスライドさせることで設置するようにすれば良い。このようにしてミドルプレート107がミドルプレート支持壁108に設置されると、ガイド孔107b〜107dが、連結プレート106a〜106cの連結凹部160a〜160cに対応した下方位置に位置決めされ、ガイド孔107eには上中心シリンダ104aのコアピストン141aが挿通される。
【0058】
次いで、上筒状シリンダ104b〜104dを駆動して連結プレート106a〜106cを下降させ、連結ロッド121b〜121dを連結プレート106a〜106cの連結凹部160a〜160cに挿入する。そして、連結プレート106a〜106cの反対側からネジ122にて固定する。固定具162a〜162cは、ミドルプレート107の組み付けに先立って連結ロッド121b〜121dの固定具嵌め込み溝に嵌め込んでおくとよい。上コアロッド114は、コアピストン141aの上端に設けられたネジ穴に螺合される。
【0059】
以上の簡易な取付作業で、ユニット化した上パンチセット102b〜102dと、上筒状シリンダ104b〜104dと、を連結固定することができる。
【0060】
この第5実施形態においても、上記の外段取り、ユニット化という点では、連結プレート106a〜106cを使用するのが好ましいが、連結プレートを介さずに上筒状シリンダ104b〜104dと連結ロッド121a〜121cとを連結する構成も可能である。
【0061】
図10に、図8の下パンチセット及びダイセットと油圧シリンダ機構、そして、図9の上パンチセットと油圧シリンダ機構を使用した粉末成形プレス機械1の全体像の一例を示す。図示のように、特に、下部シリンダを不要とした図7や図8の下パンチセット及びダイセットに図9のような上パンチセットを組み合わせることにより、機械下のピットを不要とした全高の低いプレス機械を提供することができる。
【0062】
また、この他に、上下パンチプレートとして、図5及び図6に示す軸方向段差部分付きのプレートを使用することもできる。上述したように、当該パンチプレートは、パンチ取付部分からロッド連結部分へ至るプレート断面において、パンチからかかる荷重の方向と同じ方向に延在してパンチ取付部分を囲繞する段差部分が存在することにより、撓みにくい構造を有する。したがって、この構造のパンチプレートを使用することにより、パンチ位置の精度を向上させることができ、成形品のさらなる高精度化を実現することができる。
【0063】
図10の粉末成形プレス機械1では、最下部のベースプレート3が四辺形で、その四隅から4本の支柱200が略垂直に立設されている。ベースプレート3は図8に示したベースプレートで、支柱200の内側に、図8の下パンチセット及びダイセットと下中心シリンダ及び下筒状シリンダとが配設されている。
【0064】
支柱200の頭頂部には、四辺形の上部フレーム201が固定されており、この上部フレーム201に油圧式の上部シリンダ202が取り付けられ、そして、上部シリンダ202と上部プレート103とを連結する耐圧リンク機構203が設けられている。すなわち上部シリンダ202は、上パンチセットの上部プレート103を上部ラムとして上下動させる役割を担う。上部プレート103は、4本の支柱200をガイドとして貫通させてあり、この支柱200に沿って上下にスライドする。耐圧リンク機構203は、上部プレート103の下降動作に伴って伸長し、伸長状態において加圧時の反力に対抗するもので、成形時に上部プレート103の位置を維持するために設けられている。上部シリンダ202で直接的に上部プレート103を駆動することにより、省エネ且つ高速作動に有利である。
【0065】
上部プレート103は、図9に示した上部プレートで、この下に図9の上パンチセットと上中心シリンダ及び上筒状シリンダとが配設されている。上部プレート103に組み付けられた上パンチ111〜113及び上コアロッド114は、ダイ10に対して位置決めされ、下パンチ11〜13及びコアロッド14に対向する。これにより、上下両面に段の付いた成形品をプレス加工することができる。
【0066】
この粉末成形プレス機械1の各油圧シリンダ機構は、操作パネルを前面に備えた制御装置300により制御される。サーボ制御の方式は、各シリンダをサーボモータ駆動の油圧ポンプで作動させるもので、コンパクトな構成で多数の油圧シリンダを制御することができるとともに必要最小限の動力で駆動でき、無駄なエネルギーを浪費しないシステムとすることができる。
【0067】
このように、図10に示した粉末成形プレス機械1は、上下パンチプレートを備え且つこれらをそれぞれ上下の筒状シリンダで駆動して加工を行う仕組みになっており、それぞれのパンチの加圧力と位置を任意制御することが可能である。これにより、上下のパンチ両方から加圧して加工を行えるので、ダイやコアロッドに対し、従来のように下向き一方向への側圧がかからなくなる。その結果、対向する各上下パンチ間の中立面を基準に加圧量、速度を制御することができ、従来に比べて制御がし易くなり、加工精度が向上する。そして、上下からの均等加圧によって、成形品の均密度化、高密度化も実現することができる。
【0068】
図11〜図13に、上下パンチによる中立面を基準とした加工について、説明図を示している。
【0069】
図11の第1例は、例えば各一つの上下パンチを使用し、表面に段の無い成形品を加工するときの説明である。この場合、まず、先に下パンチをダイ中に挿入して充填位置で止め、所定量の粉末をダイ内に充填する。そして、例えば図10のような上部シリンダの駆動によって上パンチを型締め位置まで下降させて停止させる(A)。この後、成形品形状及び粉末充填量を基に算出されるダイ内充填粉末の中立面を基準として、上下パンチを共に駆動し、加圧を開始する(B)。このように中立面を基準に上下から加圧を実施することにより、成形品の上下で同密度に圧縮が行われるので、均密度、高密度の成形品を得ることができる。また、中立面へ向けて上下パンチを駆動するので、ダイに対する一方向の側圧を考えなくて済む。加圧が終了すると、上下パンチを駆動して圧抜(減圧)を行い(C)、型開きとなる。この圧抜時も、上下パンチを共に駆動することから、上下で減圧のバランスがとれ、無理なくクラックレスで成形品を取り出すことができる。
【0070】
図12の第2例は、成形品の両表面に段付加工を行うときの説明である。まず、下パンチをダイ中へ上昇させ、成形品の形状に従って決まる充填位置でそれぞれ下パンチを止め、所定量の粉末をダイ中に充填する。そして、例えば図10のような上部シリンダの駆動によって上パンチを型締め位置まで加工させて停止させる(A)。さらに、成形品形状及び粉末充填量を基に算出されるダイ内充填粉末の各段中立面を基準として、それぞれの段の上下パンチを加圧開始位置へ位置決めし、粉末をトランスファする(B)。これにより、各上下パンチが加圧開始位置に位置決めされると、前記中立面を基準に上下パンチを共に駆動し、加圧を開始する(C)。上記同様、中立面を基準に上下から加圧を実施することにより、成形品の上下で同密度に圧縮が行われるので、均密度、高密度の成形品を得ることができる。また、中立面へ向けて上下パンチを駆動するので、ダイに対する一方向の側圧を考えなくて済む。加圧が終了すると、上下パンチを駆動して圧抜を行い(D)、型開きとなる。この圧抜時も、上下パンチを共に駆動することから、上下で減圧のバランスがとれ、無理なくクラックレスで成形品を取り出すことができる。
【0071】
図13の第3例は、成形品の側面に段付加工(アンダーカット)を行うときの説明である。この場合、例えば、ダイの内側面に段形成のための凸型が形成され、当該ダイは、脱型のために左右へ開くことができるものとなっている。まず、先に下パンチをダイ中へ上昇させて充填位置で止め、所定量の粉末をダイ内に充填する。そして、例えば図10のような上部シリンダの駆動によって上パンチを型締め位置まで下降させて停止させる(A)。この後、成形品形状及び粉末充填量を基に算出されるダイ内充填粉末の中立面を基準として、上下パンチを共に駆動し、加圧を開始する(B)。このように中立面を基準に上下から加圧を実施することにより、成形品の上下で同密度に圧縮が行われるので、均密度、高密度の成形品を得ることができる。また、中立面へ向けて上下パンチを駆動するので、ダイに対する一方向の側圧を考えなくて済む。加圧が終了すると、上下パンチを駆動して圧抜(減圧)を行い(C)、さらにダイを分割して型開きとなる(D)。この圧抜時も、上下パンチを共に駆動することから、上下で減圧のバランスがとれ、無理なくクラックレスで成形品を取り出すことができる。
【符号の説明】
【0072】
1 粉末成形プレス機械
2a ダイセット
2b〜2d 下パンチセット
3 ベースプレート
4a 下中心シリンダ
4b〜4e 下筒状シリンダ
6a〜6d 連結プレート
7 ミドルプレート
7a〜7e ガイド孔
8 ミドルプレート支持台
8a スライド部
9a ダイ押え
9b ダイホルダ
9c パンチ押え
9d パンチ受け板
10 ダイ
11〜13 下パンチ
14 コアロッド
20a ダイプレート
20b〜20d パンチプレート
21a〜21d 連結ロッド
22 ネジ
23b〜23d ガイド孔
24a〜24d 固定具嵌め込み溝
40a 中央円筒壁
40b〜40e 環状壁
41a コアピストン
41b〜41e 環状ピストン
42a〜42d ピストンロッド
43 封止蓋
44a〜44d シールハウジング
60a〜60c 連結凹部
60d 連結孔
61 ガイド孔
62a〜62d 固定具
63 ボルト
102b〜102d 上パンチセット
103 上部プレート
104a 上中心シリンダ
104b〜104d 上筒状シリンダ
106a〜106c 連結プレート
107 ミドルプレート
107b〜107e ガイド孔
108 ミドルプレート支持壁
108a スライド溝
109c パンチ押え
109d パンチ受け板
111〜113 下パンチ
114 上コアロッド
120b〜120d パンチプレート
121b〜121d 連結ロッド
122 ネジ
123c,123d ガイド孔
140a 中央円筒壁
140b〜140d 環状壁
141a 上コアピストン
141b〜141d 環状ピストン
142a〜142c ピストンロッド
143 封止蓋
144a〜144d シールハウジング
160a〜160c 連結凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイを最外殻として、該ダイ中に各1以上の上下パンチを配置してプレス成形を行う粉末成形プレス機械であって、
前記上パンチを取り付ける上パンチプレート及び該上パンチプレートに連結される連結ロッドを備えた1以上の上パンチセットと、
前記下パンチを取り付ける下パンチプレート及び該下パンチプレートに連結される連結ロッドを備えた1以上の下パンチセットと、
前記上パンチの中心軸を中心とした同心円状にして上部プレート下に配設され、前記上パンチセットの連結ロッドと連結される1以上の上筒状シリンダと、
前記下パンチの中心軸を中心とした同心円状にしてベースプレート上に配設され、前記下パンチセットの連結ロッドと連結される複数の下筒状シリンダと、
を含んで構成され、
前記下パンチセットが、前記ベースプレートに立設された複数本の支柱の内側に配設されると共に、当該支柱に前記上部プレートが上下スライド可能に取り付けられており、
前記支柱に固定された上部フレームに上部シリンダが設けられると共に該上部シリンダが耐圧リンク機構を介して前記上部プレートと連結され、
前記上部シリンダによる前記上部プレートの下降動作に伴って前記耐圧リンク機構が伸長し、該伸長する耐圧リンク機構により、成形時に前記上部プレートの位置が維持されるようにしてあり、
前記上下筒状シリンダを流体圧駆動することで、前記上下パンチを動作させて上下から加圧可能になっている、
粉末成形プレス機械。
【請求項2】
ダイを最外殻として、該ダイ中に各1以上の上下パンチを配置してプレス成形を行う粉末成形プレス機械であって、
前記上パンチを取り付ける上パンチプレート及び該上パンチプレートに連結される連結ロッドを備えた1以上の上パンチセットと、
前記下パンチを取り付ける下パンチプレート及び該下パンチプレートに連結される連結ロッドを備えた1以上の下パンチセットと、
前記ダイを取り付けるダイプレート及び該ダイプレートに連結される連結ロッドを備えたダイセットと、
前記上パンチの中心軸を中心とした同心円状にして上部プレート下に配設され、前記上パンチセットの連結ロッドと連結される1以上の上筒状シリンダと、
前記下パンチの中心軸を中心とした同心円状にしてベースプレート上に配設され、前記下パンチセットの連結ロッド及び前記ダイセットの連結ロッドと連結される複数の下筒状シリンダと、
を含んで構成され、
前記下パンチセット及び前記ダイセットが、前記ベースプレートに立設された複数本の支柱の内側に配設されると共に、当該支柱に前記上部プレートが上下スライド可能に取り付けられており、
前記支柱に固定された上部フレームに上部シリンダが設けられると共に該上部シリンダが耐圧リンク機構を介して前記上部プレートと連結され、
前記上部シリンダによる前記上部プレートの下降動作に伴って前記耐圧リンク機構が伸長し、該伸長する耐圧リンク機構により、成形時に前記上部プレートの位置が維持されるようにしてあり、
前記上下筒状シリンダを流体圧駆動することで、前記上下パンチを動作させて上下から加圧可能になっている、
粉末成形プレス機械。
【請求項3】
最も内側の前記下筒状シリンダの内側に設けられた中心シリンダと、
該中心シリンダに連結されるコアロッドと、
を含み、
前記ダイを最外郭として中央に前記コアロッドが配され、これらダイとコアロッドとの間に前記下パンチが配置される、
請求項1又は請求項2に記載の粉末成形プレス機械。
【請求項4】
最も内側の前記上筒状シリンダの内側に設けられた上中心シリンダと、
該上中心シリンダに連結される上コアロッドと、
を含み、
前記ダイを最外郭として中央に前記上コアロッドが配され、これらダイと上コアロッドとの間に前記上パンチが配置される、
請求項3記載の粉末成形プレス機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−71357(P2012−71357A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−9629(P2012−9629)
【出願日】平成24年1月20日(2012.1.20)
【分割の表示】特願2008−145990(P2008−145990)の分割
【原出願日】平成20年6月3日(2008.6.3)
【出願人】(000105394)コータキ精機株式会社 (16)