説明

粉末状葱茶

【課題】長葱の栄養価を損なうことなく飲用として簡易に美味しく摂取できるようにする。
【解決手段】主原料としての乾燥長葱の粉末に乾燥緑茶葉の粉末を加えた粉末状葱茶であって、その乾燥長葱の粉末と乾燥緑茶葉の粉末との配合比率が、同等の乾燥状態における重量比で乾燥長葱の粉末1に対し乾燥緑茶葉の粉末が0.3乃至0.6とされ、両者が均一な状態に混ぜ合わされてなることを特徴とするものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末状葱茶に関し、殊に、乾燥長葱の粉末に乾燥緑茶葉の粉末をブレンドしてなる粉末状葱茶に関する。
【背景技術】
【0002】
玉葱や長葱などの葱属野菜は、ビタミンやミネラル等の栄養価を豊富に富んだ健康食材として広く知られている。これら葱属野菜は煮たり焼いたりして食べるほか、少量を刻んで薬味として用いられるのが一般的であるが、これらを簡易に摂取可能とするために飲用としての利用も試みられてきた。
【0003】
しかし、葱属野菜は刺激性成分としてアリル化合物を多く含んでおり、特に長葱は、アリシンを多量に含んで鼻にツーンとくる独特の臭気と強い辛さを有しているために、生や乾燥の状態では食用はおろか飲料としての利用に全く適しておらず、その栄養価を損なうことなく美味しさや飲みやすさを確保することは容易ではなかった。
【0004】
この問題に対し、特開2006−246793号公報には、所定の温度・時間による焙煎方法で焙煎した後、所定の抽出方法により、葱属野菜独特の臭気を低減したフルクタン含有飲料水及びその製造方法が提案され、ラッキョウや玉葱等の葱属野菜を主原料として飲用に好適な状態にする手段が知られている。
【0005】
しかし、この製造方法のように、比較的高温で長時間焙煎することで葱属野菜特有の臭気や辛みを低減させることは、葱属野菜が有する重要な栄養成分を損なうことになるため、生の葱属野菜が有する栄養価の低下を最小限に抑えつつ飲用に適した状態にするという課題は依然として達成されていない。
【0006】
ところで、近年、群馬県の下仁田町を中心とした地域を原産とする長葱(白葱)の一種である下仁田葱が、その食味の良さと栄養価の高さから広く注目を集めている。即ち、上述したように、長葱はカルシウム、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、に加えアリル化合物、ミューシン等の栄養成分を有しているものであるが、下仁田葱は他の長葱と比べてこれらの栄養価が高いことが知られており、殊に、血行改善効果に優れたアリル化合物の1つであるアリシンと、食物繊維同様の作用を有するミューシンを、他の長葱の3倍も有している点を特徴としている。
【0007】
ところが、下仁田葱は前述のようにアリル化合物が豊富に含まれているために、栄養価が損なわれにくい生や乾燥の状態では辛みが強すぎて飲用はおろか食用にも全く適していなかった。従って、このような下仁田葱をその特有の優れた栄養価を損なうことなく飲用として簡易に摂取することができ、且つ美味しいものにすることができれば、極めて有用でニーズの高いものになると考えられる。
【特許文献1】特開2006−246793号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような問題点を解決しようとするものであり、長葱について、その栄養価を損なうことなく飲用として簡易に美味しく摂取できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明は、主原料としての乾燥長葱の粉末に乾燥緑茶葉の粉末を加えた粉末状葱茶であって、その乾燥長葱の粉末と乾燥緑茶葉の粉末との配合比率が、同等の乾燥状態における重量比で乾燥長葱の粉末1に対し乾燥緑茶葉の粉末が0.3乃至0.6とされ、両者が均一な状態に混ぜ合わされてなることを特徴とするものとした。
【0010】
上述したように、栄養豊富でありながら生や乾燥の状態では辛みや刺激が強く飲用や食用に適していなかった長葱を、乾燥・粉末の状態にするとともに、乾燥緑茶葉の粉末と上記のような混合比で混ぜ合わせて粉末状のものとしたことで、お湯を注ぐ等して飲用とした場合に、緑茶の刺激緩和作用により長葱の風味を保ちつつ、飲みやすい状態としながら栄養素を損なわずに簡易に摂取できるものとなる。尚、乾燥緑茶葉の粉末を加えたことにより、緑茶が有するビタミンやカテキン等の栄養素も同時に摂取できることは言うまでもない。
【0011】
また、この場合、その乾燥長葱は乾燥下仁田葱であるものとすれば、風味及び栄養価の観点で特に優れたものとなる。さらに、上述した粉末状葱茶において、乾燥長葱の粉末と乾燥緑茶葉の粉末の両者で、全体の90重量%以上を占めていることを特徴とするものとすれば、長葱の風味が充分に味わえるとともに、その栄養素も充分な量を摂取できるものとなる
【0012】
さらにまた、上述した粉末葱茶において、その乾燥長葱の粉末が67乃至73重量%、その乾燥緑茶葉の粉末が27乃至33重量%の割合で配合されたものとすれば、長葱と緑茶葉のバランスに優れて優れた風味を実現しやすいことに加え、長葱の栄養素と緑茶の栄養素とのバランスを保ちながら一層栄養価に優れたものとなる。
【発明の効果】
【0013】
乾燥長葱と乾燥緑茶葉とを上述のような状態にして混ぜ合わせてなる粉末状葱茶とした本発明によると、長葱の栄養価を損なうことなく飲用として美味しく簡易に摂取することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0015】
図1は本実施の形態の粉末状葱茶の製造手順を説明するためのチャートを示している。尚、主原料になる長葱は、いわゆる深谷葱や千住葱など多くの種類が知られているが、その中でも群馬県の下仁田町を中心とした地域で主として11月〜12月に収穫される下仁田葱が、風味・栄養価の観点から最も優れている。また、この下仁田葱の中でも12月に霜が降りてから収穫したものが甘みと旨みに優れることから特に推奨される。
【0016】
乾燥長葱は、生の長葱を細かくスライス(細断)した後に乾燥させて作成するが、自然乾燥よりも70℃程度に加熱して1時間程度で急速に乾燥させることが、その後の風味、栄養価の保持及び衛生上の観点から望ましい。そして、このようにして得た乾燥長葱を、所定の粉末化装置で所定サイズの微粒子状または微細片状に粉末化する。
【0017】
主原料の乾燥長葱に加える乾燥緑茶葉は、生茶葉を蒸した後、揉捻・乾燥・仕上げ等を行って製品化した市販の緑茶葉を、そのまま使用することができる。この乾燥緑茶葉を、前述した乾燥長葱の粉末と同様の粉状になるまで粉末化装置で加工して粉末化する。
【0018】
そして、乾燥長葱の粉末と乾燥緑茶葉の粉末とを、同等の含水状態(乾燥状態)における重量比で、乾燥長葱1に対し乾燥緑茶葉が0.3〜0.6となるように、容器またはミキサに投入し、両者がほぼ均一な状態で混ぜ合われるまで混合作業を行うことにより、乾燥長葱と乾燥緑茶葉とで全体の100重量%を占めた本実施の形態の粉末状葱茶が完成する。尚、乾燥長葱と乾燥緑茶葉で、全体の90重量%以上を占めることが風味・栄養価の観点から好ましく、この場合、乾燥長葱67〜73重量%、乾燥緑茶葉27〜33重量%の範囲であることが、風味のバランスの観点で理想的である。
【0019】
このような配合比率で、乾燥長葱の粉末と乾燥緑茶葉の粉末とを混ぜ合わせたことにより、お湯を適量注ぐだけで容易に飲むことが可能なものとなるが、前述した割合で乾燥緑茶葉を加えたことにより、長葱の刺激を緩和しながらその独特の風味を充分に味わえるようになり、且つ、豊富な栄養素の殆ど総てを確実に摂取可能としながら、極めて美味しい飲料(お茶)として利用できる形態となった。
【0020】
そして、この粉末状葱茶は、例えばスプーン等を用いて茶碗に0.5g入れて90℃程度のお湯を150ml注ぐだけで、美味しいお茶として飲むことができる。この場合、急須やティーバッグを用いる通常の茶類においてお湯で抽出したエキスのみを摂取するのに対し、本発明においては総ての成分をそのまま飲んで体内に摂取することができるため、極めて栄養価の高い優れた健康飲料となる。
【0021】
即ち、長葱は上述したように、ビタミンA、C、B1、カルシウム等の体に良いとされている成分を多量に含んでいるが、殊に、長葱特有のツーンとした刺激を与える辛み成分として多量に含まれたアリル化合物の1種であるアリシンは、血行改善作用を有して体を温める作用があるためカゼの予防に有効であると言われており、これに加え、血液をサラサラにして血流を改善させる作用を有していることから、心筋梗塞や脳梗塞の予防効果があると言われている。
【0022】
そのため、本発明の粉末状葱茶は、生活習慣病の予防の観点でも極めて優れたものであり、その有効成分を損なうことなく飲料として簡易に摂取出来る点を特徴としている。尚、緑茶葉もビタミンA、C、E、ミネラル等、有用な成分を豊富に含んでいるが、その中でも最近ではカテキンが注目されており、血圧上昇や発ガンを抑制する作用、老化抑制作用を有していると言われており、このような緑茶葉の栄養素を長葱が有する豊富な栄養素に加えたことにより、更に栄養価の優れたものとなっている。
【実施例1】
【0023】
次に、主原料となる長葱に下仁田葱を用いた実施例により、本発明を更に詳細に説明する。
(粉末状乾燥長葱の作成)市販の乾燥下仁田葱(製品名:乾燥下仁田葱、製造販売元:群馬県甘楽郡下仁田町馬山・瀬間氏、規格:100%生葱をスライスした後70℃1時間加熱乾燥、5kg入り)を用い、粉末化装置(製品名:ティープルL−500、(株)ジャテックス製)にて100gに対し10分間粉末化加工を行い、粉末とした。
【0024】
(粉末状乾燥緑茶葉の作成)市販の乾燥緑茶葉(製品名:静岡県産緑茶、製造販売元:富士茶農業協同組合、品種:やぶ北)を前記の装置を用いて100gに対し10分間加工を行い、粉末状とした。
【0025】
(混合作業)粉末状乾燥長葱70gに対し粉末状乾燥緑茶葉30gを1つの混合用容器に投入して100gとし、ほぼ均一な状態になるまで撹拌棒等を用いて充分に混ぜ合わせて、本実施例の粉末状葱茶を作成した。
【0026】
このように、前述した実施の形態で説明した手順に従って同様に作成した本実施例の粉末状葱茶は、微細な粉末状であって乾燥長葱の粉末と乾燥緑茶葉の粉末とが均一に混合されてなるものである。そして、これを飲料とするために茶碗に0.5g入れて90℃のお湯を注ぎ、お茶の状態にした。
【0027】
このようにして得られたお茶(葱茶)を、本願発明者が実際に飲んでみたところ、さほど刺激は強くなくお茶としての飲用に充分耐えうるものであり、しかも、長葱の中でも特に評価の高い下仁田葱特有の香り、風味、旨みを充分に味わうことができた。また、同様にして10名に試飲させたところ全員同様の意見であり極めて好評であったことから、本実施例による粉末状葱茶は、お湯を注ぐことにより葱茶として飲用に適したものであることが分かった。
【0028】
尚、上述した本実施例による粉末状葱茶は、前記したような飲用の他、下仁田葱とお茶とをブレンドしたことによる優れた風味を生かして、そのまま食用としても適している。例えば、うどん、スパゲティ等の麺類の薬味として使用したり、塩を加えたものを天ぷらにかけたりしても美味である。また、ふりかけやお茶漬け用としてもよく、さらに、お菓子やヨーグルト、アイスクリーム等の甘味とも相性のよいものである。
【0029】
以上、述べたように、本発明により、長葱を栄養価を損なうことなく飲用として簡易に美味しく摂取できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明における実施の形態の粉末状葱茶の製造手順を示すチャート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主原料としての乾燥長葱の粉末に乾燥緑茶葉の粉末を加えた粉末状葱茶であって、前記乾燥長葱の粉末と前記乾燥緑茶葉の粉末との配合比率が、同等の乾燥状態における重量比で前記乾燥長葱の粉末1に対し前記乾燥緑茶葉の粉末が0.3乃至0.6とされており、両者が均一な状態に混ぜ合わされてなることを特徴とする粉末状葱茶。
【請求項2】
前記乾燥長葱は下仁田葱であることを特徴とする、請求項1に記載した粉末状葱茶。
【請求項3】
前記乾燥長葱の粉末と前記乾燥緑茶葉の粉末の両者で、全体の90重量%以上を占めている、ことを特徴とする請求項1または2に記載した粉末状葱茶。
【請求項4】
前記乾燥長葱の粉末が67乃至73重量%、前記乾燥緑茶葉の粉末が27乃至33重量%の割合で配合されている、ことを特徴とする請求項1,2または3に記載した粉末状葱茶。

【図1】
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【公開番号】特開2010−4834(P2010−4834A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−170385(P2008−170385)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(508196678)有限会社恵比寿屋黒澤商店 (1)
【Fターム(参考)】