説明

粉状体の圧縮成形装置および圧縮成形方法

【課題】 成形後の粉状体に気泡や空気溜まりが残るような事態を回避して高い品質を維持する。
【解決手段】 皿状の容器1上に供給された粉状体2を加圧して当該容器1上にて圧縮成形する場合において、粉状体2を加圧する際に生じる空気の通気孔と、圧縮成形時にこの通気孔を通じて空気を吸引する吸引装置5とを備えた装置とする。通気孔は、粉状体2を直接またはクロス6を介して間接的に加圧するパッド3の加圧面に複数設けられている。このように複数設けられている通気孔はほぼ等間隔に配置されていることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉状体の圧縮成形装置および圧縮成形方法に関する。さらに詳述すると、本発明は、例えば顆粒または粉体等の各種化粧料をはじめとする粉状体を加圧して所定形状に圧縮成形する際の技術の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば化粧用ファンデーションに代表されるような、顆粒または粉体等の各種化粧料をはじめとする粉状の物体(本明細書ではこれらをまとめて「粉状体」と表す)を加圧(プレス)して所望の形状に形成するための圧縮成形技術が利用されている。このような圧縮成形技術としては、例えば、粉状体を多段式に加圧するもの、急速加圧するもの、加圧力を任意に設定しながらこれを記憶しておき、粉状体の種類や粘度状況に応じて最適な加圧成形が行えるようにしたものなどが開示されている(例えば特許文献1、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開昭63−60913号公報(特公平8−18949号公報)
【特許文献2】特開昭63−188614号公報(特許第2539208号公報)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述したように種々の圧縮成形技術が開示されているものの、それでも、製品となるべき成形後の粉状体に気泡のような空気溜まりが残っていたり、このような空気溜まりに起因して表面が剥がれたりすることがある。このようなことが生じると、表面が整わず見た目に問題があることはもとより、品質の低下、ひいては歩留まりや生産性の低下を招来することになる。以上のことは、当該製品が高品質であることが要求される例えば高級化粧品のようなものであればなおさらであり、高い品質を維持できるような圧縮成形技術が求められる。
【0004】
そこで、本発明は、成形後の粉状体に気泡や空気溜まりが残るような事態を回避して高い品質を維持することを可能とする粉状体の圧縮成形装置および圧縮成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するため、本発明者は種々の検討を行い、その結果、上述のような問題を有効に回避することが可能な技術を知見するに至った。本発明はかかる知見に基づくもので、請求項1に記載の発明は、皿状の容器上に供給された粉状体を加圧して当該容器上にて圧縮成形するための圧縮成形装置において、前記粉状体を加圧する際に生じる空気の通気孔と、圧縮成形時にこの通気孔を通じて前記空気を吸引する吸引装置と、を備えていることを特徴とするものである。
【0006】
この圧縮成形装置を用いた場合、少なくとも圧縮成形工程時、成形対象である粉状体の周囲を真空状態(ただし、ここでいう真空とは厳密な意味での真空ということではなく、およそ大気圧よりも圧力の低い空間が形成されているという意味での真空状態ということ)とすることができる。こうした場合、粉状体は、加圧されて隙間から生じる空気を吸引されながら所望の形状に圧縮成形されることになる。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の圧縮成形装置における通気孔が、前記粉状体を直接またはクロスを介して間接的に加圧するパッドの加圧面に複数設けられているというものである。
【0008】
さらに、このように複数設けられている通気孔は、請求項3に記載のようにほぼ等間隔に配置されていることが好ましい。
【0009】
また、請求項4に記載の圧縮成形装置のように、空気を送り込むための送気装置を備え、前記粉状体を圧縮成形した後に当該送気装置を用いて空気吸引時とは逆に空気を送り込むことも好ましい。
【0010】
請求項5に記載の圧縮成形装置は、前記パッドを支持する支持部材を備えるとともに、該支持部材中に形成されている通気路を通じて空気を吸引しまたは送り込むというものである。
【0011】
また、請求項6に記載の発明は、皿状の容器上に供給された粉状体を加圧して当該容器上にて圧縮成形する圧縮成形方法において、前記粉状体を加圧する際に生じる空気を吸引しながら圧縮成形を行うというものである。この圧縮成形方法によれば、少なくとも圧縮成形工程時において成形対象である粉状体の周囲を真空状態、つまり大気圧よりも圧力の低い空間が形成されている状態を形成することができるから、粉状体を、当該粉状体の隙間から生じる空気を吸引しつつ加圧することができる。
【0012】
この場合、請求項7に記載のように、前記粉状体を圧縮成形した後、空気吸引時とは逆に空気を送り込むことが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の圧縮成形装置によれば、少なくとも圧縮成形工程時において粉状体の周囲を真空状態とすることにより、空気を吸引しながら当該粉状体を所望の形状に圧縮成形することが可能である。これによれば、製品となるべき成形後の粉状体に気泡のような空気溜まりが残っていたり、このような空気溜まりに起因して表面が剥がれたりすることを回避することができ、これによって製品の表面を整え、さらには高品質を維持して製品の歩留まりや生産性を改善することが可能となる。
【0014】
請求項2に記載の圧縮成形装置によれば、パッドの加圧面に複数設けた通気孔を通じて空気を十分に吸引し、気泡の発生やこれに起因する剥がれ等を回避することができる。
【0015】
請求項3に記載の圧縮成形装置によれば、複数の通気孔をほぼ等間隔に配置していることから、圧縮成形時に生じる空気をさらに偏りなく十分に吸引することが可能である。
【0016】
請求項4に記載の圧縮成形装置によれば、粉状体を圧縮成形した後に空気吸引時とは逆に空気を送り込むことができる。こうした場合、圧縮成形時に加圧されてパッドに密着した粉状体を当該パッドから剥がすようにして分離させることが可能となり、ひいては生産性の向上を図ることができる。
【0017】
請求項5に記載の圧縮成形装置によれば、パッドを支持する支持部材を操作することによって当該パッドを動かすことができることに加え、パッドの通気孔が複数設けられている場合であればこれら複数の通気孔を通じてまとめて空気を吸引し、あるいはまとめて空気を送り込むことができる。
【0018】
また、請求項6に記載の圧縮成形方法によれば、少なくとも圧縮成形工程時において粉状体の周囲を真空状態とすることにより、空気を吸引しながら当該粉状体を所望の形状に圧縮成形することが可能である。これによれば、製品となるべき成形後の粉状体に気泡のような空気溜まりが残っていたり、このような空気溜まりに起因して表面が剥がれたりすることを回避することができ、これによって製品の表面を整え、さらには高品質を維持して製品の歩留まりや生産性を改善することが可能となる。
【0019】
さらに請求項7に記載の圧縮成形方法によれば、粉状体を圧縮成形した後、空気吸引時とは逆に空気を送り込むことにより、圧縮成形時に加圧されてパッドに密着した粉状体を当該パッドから剥がすようにして分離させることが可能となり、生産性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態の一例に基づいて詳細に説明する。
【0021】
図1〜図7に本発明にかかる粉状体の圧縮成形装置の一実施形態を示す。この粉状体の圧縮成形装置は、皿状の容器1上に供給された粉状体2をパッド3等によって加圧し、当該容器1上にて圧縮成形するための装置である。本実施形態においては、空気を吸引できる吸引装置5と、粉状体2を加圧する際に生じる空気を通気させるための通気孔4とを設け、粉状体2の圧縮成形時にこの通気孔4を通じて空気を吸引することとしている(図1等参照)。以下においては、このような圧縮成形装置を、化粧料としての粉状体(以下、単に「化粧料」ともいう)2に対して適用した場合の実施形態を説明する。ここでいう化粧料としての粉状体2は、例えばコンパクト内に成形されたファンデーションなどのようなものである。以下では、粉状体2として「顆粒または粉体等の各種化粧料」を対象とした場合の実施形態について説明する。
【0022】
まず、上述の化粧料2を圧縮成形する際の概略から説明する(図2参照)。本実施形態においては、図2に示すようなターンテーブル10を用い、当該ターンテーブル10を図中時計回りに回転させることによって各工程を順次行うようにしている。ここでは、全6つの工程(空き工程を含む)を60度おきに配置し、図中のNo.1で容器1の供給、No.2で粉状体2の供給、No.4で粉状体2の圧縮成形、No.5で製品(圧縮成形後の粉状体2および容器1)の上面清掃、という各工程を行うこととしている。また、No.5の位置とNo.6の位置の間には、製品をターンテーブル10から降ろして排出する排出ユニットが設けられている。なお、本実施形態におけるNo.3は空き工程となっているため工程の変更などに対応しやすい。ターンテーブル10上には、容器1を一時的に保持するための例えば丸い凹部からなる載置用スペース11が周状に6個設けられている(図2参照)。
【0023】
上述の工程の概略と当該工程を実施するための各装置について以下に簡単に説明を加えておく(図2参照)。容器1の供給(No.1)を行う容器供給ユニットは、容器供給路12上を搬送されてきた容器1を受け取った後、図示しない容器フィーダーを使って当該容器1を上述のターンテーブル10上の載置用スペース11に載置する。本実施形態における容器1は、例えば化粧品としてのいわゆるコンパクトのような皿状のもので、樹脂によって形成された樹脂皿や金属製の金皿などが該当する。
【0024】
粉状体2の供給(No.2)を行う粉状体供給ユニットは、載置用スペース11に載置された容器1上に所定量の粉状体2を供給する。本明細書では特に詳しくは説明しないが、この粉状体供給ユニットは、粉状体2を所定量ずつ供給するエキセンホッパー(偏心ホッパー)、このエキセンホッパーに粉状体2を適宜供給して補充する粉状体供給サブホッパーユニット、上記エキセンホッパーの粉状体供給口を塞いだり開けたりするようにターンテーブル10上をスライドするとともに容器1上の余分な粉状体2をすり切るシャッターなどによって構成されている。
【0025】
圧縮成形(No.4)を行うプレスユニット13は、容器1上に供給された粉状体2を加圧して成形するための装置である。このプレスユニット13は、例えば油圧を利用して粉状体2および容器1を上下から挟み込むようにして圧力を加えるもので、本実施形態においては粉状体2および容器1の上側からパッド3をあてがうようにして加圧するようにしている。
【0026】
製品(圧縮成形後の粉状体2および容器1)の表面の清掃(No.5)は、プレス表面エアークリーナーを使って行う。このプレス表面エアークリーナーは、圧縮成形後、容器1の周辺におけるプレス粉残部(バリ等)をエアーで吹き飛ばして清掃を行う。
【0027】
排出ユニットは、上面清掃後の製品がNo.5の位置からNo.6の位置に移動する間に当該製品をターンテーブル10から降ろし、排出するための装置である。
【0028】
さらに、No.6の位置とNo.1の位置との間にはターンテーブルクリーナー14が設けられている(図2参照)。このターンテーブルクリーナー14は、図2中において時計回りに回転するターンテーブル10の表面を清掃し、付着している粉状体2などを落として清浄に保つ。
【0029】
続いて、上述したプレスユニット13の構成についてさらに詳細に説明する(図1等参照)。本実施形態においては、上述したパッド3をパッドベース15で保持するようにし、さらにこのパッドベース15には中空の支持部材(以下、「支持パイプ」という)8を取り付けて上部から操作できるようにしている。
【0030】
まず、パッド3について説明する。上述したとおり、パッド3は粉状体2および容器1の上側から加圧するための型で、上述の支持パイプ8およびパッドベース15によって支持されている。本実施形態のパッド3は、パッドペース15に設けられている凹部15b内に固定された状態で支持されている。このパッド3の形状は加圧対象である粉状体2の成形時の形状等に合わせて種々の形をとることができ、例えば本実施形態では4つの角にそれぞれ丸みが付された矩形となっている(図7参照)。また、図面においては特に示していないが、本実施形態におけるパッド3の上面は切込みが設けられた形状となっている。この切込みは、粉状体2からの空気を支持パイプ8へと流通させ、さらには当該パッド3自体の強度を確保するという機能を有するものである。さらに、このパッド3には、空気を通過させるための通気孔4が設けられている。この通気孔4は、粉状体2を加圧する際に生じる空気を透過させて逃がすために設けられているもので、できるだけ多くの孔がほぼ等間隔となるように均等に配置されていることが好ましい。また、孔径が大きすぎると加圧成形する際に粉状体2の表面形状に痕が残るなどの影響を及ぼすことがあるので、これを回避すべく、通気を妨げない範囲でできるだけ径を小さく形成していることが好ましい。具体的な一例を示せば、例えば本実施形態においては、孔径を0.2〜0.4mm、孔の設置数を約15個/cm2程度としたうえで、複数列に等間隔となるように配置している。なお、このパッド3は容器1の内側形状よりも僅かに小さく形成されて当該容器1との間にクリアランスを有していることが好ましい。このようなクリアランスを有している場合、圧縮成形時における空気がパッド3の脇から抜けやすくなるため好適である。ただし、パッド3自体に多数の通気孔4が設けられている本実施形態の場合には、通常よりも小さめのクリアランス(例えば0.2mm程度のクリアランス)で足りる。
【0031】
パッドベース15は、上述のパッド3を保持するための部材である。本実施形態のパッドベース15は、図4に示すように平面視円形であり、上面に段部15aが設けられ、さらに底面には上述のパッド3の形状に合わせた凹部15bが設けられている。この凹部15bの深さはパッド3の厚みよりも浅く(例えば半分程度)、パッド3の一部(例えば上側半分程度)のみが収まるようになっている(図5参照)。また、パッドベース15の中央には、吸引装置5からパッド3までを連通させるため、当該パッドベース15の上面からこの凹部15bまで連なる連通孔16が形成されている。これにより、圧縮成形時に粉状体2の隙間から生じる空気を、パッド3の通気孔4 → 連通孔16 → 支持パイプ8の通気路9 → 吸引装置5というように吸引することが可能となっている。なお、この連通孔16の一部には、支持パイプ8の下端に設けられているおねじ(雄ねじ)8aをねじ込むためのめねじ(雌ねじ)15cが形成されている(図5参照)。
【0032】
パッドベース15には上述したように中空形状の支持パイプ8が取り付けられている。この支持パイプ8は、上述のプレスユニット13によって支持されているもので、図示しないモータなどの駆動装置によって昇降可能に設けられている(図1参照)。この支持パイプ8の下端部には上述したおねじ8aが切られており、当該下端部を上述のパッドベース15の上面に着脱できるようになっている。一方、支持パイプ8の上端部にはめねじ8bが切られ、さらに、バキュームホース17を装着するための部材である継ぎ手(図示省略)が取り付けられる。特に図示していないが、バキュームホース17はその一端側がこの継ぎ手に装着され、他端側が吸引装置5に装着されて当該吸引装置5とこの支持パイプ8とを接続する。また、上述したようにこの支持パイプ8は中空形状であり、中空部分が、パッド3の各通気孔4と連通した通気路9として機能するようになっている。なお、支持パイプ8の材質は特にいずれかに限られるものではないが、軽量であって所望の強度が得られやすいステンレス鋼などが好ましい。また、本実施形態の支持パイプ8はその上端部に横棒18が設けられたいわばT字形状に形成され、ハンドリング(手での操作)が行いやすくなっている(図1、図3参照)。
【0033】
さらに、本実施形態においては支持パイプ8の側部途中に、上述の通気路9に通じる側孔19を設けることとしている(図3等参照)。この側孔19には、通気路9へと空気を送り込むためのエアーホース20が接続され、さらにこのエアーホース20の端部にはエアーポンプ7が設けられている。このエアーポンプ7は送風が可能な装置で、例えば本実施形態の場合であれば、プレス成形後、エアーポンプ7とエアーホース20を利用して負圧状態を開放し、あるいは空気を送り込むことにより、プレス成形時に加圧されてパッド3に密着した粉状体2を当該パッド3から剥がすようにして分離させることができるようにしている。
【0034】
プレスユニット13におけるプレス方法は特に限定されるものではないが、例えば本実施形態においてはプレスユニット13の下部装置を構成するプレス台21を昇降させることによってプレス成形を行うこととしている。より具体的に説明すると、本実施形態におけるプレスユニット13の下部装置は、プレス台21、このプレス台21の支持台として機能する型押さえ22、この型押さえ22ごとプレス台21を昇降させるシリンダー装置23によって構成されている(図1参照)。またプレス成形時においては、上述した載置用スペース11がメス型として機能し、このメス型としての載置用スペース11内にオス型としてのプレス台21が嵌まり込むようにして粉状体2をプレス成形する(図1参照)。
【0035】
プレス台21は上述のようにオス型として機能する例えば金型によって構成される部材で、メス型として機能する載置用スペース11内に嵌まり込む形状、例えば本実施形態であれば平面がおよそ矩形の角柱形状に形成されている。プレス成形時、このプレス台21の上面には粉状体2が供給された容器1が載った状態となる(図1参照)。プレス台21は、その底部の中心を型押さえ22によって支持されている(図1参照)。これら型押さえ22およびプレス台21は昇降可能に設けられており、シリンダー装置23の働きによって昇降するようになっている。このシリンダー装置23は、図示していない油圧装置等により、例えば本実施形態の場合であれば上下方向に一定のストローク幅で往復運動しうるように設けられている(図1参照)。
【0036】
また、粉状体2をプレス成形した際、吸引されつつ加圧された粉状体2が直接またはこれらの間に介在するクロス6を挟んで間接的にパッド3に密着することがあるが、成形後の粉状体2とこのパッド3とを容易に引き離して分離できるようにするための機構ないしは装置が併設されていることが好ましい。例えば本実施形態においては、このような成形後の粉状体2とパッド3とをばね力を利用して容易に分離できるようにしている。より具体的には、枠状に形成された薄板状のプレート(以下、本実施形態においてストリッパープレートといい、符号24で表す)をパッドベース15の底面に設けるとともに、このストリッパープレート24を下方に押し下げるように付勢する付勢部材25とを設けるようにしている(図5等参照)。枠状のストリッパープレート24は、その外周部がパッドベース15の外形と等しく、尚かつその内周部が、パッド3が通過可能な程度の大きさ及び形状となるように形成されている(図5、図6参照)。また、この場合における付勢部材25は、例えばこのストリッパープレート24とパッドベース15との間に介在するばね部材でもよいし、あるいは当該ストリッパープレート24の一部に切り込みを設けて変形させ、弾性によって付勢力を付与するようにした部材でもよいが、いずれにせよ、周方向に均等に配置され、当該ストリッパープレート24に対しほぼ均一な付勢力を付与して傾けさせないものであることが望ましい。なお、図6における符号3aは、パッド3をパッドベース15に固定する際に必要に応じて設けられる固定ねじである。
【0037】
続いて、ここまで説明した圧縮成形装置を用いて化粧料としての粉状体2を成形する場合の動作について説明する(図1、図2等参照)。
【0038】
まず、上述した容器供給ユニットにより容器1を供給し(No.1)、容器フィーダーを使って当該容器1をターンテーブル10上の載置用スペース11に載置する(図2参照)。次に、ターンテーブル10を時計回りに所定量(例えば本実施形態の場合には60度)回転させ、粉状体供給ユニットにより容器1上に所定量の粉状体2を供給する(No.2)。このとき、上述したシャッターをスライドさせて当該容器1上の粉状体2をすり切り、余分量を取り除いて一定量となるように調整するとともに表面が平坦となるようにならす。
【0039】
この後、ターンテーブル10を60度回転させると、粉状体2が供給された容器1はNo.3の位置まで移動する。本実施形態の場合、このNo.3は空き工程となっており何ら作業は行われない(図2参照)。他の位置における所定の動作が終了するのに伴い、ターンテーブル10をさらに60度回転させると当該容器1は圧縮成形が行われるNo.4の位置まで移動する。
【0040】
No.4の位置における圧縮成形は以下のようにして行われる(図1参照)。まず、粉状体2が供給された容器1はこのNo.4の位置まで移動したとき、載置用スペース11の中においてプレス台21の上に位置した状態となる。ここで、本実施形態においてはパッド3と粉状体2の間にクロス(布地)6を介在させた状態でプレス成形を行うこととしている(図1参照)。この場合に用いるクロス6としては、例えばナイロン(ポリアミド繊維)のような、通気性があり尚かつ粉状体2の表面を一定の外観に保つものが好ましい。このようなクロス6を介在させたら、パッドベース15およびパッド3を所定量下降させ、載置用スペース11上にパッドベース15を被せた状態とする。その後、シリンダー装置23を動作させ、型押さえ22およびプレス台21を上昇させて圧力を加える。プレス台21は、メス型として機能するターンテーブル10上の凹部(あるいはこの凹部によって形成される載置用スペース11)内をストロークするオス型として機能し、パッドベース15およびパッド3との間で粉状体2を挟み込んで加圧成形する。さらに、このようにして加圧成形を行う間は吸引装置5を動作させて空気を吸引し続けるようにする。
【0041】
このように加圧成形を行った場合、容器1に収容されている粉状体2は、上面をパッド3(ただし、本実施形態の場合には上述したようにクロス6が介在している)で押さえ付けられた状態となり、圧縮されてその内部から空気を生じさせる。この際、吸引装置5が作動していて通気孔4や連通孔16が負圧となっているために、このように粉状体2から押し出されるようにして生じた空気は、パッド3の通気孔4 → 連通孔16 → 支持パイプ8の通気路9 → バキュームホース17 → 吸引装置5というように吸引されることになる(図1参照)。この結果、この成形装置によれば加圧成形の際には真空状態(ただし、ここでは厳密な意味での真空ということではなく、およそ大気圧よりも圧力の低い空間が形成されているという意味での真空状態ということ)を形成することが可能となる。このため、気泡や空気溜まり等が形成されるのを回避しつつ粉状体(化粧料)2を加圧成形することができる。
【0042】
なお、上述のようにして加圧成形を行う場合、吸引装置5による吸引は粉状体2を加圧する前から成形後まで連続して行うことが好ましい。加圧成形時、ターンテーブル10とパッドベース15との隙間(あるいはターンテーブル10とストリッパープレート24との隙間)から自然と抜け出る空気が存在するが、本実施形態の場合にはこれら空気の多くを積極的に連続吸引しながら加圧することから、少なくともパッド3の面付近に存在する空気を通気孔4および連通孔16を通じて吸引することが可能である。
【0043】
圧縮成形を終えたら、プレス台21および型押さえ22を下降させて成形前の位置に戻し、さらに、支持パイプ8、パッドベース15等を上昇させて成形前の位置に戻す。この動作中、付勢部材25の付勢力を受けて元位置に戻ろうとするストリッパープレート24は、容器1を押し下げるように作用する。圧縮成形後において粉状体2とパッド3とが互いに密着している場合があるが、このようなストリッパープレート24の作用により粉状体2とパッド3とを自動的に引き離すことが可能となっている。
【0044】
また、圧縮成形後、空気吸引時とは逆に空気を送り込むことも好ましい。例えば本実施形態のごとく圧縮成形時に空気を吸引して真空状態を形成していると、圧縮成形後の粉状体2とパッド3とが直接あるいはクロス6を介して通常よりも強く密着している場合が起こり得るが、成形後、空気を逆に送り込むこととすれば、成形時とは逆の作用により粉状体2とパッド3とを引き離すような力を与えることが可能となる。本実施形態においては、上述したエアーポンプ7を送気装置として用い、圧縮成形後に空気を送り込むようにしている。このようにエアーポンプ7から送り出された空気は、当該エアーポンプ7 → エアーホース20 → 支持パイプ8の通気路9 → 連通孔16 → パッド3の通気孔4というように送り込まれ、さらにはパッド3と製品(圧縮成形後の粉状体2および容器1)との密着面に入り込むようにして粉状体2とパッド3とを引き離す(あるいは製品とクロス6とを引き離す)ように作用する。
【0045】
上述の圧縮成形の工程(No.4)を終えたら、ターンテーブル10をさらに60度回転させ、圧縮成形後の粉状体2の上面を清掃する(No.5)。清掃が終わった製品は、No.5の位置からNo.6の位置へと移動する間に排出ユニットによってターンテーブル10から降ろされ、排出される(図1参照)。
【0046】
以上、ここまで説明した粉状体2の圧縮成形装置によれば、圧縮成形時、粉状体2の周囲に真空状態(大気圧よりも圧力の低い状態)を積極的に形成し、粉状体2の隙間から生じる空気を積極的に吸引し抜去することができる。このため、成形対象である粉状体2の表面あるいは内部に気泡や空気溜まりが形成されるのを回避し、製品の表面が剥がれるといった不具合を減少させることが可能である。以上の結果、成形後における化粧料(粉状体)2の表面や密度などを整え、従来よりも製品ごとの質の偏りが少ない高品質な製品を生産し提供することができるという利点がある。また、この結果、製品成形時の歩留まりが改善されて生産性ないしは生産コストが向上するという利点もある。
【0047】
しかも、本実施形態においては送気装置としてのエアーポンプ7やエアーホース20を併設し、圧縮成形を終えたら成形時とは逆に空気を送り込むようにしているため、製品(圧縮成形後の粉状体2および容器1)とパッド3とを別々に分離させやすい。これによれば、従来よりも品質の高い製品の生産性をさらに高めることが可能である。加えて、このような送気装置を備えた場合には、仮にストリッパープレート24において不具合が発生し正常に機能しないような場合にも製品とパッド3とを引き離すような作用を与えて分離することができる。
【0048】
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、本実施形態では粉状体2の一例として「顆粒または粉体等の各種化粧料」を対象とした場合の実施形態について説明したが、これは本発明の好適な実施形態の一例に過ぎず、化粧料以外の各種粉状体に対しても適用することは当然に可能である。
【0049】
また、吸引装置5の代わりとして、空気の吸引と送り込みの両方が可能な給排気装置を用いることとしてもよい。上述した実施形態中では、圧縮成形の際に行う空気の吸引は吸引装置5、圧縮成形後の空気の送り込みはエアーポンプ7にて行うようにしていたが、上記のような給排気装置を使って空気の吸引と送り込みの両方を行うことももちろん可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明にかかる圧縮成形装置の一実施形態を示す図で、圧縮成形を行うプレスユニットの主要な部分の構造を表しているものである。
【図2】容器および粉状体を移動させるターンテーブルを、このターンテーブルの各位置で行われる各工程とともに示す概略図である。
【図3】圧縮成形装置を構成する支持パイプの構造例を示す側面図である。
【図4】パッドを保持するパッドベースの平面図である。
【図5】図4に示したパッドベースの側面図である。
【図6】図5に示したパッドベース等の底面図である。
【図7】パッドの平面図である。
【符号の説明】
【0051】
1 容器
2 化粧料(粉状体)
3 パッド
4 通気孔
5 吸引装置
6 クロス
7 エアーポンプ(送気装置)
8 支持パイプ(支持部材)
9 通気路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皿状の容器上に供給された粉状体を加圧して当該容器上にて圧縮成形するための圧縮成形装置において、前記粉状体を加圧する際に生じる空気の通気孔と、圧縮成形時にこの通気孔を通じて前記空気を吸引する吸引装置と、を備えていることを特徴とする圧縮成形装置。
【請求項2】
前記通気孔は、前記粉状体を直接またはクロスを介して間接的に加圧するパッドの加圧面に複数設けられていることを特徴とする請求項1に記載の圧縮成形装置。
【請求項3】
前記複数の通気孔がほぼ等間隔に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の圧縮成形装置。
【請求項4】
空気を送り込むための送気装置を備え、前記粉状体を圧縮成形した後に当該送気装置を用いて空気吸引時とは逆に空気を送り込むことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の圧縮成形装置。
【請求項5】
前記パッドを支持する支持部材を備えるとともに、該支持部材中に形成されている通気路を通じて空気を吸引しまたは送り込むことを特徴とする請求項4に記載の圧縮成形装置。
【請求項6】
皿状の容器上に供給された粉状体を加圧して当該容器上にて圧縮成形する圧縮成形方法において、前記粉状体を加圧する際に生じる空気を吸引しながら圧縮成形を行うことを特徴とする圧縮成形方法。
【請求項7】
前記粉状体を圧縮成形した後、空気吸引時とは逆に空気を送り込むことを特徴とする請求項6に記載の圧縮成形方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−54863(P2007−54863A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−242797(P2005−242797)
【出願日】平成17年8月24日(2005.8.24)
【出願人】(390041036)株式会社日本色材工業研究所 (37)