説明

粉状物質用吸入器

【課題】有利な手法により一般的な吸入器をさらに改善し、特に、投与位置において投薬チャンバを空けることを提供する。
【解決手段】医薬を含む粉状物質(33)用吸入器であって、格納チャンバ(27)と投薬チャンバ(34)とを備え、投薬チャンバは規定量の物質を受容し、ロッド(36)のクロスホールとして形成され、充填位置(B)から投与位置(E)へ変位可能であり、投与位置では投薬チャンバは空気流路(21)に位置する。極めて微細な粉塵のような粒子サイズのものを用いる場合であっても、投薬チャンバの充填及び放出に関して一般的吸入器を改良する。このために、吸入器(1)が作動させられるとき格納チャンバ壁(28)の少なくとも一部が、ロッド(36)の方へ変位させられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉状物質、特に医薬物質の吸入器に関し、物質格納チャンバと投薬チャンバとを備え、投薬チャンバは、規定量の物質を受容し、ロッドのクロスホールとして形成され、充填位置から投与位置へと変位可能であり、投与位置においては投薬チャンバが空気流路に配置される。
【背景技術】
【0002】
課題とするタイプの吸入器は公知である。例えば、特許文献1がある。特許文献1は、投薬チャンバを有し、充填位置から投与位置へと変位可能なロッドを備えた吸入器を開示している。この投与位置への変位は、患者が空気流路を通して吸入することにより生じる負圧に伴う移動によって起きる。従って、投薬チャンバの変位と投薬チャンバを空にすることは、患者が深く吸入することにより生じる吸気に依存する。吸気により投薬チャンバを充填しかつこれを空けることは、信頼性がない。
【特許文献1】米国特許第5,239,992号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
公知の従来技術に鑑み、本発明の目的は、有利な手法により一般的な吸入器をさらに改善することであり、特に、投与位置において投薬チャンバを空けることに関する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、先ず、請求項1の構成により達成される。この構成としたことにより、1または複数の、より小さい断面をもつ投薬チャンバが、信頼性をもって充填されかつ空けられる。そしてこのことは、最も微細な粒子サイズの粉においても可能である。請求項2による解決手段はこの点で最適である。ロッドを備え、そのロッドは多数の投薬チャンバを具備し、それらはロッド上に順次配置され、放出動作中には次々に投与位置へと移動し、空気流路内の正の空気圧により1つずつ噴出させられる。この構成は、各投薬チャンバを能動的に空けることを実現する。物質の投与は、エアロゾルカートリッジに設けられた吸入器のそれと似ている。これは、1または複数の投薬チャンバを的確な量で充填し、かつ極めて微細な粉で充填することが可能だからである。正の空気圧は、割り当てられた物質を投薬チャンバから積極的に放出する効果があり、投薬チャンバを具備するロッド上に長手方向に並べられかつ変位中にはロッドの長手方向に順次投与位置へと通過するように多数の投薬チャンバを配列することにより、あたかもマシンガンの動作のように、物質が空気により噴出させられるという効果がある。1または複数の投薬チャンバからの能動的な噴出のためには、物質の吸入が信頼性をもって行われる必要がある。それは、例えば、従来技術による通常比較的大きな投薬チャンバの変位及び放出のために、患者が十分な吸引空気流を発生させることができない場合であっても、である。さらに、空気圧の下での投薬チャンバからの噴出により、肺に直接適用されるように設計されている投与物質を、極めて細かく分散させることができる。このことは、各投薬チャンバが約0.03〜0.2mgの物質を受容するように選択することで、投薬チャンバのサイズを小さくすることも可能とする。
好適な改良においては、放出される物質を吸入するために必要な吸引空気流が、空気流路の投与領域の周囲または投与領域を通って直接流れないように構成されている。いうなれば、それは、ロッドの通過する領域であって、投薬チャンバが設けられている領域である。その替わりに、吸入時には、負圧下での吸引空気流は、口または鼻に関係する混合部分の領域においてのみ適用される。分散した物質は、正の空気圧によりそのような混合部分に向かって積極的に押しやられる。
【0005】
更なる請求項の構成は、請求項1の構成を参照して以下に説明するが、それらの独自の構成も重要である。
【0006】
例えば、改良点として、ロッドが、平坦ロッドとして設けられ、例えば、断面における縦の長さが、その縦の長さに対して垂直な横の長さの数倍、例えば10〜20倍に相当する。例えば、ロッドの厚さは、約0.3〜0.7mmであり、好適には0.5または0.3mmである。平坦ロッドは、プラスチック材料からなるものでもよく、特に、硬プラスチック材料からなるものでもよい。平坦ロッドは、金属材料から作製されることが好適である。平坦ロッドの長手方向に順次並んだ投薬チャンバが設けられ、最も単純には平面視にて円形ディスク形態の孔として設けられる。それらの孔の各々の中心軸は、平坦ロッドの平坦な側に対して垂直となっている。
【0007】
ロッドが、特に、投薬チャンバを備えたロッドの一部が、物質の格納チャンバを通過する。それにより投薬チャンバは、格納チャンバに保持された粉状物質中に埋没する。格納チャンバ壁は、例えばゴム状材料のような弾性材料からなり、さらに例えば熱可塑性エラストマーからなる。吸入器が作動するとき、この弾性的に設けられた格納チャンバ壁は、ロッドの方へ、つまり投薬チャンバの方へ曲がる。これは、先ず、外側から径方向内側に向かって格納チャンバ壁に対して正の圧力がかかることにより行われる。この正圧はまた、投与位置において投薬チャンバを空ける役割も果たす。この正の圧力は、吸入動作の過程で形成され、好適には、正の空気圧の形態で形成される。この点において、格納チャンバ壁が、少なくとも投薬チャンバ孔の領域において、ロッドに当接するまで曲がるように形成されている。それにより、格納チャンバ内に収容されている物質を投薬チャンバ内に押し込む効果がある。曲がった状態においては、格納チャンバ壁は、ロッドの各平坦面に当接し、投薬チャンバの各開口断面に対向している。この当接位置において、格納チャンバ壁の一部は、ロッドが投与位置へ変位する過程における拭き取り効果を伴って作用する。この拭き取りは、投与される物質を正確に規定量だけ計りとるために行われ、好適には、投与位置に到達する前に行われる。
【0008】
本発明の主題の好適な構成においては、上述のように正の圧力を受けることに加えて、格納チャンバ壁は、ロッドの方へ能動的に曲がるように形成されている。このために、押込み片が設けられている。この押込み片は、好適には、壁の一部がロッドの平坦な側に当接するように外側から格納チャンバ壁に対して作用する。格納チャンバ壁が、このようにして押込み片の効果を受けることにより、同心的に保持されたロッドに形成されている投薬チャンバの充填も補助する。
【0009】
投薬チャンバを有するロッドが投与位置へ変位すること、及び投薬チャンバを充填するために格納チャンバ壁に対して圧力をかけることは、吸入器が作動されるたびに行われる。この点において、吸入器の作動ボタンとロッドとの間に非作用的な変位を行う区間が設けられる。この非作用的変位の間は、外側の押込み片により格納チャンバ壁が内側に曲がる効果、そして任意に空気圧がかかる効果を伴い、ロッドが動かされる前に行われる。従って、投薬チャンバは、押込み片により充填され、それらの間には格納チャンバ壁が介在する。その一方、好適には、ロッドは未だ休止位置にある。この充填の後にのみ、そして非作用的変位が完了した後にのみ、更なる作動ボタンの変位によりロッドが移動させられ、それにより投薬チャンバが投与位置へと動かされる。
【0010】
押込み片は、好適には顎部を設けられ、この顎部は、完全に旋回したときまたは押込み片の押圧位置にあるとき、ロッドの広い側の壁面に対して平行に延びる当接面を具備する。その結果の1つは、投薬チャンバが確実に充填されることである。別の結果は、拭き取り位置が得られることである。従って、顎部上の当接面は、平坦面形態である。
【0011】
吸入器の作動ボタンは、吸入器ハウジングの頭部に突出するように、かつ復帰スプリングに対して変位可能なように形成される。このことは、吸入器を全体として、好適には親指と例えば中指の間に保持可能とし、中指は作動ボタン上に載置し、親指は作動ボタンの反対側のハウジング面上に載置する。吸入器は、作動ボタンを押すことにより作動される。押込み片は、作動ボタンの乗上げスロープによりロッドの方に旋回する。短い非作用的変位の後、作動ボタンがロッドを押し、その後、ロッドが変位する一方、投薬チャンバが格納チャンバ内の充填位置から投与位置へと移動する。押込み片は、旋回可能に配置され、作動ボタンの乗上げスロープは、旋回する押込み片に対して作用する。この替わりに、押込み片が径方向に直線的に変位するように、押込み片が配置されてもよい。このロッドの方への径方向変位は、くさび状動作により行われる。特に、押込み片が旋回する構成の場合、自己復帰式に形成され、例えば、押込み片を搭載するアームの適宜のバネ特性による。押込み片は、乗上げスロープを介した負荷がもはや作用しなくなった後、再びその初期位置に戻る。それにより、格納チャンバ壁を解放する。格納チャンバ壁はその弾性により再び初期位置に戻る。
【0012】
吸入器ハウジングにおける作動ボタンの、作用的変位により、正の空気圧が形成される。ロッドが空気流路、特にロッドと結合する流路の部分に変位することにより、正の空気圧は、流れの方向に物質を噴出することを促進する。
従って、正の圧力は、投薬チャンバの空気流路への変位により、少なくとも部分的に低減されるとともに物質が噴出される。さらに多数の投薬チャンバがロッド上に順次並んでおり、かつ、各投薬チャンバが次々に空気流路に連通することに応じて、各投薬チャンバからの物質の射出とともに、正の空気圧の部分的な低減が、断続的に生じる。これにより、物質の最適な噴出、周囲及び吸引により生じる空気流への霧状の放出を生成する。
【0013】
ピストン/ハウジングの構成により、噴出のために形成される正の空気圧が得られる。これは、作動ボタンのカップ状壁の内側端部領域における弾性ピストンリングにより実現される。この弾性ピストンリングは、外側の吸入器ハウジングの内壁と相互作用する。外側のハウジングは、ピストンリングのための圧縮空気シリンダを形成する。作動ボタン自体は、内壁上のピストン区画を形成する。好適構成においては、このようにして形成される圧縮空気シリンダの領域に、押込み片及び格納チャンバが設けられる。格納チャンバが外部及び押込み片から作用を受けることにより、投薬チャンバの充填位置へと変位させられる。
【0014】
投薬チャンバを備え直線的に変位可能なロッドは、バルブの特性を有する。ロッドの断面は、空気流路の領域において空気流路の放出側とは反対向きにある空気出口を閉鎖し、この結果、作動ボタンの下方変位の過程で正の空気圧が形成できる。ロッドの投薬チャンバが空気流路内に移動したときにのみ、バルブのような開口動作が行われ、圧縮空気の下で噴出が行われる。複数の投薬チャンバが、ロッドの移動方向に互いに適宜の間隔で配置されている場合、投薬チャンバのバルブが開口するような噴出動作の間において、2つの投薬チャンバの間におけるロッドの剛体材料により流路が短時間だけ閉鎖される。
【0015】
空気流路とこれを横切り通過するロッドとの相互作用領域により形成される空気出口の閉鎖ポイントと、格納チャンバを収容するハウジング空間すなわち圧縮空気シリンダとの間には、空気入口バルブが設けられている。このバルブは、作動ボタンのバネによる復帰変位及びそれによるシリンダ空間の拡大の過程において、補充空気を流入させる。しかしながら、吸入物質の放出のための作動の過程においては、閉じられている。
【0016】
特に有用である本発明の主題である改良点の一つは、投与位置へ移動させられる投薬チャンバの数を決定するための設定装置を設けたことである。例えば、3〜10個もしくはそれ以上の数の投薬チャンバが、変位の方向に均等な間隔で順次並べられてロッドに設けられる。必要に応じて規定量が選択され、ロッドの縦方向の変位を制限する。必要とされる規定量に応じて、2〜3個またはそれ以上の投薬チャンバのみが、投与位置、すなわち、圧縮空気の噴出効果を受ける領域へと運ばれる。投薬チャンバ毎の物質の量は少ないため、非常に正確な、変更可能な投与を行うことができる。例えば、操作可能な設定リングに、作動ボタンの変位動作を停止させるための多数の階段が設けられている。停止位置を制限された作動ボタンの変位経路に応じて、所定の数の投薬チャンバが投与位置を通過する。設定側の階段との相互作用において、作動ボタンには、例えば、停止ラグを備えた計数手段が設けられる。
【0017】
空気流路の断面、特に、噴出端に向いた端部において断面を低減することにより、ノズル状の構造を得ることができる。例えば、空気流路の端部におけるこのような低減された断面は、本来の断面の0.5〜0.9倍とする。本発明の主題である改良点においては、直線状に横切る空気流路が、斜め上方に向いた小さい断面の端部部分を有し、この部分は、鼻管の内部で後退して配置され、鼻管の自由端で終端している。この構成の結果、提案された吸入器は、鼻用の用途にも用いることができる。投薬チャンバを能動的に空けることによって、吸入された医薬が、鼻孔内に噴出させられる。同時に鼻を通過する吸入は、効果的に医薬の分散を促進する。斜め上方に向いた流路の端部部分とこの端部部分を収容した鼻管とは、例えば、任意に、吸入中の吸入器の軸に対して実質的に垂直な配置のものも備えることで、快適に使用できる。
【0018】
充填レベルまたは投与量をチェック可能とする手段をユーザに提供するために、噴出する空気圧に到達したとき作動するインデックス機構が、本発明の改良点として設けられる。このようなインデックス機構は、医薬の放出が行われる吸入器の作動毎に計数する。例えば、このようなインデックス機構は、スケール、例えばスケールリングを備え、既に実行された吸入事象が標示されるか、あるいは、吸入最大数からのカウントダウンが標示されて残りの吸入実行数を示す。インデックス機構は、噴出空気圧力に到達することに応じて作動する。噴出吸気圧力には、充填された投薬チャンバが空気流路の投与領域に到達する直前に、到達する。従って、インデックス機構は、空気流路内への医薬の投与の直前に、すなわち医薬の能動的噴出の直前に、スイッチが作動する。一方、医薬の射出が起きない程度まで、すなわちトリガーの復帰変位の前に投薬チャンバを充填するためにトリガーが作動されないならば、インデックス機構のスイッチは作動しない。実施例の構成においては、インデックス機構に作用する計数指部により開始する。充填された投薬チャンバを空気流路の領域へ移動させるロッド変位のほぼ開始時点において、計数指部の先端がインデックス機構のインデックスホイールに到達する。計数指部は、インデックスホイールから所定の距離に位置する。この距離は、投薬チャンバを有するロッドの変位及びこれと同時の噴出空気圧の形成を伴ってトリガーが作動することにより詰められる。
【0019】
好適な構成においては、インデックス機構の標示器は、吸入器の軸と同心的に配置されかつ内側に歯付きリングを形成されたスケールリングであり、インデックスホイールと相互作用し、円周方向の回転で一段ずつ変位する。好適な構成においては、インデックスホイールは、ワームホイールの形態でインデックス機構のスケールリングを回転させるように形成されている。従って、インデックス機構の計数指部によるインデックスホイールの作動を変換するための、すなわち計数指部の直線的移動をその移動軸に対して垂直に向いた円形運動へと変換するための、中間的な伝達機構は必要ない。この構成により、特にインデックス機構により、スケールリングへの伝達は、ステップダウンまたはステップアップしてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、添付の図面を参照して本発明を詳細に説明するが、それらは単に多くの実施例を示すものである。
【0021】
図示された吸入器1は、簡便に携帯可能なポケット型機器であり、円筒状のハウジング2を備え、そこからほぼ径方向に突出するマウスピース3を備える。吸入器1の一般的形態は、実質的に、エアロゾルカートリッジと共に設けられた吸入器のそれに相当する。吸入器1の取扱い方法もまた、それに相当するものであって、ユーザには即座に理解できる。
【0022】
吸入器1は、作動ボタン4を備え、作動ボタン4は、ハウジング全体にわたる軸xをもち、この軸xを横切りかつx軸に沿ってハウジング2の上方に突出し、さらにハウジングの脚部に反対面5を有している。物質の放出は、作動ボタン4が、下側の反対面5の方に軸xに沿って変位することにより行われる。
【0023】
ハウジング2は、中空筒体として形成され、図示の実施例では、平面視にて円形である。平面視にてこの円形から変形した他の形態も考えられる。例えば、楕円形や多角形である。
【0024】
円筒形の吸入器外側ハウジング6は、吸入器底部7により脚部で閉鎖されている。吸入器底部7は、吸入器1の作動のための反対面5を形成している。この吸入器底部7から反対側に向かって、ハウジング2は開口している。
【0025】
ハウジング2の脚部領域には、マウスピース3が、ハウジング2からほぼ径方向に延びている。さらに具体的には、図示の例では、吸入器の軸xに対して約75〜80°の鋭角をなしている。このマウスピースは、実質的に中空筒体として形成され、マウスピース3の向きに対して軸方向外側に向いた開口を有する。ハウジング2からマウスピース3への移行領域に設けられたマウスピース底部8は、中心開口9を有する。
【0026】
この底部の中心開口9からの軸上空間において、マウスピース壁の周方向線に沿って空気流入口10が形成され、均等に分布するよう配置されており、マウスピースの底部の中心開口9の近傍における内部空間が、周囲と連通している。
【0027】
吸入器1が使用されないときは、マウスピース3は、スクリューキャップ11により覆われている。このために、マウスピース3は、外部側壁上に外付けネジ12を設けられ、キャップ11の内側ネジ13と螺合する。スクリューキャップ11において内側ネジ13を設けた側壁部分は、閉鎖位置においてマウスピース3の空気流入口の上に係合する。このスクリューキャップ11の側壁部分の環状端面もまた、停止位置を制限されてハウジング部分に当接する。
【0028】
ハウジング2は、ハウジング軸xを横切るキャリア14により分割されている。ハウジング14は、ハウジング2からマウスピース3に移行する高さ位置においてハウジングの内壁に固定されている。これにより、キャリア14に対するハウジング上部分と、反対面5を含むハウジング下部分とが得られ、この下部分の中心には、支持管15が軸方向に延在して貫通しており、支持管15上にキャリア14が着座している。これにより、ハウジング下部分に形成された環状空間17に吸湿剤16が収容されている。さらに、この環状空間17は、マウスピース底部8の領域に形成された補充流口18を介してマウスピース3の円筒状の内部と連通し、さらに空気流入口10を介して周囲と連通している。
【0029】
ディスク状の剛体のキャリア14は、中心受容部19を有し、その中に、熱可塑性材料からなるシール部材20が固定される。このシール部材20は、プラグ式に中心受容部19に嵌合し、キャリア14もまた、このシール部材20により支持管15上に支持されている。
【0030】
シール部材20は、空気流路21を設けられている。空気流路21は、軸xに対して実質的に垂直に横切るように向けられ、キャリア14を貫通して両面に続いている。空気流路21は、シール部材20の片側においては、キャリア14を貫通してマウスピース底部8の中心開口9まで延び、空気出口22を形成している。シール部材20の反対方向においては、空気流路21はその断面を拡げつつ、キャリア14により分離されたハウジング上部分まで続いている。その流路開口23は、ハウジング上部分に面したキャリア14の広い面上に形成されている。この流路開口23も、フィルター部材24で覆われている。
【0031】
結果的に、空気流路21は、マウスピース側の流路部分と、ハウジング側の部分とに分けられる。ハウジング側の部分においては、フィルターで覆われた流路開口23が形成される。この部分には、補充流口25も設けられ、これは、流路開口23の反対側に位置して、空気流路21のハウジング側の部分と、キャリア14の下側に形成された環状空間17との間のリンクを形成する。この補充流口25は、空気入口バルブ26により上面を覆われ、これは、環状空間17から空気流路21のハウジング側の部分へ向かう方向にのみ空気が流れるように設置されている。逆方向に空気の流れに対しては、バルブ26が補充流口25を閉鎖する。
【0032】
空気流路21は、マウスピース3の内部空間断面よりもかなり小さく形成されており、特に、シール部材20の領域及びマウスピース3に対向する部分においてはかなり小さい。例えば、マウスピース3の内部空間の直径は、空気流路21の直径のほぼ10〜30倍に相当する。空気流路21は、テーパー式に形成され、特に、シール部材20からマウスピース側の中心開口9の方向に向かって斜め下方に延びる部分の領域においては、ノズル状流路を形成するべくテーパー式に形成されている。
【0033】
シール部材20は、同じ材料からなり、ハウジング上部分に向いて上方に向かって断面が拡がっている漏斗形状の格納チャンバ27と一体化されている。すなわち、格納チャンバ27の端面は、ハウジング開口の方に向いている。格納チャンバ壁28もまた、熱可塑性エラストマーまたは他のゴム状材料からなる。
【0034】
格納チャンバ27の直径の拡がった自由端は、ホルダー29により保持されている。ホルダー29は、吸入器の軸xを横切るように配置され、サポート部30を用いて格納チャンバ27の下端を囲むようにキャリア14に固定されている。複数のサポート部30は、格納チャンバ27の側面に延在し、互いに反対側に設置されている。従って、格納チャンバの端部間の軸方向距離は、一定である。
【0035】
格納チャンバ27の上方の自由端は、密閉式にホルダー29により保持されている。図示の例では、径方向外側の保持リング31と径方向内側のプラグ状の保持部分32との間にクランプされている。
【0036】
格納チャンバ27内には、微細化された粉状物質33が格納されており、提示された機器を用いた適量ずつの放出により吸入されることを意図されている。
【0037】
粉状物質33を適量ずつ放出するために、投薬チャンバ34が設けられており、例えば、第1の実施例では、3つ設けられている。各投薬チャンバ34の大きさは、それぞれ投与される粉状物質の量を規定する。
【0038】
投薬チャンバ34は、ロッド36のクロスホール35として形成されており、ロッド36は、平坦ロッドとして形成され、軸xに沿って同心的に延びている。ここでは、クロスホール35は、平坦ロッド36の広い側の壁面を貫通する。平坦ロッド36は、縦横比が1:5ないし1:20の断面を有する。図示の例では、平坦ロッドの厚さが約0.5mmであり、これに垂直な長さが約3〜3.5mmである。クロスホール35は、投薬チャンバ34がそれぞれ0.05mgから0.1mgの量の物質を受容するように、その直径が選択される。
【0039】
投薬チャンバ34を具備するロッド36は、軸xの方向に同心的に格納チャンバ37を貫通する。格納チャンバ27の脚部において、ロッド36もまたシール部材20を貫通し、シール部材20に形成された空気流路21を横切る。この構成により、空気流路21の閉鎖は、ロッド36により本来的に行われる。
【0040】
ここから反対方向においては、ロッド36は、格納チャンバ27を超えて延び、格納チャンバ27を保持するホルダー29を貫通している。ホルダー29を貫通する領域においては、更なるシール部材37が設けられている。シール部材37は、格納チャンバ27の脚部領域におけるシール部材20と同様に、ロッド36の表面に対して拭き取り式に作用すると同時に、ロッド36が貫通する区画を密閉する。
【0041】
図1に示した吸入器1の初期位置においては、複数の投薬チャンバ34は、ロッド36の長手方向において順次配置されかつ互いに均等に離間しており、格納チャンバ27の下部3分の1に位置しており、格納された物質33により囲まれている。
【0042】
複数の投薬チャンバ34の互いの間隔は、実質的に、投薬チャンバ34を形成するクロスホール35の直径にほぼ相当する。
【0043】
格納チャンバ27の上方に突出するロッド36の自由端は、マッシュルームの頭に似たドライバ38を設けられている。ドライバ38は、ドラッグアーム39により保持されている。ドラッグアーム39は、作動ボタン4の下側に形成されたx軸方向にドライバ38の2倍の長さをもつ。このようにして、作動ボタン4に向いたドライバ38の先端と、この先端に対向して作動ボタン4の下側にあるドライブ面40の間で、限定された変位が行われる。
【0044】
作動ボタン4は、軸xを実質的に横切って延在し、x軸に対して同心的に形成されキャップ状壁41をもつ円筒部分と一体化されている。この円筒部分は、開口を下方に向けてハウジング2に入り込んでいる。壁41の外側直径は、ハウジング2の円筒部分6の内側直径にちょうど嵌合する。作動ボタン4は、その壁41が円筒部分6にガイドされて、ハウジング2内に押し込まれることができる。これは、各終止位置における停止制限を伴って行われる。
【0045】
この停止位置の制限を実現するために、ハウジングの円筒部分6は、その自由端の周部分の領域において、直径において反対側に位置し径方向内側に向いた2つのガイドラグ42を有する。これらのガイドラグ42は、壁41の外側壁面の領域における軸方向に平行な溝43と係合する。これは、ハウジング2が、作動ボタン4に対して捻れることを防止する効果もある。
【0046】
ハウジング2内に入り込む作動ボタン4の壁41の自由端の領域において、環状溝44が外壁壁面に設けられ、この環状溝44は、弾性材料からなるピストンリング45を収容している。ピストンリング45は、密閉のためにハウジングの円筒部分6の内壁に対して当接する。
【0047】
図1に示した作動ボタンの初期位置に保持するために、らせん状の復帰スプリング46が設けられている。復帰スプリング46は、作動ボタン4の下側に対して作用する一方、ロッド36と、作動ボタン4のドラッグアーム39とを取り囲み、格納チャンバ27の頭部に端部を形成するホルダー29上に他端が支持されている。この初期位置は、作動ボタン上の溝43の下端に対して当接するガイドラグ42により規定される。ロッド上のドライバ38もまた、この初期位置において、作動ボタン4のドライブ面40から最大距離に位置する。
【0048】
くさび形の解放突起47が、作動ボタンの壁41の変位経路内に延びており、解放突起47は、直径において反対側に位置する2つのアーム49の上向きの乗上げスロープ61を有している。アーム49は、その脚部の自由端領域において、径方向内側に突出する押込み片48を設けている。これらの押込み片48を設けたアーム49は、ホルダー29を搭載するサポート部30に対して、平面視にて90°の角度をなすように配置されている。それらはまた、平面視にて円形リングの形態であるホルダー29上のキャリアによりサポート部に固定されている。アーム49及び押込み片48は、顎部60の径方向内側に向いた当接面50を形成し、平面視にて、または、吸入器1の断面にて、ロッド36の広い側の面に対して平行にかつこの面から所定の距離において延在している。従って、当接面50は、それらがロッド36の広い側の面に向くように配置され、当接面50もまたそれぞれ平坦に形成されている。
【0049】
特にアーム49、また特に円形リングの形態のキャリア上の関節領域51は、関節領域51の周りでx軸の方に向かって径方向内側への旋回を可能とするように材料種類及び/または材料厚さを選択される。選択されたプラスチック材料の弾性は、アーム49を初期位置へ自動的に復帰させるために利用される。
【0050】
アーム49の軸方向に測った長さは、その端部に設けられた押込み片48が、格納チャンバ27のほぼ下部3分の1の高さまで延びるように選択される。
【0051】
吸入器1は、次のように機能する。
作動ボタン4に圧力をかけることにより(矢印P)、作動ボタンがx軸に沿って滑動変位してハウジング2内に下がる。ハウジング2とカップ状の作動ボタン4とは、ピストンリング45による密閉の結果として、圧縮された空気シリンダDを形成する。この中では、作動ボタン4が下降すると、正の空気圧が形成される。ここでは、作動ボタン4の下側の、内側の領域が、ピストン区画を形成する。
【0052】
さらに、作動ボタン4の下方変位の過程において、解放突起47が、壁41の端面における傾斜を設けたエッジにより作用を受け、作動ボタン4が下降するにつれて、関節領域41の周りでアーム49の内側への旋回を生じる。この結果、図2に示すように、押込み片48が関節領域51に対して径方向内側へ旋回し、それに伴って格納チャンバ壁28が内側に充填位置Bまで内側に曲げられる。このとき、2つの当接面50は互いに平行に並びかつロッド36の広い側の面と平行に並ぶ。この位置において、格納チャンバ壁28の各部分の間において、物質の一部が投薬チャンバ34に対して押し付けられる。投薬チャンバの開口の両側に存在する物質は、格納チャンバ壁28及び格納チャンバ壁28に対して作用している押込み片48によりクロスホール35に中に押し込まれる。その後、物質は、特に微細な粉状物質は、自然に投薬チャンバ34内に保持される。
【0053】
物質を投薬チャンバ内に押し込むための格納チャンバ壁28の内側の曲面は、この過程において形成される圧縮空気シリンダD内の正の空気圧により、作用を受ける。
【0054】
投薬チャンバ34が完全に充填されるまで、ロッド36は、その初期位置に留まる。これは、ドラッグアーム39の領域により設けられた非作用的な変位による。投薬チャンバの充填が完了した後に初めて、作動ボタン4の下側に形成されたドライブ面40が、ロッド36の端部上のドライバ38に当接し、作動ボタン4の下方変位に伴ってロッド36を下降させる。
【0055】
投薬チャンバの充填後におけるこのロッドの下方変位の過程において、充填された投薬チャンバ34は、引き続き、空気流路21内に入る。空気流路21は、このときまではロッド36の閉じた剛体端部により滑動式に閉じられている。これにより圧力を高めることができる。投薬チャンバ34が空気流路21(投与位置E)に到達したとき、このように形成されたバルブが短時間だけ開かれる。投薬チャンバ34を形成するクロスホール35は、空気流路21の一部となる。形成された正の空気圧により、投薬チャンバから規定量の物質を一気に噴出させ、この物質を空気出口22を介してマウスピース3内に射出する。吸入器1の作動中は、空気流入口10を塞がないようにしてマウスピース3が唇で囲まれている。息を吸うことにより、周囲の空気がこれらの空気流入口10を介して吸い込まれ、この周囲の空気に対して規定量の物質の射出霧が補充される。
【0056】
3つの投薬チャンバ34が互いに並んで配置された実施例の構成においては、非常に迅速な物質の放出が起きる。作動ボタン4の下方変位の速度とは無関係に、圧縮空気によりそれぞれ短時間に押し出される。
【0057】
下方変位の間、ロッド46の軸方向に下方に延びる自由端は、支持管15の内部空間に入る。
【0058】
下方変位の方向から視た作動ボタン4の端部位置も、同様に、停止位置を制限されている。これは、ガイドラグ42と相互作用する溝43の上方周辺部に対してガイドラグ42が当接することにより、及び/または、作動ボタンの壁41の環状自由端面がキャリア14の表面に対して当接することにより行われる。
【0059】
作動ボタン3に対してもはや圧力をかけないようにすると、形成されているスプリングの弾性力によって、作動ボタン4は、引きずられるロッド36を伴って自動的に初期位置へ戻る。これは、押込み片48を有するアーム49の解放も伴う。アーム49もまた、選択された材料の弾性特性により、その初期位置へ旋回して戻る。
【0060】
作動ボタン4の復帰変位及びこれに伴う圧縮空気シリンダDの体積拡大の過程において、補充吸気が吸い込まれる。これは、補充流口18及び25を介して行われる。吸湿剤16を通って空気が流れ、それに応じて空気入口バルブ26が開かれる。
【0061】
押込み片48により格納チャンバ壁28に作用する外部負荷がなくなると、格納チャンバ27が漏斗形であるために、物質は滑り落ちて自動的に補充される。この物質の補充は、格納チャンバ壁28の内向きの曲面の影響によって生じる柔軟さによっても補助される。
【0062】
密閉性をもつ部品及び格納チャンバ27を除いて、また任意であるが、ばね弾性をもつアーム49及び押込み片48を具備する構成要素を除いて、吸入器1,特にハウジング2及び壁41をもつ作動ボタン4並びにキャリア14をもつホルダー29は、プラスチック材料から作製され、特に、硬プラスチック材料から作製される。ロッド36もまた、このような硬プラスチック材料から作製してもよい。しかしながら、この点では、ロッド36は金属材料が好適である。
【0063】
さらに、経口治療のために設計された吸入器1は、図12に例示するような鼻吸入のための実施例も考えられる。
【0064】
図12に示した構成においては、鼻吸入のための実施例において、放出すなわち噴射領域が、縦軸xに対して上方から傾斜して向けられ、すなわち、縦軸xから約45°の角度をなしている。このために、ハウジング2は、鼻管65を設けられており、これは、上述の実施例と同様に吸入器1を使用しないときは、スクリューキャップ11により覆われている。
【0065】
鼻管65は、鼻孔内に導入されるために、その長さ及び外径を設定されている。鼻管65の長手方向において同心的に、放出路66が鼻管を貫通している。放出路66には、空気流路21の流路末端部分67が開口しており、その自由端68は、鼻管65の自由端69よりも後退して配置されている、すなわち、鼻管本体の軸に対して軸方向後方に引っ込んでいる。
【0066】
鼻管65のまたはその本体の軸の傾きに対応し、縦軸xに対して鋭角をなして、流路末端部分67は、横断する向きの真っ直ぐな空気流路21から上方に傾斜して向けられ、これは、空気流路21の断面に対する自由断面が約3分の1だけ少なくなっている箇所で行われている。それにより流路末端部分67の鼻状の構成を可能とする。
【0067】
流路末端部分67及び鼻管65を、ハウジングの軸xに対して上方に傾斜させて設けたことにより、全体としてほぼ垂直のハウジングの軸xに沿ったハウジング2をもつ吸入器1において、鼻吸入のための取扱いが可能となる。
【0068】
図10及び図11には、第2の実施例を示す。服用量設定を行う吸入器1の第2の実施例を示す。
【0069】
作動ボタン4に対向する上方周辺領域においてハウジング2を取り巻くように、リング状の設定装置52が設けられる。この装置の設定リング62は、軸xと同心的に段階式に回すことができ、例えば、5種の異なる服用量を設定するために、4つの回転ラッチ段部の上で回す。
【0070】
リング状の設定装置52の内側面上には、複数の段付き部材53が設けられ、これらは直径について反対側に配置され、かつハウジング2の窓54を通過するように、径方向内側に突出して形成されている。
【0071】
各段付き部材53は、互いに階段のように段違いとなっている当接面55を備えている。会断面の数は、設定可能な服用量の数に対応する。これらの当接面55は、壁41の外側面上に直径について反対側に配置されたラグ56と相互作用する。これらのラグ56は、ハウジングの円筒部分6の壁の内側における溝57によりガイドされ、ハウジング2に対して捻れることを回避している。
【0072】
動作において、作動ボタン4の押し込み方向に下方に向いたラグ面58が、段付き部材53の当接面55に対して当接する。段付き部材53は、ラグ56の変位経路内に回されてくる。それにより、作動ボタン4の変位動作が停止させられる。
【0073】
これにはさらに、ロッド6の変位も伴う。図示の例では、ロッド36には、順次配置された5個の投薬チャンバ34が設けられ、停止位置が制限される。この結果、投与位置Eへ移送される投薬チャンバ34の数を、階段の当接面による設定に基づいて予め選択できる。
【0074】
設定装置52による予備設定に応じて、例えば、吸入器1が作動したとき、2つの投薬チャンバ34のみまたは第1の投薬チャンバ34のみが、空気流路21に連通して圧縮空気により噴出させることができる。さらに別の設定においては、全ての投薬チャンバ34、すなわち図示の例では5つの投薬チャンバ34が、次々に空気流路21へ移送され、一斉射撃のように物質が射出される。
【0075】
図13〜19は、第1の実施例である経口吸入器として形成された、さらに別の実施例の吸入器1を示している。実行される吸入プロセスを登録しかつ標示するためのインデックス機構70が設けられる。このインデックス機構70は、ハウジング2の上方に突出する作動ボタン4内に設けられ、作動ボタン4の頂部の直下に位置し、ロッド36のドライブ38と相互作用するドラッグアーム39を取り囲む。
【0076】
インデックス機構70は、実質的に、インデックスホイール71と、インデックスホイール71と能動的に噛み合っているスケールリング72とを有する。
【0077】
スケールリング72は、作動頂部の直下にあるスリーブとして設置され、ハウジングの軸xに対して同心的である。スケールリングの周壁は、作動ボタン4の壁41の径方向の幅内に配置され、壁41の径方向凹部73内に固定されることにより、ハウジングの軸xの周りに回転することができる。スケールリング72の外側面には、詳細には図示しないがスケール74が設けられている。例えば、そのようなスケールが印刷されている。このスケール74は、壁41から作動ボタン4の頂部への移行領域において壁に設けられた窓75を通して視ることができる。
【0078】
スケールリング72の内側面上には、径方向内側に突出する縦長の複数のドライブ突起76が同心的に設けられている。これらのドライブ突起76の数は、例えば、吸入器作動の最大回数に対応して設けられ、円周上で互いに均等な間隔を保持している。これに対し、図示の例では、それよりもかなり少ない数が選択されている。ここでは、ドライブ突起76よりスケールリング72が駆動される方法は、ステップダウン式に行われる。
【0079】
インデックスホイール71は、これらのドライブ突起76と能動的に噛合して相互作用する。インデックスホイール71は、ハウジングの軸xに対して横方向の回転軸yの周りに回転運動可能である。この回転軸yは、ドライブ突起76により規定される面内に延在する。回転軸yは、作動ボタンの頂部から垂下し内側に突出する装着アーム78にある2つの端部において両端を保持されている。
【0080】
インデックスホイール71は、実質的に、単ネジのワームシャフト79として形成され、周方向の2つの隣り合うドライブ突起76の間隔に相当する、螺旋ピッチを有する。ワームシャフト79の軸方向においては、ワームシャフト79に、全体として2〜3の螺旋部分が得られるような長さとされる。それぞれ関係するドライブ突起76が、インデックスホイール71の軸高さにおいて螺旋のフランク面の間に入り込む。ワームシャフト79が回転軸yの周りで回転したとき、それに対応して、保持されたドライブ突起76の水平方向の変位、すなわちハウジングの軸xに対して横方向の変位が生じる。
【0081】
螺旋の端面の周りで動く周囲エッジは、鋸の歯のような形状であり、各歯80は、ほぼ径方向にかつ後方に向いた急勾配のフランク面と、次に続く歯80へ向かって降下する緩やかなフランク面とを有する。図示の例では、インデックスホイール71の断面において周囲に9つの歯80が形成されている。この歯は、回転軸yの位置にきたとき、水平面への投影において、1つの螺旋部分の歯80が、隣の螺旋部分の歯80と一列に並ぶような寸法とされる。従って、隣り合う螺旋部分の個々の歯のフランク面もまた、共通面内に揃っている。
【0082】
歯80は、計数指部81と相互作用する。計数指部81は、インデックスホイール71の回転軸yと平行に視たとき、その自由端領域において、すなわちインデックスホイール71と相互作用する作動端部82において、インデックスホイール71の同方向に計測した幅とほぼ一致する幅を有する。
【0083】
計数指部81は、押込み片48のアーム49を搭載する円形リング形状のキャリアに基部があり、棒状形態でハウジングのx軸と平行に上方のインデックスホイール71の方に延びる。図13に示すように、インデックスホイールは、初期位置おいてキャリアから縦方向に所定の距離にある。一方、先端を形成する前述の作動端部82は、計数指部の端部に形成される。
【0084】
計数指部81の作動端部82と、インデックスホイール71の径方向内向きの歯80における作動される急勾配のフランク面との間の縦方向距離は、図13の初期位置から、図5または図6の充填された投薬チャンバ34から空気流路21へ物質が移動する位置までの作動ボタン4の変位に相当するように選択される。従って、作動ボタン4の下方変位の過程において、先ず投薬チャンバ34の充填が押込み片48により行われ、作動ボタン4の更なる下方移動により、投薬チャンバ34の一斉噴出に必要な吹き出し空気圧が得られた後に、インデックス機構70が1つの位置だけ進行する。上述の通り、作動ボタン4の更なる下方変位は、投薬チャンバ34を空気流路21の領域に移動させ、空気圧が高まった結果、空気流路21を通して物質が一斉に噴出される。この作動ボタン4の更なる縦方向下方への動きにより、1つの歯の分だけインデックスホイール71の回転移動が生じる。歯において後方に設けられた緩やかなフランク面は、作動ボタン4が初期位置に戻ったとき、作動端部82が滑って離れることを可能とする。
作動ボタン4の頂部から下方に突出する保持指部83は、作動端部82の反対側に位置し、歯80に対して作用する。これは、インデックスホイール71が計数変位の所定の方向とは反対方向に回ることを防止する。
【0085】
吸入器は、様々な医薬及びまたは生理活性物質を吸入するために収容する。
【0086】
任意の所望する活性をもつ治療または診断のための物質が、生理活性物質として選択できる。例えば、抗アレルギー物質、去痰薬、気管支収縮薬、肺胞界面活性物質、鎮痛薬、抗生物質、ロイコトリエン阻害剤もしくは拮抗剤、抗コリン薬、肥満細胞阻害剤、抗ヒスタミン剤、消炎剤、抗腫瘍薬、麻酔薬、抗結核薬、造影剤、心臓血管活性物質、酵素、ステロイド、遺伝物質、ウィルスベクター、反意鎖試薬、プロテイン及びペプチド、並びに、これらの物質の組み合わせである。
【0087】
本発明で開示した吸入器に充填可能な特定の医薬の例は、特に、モメタゾン、臭化イプラトロピウム、チオトリピウム及びその塩、サルメテロール、フルチカゾン・プロピオネート、ベクロメタゾン・ジプロピオネート、リプロテロール、クレンブテロール、ロフレポナイド及びその塩、ネドクロミル、ソディウム・クロモグリケート、フルニゾライド、ブデゾナイド、フォルモテロール・フマレート・ジハイドレート、Symbicort(登録商標、ブデゾナイド及びフォルモテロール)、タービュタリン、タービュタリン・サルフェート、サルブタモル塩基及びサルフェート、フェノテロール、3-[2-(4-ヒドロキシ-2-オキソ-3H-1,3-ベンゾチアゾル-7-yl)エチルアミノ]-N-[2-[2-(4-メチルフェニル)エトキシ]エチル]プロパン・スルフォンアミド及びハイドロクロライド、である。上記全ての化合物は、フリーの基本形態または薬理的な薬剤塩の形態でもよい。
【0088】
医薬の組み合わせを用いてもよい。例えば、フォルモテロール/ブデゾナイド、フォルモテロール/フルチカゾン、フォルモテロール/モメタゾン、サルメテロール/フルチカゾン、フォルモテロール/チオトロピウム塩、ザフィルルカスト/フォルモテロール、ザフィルルカスト/ブデゾナイド、モンテルカスト/フォルモテロール、モンテルカスト/ブデゾナイド、ロラタジン/モンテルカスト、及び、ロラタジン/ザフィルルカスト、である。
【0089】
更なる可能な組み合わせは、特に、チオトリプムとフルチカゾン、チオトロピウムとブデゾナイド、チオトロピウムとモメタゾン、モメタゾンとサルメテロール、フォルモテロールとロフレポナイド、サルメテロールとブデゾナイド、サルメテロールとロフレポナイド、並びに、チオトロピウムとロフレポナイド、である。
【0090】
開示された全ての態様は本発明に関するものである。関連する/添付の優先権書類(先の特許出願の複写)の開示内容もまた、本願の請求の範囲におけるこれらの書類の態様を包含するために、その全てを本願の開示に含める。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】粉状物質のための吸入器の第1の実際例における無負荷の初期位置の縦断面図である。
【図2】保護マウスピースキャップを取り除いた後の図1に相当する断面図であり、吸入器の作動過程の第1の中間位置にあり、投薬チャンバは物質で充填されている。
【図3】図2の領域IIIの拡大図である。
【図4】図3のラインIV-IVに沿った断面図である。
【図5】さらに作動変位し物質を放出した後の、図2に続く図である。
【図6】図5の領域VIの拡大図である。
【図7】復帰変位の過程の中間位置における、図5に続く図である。
【図8】格納チャンバと、それに取り付けられた押込み片と、投薬チャンバを備えたロッドと、螺旋復帰スプリングとをもつホルダーの斜視図である。
【図9】図8に相当する展開図である。
【図10】吸入器の第2の実施例の斜視図である。
【図11】図10の吸入器の部分展開図である。
【図12】更なる実施例の鼻吸入用の吸入器の図1に相当する縦断面図である。
【図13】更なる実施例の、インデックス機構をもつ吸入器の初期位置における縦断面図である。
【図14】図13のXIV領域の拡大図である。
【図15】図14に実質的に相当するが、吸入器の作動位置であり、インデックス機構が計数指部により作動される図である。
【図16】図15の斜視部分断面図である。
【図17】図15のラインXVII-XVIIに沿った断面図である。
【図18】インデックス機構のインデックスホイールの側面図である。
【図19】インデックスホイールの斜視図である。
【符号の説明】
【0092】
1 吸入器
2 ハウジング
3 マウスピース
4 作動ボタン
5 反対面
6 吸入器外側ハウジング(円筒部分)
7 吸入器底部
8 マウスピース底部
9 中心開口
10 空気流入口
14 キャリア
15 支持管
16 吸湿剤
17 環状空間
18、19 補充流口
20 シール部材
21 空気流路
22 空気出口
27 格納チャンバ
28 格納チャンバ壁
30 サポート部
33 粉状物質
34 投薬チャンバ
35 クロスホール
36 ロッド
38 ドライバ
39 ドラッグアーム
40 ドライブ面
42 ガイドラグ
43 溝
46 復帰スプリング
70 インデックス機構
71 インデックスホイール
72 スケールリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬物質を含む、粉状の物質(33)用の吸入器(1)であって、物質格納チャンバ(27)と、投薬チャンバ(34)とを備え、規定量の物質を受容する該投薬チャンバはロッド(36)のクロスホール(35)として形成されかつ充填位置(B)から投与位置(E)へと変位させられ、該投与位置(E)において該投薬チャンバ(34)は空気流路(21)に位置する吸入器において、
前記吸入器(1)が作動させられるとき、格納チャンバ壁(28)の少なくとも一部が前記ロッド(36)の方へ変位させられることを特徴とする吸入器。
【請求項2】
前記吸入器(1)が作動させられるとき、全体または一部が弾性材料からなる前記格納チャンバ壁(28)が前記ロッド(36)の方へ曲げられることを特徴とする請求項1に記載の吸入器。
【請求項3】
前記格納チャンバ壁(28)は、少なくとも前記投薬チャンバであるクロスホールを設けた領域において前記ロッド(36)に対して当接するまで曲げられることを特徴とする請求項1または2に記載の吸入器。
【請求項4】
前記内側への曲がりは、前記吸入器が作動させられるときに形成される空気圧クッションにより行われかつ補助されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の吸入器。
【請求項5】
前記格納チャンバ壁(28)の内側への曲がりのために、押込み片(48)を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の吸入器。
【請求項6】
前記吸入器の作動ボタン(4)と前記ロッド(36)との間の非作用的変位により、該ロッド(36)が移動させられる前に外側の前記押込み片(48)による前記格納チャンバ壁(28)の内側への曲がりが起きることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の吸入器。
【請求項7】
前記押込み片(48)が顎部(60)を備え、該顎部は、該押込み片(48)が内側に完全に旋回した位置において前記ロッド(36)の広い側の壁面に平行に延在する当接面(50)を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の吸入器。
【請求項8】
前記吸入器のハウジング(2)の頭部に突出する作動ボタン(4)が復帰スプリング(46)に抗して変位可能であり、短い非作用的変位の後に前記ロッド(36)を押し、かつ、乗上げスロープ(61)により該ロッド(36)の方に該押込み片を旋回させることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の吸入器。
【請求項9】
前記吸入器ハウジング(2)における前記作動ボタン(4)の変位により、正の空気圧が形成され、この正の空気圧が、前記ロッド(36)の前記空気流路(21)内への変位により前記物質(33)を噴出させることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の吸入器。
【請求項10】
前記作動ボタン(4)のカップ状壁の内側端部領域に弾性ピストンリング(45)を有し、前記吸入器(1)の前記ハウジング(2)は、その内壁が、該弾性ピストンリング(45)のための圧力シリンダ(D)を形成することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の吸入器。
【請求項11】
前記ロッド(36)の断面が前記空気流路の空気出口を閉鎖することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の吸入器。
【請求項12】
前記空気出口の閉鎖ポイントと前記格納チャンバ(27)を収容するハウジング空間との間に空気入口バルブ(26)を有することを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の吸入器。
【請求項13】
投与位置(E)へと運ばれる投薬チャンバ(34)の数を決定するための設定装置(52)を有することを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の吸入器。
【請求項14】
医薬物質を含む、粉状の物質(33)用の吸入器(1)であって、物質格納チャンバ(27)と、投薬チャンバ(34)とを備え、規定量の物質を受容する該投薬チャンバはロッド(36)のクロスホール(35)として形成されかつ充填位置(B)から投与位置(E)へと変位させられ、該投与位置(E)において該投薬チャンバ(34)は空気流路(21)に位置する吸入器において、
前記ロッド(36)は、該ロッド(36)上に順次並んで配置されかつ放出動作中に次々に投与位置(E)へ移動させられ、前記空気流路(21)内の正の空気圧により次々に前記物質を噴出可能である多数の投薬チャンバ(34)を有することを特徴とする吸入器。
【請求項15】
前記ロッド(36)は、平坦ロッドとして形成されていることを特徴とする請求項14に記載の吸入器。
【請求項16】
所定の数の投薬チャンバ(34)が前記投与位置(E)を通過した後、前記作動ボタン(4)の変位移動を停止させるための多数の階段を具備する設定リング(62)を有することを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載の吸入器。
【請求項17】
前記作動ボタン(4)上に停止ラグ(56)を有することを特徴とする請求項1〜16のいずれかに記載の吸入器。
【請求項18】
直線状に横切る前記空気流路(21)が、より小さい断面の斜め上方に向いた流路端部へと続き、該流路端部は、鼻管(65)の自由端(69)から後退して該鼻管内で終端することを特徴とする請求項1〜17のいずれかに記載の吸入器。
【請求項19】
噴出空気圧に到達したときに作動するインデックス機構(70)を有することを特徴とする請求項1〜18のいずれかに記載の吸入器。
【請求項20】
前記インデックス機構(70)に作用する計数指部(81)を有し、充填された前記投薬チャンバ(34)を前記空気流路(21)の領域へと運ぶ該ロッド(36)の変位のほぼ開始時において、該計数指部の先端(82)がインデックスホイール(71)に到達することを特徴とする請求項1〜19のいずれかに記載の吸入器。
【請求項21】
前記インデックスホイール(71)が、ワームホイール式に前記インデックス機構(70)のスケールリング(72)を回すことを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の吸入器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2009−529361(P2009−529361A)
【公表日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−557760(P2008−557760)
【出願日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際出願番号】PCT/EP2007/052178
【国際公開番号】WO2007/104698
【国際公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(507207775)アストラゼネカ エービー (11)