説明

粉粒体の包装用の袋

【課題】防滑性を向上させた樹脂製の粉粒体の包装用の袋を提供する。
【解決手段】筒状に形成された合成樹脂製のシートの下端の向かい合う面同士を接着して閉じてなる粉粒体の包装用の袋であって、幅広の前後壁3、4を備えた合成樹脂製のシート(周壁)2を備え、前記前壁の表面に突起9が形成され、前記後壁の表面が平滑に形成され、複数の袋を載置する際に、一方の袋の突起が形成された前壁と、他方の袋の平滑な後壁とが向かい合うように載置して、それら袋間での滑りを防止することができる粉粒体の包装用の袋1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粉粒体の包装用の袋に関する。さらに詳しくは防滑性を有し、かつ積み重ねることができる粉粒体の包装用の袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の合成樹脂製の袋には、防滑対策として袋の幅広の前後一対の壁にエンボス加工を施し、外表面から突出する多数の突起を形成していた。これは、突起を多数形成すれば、摩擦が多く得られるだろうという考えによる。すなわち、下側の壁の突起はパレットや床面などとの間の滑りを防止するだろうし、上側の壁では上方に積み重ねられた他の袋の下面と、それぞれの突起、いわば粗い面同士を接触させているので、摩擦が得られるというものであった。また、両面に突起があるため、前後の壁のどちらを上にしても下にしても積み重ねた袋の防滑性にほとんど影響はなかった。
【0003】
その他の防滑性を向上させる方法としては、帯電防止剤の量を調節する方法や、表面に防滑液を塗布して滑りを防止するものがある。
【0004】
特許文献1には開封機構に特徴のある合成樹脂製の重袋(以下、重袋)が記載されている。その重袋の開封用の破断線は通気性を有している。そのため、複数の袋を積み上げた際に、袋内の空気が破断線から脱気され、袋の積み上げ状態を安定することができる。
【0005】
特許文献2には2枚の合成樹脂シートを重ねて両側縁を不連続線で熱接着し、底部を連続線で熱接着した粒状物包装袋が記載されている。このものの両面または一面には内面が凸になるようにエンボス加工した凹凸が形成されている。そのため、多数の袋を積み重ねた際に、袋内の空気が両側縁の不連続部の凹凸を通して素早く抜けることができ、積み重ね状態を安定させることができる。
【0006】
特許文献3には包装袋が記載されている。この文献の包装袋は、長手方向に連なっている複数の袋からなり、その連結部分にエンボス加工による撓みが形成されているので、連結部を引きちぎると、前記撓みにより、開口部を容易に開くことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3054653号公報
【特許文献2】特開2007−137455号公報
【特許文献3】特開2006−176205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
合成樹脂製の袋は積み重ねると、紙製など他の材質の袋に比べて滑りやすい。そのため、積み重ねに係わる上下の面にエンボス加工を施して突起あるいは凹凸を形成し、一方の袋の凹凸をもう一方の袋の凹凸にぶつける、あるいは干渉させるなどさせて、互いの滑りを防止していた。しかし、それでも紙製の袋を積み重ねた場合に比べると防滑性に劣る。また、防滑液の塗布は、コンテナなどの密閉された空間のような、外気温の影響で高温になりやすい環境では、防滑液が溶けて、あるいは粘度が低下して、逆に滑りやすくしてしまう。さらに、帯電防止剤の添加量の調整は、季節要因(温度・湿度)により条件が変わりやすく、防滑性が安定しない。
【0009】
特許文献1の重袋は、袋の積み重ね状態を安定させるのに、袋内の空気を破断線から脱気している。
一方、特許文献2の袋は、凹凸が形成された2枚の合成樹脂フィルムを外側に凹面、内側に凸面となるように重ね合わせ、それらの側縁を不連続に溶着している。そのため、不連続な隙間から袋内の空気を脱気することができる。なお、この文献にはエンボス加工を施したフィルムは接触面積が小さくなるので、滑りやすくなる旨が記載されている(特許文献2の段落[0006]参照)。そして、凸部を外側すると、滑りやすくなる旨が記載されている(特許文献2の段落[0015]、[0025]参照)。すなわち、外面に凹部>平滑な面>凸部が形成されている順に、防滑性を高める技術のようである。しかし、どのような考えに基づいて防滑性を高めたのか判然としない。
また、特許文献3ではエンボス加工は防滑性の向上のために用いられていない。
【0010】
そこで、本発明は防滑性を向上させた粉粒体の包装用の袋を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の粉粒体の包装用の袋は(請求項1)、筒状に形成された合成樹脂製のシートの下端の向かい合う面同士を接着して閉じてなる粉粒体の包装用の袋であって、前記シートが前壁および後壁を有しており、前記前壁に、その前壁を内側から外向きに押圧することにより、外面から突出する多数の突起が形成され、
前記後壁の表面が平滑に形成されており、複数の袋を積み重ねる際に、一方の袋の突起が、他方の袋の平滑な面に食い込んで、それら袋間の滑りを防止することを特徴としている。
【0012】
このような粉粒体の包装用の袋は、前記シートのヤング率MD1000/TD1500〜MD3500/TD4000kg/cmで、かつ厚さが0.1〜0.23mmであり、前記突起が、その内側には押圧による窪みが形成され、かつその窪みの反対側では外向きに先細りの略円錐形状に形成されており、前記突起の前壁の外表面からの高さが0.2〜0.4mmで、かつ外表面における底面の直径が0.80〜1.5mmであるものが好ましい(請求項2)。なお、MDとは縦方向のことであり、TDとは横方向のことである。そして、その縦方向とは、インフレーション加工などにより筒状のシートを成形する際の軸方向、すなわち、シートが成形されていった方向(成形方向)のことである。一方、横方向とはシートの平面上において、前記成形方向(縦方向)に直角な方向のことである。
【0013】
また、前記前壁および後壁が上下方向に長い略長方形状であり、前記突起が、前壁の外表面の左右の側縁近辺を除く範囲で、かつ上下方向に延びる略帯状に配置されているものが好ましい(請求項3)。
【0014】
さらに、前記帯状の部位が複数本設けられ、それら帯状の部位が回転対称で配置されているものが好ましい(請求項4)。
【発明の効果】
【0015】
本発明の粉粒体の包装用の袋は(請求項1)、袋を積み重ねた際に、突起が平滑な面に食い込んで、防滑性を高めることができる。そのため、積み重ねた複数の袋を囲うストレッチフィルムなどの使用を低減させることができる。また、袋の後壁は平滑に形成されているので、その平滑をきれいな印刷面とすることができる。
【0016】
このような粉粒体の包装用の袋として、前記シートのヤング率がMD1000/TD1500〜MD3500/TD4000kg/cmで、かつ厚さが0.1〜0.23mm
であり、前記突起が、その内側には押圧による窪みが形成され、かつその窪みの反対側では外向きに先細りの略円錐形状に形成されており、前記突起の前壁の外表面からの高さが0.2〜0.4mmで、かつ外表面における底面の直径が0.8〜1.5mmである場合は(請求項2)、突起の強度を高くすることができ、食い込みを深くすることができる。
【0017】
また、前前記前壁および後壁が上下方向に長い略長方形状であり、前記突起が、前壁の外表面の左右の側縁近辺を除く範囲で、かつ上下方向に延びる略帯状に配置されている場合は(請求項3)、前壁の長辺が長ければ長いほど、中央付近の密着する面積が大きくなり、防滑性能が向上する。
【0018】
さらに、前記帯状の部位が複数本設けられ、それら帯状の部位が回転対称で配置されている場合は(請求項4)、帯状の部位が等間隔で配置されるので、袋の左右を逆にしても同様な防滑性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1aは本発明の粉粒体の包装用の袋(以下、単に袋)を示す斜視図、図1bは図1aの袋に内容物を詰めた状態の外観を示す斜視図である。
【図2】図2aは図1の袋を積み重ねた様子を示す概略図、図2bは図2aのA部分の拡大断面図である。
【図3】本発明の袋の製造方法を示す概略図である。
【図4】図4aはエンボス加工工程の様子を示す要部拡大斜視図、図4bは図4aの内部の示す要部拡大斜視図である。
【図5】図5は図4aのエンボス加工装置を示す斜面図である。
【図6】図6はロール状の部材を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
まず、図1aを用いて本発明の袋を説明する。その袋1は筒状のシート(周壁)2の下端を閉じて底部とし、上端は開口している。その下端は周壁2の向かい合う面を重ねて、それら面を熱溶着(ヒートシール)あるいはミシン縫いなどの手法により閉じている(符号2a参照)。一方、上端は袋1に内容物を入れた後に、前記手法により閉じられる(符号2b参照)。前記袋1は扁平に折り畳まれており、前壁3と、その反対側の後壁4とを備えている。
【0021】
図1bは図1aの袋1に内容物を包装した状態を示す。前記袋1の上下左右の側縁付近は、内容物が入れられることにより、丸みを帯びて外向きに膨らむ。その膨らんだ部分が、それぞれ天部5、底部6および左壁7、右壁8となる。図1bに示す袋1では、これらの範囲は明確でない。しかし、予め周壁2に折り目線を設けて型付けしたり、底板などを挿入し、天部5、底部6および左壁7、右壁8を設けもよい。なお、図1aおよび図1bに示す袋1はピロー型であるが、図1bにおける前記左右の壁7、8を内向きに折り畳んだガセット型のものでもよい。
【0022】
前記前後の壁3、4は左右の壁7、8に比べて幅広に形成されている。前記前壁3には、その外表面から突起9が外向きに突出している。図では突起9は前壁
3にその長手方向に平行に延びる2本の帯状の範囲3a、3aに形成されている。一方、前記後壁4の外表面は平滑にされている。ここで、平滑にされているというのは、後壁4には突起9が形成されていないので、前壁3に比べて平滑であるということである。なお、後壁4を押圧するなどの平滑な処理を施してもよい。
【0023】
前記袋1の大きさは、周壁2の幅(高さ)が350〜1000mmであり、前後の壁3、4の幅が300〜650mm、左右の壁7、8の幅が80〜210mmである。
【0024】
前記袋1に用いられる周壁2の材質は、ポリエチレン(LDPE、HDPE)、あるいはポリプロピレン(OPP、CPP)などの種々の合成樹脂製が用いられ、特にポリエチレンが好ましい。また、その厚みは0.1〜0.23mm、好ましくは0.12〜0.2mmである。さらに、ヤング率がMD1000/TD1500〜MD3500/TD4000kg/cmである。
【0025】
図2aは図1の袋1を多数をパレット10の上に積み重ねた状態を示している。積み重ねられる袋の個数は、ストレッチフィルムなどで一体にされる個数などが一つの目安となる。図では袋1の前壁3を、すなわち突起9のある面を下にしている。そして、その袋1の後壁4の上面に他の袋1´を前壁3を下にして積み重ねている。このように積み重ねると、上側の袋1´の突起9が形成された前壁3と、下側の袋1の平坦にされた後壁4に接する。そのため、下方にいくほど、そして多数の袋が積み重ねられるほど荷重が大きくなり、上側の袋1´の突起9が下側の袋1の後壁4の平滑な面に深く食い込み、防滑性を高めることができる。また、突起9のある面を下にしているので、突起9の根元付近に内容物が上方からの荷重により押し固められたような状態であるので、突起9の根元付近が強固に支持され、下面への食い込みを確実にしている。そして、最下層の袋1の突起9はパレット10や床面との摩擦を得ることができる。なお、図示してないが突起9のある面を下側に向け、その袋1の前壁3の上面に他の袋1´の平滑な後壁4を積み重ねてもよい。その場合は、他の袋1´の後壁4が内容物の重量により引っ張られ、その後壁4の内面と内容物との間の生じるデッドスペースが減少する。そのため、下の袋1の突起9が上の袋1´の後壁4に食い込みやすい。
【0026】
図2bは、図2aに示す上下の袋1´、1の積み重ね部分の拡大断面図である。下方の袋1の後壁には上の袋1´の突起9が押し付けられたことにより、食い込み部4aが形成されている。その食い込み部4aは押しのけられたことによる弾性的な反力で突起9と密着する。なお、後壁4が肉厚で、かつ軟らかい材質で形成されていると、図のように内容物を押しのけないで、後壁4が弾性変形して前記食い込み部4aが形成される。前記上方の袋1´の突起9は外向きに突出し、その突起の内側には窪み9aが形成されている。
また、本図に示すように積み重ねると、突起9の根元付近が内容物で支持され、一層突起9の強度を高めることができる。特に、内容物が細かな粉状のものであると、突起9の窪み9aに内容物が入り込み、突起9と一体になり、強度メンバとなる(B矢印参照)。
一方、前壁3が肉厚で、かつ軟らかい材質で形成されていると、突起9の内部の窪み9aが小さくなり突起9の強度が高まる。そのため、食い込みやすくなる。この場合は、突起9が上下どちらを向いていても食い込みやすい。
【0027】
前記突起9の形状は、略円錐状あるいは略円柱状などであり、他方の袋1´の後壁4の平滑な面に食い込んで摩擦を増大させるものが好ましい。その食い込みは、積み重ねによる積載重量の増大により、深くなり、一層防滑性能を向上させる。前記突起9が前壁3の表面から突出する高さは0.2〜0.4mm、好ましくは0.25〜0.35mmであり、前記前壁3の表面と連続している部分における略直径は0.3〜1.5mm、好ましくは0.5〜1mmである。そして、突起9の平均密度は15〜30個/cm、好ましくは19〜23個/cm、さらに好ましくは20〜22個/cmである。
【0028】
本発明の袋1の包装される内容物としては、合成樹脂ペレット、セメント、穀物、化学製品、肥料あるいはペットフードなどの粉粒体である。その粉粒体の大きさは0.003
〜10mm、好ましくは0.15〜4mmである。
【0029】
図3に本発明の袋1の製造方法を示す。その製造方法15は、押し出し成形したチューブに圧縮空気を吹き込んで膨張させ、細長く太い筒状の部材15aに成形するインフレー
ション加工16と、得られた筒状の部材を扁平に折り畳み、その表面に印刷を施す印刷工程17と、印刷された扁平の部材を再度筒状に拡げ、その筒状の部材を、その内側から外向きにエンボスロールを押圧して多数の突起を形成するエンボス加工工程18と、突起が形成された筒状の部材を扁平に折り畳んだ上で、巻きつけてロール状にする巻き取り工程19とからなる。なお、前記エンボス加工工程18とほぼ同時あるいはその前後に、袋1の左右の壁7、8に相当する部位のまち(ガセット)を形成してもよい。
【0030】
図4aはエンボス加工が施される様子を示している。また、図4bは図4aの筒状の部材15aの内部を見せるために、その前側を裂いた図である。前側とは袋1の前壁3の側に相当する。図4aに示すように、エンボス加工工程18では、前記印刷工程17(図3参照)から流れてきた筒状の部材は、断面矩形状に拡げられ、予め内部に収納されたエンボス加工装置11(図4b参照)によりエンボス加工が施され、下向きに流される。
【0031】
図5はエンボス加工装置を示している。エンボス加工装置11は、縦長の形状であり、下方では前後方向の厚みが薄くなるように形成されている。そのエンボス加工装置11の上方には、その前後の面にそれぞれ一対のローラ11aが回動自在に設けられている。一方、筒状の部材の外側では、床面から延びるフレーム12に固定された支持ローラ12aがエンボス加工装置11の前後にそれぞれ回動自在に設けられている(図4b参照)。前記エンボス加工装置11は、いわば宙吊りの状態になっている。そして、筒状部材を介在させた状態で挟まれた部位では、支持ローラ12a、12aの上面付近にエンボス加工装置11のローラ11aが配置されている。
【0032】
前記フレーム12には、一対のゴムローラ12b、12bが回転自在に取り付けられている。それらゴムローラ12b、12bはそれぞれ前後の支持ローラ12a、12aの下方で、それと平行に設けられている。前記エンボス加工装置11には、多数の凸部13aが設けられたエンボスローラ13が設けられている。そのエンボスローラ13と前記ゴムローラ12bとで筒状の部材の前側を挟持する。そして、前記エンボスローラ13の凸部(図示せず)が筒状の部材を内面から押圧することにより、筒状の部材がゴムローラ12bの表面に押し当てられ、前記突起9(図2b参照)が形成される。
【0033】
一方、筒状の部材の後側では、凸なしローラ14(フラットローラ)が、後ろのゴムローラ12bとの間で筒状の部材の後ろ側の部分を挟持している。なお、図では凸付きローラ13およびフラットローラ14はそれぞれ2個が回転軸方向に直列に並んで配置されているが、1個の長いローラを用いてもよいし、3個以上のローラを直列に配置してもよい。
尚、凸付きローラ13およびフラットローラ14の素材としては、鉄、鋼、ステンレス、アルミニウム、鋳物、硬質プラスチックおよび木などがある。
【0034】
また、エンボス加工を施すことができない場合は、表面を削るなどして粗くし、細かな突起を設けてもよい。さらに、細かな粒子を前壁5の外表面に吹き付けて表面を粗くして突起としてもよい。さらには、予め突起形状が設けられたシートあるいはテープを前壁5の外表面に貼り付けてもよい。
【0035】
前記突起9は前壁5の外表面の左右の側縁近辺を除く範囲で、かつ上下方向に延びる略帯状に配置されている。そのため、前壁5の長辺が長ければ長いほど、中央付近の密着する面積が大きくなり、防滑性能が向上する。また、前記突起9が形成されている範囲は前壁5のほぼ全面、袋1の圧力が最も加わる範囲を領域としてもよい。さらに、前記帯状の部位が複数本設けられ、それら帯状の部位を等間隔で配置してもよい。そうすると、袋1の左右を逆にしても同様な防滑性を得ることができる。なお、前壁5の表面の印刷の邪魔にならないように配置してもよい。また、それら突起9を袋1の模様として、例えば印刷
面と一体となって何らかの模様を表すこともできる。
【0036】
図6は前記巻き取り工程19で得られたロール状の部材を示す。図中の符号20aは部材を巻き付ける芯棒である。また、巻き取り工程19から得られた前記ロール状の部材20の中心付近には膨らんだ部位20bがある。その膨らんだ部位20bはエンボス加工による突起9が形成されていることにより、嵩張っている部位である。本願の袋1は片面(前壁)にのみ突起9が形成されているので、両面にエンボス加工による突起が形成されたものに比べて、その部分20bが嵩張らない。そのため、巻き数を大きくすることができる。すなわち、従来の両面に凹凸が形成されている扁平体では、中央部(突起)が嵩張るので、ロール状にした際に、その巻き数(巻き長さ)を増やせず、その巻き数も安定しなかった。例えば、従来の両面がエンボス加工された巻き長さは900〜1200mであるが、本願では、約1500〜2000mである。
【実施例】
【0037】
ここから、本願発明の実施例の袋の滑りを比較例の袋と比較した結果を示す。計測に用いた袋は、軟らかい袋として、ヤング率MD2080/TD2380kg/cm(以下、試料1という)およびヤング率MD2100/TD2490kg/cm(試料2)を用いた。また、いわゆる一般的な硬さの袋として、ヤング率MD2140/TD2470kg/cm(試料3)およびヤング率MD2220/TD2820kg/cm(試料4)を用いた。さらに、硬い袋として、ヤング率MD3250/TD3670kg/cm(試料5)を用いた。
【0038】
計測は2個の袋1、1´の試験片を傾斜台(図示せず)の上に積み重ね、その傾斜台を傾斜させ、袋間に滑りを生じた傾斜角度を計測するものである。5回の計測を行い、それらの最大値と最小値を除いた3点の平均値を計測値として採用している。また、前記5回の計測を1組とし、3組の平均値を最終的な滑りを生じた角度として、他の条件のものと比較している。なお、全ての凹凸(突起)9は同様の型を用い、エンボス加工により形成されている。表中の上、下はエンボス加工した面の向きのことであり、例えば上、下の両方とも「有り」なら、1個の袋1の上下の両面ともエンボス加工による突起9が形成されており、そのような袋が傾斜台の上に積み重ねられていることである。実施例として、上のみに突起があるものを添え字aを、下のみに突起9があるものを添え字bを付して示している。また、比較例として、両面に突起があるものを添え字cを、どちらの面にも突起がないものを添え字dを付して示している。
【0039】
【表1】

【0040】
表1は試料1の計測結果を示している。用いられた袋の厚みは150μmである。計測時の気温は24°、湿度50%であった。エンボス加工は、片面に形成されている実施例1a、1bの方が両面に形成されているより比較例1cより防滑性に優れていることが分かる。
【0041】
【表2】

【0042】
表2は試料2の計測結果を示している。用いられた袋の厚みは140μmである。計測時の気温は22°、湿度17%であった。実施例1の結果と同様にエンボス加工は片面に形成されている実施例2a、2bの方が比較例2cより防滑性に効果的であることが分かる。
【0043】
【表3】

【0044】
表3は試料3の計測結果を示している。用いられた袋の厚みは180μmである。計測時の気温は24°、湿度50%であった。こちらもエンボス加工は片面に形成されている実施例3a、3bの方が比較例3cより防滑性に効果的であることが分かる。なお、袋の材質が硬くなると、若干防滑性能が軟らかい場合に比べて劣る傾向がある。
【0045】
【表4】

【0046】
表4は試料4の計測結果を示している。用いられた袋の厚みは140μmである。計測時の気温は22°、湿度50%であった。実施例3と同様にエンボス加工は片面に形成されている実施例4a、4bの方が比較例4cより防滑性に効果的であることが分かる。
【0047】
【表5】

【0048】
表5は試料5の計測結果を示している。用いられた袋の厚みは200μmである。計測時の気温は24°、湿度50%であった。エンボス加工は片面に形成されている実施例5a、5bの方が比較例5cより防滑性に効果的であることが分かる。
【0049】
片面にエンボス加工による突起9をもうけたものの滑り角度は39〜44°程度であった。一方、両面に突起を設けたものの滑り角度は30〜33°程度であった。なお、紙袋の上面のみに防滑液を塗布したものは35°前後であり、上下の面に塗布したものでは37°前後であった。
【符号の説明】
【0050】
1 粉粒体の包装用の袋(袋)
2 周壁
2a 熱溶着(下端)
2b 熱溶着(上端)
3 前壁
3a 帯状の範囲
4 後壁
4a 食い込み部
5 天面
6 底面
7 左壁
8 右壁
9 突起
9a 窪み
10 パレット
11 エンボス加工装置
11a ローラ状の部材
12 フレーム
12a 支持ローラ
12b ゴムローラ
13 エンボスローラ
13a 凸部
14 凸なしローラ(フラットローラ)
15 製造方法
15a 筒状の部材
16 インフレーション工程
17 印刷工程
18 エンボス加工工程
19 巻き取り工程
20 ロール状の部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状に形成された合成樹脂製のシートの下端の向かい合う面同士を接着して閉じてなる粉粒体の包装用の袋であって、
前壁および後壁を有しており、
前記前壁に、その前壁を内側から外向きにエンボス加工することにより、外面から突出する多数の突起が形成され、
前記後壁の表面が平滑に形成されており、
複数の袋を積み重ねる際に、一方の袋の突起が、他方の袋の平滑な面に食い込んで、それら袋間の滑りを防止する粉粒体の包装用の袋。
【請求項2】
前記シートのヤング率がMD1000/TD1500〜MD3500/TD4000kg/cmで、かつ厚さが0.1〜0.23mmであり、
前記突起が、その内側には押圧による窪みが形成され、かつその窪みの反対側では外向きに先細りの略円錐形状に形成されており、
前記突起の前壁の外表面からの高さが0.2〜0.4mmで、かつ外表面における底面の直径が0.8〜1.5mmである請求項1に記載の粉粒体の包装用の袋。
【請求項3】
前記前壁および後壁が上下方向に長い略長方形状であり、
前記突起が、前壁の外表面の左右の側縁近辺を除く範囲で、かつ上下方向に延びる略帯状に配置されている請求項2に記載の粉粒体の包装用の袋。
【請求項4】
前記帯状の部位が複数本設けられ、それら帯状の部位が回転対称で配置されている請求項3に記載の粉粒体の包装用の袋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−230777(P2011−230777A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−100336(P2010−100336)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【出願人】(597018750)シコー株式会社 (6)
【Fターム(参考)】