説明

粉粒体の輸送方法及びフレキシブルコンテナ用粉粒体充填装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、穀物や飼料などの輸送に用いられているフレキシブルコンテナ(本願においては、コンテナと略称する)による粉粒体の輸送方法と、この輸送方法に用いるのに適したコンテナへの粉粒体の充填装置に関するものである。
【0002】
【従来技術】従来、この種の目的に使用されるコンテナ70は、図7〜8に示すように、伸びの少ない合成繊維製の丈夫な織布を用いて、筒状の容器71を作り、その上面72には、穀物や飼料などを充填するための入り口74を有すると共に、底面73には、入り口74と同一の構造の排出口75を有している。76、76は、補強帯で、コンテナ側面を補強し、その形状が、円筒形から大きく崩れるのを防止する。また、77は、補強帯76と直交するように容器71の側面に固定された吊り手で、適宜な荷役機械、例えば、フォークリフトのフォークを挿入してコンテナ70を吊り上げて運搬するためのものである。
【0003】このようなコンテナ70を用いて粉粒体を輸送する場合、粉粒体の発送側では、先ず、コンテナ70の排出口75を、それに付設されている結び紐78で堅固に縛り、その縛り口75aを、排出口75の回りを囲むカバー布73aで覆い、さらに、吊り手77の末端に設けられたループ77aに締め紐を通して引き締めることにより底面の排出口を閉じる。次いで、穀物などの貯蔵庫の下面に設けられたジョウゴ状の取出口(図示せず)の下方に、コンテナを支持し、コンテナ70の入り口74と取出口とを連結して、粉粒体の種類やコンテナの大きさにより異なるが、およそ500〜2000kg程度の粉粒体を充填する。
【0004】次いで、前記排出口75を閉じた方法と全く同様にして、入り口74を閉塞してから、適宜な荷役機械、例えば、フォークリフトによって吊り手77を用いて、トラックの荷台に積み込む。この操作を、コンテナの数だけ繰り返して、所定量を、運搬車に積み込み、目的地に運ぶ。荷受け側においては、同様に、荷役機械で吊り上げて、貯蔵庫に運び、排出口75を開いて、内容物を輸送先の貯蔵庫内に落下させることにより、輸送が終了する。空になったコンテナ70は、再び、発送側に戻されて、再使用される。
【0005】
【問題点】しかしながら、このような従来のコンテナ70は、布製容器71の上面と底面の両方に、二重構造の出し入れ口を設けた構成であるため、構造が複雑となり、高価になる欠点がある。底面の排出口の縛り口75aの結束に不手際があると、コンテナの移動中に開いてしまう虞れがあり、排出口の結束には、熟練を必要とするが、使用されて戻されてくるコンテナ70は、入り口が閉じており、排出口が開けられた状態で戻ってくるので、再び使用できる状態にするには、排出口75を閉じる操作と入り口74を開ける操作とが必要で、手間がかかり、作業が能率的でなかった。
【0006】
【発明の目的】本願発明は、粉粒体の輸送に用いられて戻って来たコンテナを、そのままの状態で、直ちに再使用できるコンテナを用いた輸送方法と、該コンテナへの粉粒体の充填装置とを開示することを目的とするものである。
【0007】
【発明の構成】本発明の第一の要旨は、底面に開閉自在な粉粒体出入口を有し、上面に吊り手を備えた袋状物から成るフレキシブルコンテナを用い、該コンテナを、コンテナ載置スペース上に前記コンテナの上面を下にして載置して支持し、前記粉粒体出入口から粉粒体を落下充填して該出入口を閉じた後、予め、可撓条体の一端を固定端として前記載置台の一側若しくはその付近に固定すると共に、該可撓条体の自由端側を前記コンテナ載置スペースとコンテナ上面との間を通してからコンテナの側面に沿って上昇するように配設しておき、該可撓条体の自由端か若しくは該自由端に接続する引き綱を、前記固定端を設けた側と同一の側に引くことにより、前記コンテナ載置スペースの側方に該載置スペースより高い位置に設けた反転補助手段を支点として前記コンテナを転動しつつ反転さて、コンテナの底面が下になり上面が上になるように直立させ、次いで、前記吊り手を用いて荷役機械により、コンテナを搬送車荷台に積載することを特徴とする粉粒体の輸送方法にある。
【0008】本発明の第二の要旨は、コンテナ載置スペースと、該コンテナ載置スペースを挟んで立設した一対の案内ポールと、該一対の案内ポールの夫々に摺動自在に設けられている一対のスライダと、該一対のスライダ間に横架され両スライダの相互位置を固定するコンテナ保持フレームと、前記一対のスライダの夫々に連結して両スライダを同期して上下動するスライダ駆動手段と、一端が固定端として前記コンテナ載置スペースの一側縁辺若しくはその付近に固定され、該載置スペース上を前記一側の縁辺から該縁辺に対向する他側の縁辺に向かって前記案内ポール間を横切る方向に伸長した後上方に立ち上がることにより、載置スペース上に載置されるべきコンテナ底面と側面とに係合可能で、他端が、直接か若しくは引き綱を介して前記固定端の上方に設けられた引き綱巻取手段に連結している可撓条体とを、備えていることを特徴とするフレキシブルコンテナへの粉粒体充填装置にある。以下、実施例に基づいて詳細に説明する。
【0009】
【実施例】図1〜4は、本願方法を実施するための粉粒体の充填装置の一例を示すものである。本願方法に用いられるコンテナは、図5に示すように、底面に、図7で示した従来のコンテナ70において、上面の入り口74を省略して、排出口75を粉粒体の出し入れ口として兼用するように構成したものに相当する。したがって、本願コンテナ50は、図3において、底面53に、従来のコンテナ70の入り口74と同一構成の粉粒体出入口55を有し、上面52から上方に突出可能な吊り手57、57を備えた袋状容器から成る。56は、補強帯である。
【0010】本願充填装置1は、キャスター付の方形基盤2上に、コンテナ載置スペースとしてのコンテナ載置台3が設けられている。この載置台3の高さは、キャスター2aが接する床面から、コンテナ50の高さ寸法を考慮して適宜に定められる。基盤2の四隅には、4本の縦フレーム4a〜dが立設されており、各フレームの上端は、横フレーム4e〜hにより、相互に結合されて、強固な構造体をなしている。コンテナ載置台3を挟んで、一対の案内ポール5、5が基盤2上に立設されており、該ポールの上部は、横フレームに固着されている。
【0011】案内ポール5は、H形鋼あるいはみぞ形鋼などで構成されており、この案内ポール5、5を三方から囲む状態で、横断面形状がコ字形のみぞ形鋼の両端にローラ6a、6aを跨設して成るスライダ6、6が、案内ポール5、5に沿って、摺動自在に遊嵌している。又、案内ポールの下部には、溝を利用して、スライダ駆動手段としてのエアシリンダ7、7が収納されており、このエアシリンダ7のピストンロッド7aは、前記スライダ6の下端に連結している。
【0012】スライダ6、6の上端付近に、平面視が方形のコンテナ保持フレーム9が、その両端で固着することにより、左右一対のスライダ6、6は、コンテナ保持フレーム9を介して一体化し、前記エアシリンダ7により同期して上下動する。コンテナ保持フレーム9には、又、中央部に、粉粒体を上部開口10aにおいて受け入れ、下部開口10bからコンテナ中に導入するホッパー10が支持されると共に、四隅付近には、コンテナを吊支するためのフック9a、9a、…が、垂設されている。
【0013】コンテナ載置台3上には、案内ポール5、間を横切る方向に、一側の縁辺から他側の縁辺へと可撓条体としての反転ベルト12が、横たわっており、該反転ベルト12の一端は、固定端12bとして、基盤1に突設した固定枠2bに固定され、他端は、自由端としてリング12aが設けられている。縦フレーム4cと4dには、コンテナ載置台3よりやや高い位置に、コンテナの反転補助手段としての支点バー13が横架されている。前記反転ベルトは、固定枠2bから、この支点バー13を迂回してから、コンテナ載置台に伸長するように配設されることが望ましい。
【0014】また、支点バー13の直上の横フレーム4gには、引き綱巻取手段としてのギヤドモーター15a付きのウインチ15が、フレームに強固に固設されている。引き綱としてのワイヤー16は、先端に、反転ベルトのリング12aと係合するフック16aが固設されている。15bは、ワイヤー巻取リールである。又、11、11は、下部開口10bの回りに設けられた押圧固定具で、コンテナ50の粉粒体出入口55を巻止めるためのものである。
【0015】押圧固定具11は、図4に示すように、ホッパー10への取付部20に一対の枢支部24、25を設け、枢支部24には、先端に押圧体22を有するクラッチ腕が枢支されている。他の枢支部25には、揺動腕28が枢着され、この揺動腕28の他端とクラッチ腕27のL状コーナー部を、一端にハンドル30を設けた連接棒29によって、ピン29a、bの回りに、回動自在に連結した構造を有する。押圧体22は、ゴム弾性部22aが、コンテナの出入口の部分を、ホッパー側に設けたラック部31との間に挟圧することにより、強固に保持するものである。
【0016】
【作用】このような構成から成る本願充填装置を用いて、本願粉粒体輸送方法を説明する。先ず、装置1を、穀物貯蔵庫などの取出口100の真下に配設し、ホッパー10と取出口100とを、フレキシブルホース101によって、連結する。次に、図2に示すように、反転ベルト12をコンテナ載置台3上にセットしてから、載置台の上に、コンテナ50を粉粒体出入口55を上にして、したがって、コンテナの上面を下にし、吊り手57は、適宜に上面52と載置台3との間に挟み、粉粒体出入口55をホッパーの回りに、押圧固定具11を用いて固定する。
【0017】次いでエアシリンダを操作して、コンテナ保持フレームを下死点まで下げて、コンテナ50を、吊り手の底面側の端部付近57a、…を、フック9a、…に掛け止めてから、コンテナ保持フレーム9を、コンテナ内に粉粒体が充填された際に、出入口55に、その重量がかかることのないような、適宜な位置まで上昇させて、コンテナを支持して、その形状を整える。この状態で、取出口100を開いて、所定量の穀物等をコンテナ内に充填する。コンテナは、フック9aにより、吊支されているので、粉粒体の進入圧により、大きく変形したり、転倒したりする虞れはない。充填が終了したら、出入口を閉じ、コンテナ保持フレーム9を、再び適宜な位置まで下げて、フック9a、…を外す。
【0018】次に、図6に示すように、反転ベルト12のリング12aを、粉粒体が充填されたコンテナ50の側面に沿って立ち上げ、これと電動ウインチ15のワイヤー16とを、フック16aによって連結する。この時点では、コンテナ保持フレーム9は、コンテナ50の転動を邪魔しないように、図6において、2点鎖線の位置まで上昇させてある。この状態で、電動ウインチ15を作動させると、ワイヤー16が巻き取られ、それに伴って、コンテナ50は、反転を開始する。
【0019】コンテナ50が、図6において、2点鎖線で示す位置、即ち、支点バー13に側面が圧接する位置まで来ると、支点バー13は、コンテナ側面の中央よりやや下方に当接するように、その高さが設定されているので、重量バランスにより、支点バー13を中心に、右方に回転する回転モーメントが生じて、コンテナは、容易に反転して、図6において、1点鎖線で示すように、粉粒体出入口55を有する底面が下になり、吊り手57が上になる状態で、基準面としての地面に直立する。
【0020】このコンテナ50の吊り手57、57に、フォークリフトのフォークを挿入して、吊り上げ、トラックの荷台に積み込む。この操作を、繰り返すことにより、必要量の粉粒体が、トラックに積載されたら目的地に輸送する。目的地では、荷役機械により、貯蔵庫に運び、粉粒体出入口を開けて、落下収納する。空になったコンテナは、持ち帰れば、そのまま、次の輸送に使用できる。
【0021】上記実施例では、可撓条体として、帯状のベルトを用いたが、これは、単に、一本の紐でもよく、又、コンテナ載置スペース上に、V字形をなすように、紐を配置したものでもよい。更に、可撓条体と引き綱とに、分離せずに、両者を一体として兼用するものでもよく、その場合は、コンテナを反転したのち、可撓条体を元の位置に自動復帰させて再びセットすることも、例えば、可撓条体の適所に復帰用ロープを結び、該ロープを引き戻す手段を設ければ容易に行うことができる。
【0022】コンテナをフック9aにより吊支する場合、底面に、該フック専用の吊り手を設けることもできる。スライダと案内ポールとの係合は、スライダが滑らかに上下動する限り、いかなる公知の構成も採用できる。スライダ駆動手段は、流体圧シリンダに限られず、ケーブルと滑車による駆動や、ラックとピニオンよる駆動など、本発明の趣旨に反しない限り、任意の直線駆動手段を用いることができる。また、実施例では、基盤として、キャスター付の移動基盤を例示したが、これは、地面に所定の厚さで打設したコンクリート基盤のような固定基盤でもよいことは言うまでもない。コンテナ載置スペースは、基盤の高さでもよいが、これを高い位置に設ければ、反転に要する力が少なくてすみ、フレームの強度も小さいもので済む利点がある。
【0023】
【効果】本願装置とこれを用いた輸送方法によれば、コンテナの管理が極めて容易となり、従来のように、輸送の度毎に開口部を解いたり、縛ったりする手間が省け、能率的に輸送作業を行うことができる。また、本願粉粒体充填装置は、反転用の可撓条体と反転補助手段との採用により、500〜2000kgにも達する重量物が、比較的小さな引張力で反転し、したがって、装置の設備も簡易なものでよく、全体として安価に供給できる。また、コンテナも、開口部が一つで済むので、製作費が著しく低減する等の効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る粉粒体充填装置を正面から見た説明図である。
【図2】図1の充填装置を側面から見た説明図である。
【図3】図2の充填装置を平面方向から見た説明図である。
【図4】図1に示した押圧固定具11の詳細を示す説明図である。
【図5】本願方法に用いるフレキシブルコンテナの説明図である。
【図6】本願実施例に係る充填装置の作動を示す説明図である。
【図7】従来のフレキシブルコンテナの一例を示す説明図である。
【図8】図7に示したフレキシブルコンテナの底面を、排出口を閉じた状態で示す説明図である。
【符号の説明】
2 基盤
3 コンテナ載置台
5 案内ポール
6 スライダ
6a ローラ
7 エアシリンダ
9 コンテナ保持フレーム
10 ホッパー
11 押圧固定具
12 反転ベルト
13 支点バー
15 電動ウインチ
50 フレキシブルコンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】底面に開閉自在な粉粒体出入口を有し、上面に吊り手を備えた袋状物から成るフレキシブルコンテナを用い、該コンテナを、コンテナ載置スペース上に前記コンテナの上面を下にして載置して支持し、前記粉粒体出入口から粉粒体を落下充填して該出入口を閉じた後、予め、可撓条体の一端を固定端として前記載置台の一側若しくはその付近に固定すると共に、該可撓条体の自由端側を前記コンテナ載置スペースとコンテナ上面との間を通してからコンテナの側面に沿って上昇するように配設しておき、該可撓条体の自由端か若しくは該自由端に接続する引き綱を、前記固定端を設けた側と同一の側に引くことにより、前記コンテナを転動しつつ反転させ、コンテナの底面が下になり上面が上になるように直立させ、次いで、前記吊り手を用いて荷役機械により、コンテナを搬送車荷台に積載することを特徴とする粉粒体の輸送方法。
【請求項2】所定の高さに設けたコンテナ載置スペースの側方に該載置スペース面より高い位置に設けた反転補助手段を支点としてコンテナを反転させ、該載置台の側方に、コンテナの底面が下になるように落下させる請求項1の粉粒体輸送方法。
【請求項3】可撓条体若しくはこれに接続する引き紐が、電動ウインチの巻取リールに連結しており、荷役機械が、クレーン若しくはフォークリフトである請求項1又は2の輸送方法。
【請求項4】コンテナ載置スペースと、該コンテナ載置スペースを挟んで立設した一対の案内ポールと、該一対の案内ポールの夫々に摺動自在に設けられている一対のスライダと、該一対のスライダ間に横架され両スライダの相互位置を固定するコンテナ保持フレームと、前記一対のスライダの夫々に連結して両スライダを同期して上下動するスライダ駆動手段と、一端が固定端として前記コンテナ載置スペースの一側の縁辺若しくはその付近に固定され、該載置スペース上を前記一側の縁辺から該縁辺に対向する他側の縁辺に向かって前記案内ポール間を横切る方向に伸長した後上方に立ち上がることにより、載置スペース上に載置されるべきコンテナ底面と側面とに係合可能で、他端が、直接か若しくは引き綱を介して前記固定端の上方に設けられた引き綱巻取手段に連結している可撓条体とを、備えていることを特徴とするフルキシブルコンテナへの粉粒体充填装置。
【請求項5】コンテナ載置スペースが所定の高さのコンテナ載置台から成り、該コンテナ載置台の側方に、該コンテナ載置台より若干高い位置に反転補助手段が設けられている請求項4の粉粒体充填装置。
【請求項6】コンテナ保持フレームの中央に粉粒体をコンテナに導入するホッパーが設けられている請求項4の粉粒体充填装置。
【請求項7】スライダ駆動手段が流体圧シリンダであり、引き綱巻取手段が電動ウインチであり、反転補助手段が、コンテナ載置スペースの側方に横架された支点バーである請求項5の粉粒体充填装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【特許番号】第2854503号
【登録日】平成10年(1998)11月20日
【発行日】平成11年(1999)2月3日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−119193
【出願日】平成5年(1993)4月21日
【公開番号】特開平6−305579
【公開日】平成6年(1994)11月1日
【審査請求日】平成9年(1997)4月3日
【出願人】(593096387)株式会社イトウ精麥 (9)
【参考文献】
【文献】特開 昭62−259983(JP,A)
【文献】特開 昭53−53821(JP,A)