粒子径測定装置及び粒子径測定方法
【課題】 密度回折格子を形成するために、最適な周波数と電圧値とを決定することができる粒子径測定装置及びそれを用いた粒子径測定方法を提供する。
【解決手段】 被測定粒子群の粒子径を算出する粒子径算出部35を備える粒子径測定装置10であって、印加電圧制御部31は、初期設定周波数と初期設定電圧値との電圧を電極2に印加することにより、媒体中で被測定粒子群に電気的な泳動を生じさせることで、回折光強度を取得して、取得した回折光強度に基づいて、拡散開始時間に目標設定回折光強度を発生させるための周波数と電圧値とを決定して、決定した周波数と電圧値との電圧を電極2に印加することにより、媒体中で被測定粒子群に電気的な泳動を生じさせた後、目標設定回折光強度からの回折光強度の時間変化を取得する。
【解決手段】 被測定粒子群の粒子径を算出する粒子径算出部35を備える粒子径測定装置10であって、印加電圧制御部31は、初期設定周波数と初期設定電圧値との電圧を電極2に印加することにより、媒体中で被測定粒子群に電気的な泳動を生じさせることで、回折光強度を取得して、取得した回折光強度に基づいて、拡散開始時間に目標設定回折光強度を発生させるための周波数と電圧値とを決定して、決定した周波数と電圧値との電圧を電極2に印加することにより、媒体中で被測定粒子群に電気的な泳動を生じさせた後、目標設定回折光強度からの回折光強度の時間変化を取得する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的手法(例えば、誘導回折格子法(IG法)等)を用いて被測定粒子群の粒子径を算出する粒子径測定装置及びそれを用いた粒子径測定方法に関し、特に媒体中で形成した被測定粒子群の粒子密度分布による過渡的な回折格子(以下、「密度回折格子」ともいう)を利用して、被測定粒子群の拡散係数を算出し、さらには拡散係数から粒子径を算出する粒子径測定装置及びそれを用いた粒子径測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
媒体(例えば、水等の液体や、ゲル等)中に分散させた粒子群の粒子径dの測定は、製薬や化学や研磨剤やセラミックスや顔料等の粒子径dが品質に影響を与える製品について行われている。さらに、粒子径dが100nm以下である粒子は、一般にナノ粒子と称され、同じ材質であっても通常のバルク物質とは異なる性質を表すことから、さまざまな分野で利用され始めている。
【0003】
ナノ粒子の粒子径dを測定する測定方法として、媒体中に粒子群を分散させた試料に、空間周期パターンを有する電界分布を発生させることによって、粒子群を誘電泳動作用(若しくは電気泳動作用)で移動させることで、媒体中に粒子群の密な領域と疎な領域とが周期的に並ぶ密度回折格子を形成させて、この密度回折格子にレーザ光(測定光)を照射することによって、密度回折格子による回折光強度I0を検出した後、電界分布を発生させることを停止することによって、媒体中で粒子群を拡散させることでぼやけていく密度回折格子による回折光強度Itの時間変化を計測することにより、粒子群の拡散係数Dを算出し、さらには拡散係数Dから粒子径dを算出する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このような測定方法によれば、粒子径dが小さくなればなるほど拡散係数Dが大きくなるので、形成した密度回折格子が早く消失することを利用している。具体的には、電界分布を発生させることを停止した拡散開始時間t0から密度回折格子が消失するときまでの間、試料にレーザ光を照射して回折光強度Itを検出しつづけることにより、回折光強度Itの時間変化を計測している。
図6(a)は、電圧値Vと時間tとの関係を示すグラフであり、図6(b)は、回折光強度Iと時間tとの関係を示すグラフである。なお、図6(a)では、周波数fnと電圧値Vnと印加時間Δtnとの電圧を印加している。そして、印加時間Δtnの開始時間が誘電泳動作用開始時間tsとなるとともに、印加時間Δtnの終了時間が拡散開始時間t0となり、拡散開始時間t0に検出された回折光強度Itが回折光強度I0となる。
【0005】
そして、回折光強度Itの時間変化から拡散係数Dを算出するために、下記式(1)を用いている。
It=I0exp(−2Dq2t)・・・・・(1)
ここで、q=2π/Λ、tは拡散開始時間t0から経過した時間、I0は拡散開始時間t0に検出された回折光強度、Itは時間tに検出された回折光強度、Λは密度回折格子の格子間隔である。
次に、拡散係数Dを算出したら、下記式(2)で示すアインシュタインストークスの関係を用いて、絶対温度Tと媒体の粘度μとを入力することにより、拡散係数Dから粒子径dを算出している。
D= KBT/ 3πμd ・・・・・(2)
ここで、KBはボルツマン定数である。
【0006】
図12は、このような測定方法を用いる粒子径測定装置の全体構成を示す概略構成ブロック図である。また、図2は、試料キュベット(セル)の一例を示す斜視図である。
粒子径測定装置100は、試料が収容される試料キュベット1と、試料キュベット1に設けられている電極対2に対して交流電圧を印加する交流電源3と、試料キュベット1に対してレーザ光(測定光)を照射するレーザ光源4と、第1次の回折光強度Itを検出するための検出光学系150と、増幅器6と、粒子径測定装置100全体を制御する制御部70とを備える。
【0007】
試料キュベット1は、長方形状の底面12と、4個の側壁11とを有するガラス製のものであり、光透過性を有する。そして、試料キュベット1の内部には、試料が収容されるようになっている。
試料キュベット1の一つの側壁11の表面(内面)には、電極対2が形成されている。図3は、電極対2が形成された側壁11の一例を示す平面図であり、図4は、試料キュベットの断面の一部を示す断面図である。
電極対2は、左側電極21と右側電極22とからなる。
左側電極21は、幅L(例えば、1μm)の直線状の電極片21aが間隔を空けて平行に並べられるとともに、これらの電極片21aの外側の片側端どうしを電気的に接続する直線状の接続部21bが設けられ、いわゆる櫛型電極を形成している。
右側電極22についても左側電極21と同様であり、幅L(例えば、1μm)の直線状の電極片22が間隔を空けて平行に並べられるとともに、これらの電極片22aの外側の片側端どうしを電気的に接続する直線状の接続部22bが設けられ、いわゆる櫛型電極を形成している。
そして、電極片21aと電極片22aとの各間隔が、それぞれ一定距離S(例えば、1μm)を空けて配置される。
また、接続部21bの上端部と接続部22bの上端部とには、交流電源3が接続される。
【0008】
これにより、電極対2に交流電源3からの交流電圧が印加されることにより、試料キュベット1内に電界分布が形成される。すると、電気力線が集中する電極片21aと電極片22aとの間に、誘電泳動によって被測定粒子群が凝集する。一方、電極片21aと電極片21aとの間と、電極片22aと電極片22aとの間とには、誘電泳動によって被測定粒子群が存在しなくなる。よって、被測定粒子群が凝集する領域Pは、格子間隔Λとなるように形成される(図4(a)参照)。すなわち、被測定粒子群が凝集する領域Pは、他の領域より粒子密度が高くなり、屈折率が異なることから、格子間隔Λの密度回折格子が形成される。
また、電極対2に交流電源3からの交流電圧が印加されなければ、試料キュベット1内に電界分布が形成されないので、電気力線が集中する領域もなく、被測定粒子群は媒体中で均一に存在する(図4(b)参照)。すなわち、粒子密度が均一になり、屈折率が同じになっている。
【0009】
なお、電極対2の材料としては、例えば、ITO等が挙げられ、ITOの屈折率は2.0程度であり、試料キュベット1の側壁11の材料として高屈折率ガラス(例えば、商品名「s−LAH79」;オハラ社製;屈折率2.0)を用いることで、電極対2と側壁11との屈折率差をなくすことにより、レーザ光の照射時に電極対2による回折光が発生することを抑えることができる。
【0010】
交流電源3には、被測定粒子群に誘電泳動を引き起こすことができる周波数fnと電圧値Vnと印加時間Δtnとの交流電圧が印加できる交流電源が用いられる。具体的には、電圧値1〜100(最大電圧値Vmax)V、周波数10kHz〜10MHz程度のうちから自由に選択して、選択した交流電圧を印加できる交流電源等を使用する。
レーザ光源4は、被測定粒子群に応じて種類を選択すればよいが、例えば、He−Neレーザ光源(波長λ=0.6328μm)である。そして、試料キュベット1にレーザ光が照射される。
【0011】
検出光学系150は、第1次の回折光強度Itを検出する検出器151と、不要なノイズ光を避けるために直径1mmの円形状(面積:0.785mm2)のピンホールを有するピンホール板152と、レーザ光源4の光軸Lの位置を把握するための光軸調整用受光部153とからなる。
検出器151は、1個のフォトダイオード(受光素子)からなる。そして、検出器151の直前には、レーザ光源4から出射されたレーザ光のうち、被測定粒子群による密度回折格子で回折した次数mの回折光のみを検出するように、ピンホールが配置される。
ここで、密度回折格子の格子間隔Λ、レーザ光の波長λ、回折角θ、次数mとすると、下記式(3)が成立する。
mλ=Λ・sinθ・・・・・(3)
よって、例えば、λ=0.6328μm、Λ=3μmとしたとき、m=1次の回折光はθ≒12°に現れるので、光軸Lに対して角度θ≒12°となる光が、ピンホールを通過するように、ピンホール板152が配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2006−84207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、測定者は、交流電源3を用いて電圧値1〜100V、周波数10kHz〜10MHz程度のうちから自由に選択して、選択した交流電圧を印加するようになっており、ある周波数fnと電圧値Vnと印加時間Δtnとの電圧を電極対2に印加することにより、被測定粒子群を誘電泳動作用で移動させることで、密度回折格子を形成させる。しかしながら、測定者は、密度回折格子を形成させるために、電極対2に印加する電圧における周波数fnと電圧値Vnと印加時間Δtnとを決定する方法がないので、経験等によって決定していた。このとき、周波数fnと電圧値Vnと印加時間Δtnとの電圧を電極対2に印加することにより、密度回折格子が安定して形成されていなければ、回折光強度I0は弱くなり、逆に密度回折格子を安定して形成するために印加時間Δtnが長くなりすぎると、試料の温度がジュール熱によって上昇することになる。このような回折光強度I0からの回折光強度Itの時間変化に基づいて、被測定粒子群の粒子径dを算出すると、良好な粒子径dの測定結果が得られないことがあった。
そこで、本発明は、密度回折格子を形成するために、最適な周波数と電圧値とを決定することができる粒子径測定装置及びそれを用いた粒子径測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するためになされた本発明の粒子径測定装置は、被測定粒子群を媒体中に分散させた試料を収容するセルと、交流電圧を印加する電源と、前記電源からの電圧印加によりセル内に空間周期的に変化する電界を形成する電極と、前記電界により媒体中で被測定粒子群に電気的な泳動を生じさせた状態で、前記試料に測定光を照射する光源と、前記試料に測定光を照射することにより発生する回折光による回折光強度を検出する検出器と、前記電源から電極に印加する電圧を停止することにより、前記媒体中で被測定粒子群に拡散を生じさせることで、前記回折光に変化を生じさせる印加電圧制御部と、前記電圧を停止したときである拡散開始時間の回折光強度からの回折光強度の時間変化に基づいて、前記被測定粒子群の粒子径を算出する粒子径算出部とを備える粒子径測定装置であって、前記印加電圧制御部は、初期設定周波数と初期設定電圧値との電圧を電極に印加することにより、前記媒体中で被測定粒子群に電気的な泳動を生じさせることで、回折光強度を取得して、取得した回折光強度に基づいて、前記拡散開始時間に目標設定回折光強度を発生させるための周波数と電圧値とを決定して、決定した周波数と電圧値との電圧を電極に印加することにより、前記媒体中で被測定粒子群に電気的な泳動を生じさせた後、目標設定回折光強度からの回折光強度の時間変化を取得するようにしている。
【0015】
ここで、「電気的な泳動」としては、例えば、荷電した被測定粒子群に電圧を印加して電気的に被測定粒子群を泳動させる静電泳動や、分極した被測定粒子群に電圧を印加して電気的に被測定粒子群を泳動させる誘電泳動等が挙げられる。
また、「測定光」としては、レーザ光が好ましいが、これに限らず、LEDによる光、分光器で分光された光、干渉フィルタやバンドパスフィルタ等で波長範囲が制限された光を用いてもよい。
また、「媒体」としては、内部で被測定粒子群が泳動できるものであればよく、例えば、水や油等の液体や、ゲルや、固体等が挙げられる。
また、「回折光強度」とは、検出器で検出される数値そのものでなくてもよく、密度回折格子を形成する前に既に検出されている初期余剰光の光強度が存在する場合もあるので、検出器で検出される数値と初期余剰光の数値との差分であることが好ましい。
【0016】
また、「初期設定周波数と初期設定電圧値と」とは、測定前に印加する電圧における任意の周波数と電圧値とであり、初期設定周波数と初期設定電圧値との電圧を印加することにより形成された密度回折格子によって、どのくらいの数値の回折光強度I0が得られるかを知ることで、測定する際に印加する電圧における周波数と電圧値とを決定するためのものである。例えば、電圧値1〜100V、周波数10kHz〜10MHz程度のうちから自由に選択することできる交流電源では、初期設定周波数として中央値付近の1000kHz、初期設定電圧値として中央値付近の10Vと設定される。
そして、「目標設定回折光強度」とは、拡散開始時間t0での回折光強度I0を決定するための数値である。これにより、回折光強度I0が弱くなりすぎたり強くなりすぎたりすることなく、良好な粒子径dの測定結果が得られ、さらに再現性の高い粒子径dの測定結果が得られるようになる。例えば、目標設定回折光強度として、検出器で検出可能な最大光強度の70%の数値〜90%の数値の範囲内と設定される。
【0017】
本発明の粒子径測定装置では、まず、被測定粒子群を媒体中に分散させた試料をセル内に収容する。次に、初期設定周波数と初期設定電圧値との電圧を電極に印加することにより、セル内の空間に対して空間周期的に変化する電界を形成する。すると、被測定粒子群に電気的な泳動が生じることで、電界の空間周期に対応するように密な領域と疎な領域とが周期的に並ぶ空間周期的な濃度変化が発生し、すなわち被測定粒子群による密度回折格子が形成される。このとき、密度回折格子が形成された試料に向けて光源から測定光を照射することで、密度回折格子による回折光が生じる。
【0018】
そして、密度回折格子が安定して形成されていれば、回折光強度I0は適切な数値となる。しかし、初期設定周波数と初期設定電圧値との電圧を電極に印加することにより、密度回折格子が安定して形成されていなければ、回折光強度I0は弱くなる。
そこで、電極に印加する電圧を停止した後の回折光強度Itの時間変化を取得する前に、取得した回折光強度I0と目標設定回折光強度とに基づいて、密度回折格子が安定して形成されているか否かを判定する。その結果、密度回折格子が安定して形成されていないと判定したときには、取得した回折光強度I0と目標設定回折光強度とに基づいて、初期設定周波数や初期設定電圧値を変更することになる。
【0019】
そして、電極に印加する電圧の周波数と電圧値とを変更して、密度回折格子が安定して形成されていると判定したときには、その周波数と電圧値とに決定して、決定した周波数と電圧値との電圧を電極に印加することにより、媒体中で被測定粒子群に電気的な泳動を生じさせた後、電極に印加する電圧を停止した後の回折光強度Itの時間変化を取得する。これにより、適切な数値となる回折光強度I0からの回折光強度Itの時間変化が得られる。
最後に、粒子径算出部は、時間tと回折光強度Itとに基づいて、上記式(1)及び式(2)を用いて被測定粒子群の拡散係数Dを算出して、粒子径dの分布を算出する。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明の粒子径測定装置によれば、密度回折格子を形成するために、最適な周波数と電圧値とを決定することができる。
【0021】
(その他の課題を解決するための手段および効果)
また、本発明の粒子径測定装置においては、前記印加電圧制御部は、取得した回折光強度が目標設定回折光強度の範囲内に入ったときには、初期設定周波数と初期設定電圧値とに決定し、一方、回折光強度が目標設定回折光強度の範囲内にないときには、初期設定周波数及び/又は初期設定電圧値を変更し、取得した回折光強度が目標設定回折光強度の範囲内に入ったか否かを判定して、初期設定周波数及び/又は初期設定電圧値を変更しても、取得した回折光強度が目標設定回折光強度の範囲内に入らなかったときには、前記試料を調整するように警告するようにしてもよい。
【0022】
また、本発明の粒子径測定装置においては、前記印加電圧制御部は、取得した回折光強度が目標設定回折光強度の範囲内に入ったときには、初期設定周波数と初期設定電圧値とに決定し、一方、回折光強度が目標設定回折光強度の範囲内にないときには、初期設定電圧値を変更し、取得した回折光強度が目標設定回折光強度の範囲内に入ったときには、初期設定周波数と変更した電圧値とに決定し、初期設定電圧値を変更しても、取得した回折光強度が目標設定回折光強度の範囲内に入らなかったときには、初期設定周波数を変更し、取得した回折光強度が目標設定回折光強度の範囲内に入ったか否かを判定して、初期設定周波数を変更しても、取得した回折光強度が目標設定回折光強度の範囲内に入らなかったときには、前記試料を調整するように警告するようにしてもよい。
【0023】
そして、本発明の粒子径測定装置においては、前記印加電圧制御部は、決定した周波数と電圧値との電圧を電極に印加しながら取得した回折光強度に基づいて、回折光強度の増加率を算出していき、算出してきた回折光強度の増加率と目標設定増加率とに基づいて、印加時間を決定するようにしてもよい。
ここで、「目標設定増加率」とは、電圧をこれ以上印加しても、媒体中で被測定粒子群に電気的な泳動がほとんど生じないため、回折光強度が変化しないと判定するための数値である。これにより、試料の温度がジュール熱によって上昇することを抑えることができ、良好な粒子径dの測定結果が得られ、さらに再現性の高い粒子径dの測定結果が得られるようになる。例えば、目標設定増加率として、0.1秒あたりに検出器で検出可能な最大光強度の5%の数値が増加するか否かと設定される。
本発明の粒子径測定装置によれば、回折光強度の増加率と目標設定増加率とに基づいて、印加時間を決定することにより、試料の温度上昇を抑えることができるので、拡散係数Dをより正確に算出することができる。
【0024】
さらに、本発明の粒子径測定方法においては、被測定粒子群を媒体中に分散させた試料を収容するセルと、交流電圧を印加する電源と、前記電源からの電圧印加によりセル内に空間周期的に変化する電界を形成する電極と、前記電界により媒体中で被測定粒子群に電気的な泳動を生じさせた状態で、前記試料に測定光を照射する光源と、前記試料に測定光を照射することにより発生する回折光による回折光強度を検出する検出器と、前記電源から電極に印加する電圧を停止することにより、前記媒体中で被測定粒子群に拡散を生じさせることで、前記回折光に変化を生じさせる印加電圧制御部と、前記電圧を停止したときである拡散開始時間の回折光強度からの回折光強度の時間変化に基づいて、前記被測定粒子群の粒子径を算出する粒子径算出部とを備える粒子径測定装置を用いた粒子径測定方法であって、初期設定周波数と初期設定電圧値との電圧を電極に印加することにより、前記媒体中で被測定粒子群に電気的な泳動を生じさせることで、回折光強度を取得する初期電圧条件光強度取得ステップと、前記初期電圧条件光強度取得ステップで取得した回折光強度に基づいて、前記拡散開始時間に目標設定回折光強度を発生させるための周波数と電圧値とを決定する測定電圧条件決定ステップと、前記測定電圧条件決定ステップで決定した周波数と電圧値との電圧を電極に印加することにより、前記媒体中で被測定粒子群に電気的な泳動を生じさせた後、目標設定回折光強度からの回折光強度の時間変化を取得する測定ステップとを含むようにしている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態である粒子径測定装置の全体構成を示す概略構成ブロック図である。
【図2】試料キュベットの一例を示す斜視図である。
【図3】電極対が形成された側壁の一例を示す平面図である。
【図4】試料キュベットの断面の一部を示す断面図である。
【図5】測定電圧条件決定方法について説明するためのフローチャートである。
【図6】電圧値と時間との関係を示すグラフと、回折光強度と時間との関係を示すグラフとである。
【図7】電圧値と時間との関係を示すグラフと、回折光強度と時間との関係を示すグラフとである。
【図8】電圧値と時間との関係を示すグラフと、回折光強度と時間との関係を示すグラフとである。
【図9】電圧値と時間との関係を示すグラフと、回折光強度と時間との関係を示すグラフとである。
【図10】測定電圧条件決定方法について説明するためのフローチャートである。
【図11】測定方法について説明するためのフローチャートである。
【図12】従来の粒子径測定装置の全体構成を示す概略構成ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明は、以下に説明するような実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の態様が含まれることはいうまでもない。
【0027】
<実施形態1>
図1は、本発明の一実施形態である粒子径測定装置の全体構成を示す概略構成ブロック図である。なお、粒子径測定装置100と同様のものについては、同じ符号を付している。
本実施形態は、被測定粒子群を媒体中に分散させた試料を測定することにより、被測定粒子群の粒子径dの分布を算出するものである。また、媒体の粘度μは既知であるものを使用している。そして、交流電圧を印加して誘電泳動により分極した被測定粒子群を媒体中で泳動させるものとする。
【0028】
粒子径測定装置10は、試料が収容される試料キュベット1と、試料キュベット1に設けられている電極対2に対して交流電圧を印加する交流電源3と、試料キュベット1に対してレーザ光を照射するレーザ光源4と、第1次の回折光強度Itを検出するための検出光学系150と、増幅器6と、粒子径測定装置10全体を制御する制御部7とを備える。
制御部7は、CPU30とメモリ40とを備え、さらにモニタ画面等を有する表示装置(図示せず)と、キーボードやマウス等を有する入力装置(図示せず)とが連結されている。
また、CPU30が処理する機能をブロック化して説明すると、交流電源3の制御を行う印加電圧制御部31と、レーザ光源4の制御を行うレーザ光源制御部32と、光強度Itを取り込む光強度取得制御部36と、粒子径dの分布を算出する粒子径算出部35とからなる。
【0029】
さらに、メモリ40は、初期電圧条件記憶領域41と、目標設定回折光強度記憶領域42と、目標設定増加率記憶領域43とを有する。
初期電圧条件記憶領域41には、初期設定周波数f1と初期設定電圧値V1と初期設定印加時間Δt1とが予め記憶され、例えば、f1=500kHz、V1=20V、Δt1=0.1sとなっている。
目標設定回折光強度記憶領域42には、目標設定最小光強度Iminと目標設定最大光強度Imaxとが予め記憶され、例えば、Imin=検出器151で検出可能な最大光強度の70%の数値、Imax=検出器151で検出可能な最大光強度の90%の数値となっている。
目標設定増加率記憶領域43には、目標設定増加率ΔIthが予め記憶され、例えば、ΔIth=0.1sあたりに検出器151で検出可能な最大光強度の5%の数値が増加するか否かとなっている。
【0030】
レーザ光源制御部32は、試料キュベット1にレーザ光を照射(ON)したり照射停止(OFF)したりするようにレーザ光源4の制御を行う。
光強度取得制御部36は、検出器151で検出された光強度Itを所定の時間間隔(例えば、1ms間隔)で取得して、第1次の回折光強度Itを検出していく制御を行う。
【0031】
印加電圧制御部31は、電圧値5〜35V、周波数100kHz〜1MHz、印加時間0.01〜1s程度のうちから選択して、選択した周波数fnと電圧値Vnと印加時間Δtnとの交流電圧を電極対2に印加するように交流電源3の制御を行う。
これにより、印加電圧制御部31が、周波数fnと電圧値Vnと印加時間Δtnとの交流電圧を電極対2に印加すると、密度回折格子を形成していくようになっている。そして、交流電圧を印加停止することにより、交流電圧を印加停止した時間が拡散開始時間t0として、密度回折格子を崩してぼやけさせていくことになっている。
【0032】
ここで、印加電圧制御部31により、測定する際に印加する電圧における周波数fnと電圧値Vnと印加時間Δtnとを決定する測定電圧条件決定方法(測定電圧条件決定ステップ)について説明する。図5は、測定電圧条件決定方法について説明するためのフローチャートである。
まず、ステップS101の処理において、被測定粒子群を媒体中に分散させた試料を試料キュベット1に収容する。
次に、ステップS102の処理において、初期設定周波数f1と初期設定電圧値V1と初期設定印加時間Δt1との交流電圧を電極対2に印加するように交流電源3の制御を行う(図6参照)。このとき、レーザ光源制御部32は、試料キュベット1にレーザ光を照射(ON)し、光強度取得制御部36は、回折光強度Itを検出していく(初期電圧条件光強度取得ステップ)。なお、印加時間Δtnの開始時間が誘電泳動作用開始時間tsとなるとともに、印加時間Δtnの終了時間が拡散開始時間t0となり、拡散開始時間t0に検出された回折光強度Itが回折光強度I0となる。
【0033】
次に、ステップS103の処理において、回折光強度I0が目標設定最小光強度Iminより低いか否かを判定する。
回折光強度I0が目標設定最小光強度Iminより低くないと判定したときには、ステップS104の処理において、回折光強度I0が目標設定最大光強度Imaxより高いか否かを判定する。
回折光強度I0が目標設定最大光強度Imaxより高いと判定したときには、ステップS105の処理において、電圧値Vn’(=Vn−ΔV)と周波数fnと印加時間Δtnとの交流電圧を電極対2に印加するように交流電源3の制御を行う。つまり、電圧値VnをΔV(例えば、1V)だけ下げて回折光強度Itを再取得する。そして、ステップS105の処理が終了した後には、ステップS103の処理に戻る。
【0034】
一方、回折光強度I0が目標設定最大光強度Imaxより高くないと判定したときには、ステップS106の処理において、回折光強度I0と回折光強度I−tとの差分である増加率ΔI0が目標設定増加率ΔIthより低いか否かを判定する。なお、回折光強度I−tは、回折光強度I0よりt秒(例えば、0.1秒)前に取得したものである。
増加率ΔI0が目標設定増加率ΔIthより低いと判定したときには、ステップS107の処理において、電圧値Vnと周波数fnと印加時間Δtn’(=Δtn−Δt)との交流電圧を電極対2に印加するように交流電源3の制御を行う(図8参照)。つまり、印加時間ΔtnをΔt(例えば、1秒)だけ短くして回折光強度Itを再取得する。そして、ステップS107の処理が終了した後には、ステップS103の処理に戻る。
【0035】
一方、増加率ΔI0が目標設定増加率ΔIthより低くないと判定したときには、本フローチャートを終了させる。
また、ステップS103の処理において、回折光強度I0が目標設定最小光強度Iminより低いと判定したときには、ステップS108の処理において、電圧値Vnが最大電圧値Vmax(例えば、100V)であるか否かを判定する。すなわち、交流電源3を制御することにより、電圧値VnをΔVだけ上げて回折光強度Itを再取得することができるか否かを判定する。
電圧値Vnが最大電圧値Vmaxでないと判定したときには、ステップS109の処理において、電圧値Vn’(=Vn+ΔV)と周波数fnと印加時間Δtnとの交流電圧を電極対2に印加するように交流電源3の制御を行う(図7参照)。つまり、電圧値VnをΔVだけ上げて回折光強度Itを再取得する。そして、ステップS109の処理が終了した後には、ステップS103の処理に戻る。
【0036】
電圧値Vnが最大電圧値Vmaxであると判定したときには、ステップS110の処理において、周波数fnが変更可能であるか否かを判定する。すなわち、測定していない周波数fnがまだあるか否かを判定する。
周波数fnが変更可能であると判定したときには、ステップS111の処理において、電圧値Vnと周波数fn’(=fn±Δf)と印加時間Δtnとの交流電圧を電極対2に印加するように交流電源3の制御を行う(図9参照)。つまり、周波数fnをΔf(例えば、1kHz)だけ変えて回折光強度Itを再取得する。このとき、周波数fnをΔfだけ上げる方がよいか、Δfだけ下げる方がよいかは、試料の種類によって異なるため、回折光強度Itを取得して数値が高くなった方に決定することになる。そして、ステップS111の処理が終了した後には、ステップS103の処理に戻る。
【0037】
周波数fnが変更可能でないと判定したときには、ステップS112の処理において、増加率ΔI0が目標設定増加率ΔIthより低いか否かを判定する。
増加率ΔI0が目標設定増加率ΔIthより低いと判定したときには、ステップS113の処理において、電圧値Vnと周波数fnと印加時間Δtn’(=Δtn+Δt)との交流電圧を電極対2に印加するように交流電源3の制御を行う。つまり、印加時間ΔtnをΔtだけ長くして回折光強度Itを再取得する。そして、ステップS113の処理が終了した後には、ステップS103の処理に戻る。
一方、増加率ΔI0が目標設定増加率ΔIthより低くないと判定したときには、ステップS114の処理において、試料を調整するように警告する。これにより、測定する試料において、媒体中に分散させた被測定粒子群の濃度等を変えて、試料を交換することになる。そして、ステップS114の処理が終了した後には、ステップS101の処理に戻る。
【0038】
粒子径算出部35は、印加電圧制御部31が選択した周波数fnと電圧値Vnと印加時間Δtnとの交流電圧を電極対2に印加することにより、光強度取得制御部36で得られた回折光強度I0からの回折光強度Itの時間変化に基づいて、上記式(1)及び式(2)を用いて被測定粒子群の拡散係数Dを算出して、粒子径dの分布を算出する制御を行う(測定ステップ)。
以上のように、実施形態1の粒子径測定装置10によれば、密度回折格子を形成するために、最適な周波数fnと電圧値Vnと印加時間Δtnとを決定することができる。
【0039】
<実施形態2>
本実施形態は、上述した実施形態1と異なり、測定前に周波数fnと電圧値Vnとを決定して、測定中に印加時間Δtnを決定するようになっている。
ここで、印加電圧制御部31により、測定する際に印加する電圧における周波数fnと電圧値Vnとを決定する測定電圧条件決定方法(測定電圧条件決定ステップ)について説明する。図10は、測定電圧条件決定方法について説明するためのフローチャートである。
【0040】
まず、ステップS201の処理において、被測定粒子群を媒体中に分散させた試料を試料キュベット1に収容する。
次に、ステップS202の処理において、初期設定周波数f1と初期設定電圧値V1と初期設定印加時間Δt1との交流電圧を電極対2に印加するように交流電源3の制御を行う(図6参照)。このとき、レーザ光源制御部32は、試料キュベット1にレーザ光を照射(ON)し、光強度取得制御部36は、回折光強度Itを検出していく(初期電圧条件光強度取得ステップ)。
【0041】
次に、ステップS203の処理において、回折光強度I0が設定最小光強度Iminより低いか否かを判定する。
回折光強度I0が設定最小光強度Iminより低くないと判定したときには、ステップS204の処理において、回折光強度I0が設定最大光強度Imaxより高いか否かを判定する。
回折光強度I0が設定最大光強度Imaxより高いと判定したときには、ステップS205の処理において、電圧値Vn’(=Vn−ΔV)と周波数fnと初期設定印加時間Δt1との交流電圧を電極対2に印加するように交流電源3の制御を行う。つまり、電圧値VnをΔVだけ下げて回折光強度Itを再取得する。そして、ステップS205の処理が終了した後には、ステップS203の処理に戻る。
【0042】
一方、回折光強度I0が設定最大光強度Imaxより高くないと判定したときには、本フローチャートを終了させる。
また、ステップS203の処理において、回折光強度I0が設定最小光強度Iminより低いと判定したときには、ステップS206の処理において、電圧値Vnが最大電圧値Vmaxであるか否かを判定する。
電圧値Vnが最大電圧値Vmaxでないと判定したときには、ステップS207の処理において、電圧値Vn’(=Vn+ΔV)と周波数fnと初期設定印加時間Δt1との交流電圧を電極対2に印加するように交流電源3の制御を行う(図7参照)。つまり、電圧値VnをΔVだけ上げて回折光強度Itを再取得する。そして、ステップS207の処理が終了した後には、ステップS203の処理に戻る。
【0043】
電圧値Vnが最大電圧値Vmaxであると判定したときには、ステップS208の処理において、周波数fnが変更可能であるか否かを判定する。
周波数fnが変更可能であると判定したときには、ステップS209の処理において、電圧値Vnと周波数fn’(=fn±Δf)と初期設定印加時間Δt1との交流電圧を電極対2に印加するように交流電源3の制御を行う(図9参照)。つまり、周波数fnをΔfだけ変えて回折光強度Itを再取得する。そして、ステップS209の処理が終了した後には、ステップS203の処理に戻る。
周波数fnが変更可能でないと判定したときには、ステップS210の処理において、試料を調整するように警告する。
【0044】
次に、回折光強度Itの時間変化を取得する測定方法(測定ステップ)について説明する。図11は、測定方法について説明するためのフローチャートである。
まず、ステップS301の処理において、印加電圧制御部31は、測定電圧条件決定ステップで決定した周波数fnと電圧値Vnとの交流電圧を電極対2に印加するように交流電源3の制御を行う。このとき、レーザ光源制御部32は、試料キュベット1にレーザ光を照射(ON)し、光強度取得制御部36は、回折光強度Itを検出していく。
次に、ステップS302の処理において、回折光強度Itが設定最小光強度Iminより低いか否かを判定する。回折光強度I0が設定最小光強度Iminより低いと判定したときには、ステップS302の処理を繰り返す。
【0045】
一方、回折光強度I0が設定最小光強度Iminより低くないと判定したときには、ステップS303の処理において、増加率ΔInが目標設定増加率ΔIthより低いか否かを判定する。増加率ΔInが目標設定増加率ΔIthより低くないと判定したときには、ステップS303の処理を繰り返す。
一方、増加率ΔInが目標設定増加率ΔIthより低いと判定したときには、ステップS304の処理において、印加電圧制御部31は、周波数fnと電圧値Vnとの交流電圧を電極対2に印加停止するように交流電源3の制御を行う。つまり、拡散開始時間t0となり、回折光強度Itが回折光強度I0となる。
【0046】
次に、ステップS305の処理において、粒子径算出部35は、拡散開始時間t0からの時間tと回折光強度Itとに基づいて、被測定粒子群の拡散係数Dを算出して、粒子径dの分布を算出する。
そして、ステップS305の処理を終了したときには、本フローチャートを終了させる。
以上のように、実施形態2の粒子径測定装置10によれば、密度回折格子を形成するために、最適な周波数fnと電圧値Vnと印加時間Δtnとを決定することができる。
【0047】
(他の実施形態)
上述した粒子径測定装置10では、検出器151が、第1次の回折光強度Itを検出しているものとする構成を示したが、第2次やさらに高次の回折光強度Itを検出するものとする構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、媒体中で形成した被測定粒子群による密度回折格子を利用して、被測定粒子群の拡散係数を算出し、さらには拡散係数から粒子径を算出する粒子径測定装置等に使用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 試料キュベット(セル)
2 電極対
3 交流電源
4 レーザ光源
10、100 粒子径測定装置
31 印加電圧制御部
35 粒子径算出部
151 検出器
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的手法(例えば、誘導回折格子法(IG法)等)を用いて被測定粒子群の粒子径を算出する粒子径測定装置及びそれを用いた粒子径測定方法に関し、特に媒体中で形成した被測定粒子群の粒子密度分布による過渡的な回折格子(以下、「密度回折格子」ともいう)を利用して、被測定粒子群の拡散係数を算出し、さらには拡散係数から粒子径を算出する粒子径測定装置及びそれを用いた粒子径測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
媒体(例えば、水等の液体や、ゲル等)中に分散させた粒子群の粒子径dの測定は、製薬や化学や研磨剤やセラミックスや顔料等の粒子径dが品質に影響を与える製品について行われている。さらに、粒子径dが100nm以下である粒子は、一般にナノ粒子と称され、同じ材質であっても通常のバルク物質とは異なる性質を表すことから、さまざまな分野で利用され始めている。
【0003】
ナノ粒子の粒子径dを測定する測定方法として、媒体中に粒子群を分散させた試料に、空間周期パターンを有する電界分布を発生させることによって、粒子群を誘電泳動作用(若しくは電気泳動作用)で移動させることで、媒体中に粒子群の密な領域と疎な領域とが周期的に並ぶ密度回折格子を形成させて、この密度回折格子にレーザ光(測定光)を照射することによって、密度回折格子による回折光強度I0を検出した後、電界分布を発生させることを停止することによって、媒体中で粒子群を拡散させることでぼやけていく密度回折格子による回折光強度Itの時間変化を計測することにより、粒子群の拡散係数Dを算出し、さらには拡散係数Dから粒子径dを算出する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このような測定方法によれば、粒子径dが小さくなればなるほど拡散係数Dが大きくなるので、形成した密度回折格子が早く消失することを利用している。具体的には、電界分布を発生させることを停止した拡散開始時間t0から密度回折格子が消失するときまでの間、試料にレーザ光を照射して回折光強度Itを検出しつづけることにより、回折光強度Itの時間変化を計測している。
図6(a)は、電圧値Vと時間tとの関係を示すグラフであり、図6(b)は、回折光強度Iと時間tとの関係を示すグラフである。なお、図6(a)では、周波数fnと電圧値Vnと印加時間Δtnとの電圧を印加している。そして、印加時間Δtnの開始時間が誘電泳動作用開始時間tsとなるとともに、印加時間Δtnの終了時間が拡散開始時間t0となり、拡散開始時間t0に検出された回折光強度Itが回折光強度I0となる。
【0005】
そして、回折光強度Itの時間変化から拡散係数Dを算出するために、下記式(1)を用いている。
It=I0exp(−2Dq2t)・・・・・(1)
ここで、q=2π/Λ、tは拡散開始時間t0から経過した時間、I0は拡散開始時間t0に検出された回折光強度、Itは時間tに検出された回折光強度、Λは密度回折格子の格子間隔である。
次に、拡散係数Dを算出したら、下記式(2)で示すアインシュタインストークスの関係を用いて、絶対温度Tと媒体の粘度μとを入力することにより、拡散係数Dから粒子径dを算出している。
D= KBT/ 3πμd ・・・・・(2)
ここで、KBはボルツマン定数である。
【0006】
図12は、このような測定方法を用いる粒子径測定装置の全体構成を示す概略構成ブロック図である。また、図2は、試料キュベット(セル)の一例を示す斜視図である。
粒子径測定装置100は、試料が収容される試料キュベット1と、試料キュベット1に設けられている電極対2に対して交流電圧を印加する交流電源3と、試料キュベット1に対してレーザ光(測定光)を照射するレーザ光源4と、第1次の回折光強度Itを検出するための検出光学系150と、増幅器6と、粒子径測定装置100全体を制御する制御部70とを備える。
【0007】
試料キュベット1は、長方形状の底面12と、4個の側壁11とを有するガラス製のものであり、光透過性を有する。そして、試料キュベット1の内部には、試料が収容されるようになっている。
試料キュベット1の一つの側壁11の表面(内面)には、電極対2が形成されている。図3は、電極対2が形成された側壁11の一例を示す平面図であり、図4は、試料キュベットの断面の一部を示す断面図である。
電極対2は、左側電極21と右側電極22とからなる。
左側電極21は、幅L(例えば、1μm)の直線状の電極片21aが間隔を空けて平行に並べられるとともに、これらの電極片21aの外側の片側端どうしを電気的に接続する直線状の接続部21bが設けられ、いわゆる櫛型電極を形成している。
右側電極22についても左側電極21と同様であり、幅L(例えば、1μm)の直線状の電極片22が間隔を空けて平行に並べられるとともに、これらの電極片22aの外側の片側端どうしを電気的に接続する直線状の接続部22bが設けられ、いわゆる櫛型電極を形成している。
そして、電極片21aと電極片22aとの各間隔が、それぞれ一定距離S(例えば、1μm)を空けて配置される。
また、接続部21bの上端部と接続部22bの上端部とには、交流電源3が接続される。
【0008】
これにより、電極対2に交流電源3からの交流電圧が印加されることにより、試料キュベット1内に電界分布が形成される。すると、電気力線が集中する電極片21aと電極片22aとの間に、誘電泳動によって被測定粒子群が凝集する。一方、電極片21aと電極片21aとの間と、電極片22aと電極片22aとの間とには、誘電泳動によって被測定粒子群が存在しなくなる。よって、被測定粒子群が凝集する領域Pは、格子間隔Λとなるように形成される(図4(a)参照)。すなわち、被測定粒子群が凝集する領域Pは、他の領域より粒子密度が高くなり、屈折率が異なることから、格子間隔Λの密度回折格子が形成される。
また、電極対2に交流電源3からの交流電圧が印加されなければ、試料キュベット1内に電界分布が形成されないので、電気力線が集中する領域もなく、被測定粒子群は媒体中で均一に存在する(図4(b)参照)。すなわち、粒子密度が均一になり、屈折率が同じになっている。
【0009】
なお、電極対2の材料としては、例えば、ITO等が挙げられ、ITOの屈折率は2.0程度であり、試料キュベット1の側壁11の材料として高屈折率ガラス(例えば、商品名「s−LAH79」;オハラ社製;屈折率2.0)を用いることで、電極対2と側壁11との屈折率差をなくすことにより、レーザ光の照射時に電極対2による回折光が発生することを抑えることができる。
【0010】
交流電源3には、被測定粒子群に誘電泳動を引き起こすことができる周波数fnと電圧値Vnと印加時間Δtnとの交流電圧が印加できる交流電源が用いられる。具体的には、電圧値1〜100(最大電圧値Vmax)V、周波数10kHz〜10MHz程度のうちから自由に選択して、選択した交流電圧を印加できる交流電源等を使用する。
レーザ光源4は、被測定粒子群に応じて種類を選択すればよいが、例えば、He−Neレーザ光源(波長λ=0.6328μm)である。そして、試料キュベット1にレーザ光が照射される。
【0011】
検出光学系150は、第1次の回折光強度Itを検出する検出器151と、不要なノイズ光を避けるために直径1mmの円形状(面積:0.785mm2)のピンホールを有するピンホール板152と、レーザ光源4の光軸Lの位置を把握するための光軸調整用受光部153とからなる。
検出器151は、1個のフォトダイオード(受光素子)からなる。そして、検出器151の直前には、レーザ光源4から出射されたレーザ光のうち、被測定粒子群による密度回折格子で回折した次数mの回折光のみを検出するように、ピンホールが配置される。
ここで、密度回折格子の格子間隔Λ、レーザ光の波長λ、回折角θ、次数mとすると、下記式(3)が成立する。
mλ=Λ・sinθ・・・・・(3)
よって、例えば、λ=0.6328μm、Λ=3μmとしたとき、m=1次の回折光はθ≒12°に現れるので、光軸Lに対して角度θ≒12°となる光が、ピンホールを通過するように、ピンホール板152が配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2006−84207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、測定者は、交流電源3を用いて電圧値1〜100V、周波数10kHz〜10MHz程度のうちから自由に選択して、選択した交流電圧を印加するようになっており、ある周波数fnと電圧値Vnと印加時間Δtnとの電圧を電極対2に印加することにより、被測定粒子群を誘電泳動作用で移動させることで、密度回折格子を形成させる。しかしながら、測定者は、密度回折格子を形成させるために、電極対2に印加する電圧における周波数fnと電圧値Vnと印加時間Δtnとを決定する方法がないので、経験等によって決定していた。このとき、周波数fnと電圧値Vnと印加時間Δtnとの電圧を電極対2に印加することにより、密度回折格子が安定して形成されていなければ、回折光強度I0は弱くなり、逆に密度回折格子を安定して形成するために印加時間Δtnが長くなりすぎると、試料の温度がジュール熱によって上昇することになる。このような回折光強度I0からの回折光強度Itの時間変化に基づいて、被測定粒子群の粒子径dを算出すると、良好な粒子径dの測定結果が得られないことがあった。
そこで、本発明は、密度回折格子を形成するために、最適な周波数と電圧値とを決定することができる粒子径測定装置及びそれを用いた粒子径測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するためになされた本発明の粒子径測定装置は、被測定粒子群を媒体中に分散させた試料を収容するセルと、交流電圧を印加する電源と、前記電源からの電圧印加によりセル内に空間周期的に変化する電界を形成する電極と、前記電界により媒体中で被測定粒子群に電気的な泳動を生じさせた状態で、前記試料に測定光を照射する光源と、前記試料に測定光を照射することにより発生する回折光による回折光強度を検出する検出器と、前記電源から電極に印加する電圧を停止することにより、前記媒体中で被測定粒子群に拡散を生じさせることで、前記回折光に変化を生じさせる印加電圧制御部と、前記電圧を停止したときである拡散開始時間の回折光強度からの回折光強度の時間変化に基づいて、前記被測定粒子群の粒子径を算出する粒子径算出部とを備える粒子径測定装置であって、前記印加電圧制御部は、初期設定周波数と初期設定電圧値との電圧を電極に印加することにより、前記媒体中で被測定粒子群に電気的な泳動を生じさせることで、回折光強度を取得して、取得した回折光強度に基づいて、前記拡散開始時間に目標設定回折光強度を発生させるための周波数と電圧値とを決定して、決定した周波数と電圧値との電圧を電極に印加することにより、前記媒体中で被測定粒子群に電気的な泳動を生じさせた後、目標設定回折光強度からの回折光強度の時間変化を取得するようにしている。
【0015】
ここで、「電気的な泳動」としては、例えば、荷電した被測定粒子群に電圧を印加して電気的に被測定粒子群を泳動させる静電泳動や、分極した被測定粒子群に電圧を印加して電気的に被測定粒子群を泳動させる誘電泳動等が挙げられる。
また、「測定光」としては、レーザ光が好ましいが、これに限らず、LEDによる光、分光器で分光された光、干渉フィルタやバンドパスフィルタ等で波長範囲が制限された光を用いてもよい。
また、「媒体」としては、内部で被測定粒子群が泳動できるものであればよく、例えば、水や油等の液体や、ゲルや、固体等が挙げられる。
また、「回折光強度」とは、検出器で検出される数値そのものでなくてもよく、密度回折格子を形成する前に既に検出されている初期余剰光の光強度が存在する場合もあるので、検出器で検出される数値と初期余剰光の数値との差分であることが好ましい。
【0016】
また、「初期設定周波数と初期設定電圧値と」とは、測定前に印加する電圧における任意の周波数と電圧値とであり、初期設定周波数と初期設定電圧値との電圧を印加することにより形成された密度回折格子によって、どのくらいの数値の回折光強度I0が得られるかを知ることで、測定する際に印加する電圧における周波数と電圧値とを決定するためのものである。例えば、電圧値1〜100V、周波数10kHz〜10MHz程度のうちから自由に選択することできる交流電源では、初期設定周波数として中央値付近の1000kHz、初期設定電圧値として中央値付近の10Vと設定される。
そして、「目標設定回折光強度」とは、拡散開始時間t0での回折光強度I0を決定するための数値である。これにより、回折光強度I0が弱くなりすぎたり強くなりすぎたりすることなく、良好な粒子径dの測定結果が得られ、さらに再現性の高い粒子径dの測定結果が得られるようになる。例えば、目標設定回折光強度として、検出器で検出可能な最大光強度の70%の数値〜90%の数値の範囲内と設定される。
【0017】
本発明の粒子径測定装置では、まず、被測定粒子群を媒体中に分散させた試料をセル内に収容する。次に、初期設定周波数と初期設定電圧値との電圧を電極に印加することにより、セル内の空間に対して空間周期的に変化する電界を形成する。すると、被測定粒子群に電気的な泳動が生じることで、電界の空間周期に対応するように密な領域と疎な領域とが周期的に並ぶ空間周期的な濃度変化が発生し、すなわち被測定粒子群による密度回折格子が形成される。このとき、密度回折格子が形成された試料に向けて光源から測定光を照射することで、密度回折格子による回折光が生じる。
【0018】
そして、密度回折格子が安定して形成されていれば、回折光強度I0は適切な数値となる。しかし、初期設定周波数と初期設定電圧値との電圧を電極に印加することにより、密度回折格子が安定して形成されていなければ、回折光強度I0は弱くなる。
そこで、電極に印加する電圧を停止した後の回折光強度Itの時間変化を取得する前に、取得した回折光強度I0と目標設定回折光強度とに基づいて、密度回折格子が安定して形成されているか否かを判定する。その結果、密度回折格子が安定して形成されていないと判定したときには、取得した回折光強度I0と目標設定回折光強度とに基づいて、初期設定周波数や初期設定電圧値を変更することになる。
【0019】
そして、電極に印加する電圧の周波数と電圧値とを変更して、密度回折格子が安定して形成されていると判定したときには、その周波数と電圧値とに決定して、決定した周波数と電圧値との電圧を電極に印加することにより、媒体中で被測定粒子群に電気的な泳動を生じさせた後、電極に印加する電圧を停止した後の回折光強度Itの時間変化を取得する。これにより、適切な数値となる回折光強度I0からの回折光強度Itの時間変化が得られる。
最後に、粒子径算出部は、時間tと回折光強度Itとに基づいて、上記式(1)及び式(2)を用いて被測定粒子群の拡散係数Dを算出して、粒子径dの分布を算出する。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明の粒子径測定装置によれば、密度回折格子を形成するために、最適な周波数と電圧値とを決定することができる。
【0021】
(その他の課題を解決するための手段および効果)
また、本発明の粒子径測定装置においては、前記印加電圧制御部は、取得した回折光強度が目標設定回折光強度の範囲内に入ったときには、初期設定周波数と初期設定電圧値とに決定し、一方、回折光強度が目標設定回折光強度の範囲内にないときには、初期設定周波数及び/又は初期設定電圧値を変更し、取得した回折光強度が目標設定回折光強度の範囲内に入ったか否かを判定して、初期設定周波数及び/又は初期設定電圧値を変更しても、取得した回折光強度が目標設定回折光強度の範囲内に入らなかったときには、前記試料を調整するように警告するようにしてもよい。
【0022】
また、本発明の粒子径測定装置においては、前記印加電圧制御部は、取得した回折光強度が目標設定回折光強度の範囲内に入ったときには、初期設定周波数と初期設定電圧値とに決定し、一方、回折光強度が目標設定回折光強度の範囲内にないときには、初期設定電圧値を変更し、取得した回折光強度が目標設定回折光強度の範囲内に入ったときには、初期設定周波数と変更した電圧値とに決定し、初期設定電圧値を変更しても、取得した回折光強度が目標設定回折光強度の範囲内に入らなかったときには、初期設定周波数を変更し、取得した回折光強度が目標設定回折光強度の範囲内に入ったか否かを判定して、初期設定周波数を変更しても、取得した回折光強度が目標設定回折光強度の範囲内に入らなかったときには、前記試料を調整するように警告するようにしてもよい。
【0023】
そして、本発明の粒子径測定装置においては、前記印加電圧制御部は、決定した周波数と電圧値との電圧を電極に印加しながら取得した回折光強度に基づいて、回折光強度の増加率を算出していき、算出してきた回折光強度の増加率と目標設定増加率とに基づいて、印加時間を決定するようにしてもよい。
ここで、「目標設定増加率」とは、電圧をこれ以上印加しても、媒体中で被測定粒子群に電気的な泳動がほとんど生じないため、回折光強度が変化しないと判定するための数値である。これにより、試料の温度がジュール熱によって上昇することを抑えることができ、良好な粒子径dの測定結果が得られ、さらに再現性の高い粒子径dの測定結果が得られるようになる。例えば、目標設定増加率として、0.1秒あたりに検出器で検出可能な最大光強度の5%の数値が増加するか否かと設定される。
本発明の粒子径測定装置によれば、回折光強度の増加率と目標設定増加率とに基づいて、印加時間を決定することにより、試料の温度上昇を抑えることができるので、拡散係数Dをより正確に算出することができる。
【0024】
さらに、本発明の粒子径測定方法においては、被測定粒子群を媒体中に分散させた試料を収容するセルと、交流電圧を印加する電源と、前記電源からの電圧印加によりセル内に空間周期的に変化する電界を形成する電極と、前記電界により媒体中で被測定粒子群に電気的な泳動を生じさせた状態で、前記試料に測定光を照射する光源と、前記試料に測定光を照射することにより発生する回折光による回折光強度を検出する検出器と、前記電源から電極に印加する電圧を停止することにより、前記媒体中で被測定粒子群に拡散を生じさせることで、前記回折光に変化を生じさせる印加電圧制御部と、前記電圧を停止したときである拡散開始時間の回折光強度からの回折光強度の時間変化に基づいて、前記被測定粒子群の粒子径を算出する粒子径算出部とを備える粒子径測定装置を用いた粒子径測定方法であって、初期設定周波数と初期設定電圧値との電圧を電極に印加することにより、前記媒体中で被測定粒子群に電気的な泳動を生じさせることで、回折光強度を取得する初期電圧条件光強度取得ステップと、前記初期電圧条件光強度取得ステップで取得した回折光強度に基づいて、前記拡散開始時間に目標設定回折光強度を発生させるための周波数と電圧値とを決定する測定電圧条件決定ステップと、前記測定電圧条件決定ステップで決定した周波数と電圧値との電圧を電極に印加することにより、前記媒体中で被測定粒子群に電気的な泳動を生じさせた後、目標設定回折光強度からの回折光強度の時間変化を取得する測定ステップとを含むようにしている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態である粒子径測定装置の全体構成を示す概略構成ブロック図である。
【図2】試料キュベットの一例を示す斜視図である。
【図3】電極対が形成された側壁の一例を示す平面図である。
【図4】試料キュベットの断面の一部を示す断面図である。
【図5】測定電圧条件決定方法について説明するためのフローチャートである。
【図6】電圧値と時間との関係を示すグラフと、回折光強度と時間との関係を示すグラフとである。
【図7】電圧値と時間との関係を示すグラフと、回折光強度と時間との関係を示すグラフとである。
【図8】電圧値と時間との関係を示すグラフと、回折光強度と時間との関係を示すグラフとである。
【図9】電圧値と時間との関係を示すグラフと、回折光強度と時間との関係を示すグラフとである。
【図10】測定電圧条件決定方法について説明するためのフローチャートである。
【図11】測定方法について説明するためのフローチャートである。
【図12】従来の粒子径測定装置の全体構成を示す概略構成ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明は、以下に説明するような実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の態様が含まれることはいうまでもない。
【0027】
<実施形態1>
図1は、本発明の一実施形態である粒子径測定装置の全体構成を示す概略構成ブロック図である。なお、粒子径測定装置100と同様のものについては、同じ符号を付している。
本実施形態は、被測定粒子群を媒体中に分散させた試料を測定することにより、被測定粒子群の粒子径dの分布を算出するものである。また、媒体の粘度μは既知であるものを使用している。そして、交流電圧を印加して誘電泳動により分極した被測定粒子群を媒体中で泳動させるものとする。
【0028】
粒子径測定装置10は、試料が収容される試料キュベット1と、試料キュベット1に設けられている電極対2に対して交流電圧を印加する交流電源3と、試料キュベット1に対してレーザ光を照射するレーザ光源4と、第1次の回折光強度Itを検出するための検出光学系150と、増幅器6と、粒子径測定装置10全体を制御する制御部7とを備える。
制御部7は、CPU30とメモリ40とを備え、さらにモニタ画面等を有する表示装置(図示せず)と、キーボードやマウス等を有する入力装置(図示せず)とが連結されている。
また、CPU30が処理する機能をブロック化して説明すると、交流電源3の制御を行う印加電圧制御部31と、レーザ光源4の制御を行うレーザ光源制御部32と、光強度Itを取り込む光強度取得制御部36と、粒子径dの分布を算出する粒子径算出部35とからなる。
【0029】
さらに、メモリ40は、初期電圧条件記憶領域41と、目標設定回折光強度記憶領域42と、目標設定増加率記憶領域43とを有する。
初期電圧条件記憶領域41には、初期設定周波数f1と初期設定電圧値V1と初期設定印加時間Δt1とが予め記憶され、例えば、f1=500kHz、V1=20V、Δt1=0.1sとなっている。
目標設定回折光強度記憶領域42には、目標設定最小光強度Iminと目標設定最大光強度Imaxとが予め記憶され、例えば、Imin=検出器151で検出可能な最大光強度の70%の数値、Imax=検出器151で検出可能な最大光強度の90%の数値となっている。
目標設定増加率記憶領域43には、目標設定増加率ΔIthが予め記憶され、例えば、ΔIth=0.1sあたりに検出器151で検出可能な最大光強度の5%の数値が増加するか否かとなっている。
【0030】
レーザ光源制御部32は、試料キュベット1にレーザ光を照射(ON)したり照射停止(OFF)したりするようにレーザ光源4の制御を行う。
光強度取得制御部36は、検出器151で検出された光強度Itを所定の時間間隔(例えば、1ms間隔)で取得して、第1次の回折光強度Itを検出していく制御を行う。
【0031】
印加電圧制御部31は、電圧値5〜35V、周波数100kHz〜1MHz、印加時間0.01〜1s程度のうちから選択して、選択した周波数fnと電圧値Vnと印加時間Δtnとの交流電圧を電極対2に印加するように交流電源3の制御を行う。
これにより、印加電圧制御部31が、周波数fnと電圧値Vnと印加時間Δtnとの交流電圧を電極対2に印加すると、密度回折格子を形成していくようになっている。そして、交流電圧を印加停止することにより、交流電圧を印加停止した時間が拡散開始時間t0として、密度回折格子を崩してぼやけさせていくことになっている。
【0032】
ここで、印加電圧制御部31により、測定する際に印加する電圧における周波数fnと電圧値Vnと印加時間Δtnとを決定する測定電圧条件決定方法(測定電圧条件決定ステップ)について説明する。図5は、測定電圧条件決定方法について説明するためのフローチャートである。
まず、ステップS101の処理において、被測定粒子群を媒体中に分散させた試料を試料キュベット1に収容する。
次に、ステップS102の処理において、初期設定周波数f1と初期設定電圧値V1と初期設定印加時間Δt1との交流電圧を電極対2に印加するように交流電源3の制御を行う(図6参照)。このとき、レーザ光源制御部32は、試料キュベット1にレーザ光を照射(ON)し、光強度取得制御部36は、回折光強度Itを検出していく(初期電圧条件光強度取得ステップ)。なお、印加時間Δtnの開始時間が誘電泳動作用開始時間tsとなるとともに、印加時間Δtnの終了時間が拡散開始時間t0となり、拡散開始時間t0に検出された回折光強度Itが回折光強度I0となる。
【0033】
次に、ステップS103の処理において、回折光強度I0が目標設定最小光強度Iminより低いか否かを判定する。
回折光強度I0が目標設定最小光強度Iminより低くないと判定したときには、ステップS104の処理において、回折光強度I0が目標設定最大光強度Imaxより高いか否かを判定する。
回折光強度I0が目標設定最大光強度Imaxより高いと判定したときには、ステップS105の処理において、電圧値Vn’(=Vn−ΔV)と周波数fnと印加時間Δtnとの交流電圧を電極対2に印加するように交流電源3の制御を行う。つまり、電圧値VnをΔV(例えば、1V)だけ下げて回折光強度Itを再取得する。そして、ステップS105の処理が終了した後には、ステップS103の処理に戻る。
【0034】
一方、回折光強度I0が目標設定最大光強度Imaxより高くないと判定したときには、ステップS106の処理において、回折光強度I0と回折光強度I−tとの差分である増加率ΔI0が目標設定増加率ΔIthより低いか否かを判定する。なお、回折光強度I−tは、回折光強度I0よりt秒(例えば、0.1秒)前に取得したものである。
増加率ΔI0が目標設定増加率ΔIthより低いと判定したときには、ステップS107の処理において、電圧値Vnと周波数fnと印加時間Δtn’(=Δtn−Δt)との交流電圧を電極対2に印加するように交流電源3の制御を行う(図8参照)。つまり、印加時間ΔtnをΔt(例えば、1秒)だけ短くして回折光強度Itを再取得する。そして、ステップS107の処理が終了した後には、ステップS103の処理に戻る。
【0035】
一方、増加率ΔI0が目標設定増加率ΔIthより低くないと判定したときには、本フローチャートを終了させる。
また、ステップS103の処理において、回折光強度I0が目標設定最小光強度Iminより低いと判定したときには、ステップS108の処理において、電圧値Vnが最大電圧値Vmax(例えば、100V)であるか否かを判定する。すなわち、交流電源3を制御することにより、電圧値VnをΔVだけ上げて回折光強度Itを再取得することができるか否かを判定する。
電圧値Vnが最大電圧値Vmaxでないと判定したときには、ステップS109の処理において、電圧値Vn’(=Vn+ΔV)と周波数fnと印加時間Δtnとの交流電圧を電極対2に印加するように交流電源3の制御を行う(図7参照)。つまり、電圧値VnをΔVだけ上げて回折光強度Itを再取得する。そして、ステップS109の処理が終了した後には、ステップS103の処理に戻る。
【0036】
電圧値Vnが最大電圧値Vmaxであると判定したときには、ステップS110の処理において、周波数fnが変更可能であるか否かを判定する。すなわち、測定していない周波数fnがまだあるか否かを判定する。
周波数fnが変更可能であると判定したときには、ステップS111の処理において、電圧値Vnと周波数fn’(=fn±Δf)と印加時間Δtnとの交流電圧を電極対2に印加するように交流電源3の制御を行う(図9参照)。つまり、周波数fnをΔf(例えば、1kHz)だけ変えて回折光強度Itを再取得する。このとき、周波数fnをΔfだけ上げる方がよいか、Δfだけ下げる方がよいかは、試料の種類によって異なるため、回折光強度Itを取得して数値が高くなった方に決定することになる。そして、ステップS111の処理が終了した後には、ステップS103の処理に戻る。
【0037】
周波数fnが変更可能でないと判定したときには、ステップS112の処理において、増加率ΔI0が目標設定増加率ΔIthより低いか否かを判定する。
増加率ΔI0が目標設定増加率ΔIthより低いと判定したときには、ステップS113の処理において、電圧値Vnと周波数fnと印加時間Δtn’(=Δtn+Δt)との交流電圧を電極対2に印加するように交流電源3の制御を行う。つまり、印加時間ΔtnをΔtだけ長くして回折光強度Itを再取得する。そして、ステップS113の処理が終了した後には、ステップS103の処理に戻る。
一方、増加率ΔI0が目標設定増加率ΔIthより低くないと判定したときには、ステップS114の処理において、試料を調整するように警告する。これにより、測定する試料において、媒体中に分散させた被測定粒子群の濃度等を変えて、試料を交換することになる。そして、ステップS114の処理が終了した後には、ステップS101の処理に戻る。
【0038】
粒子径算出部35は、印加電圧制御部31が選択した周波数fnと電圧値Vnと印加時間Δtnとの交流電圧を電極対2に印加することにより、光強度取得制御部36で得られた回折光強度I0からの回折光強度Itの時間変化に基づいて、上記式(1)及び式(2)を用いて被測定粒子群の拡散係数Dを算出して、粒子径dの分布を算出する制御を行う(測定ステップ)。
以上のように、実施形態1の粒子径測定装置10によれば、密度回折格子を形成するために、最適な周波数fnと電圧値Vnと印加時間Δtnとを決定することができる。
【0039】
<実施形態2>
本実施形態は、上述した実施形態1と異なり、測定前に周波数fnと電圧値Vnとを決定して、測定中に印加時間Δtnを決定するようになっている。
ここで、印加電圧制御部31により、測定する際に印加する電圧における周波数fnと電圧値Vnとを決定する測定電圧条件決定方法(測定電圧条件決定ステップ)について説明する。図10は、測定電圧条件決定方法について説明するためのフローチャートである。
【0040】
まず、ステップS201の処理において、被測定粒子群を媒体中に分散させた試料を試料キュベット1に収容する。
次に、ステップS202の処理において、初期設定周波数f1と初期設定電圧値V1と初期設定印加時間Δt1との交流電圧を電極対2に印加するように交流電源3の制御を行う(図6参照)。このとき、レーザ光源制御部32は、試料キュベット1にレーザ光を照射(ON)し、光強度取得制御部36は、回折光強度Itを検出していく(初期電圧条件光強度取得ステップ)。
【0041】
次に、ステップS203の処理において、回折光強度I0が設定最小光強度Iminより低いか否かを判定する。
回折光強度I0が設定最小光強度Iminより低くないと判定したときには、ステップS204の処理において、回折光強度I0が設定最大光強度Imaxより高いか否かを判定する。
回折光強度I0が設定最大光強度Imaxより高いと判定したときには、ステップS205の処理において、電圧値Vn’(=Vn−ΔV)と周波数fnと初期設定印加時間Δt1との交流電圧を電極対2に印加するように交流電源3の制御を行う。つまり、電圧値VnをΔVだけ下げて回折光強度Itを再取得する。そして、ステップS205の処理が終了した後には、ステップS203の処理に戻る。
【0042】
一方、回折光強度I0が設定最大光強度Imaxより高くないと判定したときには、本フローチャートを終了させる。
また、ステップS203の処理において、回折光強度I0が設定最小光強度Iminより低いと判定したときには、ステップS206の処理において、電圧値Vnが最大電圧値Vmaxであるか否かを判定する。
電圧値Vnが最大電圧値Vmaxでないと判定したときには、ステップS207の処理において、電圧値Vn’(=Vn+ΔV)と周波数fnと初期設定印加時間Δt1との交流電圧を電極対2に印加するように交流電源3の制御を行う(図7参照)。つまり、電圧値VnをΔVだけ上げて回折光強度Itを再取得する。そして、ステップS207の処理が終了した後には、ステップS203の処理に戻る。
【0043】
電圧値Vnが最大電圧値Vmaxであると判定したときには、ステップS208の処理において、周波数fnが変更可能であるか否かを判定する。
周波数fnが変更可能であると判定したときには、ステップS209の処理において、電圧値Vnと周波数fn’(=fn±Δf)と初期設定印加時間Δt1との交流電圧を電極対2に印加するように交流電源3の制御を行う(図9参照)。つまり、周波数fnをΔfだけ変えて回折光強度Itを再取得する。そして、ステップS209の処理が終了した後には、ステップS203の処理に戻る。
周波数fnが変更可能でないと判定したときには、ステップS210の処理において、試料を調整するように警告する。
【0044】
次に、回折光強度Itの時間変化を取得する測定方法(測定ステップ)について説明する。図11は、測定方法について説明するためのフローチャートである。
まず、ステップS301の処理において、印加電圧制御部31は、測定電圧条件決定ステップで決定した周波数fnと電圧値Vnとの交流電圧を電極対2に印加するように交流電源3の制御を行う。このとき、レーザ光源制御部32は、試料キュベット1にレーザ光を照射(ON)し、光強度取得制御部36は、回折光強度Itを検出していく。
次に、ステップS302の処理において、回折光強度Itが設定最小光強度Iminより低いか否かを判定する。回折光強度I0が設定最小光強度Iminより低いと判定したときには、ステップS302の処理を繰り返す。
【0045】
一方、回折光強度I0が設定最小光強度Iminより低くないと判定したときには、ステップS303の処理において、増加率ΔInが目標設定増加率ΔIthより低いか否かを判定する。増加率ΔInが目標設定増加率ΔIthより低くないと判定したときには、ステップS303の処理を繰り返す。
一方、増加率ΔInが目標設定増加率ΔIthより低いと判定したときには、ステップS304の処理において、印加電圧制御部31は、周波数fnと電圧値Vnとの交流電圧を電極対2に印加停止するように交流電源3の制御を行う。つまり、拡散開始時間t0となり、回折光強度Itが回折光強度I0となる。
【0046】
次に、ステップS305の処理において、粒子径算出部35は、拡散開始時間t0からの時間tと回折光強度Itとに基づいて、被測定粒子群の拡散係数Dを算出して、粒子径dの分布を算出する。
そして、ステップS305の処理を終了したときには、本フローチャートを終了させる。
以上のように、実施形態2の粒子径測定装置10によれば、密度回折格子を形成するために、最適な周波数fnと電圧値Vnと印加時間Δtnとを決定することができる。
【0047】
(他の実施形態)
上述した粒子径測定装置10では、検出器151が、第1次の回折光強度Itを検出しているものとする構成を示したが、第2次やさらに高次の回折光強度Itを検出するものとする構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、媒体中で形成した被測定粒子群による密度回折格子を利用して、被測定粒子群の拡散係数を算出し、さらには拡散係数から粒子径を算出する粒子径測定装置等に使用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 試料キュベット(セル)
2 電極対
3 交流電源
4 レーザ光源
10、100 粒子径測定装置
31 印加電圧制御部
35 粒子径算出部
151 検出器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定粒子群を媒体中に分散させた試料を収容するセルと、
交流電圧を印加する電源と、
前記電源からの電圧印加によりセル内に空間周期的に変化する電界を形成する電極と、
前記電界により媒体中で被測定粒子群に電気的な泳動を生じさせた状態で、前記試料に測定光を照射する光源と、
前記試料に測定光を照射することにより発生する回折光による回折光強度を検出する検出器と、
前記電源から電極に印加する電圧を停止することにより、前記媒体中で被測定粒子群に拡散を生じさせることで、前記回折光に変化を生じさせる印加電圧制御部と、
前記電圧を停止したときである拡散開始時間の回折光強度からの回折光強度の時間変化に基づいて、前記被測定粒子群の粒子径を算出する粒子径算出部とを備える粒子径測定装置であって、
前記印加電圧制御部は、初期設定周波数と初期設定電圧値との電圧を電極に印加することにより、前記媒体中で被測定粒子群に電気的な泳動を生じさせることで、回折光強度を取得して、
取得した回折光強度に基づいて、前記拡散開始時間に目標設定回折光強度を発生させるための周波数と電圧値とを決定して、
決定した周波数と電圧値との電圧を電極に印加することにより、前記媒体中で被測定粒子群に電気的な泳動を生じさせた後、目標設定回折光強度からの回折光強度の時間変化を取得することを特徴とする粒子径測定装置。
【請求項2】
前記印加電圧制御部は、取得した回折光強度が目標設定回折光強度の範囲内に入ったときには、初期設定周波数と初期設定電圧値とに決定し、
一方、回折光強度が目標設定回折光強度の範囲内にないときには、初期設定周波数及び/又は初期設定電圧値を変更し、取得した回折光強度が目標設定回折光強度の範囲内に入ったか否かを判定して、
初期設定周波数及び/又は初期設定電圧値を変更しても、取得した回折光強度が目標設定回折光強度の範囲内に入らなかったときには、前記試料を調整するように警告することを特徴とする請求項1に記載の粒子径測定装置。
【請求項3】
前記印加電圧制御部は、取得した回折光強度が目標設定回折光強度の範囲内に入ったときには、初期設定周波数と初期設定電圧値とに決定し、
一方、回折光強度が目標設定回折光強度の範囲内にないときには、初期設定電圧値を変更し、取得した回折光強度が目標設定回折光強度の範囲内に入ったときには、初期設定周波数と変更した電圧値とに決定し、
初期設定電圧値を変更しても、取得した回折光強度が目標設定回折光強度の範囲内に入らなかったときには、初期設定周波数を変更し、取得した回折光強度が目標設定回折光強度の範囲内に入ったか否かを判定して、
初期設定周波数を変更しても、取得した回折光強度が目標設定回折光強度の範囲内に入らなかったときには、前記試料を調整するように警告することを特徴とする請求項1に記載の粒子径測定装置。
【請求項4】
前記印加電圧制御部は、決定した周波数と電圧値との電圧を電極に印加しながら取得した回折光強度に基づいて、回折光強度の増加率を算出していき、算出してきた回折光強度の増加率と目標設定増加率とに基づいて、印加時間を決定することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の粒子径測定装置。
【請求項5】
被測定粒子群を媒体中に分散させた試料を収容するセルと、
交流電圧を印加する電源と、
前記電源からの電圧印加によりセル内に空間周期的に変化する電界を形成する電極と、
前記電界により媒体中で被測定粒子群に電気的な泳動を生じさせた状態で、前記試料に測定光を照射する光源と、
前記試料に測定光を照射することにより発生する回折光による回折光強度を検出する検出器と、
前記電源から電極に印加する電圧を停止することにより、前記媒体中で被測定粒子群に拡散を生じさせることで、前記回折光に変化を生じさせる印加電圧制御部と、
前記電圧を停止したときである拡散開始時間の回折光強度からの回折光強度の時間変化に基づいて、前記被測定粒子群の粒子径を算出する粒子径算出部とを備える粒子径測定装置を用いた粒子径測定方法であって、
初期設定周波数と初期設定電圧値との電圧を電極に印加することにより、前記媒体中で被測定粒子群に電気的な泳動を生じさせることで、回折光強度を取得する初期電圧条件光強度取得ステップと、
前記初期電圧条件光強度取得ステップで取得した回折光強度に基づいて、前記拡散開始時間に目標設定回折光強度を発生させるための周波数と電圧値とを決定する測定電圧条件決定ステップと、
前記測定電圧条件決定ステップで決定した周波数と電圧値との電圧を電極に印加することにより、前記媒体中で被測定粒子群に電気的な泳動を生じさせた後、目標設定回折光強度からの回折光強度の時間変化を取得する測定ステップとを含むことを特徴とする粒子径測定方法。
【請求項1】
被測定粒子群を媒体中に分散させた試料を収容するセルと、
交流電圧を印加する電源と、
前記電源からの電圧印加によりセル内に空間周期的に変化する電界を形成する電極と、
前記電界により媒体中で被測定粒子群に電気的な泳動を生じさせた状態で、前記試料に測定光を照射する光源と、
前記試料に測定光を照射することにより発生する回折光による回折光強度を検出する検出器と、
前記電源から電極に印加する電圧を停止することにより、前記媒体中で被測定粒子群に拡散を生じさせることで、前記回折光に変化を生じさせる印加電圧制御部と、
前記電圧を停止したときである拡散開始時間の回折光強度からの回折光強度の時間変化に基づいて、前記被測定粒子群の粒子径を算出する粒子径算出部とを備える粒子径測定装置であって、
前記印加電圧制御部は、初期設定周波数と初期設定電圧値との電圧を電極に印加することにより、前記媒体中で被測定粒子群に電気的な泳動を生じさせることで、回折光強度を取得して、
取得した回折光強度に基づいて、前記拡散開始時間に目標設定回折光強度を発生させるための周波数と電圧値とを決定して、
決定した周波数と電圧値との電圧を電極に印加することにより、前記媒体中で被測定粒子群に電気的な泳動を生じさせた後、目標設定回折光強度からの回折光強度の時間変化を取得することを特徴とする粒子径測定装置。
【請求項2】
前記印加電圧制御部は、取得した回折光強度が目標設定回折光強度の範囲内に入ったときには、初期設定周波数と初期設定電圧値とに決定し、
一方、回折光強度が目標設定回折光強度の範囲内にないときには、初期設定周波数及び/又は初期設定電圧値を変更し、取得した回折光強度が目標設定回折光強度の範囲内に入ったか否かを判定して、
初期設定周波数及び/又は初期設定電圧値を変更しても、取得した回折光強度が目標設定回折光強度の範囲内に入らなかったときには、前記試料を調整するように警告することを特徴とする請求項1に記載の粒子径測定装置。
【請求項3】
前記印加電圧制御部は、取得した回折光強度が目標設定回折光強度の範囲内に入ったときには、初期設定周波数と初期設定電圧値とに決定し、
一方、回折光強度が目標設定回折光強度の範囲内にないときには、初期設定電圧値を変更し、取得した回折光強度が目標設定回折光強度の範囲内に入ったときには、初期設定周波数と変更した電圧値とに決定し、
初期設定電圧値を変更しても、取得した回折光強度が目標設定回折光強度の範囲内に入らなかったときには、初期設定周波数を変更し、取得した回折光強度が目標設定回折光強度の範囲内に入ったか否かを判定して、
初期設定周波数を変更しても、取得した回折光強度が目標設定回折光強度の範囲内に入らなかったときには、前記試料を調整するように警告することを特徴とする請求項1に記載の粒子径測定装置。
【請求項4】
前記印加電圧制御部は、決定した周波数と電圧値との電圧を電極に印加しながら取得した回折光強度に基づいて、回折光強度の増加率を算出していき、算出してきた回折光強度の増加率と目標設定増加率とに基づいて、印加時間を決定することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の粒子径測定装置。
【請求項5】
被測定粒子群を媒体中に分散させた試料を収容するセルと、
交流電圧を印加する電源と、
前記電源からの電圧印加によりセル内に空間周期的に変化する電界を形成する電極と、
前記電界により媒体中で被測定粒子群に電気的な泳動を生じさせた状態で、前記試料に測定光を照射する光源と、
前記試料に測定光を照射することにより発生する回折光による回折光強度を検出する検出器と、
前記電源から電極に印加する電圧を停止することにより、前記媒体中で被測定粒子群に拡散を生じさせることで、前記回折光に変化を生じさせる印加電圧制御部と、
前記電圧を停止したときである拡散開始時間の回折光強度からの回折光強度の時間変化に基づいて、前記被測定粒子群の粒子径を算出する粒子径算出部とを備える粒子径測定装置を用いた粒子径測定方法であって、
初期設定周波数と初期設定電圧値との電圧を電極に印加することにより、前記媒体中で被測定粒子群に電気的な泳動を生じさせることで、回折光強度を取得する初期電圧条件光強度取得ステップと、
前記初期電圧条件光強度取得ステップで取得した回折光強度に基づいて、前記拡散開始時間に目標設定回折光強度を発生させるための周波数と電圧値とを決定する測定電圧条件決定ステップと、
前記測定電圧条件決定ステップで決定した周波数と電圧値との電圧を電極に印加することにより、前記媒体中で被測定粒子群に電気的な泳動を生じさせた後、目標設定回折光強度からの回折光強度の時間変化を取得する測定ステップとを含むことを特徴とする粒子径測定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−169475(P2010−169475A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−10971(P2009−10971)
【出願日】平成21年1月21日(2009.1.21)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月21日(2009.1.21)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
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