説明

粒子検出装置、粒子検出方法、フローサイトメータ

【課題】高感度な粒子検出装置を提供すること。
【解決手段】本粒子検出装置は、流路内を移動する検出対象に光を照射する第1の光源、及び前記光が照射された前記検出対象が発する第1の光学情報を検出する第1の検出部を備えた第1の検出手段と、前記第1の検出手段の下流側に配置され、第2の光源、前記第2の光源からの光を偏向し前記検出対象に偏向光を照射する光偏向器、及び前記偏向光が照射された前記検出対象が発する第2の光学情報を検出する第2の検出部を備えた第2の検出手段と、前記偏向光が前記検出対象を追尾するように前記光偏向器を制御する制御手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路内を移動する検出対象(粒子)から光学情報を検出する粒子検出装置及び粒子検出方法、並びに前記粒子検出装置を有するフローサイトメータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、細胞の蛍光定量等を行う装置であり、血液の検体検査等の様々な用途に用いられるフローサイトメータが知られている。フローサイトメータでは、分析対象となる生物学的粒子(細胞等)をフローセル(流路)中で一列に整列させる。より詳しくは、シース流を一定の流速でフローセル内に流入させ、その状態で生物学的粒子を含むサンプル流をフローセル内に注入する。
【0003】
シース流とサンプル流の流入量を調節することにより、生物学的粒子を一つ一つが整列した状態で移動させることができる。そして、フローサイトメータの一部である粒子検出装置からフローセル内を移動する生物学的粒子にレーザ光等を照射し、生物学的粒子が発生する散乱光等の光学情報を検出する。その後、光学情報を光電変換し、分析手段等で分析することで細胞の大きさや数を検出できる。
【0004】
しかしながら、微小な生物学的粒子の場合は散乱光が小さく感度が低いという原理的な課題がある。又、検査のスループット向上のために流速を大きくすると検出感度が更に低下するため、検出がより困難になる。
【0005】
検出感度を高めるための改善策として、特にフローサイトメータの一部である粒子検出装置の光学系においては、レーザ光等の照射領域を絞り込むことやレーザ光等の形状を楕円形にすること、複数の光源と検出部を備えること等が提案されている。なお、レーザ光等の照射領域を絞り込む場合、数マイクロメートルの位置精度が要求されるため、位置合わせの技術が要求される。
【0006】
従来の粒子検出装置の一例としては、フローセルの流れ方向に沿って複数の光源と検出部が設置された粒子検出装置を挙げることができる(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の粒子検出装置は、通常設置される光源と検出部の組み合わせに加えて、これ以外の光源の光による生物学的粒子からの蛍光を受光して電気的信号に変換する第2の検出部を有する。つまり、特許文献1に記載の粒子検出装置では、光源と検出部の組み合わせが2つ以上存在する。
【0007】
又、特許文献1に記載の粒子検出装置は、通常設置される検出部の受光信号に第2の検出部から出力された電気的信号を電気的に加算することにより、第2の光により生物学的粒子を励起したときに生じる蛍光の電気的信号を増大させる信号処理部を備えている。つまり、特許文献1に記載の粒子検出装置は、生物学的粒子からの受光信号を複数箇所で取得し、複数の地点での検出結果を重ね合わせている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記の特許文献1に記載の粒子検出装置は、複数の地点での検出結果を重ね合わせる場合、各地点での検出結果の差異により感度を損なうことが問題となり、高感度な粒子検出装置を実現することは困難である。なお、各地点での検出結果の差異は、生物学的粒子が常に向きを変えており生物学的粒子の向きが時間によって変化することや、フローセル(流路)内での位置ずれが生じることにより発生する。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、高感度な粒子検出装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本粒子検出装置は、流路内を移動する検出対象に光を照射する第1の光源、及び前記光が照射された前記検出対象が発する第1の光学情報を検出する第1の検出部を備えた第1の検出手段と、前記第1の検出手段の下流側に配置され、第2の光源、前記第2の光源からの光を偏向し前記検出対象に偏向光を照射する光偏向器、及び前記偏向光が照射された前記検出対象が発する第2の光学情報を検出する第2の検出部を備えた第2の検出手段と、前記偏向光が前記検出対象を追尾するように前記光偏向器を制御する制御手段と、を有することを要件とする。
【発明の効果】
【0011】
開示の技術によれば、高感度な粒子検出装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施の形態に係る粒子検出装置を例示する図である。
【図2】従来の粒子検出装置の検出プロセスを例示する図である。
【図3】本実施の形態に係る粒子検出装置の検出プロセスを例示する図である。
【図4】光偏向器の偏向開始タイミングの算出について説明する図である。
【図5】検出対象を追尾する偏向手法について説明する図である。
【図6】照射時間に関する効果について説明する図である。
【図7】信号処理について説明する図(その1)である。
【図8】信号処理について説明する図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0014】
図1は、本実施の形態に係る粒子検出装置を例示する図である。図1を参照するに、粒子検出装置1は、大略すると、第1の検出手段10と、第2の検出手段20と、制御手段30とを有する。
【0015】
なお、100はサンプル液(以降、サンプル液100とする)、110は検出対象(以降、検出対象110とする)、120はシース流(以降、シース流120とする)、130はフローセル(以降、流路130とする)を示している。検体であるサンプル液100中に存在する検出対象110は、シース流120によって一列に整列した状態で流路130内を矢印方向に移動する。検出対象110は、例えば、細胞や微生物、DNA、タンパク質等の生物学的粒子を含む、流路130内を移動可能な全ての物質を指すものとする。
【0016】
粒子検出装置1において、第1の検出手段10は、光源11と、検出部13とを有する。光源11は、流路130内をシース流120と共に移動する検出対象110に光を照射する機能を有する。光源11は、出射光が流路130内のシース流120に垂直に照射されるようにアライメントされている。光源11は、本発明に係る第1の光源の代表的な一例である。
【0017】
検出部13は、光源11から光を照射された検出対象110が発する光学情報を検出する機能を有する。検出部13が検出した検出対象110が発する光学情報(光信号)は、光電変換されて電気信号となり制御手段30に入力される。ここで、光学情報とは、側方や後方の散乱光、蛍光等である。検出部13は、本発明に係る第1の検出部の代表的な一例である。
【0018】
第2の検出手段20は、第1の検出手段10よりも流路130の下流側に配置されている。第2の検出手段20は、光源21と、光偏向器22と、検出部23とを有する。光源21は、光偏向器22に光を照射する機能を有する。光源21は、出射光が光偏向器22に照射されるようにアライメントされている。光源21は、本発明に係る第2の光源の代表的な一例である。
【0019】
光偏向器22は、光源21から出射された光を偏向し、検出対象110に偏向光を照射する機能を有する。検出部23は、光偏向器22からの偏向光が照射された検出対象110が発する光学情報を検出する機能を有する。検出部23が検出した検出対象110が発する光学情報(光信号)は、光電変換されて電気信号となり制御手段30に入力される。ここで、光学情報とは、側方や後方の散乱光、蛍光等である。検出部23は、本発明に係る第2の検出部の代表的な一例である。
【0020】
光源11及び12としては、検出対象110が発する光学情報(散乱光や蛍光等)を確実に発生させるために、出射光の方向、出射光の波長、出射光の強度が一定である光源を用いることが好ましい。光源11及び12としては、例えば、半導体レーザ等のレーザ光源を用いると好適である。光源11及び12として、例えば、LED(Light Emitting Diode)、SHG(Second Harmonic Generation)素子等を用いることもできる。
【0021】
検出部13及び23としては、例えば、フォトダイオード等を用いることができる。光偏向器22としては、例えば、電気光学効果(Electro-Optic effect)を有する電気光学材料(EO材料)からなる偏向素子等を用いることができる。
【0022】
電気光学材料(EO材料)からなる偏向素子を用いた場合、偏向の制御は光偏向器22への電圧印加量によって行うことができる。代表的な電気光学材料(EO材料)としては、例えば、ニオブ酸リチウム(LiNbO)の単結晶や、タンタル酸ニオブ酸カリウム(KTa1−xNb)の単結晶等を用いることができる。
【0023】
なお、偏向器22として、MEMSミラーやガルバノミラー、AOD(音響光学素子)等を用いてもよい。
【0024】
制御手段30は、検出部13が光学情報を検出したことを示す検出信号、及び検出対象110に関する情報に基づいて、光偏向器22の動作タイミングを算出し、第2の検出手段20の検出領域を通過する検出対象110を偏向光が追尾するように光偏向器22を制御する機能等を有する。ここで、検出対象110に関する情報とは、検出対象110の流速や流路130内の検出対象110の濃度等である。偏向開始のタイミングや偏向速度等については、光偏向器22の偏向角や検出対象110の流速等により算出される(詳しくは後述する)。
【0025】
制御手段30は、例えばCPU、ROM、メインメモリ等を含み、制御手段30の各種機能は、ROM等に記録されたプログラムがメインメモリに読み出されてCPUにより実行されることによって実現できる。但し、制御手段30の一部又は全部は、ハードウェアのみにより実現されてもよい。又、制御手段30は、物理的に複数の装置により構成されてもよい。
【0026】
制御手段30は、検出部23が検出した検出対象110が発する光学情報が光電変換された電気信号に所定の処理を施し、検出対象110の形状や数を分析する分析手段を含んでいてもよい。但し、制御手段30をパーソナルコンピュータ等に接続し、パーソナルコンピュータ等で分析手段を実現してもよい。
【0027】
ここで、従来の粒子検出装置の検出プロセスと比較しながら、本実施の形態に係る粒子検出装置の検出プロセスについて説明する。図2は、従来の粒子検出装置の検出プロセスを例示する図である。図3は、本実施の形態に係る粒子検出装置の検出プロセスを例示する図である。
【0028】
図2を参照するに、従来の粒子検出装置の検出プロセスでは、まず、光源から出射された出射光をシース流中の検出対象に照射し(ステップS201)、散乱光等を発生させる(ステップS202)。次に、ステップS202で発生させた散乱光等及び透過光を検出部が検出する(ステップS203)。そして、検出部が検出した散乱光等及び透過光を光電変換した電気信号(データ)を処理することにより、検出対象を認識する(ステップS204)。
【0029】
一方、図3を参照するに、本実施の形態に係る粒子検出装置の検出プロセスでは、まず、第1の検出手段10が検出対象110を検知し、検出信号を制御手段30に送信する(ステップS301)。次に、制御手段30は、検知した検出対象110が第2の検出手段20の検出領域に移動するまでの時間を算出し、この算出結果に基づいて、第2の検出手段20における光偏向器22の偏向開始タイミングの算出を行う(ステップS302)。
【0030】
次に、制御手段30は、ステップS302で算出された偏向開始タイミングに従って、光偏向器22の偏向を開始させ、検出対象110の移動にともなって光源21からの出射光が偏向するように動作させる(ステップS303)。ステップS304〜S306については、図2のステップS202〜S204と同様であるため、その説明を省略する。
【0031】
ここで、図4を参照しながら、本実施の形態に係る粒子検出装置の検出プロセスについて、更に詳しく説明する。図4は、光偏向器の偏向開始タイミングの算出について説明する図である。図4において、検出対象110が流路130内を流速v、粒子間隔dで移動している場合を考える。
【0032】
まず、第1の検出手段10の光源11から光束が出射される。光源11から出射された光束は、検出対象110に照射され、検出対象110は光学情報(散乱光等)を発する。検出対象110が発する光学情報は、検出部13で検出される。検出部13で検出された光学情報は光電変換され、光電変換された電気信号が制御手段30に送られる。
【0033】
制御手段30のタイミング算出手段31は、検出部13から電気信号が入力され次第(つまり、検出部13で光学情報が検出され次第)、第2の検出手段20の光偏向器22の動作タイミングを算出する。検出対象110が流路130内を流速v、粒子間隔dで移動している場合の動作タイミングは、第1の検出手段10の検出部13で光学情報が検出された時点から、t=d/v(sec)経過後である。
【0034】
なお、流速vは粒子検出装置1を制御する制御装置側(図示せず)で制御される。粒子間隔dは、サンプル液100中の検出対象110の濃度と流速vとに基づいて、概算として求めることができる。例えば、ハイエンドのフローサイトメータでは流速20m/sec、検出粒子7千個/secの性能がある。この数字から、v=20m/sec、d=20m/7000≒3mmとなる。よって、この場合の動作タイミングは、t=3(mm)/20(m/sec)=0.15msecと求めることができる。
【0035】
つまり、第1の検出手段10の検出部13で検出対象110についての光学情報が検出された後、t=0.15msec経過後が、第2の検出手段20の光偏向器22の偏向開始タイミングとなる。このタイミングで第2の検出手段20の光源21からの出射光を光偏向器22が流路130の流れの上流側に偏向させることにより、検出対象110の追尾を適切に開始できる。
【0036】
図5は、検出対象を追尾する偏向手法について説明する図である。検出対象110を追尾するには、検出対象110が通過する速度と同様の偏向速度で光束が移動すればよい。例えば、光偏向器22として電気光学材料(EO材料)からなる偏向素子等を用いた場合、例えば±Vの電圧を三角波で掃引することにより、光束は一定の角速度で偏向される。
【0037】
偏向開始タイミングを合わせた上で、電圧掃引する波形の周期T/2と、検出対象110が偏向領域Xを通過する時間を等しくすれば、偏向速度と検出対象110の移動速度(流速v)が等しくなるので、検出対象110を的確に追尾することができる。
【0038】
図5において、偏向領域X=2Ltan(θ/2)である。ここで、Lは光偏向器22の偏向面から検出対象110の中心までの距離、θは偏向角である。例えば、L=200mm、θ=10degであれば、X≒35mmとなる。検出対象110が偏向領域Xを通過する時間は、X/v=35(mm)/20(m/sec)≒1.8msecとなる。この時間と電圧掃引する波形の周期T/2とを一致させるには、周波数h=1/T=1/3.6(msec)≒300Hzとすればよい。
【0039】
光偏向器22へ印加する電圧を周波数hで掃引することにより、光源21からの出射光は、光偏向器22により検出対象110の移動速度(流速v)と同じ速度で偏向される。これにより、検出対象110を追尾するような形で効果的に検出対象110への光束の照射を行うことが可能となるため、検出感度を高くできる。
【0040】
なお、Lは10mm以上であることが好ましい。電気光学効果を利用した光偏向器22では、偏向角であるθの最大値は10deg程度である。例えば、L=10mm、θ=10degの場合に、検出対象110を追尾することにより長くなる照射時間は、光源21の出射光を偏向させない場合の2.5倍程度である。Lが10mm未満である場合には、これよりも照射時間が短くなり、検出感度向上の恩恵が得られにくいと考えられるためである。
【0041】
ここで、粒子検出装置1における照射時間に関する効果について説明する。図6は、照射時間に関する効果について説明する図である。図6(a)が従来の粒子検出装置に関する図であり、図6(b)が本実施の形態に係る粒子検出装置に関する図である。
【0042】
図6(a)に示す従来の粒子検出装置では、検出対象110がレーザ光等に照射される時間は、レーザ光等の径を通過する時間のみである。レーザ光等の径Y=0.7mmのとき、照射時間t1=Y/v=0.7(mm)/20(m)=35μsecとなる。
【0043】
一方、図6(b)に示す本実施の形態に係る粒子検出装置では、図5を参照して説明したように、L=200mm、θ=10degであれば、偏向領域X≒35mmである。このとき、照射時間t2=X/v=35(mm)/20(m/sec)≒1.8msecとなる。
【0044】
検出部23で照射時間内に検出された光強度は、足し合わせて利用できるので、照射時間が長いほど高感度な検出を実現できる。上記例では、照射時間t1と照射時間t2との比較から、本実施の形態に係る粒子検出装置1は従来の粒子検出装置の約500倍の高感度を実現できることになる。
【0045】
なお、粒子検出装置1は、第1の検出手段10の検出部13で検出された検出信号が制御手段30に送信され、制御手段30が光偏向器22を制御して光偏向器22が動作を開始するまでの遅延時間が10μsec以下になる伝送手段を備えていることが好ましい。
前述のように、従来の粒子検出装置では、検出対象の散乱時間が35μsec程度なので、伝送手段での遅延時間が10μsec以上になると、検出対象の検出に影響を及ぼす虞があるためである。
【0046】
ところで、図4を参照して説明したように、例えば、ハイエンドのフローサイトメータでは流速20m/sec、検出粒子7千個/secの性能がある。この数字と検出対象110の粒子間隔dから勘案し、1つの粒子の検出に利用できる時間は0.15msecとなる。
【0047】
この場合、照射時間t2が0.15msecに収まるように偏向角θを調整する等が必要になる。しかしながら、照射時間t2が0.15msecであった場合でも、従来の粒子検出装置の照射時間t1=35μsecと比較して5倍程度の高感度を実現できる。
【0048】
ここで、図7及び図8を参照しながら、信号処理について説明する。図7(a)に示すように、第1の検出手段10の検出部13がt10の時に検出対象110からの光学情報を検出したとする。図8に示すように、検出部13が検出した光学情報は電気信号(検出信号)に変換されて制御手段30の駆動制御回路32に送信される。
【0049】
駆動制御回路32は電圧電源33に接続されており、光偏向器22へ印加する電圧を生成し、生成した電圧の振幅及び周波数を制御する機能を有する。例えば、駆動制御回路32から光偏向器22に電圧VACが図7(b)に示すt20のタイミングで印加される。t10からt20までの時間は、上述した通り、流速vと粒子間隔dから算出できる。
【0050】
図7(b)に示すt25において光偏向器22に印加される電圧がピーク値になり、レーザ光等は光偏向器22により図8に示すe1の方向に偏向される。続いてt30において光偏向器22に印加される電圧が対極のピーク値になり、レーザ光等は光偏向器22により図8に示すe2の方向に偏向される。t25からt30までの時間は、上述した通り、流速vと光偏向器22への電圧掃引の周期から算出できる。
【0051】
図8に示すe2からe1への移動は、図7(b)に示すt30からt40までの波形にしたがって行われる。t30からt40までの波形から明らかなように、e2からe1への移動は検出とは無関係であるため、e1からe2への移動に比べて極めて短い時間で行うことができる。
【0052】
なお、t10からt20までの時間をT1、t25からt30までの時間をT2とすると、T1とT2の関係がT1<T2である場合には、1つの検出対象110を追っている間に次の検出対象110が流れてきてしまうことになる。従って、全ての粒子を捕捉するためには、T1>T2とする必要がある。
【0053】
T1>T2とするためには、(1)流速vを遅くする、(2)光偏向器22に印加される電圧のピーク値を小さくする、(3)検体であるサンプル液100中の検出対象110の濃度を低くする、等の方法が考えられる。これらの方法は、粒子検出装置の使用者が用途や目的に応じて適宜調整することが望ましく、本実施の形態においては、これらのパラメータが調整可能であることが好ましい。
【0054】
このように、本実施の形態に係る粒子検出装置1は、第1の検出手段10と、第2の検出手段20と、制御手段30とを有する。そして、制御手段30は、検出部13が光学情報を検出したことを示す検出信号、及び検出対象110に関する情報に基づいて、光偏向器22の動作タイミングを算出し、光偏向器22の偏向光が検出対象110を追尾するように光偏向器22を制御する。
【0055】
これにより、光偏向器22の偏向光が流路130内を移動する検出対象110を従来よりも長い一定時間に渡って照射するため、検出対象110の光学情報(散乱光等)の入手感度が高くなり、観測地点でのばらつきにも影響されにくい検出が可能となる。すなわち、高感度な粒子検出装置1を実現できる。
【0056】
又、検出対象110の分析に利用される光学情報(散乱光等)の検出を実質的に1つの検出系(第2の検出手段20)のみで行うため、信頼性に優れた検出ができる。
【0057】
又、検出対象110の分析に利用される光学情報(散乱光等)の検出を実質的に1つの検出系(第2の検出手段20)のみで行うため、複数地点での検出結果を重ね合わせる処理の負荷がなく高速度での検出が可能となり、コスト増も抑制できる。
【0058】
又、粒子検出装置1と、検査対象110が移動する流路130と、検出部23が検出した光学情報を分析する分析手段と、を有することにより、高感度なフローサイトメータを実現できる。
【0059】
以上、好ましい実施の形態について詳説したが、上述した実施の形態に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0060】
1 粒子検出装置
10 第1の検出手段
11、21 光源
13、23 検出部
20 第2の検出手段
22 光偏向器
30 制御手段
31 タイミング算出手段
32 駆動制御回路
33 電圧電源
100 サンプル液
110 検出対象
120 シース流
130 フローセル
d 検出対象の粒子間隔
v 検出対象の流速
t1、t2 照射時間
L 距離
X 偏向領域
Y レーザ光等の径
θ 偏向角
【先行技術文献】
【特許文献】
【0061】
【特許文献1】特開2011−99848号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路内を移動する検出対象に光を照射する第1の光源、及び前記光が照射された前記検出対象が発する第1の光学情報を検出する第1の検出部を備えた第1の検出手段と、
前記第1の検出手段の下流側に配置され、第2の光源、前記第2の光源からの光を偏向し前記検出対象に偏向光を照射する光偏向器、及び前記偏向光が照射された前記検出対象が発する第2の光学情報を検出する第2の検出部を備えた第2の検出手段と、
前記偏向光が前記検出対象を追尾するように前記光偏向器を制御する制御手段と、を有する粒子検出装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記第1の検出部が前記第1の光学情報を検出したことを示す検出信号、及び前記検出対象に関する情報に基づいて、前記光偏向器の動作タイミングを算出し、前記偏向光が前記検出対象を追尾するように前記光偏向器を制御する請求項1記載の粒子検出装置。
【請求項3】
前記情報は、前記検出対象の流速及び前記検出対象の濃度を含む請求項2記載の粒子検出装置。
【請求項4】
前記光偏向器は、印加電圧により偏向角を制御できる材料を用いて形成されている請求項1乃至3の何れか一項記載の粒子検出装置。
【請求項5】
前記材料は、電気光学効果を有する請求項4記載の粒子検出装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記光偏向器へ印加する電圧を生成し、前記電圧の振幅及び周波数を制御する駆動制御回路を更に有する請求項4又は5記載の粒子検出装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一項記載の粒子検出装置と、
前記検査対象が移動する流路と、
前記第2の光学情報を分析する分析手段と、を有するフローサイトメータ。
【請求項8】
流路内を移動する検出対象に第1の光源から光を照射し、前記光が照射された前記検出対象が発する第1の光学情報を第1の検出部で検出する第1の検出工程と、
前記第1の検出工程で前記第1の検出部が前記第1の光学情報を検出後の所定の動作タイミングで第2の光源を発光させ、前記第2の光源からの光を光偏向器で偏向して前記検出対象に偏向光を照射し、前記偏向光が照射された前記検出対象が発する第2の光学情報を第2の検出部で検出する第2の検出工程と、を有し、
前記第2の検出工程では、前記偏向光が前記検出対象を追尾するように前記光偏向器を制御する粒子検出方法。
【請求項9】
前記第2の検出工程では、前記第1の検出部が前記第1の光学情報を検出したことを示す検出信号、及び前記検出対象に関する情報に基づいて、前記光偏向器の前記動作タイミングを算出し、前記偏向光が前記検出対象を追尾するように前記光偏向器を制御する請求項8記載の粒子検出方法。
【請求項10】
前記情報は、前記検出対象の流速及び前記検出対象の濃度を含む請求項9記載の粒子検出方法。
【請求項11】
前記光偏向器は、印加電圧により偏向角を制御できる材料を用いて形成されており、
前記第2の検出工程では、前記光偏向器に所定の振幅及び周波数の電圧を印加して前記光偏向器を動作させる請求項8乃至10の何れか一項記載の粒子検出方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−61211(P2013−61211A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199219(P2011−199219)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)