説明

粒子検出装置

【課題】 誘導回折格子法を用いて媒体中における被測定粒子群の濃度を算出する粒子検出装置を提供する。
【解決手段】 被測定粒子群を媒体中に含有する試料を収容するセル1と、電圧を印加する電源3と、電源3からの電圧印加によりセル1内に空間周期的に変化する電界を形成する電極2と、試料に測定光を照射する光源4と、試料に測定光を照射することにより発生する回折光による回折光強度を検出する検出器151と、電源3から電極2に電圧を印加することにより、媒体中で被測定粒子群に電気的な泳動を生じさせる印加電圧制御部31とを備える粒子検出装置10であって、セル1内に空間周期的に変化するように形成された電界に対応する位置に設けられ、被測定粒子群を付着する被測定粒子群付着層8と、電源3から電極2に電圧を印加することを停止した後の回折光強度に基づいて、媒体中における被測定粒子群の濃度を算出する粒子濃度算出部35とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的手法(例えば、誘導回折格子法(IG法)等)を用いて被測定粒子群の濃度を算出する粒子検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
媒体(例えば、水等の液体や、ゲル等)中に含有された粒子群の濃度cを測定することが行われている。このような粒子群の濃度cを測定する濃度測定方法には、光学測定方法が利用されていることが多く、例えば、レーザ光(測定光)を照射することによって、粒子群を媒体中に含有する試料の光透過率、吸光度、反射率等を計測することにより、粒子群の濃度cを算出している。
【0003】
一方、媒体中に分散させた粒子群の粒子径dの測定は、製薬や化学や研磨剤やセラミックスや顔料等の粒子径dが品質に影響を与える製品について行われている。
このような粒子径dを測定する粒子径測定方法としては、誘導回折格子法(IG法)を利用するものがある。媒体中に粒子群を分散させた試料に、空間周期パターンを有する電界分布を発生させることによって、粒子群を誘電泳動作用(若しくは電気泳動作用)で移動させることで、媒体中に粒子群の密な領域と疎な領域とが周期的に並ぶ密度回折格子を形成させる。この密度回折格子にレーザ光(測定光)を照射することによって、密度回折格子による回折光強度Iを検出した後、電界分布を発生させることを停止することによって、媒体中で粒子群が拡散することでぼやけていく密度回折格子による回折光強度Iの時間変化を計測することにより、粒子群の拡散係数Dを算出し、さらには拡散係数Dから粒子径dを算出する。この方法は例えば特許文献1に開示されている。
【0004】
このような粒子径測定方法によれば、粒子径dが小さくなればなるほど拡散係数Dが大きくなるので、形成した密度回折格子が早く消失することを利用している。具体的には、電界分布を発生させることを停止した拡散開始時間tから密度回折格子が消失するときまでの間、試料にレーザ光を照射して回折光強度Iを検出しつづけることにより、回折光強度Iの時間変化を計測している。
図11(a)は、電圧値Vと時間tとの関係を示すグラフであり、図11(b)は、回折光強度Iと時間tとの関係を示すグラフである。なお、印加時間の開始時間が誘電泳動作用開始時間tとなるとともに、印加時間の終了時間が拡散開始時間tとなり、拡散開始時間tに検出された回折光強度Iが回折光強度Iとなる。
【0005】
図7は、このような粒子径測定方法を用いる粒子径測定装置の全体構成を示す概略構成ブロック図である。また、図8は、従来の試料キュベット(セル)の一例を示す斜視図である。
粒子径測定装置100は、試料が収容される試料キュベット101と、試料キュベット101に設けられている電極対2に対して交流電圧を印加する交流電源3と、試料キュベット101に対してレーザ光(測定光)を照射するレーザ光源4と、第1次の回折光強度Iを検出するための検出光学系150と、増幅器6と、粒子径測定装置100全体を制御する制御部70とを備える。
【0006】
試料キュベット101は、長方形状の底面12と、4個の側壁11とを有するガラス製のものであり、光透過性を有する。そして、試料キュベット101の内部には、試料が収容されるようになっている。
試料キュベット101の一つの側壁11の表面(内面)には、電極対2が形成されている。図9は、電極対2が形成された側壁11の一例を示す平面図であり、図10は、試料キュベットの断面の一部を示す断面図である。
電極対2は、左側電極21と右側電極22とからなる。
左側電極21は、幅L(例えば、1μm)の直線状の電極片21aが間隔を空けて平行に並べられるとともに、これらの電極片21aの外側の片側端どうしを電気的に接続する直線状の接続部21bが設けられ、いわゆる櫛型電極を形成している。
右側電極22についても左側電極21と同様であり、幅L(例えば、1μm)の直線状の電極片22が間隔を空けて平行に並べられるとともに、これらの電極片22aの外側の片側端どうしを電気的に接続する直線状の接続部22bが設けられ、いわゆる櫛型電極を形成している。
そして、電極片21aと電極片22aとの各間隔が、それぞれ一定距離S(例えば、1μm)を空けて配置される。
また、接続部21bの上端部と接続部22bの上端部とには、交流電源3が接続される。
【0007】
これにより、電極対2に交流電源3からの交流電圧が印加されることにより、試料キュベット101内に電界分布が形成される。すると、電気力線が集中する電極片21aと電極片22aとの間に、誘電泳動によって粒子群が凝集する。一方、電極片21aと電極片21aとの間と、電極片22aと電極片22aとの間とには、誘電泳動によって粒子群が存在しなくなる。よって、粒子群が凝集する領域は、格子間隔Λとなるように形成される(図10(a)参照)。すなわち、粒子群が凝集する領域は、他の領域より粒子密度が高くなり、屈折率が異なることから、格子間隔Λの密度回折格子が形成される。
また、電極対2に交流電源3からの交流電圧が印加されなければ、試料キュベット101内に電界分布が形成されないので、電気力線が集中する領域もなく、粒子群は媒体中で均一に存在する(図10(b)参照)。すなわち、粒子密度が均一になり、屈折率が同じになっている。
【0008】
なお、電極対2の材料としては、例えば、ITO等が挙げられ、ITOの屈折率は2.0程度であり、試料キュベット101の側壁11の材料として高屈折率ガラス(例えば、商品名「s−LAH79」;オハラ社製;屈折率2.0)を用いることで、電極対2と側壁11との屈折率差をなくすことにより、レーザ光の照射時に電極対2による回折光が発生することを抑えることができる。
【0009】
レーザ光源4は、被測定粒子群に応じて種類を選択すればよいが、例えば、He−Neレーザ光源(波長λ=0.6328μm)である。そして、試料キュベット101にレーザ光が照射される。
検出光学系150は、第1次の回折光強度Iを検出する検出器151と、不要なノイズ光を避けるために直径1mmの円形状(面積:0.785mm)のピンホールを有するピンホール板152と、レーザ光源4の光軸Lの位置を把握するための光軸調整用受光部153とからなる。
検出器151は、1個のフォトダイオード(受光素子)からなる。そして、検出器151の直前には、レーザ光源4から出射されたレーザ光のうち、粒子群による密度回折格子で回折した次数mの回折光のみを検出するように、ピンホールが配置される。
ここで、密度回折格子の格子間隔Λ、レーザ光の波長λ、回折角θ、次数mとすると、下記式(1)が成立する。
mλ=Λ・sinθ ・・・(1)
よって、例えば、λ=0.6328μm、Λ=3μmとしたとき、m=1次の回折光はθ≒12°に現れるので、光軸Lに対して角度θ≒12°となる光が、ピンホールを通過するように、ピンホール板152が配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−84207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述したような試料の光透過率、吸光度、反射率等を計測する濃度測定方法では、例えば、試料中に被測定粒子群(B粒子群)とA粒子群とC粒子群との複数の種類の粒子群が含有されており、媒体中における被測定粒子群(B粒子群)のみの濃度cを算出することができない問題点があった。
そこで、本発明は、誘導回折格子法を用いて媒体中における被測定粒子群の濃度を算出する粒子検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するためになされた本発明の粒子検出装置は、被測定粒子群を媒体中に含有する試料を収容するセルと、電圧を印加する電源と、前記電源からの電圧印加によりセル内に空間周期的に変化する電界を形成する電極と、前記試料に測定光を照射する光源と、前記試料に測定光を照射することにより発生する回折光による回折光強度を検出する検出器と、前記電源から電極に電圧を印加することにより、前記媒体中で被測定粒子群に電気的な泳動を生じさせる印加電圧制御部とを備える粒子検出装置であって、前記セル内に空間周期的に変化するように形成された電界に対応する位置に設けられ、前記被測定粒子群を付着する被測定粒子群付着層と、前記電源から電極に電圧を印加することにより、前記被測定粒子群を被測定粒子群付着層に付着させ、その後、前記電源から電極に電圧を印加することを停止することにより、前記被測定粒子群を被測定粒子群付着層に付着させた状態の回折光強度に基づいて、前記媒体中における被測定粒子群の濃度を算出する粒子濃度算出部とを備えるようにしている。
【0013】
ここで、「電気的な泳動」としては、例えば、荷電した被測定粒子群に電圧を印加して電気的に被測定粒子群を泳動させる静電泳動や、分極した被測定粒子群に電圧を印加して電気的に被測定粒子群を泳動させる誘電泳動等が挙げられる。
また、「測定光」としては、レーザ光が好ましいが、これに限らず、LEDによる光、分光器で分光された光、干渉フィルタやバンドパスフィルタ等で波長範囲が制限された光を用いてもよい。
また、「媒体」としては、内部で被測定粒子群が泳動できるものであればよく、例えば、水や油等の液体や、ゲルや、固体等が挙げられる。
また、「回折光強度」とは、検出器で検出される数値そのものでなくてもよく、密度回折格子を形成する前に既に検出されている初期余剰光の光強度が存在する場合もあるので、検出器で検出される数値と初期余剰光の数値との差分であることが好ましい。
【0014】
本発明の粒子検出装置では、まず、被測定粒子群を媒体中に含有する試料をセル内に収容する。次に、電圧を電極に印加することにより、セル内の空間に対して空間周期的に変化する電界を形成する。すると、被測定粒子群に電気的な泳動が生じることで、電界の空間周期に対応するように密な領域と疎な領域とが周期的に並ぶ空間周期的な濃度変化が発生し、すなわち被測定粒子群による密度回折格子が形成される。このとき、被測定粒子群付着層は、電界に対応する位置に設けられているので、被測定粒子群を付着することになる。
その後、電圧を電極に印加することを停止すると、媒体中で被測定粒子群は均一な濃度となるように変化しようとするが、被測定粒子群付着層と付着しているため、被測定粒子群による密度回折格子は形成されたままとなる。
そして、密度回折格子が形成された試料に向けて光源から測定光を照射することで、密度回折格子による回折光が生じる。これにより、回折光強度を取得する。この回折光強度は、被測定粒子群付着層と付着している被測定粒子群の量、つまり被測定粒子群の濃度によって異なることになる。すなわち、回折光強度が強ければ、被測定粒子群の濃度が高く、一方、回折光強度が弱ければ、被測定粒子群の濃度が低いことになる。
よって、粒子濃度算出部は、取得した回折光強度に基づいて、被測定粒子群の濃度を算出することになる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明の粒子検出装置によれば、誘導回折格子法を用いて媒体中における被測定粒子群の濃度を算出することができる。
【0016】
(その他の課題を解決するための手段および効果)
また、本発明の粒子検出装置においては、前記媒体中には、前記被測定粒子群と異なる粒子群が含有されており、前記被測定粒子群付着層は、異なる粒子群を付着しないようにしてもよい。
本発明の粒子検出装置によれば、例えば、試料中に被測定粒子群(B粒子群)と異なる粒子群(A粒子群、C粒子群)との複数の種類の粒子群が含有されていても、異なる粒子群(A粒子群、C粒子群)は被測定粒子群付着層に付着しないため、媒体中における被測定粒子群(B粒子群)のみの濃度cを算出することができる。
【0017】
そして、本発明の粒子検出装置においては、前記被測定粒子群付着層は、抗体であり、前記被測定粒子群は、蛋白質であるようにしてもよい。
さらに、本発明の粒子検出装置においては、前記被測定粒子群付着層は、前記セル内に空間周期的に変化するように形成された電界に対応しない位置には設けられていないようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態である粒子検出装置の全体構成を示す概略構成ブロック図である。
【図2】試料キュベットの一例を示す斜視図である。
【図3】電極対と被測定粒子群付着層とが形成された側壁の一例を示す平面図である。
【図4a】試料キュベットの断面の一部を示す断面図である。
【図4b】試料キュベットの断面の一部を示す断面図である。
【図4c】試料キュベットの断面の一部を示す断面図である。
【図5】電圧値と時間との関係を示すグラフと、回折光強度と時間との関係を示すグラフとである。
【図6】濃度測定方法について説明するためのフローチャートである。
【図7】従来の粒子検出装置の全体構成を示す概略構成ブロック図である。
【図8】従来の試料キュベットの一例を示す斜視図である。
【図9】電極対が形成された側壁の一例を示す平面図である。
【図10】試料キュベットの断面の一部を示す断面図である。
【図11】電圧値と時間との関係を示すグラフと、回折光強度と時間との関係を示すグラフとである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明は、以下に説明するような実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の態様が含まれることはいうまでもない。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態である粒子検出装置の全体構成を示す概略構成ブロック図である。また、図2は、試料キュベット(セル)の一例を示す斜視図である。なお、粒子径測定装置100と同様のものについては、同じ符号を付している。
本実施形態では、試料中には被測定粒子群(B粒子群)とA粒子群とC粒子群とが含有されており、媒体中における被測定粒子群(B粒子群)の濃度cを算出するものとする。よって、詳細は後述するが、交流電圧を印加して誘電泳動により分極したA粒子群とB粒子群とC粒子群とを媒体中で移動させる。そして、交流電圧を印加することを停止した後には、B粒子群は被測定粒子群付着層8に付着させたままとし、A粒子群とC粒子群とは被測定粒子群付着層8に付着せずに媒体中に均一に拡散させることとなる。
【0021】
粒子検出装置10は、試料が収容される試料キュベット1と、試料キュベット1に設けられている電極対2に対して交流電圧を印加する交流電源3と、試料キュベット1に対してレーザ光を照射するレーザ光源4と、第1次の回折光強度Iを検出するための検出光学系150と、増幅器6と、粒子検出装置10全体を制御する制御部7とを備える。
交流電源3には、A粒子群とB粒子群とC粒子群とに誘電泳動を引き起こすことができる周波数fと電圧値Vと印加時間との交流電圧が印加できる交流電源が用いられる。具体的には、電圧値1〜100V、周波数10kHz〜10MHz程度のうちから自由に選択して、選択した交流電圧を印加できる交流電源等を使用する。
【0022】
試料キュベット1は、長方形状の底面12と、4個の側壁11とを有するガラス製のものであり、光透過性を有する。そして、試料キュベット1の内部には、試料が収容されるようになっている。
試料キュベット1の一つの側壁11の表面(内面)には、電極対2と被測定粒子群付着層8とが形成されている。図3は、電極対2と被測定粒子群付着層8とが形成された側壁11の一例を示す平面図であり、図4は、試料キュベット1の断面の一部を示す断面図である。
【0023】
被測定粒子群付着層8は、電極片21aと電極片22aとの間に形成されている。そして、被測定粒子群付着層8は、B粒子群を付着させるとともに、A粒子群とC粒子群とを付着させないようになっている。なお、被測定粒子群付着層8は、B粒子群を一度付着させると、試料キュベット1の洗浄作業等が行われないかぎり、B粒子群を付着させたままとなる。
被測定粒子群付着層8の材料としては、例えば、抗体等が挙げられ、被測定粒子群付着層8は光透過性を有することにより、レーザ光の照射時に被測定粒子群付着層8自体による回折光が発生することを抑えることができる。
【0024】
これにより、電極対2に交流電源3からの交流電圧が印加されなければ、試料キュベット1内に電界分布が形成されないので、電気力線が集中する領域もなく、A粒子群とB粒子群とC粒子群とは媒体中で均一に存在している(図4a参照)。そして、電極対2に交流電源3からの交流電圧が印加されることにより、試料キュベット1内に電界分布が形成される。すると、電気力線が集中する電極片21aと電極片22aとの間に、誘電泳動によってA粒子群とB粒子群とC粒子群とが凝集する。一方、電極片21aと電極片21aとの間と、電極片22aと電極片22aとの間とには、誘電泳動によってA粒子群とB粒子群とC粒子群とが存在しなくなる。よって、A粒子群とB粒子群とC粒子群とが凝集する領域は、格子間隔Λとなるように形成される(図4b参照)。このとき、A粒子群とB粒子群とC粒子群とが凝集する領域には、被測定粒子群付着層8が形成されているため、B粒子群が被測定粒子群付着層8に付着していく。
その後、電極対2に交流電源3からの交流電圧が印加されなくなれば、試料キュベット1内に電界分布が形成されないので、電気力線が集中する領域もなく、A粒子群とB粒子群とC粒子群とは媒体中で均一に再び存在しようとするが、B粒子群が被測定粒子群付着層8に付着しているので、A粒子群とC粒子群とのみが均一に拡散するようになっている(図4c参照)。
【0025】
制御部7は、CPU30とメモリ40とを備え、さらにモニタ画面等を有する表示装置(図示せず)と、キーボードやマウス等を有する入力装置(図示せず)とが連結されている。
また、CPU30が処理する機能をブロック化して説明すると、交流電源3の制御を行う印加電圧制御部31と、レーザ光源4の制御を行うレーザ光源制御部32と、光強度Iを取り込む光強度取得制御部36と、B粒子群の濃度cを算出する粒子濃度算出部35とからなる。
【0026】
レーザ光源制御部32は、試料キュベット1にレーザ光を照射(ON)したり照射停止(OFF)したりするようにレーザ光源4の制御を行う。
光強度取得制御部36は、検出器151で検出された第1次の回折光強度Iを検出する制御を行う。
印加電圧制御部31は、交流電圧を電極対2に印加するように交流電源3の制御を行う。これにより、印加電圧制御部31が、交流電圧を電極対2に印加すると、試料キュベット1内に電界分布が形成されるようになり、一方、交流電圧を電極対2に印加していないと、試料キュベット1内に電界分布が形成されないようになっている。
【0027】
粒子濃度算出部35は、光強度取得制御部36で得られた回折光強度Iに基づいて、媒体中におけるB粒子群の濃度cを算出する制御を行う。
例えば、図4aでは、A粒子群とB粒子群とC粒子群とは媒体中で均一に存在しているので、密度回折格子が形成されずに、光強度取得制御部36で得られる回折光強度Iは弱いものとなる。このときに検出された回折光強度Iが、図5に示す回折光強度Iとなる。
また、図4bでは、電極片21aと電極片22aとの間に、誘電泳動によってA粒子群とB粒子群とC粒子群とが凝集するので、A粒子群とB粒子群とC粒子群とにより密度回折格子が形成され、光強度取得制御部36で得られる回折光強度Iは非常に強いものとなる。このときに検出された回折光強度Iが、図5に示す回折光強度Iとなる。
さらに、図4cでは、電極片21aと電極片22aとの間に、B粒子群が凝集し、A粒子群とC粒子群とは媒体中で均一に存在するので、B粒子群のみにより密度回折格子が形成され、光強度取得制御部36で得られる回折光強度Iはやや強いものとなる。このときに検出された回折光強度Iが、図5に示す回折光強度Is’となる。この回折光強度Is’は、被測定粒子群付着層8と付着しているB粒子群の量、つまりB粒子群の濃度によって異なることになる。すなわち、回折光強度Is’が強ければ、B粒子群の濃度が高く、一方、回折光強度Is’が弱ければ、B粒子群の濃度が低いことになる。
【0028】
ここで、粒子検出装置10によるB粒子群の濃度cを算出する濃度測定方法について説明する。図6は、濃度測定方法について説明するためのフローチャートである。
まず、ステップS101の処理において、媒体中に被測定粒子群(B粒子群)とA粒子群とC粒子群とが含有されている試料を試料キュベット1に収容する。このとき、図4aに示すようにA粒子群とB粒子群とC粒子群とは媒体中で均一に存在している。
次に、ステップS102の処理において、レーザ光源制御部32は、試料キュベット1にレーザ光を照射(ON)し、光強度取得制御部36は、回折光強度Iを検出する。
【0029】
次に、ステップS103の処理において、印加電圧制御部31は、交流電圧を電極対2に印加するように交流電源3の制御を行う。このとき、図4bに示すように電極片21aと電極片22aとの間に、A粒子群とB粒子群とC粒子群とが凝集する。
次に、ステップS104の処理において、印加電圧制御部31は、所定の時間が経過すると、交流電圧を電極対2に印加することを停止するように交流電源3の制御を行う。このとき、図4cに示すように電極片21aと電極片22aとの間に、B粒子群が凝集し、A粒子群とC粒子群とは媒体中で均一に存在するようになっていく。
次に、ステップS105の処理において、レーザ光源制御部32は、所定の時間が経過すると、試料キュベット1にレーザ光を照射(ON)し、光強度取得制御部36は、回折光強度Is’を検出する。
【0030】
次に、ステップS106の処理において、粒子濃度算出部35は、回折光強度(Is’ −I)に基づいて、媒体中におけるB粒子群の濃度cを算出する。
そして、ステップS106の処理が終了すると、本フローチャートを終了させる。
【0031】
以上のように、粒子検出装置10によれば、誘導回折格子法を用いて、試料中に被測定粒子群(B粒子群)と異なる粒子群(A粒子群、C粒子群)との複数の種類の粒子群が含有されていても、異なる粒子群(A粒子群、C粒子群)は被測定粒子群付着層8に付着しないため、媒体中における被測定粒子群(B粒子群)のみの濃度cを算出することができる。
【0032】
(他の実施形態)
上述した粒子検出装置10では、被測定粒子群付着層8は、電極片21aと電極片22aとの間に形成されている構成を示したが、試料キュベット1内に空間周期的に変化する電界を形成するため、一つの側壁の表面全面に形成されているような構成としてもよい。
また、被測定粒子群付着層8は、試料中に被測定粒子群と異なる粒子群との複数の種類の粒子群が含有されていても、被測定粒子群のみを選択的に付着する物質であればよく、例えば、抗体や、正電荷を持つ界面活性剤等であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、光学的手法を用いて被測定粒子群の濃度を算出する粒子検出装置等に使用することができる。
【符号の説明】
【0034】
1、101 試料キュベット(セル)
2 電極対
3 交流電源
4 レーザ光源
8 被測定粒子群付着層
10 粒子検出装置
31 印加電圧制御部
35 粒子濃度算出部
151 検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定粒子群を媒体中に含有する試料を収容するセルと、
電圧を印加する電源と、
前記電源からの電圧印加によりセル内に空間周期的に変化する電界を形成する電極と、
前記試料に測定光を照射する光源と、
前記試料に測定光を照射することにより発生する回折光による回折光強度を検出する検出器と、
前記電源から電極に電圧を印加することにより、前記媒体中で被測定粒子群に電気的な泳動を生じさせる印加電圧制御部とを備える粒子検出装置であって、
前記セル内に空間周期的に変化するように形成された電界に対応する位置に設けられ、前記被測定粒子群を付着する被測定粒子群付着層と、
前記電源から電極に電圧を印加することにより、前記被測定粒子群を被測定粒子群付着層に付着させ、その後、前記電源から電極に電圧を印加することを停止することにより、前記被測定粒子群を被測定粒子群付着層に付着させた状態の回折光強度に基づいて、前記媒体中における被測定粒子群の濃度を算出する粒子濃度算出部とを備えることを特徴とする粒子検出装置。
【請求項2】
前記媒体中には、前記被測定粒子群と異なる粒子群が含有されており、
前記被測定粒子群付着層は、異なる粒子群を付着しないことを特徴とする請求項1に記載の粒子検出装置。
【請求項3】
前記被測定粒子群付着層は、抗体であり、
前記被測定粒子群は、蛋白質であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の粒子検出装置。
【請求項4】
前記被測定粒子群付着層は、前記セル内に空間周期的に変化するように形成された電界に対応しない位置には設けられていないことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の粒子検出装置。

【図1】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図2】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−249607(P2010−249607A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−98178(P2009−98178)
【出願日】平成21年4月14日(2009.4.14)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)