説明

粒子状イミダゾ[1,2−b]ピリダジン化合物の製造方法

【課題】従来技術は、廃シリカゲル等の廃棄物が大量に生じる点や生産設備が煩雑となる点で、必ずしも満足できる方法ではなかった。
【解決手段】式(1)
【化1】


(式中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基または置換基を有していてもよい炭素数3〜6のシクロアルキル基を表す。)
で示されるイミダゾ[1,2−b]ピリダジン化合物が有機溶媒に溶解してなるイミダゾ[1,2−b]ピリダジン化合物溶液と水とを混合する混合工程と、
得られた混合物に含まれる有機溶媒を蒸発させることによりイミダゾ[1,2−b]ピリダジン化合物を析出させる析出工程と
を含む粒子状イミダゾ[1,2−b]ピリダジン化合物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粒子状イミダゾ[1,2−b]ピリダジン化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イミダゾ[1,2−b]ピリダジン化合物は、医薬類および農薬類の合成中間体として有用(例えば、特許文献1参照。)である。医薬類や農薬類を製造する場合、該イミダゾ[1,2−b]ピリダジン化合物を粒子状で得ることが、濾過性等の生産性を向上させる点で好ましい。
【0003】
このような粒子状イミダゾ[1,2−b]ピリダジン化合物の製造方法として、特許文献1には、2−クロロ−6−プロピルイミダゾ[1,2−b]ピリダジンをシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して結晶を得る方法が開示されている(例えば、特許文献1の参考例1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−342130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示される方法は、廃シリカゲル等の廃棄物が大量に生じる点や生産設備が煩雑となる点で、必ずしも満足できる方法ではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、かかる状況下、上記課題を解決し得る製造方法について鋭意検討した結果、廃シリカゲル等の廃棄物を大量に生じることなく、簡便な設備で粒子状イミダゾ[1,2−b]ピリダジン化合物を製造する方法を見出し、本発明に至った。
【0007】
すなわち本発明は〔1〕〜〔10〕に記載される製造方法を提供する。
〔1〕式(1)
【0008】
【化1】

(式中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基または置換基を有していてもよい炭素数3〜6のシクロアルキル基を表す。)
で示されるイミダゾ[1,2−b]ピリダジン化合物が有機溶媒に溶解してなるイミダゾ[1,2−b]ピリダジン化合物溶液と水とを混合する混合工程と、
得られた混合物に含まれる有機溶媒を蒸発させることによりイミダゾ[1,2−b]ピリダジン化合物を析出させる析出工程と
を含む粒子状イミダゾ[1,2−b]ピリダジン化合物の製造方法。
〔2〕混合工程において前記イミダゾ[1,2−b]ピリダジン化合物溶液を水に添加する〔1〕に記載される製造方法。
〔3〕式(1)
【0009】
【化2】

(式中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基または置換基を有していてもよい炭素数3〜6のシクロアルキル基を表す。)
で示されるイミダゾ[1,2−b]ピリダジン化合物が有機溶媒に溶解してなるイミダゾ[1,2−b]ピリダジン化合物溶液を水に添加することにより混合しつつ、
イミダゾ[1,2−b]ピリダジン化合物溶液を水に添加してなる混合物に単位時間当たり熱量Q(kcal/h)を供給し、前記混合物に含まれる有機溶媒を蒸発させることによりイミダゾ[1,2−b]ピリダジン化合物を析出させる混合析出工程を含む
粒子状イミダゾ[1,2−b]ピリダジン化合物の製造方法。
〔4〕水に添加するイミダゾ[1,2−b]ピリダジン化合物溶液の単位時間当たりの量F(kg/h)と、単位時間当たり熱量Q(kcal/h)とが、Q(kcal/h)/F(kg/h)≧100(kcal/kg)の関係を満たす〔3〕に記載される製造方法。
〔5〕得られる粒子状イミダゾ[1,2−b]ピリダジン化合物の平均粒径が100〜2000μmである〔4〕に記載される製造方法。
〔6〕析出させたイミダゾ[1,2−b]ピリダジン化合物を濾過する濾過工程をさらに含む〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載される製造方法。
〔7〕有機溶媒が水に非混和性である〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載される製造方法。
〔8〕有機溶媒が芳香族炭化水素溶媒である〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載される製造方法。
〔9〕有機溶媒を減圧下で蒸発させる〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載される製造方法。
〔10〕式(1)で示されるイミダゾ[1,2−b]ピリダジン化合物が2−クロロ−6−プロピルイミダゾ[1,2−b]ピリダジンである〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載される製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、廃シリカゲル等の廃棄物を大量に生じることなく、簡便な設備で粒子状イミダゾ[1,2−b]ピリダジン化合物を製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0012】
式(1)において、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基または置換基を有していてもよい炭素数3〜6のシクロアルキル基を表す。
【0013】
〜Rで表されるハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基における炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、ヘキシル基、3−メチルペンチル基、2,3−ジメチルブチル基等が挙げられ、置換基を有していてもよい炭素数3〜6のシクロアルキル基における炭素数3〜6のシクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。前記炭素数1〜6のアルキル基および前記炭素数3〜6のシクロアルキル基は置換基を有していてもよく、かかる置換基としては下記の群Pから選ばれる1以上の置換基が挙げられる。
【0014】
群P:フェニル基、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数3〜12のシクロアルキルオキシ基、ニトロ基、アミノ基、炭素数1〜12のアルキルスルホニル基、ベンゼンスルホニル基、カルバモイル基、炭素数2〜12のアシルオキシ基、炭素数2〜12のアシル基、ヒドロキシカルボニル基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、シアノ基。
【0015】
群Pにおいて、炭素数1〜12のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、イソブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基等が挙げられ、炭素数3〜12のシクロアルキルオキシ基としては、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、シクロオクチルオキシ基等が挙げられ、炭素数1〜12のアルキルスルホニル基としては、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、プロパンスルホニル基、ブタンスルホニル基、ペンタンスルホニル基、ヘキサンスルホニル基、ヘプタンスルホニル基、オクタンスルホニル基等が挙げられ、炭素数2〜12のアシルオキシ基としては、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、ブタノイルオキシ基、ペンタノイルオキシ基、ヘキサノイルオキシ基、ヘプタノイルオキシ基、オクタノイルオキシ基が挙げられ、炭素数2〜12のアシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基が挙げられ、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基等が挙げられる。
【0016】
式(1)で示されるイミダゾ[1,2−b]ピリダジン化合物(以下、化合物(1)と略記する。)としては、例えばイミダゾ[1,2−b]ピリダジン、2−クロロイミダゾ[1,2−b]ピリダジン、6−クロロイミダゾ[1,2−b]ピリダジン、2,3−ジクロロイミダゾ[1,2−b]ピリダジン、2,6−ジクロロイミダゾ[1,2−b]ピリダジン、2,7−ジクロロイミダゾ[1,2−b]ピリダジン、2,8−ジクロロイミダゾ[1,2−b]ピリダジン、6,7,ジクロロイミダゾ[1,2−b]ピリダジン、2−クロロ−6−メチルイミダゾ[1,2−b]ピリダジン、2−クロロ−6−エチルイミダゾ[1,2−b]ピリダジン、2−クロロ−6−プロピルイミダゾ[1,2−b]ピリダジン、2−クロロ−6−シクロプロピルイミダゾ[1,2−b]ピリダジン、2−クロロ−6−ベンジルイミダゾ[1,2−b]ピリダジン、2−クロロ−6−ベンジルイミダゾ[1,2−b]ピリダジン、2−クロロ−6−ヒドロキシメチルイミダゾ[1,2−b]ピリダジン、2−クロロ−6−メトキシメチルイミダゾ[1,2−b]ピリダジン、2−クロロ−6−ニトロメチルイミダゾ[1,2−b]ピリダジン、2−クロロ−6−アミノメチルイミダゾ[1,2−b]ピリダジン、2−クロロ−6−アセチルオキシメチルイミダゾ[1,2−b]ピリダジンが挙げられ、好ましくは2−クロロ−6−プロピルイミダゾ[1,2−b]ピリダジンである。
化合物(1)は、例えば特開2005−325127号公報、国際公開WO2004−11466号明細書、国際公開WO2007−26621号明細書に記載される任意の公知の方法により合成することができる。
【0017】
化合物(1)を溶解する有機溶媒としては、水よりも沸点が低い溶媒または水と共沸する溶媒が、有機溶媒の蒸発を低温で行える点で好ましい。有機溶媒は、水に混和性の有機溶媒を用いることできるし、水に非混和性の有機溶媒を用いることもできる。水に混和性の有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコール等の炭素数3以下のアルコール溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル溶媒、アセトニトリル、アセトン、メチルセロソルブ等が挙げられる。水に非混和性の有機溶媒としては、水との混和性を有さず、水と混合した場合に水と分液された状態となる有機溶媒を用いることができる。かかる水と非混和性の有機溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素溶媒、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、等のハロゲン化芳香族炭化水素溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、シクロヘキシルメチルエーテル等の非水溶性エーテル溶媒、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の非水溶性ケトン溶媒、ブタノール、ペンタノール等の炭素数4以上のアルコール溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル溶媒が挙げられる。有機溶媒は、好ましくは水に非混和性の有機溶媒であり、より好ましくは芳香族炭化水素溶媒であり、さらに好ましくはキシレンである。有機溶媒は、単独で用いることもできるし、2種以上の混合溶媒を用いることもできる。
【0018】
化合物(1)が有機溶媒に溶解してなるイミダゾ[1,2−b]ピリダジン化合物溶液(以下、溶液(1)と略記する。)において、化合物(1)の濃度は、用いる化合物(1)および有機溶媒により異なるが、好ましくは5重量%〜60重量%の範囲内であり、より好ましくは25重量%〜45重量%の範囲内である。溶液(1)は、例えば化合物(1)と有機溶媒とを混合して化合物(1)を溶解させることにより得ることもできるし、有機溶媒の存在下、例えば特開2005−325127号公報、国際公開WO2004−11466号明細書または国際公開WO2007−26621号明細書に記載される任意の公知の方法により得られた反応混合物を、洗浄、濃縮等の後処理に付すことにより得ることもできる。水との混合に供する溶液(1)の温度は、例えば室温から有機溶媒の沸点の範囲内で選択することができる。
【0019】
混合工程において、溶液(1)と水との混合は、例えば水に溶液(1)を添加する方法、または溶液(1)に水を添加する方法により行うことができる。水に溶液(1)を添加する方法が、得られる粒子状の化合物(1)の粒径を制御しやすい点で好ましい。水の量は限定されないが、化合物(1)に対して、好ましくは1重量倍〜100重量倍の範囲内であり、より好ましくは5重量倍〜50重量倍の範囲内であり、さらに好ましくは10重量倍〜30重量倍の範囲内である。
【0020】
混合温度は、室温から有機溶媒または水の沸点までの範囲内で選択することができるが、好ましくは20℃〜80℃の範囲内であり、より好ましくは25℃〜50℃の範囲内である。混合時間は限定されず、例えば1分〜24時間の範囲内である。
【0021】
混合工程は、攪拌下行われることが好ましく、例えばアンカー翼、パドル翼、タービン翼、後退翼、ブルマージン翼等の攪拌翼を備えた攪拌手段により行うことができる。
【0022】
析出工程において、混合工程で得られた混合物に含まれる有機溶媒を蒸発させる。有機溶媒を蒸発させることにより化合物(1)が析出し、粒子状の化合物(1)が生成する。
【0023】
有機溶媒の蒸発は、減圧下で行うこともできるし、常圧下で行うこともできる。化合物(1)が熱的に不安定な場合や用いる有機溶媒の沸点が水よりも高い場合には、減圧下で行うことが好ましい。
【0024】
析出工程における温度は、有機溶媒が蒸発により留去され得る温度以上に維持することが好ましい。かかる温度としては、常圧下または減圧下において、例えば、有機溶媒の沸点、または有機溶媒が水との共沸混合物を形成する場合には、その共沸点を採用することができる。好ましくは20℃〜80℃の範囲内であり、より好ましくは25℃〜50℃の範囲内である。時間は限定されず、例えば1分〜24時間の範囲内である。
【0025】
有機溶媒と共に水が蒸発する場合には、混合物に水を添加することがスラリー流動性の点で好ましく、混合物に添加する水としては、例えば有機溶媒と共に蒸発した水を凝縮させた後、有機溶媒と分離して再利用することもできる。
【0026】
析出工程は、攪拌下行われることが好ましく、例えばアンカー翼、パドル翼、タービン翼、後退翼、ブルマージン翼等の攪拌翼を備えた攪拌手段により行うことができる。
【0027】
上記で説明した通り、混合工程および析出工程を行うことにより化合物(1)を析出させることができるが、溶液(1)を水に添加することにより混合しつつ、溶液(1)を水に添加してなる混合物に単位時間当たり熱量Q(kcal/h)を供給し、前記混合物に含まれる有機溶媒を蒸発させることにより化合物(1)を析出させる混合析出工程を行うことが、得られる粒子状の化合物(1)の粒径を制御しやすい点および前記混合物の最大容積を小さくできる点で好ましい。
【0028】
混合析出工程において、水の量は限定されないが、化合物(1)に対して、好ましくは1重量倍〜100重量倍の範囲内であり、より好ましくは5重量倍〜50重量倍の範囲内であり、さらに好ましくは10重量倍〜30重量倍の範囲内である。
【0029】
水に添加する溶液(1)の単位時間あたりの量F(kg/h)を一定範囲内に調節することが、得られる粒子状の化合物(1)の粒径を制御しやすい点で好ましい。かかる単位時間当たりの量F(kg/h)は、化合物(1)の量や溶液(1)における化合物(1)の濃度に応じて適宜選択することができる。
【0030】
熱量Q(kcal/h)は式(イ)
Q=U(kcal/m・h・℃)×A(m)×ΔT(℃) (イ)
(式中、Uは総括伝熱係数を表し、伝熱面の単位面積当たり1℃温度を変化させるのに要する仕事率を意味する。Aは伝熱面の面積を表し、加熱手段と混合物との接触面積を意味する。ΔTは加熱手段の平均温度と混合物の平均温度との差を表す。)
により求めることができる。熱量Qは、用いる設備の容量等により異なるが、好ましくは1kcal/h〜1000000kcal/hの範囲内である。
【0031】
熱量Q(kcal/h)と、水に添加する溶液(1)の単位時間あたりの量F(kg/h)との比Q/Fを、100kcal/kg以上とすることにより、例えば平均粒径100μm〜2000μmの粒子状の化合物(1)を得ることができる。平均粒径100μm〜2000μmの粒子状の化合物(1)は、例えば濾過により粒子状の化合物(1)を取り出す際の濾過性が良好な点で好ましい。なお、粒子状の化合物(1)の平均粒径は、コールターカウンター法、レーザー光回折法等により求めることができる。
【0032】
また、前記比Q/Fを、500kcal/kg以上とすることにより、例えば平均粒径100μm〜800μmの粒子状の化合物(1)を得ることができる。平均粒径100μm〜800μmの粒子状の化合物(1)は、前記濾過性が良好な点に加え、例えば得られる粒子状の化合物(1)が水中に適度に分散しており、分散液の流動性が良好な点で特に好ましい。
【0033】
即ち、前記比Q/Fとしては、Q(kcal/h)/F(kg/h)≧100(kcal/kg)の関係を満たすことが好ましく、Q(kcal/h)/F(kg/h)≧500(kcal/kg)の関係を満たすことがより好ましい。前記比Q/Fの上限は、好ましくは1500kcal/kgであり、より好ましくは1000kcal/kgである。
【0034】
混合析出工程における有機溶媒の蒸発は、減圧下で行うこともできるし、常圧下で行うこともできる。化合物(1)が熱的に不安定な場合や用いる有機溶媒の沸点が水よりも高い場合には、減圧下で行うことが好ましい。
【0035】
混合析出工程における温度は、有機溶媒が蒸発により留去され得る温度以上に維持することが好ましい。かかる温度としては、常圧下または減圧下において、例えば、有機溶媒の沸点、または有機溶媒が水との共沸混合物を形成する場合には、その共沸点を採用することができる。好ましくは20℃〜80℃の範囲内であり、より好ましくは25℃〜50℃の範囲内である。
【0036】
混合析出工程における時間は限定されず、例えば1分〜30時間の範囲内である。溶液(1)の添加時間と有機溶媒の蒸発時間とを略同一とすることが、得られる粒子状の化合物(1)の粒径を制御しやすい点で好ましい。
【0037】
有機溶媒と共に水が蒸発する場合には、混合物に水を添加することがスラリー流動性の点で好ましく、混合物に添加する水としては、例えば有機溶媒と共に蒸発した水を凝縮させた後、有機溶媒と分離して再利用することもできる。
【0038】
混合析出工程は、攪拌下行われることが好ましく、例えばアンカー翼、パドル翼、タービン翼、後退翼、ブルマージン翼等の攪拌翼を備えた攪拌手段により行うことができる。
【0039】
混合工程および析出工程を行うことにより、または混合析出工程を行うことにより析出した化合物(1)に、必要に応じて冷却処理を施した後、濾過、デカンテーション等の固液分離処理を施すことで、粒子状の化合物(1)を取り出すことができる。固液分離処理としては、濾過が好ましい。固液分離処理における温度は、水の凝固点から沸点までの範囲内で選択することができるが、好ましくは0℃〜50℃の範囲内であり、より好ましくは5℃〜40℃の範囲内である。取り出した粒子状の化合物(1)に、洗浄処理を施すこともできる。洗浄処理には、例えば水を用いることができる。取り出した粒子状の化合物(1)に、洗浄処理を施した後または洗浄処理を施さずに、乾燥処理を行うこともできる。乾燥処理は、常圧下または減圧下、好ましくは20℃〜80℃の範囲内で行われる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【0041】
参考例
<2−クロロ−6−プロピルイミダゾ[1,2−b]ピリダジンのキシレン溶液の調製>
キシレンに、2,6−ジクロロイミダゾ[1,2−b]ピリダジンと0.05モル倍の[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケル(II)ジクロリドとを加え、室温下で攪拌する。そこへ、1モル倍の臭化n−プロピルマグネシウム(20%テトラヒドロフラン溶液)を加え、室温で攪拌して得られる混合物を、希硫酸、次いで水で洗浄し、減圧濃縮してテトラヒドロフランを留去することにより、2−クロロ−6−プロピルイミダゾ[1,2−b]ピリダジンのキシレン溶液が得られる。
【0042】
実施例1
3枚後退翼付の攪拌機、フィンガーバッフル、冷却管、油水分離還流管および温度計を備えた内容積1.5Lのジャケット付き円筒形フラスコに、水1000mLを仕込み、42.0℃に調節した温水をジャケットに通液した。水を0.5kw/mの攪拌動力で攪拌しながら、還流状態になるまでフラスコ内を減圧した。この時、フラスコ内の圧力は70ヘクトパスカル(hPa)、フラスコ内の水温は39.0℃であった。2−クロロ−6−プロピルイミダゾ[1,2−b]ピリダジンの35%キシレン溶液143gを、還流状態の水中にガラス管を通じて3.5時間かけて注入しながら、キシレンを蒸発させた。キシレンを蒸発させた間中、キシレンと共沸した水をキシレンと分離し、分離した水をフラスコ内に戻した。フラスコ内は、粒子状の2−クロロ−6−プロピルイミダゾ[1,2−b]ピリダジンが一様に分散するスラリーとなっていた。35%キシレン溶液の注入中のフラスコ内の混合物の平均温度は37.9℃であり、注入後の液量におけるジャケットの伝熱面の面積は0.042mであった。このフラスコの総括伝熱係数は200kcal/m・h・℃であり、フラスコ内の混合物に供給された単位時間当たり熱量Qと、注入したキシレン溶液の単位時間当たりの量Fとの比Q/Fは、840kcal/kgであった。
得られたスラリーを濾過した後、乾燥することにより、粒子状2−クロロ−6−プロピルイミダゾ[1,2−b]ピリダジン48.3gを得た。レーザー光回折法(乾式)にて粒子状2−クロロ−6−プロピルイミダゾ[1,2−b]ピリダジンの平均粒径を求めたところ、平均粒径は333μmであった。スラリーの流動性および濾過性はともに良好であった。
【0043】
実施例2〜8
ジャケットに通液した温水の温度、2−クロロ−6−プロピルイミダゾ[1,2−b]ピリダジンの35%キシレン溶液の水中への注入時間を変更した以外は、実施例1に記載した方法に従って行った。結果を表2に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
実施例2および3において、スラリーの流動性および濾過性はともに良好であった。
実施例4〜8において、粒子状2−クロロ−6−プロピルイミダゾ[1,2−b]ピリダジンの沈降速度が速く、実施例1〜3と比較してスラリーの流動性は劣っていたが、ろ過性は実施例1〜3と同様に良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0047】
粒子状イミダゾ[1,2−b]ピリダジン化合物は、医薬類および農薬類の合成中間体として有用(例えば特許文献1参照。)であり、本発明はかかる化合物の製造方法として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)
【化1】

(式中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基または置換基を有していてもよい炭素数3〜6のシクロアルキル基を表す。)
で示されるイミダゾ[1,2−b]ピリダジン化合物が有機溶媒に溶解してなるイミダゾ[1,2−b]ピリダジン化合物溶液と水とを混合する混合工程と、
得られた混合物に含まれる有機溶媒を蒸発させることによりイミダゾ[1,2−b]ピリダジン化合物を析出させる析出工程と
を含む粒子状イミダゾ[1,2−b]ピリダジン化合物の製造方法。
【請求項2】
混合工程において前記イミダゾ[1,2−b]ピリダジン化合物溶液を水に添加する請求項1に記載される製造方法。
【請求項3】
式(1)
【化2】

(式中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基または置換基を有していてもよい炭素数3〜6のシクロアルキル基を表す。)
で示されるイミダゾ[1,2−b]ピリダジン化合物が有機溶媒に溶解してなるイミダゾ[1,2−b]ピリダジン化合物溶液を水に添加することにより混合しつつ、
イミダゾ[1,2−b]ピリダジン化合物溶液を水に添加してなる混合物に単位時間当たり熱量Q(kcal/h)を供給し、前記混合物に含まれる有機溶媒を蒸発させることによりイミダゾ[1,2−b]ピリダジン化合物を析出させる混合析出工程を含む
粒子状イミダゾ[1,2−b]ピリダジン化合物の製造方法。
【請求項4】
水に添加するイミダゾ[1,2−b]ピリダジン化合物溶液の単位時間当たりの量F(kg/h)と、単位時間当たり熱量Q(kcal/h)とが、Q(kcal/h)/F(kg/h)≧100(kcal/kg)の関係を満たす請求項3に記載される製造方法。
【請求項5】
得られる粒子状イミダゾ[1,2−b]ピリダジン化合物の平均粒径が100〜2000μmである請求項4に記載される製造方法。
【請求項6】
析出させたイミダゾ[1,2−b]ピリダジン化合物を濾過する濾過工程をさらに含む請求項1〜5のいずれかに記載される製造方法。
【請求項7】
有機溶媒が水に非混和性である請求項1〜6のいずれかに記載される製造方法。
【請求項8】
有機溶媒が芳香族炭化水素溶媒である請求項1〜6のいずれかに記載される製造方法。
【請求項9】
有機溶媒を減圧下で蒸発させる請求項1〜8のいずれかに記載される製造方法。
【請求項10】
式(1)で示されるイミダゾ[1,2−b]ピリダジン化合物が2−クロロ−6−プロピルイミダゾ[1,2−b]ピリダジンである請求項1〜9のいずれかに記載される製造方法。