説明

粒子状物質を使用する核酸分離方法及び核酸分離用組成物

【課題】粒子状物質を使用する核酸分離方法及び核酸分離用組成物を提供する。
【解決手段】蛋白質変性凝集物と細胞残骸粒子を凝集及び沈降させる過程に粒子状物質を添加して非溶解性凝集物を最も速い時間で凝集及び沈降させて核酸の分離時間を短縮させ、核酸の分離収率を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粒子状物質を使用する核酸分離方法及び核酸分離用組成物に関するものであって、より詳しくは生物試料から核酸を分離する段階において生じる非溶解性蛋白質変性凝集物と細胞残骸粒子をより迅速で効率的に凝集及び沈降させて核酸分離の所要時間を画期的に短縮させる粒子状物質を使用する核酸分離方法及び核酸分離用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
1979年にBirnboimH. C.とDoly J.とがアルカリ溶解方法(Alkaline lysismethod)を用いた大腸菌から二重螺旋のプラスミドDNAを抽出する方法を、1976年にBlin N.とStafford D. W.とが真核生物からゲノムDNAを分離する方法を、1972年にAviv H.とLeder P.とがクロマトグラフィ法を用いたメッセンジャーRNAの分離方法などを報告して以来、最近、生命工学を始め、診断医学、薬物医学、代謝医学などの多様な分野において高純度で精製された核酸の使用量が増加することにより、多様な生物試料からより迅速で純粋に核酸を分離しようとする努力が続いている。
【0003】
しかし、現在まで核酸の分離方法において最も大きく発展した部分は、遺伝体DNA、プラスミドDNA、メッセンジャーRNA、蛋白質、細胞残骸粒子などの細胞溶解溶液内に含まれたあらゆる種類の物質から特異的に核酸のみを吸着させる担体に関する発明であると言っても過言ではないだろう。米国特許5075430、5155018、5658548、5808041などに記載されているカオトロピック塩(chaotropic salts)とシリカゲル、微細シリカ粒子、微細ガラス粒子、微細ガラス繊維、微細シリカ繊維、微細シリカ繊維膜、親水性膜及びアニオン交換樹脂膜などを用いた核酸の分離方法、及び、米国特許5665554、5990479、6136083、6255477、6274386、6545143、6919444などに記載されている鉄、亜鉛などの磁力を有している金属粒子表面の性質を操作してアニオンを帯びている核酸が特異的に吸着されることにより、核酸が分離される方法など、殆ど全ての研究の焦点は核酸を吸着させる物質に関する研究と開発に集中していた。
【0004】
また、現在商業的に販売されているキット(kit)類の製品は前記の論文の方法と大きくは異なっておらず、より迅速に純粋に核酸を分離するために、細胞残骸粒子と蛋白質変性凝集物、その他の多様な細胞分解物質から迅速に望ましい核酸のみを分離することができる技術の開発が切実に求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、生物試料から核酸を分離することにおいて、より速い時間で非溶解性の蛋白質変性凝集物と細胞残骸粒子とを凝集及び沈降させることができる粒子状物質を含有する組成物を提供して遠心分離した後、前記非溶解性凝集物を沈殿させ、溶液内に核酸のみを特異的に残す核酸分離方法を提供することである。
【0006】
また、本発明における粒子状物質を用いて生物試料から迅速に純粋に核酸を分離することができる核酸分離用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記のような目的を達成するために、本発明は、微生物、動物組織、植物組織、血液、分泌物及びこれらの試料を組み換え遺伝子で形質転換させた試料から選択される1種以上の生物試料から細胞を溶解させる段階及び前記溶解物から蛋白質変性凝集物と細胞残骸粒子からなる非溶解性凝集物を核酸と分離する段階とを含めてなる核酸分離方法において、前記非溶解性凝集物に特異的な凝集又は沈降を促進させる粒子状物質を使用する核酸分離方法を提供する。前記粒子状物質は平均粒径が1nm乃至1mm、より望ましくは10nm乃至500μmの大きさである。また、前記非溶解性凝集物に特異的な凝集又は沈降をさらに促進させるために前記粒子状物質の平均密度は1g/cm3乃至20g/cm3であり、より望ましくは2g/cm3乃至10g/cm3であるものが良い。
【0008】
また、前記のもう一つの目的を達成するために、本発明は核酸分離用組成物において、(a)銀、鉄、チタニウム、アルミニウム、錫、シリコン、銅、モリブデン、ニッケル、タングステン、及び亜鉛からなる群から選ばれる元素からなる物質、これらの酸化物、炭化物、窒化物、ホウ化物及び珪化物、及びこれらの混合物からなる群から選ばれる無機物;(b)PMMA(Poly Methyl Meth Acrylate)、ポリエチレン及びポリウレタンからなる群から選ばれる高分子重合体;及びこれらの混合物からなる群から選ばれる1nm乃至1mmの大きさの、より望ましくは10nm乃至500μmの大きさの粒子状物質を含有する核酸分離用組成物を提供する。
【0009】
前記組成物はアルコキシレート、アルカノールアミド、エステル、アミンオキシド、アルキルポリグリコシド、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンアミン、ポリビニルアミン、ベタイン、グリシネート、イミダゾリン及びグリセロールからなる群から選ばれる1種以上の分散剤をさらに含有する水分散液であるものが望ましい。
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
なお、ここで使用される技術用語及び科学用語において他に定義がなければ、この発明が属する技術分野で通常の知識を持っている者が通常理解しているという意味を有する。
【0012】
また、従来と同一な技術的構成及び作用に対する繰り返される説明は省略する。
【0013】
本発明における核酸はDNA(deoxyribonucleic acid)又はRNA(ribonucleic acid)であって、ゲノムDNA、プラスミドDNA、ファージDNA、組み換えDNA、mRNA、rRNA、tRNA、組み換えRNA、microRNAなどを含む。
【0014】
また、本発明において従来核酸分離方法は従来遠心分離法、真空分離法(vacuum manifold type)、フィルター分離法、重力分離法、又はクロマトグラフィ法のことを言う。これは本発明の分野において通常の知識を持っている者であれば自明な事項であって詳細な説明は省略する。
【0015】
そして、本発明における核酸分離用組成物とは、生物試料から細胞を溶解させる段階;及び前記溶解物から蛋白質変性凝集物と細胞残骸粒子からなる非溶解性凝集物を核酸と分離する段階に使用される試薬や緩衝溶液のことであって、より詳しくは生物試料を収集して保存処理する段階;生物試料溶解のための緩衝溶液に共に混ぜて入れる段階;生物試料溶解のための緩衝溶液を処理した後に入れる段階;溶解された生物試料に蛋白質変性凝集物を形成させるための緩衝溶液に共に混ぜて入れる段階;又は蛋白質変性凝集物が形成された溶液に入れる段階に使用される試薬や緩衝溶液のことを言う。
【0016】
本発明は生物試料から核酸を分離することにおいて、凝集物の凝集及び沈降を促進させる粒子状物質を使用して核酸の分離効果を改良させたものである。
【0017】
本発明において使用される粒子状物質の平均粒子サイズは、直径が1nm乃至1mm、より望ましくは直径が10nm乃至500μmのものである。これは1nmより粒子を小さくすることは技術的に難しく、1mmを超えると前記非溶解性凝集物より先に沈降するため粒子状物質の添加効果が低下されるからである。また、前記粒子状物質の平均密度は1g/cm3乃至20g/cm3であり、望ましくは2g/cm3乃至10g/cm3の密度が適当であり、平均比表面積は1m/g乃至20m/gであり、望ましくは5m/g乃至15m/gの平均比表面積が適当である。そして、平均粒子状物質の密度が1g/cm3よりも小さ過ぎると非溶解性凝集物の沈降に効果的に作用することができず、逆に20g/cm3よりも大き過ぎると相対的に非溶解性凝集物より重くなるため非溶解性凝集物と共に沈降されず、粒子状物質が単独で沈降されるため望ましくない。
【0018】
本発明における前記粒子状物質は前記平均粒径及び密度の範囲において多様な物質を選んで使用することができ、その物質は限られるものではない。銀、鉄、チタニウム、アルミニウム、錫、シリコン、銅、モリブデン、ニッケル、タングステン及び亜鉛からなる群から選ばれる元素からなる物質、これらの酸化物、炭化物、窒化物、ホウ化物及び珪化物、及びこれらの混合物からなる群から選ばれる無機物と、重合体としてPMMA(Poly Methyl Meth Acrylate)、ポリエチレン、ポリウレタンを主成分とする粒子から選ばれる一つ以上の物質、又はこれらの混合物を使用することができる。その中でも銀、鉄、チタニウム、アルミニウム、錫、シリコン、銅、モリブデン、ニッケル、タングステン、亜鉛から構成された群から選ばれる一つ以上の元素からなる物質及びこれらの酸化物、炭化物、窒化物、ホウ化物及び珪化物、及びこれらの混合物からなる群から選ばれる物質が、核酸分離過程で発生する非溶解性物質の凝集及び沈降効果においてさらに優れておりより望ましく、鉄、ニッケル、シリコン、二酸化チタン又は白水晶(white quartz)からなる粒子状物質を使用すると、効果において最も優れておりさらに望ましい。
【0019】
そして、本発明で使用される粒子状物質は、そのまま使用しても、水分散されたものを使用してもよいが、粒子状物質自体の凝集を減らすだけでなく、実験便宜上の側面から、水分散液を使用することがより望ましい。この際、その粒子状物質自体の凝集及び沈降を防止するために、分散剤をさらに含有した水分散液を保管及び使用してもよいが、分散剤としてはグリセロール、アルコキシレート、アルカノールアミド、エステル、アミンオキシド、アルキルポリグリコシド、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ベタイン、グリシネート及びイミダゾリンなどを単独又は混合して使用することができる。
【0020】
粒子状物質が含有された水分散液において、粒子状物質の含量は限られないが、実験便宜性を考えると、100mg/ml乃至1,000mg/ml程度が望ましい。100mg/ml未満の低濃度溶液を使用すると、使用する溶液の体積が増えて不便になり、1,000mg/mlを超える高濃度で使用すると、粒子状物質がよく分散されず使いにくくなる。
【0021】
また、水分散液に追加的に含有される分散剤は粒子状物質の水分散液の0.01乃至10.0体積%、望ましくは0.1乃至1.0体積%の量で添加して使用する。これは0.01体積%未満で分散剤を使用すると、その分散効果が微々たるものとなり、10.0体積%を超えて使用すると、粒子状物質の分散効果は優れるが、過量添加された分散剤によって重合体の特有の匂いが発生し、核酸分離時の収率減少に影響を与えるからである。
【0022】
また、核酸を分離する段階において、本発明の粒子状物質を生物試料に直接添加したり、生物試料を溶解させた後に直に添加したり、又は生物試料溶解のための緩衝溶液と共に混ぜて添加することで、核酸と非溶解性凝集物を分離させることができる。若しくは、蛋白質変性凝集物が作られた後に直に添加したり、蛋白質変性凝集物を形成させるための緩衝溶液と共に混ぜて添加して使用することもできる。この中で、生物試料に直接添加したり生物試料溶解のための緩衝溶液に添加することが核酸分離効果の側面からさらに望ましく、生物試料に直接添加して使用することが核酸分離効果の側面から最も望ましい。
【0023】
また、前記添加段階を応用することにおいて、上述した生物試料に直接入れる段階、生物試料溶解のための緩衝溶液に共に混ぜて入れる段階、生物試料溶解のための緩衝溶液を処理した後に入れる段階、溶解された生物試料に蛋白質変性凝集物を形成させるための緩衝溶液に共に混ぜて入れる段階又は蛋白質変性凝集物が形成された生物試料に入れる段階に、本発明による粒子状物質を含めてなる核酸分離用組成物を核酸抽出用キットに適用して使用することができる。
【0024】
また、本発明における生物試料として大腸菌、バクテリア、酵母及び藍色細菌などからなる微生物、動物組織、植物組織、血液、分泌物及び前記試料を組み換え遺伝子で形質転換させた試料などを使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】大腸菌細胞からプラスミドDNAの分離過程においてTiO2粒子の添加が蛋白質変性凝集物と細胞残骸粒子の凝集及び沈降に及ぼす効果を示す図面である。
【図2】大腸菌細胞からプラスミドDNAの分離過程においてTiO2粒子の添加段階が蛋白質変性凝集物と細胞残骸粒子の凝集及び沈降に及ぼす効果を示す図面である。
【図3】本発明の粒子状物質を用いた方法が適用された場合と既存の実験方法による場合とのそれぞれに対して大腸菌細胞からプラスミドDNAを分離するのに要した時間と収率を比較した図面である。
【図4】本発明の粒子状物質を用いて大腸菌細胞から分離したプラスミドDNAを制限酵素処理した後、アガロースゲル(agarose gel)に電気泳動した結果を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を具体的な実施例を通してより詳しく説明する。
【0027】
しかし、本発明の製造方法は望ましい一実施例の方法であるだけで、本発明は上述した製造方法に限られるものではなく、これは本発明の分野において通常の知識を有する者であれば容易にわかる明らかなものである。
【0028】
<実施例1>
粒子状物質の処理が蛋白質変性凝集物と細胞残骸粒子の凝集及び沈降に及ぼす影響
【0029】
1)粒子状物質溶液の製造
【0030】
本特許で使用される粒子状物質の中で、TiO2粒子はナノケミカル(株)、鉄粒子は(株)ナノ技術、ニッケル粒子はNTベース(株)、シリコン粒子と白水晶粒子はシグマ−アルドリッチから購入して使用した。各粒子状物質の平均粒径及び平均密度を表1に示す。
【0031】
<表1>

【0032】
前記それぞれの粒子状物質を500mg/mlになるように滅菌された超純水に入れてポリアクリル系分散剤(チョンウ精密化学、KOSANT A-40)を粒子の水分散液に対して0.1体積%になるように500mg/mlの粒子水分散液に入れてそれぞれの粒子状物質溶液として使用した。
【0033】
2)粒子状物質処理による蛋白質変性凝集物と細胞残骸粒子の凝集及び沈降様相の確認
【0034】
蛋白質変性凝集物と細胞残骸粒子の凝集及び沈降を観察するために大腸菌細胞からプラスミドDNAを抽出することができるキット製品(Cat. No. K-3030)をバイオニアから購入して提示された実験方法に従って使用した。
【0035】
実験材料としては、アンピシリン抵抗性遺伝子が挿入された3.0kbのpBluescript SK(+) vector(Stratagene)が導入されたXL−1Blue大腸菌株を使用した。100μg/mlのアンピシリンが含まれたLB液体培地に接種した後、37℃で16時間程度振湯培養してO.D600値が2.0になるように培養した。培養された大腸菌培養液1ml、2ml、3ml、4ml、5mlを遠心分離して培養液と大腸菌細胞を分離し上澄液を除去して大腸菌細胞のみを獲得した。
【0036】
以下の方法に従い実験を行った。獲得された各々の大腸菌細胞にRNase Aが含まれた緩衝溶液を入れて細胞をよく浮遊させた後、細胞溶解用緩衝溶液を入れてよく混ぜた。最後に中和用緩衝溶液を入れてよく撹拌してから遠心分離機に入れて13,000rpm、常温条件において遠心分離した。また、粒子状物質処理による沈降様相を確認するために、前記1)項の方法に従って製造された粒子状物質溶液の中でTiO2粒子溶液を大腸菌細胞溶液に反応当たり10mgになるように添加し、ボールテックスミキサーを用いて細胞と粒子状物質溶液をよく混ぜた後、前記2)項の残りの実験方法に従って細胞溶解緩衝溶液と中和緩衝溶液をそれぞれ入れて13,000rpm、常温条件において遠心分離した。これらそれぞれの条件において蛋白質変性凝集物と細胞残骸粒子が完璧に凝集及び沈降される遠心分離所要時間を算出して粒子状物質処理による凝集及び沈降効果を分析し、その結果を図1に示した。
【0037】
図1のTiO2粒子を添加しない場合、大腸菌細胞の量が1ml乃至5mlに増加することによって蛋白質変性凝集物と細胞残骸粒子の凝集及び沈降のためにそれぞれ2分乃至10分かかったが、TiO2粒子を添加した場合、細胞の量が1ml乃至5mlに増加しても凝集及び沈降には1分乃至2分ほどかかっただけであった。
【0038】
<実施例2>
粒子状物質の処理段階が凝集物の凝集及び沈降に及ぼす影響
【0039】
粒子状物質の処理段階は次のように5段階に分けられる。先ず、生物試料に直接入れる段階、第2に、生物試料溶解のための緩衝溶液に共に混ぜて入れる段階、第3に、生物試料溶解のための緩衝溶液を処理した後に入れる段階、第4に、溶解された生物試料に蛋白質変性凝集物を形成させるための緩衝溶液に共に混ぜて入れる段階、第5に、蛋白質変性凝集物が形成された生物試料に入れる段階である。
【0040】
これらの各段階の中で粒子状物質の処理によって蛋白質変性凝集物と細胞残骸粒子を最も効果的に沈降させることができる条件を確認するために、前記実施例1の1)項から製造された500mg/ml濃度のTiO2粒子溶液を5mlの大腸菌細胞溶液に各段階別に10mgになるように添加し、前記実施例1の2)項のように遠心分離所要時間を計算して粒子状物質の処理時点による蛋白質変性凝集物と細胞残骸粒子の沈降様相を確認してその結果を図2に示した。
【0041】
図2のTiO2粒子の添加段階別の蛋白質変性凝集物と細胞残骸粒子の凝集及び沈降の所要時間を比べてみると、生物試料に直接添加する場合(1)が最も速く2分であり、その次は細胞溶解用緩衝溶液と共に添加する場合(2)であった。細胞溶解用緩衝溶液を入れた後に添加する場合(3)はその処理効果は微々たるものであった。なお、細胞中和用緩衝溶液と共に入れた場合(4)と細胞中和用緩衝溶液を入れた後に添加した場合(5)は、TiO2粒子の処理によって蛋白質変性凝集物と細胞残骸粒子の凝集及び沈降には弱いが、効果はあるものと確認された。
【0042】
従って、TiO2粒子の処理段階による蛋白質変性凝集物と細胞残骸粒子の凝集及び沈降時間の短縮効果は、生物試料に直接添加>細胞溶解用緩衝溶液と共に添加>細胞中和用緩衝溶液を入れた後に添加>細胞中和用緩衝溶液と共に添加>細胞溶解用緩衝溶液を入れた後に添加、の順であることがわかった。
【0043】
<実施例3>
粒子状物質が処理された実験方法と処理されない実験方法を用いて生物試料から核酸を分離することにおける全体実験所要時間及び収率の比較
【0044】
前記実施例1の2)項によって5mlの大腸菌細胞を用意し、実施例1の1)項によって製造されたそれぞれの粒子状物質の水分散液を反応当り10mgになるように添加した場合に対してプラスミドDNAを分離するのに所要した全体実験時間を計算して粒子状物質の処理が実験遂行時間の短縮に及ぼす影響を分析した。なお、分光光度計を用いて分離されたプラスミドDNA溶液の吸光度を測定し、これから収率を計算して、その結果を図3に示した。
【0045】
図3の粒子状物質を処理しない対照群(Non)の場合の収率は15μgであり、プラスミドDNAを分離するのに要した総時間は28分であったが、TiO2粒子を始めた粒子状物質を添加する場合の収率は17μg乃至24μg、所要総時間は15分程度であって、粒子状物質の添加が生物試料から核酸を分離することにおいて時間短縮に大きく寄与するだけでなく、収率の増加にも影響を及ぼすことが確認された。
【0046】
<実施例4>
粒子状物質が処理された実験方法を用いて生物試料から分離された核酸の酵素活性の阻害如何の確認
【0047】
前記実施例3から分離されたプラスミドDNA1μgをバイオニアから購入したHind 3(10,000 Unit)1Unit(Cat. No. E-1721)で37℃で1時間切断し、1.0%アガロースゲルで電気泳動を通して制限酵素によって切断されたプラスミドDNAのサイズが3.0kbであるかどうかを確認し、本特許を通して製造された粒子状物質が含まれた核酸分離用組成物に酵素活性の阻害要因があるかを確認して、その結果を図4に示した。
【0048】
図4のMはラムダ(Lambda)DNAをHind 3とEcoR 1で切断して製造したサイズマーカー(size marker)であり、レーン(lane)1は粒子状物質を処理しない対照群、レーン(lane)2は鉄粒子を処理した実験群、レーン3は二酸化チタン粒子を処理した実験群、レーン4はニッケル粒子を処理した実験群、レーン5はシリコン粒子を処理した実験群、レーン6は白水晶粒子を処理した実験群である。
【0049】
図4の電気泳動写真を見るとわかるように、粒子状物質が処理された場合も処理されない場合も全て同じサイズのプラスミドDNAを有しており、粒子状物質が分離されたプラスミドDNAの酵素活性への如何なる阻害要素も有していないことがわかった。
【産業上利用可能性】
【0050】
本発明の粒子状物質は、生物試料から核酸を分離する過程において形成される非溶解性凝集物の蛋白質変性凝集物と細胞残骸粒子の凝集及び沈降過程に作用し、既存の実験方法に比べて遠心分離時間の画期的な短縮効果が得られ、これは全体実験所要時間の短縮に大きく寄与した。よって、本発明による非溶解性凝集物に特異的な凝集または沈降を促進させる粒子状物質を使用する核酸分離方法を通して拡散分離時間を画期的に短縮させることができ、多量の生物試料から核酸を分離する場合に核酸分離効率が向上するという効果が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物、動物組織、植物組織、血液、分泌物及びこれらの試料を組み換え遺伝子で形質転換させた試料から選択される1種以上の生物試料から核酸を分離する方法において、前記生物試料から起因した非溶解性凝集物の凝集又は沈降を促進させる粒子状物質を使用する核酸分離方法。
【請求項2】
前記粒子状物質は平均粒径が1nm乃至1mmであることを特徴とする請求項1に記載の核酸分離方法。
【請求項3】
前記粒子状物質は、無機物、重合体又はこれらの混合物からなり、平均粒径が10nm乃至500μmであることを特徴とする請求項1に記載の核酸分離方法。
【請求項4】
前記粒子状物質は平均密度が1g/cm3乃至20g/cm3であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の核酸分離方法。
【請求項5】
前記粒子状物質は平均密度が2g/cm3乃至10g/cm3であることを特徴とする請求項4に記載の核酸分離方法。
【請求項6】
前記粒子状物質は銀、鉄、チタニウム、アルミニウム、錫、シリコン、銅、モリブデン、ニッケル、タングステン、及び亜鉛からなる群から選ばれる元素からなる物質、これらの酸化物、炭化物、窒化物、ホウ化物及び珪化物、及びこれらの混合物からなる群から選ばれることを特徴とする請求項3又は4に記載の核酸分離方法。
【請求項7】
前記粒子状物質はPMMA(Poly Methyl Meth Acrylate)、ポリエチレン及びポリウレタンからなる群から選ばれる高分子重合体であることを特徴とする請求項3又は4に記載の核酸分離方法。
【請求項8】
前記粒子状物質は水溶液に分散されることを特徴とする請求項1に記載の核酸分離方法。
【請求項9】
前記水溶液はアルコキシレート、アルカノールアミド、エステル、アミンオキシド、アルキルポリグリコシド、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンアミン、ポリビニルアミン、ベタイン、グリシネート、イミダゾリン及びグリセロールからなる群から選ばれる分散剤をさらに含有することを特徴とする請求項8に記載の核酸分離方法。
【請求項10】
前記核酸と非溶解性凝集物の分離は遠心分離法、真空分離法(vacuum manifold type)、フィルター分離法、重力分離法、又はクロマトグラフィ法から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の核酸分離方法。
【請求項11】
前記粒子状物質を使用する段階は、
(a)生物試料に直接入れる段階;
(b)生物試料溶解のための緩衝溶液に共に混ぜて入れる段階;
(c)生物試料溶解のための緩衝溶液を処理した後に入れる段階;
(d)溶解された生物試料に蛋白質変性凝集物を形成させるための緩衝溶液に共に混ぜて入れる段階;又は
(e)蛋白質変性凝集物が形成された溶液に入れる段階
であることを特徴とする請求項1〜10の何れか一項に記載の核酸分離方法。
【請求項12】
前記粒子状物質を使用する段階は、
(a)生物試料に直接入れる段階;又は
(b)生物試料溶解のための緩衝溶液に共に混ぜて入れる段階
であることを特徴とする請求項11に記載の核酸分離方法。
【請求項13】
核酸分離用組成物において、
(a)銀、鉄、チタニウム、アルミニウム、錫、シリコン、銅、モリブデン、ニッケル、タングステン、及び亜鉛からなる群から選ばれる元素からなる物質、これらの酸化物、炭化物、窒化物、ホウ化物及び珪化物、及びこれらの混合物;
(b)PMMA(Poly Methyl Meth Acrylate)、ポリエチレン及びポリウレタンからなる群から選ばれる高分子重合体;及び
これらの混合物からなる群から選ばれる1nm乃至1mmの大きさの粒子状物質を含有する核酸分離用組成物。
【請求項14】
前記粒子状物質は銀、鉄、チタニウム、アルミニウム、錫、シリコン、銅、モリブデン、ニッケル、タングステン、及び亜鉛からなる群から選ばれる元素からなる物質、酸化物、炭化物、窒化物、ホウ化物、珪化物、又はこれらの混合物からなる群から選ばれる平均粒径が10nm乃至500μm、平均密度2g/cm3乃至10g/cm3であることを特徴とする請求項13に記載の核酸分離用組成物。
【請求項15】
前記核酸分離用組成物はアルコキシレート、アルカノールアミド、エステル、アミンオキシド、アルキルポリグリコシド、ポリアクリルレート、ポリメタクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンアミン、ポリビニルアミン、ベタイン、グリシネート、イミダゾリン及びグリセロールからなる群から選ばれる1種以上の分散剤を0.1乃至1.0体積%の量で含有する水分散液であることを特徴とする請求項13又は請求項14に記載の核酸分離用組成物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−196216(P2012−196216A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−112467(P2012−112467)
【出願日】平成24年5月16日(2012.5.16)
【分割の表示】特願2009−541216(P2009−541216)の分割
【原出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【出願人】(502235773)バイオニア コーポレーション (14)
【Fターム(参考)】