説明

粒子画像処理装置

【課題】装置の大型化および複雑化を抑制しながら、測定できる粒径の範囲を大きくすることが可能な粒子画像処理装置を提供する。
【解決手段】この粒子画像処理装置1は、粒子懸濁液の流れを形成するフローセル7と、粒子懸濁液の流れに光を照射する照射部20と、照射された粒子懸濁液の流れの粒子の光像を拡大する対物レンズ51と、対物レンズ51で拡大された粒子の光像を結像する結像レンズ61と、結像レンズ61で結像された粒子像を撮像する撮像部70とを備えている。そして、対物レンズ51は、拡大倍率の異なる他の対物レンズ51と交換可能に取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子画像処理装置に関し、特に、対物レンズを備えた粒子画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ファインセラミックス粒子や、顔料、化粧品パウダーなどの粉体の品質を管理するための、対物レンズを備えた粒子画像処理装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、液体中の粒子を撮像し、その粒子像を記憶および分析することにより、粒子の大きさや形状などを自動的に算出する粒子画像分析システムに含まれる粒子画像処理装置において、照射部により照射された粒子の光像を拡大するための対物レンズが開示されている。この特許文献1に開示された従来の粒子画像処理装置における対物レンズでは、対物レンズの倍率を選択可能または測定途中に切替可能に構成することにより、測定できる粒径の範囲を大きくしている。
【0004】
【特許文献1】特開平8−136439号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1には、明記はされていないが、対物レンズの倍率を選択可能または測定途中に切替可能にするために、装置内に複数の対物レンズを設置するとともに、それらの複数の対物レンズを選択可能にする選択機構や切替可能にする切替機構を設ける必要があると考えられる。これにより、1つの対物レンズを装置内に設置する場合に比べて、装置が大型化するとともに、複雑化するという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、装置の大型化および複雑化を抑制しながら、測定できる粒径の範囲を大きくすることが可能な粒子画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面による粒子画像処理装置は、粒子懸濁液の流れを形成するフローセルと、粒子懸濁液の流れに光を照射する照射部と、照射された粒子懸濁液の流れの粒子の光像を拡大する対物レンズと、対物レンズで拡大された粒子の光像を結像する結像レンズと、結像レンズで結像された粒子像を撮像する撮像部とを備え、対物レンズは、拡大倍率の異なる対物レンズと交換可能に取り付けられている。
【0008】
この一の局面による粒子画像処理装置では、上記のように、照射部により照射された粒子の光像を拡大する対物レンズを、拡大倍率の異なる対物レンズと交換可能に取り付けることによって、拡大倍率の異なる複数の対物レンズを1つの対物レンズ分のスペースに配置することができるので、装置内に複数の対物レンズを配置するとともに、それらの複数の対物レンズを選択可能にする選択機構や切替可能にする切替機構を設ける場合に比べて、装置の大型化および複雑化を抑制することができる。また、対物レンズを、拡大倍率の異なる対物レンズと交換可能に取り付けることによって、照射部により照射された粒子の光像を所望の大きさに拡大することができるので、結像レンズで結像された粒子像を所望の大きさで撮像することができる。これにより、測定可能な粒径の範囲を大きくすることができる。
【0009】
上記一の局面による粒子画像処理装置において、好ましくは、対物レンズを保持するとともに、第1係合部を有する保持部材と、保持部材を支持するとともに、保持部材の第1係合部に係合する第2係合部を有する支持部材とをさらに備え、保持部材の第1係合部が支持部材の第2係合部にスライド移動されて係合されることにより、保持部材に保持された対物レンズが支持部材に交換可能に取り付けられる。このように構成すれば、保持部材を支持部材に対してスライド移動することにより、保持部材と支持部材との係合および係合状態の解除を行うことができるので、容易に、保持部材に保持された対物レンズの交換を行うことができる。その結果、対物レンズの交換作業を簡略化することができる。
【0010】
この場合、好ましくは、支持部材の第2係合部は、保持部材のスライド方向に沿って形成され、底面側よりも開放端側の方が溝幅が小さい溝部を含み、保持部材の第1係合部は、支持部材の溝部にスライド可能に係合するとともに、先端部の幅が根元部の幅よりも大きい凸部を含む。このように構成すれば、保持部材を支持部材に対してスライド移動させることによって、底面側よりも開放端側の方が溝幅が小さい支持部材の溝部に、先端部の幅が根元部よりも大きい保持部材の凸部が入り込むので、保持部材が支持部材に対してスライド方向と直交する方向に外れるのを防止することができる。これにより、保持部材の凸部が支持部材の溝部に係合された状態で保持部材が支持部材から脱落するのを防止することができる。
【0011】
上記保持部材および支持部材を含む構成において、好ましくは、支持部材は、対物レンズを保持する保持部材を支持部材に取り付ける際に、保持部材の支持部材に対する取付位置の位置決めを行うための位置決めピンを含む。このように構成すれば、保持部材を支持部材に対してスライドさせたときに、保持部材の位置決めを容易に行うことができるので、保持部材を支持部材に対して所定の位置で取り付けることができる。これにより、対物レンズの取付および取外しに起因する位置ずれを抑制することができる。
【0012】
上記第1係合部および第2係合部を含む構成において、好ましくは、保持部材の第1係合部は、支持部材の第2係合部に対する係合方向の先端位置に面取り部を有する。このように構成すれば、保持部材の係合方向の先端位置に形成された面取り部により、容易に、保持部材を支持部材に嵌め込むことができる。また、保持部材の係合方向の先端位置に面取り部を形成することにより、面取り部が保持部材の取付方向の基準としても機能するので、容易に、保持部材を支持部材に対して正しい取付方向で取り付けることができる。これにより、対物レンズが保持部材に対して誤った取付方向で取り付けられた場合に発生する位置ずれを抑制することができる。
【0013】
上記保持部材および支持部材を含む構成において、好ましくは、支持部材は、対物レンズが保持された保持部材を固定するための固定部材を含む。このように構成すれば、固定部材により、容易に、保持部材に保持された対物レンズの支持部材に対する固定を行うことができる。
【0014】
上記一の局面による粒子画像処理装置において、好ましくは、フローセルと照射部との間に配置されるとともに、照射部からの光を減光する第1減光フィルタをさらに備え、第1減光フィルタは、減光率の異なる減光フィルタと交換可能に取り付けられている。このように構成すれば、減光率の異なる複数の減光フィルタを1つの減光フィルタ分のスペースに配置することができるので、装置内に複数の減光フィルタを配置する場合に比べて、装置が大型化するのを抑制することができる。また、減光フィルタを、減光率の異なる減光フィルタと交換可能に取り付けることによって、対物レンズの交換などによる粒子像の拡大倍率の変化に伴って、撮像時の光強度の調節が必要になった場合にも、容易に、照射部からの光を所望の強度に調節することができる。
【0015】
上記一の局面による粒子画像処理装置において、好ましくは、結像レンズと撮像部との間に配置されるとともに、撮像倍率を変更するための複数のレンズを有するリレーレンズ系をさらに備える。このように構成すれば、リレーレンズ系のレンズを交換することにより、容易に、撮像倍率を変更することができる。
【0016】
この場合、好ましくは、第2減光フィルタをさらに備え、第2減光フィルタは、照射部からの光を減光可能な作動位置と、照射部からの光に影響を与えない退避位置とに移動可能である。このように構成すれば、第1減光フィルタに加えて、第2減光フィルタによっても照射部からの光を減光することができるので、対物レンズの交換による粒子像の拡大倍率の変化、および、リレーレンズ系のレンズの交換による撮像倍率の変化に伴って、撮像時の光強度の調節が必要になった場合にも、より容易に、照射部からの光を所望の強度に調節することができる。
【0017】
上記第1減光フィルタを含む構成において、好ましくは、フローセルと第1減光フィルタとの間に配置されるとともに、照射部から照射されて第1減光フィルタを通過した光をフローセルに集光するコンデンサレンズと、照射部とコンデンサレンズとの間に配置されるとともに、照射部からの光の開口数を調節するための開口絞りとをさらに備える。このように構成すれば、開口絞りにより、照射部から照射されて第1減光フィルタを通過した光の量を調節しながら、コンデンサレンズにより、光をフローセルに集めることができるので、容易に、フローセルに照射する光を調節することができる。
【0018】
上記一の局面による粒子画像処理装置において、好ましくは、撮像部により撮像された粒子の画像を解析するための処理を行う画像処理部をさらに備える。このように構成すれば、容易に、撮像部により撮像された粒子の画像の処理を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態による粒子画像処理装置を含む粒子画像分析システムの全体構成を示した斜視図であり、図2は、図1に示した粒子画像分析システムの全体構成を示した概略図である。図3〜図11は、図1に示した一実施形態による粒子画像処理装置の構造を説明するための図であり、図12は、図2に示した一実施形態による粒子画像処理装置のフローセル内の流体の流れを説明するための断面図である。また、図13および図14は、図1に示した一実施形態による粒子画像処理装置の動作を説明するための図である。まず、図1〜図3を参照して、本発明の一実施形態による粒子画像処理装置1を含む粒子画像分析システム100の全体構成について説明する。この粒子画像分析システム100は、ファインセラミックス粒子や、顔料、化粧品パウダーなどの粉体の品質を管理するために用いられる。この粒子画像分析システム100は、図1および図2に示すように、粒子画像処理装置1と、粒子画像処理装置1に電気的に接続される画像データ分析装置2とにより構成されている。
【0021】
粒子画像処理装置1は、液体中の粒子を撮像し、その粒子画像を分析するための処理を行うために設けられている。この粒子画像処理装置1により分析される粒子としては、たとえば、ファインセラミックス粒子、顔料、化粧品パウダーなどの粉体が挙げられる。また、粒子画像処理装置1は、図1に示すように、全体をカバー1aで覆われている。このカバー1aは、遮光の機能を有しており、内面に保温のための断熱材(図示せず)が取り付けられている。また、粒子画像処理装置1には、図3に示すように、カバー1aで覆われた粒子画像処理装置1の内部を所定の温度(約25℃)に保つためのペルチェ素子1bおよびファン1cが取り付けられている。上記したカバー1a、ペルチェ素子1bおよびファン1cにより、粒子画像処理装置1内を所定の温度(約25℃)に保つことによって、温度変化に起因する撮像時の焦点距離のずれや、後述するシース液の粘度や比重などの特性の変化を抑制することが可能である。
【0022】
また、画像データ分析装置2は、粒子画像処理装置1により処理された粒子画像を記憶および分析することにより、粒子の大きさや形状などを自動的に算出して表示するために設けられている。この画像データ分析装置2は、図1および図2に示すように、粒子画像を表示するための画像表示部(ディスプレイ)2aとキーボード2bとを有するパーソナルコンピュータ(PC)からなる。
【0023】
ここで、本実施形態による粒子画像処理装置1は、図2に示すように、粒子懸濁液の流れを形成する流体機構部3と、粒子懸濁液の流れに対して光を照射する照明光学系4と、粒子懸濁液の流れを撮像する撮像光学系5と、粒子画像の切り出し処理などを行う画像処理部6とを備えている。照明光学系4と撮像光学系5とは、流体機構部3を挟んで対向する位置に配置されている。流体機構部3は、透明な石英製のフローセル7と、フローセル7に対して粒子懸濁液およびシース液の供給を行う供給機構部8と、フローセル7を支持する支持機構部9とを含んでいる。フローセル7は、粒子懸濁液の流れを、粒子懸濁液の両側を流れるシース液の流れで挟み込むことにより、偏平な流れに変換する機能を有している。このフローセル7は、図2および図12に示すように、フローセル7の撮像光学系5側の外面の中央位置近傍に縦長形状の凹部7aを有している。フローセル7内を流れる粒子懸濁液は、フローセル7の凹部7aを介して撮像されるように構成されている。供給機構部8は、図2に示すように、フローセル7に粒子懸濁液を供給するためのサンプルノズル8a(図2および図12参照)を有する供給部8bと、供給部8bに粒子懸濁液を送り込む供給口8cと、シース液を収容するシース液容器8dと、シース液を一時的に貯留するシース液チャンバ8eと、フローセル7内を通過したシース液を貯留する廃液チャンバ8fとを有している。
【0024】
支持機構部9は、図4および図5に示すように、フローセル7(図5参照)を設置するための設置部10と、フローセル7が設置された設置部10を直動ガイド11に沿ってX方向に移動させる駆動機構部12と、直動ガイド11を支持する支持台13と、設置部10に互いに対向するように取り付けられた一対の検知片14(図4参照)と、センサブラケット15を介して支持台13に取り付けられるとともに、一対の検知片14を検知するための一対の光透過型のセンサ16とを含んでいる。駆動機構部12は、駆動源としてのモータ12aに接続される駆動軸12bと、駆動軸12bの回転駆動力を直線的な駆動力に変換した後、設置部10に伝達する駆動伝達部12cとにより構成されている。フローセル7が設置された設置部10を駆動機構部12によりX方向に移動可能に構成することにより、容易に、フローセル7内を流れる粒子懸濁液中の粒子に後述する撮像部70のCCDカメラ72の焦点距離を合わせることが可能になる。
【0025】
照明光学系4は、図2に示すように、照射部20と、照射部20よりもフローセル7(図5参照)側に設置される減光部30と、減光部30よりもフローセル7側に設置される集光部40とにより構成されている。照射部20は、光をフローセル7に向かって照射するために設けられている。この照射部20は、図4および図5に示すように、光源としてのランプ21と、視野絞り部22と、ランプ21および視野絞り部22を支持するブラケット23とを含んでいる。視野絞り部22は、後述する撮像部70による撮像可能な視野の範囲を調節するために設けられている。
【0026】
減光部30は、照射部20からの光を減光することにより、光の強度を調節するために設けられている。この減光部30は、図4に示すように、照射部20に対して固定的に取り付けられる固定減光部30aと、照射部20に対してY方向に移動可能に取り付けられる移動減光部30bと、固定減光部30aおよび移動減光部30bを支持するブラケット30cとを含んでいる。
【0027】
ここで、本実施形態では、固定減光部30aは、図4、図5および図10に示すように、固定減光フィルタ31と、2つの長ネジ32と、レール部材33と、位置決めピン34とを有している。この固定減光フィルタ31の底部には、図10に示すように、レール部材33に係合する凹状のレール係合部31aが形成されている。固定減光フィルタ31は、レール部材33に対して取外し可能に構成されることにより、減光率の異なる他の固定減光フィルタ31と交換可能に構成されている。2つの長ネジ32は、固定減光フィルタ31をレール部材33に取り付けるために設けられている。また、レール部材33には、2つの長ネジ32が挿入される2つのネジ孔33aが形成されている。位置決めピン34は、固定減光フィルタ31のレール部材33に対する位置決めとしての機能を有している。
【0028】
移動減光部30bは、図4および図5に示すように、移動減光フィルタ35と、移動減光フィルタ35を直動ガイド36(図5参照)に沿って移動させるための駆動機構部37と、移動減光フィルタ35に取り付けられた検知片38(図4参照)と、ブラケット30cに取り付けられるとともに、検知片38を検知するための光透過型のセンサ39とを含んでいる。移動減光フィルタ35は、固定減光部30aよりも照射部20側に設置されるとともに、照射部20からの光を減光可能な作動位置(図14参照)と、照射部からの光に影響を与えない退避位置(図4参照)とを移動可能に構成されている。駆動機構部37は、ピストンロッド37aを有する駆動源としてのエアシリンダ37bと、エアシリンダ37bのピストンロッド37aに連結部材37cを介して接続される駆動伝達部材37dとを有している。この駆動伝達部材37dは、移動減光フィルタ35に取り付けられている。なお、この移動減光フィルタ35は、上記した固定減光フィルタ31と異なり、減光率の異なる他の移動減光フィルタ35とは容易に交換できないように取り付けられている。
【0029】
集光部40は、減光部30により減光された光をフローセル7に向かって集光するために設けられている。この集光部40は、図4および図5に示すように、補助レンズ41と、補助レンズ41よりもフローセル7(図5参照)側に設置される開口絞り42と、開口絞り42よりもフローセル7側に設置されるコンデンサレンズ43と、開口絞り42の開口数を調節するための絞り調節部44と、ブラケット45とを含んでいる。開口絞り42は、照射部20側からの光の量を調節するために設けられている。
【0030】
撮像光学系5は、図2および図3に示すように、対物レンズ部50と、結像レンズ部60と、撮像部70とにより構成されている。対物レンズ部50は、照明光学系4からの光により照射されたフローセル7(図5参照)の内部を流れる粒子懸濁液中の粒子の光像を拡大するために設けられている。この対物レンズ部50は、図6〜図8に示すように、対物レンズ51と、対物レンズ51を保持するための対物レンズホルダ52と、対物レンズホルダ52を支持するためのブラケット53と、位置決めピン54と、固定ネジ55とを含んでいる。
【0031】
ここで、本実施形態では、対物レンズホルダ52により保持された対物レンズ51は、異なる拡大倍率を有する他の対物レンズ51と交換可能なように構成されている。なお、本実施形態による対物レンズ51としては、10倍の拡大倍率を有する対物レンズ51を用いている。対物レンズ51を保持した対物レンズホルダ52は、ブラケット53に対してスライド移動することにより、係合および係合状態の解除が可能なように構成されている。対物レンズ51には、図8に示すように、雄ネジ部51aが形成されている。また、対物レンズホルダ52には、対物レンズ51の雄ネジ部51aに対応する雌ネジ部52aが形成されている。これにより、対物レンズ51は、対物レンズホルダ52にネジ止めにより固定されている。また、対物レンズホルダ52には、図6および図7に示すように、ブラケット53に対する係合方向(図9の矢印B方向)の先端位置に面取り部52bが形成されている。対物レンズホルダ52に面取り部52bを形成することにより、対物レンズホルダ52をブラケット53に嵌め込みやすくなる。また、面取り部52bが対物レンズホルダ52の取付方向の基準としても機能するので、容易に、対物レンズホルダ52をブラケット53に対して正しい取付方向で取り付けることが可能である。これにより、対物レンズ51が対物レンズホルダ52に対して誤った取付方向で取り付けられた場合に発生する位置ずれを抑制することが可能である。
【0032】
また、ブラケット53には、図6および図9に示すように、対物レンズホルダ52のスライド方向に沿って形成され、底面側よりも開放端側の溝幅が大きい溝部53aが設けられている。また、対物レンズホルダ52には、図7および図9に示すように、ブラケット53の溝部53aにスライド可能に係合するとともに、先端部の幅が根元部の幅よりも大きい凸部52cが形成されている。対物レンズホルダ52をブラケット53に対してスライド移動させることによって、底面側よりも開放端側の方が溝幅が大きい対物レンズホルダ52の凸部52cが、ブラケット53の溝部53aに嵌め込まれるので、対物レンズホルダ52がブラケット53に対してスライド方向と直交する方向(図6の矢印C方向)に外れるのを防止することが可能である。これにより、対物レンズホルダ52の凸部52cがブラケット53の溝部53aに係合された状態で対物レンズホルダ52がブラケット53から脱落するのを防止することが可能になる。また、ブラケット53の上部には、図7および図8に示すように、溝部53aの内側面に達する固定ネジ55を挿入するためのネジ孔53bが形成されている。このネジ孔53bを介して、固定ネジ55の先端を、溝部53aに係合された対物レンズホルダ52の凸部52cの側面に当接させるように固定ネジ55を締め付けることにより、対物レンズホルダ52をブラケット53に固定することが可能である。
【0033】
位置決めピン54は、対物レンズ51を保持する対物レンズホルダ52をブラケット53に取り付ける際に、対物レンズホルダ52のブラケット53に対する取付位置の位置決めを行うために設けられている。ブラケット53に位置決めピン54を設けることによって、対物レンズホルダ52をブラケット53に対してスライドさせたときに、対物レンズホルダ52の位置決めが容易に行われるので、対物レンズホルダ52をブラケット53に対して所定の位置で取り付けることが可能である。これにより、対物レンズ51の取付および取外しに起因する位置ずれを抑制することが可能である。
【0034】
結像レンズ部60は、図3に示すように、対物レンズ部50で拡大された粒子の光像を結像するための結像レンズ61と、結像レンズ61を保持するブラケット62とを含んでいる。
【0035】
撮像部70は、結像レンズ部60で結像された粒子像を撮像するために設けられている。この撮像部70は、図3および図11に示すように、リレーレンズボックス71と、カメラ用ブラケット72a(図11参照)に取り付けられたCCDカメラ72と、リレーレンズボックス71を2つの直動ガイド73に沿って図11のY方向に移動させるための駆動機構部74と、撮像部70の底部を支持する支持板75と、撮像部70を覆う遮光カバー76と、リレーレンズボックス71に取り付けられた検知片77と、支持板75に取り付けられるとともに、検知片77を検知するための光透過型のセンサ78とを含んでいる。リレーレンズボックス71には、2倍の拡大倍率を有するレンズ71aと、0.5倍の拡大倍率を有するレンズ71bとが内蔵されている。また、駆動機構部74は、ピストンロッド74aを有する駆動源としてのエアシリンダ74bを有している。このエアシリンダ74bのピストンロッド74aは、リレーレンズボックス71に接続されている。
【0036】
次に、図2、図3および図12を参照して、本発明の一実施形態による粒子画像処理装置1の動作について説明する。まず、図2に示す供給口8cに供給された粒子懸濁液は、フローセル7の上方に位置する供給部8bに送り込まれる。そして、供給部8bの粒子懸濁液は、供給部8bに設けられたサンプルノズル8a(図12参照)の先端から少しずつフローセル7内に押し出される。また、シース液もシース液容器8dからシース液チャンバ8eおよび供給部8bを介してフローセル7内に送り込まれる。そして、粒子懸濁液は、図12に示すように、シース液に両側を挟み込まれることにより流体力学的に偏平な形状に絞られた状態で、フローセル7内を上方から下方に向かって流れる。そして、粒子懸濁液は、図2に示すように、フローセル7内を通過した後、廃液チャンバ8fを介して排出される。上記のように、流体機構部3のフローセル7で偏平な形状に絞られた粒子懸濁液の流れに対して、照明光学系4の照射部20から光を照射することによって、撮像光学系5において粒子の画像が対物レンズ部50を介して撮像部70により撮像される。また、粒子懸濁液の流れの偏平な面を撮像部70で撮像することにより、撮像される粒子の重心と、撮像部70のCCDカメラ72(図3参照)の撮像面との距離を実質的に一定にすることが可能である。これにより、粒子の大きさに関わらず常にピントの合った粒子像を得ることが可能である。そして、撮像部70のCCDカメラ72からの画像信号は、画像処理部6(図2参照)で処理された後、画像データ分析装置2に送られて、画像表示部2aに表示される。
【0037】
次に、図6および図9を参照して、対物レンズホルダ52に保持された対物レンズ51を、他の対物レンズホルダ52に保持された拡大倍率の異なる他の対物レンズ51に交換する場合の交換方法について説明する。まず、図6に示すブラケット53の上部に取り付けられている固定ネジ55を緩める。これにより、対物レンズ51を保持した対物レンズホルダ52のブラケット53に対する固定が解除される。そして、対物レンズ51を保持した対物レンズホルダ52をブラケット53に対して図6の矢印A方向にスライド移動させる。これにより、対物レンズ51を保持した対物レンズホルダ52をブラケット53から取り外す。次に、拡大倍率の異なる他の対物レンズ51を保持する他の対物レンズホルダ52の凹部52cをブラケット53の溝部53aに係合させるとともに、図9の矢印B方向にスライド移動させる。なお、先端部が根元部よりも幅の大きい対物レンズホルダ52の凸部52cが、底面側よりも開放端側の溝幅が小さいブラケット53の溝部53aに係合されるので、図6に示すように、対物レンズホルダ52がスライド方向(図9の矢印B方向)と直交する方向(図6の矢印C方向)に外れるのが防止される。そして、対物レンズホルダ52のスライド方向の先端面が位置決めピン54に当接した状態で、ブラケット53の上部に取り付けられた固定ネジ55を締め付けることにより、拡大倍率の異なる他の対物レンズ51を保持した対物レンズホルダ52のブラケット53への取り付けが完了する。これにより、対物レンズ51の拡大倍率の異なる他の対物レンズ51への交換が終了する。なお、本実施形態では、10倍の拡大倍率を有する対物レンズ51を、たとえば、5倍および20倍の拡大倍率を有する対物レンズ51に交換可能である。
【0038】
なお、対物レンズ51を拡大倍率の異なる他の対物レンズ51に交換した場合には、対物レンズ51の開口数が変化するので、集光部40の絞り調節部44(図4および図5参照)で開口絞り42の開口数を調節する必要がある。また、対物レンズ51を拡大倍率の異なる他の対物レンズ51に交換した場合には、撮像部70における光の量が変化するので、光量調節のため固定減光フィルタ31も減光率の異なる他の固定減光フィルタ31に交換する必要がある。次に、図10を参照して、固定減光フィルタ31を減光率の異なる他の固定減光フィルタ31に交換する場合の交換方法について説明する。まず、図10に示すように、固定減光フィルタ31に取り付けられている2つの長ネジ32を緩めることにより、固定減光フィルタ31をレール部材33から取り外す。そして、減光率の異なる他の固定減光フィルタ31をレール部材33に取り付ける。このとき、レール部材33に取り付けられた位置決めピン34に固定減光フィルタ31が当接することにより、固定減光フィルタ31を一定の位置に取り付けることが可能である。そして、固定減光フィルタ31に取り付けられた2つの長ネジ32を締め付ける。これにより、減光率の異なる他の固定減光フィルタ31のレール部材33への取り付けが完了する。このようにして、固定減光フィルタ31の減光率の異なる他の固定減光フィルタ31への交換が終了する。
【0039】
次に、図4、図11、図13および図14を参照して、撮像部70の撮像倍率の変更動作に連動して行われる移動減光フィルタ35の移動動作について説明する。まず、図11に示す撮像部70の駆動機構部74のエアシリンダ74bを駆動させることにより、ピストンロッド74aを介してリレーレンズボックス71を矢印D方向に移動させる。これにより、図13に示すように、撮像部70における撮像倍率が変更される。具体的には、リレーレンズボックス71に内蔵されている2倍の拡大倍率を有するレンズ71aから、0.5倍の拡大倍率を有するレンズ71bに変更される。0.5倍の拡大倍率を有するレンズ71bを用いた場合には、2倍の拡大倍率を有するレンズ71aを用いた場合の粒子像よりも明るい粒子像が、撮像部70のCCDカメラ72により撮像される。この場合には、2倍の拡大倍率を有するレンズ71aを用いた場合に使用していた固定減光フィルタ31による減光よりもさらに照射部20からの光を減光する必要がある。そこで、固定減光フィルタ31に隣接して設置されている移動減光フィルタ35を図4の矢印E方向に移動させる。これにより、図14に示すように、移動減光フィルタ35が、照射部20からの光を減光することが可能な位置に移動するので、固定減光フィルタ31のみならず、移動減光フィルタ35によっても照射部20からの光を減光することが可能になる。その結果、リレーレンズボックス71に内蔵されている2倍の拡大倍率を有するレンズ71aから、0.5倍の拡大倍率を有するレンズ71bに変更した場合にも、撮像部70のCCDカメラ72により撮像される粒子像を適度な明るさで撮像することが可能になる。
【0040】
本実施形態では、上記のように、照射部20により照射された粒子の光像を拡大する対物レンズ51を、拡大倍率の異なる他の対物レンズ51と交換可能に取り付けることによって、拡大倍率の異なる複数の対物レンズ51を1つの対物レンズ51分のスペースに配置することができるので、装置内に複数の対物レンズ51を配置するとともに、それらの複数の対物レンズ51を選択可能にする選択機構や切替可能にする切替機構を設ける場合に比べて、装置の大型化および複雑化を抑制することができる。また、対物レンズ51を、拡大倍率の異なる他の対物レンズ51と交換可能に取り付けることによって、照射部20により照射された粒子の光像を所望の大きさに拡大することができるので、結像レンズ61で結像された粒子像を所望の大きさで撮像することができる。これにより、測定可能な粒径の範囲を大きくすることができる。
【0041】
また、本実施形態では、上記のように、固定減光フィルタ31を、減光率の異なる他の固定減光フィルタ31と交換可能に取り付けることによって、減光率の異なる複数の固定減光フィルタ31を1つの固定減光フィルタ31分のスペースに配置することができるので、装置内に複数の固定減光フィルタ31を配置する場合に比べて、装置が大型化するのを抑制することができる。また、固定減光フィルタ31を、減光率の異なる他の固定減光フィルタ31と交換可能に取り付けることによって、対物レンズ51の交換などによる粒子像の拡大倍率の変化に伴って、撮像時の光強度の調節が必要になった場合にも、容易に、照射部20からの光を所望の強度に調節することができる。
【0042】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0043】
たとえば、上記実施形態では、対物レンズを保持する対物レンズホルダに凸部を形成するとともに、ブラケットに対物レンズホルダの凸部に係合する溝部を形成することにより、対物レンズホルダとブラケットとを係合させる例について説明したが、本発明はこれに限らず、ブラケットに凸部を形成するとともに、対物レンズホルダにブラケットの凸部に係合する溝部を形成することにより、対物レンズホルダとブラケットとを係合させてもよい。
【0044】
また、上記実施形態では、対物レンズを保持する対物レンズホルダをブラケットに対して水平方向にスライド移動させることにより取り付ける例について示したが、本発明はこれに限らず、対物レンズホルダをブラケットの上方から垂直方向にスライド移動させることにより、ブラケットに取り付けてもよい。また、スライド移動以外の方法で、ブラケットに対して対物レンズホルダを交換可能に取り付けるようにしてもよい。
【0045】
また、上記実施形態では、対物レンズおよび固定減光フィルタ31を、拡大倍率の異なる他の対物レンズおよび減光率の異なる他の固定減光フィルタ31に交換可能に構成する例について示したが、本発明はこれに限らず、対物レンズおよび固定減光フィルタ31のみならず、移動減光フィルタ35およびコンデンサレンズも異なる減光率の他の移動減光フィルタ35や異なる集光特性のコンデンサレンズに交換可能に構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施形態による粒子画像処理装置を含む粒子画像分析システムの全体構成を示した斜視図である。
【図2】図1に示した一実施形態による粒子画像処理装置を含む粒子画像分析システムの全体構成を示した概略図である。
【図3】図1に示した一実施形態による粒子画像処理装置の内部構造を示した平面図である。
【図4】図3に示した一実施形態による粒子画像処理装置を部分的に示した平面図である。
【図5】図4に示した一実施形態による粒子画像処理装置の正面図である。
【図6】図3に示した一実施形態による粒子画像処理装置の対物レンズ部を示した斜視図である。
【図7】図6中の矢印P方向から見た対物レンズ部を示した平面図である。
【図8】図7中の200−200線に沿った断面図である。
【図9】図6に示した一実施形態による粒子画像処理装置の対物レンズの交換方法を説明するための斜視図である。
【図10】図3に示した一実施形態による粒子画像処理装置の固定減光部を示した斜視図である。
【図11】図3に示した一実施形態による粒子画像処理装置の撮像部を示した平面図である。
【図12】図2に示した一実施形態による粒子画像処理装置のフローセル内の粒子懸濁液およびシース液の流れを説明するための断面図である。
【図13】図11に示した一実施形態による粒子画像処理装置の撮像部における撮像倍率の変更動作を説明するための平面図である。
【図14】図4に示した一実施形態による粒子画像処理装置の移動減光部の移動動作を説明するための平面図である。
【符号の説明】
【0047】
1 粒子画像処理装置
6 画像処理部
7 フローセル
20 照射部
31 固定減光フィルタ(第1減光フィルタ)
35 移動減光フィルタ(第2減光フィルタ)
42 開口絞り
43 コンデンサレンズ
51 対物レンズ
52 対物レンズホルダ(保持部材)
52b 面取り部
52c 凸部(第1係合部)
53 ブラケット(支持部材)
53a 溝部(第2係合部)
54 位置決めピン
55 固定ネジ(固定部材)
61 結像レンズ
70 撮像部
71 リレーレンズボックス(リレーレンズ系)
71a、71b レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子懸濁液の流れを形成するフローセルと、
前記粒子懸濁液の流れに光を照射する照射部と、
前記照射された粒子懸濁液の流れの粒子の光像を拡大する対物レンズと、
前記対物レンズで拡大された粒子の光像を結像する結像レンズと、
前記結像レンズで結像された粒子像を撮像する撮像部とを備え、
前記対物レンズは、拡大倍率の異なる対物レンズと交換可能に取り付けられている、粒子画像処理装置。
【請求項2】
前記対物レンズを保持するとともに、第1係合部を有する保持部材と、
前記保持部材を支持するとともに、前記保持部材の第1係合部に係合する第2係合部を有する支持部材とをさらに備え、
前記保持部材の第1係合部が前記支持部材の第2係合部にスライド移動されて係合されることにより、前記保持部材に保持された前記対物レンズが前記支持部材に交換可能に取り付けられる、請求項1に記載の粒子画像処理装置。
【請求項3】
前記支持部材の第2係合部は、前記保持部材のスライド方向に沿って形成され、底面側よりも開放端側の方が溝幅が小さい溝部を含み、
前記保持部材の第1係合部は、前記支持部材の溝部にスライド可能に係合するとともに、先端部の幅が根元部の幅よりも大きい凸部を含む、請求項2に記載の粒子画像処理装置。
【請求項4】
前記支持部材は、前記対物レンズを保持する保持部材を前記支持部材に取り付ける際に、前記保持部材の前記支持部材に対する取付位置の位置決めを行うための位置決めピンを含む、請求項2または3に記載の粒子画像処理装置。
【請求項5】
前記保持部材の第1係合部は、前記支持部材の第2係合部に対する係合方向の先端位置に面取り部を有する、請求項2〜4のいずれか1項に記載の粒子画像処理装置。
【請求項6】
前記支持部材は、前記対物レンズが保持された保持部材を固定するための固定部材を含む、請求項2〜5のいずれか1項に記載の粒子画像処理装置。
【請求項7】
前記フローセルと前記照射部との間に配置されるとともに、前記照射部からの光を減光する第1減光フィルタをさらに備え、
前記第1減光フィルタは、減光率の異なる減光フィルタと交換可能に取り付けられている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の粒子画像処理装置。
【請求項8】
前記結像レンズと前記撮像部との間に配置されるとともに、撮像倍率を変更するための複数のレンズを有するリレーレンズ系をさらに備える、請求項1〜7のいずれか1項に記載の粒子画像処理装置。
【請求項9】
第2減光フィルタをさらに備え、
前記第2減光フィルタは、前記照射部からの光を減光可能な作動位置と、前記照射部からの光に影響を与えない退避位置とに移動可能である、請求項8に記載の粒子画像処理装置。
【請求項10】
前記フローセルと前記第1減光フィルタとの間に配置されるとともに、前記照射部から照射されて前記第1減光フィルタを通過した光を前記フローセルに集光するコンデンサレンズと、
前記照射部と前記コンデンサレンズとの間に配置されるとともに、前記照射部からの光の開口数を調節するための開口絞りとをさらに備える、請求項7〜9のいずれか1項に記載の粒子画像処理装置。
【請求項11】
前記撮像部により撮像された粒子の画像を解析するための処理を行う画像処理部をさらに備える、請求項1〜10のいずれか1項に記載の粒子画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−84243(P2006−84243A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−267656(P2004−267656)
【出願日】平成16年9月15日(2004.9.15)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)