説明

粒子線照射処理における照射モデルデータの評価方法

生体内悪性組織の所定照射野の粒子線照射処理、特に陽子線治療における照射モデルの評価方法であって、a)照射されるべき所定照射野に関する診断データを得るステップと、b)所定照射野に関する診断データに基づいて、所定照射野における粒子範囲を計算するステップと、c)計算された粒子範囲に基づいて粒子線特性、および、任意選択的に、計算された線量深度分布を含む照射モデルを設計するステップと、d)照射モデルの粒子線特性と比べて高いビームエネルギーで、所定照射野にシングルペンシルビームショットを印加するステップと、e)シングルペンシルビームショットのビーム範囲を所定照射野の下流側で測定するステップと、f)測定されたビーム範囲と、照射モデルに基づいて計算された参照ビーム範囲とを比較するステップと、を備える、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子線照射処理における照射モデルデータの評価方法に関する。
【0002】
粒子線治療特に陽子線治療は、陽子ビームによるガンの放射線治療を用いる高度な処理方法である。粒子線治療は、通常光子ビームを用いて適用される従来的治療よりも優れているが、より費用のかかる代替治療である。この種の陽子線治療のためのガントリが、国際特許出願公開WO2001/00276およびWO2004/026401および欧州特許出願04017266.0においてそれぞれ公開され、提案されている。
【0003】
光子線治療と陽子線治療との特徴的な違いとして、光子ビームは患者の体全体を透過することが強調されるべきである。線量プロファイルは、皮下約1cmにおける最大線量と、その後の深度に基づく線量の単調な指数関数的低下とにより特徴づけられる。光子ビームと異なり、陽子ビームは、ビームの透過する範囲がよく定義され、その範囲の終端において最大線量を示すこと(いわゆるブラッグピーク)により特徴づけられる。陽子ビームのエネルギーを変えることにより、患者体内のブラッグピークの位置は容易に制御することができる。
【0004】
したがって、光子線治療の代わりに陽子線治療を用いるいくつかの説得力のある理由が存在する。深度方向におけるブラッグピークの位置が明確に特定できるため、陽子線治療は、ほとんどいかなる状況においても、従来的な光子を用いる治療と比較して、照射野((target volume、標的体積)に対する線量のより優れた位置決めを提供することができる。この方法を用いて、腫瘍周辺の健康な組織のよりよく保持することができる。この重要な点は、難しい臨床的状態、主にガンが敏感な解剖構造に包囲されている場合に用いられる。陽子ビームの磁気剛性率をより高めるためには、加速装置およびビームラインのための大きな設備を使用する必要があり、このことにより、一方でこの優れた治療法は従来的な治療法よりもより高価なものとなる。
【0005】
現代の放射線治療は好ましくは仰向けに横たわった患者の上に、いわゆるガントリを用いて異なる複数の方向からビームを印加することにより行われる。光子ガントリの直径はせいぜい2〜3mである。陽子ガントリは典型的には10mの長さであり、これには、重量のある剛性の支持体上に設けられた(全体で100トンを超える)陽子ビームラインが含まれる。陽子ガントリを患者テーブルの周りに回転させる範囲は、半径3〜6mのシリンダ状体積となる。
【0006】
陽子線治療における別の関心事項は、アクティブかつ動的なビームの送達、すなわちビーム走査によってビームを送達する方法である。走査は、小さな陽子ペンシルビーム(幅1cm未満)を用いて、横方向のビームに磁気偏向を加え、ビームエネルギーを動的に変化させて陽子範囲を変化させることにより行われる。その線量は、ブラッグピークショットで標的内のグリッドの各地点を連続的に嘗める(曝露時間またはビーム強度を変化させることによって局所的な線量を送達する)ことにより、任意の形状に対して3次元的にその通りにペインティングされる(照射野への線量の適合化)。
【0007】
この走査方法は、腫瘍部位をカバーする立体角において均一な陽子流を得るため、患者テーブルの前方に陽子ビームを散乱させる従来の方法と比較しなければならない。この場合、線量の整形は、コリメータを用いることにより横方向において行われるとともに、パッシブリッジフィルタまたは回転範囲シフタホイールのような他のアクティブモディファイアを用いることにより深度方向で行われる(ビーム内の物質量を空間的または時間的に変化させることにより拡散ブラッグピーク(SOBP)を形成する)。
【0008】
陽子ビーム走査によって、線量を照射野に対してよりよく適合化させることができる。パッシブな散乱方法の枠組みでは変調が固定化されている(ビームの横方向位置に基づいて変化させることができる走査における可変なSOBPと比べてSOBPが一定である)ことから、健康な組織に不要な100%線量が印加されることを避けることができる。線量の整形は、コンピュータ制御だけで完全に制御される。ビームを整形する個別のハードウェア(コリメータまたは補償器のような現場および患者に特定された装置)を組み立てて位置決めする必要は全く無い。走査によって、スタッフが治療室に入る必要なく、ビームを複数のビーム方向から連続的に患者に印加することができる(患者の治療効率の向上と、費用の低減が達成できる)。
【0009】
走査によって、線量分布を、(意図的な)不均一な線量分布を含む任意の形状に整形することができる(デフォルトでは散乱により均一な線量が送達される)。この手法は、いわゆる強度変調陽子線治療(IMPT)の送達のために不可欠であり、これは、ガントリ角とは無関係に治療全体の各陽子ペンシルビームの強度をまとめて最適化するとの考え(ビームスポットの同時最適化)に基づく。各ビーム方向から印加される構成成分である線量場は均一である必要はなく、合計のみ均一であればよい。
【0010】
本明細書作成時点では、スイス国、5232、Villigan、PSIにあるパウル・シェラー研究所の陽子ガントリ(陽子線治療施設;その最初のビームラインはそこでは「ガントリ1」として一般に知られている)は、陽子ビームのアクティブ走査で治療を実施可能でありかつルーチンに基づいたIMPTプランで患者の治療を提供可能な、世界で最初の(そして未だ唯一の)陽子線治療施設である。PSI施設の拡張において、ビーム走査のための改良されたガントリ(「ガントリ2」)が現在建設中である。
【0011】
しかし、新たなガントリでも、線量整形および正確な線量送達における種々の問題を解決しなければならない。これらの問題の1つは、種々の理由による器官の動きという課題である。したがって、治療中の器官の動きは、全ての種類の正確な放射線治療(光子を用いる動的な治療を含む)が直面する深刻な問題である。走査ビームの送達の間に照射野が動くと、線量分布の形状および均一性が、動的なビームの送達が全くできない程度まで、大きく乱される場合がある。これは、実際にPSIのガントリ1で治療されるケースを選定するための主要な基準である。器官の動きの問題により、現在PSIでは、骨構造に付随する動かない腫瘍のみをビーム走査法を用いて治療している。
【0012】
標的が反復的に走査可能であるように(標的の再ペインティング、再走査)、走査速度を増加させることによってかなりの改善を達成することができる。これは、新たなガントリ2の開発の主なポイントであり、相応に達成されている。胸部におけるような大きな動きの存在する器官の動きの問題に対処するために考えられた方法は、標的が所望の位置から離れたときにビームを切る(ゲート化ビーム送達)か、または、標的の移動にペンシルビームを直接追従させる(トラッキング)ことである。ゲート化の最も知られた例は、外部手段により測定される呼吸サイクル(胸壁の動き、吸気量の制御等)の所定の位相間隔においてビーム送達を同期させる方法である。これらの方法の欠点は、標的の動きの情報が間接的な指標のままであることである。
【0013】
この問題に関する1つの解決策が、欧州特許出願公開EP1871477A1に開示されている。この文献には、対象内の所定照射野の、強度調節された陽子線治療のためのシステムが開示されており、このシステムは:
a)陽子ビームを生成する陽子ビーム源と、
b)複数の陽子ビーム偏向および/または焦点ユニットと、
c)上記陽子ビームを上記対象の所定照射野を透過させるための出口を有し、断面走査出口領域を画定するビームノズルと、
d)上記ノズルの上流に配置されたビーム偏向磁石と、
e)X線管およびX線撮像装置であって、ここで、該X線管は上記ビーム偏向磁石内の照射チャネルと連結され、該照射チャネルは名目陽子ビーム方向の延長方向に沿って方向付けられ、これにより上記X線が上記陽子ビーム方向に沿って送達される、X線管およびX線撮像装置と、
を備える。
【0014】
直接標的の動きを観察し、任意選択的に、クリップでマーキングされる腫瘍についてトラッキングまたはゲート化を用いるオプションを容易にする、高い精度および高い信頼性を与えるこの方法では、パルス化(すなわち、数Hzで照射される)X線を使用することが有利である。これにより、3つの全ての目的(再走査、ゲート化、トラッキング)のために用いることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかし、陽子がブラッグピークの位置によって決定されるよく定義された範囲を有し、患者における当該範囲の計算が非常に重要であることから、陽子の送達精度に関しては別の大きな問題が未だ存在している。これは、計算された範囲におけるすべての誤差が性質上ほとんど系統的であるために、細分化において必ずしも除去されない場合に特にあてはまる。患者における陽子範囲の精度の1つの主要な決定要因は、計算に用いられるコンピュータ断層撮像法(CT)または磁気共鳴(MR)データの質、および、CTハウンズフィールド単位またはその任意の等価物を陽子阻止能に変換する較正曲線の質である。治療計画システムに現在用いられている較正は、「生物学的」試験サンプルに対して検証されるが、陽子範囲をin vivoで検証するための方法は現在存在しない。陽子線治療におけるパラメタとして、陽子範囲の重要性がパラメタとして得られれば、当該範囲のin vivoでの簡単かつ容易な測定における大きな前進となる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
したがって、本発明の課題は、粒子ビームの範囲をin vivoで検証する方法を提供することである。
【0017】
上記課題は、本発明に従って、生体内悪性組織の所定照射野の粒子線照射処理、特に陽子線治療における照射モデルの評価方法であって、
a)照射されるべき所定照射野に関する診断データを得るステップと、
b)上記所定照射野に関する診断データに基づいて、上記所定照射野における粒子範囲を計算するステップと、
c)計算された上記粒子範囲に基づいて粒子線特性、および、任意選択的に、計算された線量深度分布を含む照射モデルを設計するステップと、
d)上記照射モデルの粒子線特性と比べて高いビームエネルギーで、上記所定照射野にシングルペンシルビームショットを印加するステップと、
e)上記シングルペンシルビームショットのビーム範囲を上記所定照射野の下流側で測定するステップと、
f)上記測定されたビーム範囲と、上記照射モデルに基づいて計算された参照ビーム範囲とを比較するステップと、
を備える方法
により達成される。
【0018】
このようにして、陽子範囲プローブのコンセプトが具体化される。患者を完全に透過するビームによって、積分ブラッグピークおよび/またはその低下の測定が可能となる。ペンシルビーム「プローブ」の初期ビームエネルギーを知ることにより、測定結果を照射モデルの計算に適用された範囲と比較し、CTおよび較正の精度を向上させることができる。
【0019】
本発明の好適な実施形態には、CTハウンズフィールド単位を粒子阻止能に変換する較正曲線に基づいて粒子範囲を計算するステップが含まれる。もちろん、ステップf)における比較結果は、結果が予め定められたしきい値を超える場合、較正曲線の補正に用いることができる。
【0020】
本発明のさらに好適な実施形態には、所定照射野の不均一性に依存してシングルペンシルビームショットの侵入地点の位置を決定するステップが含まれる。したがって、平均参照軌跡(trajectory)よりも多少の不均一性を有する軌跡、たとえば、頭蓋冠に直交して頭蓋骨を通る、他の不均一性(たとえば、頭蓋骨の顔面側の耳鼻咽喉部分の骨)で阻害されない軌跡を用いる場合、粒子範囲のバイアス曲線を得ることができる。
【0021】
場合により、いくつかのブレ効果のため、測定された粒子範囲を決定することが困難な場合がありうる。したがって、好適な実施形態によれば、それに加えてまたはその代わりに、シングルペンシルビームショットのブラッグピークの低下を含むまたはブラッグピークのみからなるビーム範囲の測定が提供される。
【0022】
粒子範囲の決定に適した解像方法は、10mm未満、好ましくは5mm未満の空間解像度でのビーム範囲の測定によって実現することができる。適切な検出器はワイドレンジ型、たとえば、多層平行板検出器である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】多層平行板検出器を有する陽子ガントリの概略図である。
【図2】比較的均一な頭蓋骨の軌跡に関する、ハウンズフィールド単位の異なるモデルについてシミュレートした深度線量分布を示すグラフである。
【図3】図2と比べてさらに骨を含む、比較的均一な頭蓋骨の軌跡に関する、ハウンズフィールド単位の異なるモデルについてシミュレートした深度線量分布を示すグラフである。
【図4】図3と比べてさらに骨と空気腔を含む、比較的均一な頭蓋骨の軌跡に関する、ハウンズフィールド単位の異なるモデルについてシミュレートした深度線量分布を示すグラフである。
【図5】2つの陽子ビームエネルギーおよび各エネルギーについて3つの位置について測定された深度線量分布を示すグラフである。
【図6】ブラッグピークの範囲を決定する際の空間解像度の感度を識別するためのグラフである。
【図7】粒子線治療処理における照射モデルデータの評価方法のステップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の好適な実施形態について、以下図面を参照して詳細に説明する。
【0025】
図1は、多層平行板検出器を有する陽子ガントリ2の断面を概略的に示す。陽子ガントリ2の断面に関し、z軸に平行な陽子ビームを患者テーブル12上に置かれた患者10に向けて導く、最後段の90°偏向磁石6が示されている。陽子ガントリ2の設計の詳細、および、陽子ビーム8のアクティブ走査を伴いかつIMPTプランでの患者治療を提供しうる陽子線治療の施術の詳細については、上述の従来技術文献(本明細書中に参照により含まれる)が参照されるところである。
【0026】
陽子ビーム8の方向の患者10の下流側には、多層平行板検出器4が配置されている。検出器4はz軸方向で約2.5mmの空間解像度を有する多層ファラデーカップとして設計されている。
【0027】
したがって、本実施形態によれば陽子「プローブ範囲」のコンセプトが具体化され、これにより、CTハウンズフィールド単位の陽子阻止能への変換に基づく照射プランの精度についてのフィードバックが得られる。本実施形態では、シングルペンシルビームショット8が患者10に印加される。このショットの陽子ビームエネルギーは、陽子ビーム8が患者を完全に確実に透過し、検出器4においてブラッグピークを有する高いレベルにあるように、照射プランに従う(患者組織内にブラッグピークを有する)陽子範囲を考慮して注意深く選択される。このブラッグピークは検出器4において例示的に示されている。ペンシルビーム「プローブ」の初期エネルギーを知ることにより、水における陽子範囲に変換することができる。患者10の外側で、検出器4においてブラッグピークを測定することによって、陽子のその他の範囲を決定し、そしてこれにより陽子が通過した水と同等の物質の量を測定することがさらに容易となる。(照射プランの決定のためにどうしても必要な)患者のCTデータに基づいて同一プローブ(患者の照射野)をシミュレートし、シミュレーションと測定とを比較することにより、CTハウンズフィールド単位の変換および較正の精度を容易に評価することができる。したがって、この比較結果は、in vivoでの測定結果に対する変換および較正の特性の見積もりのためになされる必要のある補正についての最も価値ある情報である。もちろん、同様の測定は、人体の放射ビーム吸収とほぼ完全に等しい振る舞いを示すAlderson RANDO人体ファントムを用いて同様に実施することができる。
【0028】
図2〜4はハウンズフィールド単位の異なるモデルについてシミュレートされた深度線量分布を示す複数のグラフである。各図面中、4つのグラフが示されている。これらのグラフは、患者10の0%(不変)、1%、2%、3%のハウンズフィールド単位の変化についての深度線量分布をそれぞれ表している。x軸はcm単位の陽子範囲であり、y軸は任意の単位での線量である。図2は上側グラフのCT画像に示されるように、比較的均一な頭蓋骨の軌跡について得たものである。図3は、図2と比べてさらに骨を含む比較的均一な頭蓋骨の軌跡についてのシミュレーションである。図4は、図3と比べてさらに骨と空気腔を含む比較的均一な頭蓋骨の軌跡についてのシミュレーションである。図2〜4のグラフの比較から質的に観察される主要なことは、ハウンズフィールド単位の変換モデルの変化は陽子範囲を変化させるが、深度線量分布は維持されることである。最も大きい範囲の差は、より均一な領域に関して観察されている。
【0029】
したがって、ビーム軸zに対して垂直なスライスでの検出器4を用いた線量の1回測定により、ブラッグピークの形状およびブラッグピークの最大深度を決定することができ、これは、患者が正しく配置されているかという問題、および、照射プランの決定のための基礎となるCT画像の較正曲線を検証することに対する、陽子線治療において価値ある情報を与えるものである。
【0030】
図5は、2つの陽子エネルギー(177MeVおよび195Mevのエネルギー)および各エネルギーについての3つの位置(位置0「poz0」、−6mmずれた位置「pozm6」、+6mmずれた位置「pozp6」)について測定された深度線量分布を示す複数のグラフを示す。これらの測定は、Aldersonの頭蓋骨を用い、水での深度に関して測定結果を再計算することにより行った。
【0031】
図6は、ブラッグピークの範囲を決定する際の、空間解像度の感度を識別するための複数のグラフを示す。3つのグラフは、図表の上に説明されたような異なる方法で得られたが実質的な一致を示す。
【0032】
これにより、測定データの解像度および信頼性に関するいくつかの他の結論が得られる。第1に、Alderson RANDO人体ファントムに関して、図2〜4で述べたものと同じ傾向を観察することができる。工業規模で実現可能な空間解像度に関して、ブラッグピークの正確な決定には、1mm未満の範囲の比較的高い解像度が必要とされる。この測定によって、ブラッグピークの低下は測定の解像度にさらに依存しないものであることが示された。陽子範囲の正確な比較のため、最大線量の25%〜75%の範囲の値が有利であると認められた。ブラッグピークの範囲ではなくブラッグピークの低下の範囲に基づいて決定する場合、解像度と実現性の良いバランスおよび検出器の費用の観点から、1cm未満の感度が、好ましくは5mm未満の解像度のために必要とされる。
【0033】
図7は、粒子線治療処理における照射モデルデータの評価方法の実施形態の例を示す。この方法は、以下のステップS1からSxを含んでいる。
【0034】
ステップS1:患者の悪性組織の所定照射野の陽子線治療のため、最初に、診断データたとえばCTおよび/またはMRIおよび/または超音波(US)および/または光子診断データを、照射されるべき該所定照射野について得る必要がある。
【0035】
ステップS2:該所定照射野についての診断データに基づいて、該所定照射野における粒子範囲が計算される。この計算のため、たとえば、CTハウンズフィールド単位が較正曲線により粒子阻止能に変換される。
【0036】
ステップS3:該照射野について特定された粒子ビーム特性を含む照射モデルまたは照射治療プランが、計算された粒子範囲および、任意選択的に、計算された深度線量分布に基づいて設計される。
【0037】
ステップS4:シングルペンシルビームショットが、照射モデルの粒子ビーム特性と比べて高いビームエネルギーで、人体に印加される。
【0038】
ステップS5:該シングルペンシルビームショットのビーム範囲が、該所定照射野の下流側で測定される。
【0039】
ステップS7:測定されたビーム範囲が、照射モデルに基づいて計算された基準ビーム範囲と比較される。この比較によって、陽子線治療の提供者は照射モデルに基づいて現在の計算の基礎を検証することができる。比較結果は、実際に、計算されたビームの「挙動」とin vivoで得られた挙動と適合させるために現在の計算基礎を補正するべきか否かを決定する基礎となる。適合化がなされた場合、方法はステップS2に戻り、測定結果から得られた補正に基づいて陽子範囲が再計算される。この再計算はたとえば、異なるハウンズフィールド単位の変換度に関するグラフを示す図2〜4に示されたような、ハウンズフィールド変換の適合化により行うことができる。
【符号の説明】
【0040】
2 陽子ガントリ、 4 検出器、 6 偏向磁石、 8 陽子ビーム、 10 人体、 12 患者ベッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体内悪性組織の所定照射野の粒子線照射処理、特に陽子線治療における照射モデルの評価方法であって、
a)照射されるべき所定照射野に関する診断データを得るステップと、
b)前記所定照射野に関する診断データに基づいて、前記所定照射野における粒子範囲を計算するステップと、
c)計算された前記粒子範囲に基づいて粒子線特性、および、任意選択的に、計算された線量深度分布を含む照射モデルを設計するステップと、
d)前記照射モデルの粒子線特性と比べて高いビームエネルギーで、前記所定照射野にシングルペンシルビームショットを印加するステップと、
e)前記シングルペンシルビームショットのビーム範囲を前記所定照射野の下流側で測定するステップと、
f)前記測定されたビーム範囲と、前記照射モデルに基づいて計算された参照ビーム範囲とを比較するステップと、
を備える、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記粒子範囲を、CTハウンズフィールド単位を粒子阻止能に変換する較正曲線に基づいて計算する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ステップf)における比較結果を、当該結果が予め定めたしきい値を超えるとき、前記構成曲線の補正に用いる、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記シングルペンシルビームショットの侵入点の位置を、前記所定照射野の不均一性に依存して定める、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記ビーム範囲の測定は、ブラッグピークおよび/または前記シングルペンシルビームショットのブラッグピークの低下の測定を含む、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記ビーム範囲の測定を、10mm未満、好ましくは5mm未満の空間解像度で行う、請求項5記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2012−520703(P2012−520703A)
【公表日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−500158(P2012−500158)
【出願日】平成22年1月8日(2010.1.8)
【国際出願番号】PCT/EP2010/050157
【国際公開番号】WO2010/105858
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(501494414)パウル・シェラー・インスティトゥート (19)
【Fターム(参考)】