説明

粗炭化水素から含酸素化合物を除去する方法および精製炭化水素の製造方法

【課題】粗炭化水素からエーテル類やアルコール類等の含酸素化合物を除去する方法および該方法を用いた精製炭化水素の製造方法を提供する。
【解決手段】含酸素化合物を不純物として含む粗炭化水素から含酸素化合物を除去する方法であって、該粗炭化水素を、活性アルミナおよびゼオライトの混合物からなるハイブリッド系吸着剤を充填した吸着カラム(i)に接触させ、次いで、ゼオライト系吸着剤を充填した吸着カラム(ii)に接触させることを特徴とする粗炭化水素から含酸素化合物を除去する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粗炭化水素から含酸素化合物を除去する方法および該方法を用いた精製炭化水素の製造方法に関する。詳しくは、本発明は粗炭化水素からアルコール類、エーテル類等の含酸素化合物を除去する方法および該方法を用いた精製炭化水素の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天然ガス、精油所ガスまたは特定の石油留分などの原料をスチームクラッカーなどで熱分解または熱/接触分解させて、分解生成物を後処理すると、ブタジエン、ブタン類、n
−ブテン類およびイソブテンなどの炭化水素を含有する粗炭化水素が得られる。
【0003】
これらの粗炭化水素には、前述した炭化水素に加えて、種々の含酸素化合物や含窒素化合物が不純物として含まれている。これらの不純物の種類および量は、使用される原料の種類や起源、あるいは分解反応の技術的条件に依存する。また不純物の量は、粗炭化水素の更なる後処理によっても影響を受ける。
【0004】
粗炭化水素の用途の一つは、粗炭化水素中に含まれるn−ブテン類のメタセシス反応によるプロピレンの合成である。メタセシス反応を行う際、使用される粗炭化水素中に不純物として含まれる含酸素化合物や含窒素化合物等は、メタセシス触媒の失活の原因となるので、事前に除去しておくことが必要である。
【0005】
ところで、粗炭化水素中に含まれる水、アルコール、窒素化合物、硫黄化合物およびハロゲン化合物をアルミナもしくはゼオライトのような固体吸着剤上への吸着により除去する方法として、特許文献1には、炭化水素混合物をニッケル含有触媒によりオリゴマー化するに当たり、炭化水素混合物をオリゴマー化前に、4〜15Åを上回る孔径を有するゼオライト(モレキュラーシーブ)上に導き、触媒毒となる水、アルコール、プロピレンおよびブタジエンなどの多重不飽和炭化水素を除去する方法が記載されている。
【0006】
また、特許文献2には、少なくとも10質量%のイソブテンを含んだ物質流中の含酸素化合物や含窒素化合物の含量を減少させる方法として、該物質流を平均孔径0.3〜1.5nmの酸不含ゼオライトの固定床に導通させることが記載されている。
【0007】
しかしながら、これらの方法では極性の高いアルコール類と極性の低いエーテル類とが共存する粗炭化水素からアルコール類、エーテル類等の含酸素化合物を除去するには未だ不充分であり、改良の余地があった。
【特許文献1】特許第2726138号公報
【特許文献2】特表2007−508254号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、粗炭化水素からエーテル類やアルコール類等の含酸素化合物を除去する方法および該方法を用いた精製炭化水素の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、活性アルミナおよびゼオライトの混合物からなるハイブリッド系吸着剤を充填した吸着カラム(i)と、ゼオライト系吸着剤を充填した吸着カラム(ii)とを用いて、粗炭化水素をハイブリッド系吸着剤
層、ゼオライト系吸着剤層の順に接触させると、粗炭化水素中の含酸素化合物が効率的に除去されることを見出し、発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明には以下の(1)〜(6)の事項が含まれる。
(1)含酸素化合物を不純物として含む粗炭化水素から含酸素化合物を除去する方法であって、該粗炭化水素を、活性アルミナおよびゼオライトの混合物からなるハイブリッド系吸着剤を充填した吸着カラム(i)に接触させ、次いで、ゼオライト系吸着剤を充填した吸着カラム(ii)に接触させることを特徴とする粗炭化水素から含酸素化合物を除去する方法。
(2)前記ハイブリッド系吸着剤が、活性アルミナ20〜80重量%およびゼオライト80〜20重量%(活性アルミナおよびゼオライトの合計は100重量%)の混合物であることを特徴とする(1)に記載の方法。
(3)前記ハイブリッド系吸着剤とゼオライト系吸着剤との使用割合が容積比でハイブリッド系吸着剤:ゼオライト系吸着剤=1:1〜8:1であることを特徴とする(1)または(2)に記載の方法。
(4)含酸素化合物を不純物として含む粗炭化水素から含酸素化合物を除去して精製炭化水素を製造する方法であって、該粗炭化水素を、活性アルミナおよびゼオライトの混合物からなるハイブリッド系吸着剤を充填した吸着カラム(i)に接触させ、次いで、ゼオライト系吸着剤を充填した吸着カラム(ii)に接触させることを特徴とする精製炭化水素の製造方法。
(5)前記ハイブリッド系吸着剤が、活性アルミナ20〜80重量%およびゼオライト80〜20重量%(活性アルミナおよびゼオライトの合計は100重量%)の混合物であることを特徴とする(4)に記載の精製炭化水素の製造方法。
(6)前記ハイブリッド系吸着剤とゼオライト系吸着剤との使用割合が容積比でハイブリッド系吸着剤:ゼオライト系吸着剤=1:1〜8:1であることを特徴とする(4)または(5)に記載の精製炭化水素の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、粗炭化水素から、メタセシス反応を用いてプロピレンを合成する際等に触媒毒となる含酸素化合物が効率的に除去された精製炭化水素を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の粗炭化水素から含酸素化合物を除去する方法は、含酸素化合物を不純物として含む粗炭化水素から含酸素化合物を除去する方法であって、該粗炭化水素を、活性アルミナおよびゼオライトの混合物からなるハイブリッド系吸着剤を充填した吸着カラム(i)に接触させ、次いで、ゼオライト系吸着剤を充填した吸着カラム(ii)に接触させることを特徴としている。
【0013】
本発明で用いられる粗炭化水素としては、ブタジエン、ブタン類、n−ブテン類およびイソブテンなどを主成分とするC4留分、C4ラフィネート−1、C4ラフィネート−2などが挙げられる。C4留分とは、重質炭化水素の流動床接触分解(FCC)などにより得られる軽質な生成物のことであり、ガソリンおよびガスオイルなどの主な留分以外の、主にイソブタン、イソブテン、n−ブテンおよびブタンからなり、かつ、微量の1,3−ブタジエンおよびアセチレン系炭化水素を含む炭化水素留分をいう。また、C4ラフィネート−1とはクラッカーで生産されたC4留分からブタジエンを抽出し残ったものをいい、C4ラフィネート−2とはC4ラフィネート−1からイソブテンを抽出し残ったものをいう。なお、C4留分やC4ラフィネート等以外に用いられる粗炭化水素としては、C5留分、C6留分、C7留分を主成分とする粗炭化水素などが挙げられる。
【0014】
本発明で用いられる粗炭化水素には含酸素化合物が不純物として含まれる。この含酸素化合物は通常C4留分、C4ラフィネート−1およびC4ラフィネート−2に不純物として含まれるものであり、例えば、水;メタノール、エタノールおよびt−ブタノールなどのアルコール類;ジメチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、イソプロピル−t−ブチルエーテルおよびイソブチル−t−ブチルエーテルなどのエーテル類が挙げられる。
【0015】
本発明で用いられる粗炭化水素中のエーテル類の含量は通常50〜200ppmであり、上限としては150ppm以下であることが好ましい。エーテル類の含量が上記の範囲を超えると、含酸素化合物を除去するためにカラムが大型化する必要があり実用的でない場合や、あるいはカラムによる除去が不充分となる場合がある。
【0016】
なお、本発明において、粗炭化水素から含酸素化合物を吸着除去して得られたものが精製炭化水素である。
本発明で用いられるハイブリッド系吸着剤およびゼオライト系吸着剤について以下に説明する。
【0017】
本発明で用いられるハイブリッド系吸着剤は、活性アルミナおよびゼオライトの混合物からなり、活性アルミナおよびゼオライトの合計100重量%中、通常、活性アルミナ20〜80重量%およびゼオライト80〜20重量%、好ましくは活性アルミナ30〜70重量%およびゼオライト70〜30重量%の混合物からなる。ハイブリッド系吸着剤は、市販品を用いてもよい。ハイブリッド系吸着剤を充填した吸着カラム(i)を、後述するゼオライト系吸着剤を充填した吸着カラム(ii)の前に配置することによって、粗炭化水素中に不純物として含まれる含酸素化合物のうち、水およびアルコールなどの極性の高い成分を除去することができる。
【0018】
ハイブリッド系吸着剤を構成する活性アルミナとは、水酸化アルミナを結晶性の低い多孔質の酸化アルミニウムに転移させて吸着能力を持たせたものをいい、比表面積および細孔容積が高く、優れた吸着能力を有する。活性アルミナは、市販品を用いてもよいし、公知の方法により製造してもよい。
【0019】
上記活性アルミナの細孔径は通常1.5〜数10nmである。活性アルミナの平均粒径
および細孔径が上記の範囲であると、水やアルコールなどの極性の高い不純物を効率的に吸着させることができるので好ましい。
【0020】
好ましい活性アルミナとしては特に制限されるものではないがγ−アルミナなどが挙げられる。
ハイブリッド系吸着剤を構成するゼオライトは、公知の方法により合成的に製造することができる。公知の方法としては、例えば、「Ullmanns Enzyklopaedied. Techn. Chemie」、1983年、第4版、第17巻、p. 9-17に記載された方法などが挙げられる。ゼオライトの製造方法としては、アルミン酸ナトリウム(NaAlO3)水溶液とケイ酸ナトリウム水溶液と水酸化ナトリウム水溶液とを原料として、加熱、数時間保持して結晶化させてゼオライト粉末を得る。次に、得られたゼオライト粉末と、粘度鉱物、シリカゾルもしくはアルミナゾルもしくはこれらに有機物を添加したもの等である結合剤(バインダー)とを混合し、造粒、焼結することにより得る。
【0021】
上記ゼオライトの平均細孔径は、通常0.2〜1nm、好ましくは0.5〜1nmである。ゼオライトの平均細孔径が上記の範囲であると、エーテル類を含む種々の不純物を効率的に吸着させることができるので好ましい。なお、平均細孔径は結晶構造により確定され、結晶構造はレントゲン構造データなどから計算することができる。
【0022】
好ましいゼオライトとしては特に制限されるものではないが、ゼオライトX、YおよびAなどが挙げられ、特に好ましくはゼオライトXなどが挙げられる。
本発明で用いられるゼオライト系吸着剤は、ハイブリッド系吸着剤層を構成するゼオライトとしてすでに述べたものと同じものを用いることができる。従来のゼオライト吸着層のみを充填した吸着カラムでは、水およびアルコールなどの不純物が多く含まれていると、これらの不純物がゼオライト吸着剤と親和するために、エーテル類などの極性の低い不純物を充分に除去することができなかったが、吸着カラム(ii)を吸着カラム(i)の後に配置することで、ハイブリッド系吸着剤層である吸着カラム(i)で水およびアルコールなどが先ず吸着除去されるので、エーテル類をゼオライト吸着剤層である吸着カラム(ii)で効率的に吸着させることができる。
【0023】
本発明で用いられるゼオライト系吸着剤の粒径には特に制限はないが、平均細孔径は通常0.2〜1nm、好ましくは0.5〜1nmである。ゼオライト系吸着剤の平均孔径が上記の範囲であると、上述した粗炭化水素中の種々の不純物を効率的に除去することができる。
【0024】
吸着カラム(i)および吸着カラム(ii)に各々充填されたハイブリッド系吸着剤およびゼオライト系吸着剤の使用割合は、容積比で通常、ハイブリッド系吸着剤:ゼオライト系吸着剤=1:1〜8:1、好ましくは1:1〜4:1である。ゼオライト系吸着剤がハイブリッド系吸着剤の使用割合(容積比)より多くなる場合、あるいはハイブリッド系吸着剤に対するゼオライト系吸着剤の使用割合(容積比)が上記の範囲よりも小さくなる場合、粗炭化水素中の不純物の除去能力が低下する場合がある。前者の理由としては、ゼオライト系吸着剤は不飽和炭化水素も吸着するため、吸着剤上で不飽和炭化水素が重合して細孔を潰すことがあり、これを特定量以上の活性アルミナを使用することにより防止する必要があるが、この活性アルミナを含むハイブリッド系吸着剤が上記の割合で必要であることが挙げられる。後者の理由としては、ゼオライト系吸着剤の量が少なすぎるため、粗炭化水素中の不純物の吸着能力が低下することが挙げられる。
本発明で用いられる吸着カラムは、活性アルミナおよびゼオライトの混合物からなるハイブリッド系吸着剤を充填した吸着カラム(i)と、ゼオライト系吸着剤を充填した吸着カラム(ii)とからなるものである。
【0025】
ハイブリッド系吸着剤およびゼオライト系吸着剤は、固定床式の吸着カラム中に充填される。吸着カラム(i)および吸着カラム(ii)は、垂直に配置してもよいし、傾斜させてまたは水平に配置してもよいが、好ましくは垂直に配置することが望ましい。また、粗炭化水素流は重力の方向へまたは重力に対向して導通させる。流動方向における固定床の長さは、固定床の(最長)直径の2倍以上であることが好ましい。また、上流側に吸着カラム(i)を配置し、下流側に吸着カラム(ii)を配置させて、複数直列接続させて用いてもよい。
【0026】
粗炭化水素は、吸着カラム(i)においてハイブリッド系吸着剤と接触され、水やアルコール類、およびエーテル類の一部などが主に吸着され、吸着カラム(ii)においてゼオライト系吸着剤と接触され、エーテル類が吸着される。
【0027】
粗炭化水素流の線速度は、通常0.001〜0.005m/秒、好ましくは0.002〜0.003m/秒である。ここで、線速度とは、体積流量(m3/秒)を吸着層の断面積(単位;m2)で除した値である。
【0028】
粗炭化水素からエーテル類などの不純物を吸着処理するときの吸着カラム(i)および吸着カラム(ii)の温度は、粗炭化水素が凝固または気化しない温度であれば特に制限
はされないが、10〜70℃であることが好ましい。
【0029】
また、吸着処理の圧力は、粗炭化水素が気化しない程度の圧力であれば特に制限はされない。
吸着処理の運転期間終了後の吸着カラム(i)中のハイブリッド系吸着剤および吸着カラム(ii)中のゼオライト系吸着剤は、表面がエーテル類等の不純物で吸着されており、粗炭化水素をさらに導通させても不純物を充分に吸着除去することができない。このような状態のハイブリッド系吸着剤およびゼオライト系吸着剤は、150〜250℃の温度で、周囲圧力または減圧下に、窒素などの不活性ガスを流通させることにより再生することができる。典型的な再生サイクルは24〜48時間である。
【0030】
なお、少なくとも2系列の吸着カラムを設けておき、1系列目のカラムがエーテル類等を吸着している間に、2系列目のカラムを再生することができると効率の面で好都合である。すなわち、第一のカラム(吸着カラム(i)+吸着カラム(ii))の吸着剤が不純物で飽和された場合には、粗炭化水素流を第二の吸着カラム(吸着カラム(i)+吸着カラム(ii))の方に迂回させ、第二の吸着カラムの吸着剤がエーテル類等を吸着している間に、第一のカラムの吸着剤を再生すると効率的である。
【0031】
本発明による吸着処理後に、精製炭化水素中に含まれるエーテル類の濃度は通常1ppm未満である。
本発明の精製炭化水素の製造方法は、含酸素化合物を不純物として含む粗炭化水素から含酸素化合物を除去することにより精製炭化水素を得る方法であり、該粗炭化水素を、活性アルミナおよびゼオライトの混合物からなるハイブリッド系吸着剤を充填した吸着カラム(i)に接触させ、次いで、ゼオライト系吸着剤を充填した吸着カラム(ii)に接触させることを特徴としている。
【0032】
上記の精製炭化水素の製造方法において、ハイブリッド系吸着剤は、活性アルミナ20〜80重量%およびゼオライト80〜20重量%(活性アルミナおよびゼオライトの合計は100重量%)の混合物であることが好ましく、ハイブリッド系吸着剤とゼオライト系吸着剤との使用割合は容積比でハイブリッド系吸着剤:ゼオライト系吸着剤=1:1〜8:1であることが好ましい。
【0033】
〔実施例〕
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0034】
[実施例1]
エーテル類としてメチル−t−ブチルエーテル(MTBE)およびジメチルエーテル(DME)を、アルコール類としてt−ブチルアルコール(TBA)およびメタノールを表1に示す濃度で含む粗ヘキサンを、ハイブリッド系吸着剤(UOP社/ユニオン昭和社製
AZ−300)を充填した吸着カラム(i)(高さ500mm、内径25mm)に導通させた。室温、圧力約0.14MPaGおよび線速度0.003m/秒(流速95ml/分)の条件下で、通液後10〜60分ごとにカラム出口から流出した精製ヘキサンをサンプリングし、精製ヘキサン中に含まれるMTBE、DME、TBAおよびメタノールの濃度を測定した。MTBEおよびDMEはガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)で測定し
、TBAおよびメタノールはガスクロマトグラフ分析計(GC)で測定した。
【0035】
結果を図1に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
粗ヘキサンを導通させると、極性の低いMTBEは、導通後20分でカラムから流出した。図1に示すグラフの曲線より、200分を超えた後、流出した精製ヘキサン中の含酸素化合物の濃度は50ppmになる。
【0038】
エーテル類でも、MTBEより分子サイズが小さいDMEは、MTBEよりもカラム出口から流出し始めるまでの時間はかかったが、90分後にはカラムから流出し、150分後には1ppm以上流出した。
【0039】
一方、エーテル類より極性が高いTBAおよびメタノールはカラムから流出しなかった。
図1に示すように、ハイブリッド系吸着剤を充填した吸着カラム(i)ではアルコール類が優先的に除去され、アルコール類より極性が低いエーテル類、特に分子量が小さいエーテル類は、アルコールの共存下では除去されにくいことがわかる。
【0040】
次に、吸着カラム(i)に導通後200分を経過した後に採取した、50ppmのMTBEと微量のDMEとを含む粗ヘキサンを、ゼオライト系吸着剤(東ソー社製F−9;平均細孔径1nm)を充填した吸着カラム(ii)(高さ500mm、内径25mm)に導通させた。室温、圧力約0.14MPaGおよび線速度0.003m/秒(流速95ml/分)の条件下で流通させ、10〜30分ごとにカラム出口から流出した精製ヘキサンをサンプリングし、精製ヘキサン中に含まれるMTBEおよびDMEの濃度を測定した。MTBEおよびDMEはガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)で測定した。
【0041】
結果を図2に示す。
図2に示すように、導通後90分経過するまでは、MTBEはカラムから流出しなかった。
【0042】
[比較例1]
表2に示す濃度で、エーテル類としてMTBEおよびDMEを含み、アルコール類としてTBAおよびメタノールを含む粗ヘキサン1と、MTBEのみ含む粗ヘキサン2とを吸着カラム(i)のみに導通させた。10〜30分ごとに吸着カラム(i)から流出した精製ヘキサン1および精製ヘキサン2をサンプリングし、精製ヘキサン1および精製ヘキサン2中に含まれるMTBE、DME、TBAおよびメタノールの濃度を実施例1と同様にして測定した。
【0043】
結果を図3に示す。
【0044】
【表2】

【0045】
図3から明らかなように、粗ヘキサン1を流通させると、極性の低いエーテル類(MTBE)は導通後10分を超える頃から吸着カラム(i)から流出し始めたが、極性の高いアルコール類(TBAおよびメタノール)は流出しなかった。この結果から、アルコール類およびエーテル類共存下で、ハイブリッド系吸着剤のみを用いて吸着処理を行った場合、アルコール類が優先的に除去され、エーテル類を充分に除去することができないことがわかる。
【0046】
MTBEのみを含む粗ヘキサン2では、MTBEの濃度が粗ヘキサン1中のMTBEの濃度の2倍であるにもかかわらず、導通後30分までは、MTBEがカラムから流出しなかった。すなわち、図3から、ハイブリッド系吸着剤には一定量のエーテル類を吸着する能力があり、アルコール不存在下であれば、アルコール存在下の場合と比べてエーテル類を多く除去することができることがわかる。
【0047】
[比較例2]
表3に示す濃度で、エーテル類としてMTBEおよびDMEを含み、アルコール類としてTBAおよびメタノールを含む粗ヘキサン1と、エーテル類としてMTBEのみ含む粗ヘキサン2とを吸着カラム(ii)のみに導通させた。10〜30分ごとに吸着カラム(ii)から流出した精製ヘキサン1および精製ヘキサン2をサンプリングし、精製ヘキサン1中に含まれるMTBE、DME、TBAおよびメタノールの濃度を実施例1と同様にして測定した。
【0048】
結果を図4に示す。
【0049】
【表3】

【0050】
図4から明らかなように、粗ヘキサン1を流通させると、極性の低いエーテル類(MTBE)は導通後60分を超える頃から吸着カラム(ii)から流出し始めたが、極性の高いアルコール類(TBAおよびメタノール)は流出しなかった。この結果から、アルコール類およびエーテル類共存下で、ゼオライト系吸着剤のみを用いて吸着処理を行った場合も、アルコール類が優先的に除去され、エーテル類を充分に除去することができないことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明により得られる精製炭化水素はメタセシス反応によるプロピレン製造の原料として好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は実施例1において粗ヘキサンをハイブリッド系吸着剤を充填した吸着カラム(i)のみに導通させたときの精製ヘキサン中のMTBE、DME、TBAおよびメタノールの濃度を示す図である。
【図2】図2は実施例1において粗ヘキサンを吸着カラム(i)に導通させ、次いで、ゼオライト系吸着剤を充填した吸着カラム(ii)に導通させたときの精製ヘキサン中のMTBEの濃度を示す図である。
【図3】図3は比較例1において粗ヘキサンをハイブリッド系吸着剤を充填した吸着カラム(i)のみに導通させたときの精製ヘキサン中のMTBE、DME、TBAおよびメタノールの濃度を示す図である。
【図4】図4は比較例2において粗ヘキサンをゼオライト系吸着剤を充填した吸着カラム(ii)のみに導通させたときの精製ヘキサン中のMTBE、DME、TBAおよびメタノールの濃度を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
含酸素化合物を不純物として含む粗炭化水素から含酸素化合物を除去する方法であって、該粗炭化水素を、
活性アルミナおよびゼオライトの混合物からなるハイブリッド系吸着剤を充填した吸着カラム(i)に接触させ、次いで、
ゼオライト系吸着剤を充填した吸着カラム(ii)に接触させることを特徴とする粗炭化水素から含酸素化合物を除去する方法。
【請求項2】
前記ハイブリッド系吸着剤が、活性アルミナ20〜80重量%およびゼオライト80〜20重量%(活性アルミナおよびゼオライトの合計は100重量%)の混合物であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ハイブリッド系吸着剤とゼオライト系吸着剤との使用割合が容積比でハイブリッド系吸着剤:ゼオライト系吸着剤=1:1〜8:1であることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
含酸素化合物を不純物として含む粗炭化水素から含酸素化合物を除去して精製炭化水素を製造する方法であって、該粗炭化水素を、
活性アルミナおよびゼオライトの混合物からなるハイブリッド系吸着剤を充填した吸着カラム(i)に接触させ、次いで、
ゼオライト系吸着剤を充填した吸着カラム(ii)に接触させることを特徴とする精製炭化水素の製造方法。
【請求項5】
前記ハイブリッド系吸着剤が、活性アルミナ20〜80重量%およびゼオライト80〜20重量%(活性アルミナおよびゼオライトの合計は100重量%)の混合物であることを特徴とする請求項4に記載の精製炭化水素の製造方法。
【請求項6】
前記ハイブリッド系吸着剤とゼオライト系吸着剤との使用割合が容積比でハイブリッド系吸着剤:ゼオライト系吸着剤=1:1〜8:1であることを特徴とする請求項4または5に記載の精製炭化水素の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−95495(P2010−95495A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−269597(P2008−269597)
【出願日】平成20年10月20日(2008.10.20)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【出願人】(502053100)石油コンビナート高度統合運営技術研究組合 (72)
【Fターム(参考)】