説明

粘性物質希釈装置

【課題】粘性物質が高い粘性を有するときであっても、粘性物質を細断片化させるため、粘性物質と希釈剤との接触頻度を高め、粘性物質を希釈剤で効率よく希釈させるのに有利な粘性物質希釈装置を提供する。
【解決手段】装置は、粘性物質を希釈室20に供給させる粘性物質供給部27と、希釈室20内に回転可能に設けられ希釈室20に供給される粘性物質を回転により細断片化させて粘性物質の多数の細断片92を形成する回転体3と、回転体3の回転で形成された細断片92に水蒸気等の希釈剤が接触するように希釈剤を希釈室20に供給させる希釈剤供給部28とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高い粘性をもつ粘性物質を希釈剤で希釈させる粘性物質希釈装置に関する。
【背景技術】
【0002】
吸収式ヒートポンプ装置を例にとって背景技術について説明する。この装置は、水蒸気を凝縮させて液相水を形成する凝縮器と、凝縮器で形成された液相水を蒸発させて水蒸気を形成する蒸発器と、蒸発器で蒸発された水蒸気を高粘性吸収液に吸収させて吸収液を希釈化させ、希釈吸収液を形成する吸収器と、吸収器で形成された希釈吸収液に含まれる水分を水蒸気として蒸散させることにより吸収液を濃縮させる再生器とを有する。
【0003】
上記した吸収器によれば、蒸発器で蒸発された水蒸気を吸収液に吸収させて吸収液を希釈化させ、希釈吸収液を形成する技術が開発されている。水蒸気を吸収する前の吸収液は、高い粘性を有しており、粘調物ともいえる。このため水蒸気を吸収する前の吸収液は、塊状となり易く、水蒸気を吸収するにも限界があり、希釈効率は充分ではなかった。
【0004】
上記した吸収器として、従来、伝熱管の外表面に、伝熱管の長手方向に沿って複数の溝を並設させると共に、伝熱管を空気中で加熱して酸化処理させて酸化膜の微細凹凸を形成させたものが知られている(特許文献1)。このものによれば、伝熱管の外表面における濡れ性が向上し、高い粘性をもつ吸収液が伝熱管の外表面に沿って広がり易くなり、吸収液が水蒸気を吸収する吸収性を高めることができる旨が記載されている。
【0005】
また、吸収式ヒートポンプ装置に使用される蒸発器として、アンモニア希溶液をスプレーノズルで噴霧し、これを伝熱管の内部に導入する方式のものが知られている(特許文献2)。更に、吸収式冷温水機の液散布装置として、トレイの底壁のトレイ孔から散布液を流出させて熱交換器の伝熱管に落下させるものが知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−185356号公報
【特許文献2】特開2001−165528号公報
【特許文献3】特開2000−179989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記した従来技術を更に改善させたものであり、粘性物質を細断片化させて細断片群を形成することにより、粘性物質が高い粘性を有するときであっても、粘性物質と希釈剤との接触頻度を高め、粘性物質を希釈剤で効率よく希釈させるのに有利な粘性物質希釈装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る粘性物質希釈装置は、(i)希釈室をもつ器体と、(ii)器体に設けられ、粘性物質を希釈室に供給させる粘性物質供給部と、(iii)器体の希釈室内に回転可能に設けられ、希釈室に供給された粘性物質を回転により細断片化させて粘性物質の多数の細断片からなる細断片群を形成する回転体と、(iv)器体に設けられ、回転体の回転で形成された細断片群と希釈剤とが接触するように、希釈剤を希釈室に供給させる希釈剤供給部とを具備する。
【0009】
粘性物質供給部は、粘性物質を希釈室に供給させる。回転体は、器体の希釈室内において回転し、希釈室に供給される粘性物質を遠心力により細断させ、粘性物質の多数の細断片からなる細断片群を形成する。ここで、回転体の回転に基づく遠心力が粘性物質に作用するため、粘性物質に遠心力を与える前に比較して、粘性物質のサイズは遠心力に基づいて小さくされる。希釈剤供給部は、回転体の回転で形成された細断片群と希釈剤とが接触するように、希釈剤を希釈室に供給させる。これにより粘性物質と希釈剤とが接触する頻度が増加する。このため、粘性物質は希釈剤により効率よく希釈される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、粘性物質が高い粘性を有するときであっても、粘性物質を希釈剤で希釈させるにあたり、粘性物質を遠心力により細断して、多数の細断片からなる細断片群を形成するため、粘性物質の表面積が増加する。ひいては粘性物質と希釈剤とが接触する頻度が増加する。このため、粘性物質は希釈剤により効率よく希釈される。これにより粘性物質を希釈剤で希釈化させた希釈物質が良好に形成される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態1に係り、吸収器を示す断面図である。
【図2】実施形態2に係り、吸収器を示す断面図である。
【図3】実施形態3に係り、吸収器を示す断面図である。
【図4】実施形態4に係り、吸収器を示す断面図である。
【図5】実施形態5に係り、吸収式ヒートポンプ装置を示すシステム図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一視点によれば、好ましくは、希釈剤で希釈される粘性物質の細断片が付着する被付着部材が、器体の希釈室に設けられている。この場合、粘性物質は粘性を有するため、被付着部材に付着された粘性物質が直ちに落下することが抑制される。このため、粘性物質の細断片と希釈剤とが接触する時間が確保される。ひいては、粘性物質の細断片が希釈剤で希釈される時間が確保される。細断片は、回転体に基づく遠心力により粘性物質が機械的に破砕または散乱されて細かくされたものを意味する。細断片の形状としては特に限定されるものではない。細断片のサイズとしては特に限定されるものではない。粘性物質と希釈剤との接触頻度を高めることを考慮すると、サイズとしては、一般的には、10ミリサイズ以下、5ミリサイズ以下、3ミリサイズ以下、1ミリサイズ以下、0.5ミリサイズ以下が例示されるが、これらに限定されるものではない。ここで、一般的には、回転体の回転速度が速いと、遠心力が増加し、細断片のサイズは微小となり易い。回転体の回転速度が遅いと、遠心力が減少し、細断片のサイズは大きくなり易い。
【0013】
粘性物質としては、希釈剤で希釈される前においては、自身の粘性により、薄膜状になりにくい物質をいう。このような粘性物質は高い粘性を有するため、噴霧ノズルでは噴霧しても細断片となりにくいし、噴霧ノズルを詰まらせるおそれが高い。このような粘性物質は、回転体の回転に基づく遠心力により細断片化させることが好ましい。希釈物質としては、粘性物質の粘性を低下させ得るものであれば何でも良く、気相状の水、液相状の水、気液混合状態の水、アルコール等の有機溶媒を例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0014】
粘性物質によっては、冷却された方が希釈剤を吸収し易いものがある。この場合、被付着部材は、被付着部材に付着している細断片を積極的に冷却させる冷却機能を有することが好ましい。従って、好ましくは、被付着部材は、冷媒が流れる通路をもつ複数の伝熱管からなる伝熱管群で形成されている。冷媒としては、気相、液相、ミスト状のいずれでも良く、冷却水等の冷却液が例示される。
【0015】
粘性物質によっては、加熱された方が希釈剤を吸収し易いものがある。この場合、被付着部材は、被付着部材に付着している細断片を積極的に加熱させる加熱機能を有することができる。従って、好ましくは、被付着部材は、加熱媒体が流れる通路をもつ複数の伝熱管からなる伝熱管群で形成されている。加熱媒体としては、気相、液相、ミスト状のいずれでも良く、加熱水等の加熱液が例示される。
【0016】
本発明の一視点によれば、好ましくは、被付着部材は、熱交換媒体が流れる通路を有する伝熱管を形成している。この場合、伝熱管の通路を流れる熱交換媒体は、被付着部材に付着した粘性物質と熱交換する。熱交換媒体としては冷媒が好ましい。この場合、粘性物質が冷却された方が、粘性物質が希釈剤を吸収しやすい場合に好適する。場合によっては、粘性物質の温度が高い方が、粘性物質が希釈剤を吸収しやすいときには、熱交換媒体としては温水等の暖かい媒体でも良い。
【0017】
本発明の一視点によれば、好ましくは、器体は、粘性物質の細断片群と希釈剤との接触で希釈された粘性物質を貯留させる貯留室を有する。この場合、回転体は、貯留室に貯留されている粘性物質を回転により再び細断片とし、且つ、その細断片と希釈剤とを再び接触させて更に希釈化させる再希釈用回転部を有することが好ましい。粘性物質の細断片と希釈剤とが接触する頻度が再希釈用回転部により更に増加され、粘性物質の細断片が効率よく希釈剤で希釈される。
【0018】
また、再希釈用回転部は、回転体と共通する駆動源で回転体と連動する方式でも良い。この場合、駆動源が共通化されているため、コスト低減を図り得る。再希釈用回転部は、別の駆動源で駆動する方式でも良い。この場合、再希釈用回転部を回転体と独立させて制御できるため、単位時間あたりの再希釈用回転部の回転数と回転体の回転数とを異ならせても良いし、同一としても良いし、粘性物質の再希釈を適切に実行することが可能となる。
【0019】
本発明の一視点によれば、好ましくは、希釈剤供給部は、希釈室において生成された細断片群の外側に希釈剤を供給させて希釈剤流を形成し、希釈剤流により細断片群の過剰飛散を抑える。これにより粘性物質の細断片と希釈剤とが接触する頻度が増加され、粘性物質の細断片が効率よく希釈剤で希釈される。希釈剤流は、カーテン状に細断片群を外側から覆うことが好ましい。
【0020】
本発明の一視点によれば、好ましくは、希釈室において希釈剤を攪拌させることにより、細断片と希釈剤との接触確率を増加させる希釈剤攪拌部が、希釈室の内部に設けられている。これにより希釈剤が希釈室において移動するため、粘性物質の細断片と希釈剤とが接触する頻度が増加され、粘性物質が効率よく希釈剤で希釈される。
【0021】
本発明の一視点によれば、好ましくは、吸収式ヒータポンプ装置における吸収器に用いられる。吸収器の性能が高まるため、吸収式ヒータポンプ装置の性能が高まる。この場合、粘性物質は吸収液となる。吸収液は、臭化リチウム、ヨウ化リチウムが例示される。希釈剤は気相または液相の水が好ましい。
【0022】
本発明の一視点によれば、粘性物質希釈装置が移動物体に搭載される方式でも良いし、基盤等に固定される定置方式でも良い。移動物体としては、車両(乗用車、トラック、列車を含む)、船舶、飛翔体が挙げられる。
【0023】
(実施形態1)
以下、本発明の実施形態1について図1を参照して説明する。本実施形態は、吸収式ヒータポンプ装置(吸収式冷凍機)における吸収器1に適用している。図1に示すように、吸収器1は、希釈室20をもつ器体2と、器体2に設けられた粘性物質供給部として機能する吸収液供給部27と、器体2の希釈室20内において回転可能に設けられた回転体3と、器体2に設けられた希釈剤供給部として機能する水蒸気供給部28とを有する。器体2は、上壁2uと、底壁2bと、側壁2sとを有する。希釈室20は、上側の機械室20aと、機械室20aの下側に設けられた熱交換室20cと、熱交換室20cの下側に設けられた貯留室20eとを有する。
【0024】
粘性物質供給部として機能する吸収液供給部27は、器体2の上壁2uに設けられており、供給源27xから高粘性吸収液9(粘性物質)を希釈室20に向けて下向きに供給させる。高粘性吸収液9は臭化リチウム、ヨウ化リチウムが例示される。希釈剤供給部としての水蒸気供給部28は、器体2の上壁2uに設けられており、気相状の水である水蒸気を水蒸気源28x(希釈剤源)から希釈室20に向けて下向きに供給させる。
【0025】
回転体3は、器体2の希釈室20内に回転可能に設けられており、駆動源39により軸芯の周りで回転される縦型の回転軸30と、回転軸30の一端30u側(上側)に保持された遠心式の第1回転噴霧器を形成する第1回転体31と、回転軸30の他端30d側(下側)に保持された遠心式の第2回転噴霧器を形成する第2回転体32(再希釈用回転部)とを有する。回転軸30は、第1軸受30fおよび第2軸受30sにより回転可能に支持されている。第1軸受30fおよび第2軸受30sにより回転軸30のぶれが抑制される。回転軸30の一端30u(上端)は駆動源39に接続され、駆動源39により回転される。駆動源39は、電力で駆動する電動モータ、または、流体圧で駆動する流体圧モータが好ましい。
【0026】
第1回転体31は、円盤状の第1連結部33などにより回転軸30の上側の一端30uにおいて回転軸30と同軸的に保持されており、上部31uから下部31dに向かうにつれて内径および外径が増加する円錐形状をなしている。第1連結部33は、吸収液供給部27の下方において吸収液供給部27に対面しており、吸収液供給部27から供給された高粘性吸収液9を受ける受け面34を有する。受け面34は第1回転体31で包囲されている。第1連結部33の受け面34には、高粘性吸収液9を第1回転体31の内側円錐面31iに向けて吐出させる通過孔35が形成されている。
【0027】
ここで、第1回転体31が回転軸30の回りで回転するとき、第1回転体31においては、上部31uの回転半径よりも下部31dの回転半径が大きいため、下部31dの遠心力は、上部31uの遠心力よりも大きい。このように上部31uよりも大きな遠心力を発生させる第1回転体31の下部31dにより、第1回転体31の内側円錐面31iに接触している高粘性吸収液9(粘性物質)を遠心力で細断させて微粒子92として外方に飛散させることができる。このため、高粘性吸収液9の微粒子化(細断片化)を促進させることができる。このように第1回転体31は円錐形状をなしており、第1回転体31の下部31dの遠心力を上部31uよりも増加できるため、吸収液9が高粘性を有するときであっても、微粒子化(細断片化)の促進に有利である。
【0028】
上記した第2回転体32は、図1に示されるように、第2連結部37により回転軸30の下側の他端30dに回転軸30と同軸的に配置されており、下部32dから上部32uに向かうにつれて内径および外径が増加する円錐形状をなす。第2回転体32の下部32dは、貯留室20eに貯留されている希釈吸収液95(粘性物質)に浸漬される。第2回転体32が回転すると、貯留室20eに貯留されている希釈吸収液95を吸い上げる吸込口38が、第2回転体32の下部32dを厚み方向に貫通するように形成されている。ここで、第2回転体32においては、下部32dの回転半径よりも上部32uの回転半径が大きい。このため、第2回転体32が回転軸30の回りで回転するとき、上部32uの遠心力は下部32dの遠心力よりも大きい。このように大きな遠心力を発生できる第2回転体32の上部32uにより、第2回転体32の内側円錐面32iに吸い上げて接触させた高粘性吸収液9を遠心力で細断して外方に飛散させるので、微粒子化を促進させることができる。
【0029】
このように第2回転体32は、上部32uが下部32dよりも大径となる円錐形状をなしており、第2回転体32の下部32dの遠心力を増加できるため、希釈吸収液95(粘性物質)の微粒子化の促進に有利である。上記したように第1回転体31および第2回転体32は、ほぼ同じサイズであり、互いに逆向きとされている。
【0030】
図1に示すように、第1回転体31の外周側には、第1固定体41が希釈室20に設けられている。第1固定体41は、第1回転体31とほぼ同軸的に設けられており、上部31uから下部31dに向かうにつれて内径および外径が増加する円錐形状をなす。第1回転体31と第1固定体41との間には、円錐状をなす第1通路51が形成されている。第2回転体32の外周側には、第2固定体42が希釈室20に設けられている。第2固定体42は、第2回転体32とほぼ同軸的に設けられており、下部42dから上部42uに向かうにつれて内径および外径が増加する円錐形状をなしている。第2回転体32と第2固定体42との間には、円錐状をなす第2通路52が形成されている。第1固定体41および第2固定体42は希釈室20において固定されており、非回転である。
【0031】
図1に示すように、第1回転体31の外側円錐面31pには、攪拌機能を発揮する突起状の第1翼43(水蒸気流生成要素)が希釈剤攪拌部として形成されている。第1翼43は、第1固定体41の内側円錐面41iに対面するように、第1通路51に配置されている。第2回転体32の外側円錐面32pには、攪拌機能を発揮する突起状の第2翼44(水蒸気流生成要素)が希釈剤攪拌部として形成されている。第2翼44は、第2固定体42の内側円錐面42iに対面するように、第2通路52に設けられている。
【0032】
水蒸気供給部28から希釈剤としての水蒸気が希釈室20に供給されると、その水蒸気は、第1通路51において第1翼43で旋回されつつ下向きに流れ、第1通路51の先端の第1吐出口53から下向きに吐出され、水蒸気流(希釈剤流)を形成する。貯留室20e側にも、希釈剤としての水蒸気が存在する。貯留室20e側の水蒸気は、第2通路52において第2翼44で旋回されつつ上向きに流れ、第2通路52の先端の第2吐出口54から上向きに吐出され、水蒸気流(希釈剤流)を形成する。
【0033】
本実施形態によれば、図1に示すように、第1通路51は、これの下端(先端)に向かうにつれて、通路幅が小さくなるように設定されている。よって、第1通路51の第1吐出口53から吐出される水蒸気流の流速を増加させ、水蒸気カーテンを形成し易い。同様に、第2通路52は、これの上端(先端)に向かうにつれて、通路幅が小さくなるように設定されている。よって、第2通路52の第2吐出口54から吐出される水蒸気流の流速を増加させ、水蒸気カーテンを形成し易い。
【0034】
図1に示すように、器体2の希釈室20の熱交換室20cには、高粘性吸収液9の微粒子92が付着する被付着部材として機能する伝熱管群6が冷却要素として設けられている。伝熱管群6は、複数の伝熱管60で形成されている。伝熱管60は、熱交換媒体として機能する冷媒を流す通路60pをもつため、伝熱管60に付着している高粘性吸収液9を冷却させる冷却作用を発揮する。伝熱管60に流す冷媒としては、比熱を考慮すると、冷却水等の冷却液が好ましい。伝熱管60は、高い伝熱性を有する伝熱材料で形成された通路60pを有するパイプで構成されている。パイプは、伝熱性が高い金属が好ましいが、場合によっては、硬質樹脂、セラミックスでも良い。伝熱管60の熱交換性を考慮すると、熱伝導性が高い金属が好ましい。金属の場合には、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、合金鋼が例示される。この高粘性吸収液9は水分を吸収すると発熱して、吸収率が低下する性質を有するため、高粘性吸収液9を冷却させることは有効である。
【0035】
伝熱管60の母材が金属である場合には、必要に応じて、伝熱管60の外表面62に耐腐食膜を形成しておくことができる。更に、水分等の濡れ性を高めるため、金属製の伝熱管60の外表面62に微細な凹凸構造を形成することも好ましい。場合によっては、吸収液9の腐食性が高い場合には、伝熱管60の母材として、炭化珪素、ベリリア、窒化アルミニウム、窒化硼素等といった伝熱性が高いセラミックスを採用しても良い。この場合、伝熱管60の耐食性を良好に確保しつつ、伝熱管60に付着されている吸収液9,95を冷却させるのに有利となる。
【0036】
使用時には、駆動源39により、回転体3の回転軸30をこれの軸芯周りで回転させる。これにより第1回転体31および第2回転体32の双方は、希釈室20において同方向に回転する。回転体3に形成されている受け面34、第1翼43、第2翼44も同方向に回転する。回転速度としては、高粘性吸収液9の粘性、要請される遠心力、要請される微粒子92のサイズなどよって適宜選択される。
【0037】
この状態で、吸収液供給部27から、粘性物質である高粘性をもつ高粘性吸収液9が回転体3の受け面34に向けて下向きに供給される。受け面34に受けられた高粘性の高粘性吸収液9は、回転する受け面34に作用する遠心力により径外方に流れ、第1回転体31の内側円錐面31iに接触しつつ重力により流下する。このとき、第1回転体31の内側円錐面31iに接触している高粘性吸収液9には、遠心力および重力が作用する。このため高粘性吸収液9は、第1回転体31の内側円錐面31iに接触しつつ、回転軸30回りで旋回されつつ下方に膜状に流下する。このように第1回転体31の内側円錐面31iに沿って旋回された膜状の高粘性吸収液9は、遠心力により細断され、多数の微粒子92からなる微小粒子群(細断片群)として接線方向に沿って飛散される。このように高粘性吸収液9の多数の微粒子92からなる微小粒子群が、第1回転体31の回転に基づく遠心力により形成される。
【0038】
使用時には、水蒸気供給部28から、気相状の水である水蒸気が希釈剤として希釈室20に下向きに供給される。水蒸気は、第1回転体31と第1固定体41との間の第1通路51を第1翼43により旋回されつつ流れる。更に水蒸気は、第1通路51の先端の第1吐出口53から下向きに旋回されつつ、水蒸気流として吐出される。このように水蒸気流は、第1回転体31の遠心力より外方に向けて吐出される。
【0039】
ここで、図1から理解できるように、高粘性吸収液9は第1回転体31の内側円錐面31iに沿って流れ、且つ、水蒸気は第1回転体31の外周側の第1通路51に沿って流れる。このため、第1吐出口53から吐出される水蒸気流(希釈剤流)は、第1回転体31から飛散された高粘性吸収液9の微粒子92の微粒子群93の外側に位置する。この結果、高粘性吸収液9の微粒子92の微粒子群93(細断片群)が過剰に外側に飛散することが抑制されている。このため、第1回転体31で形成された高粘性吸収液9の微粒子92の微粒子群93の存在確率は、第1回転体31の真下に位置する伝熱管群6において高くなり、微粒子92は伝熱管60の外表面62に付着し易くなる。
【0040】
このように微粒子92の高粘性吸収液9が伝熱管60に付着すると、希釈室20における滞在時間が長くなり、希釈室20の水蒸気を吸収する吸収する時間が確保され、高粘性吸収液9は効果的に希釈化される。高粘性吸収液9は、水蒸気を吸収すると、粘性を低下させる。このため希釈された吸収液9は粘性を低下させ、伝熱管60の外表面62から、下側の伝熱管60に落下したり、貯留室20eに落下したりする。下側の伝熱管60に落下して付着した吸収液9は、再び水蒸気と接触する時間が確保され、粘性を低下させて流下する。このように本実施形態によれば、高さ方向に沿って伝熱管60が複数段に設けられているため、上側の伝熱管60に付着した吸収液9は、水蒸気を吸収して粘性を低下させるにつれて、次第に下側の伝熱管60に付着することになり、最終的には、希釈吸収液95として貯留室20eに貯留される。
【0041】
ここで、伝熱管60の外表面62の横断面の外輪郭は円形状であるため、吸収液9が希釈されると、外表面62に沿って重力により落下し易い。また、伝熱管60に付着しなかった高粘性吸収液9の微粒子92についても、希釈室20において水蒸気を吸収して希釈化され、貯留室20eに向けて落下し、希釈吸収液95として貯留室20eに貯留される。
【0042】
貯留室20eに貯留される希釈吸収液95が増加すると、第2回転体32の吸込口38は、貯留室20eの希釈吸収液95に浸漬される。この状態で、回転体3の回転により第2回転体32も回転軸30の軸芯の周りで同方向に回転すると、貯留室20eに貯留されている希釈吸収液95は、第2回転体32の遠心力により、第2回転体32の吸込口38から第2回転体32の内側円錐面32iに沿って吸い上げられる。このように第2回転体32の内側円錐面32iに沿って吸い上げられた希釈吸収液95は、第2回転体32の回転に基づく遠心力により、第2回転体32の内側円錐面32iに沿って上向きに旋回されつつ移動する。更に、第2回転体32の内側円錐面32iに沿って回転された希釈吸収液95は、第2回転体32の回転に基づく遠心力により、多数の微粒子92B(細断片)からなる微小粒子群93B(細断片群)として飛散される。このように希釈吸収液95の微小粒子92Bが第2回転体32の遠心力により希釈室20において形成される。
【0043】
このように第2回転体32で形成された希釈吸収液95の微粒子92Bの微粒子群93Bは、伝熱管群6に向かい、伝熱管60の外表面62に付着する。伝熱管60に微粒子92Bとして付着した希釈吸収液95については、希釈室20における滞在時間が確保され、希釈室20の水蒸気を吸収して再び希釈化され、粘性を更に低下させる。粘性が低下すれば、伝熱管60上の希釈吸収液95は、重力により伝熱管60から貯留室20eに向けて落下し、貯留室20eに再び貯留される。また伝熱管60に付着しなかった微粒子92Bも、水蒸気を吸収して希釈化された後、希釈吸収液95として貯留室20eに落下した貯留される。このようにいったん希釈された希釈吸収液95を第2回転体32の回転により吸い上げて再び微粒子化させ、水蒸気と再び接触させる。このため、本実施形態に係る装置の希釈性能を更に向上させることができる。
【0044】
水蒸気は貯留室20e付近にも存在する。このため第2回転体32の回転に伴い、気相状の水である水蒸気が第2翼44により旋回されつつ上向きに供給される。この水蒸気は、第2回転体32と第2固定体42との間の第2通路52の先端の第2吐出口54から上向きに旋回されつつ吐出され、水蒸気流を形成する。水蒸気流は、第2回転体32の遠心力より上外方向に吐出される。
【0045】
このとき、第2回転体32の上側に配置されている第1回転体31の回転により発生した水蒸気流が、第1通路51の第1吐出口53から吐出されている。このため、第1吐出口53から吐出された水蒸気流、第2吐出口54から吐出された水蒸気流の双方が互いに衝突して干渉する。このような衝突干渉の結果、第1吐出口53から吐出された水蒸気流は、矢印A1方向(図1参照)に流れ、伝熱管群6に向かう。第2吐出口54から吐出された水蒸気流は、矢印B1方向(図1参照)に流れ、伝熱管群6に向かう。このような水蒸気流で包囲されて規制される微粒子92,92Bも、同方向に流れ易くなる。すなわち、第1回転体31で形成された微粒子92は矢印A1方向に流れ、伝熱管群6に向かい、伝熱管群6に付着され易くなる。第2回転体32で形成された微粒子92は矢印B1方向に流れ、伝熱管群6に向かい、伝熱管群6に付着され易くなる。このため微粒子92に水蒸気で吸収させるにあたり、伝熱管群6における付着現象を効果的に利用することができる。
【0046】
殊に本実施形態によれば、図1から理解できるように、第1通路51の第1延長線S1と第2通路52の第2延長線S2とが器体2の側壁2sに交差するように、側壁2sが配置されている。ここで、第1吐出口53から吐出された水蒸気流、第2吐出口54から吐出された水蒸気流に対して、側壁2sが障壁となる。この結果、第1吐出口53から吐出された水蒸気流、第2吐出口54から吐出された水蒸気流は、側壁2sに当たると、側壁2sから離れる方向に反射し、微粒子92,92Bを伝熱管群6に向けて矢印A1,B1方向に案内させ易くなる。
【0047】
以上説明したように本実施形態によれば、回転体3の第1回転体31により形成された高粘性吸収液9の微粒子92と水蒸気とを接触させるため、高粘性をもつ高粘性吸収液の微粒子92と水蒸気とが接触する接触面積および接触頻度が増加する。このため高粘性吸収液9に水蒸気を効率よく吸収させることができる。殊に、本実施形態で用いられる高粘性吸収液9は、水を吸収すると反応熱により温度上昇するため、高粘性吸収液9を冷却された方が、高粘性吸収液9に水蒸気を吸収させ易い。この点について本実施形態によれば、伝熱管群6を構成する伝熱管60の外表面62に被着した高粘性吸収液9を、伝熱管60の通路60pを流れる冷媒により積極的に冷却させつつ、高粘性吸収液9に水蒸気を吸収させるため、高粘性吸収液9に水蒸気を効率よく吸収させることができる。
【0048】
更に本実施形態よれば、水蒸気を吸収させた希釈吸収液95を第2回転体32で吸い上げて、希釈吸収液95(粘性物質)の微粒子92Bを再び形成し、その微粒子92Bを伝熱管群6に付着させ、伝熱管群6で冷却させつつ水蒸気を吸収させる。このため希釈吸収液95に水蒸気を更に吸収させることができる。
【0049】
上記したように本実施形態によれば、吸収液9,95の微粒子92,92Bは、伝熱管60の外表面62に付着している時間が確保される。このため、微粒子92が伝熱管60に付着せずに直ちに落下する場合に比較して、伝熱管60の外表面62に付着している吸収液9,95と水蒸気との接触時間が確保され、水蒸気を吸収させる量を高めるのに有利である。ここで、第1回転体31の第1翼43および第2回転体32の第2翼44により、希釈室20内の水蒸気が攪拌されるため、希釈室20において水蒸気は滞留することなく循環する。この意味においても、吸収液9,95と水蒸気との接触頻度を高めるのに有利となる。
【0050】
更に本実施形態によれば、図1から理解できるように、第1回転体31および第2回転体32のサイズおよび形状は、互いにほぼ同一である。更に第1回転体31および第2回転体32は互いに対向するように配置されている。このため、第1回転体31および第2回転体32を有する回転体3が回転軸30の回りで回転するとき、第1回転体31が発生させる遠心力と、第2回転体32が発生させる遠心力とをできるだけ均衡させることができ、回転体3の回転バランスの均衡化を図り得、振動低減に貢献できる。よって、微粒子92,92Bのサイズを微細化させ得るように大きな遠心力を得るべく、回転体3を高速回転させる場合に適する。更に第1固定体41および第2固定体42のサイズおよび形状は、互いにほぼ同一である。このため部品の共通化に貢献できる。
【0051】
なお、高粘性吸収液9を水蒸気で希釈させる操作が終了すれば、図略のバルブを開放させて貯留室20eの希釈吸収液95を貯留室20eから取り出すことができる。
【0052】
(実施形態2)
図2は実施形態2を示す。本実施形態は、実施形態1と基本的には同様の構成および同様の作用効果を有する。但し、伝熱管60に代えて、横断面で円形状をなす複数の棒材60Eで形成された被付着部材6Eが設けられている。被付着部材6Eは冷媒を流す機能を有していない。棒材60Eの横断面形状は四角、三角でも良い。
【0053】
第1回転体31で形成された微粒子92の微粒子群93は、被付着部材6Eに向かい、被付着部材6Eの外表面62Eに付着する。被付着部材6Eに付着した高粘性吸収液9の微粒子92は、希釈室20の水蒸気と接触して水蒸気を吸収して希釈化される。粘性をもつ高粘性吸収液9は、水蒸気を吸収すると、粘性を低下させるため、伝熱管60Eの外表面62Eから貯留室20eに向けて重力により落下し、希釈吸収液95として貯留室20eに貯留される。また被付着部材6Eに付着しなかった微粒子92も、水蒸気を吸収して希釈化され、貯留室20eに向けて落下し、希釈吸収液95として貯留室20eに貯留される。
【0054】
このように微粒子92は被付着部材6Eの外表面62Eに付着するため、希釈室20に滞在する時間が確保される。このため、微粒子92が被付着部材6Eの外表面62Eに付着せずに直ちに落下する場合に比較して、被付着部材6Eの外表面62Eに付着している吸収液9,95と水蒸気との接触時間が確保され、水蒸気の吸収量を高めるのに有利である。
【0055】
本実施形態においても、第1回転体31の第1翼43および第2回転体32の第2翼44により希釈室20の水蒸気が攪拌されるため、希釈室20において水蒸気は攪拌される。この意味においても、高粘性吸収液9の微粒子92と水蒸気との接触頻度、希釈吸収液95の微粒子92と水蒸気との接触頻度を高めるのに有利となり、水蒸気の吸収量を高めるのに有利である。
【0056】
(実施形態3)
図3は実施形態3を示す。本実施形態は、実施形態1と基本的には同様の構成および同様の作用効果を有する。吸収器1は、希釈室20をもつ器体2と、器体2に設けられた粘性物質供給部として機能する吸収液供給部27と、器体2の希釈室20内に回転可能に設けられた回転噴霧器を形成する回転体3Hと、器体2に設けられた希釈剤供給部として機能する水蒸気供給部28とを有する。器体2は、上壁2uと底壁2bと側壁2sとをもつ。希釈室20は下側に貯留室20eを有する。
【0057】
吸収液供給部27は、器体2の上壁2uに設けられており、供給源27xからの高粘性吸収液9(粘性物質)を希釈室20に下向きに供給させる。水蒸気供給部28は、器体2の上壁2uに設けられており、気相状の水である水蒸気を水蒸気源(希釈剤原)から希釈室20に下向きに供給させる。
【0058】
回転体3Hは、器体2の希釈室20内に回転可能に設けられており、駆動モータ等の駆動源39により軸芯の周りで回転される縦型の回転軸30と、回転軸30の外周壁に沿ってスパイラル状に巻回されたスパイラル羽根36とを有する。スパイラル羽根36の下端部36dは、貯留室20eに貯留されている希釈吸収液95に浸漬されており、貯留室20eに貯留されている希釈吸収液95を吸い上げて再び微粒子化させる再微粒子要素として機能できる。回転軸30は、第1軸受30fおよび第2軸受30sにより回転可能に支持されている。第1軸受30fおよび第2軸受30sにより回転軸30のぶれが抑制される。
【0059】
駆動源39により回転体3Hの回転軸30がこれの軸芯周りで回転すると、スパイラル羽根36は、貯留室20eに貯留されている希釈吸収液95を吸い上げる方向に回転し、希釈吸収液95の微粒子92Bの微粒子群93Bを形成する。
【0060】
図3に示すように、器体2の希釈室20には、高粘性吸収液9の微粒子92が付着する被付着部材として機能する伝熱管群6が設けられている。伝熱管群6は、スパイラル羽根36の外周側に配置されており、複数の伝熱管60を備えている。伝熱管60は、冷媒を流す通路60pをもつため、冷却作用を発揮する。冷媒としては、冷却性を考慮すると、冷却水等の冷却液が好ましい。ここで、伝熱管群6は、回転軸30の外側において回転軸30とほぼ同軸的に配置された内コイル状をなす内伝熱管60Mと、回転軸30の外側において回転軸30とほぼ同軸的に配置された外コイル状をなす外伝熱管60Nとで形成されている。外伝熱管60Nは内伝熱管60Mよりも外周側に同軸的に配置されている。但し、伝熱管60は、水平方向に沿って多数個配置されていても良い。
【0061】
使用時には、駆動源39により回転体3の回転軸30をこれの軸芯周りで回転させる。これによりスパイラル羽根36が回転軸30の回りで希釈室20において回転する。この状態で、粘性物質である高粘性をもつ高粘性吸収液9が吸収液供給部27から希釈室20内のスパイラル羽根36に向けて下向きに供給される。これにより高粘性吸収液9は、高速回転中のスパイラル羽根36に衝突する。結果として、高粘性吸収液9は、遠心力で細断され、多数の微粒子92(細断片)からなる微小粒子群93(細断片群)として飛散される。このように高粘性吸収液9の多数の微粒子92からなる微小粒子群93がスパイラル羽根36により形成される。この微粒子92は、希釈室20において飛散し、希釈室20内の伝熱管60の外表面62に付着する。伝熱管60に付着した高粘性吸収液9の微粒子92は、希釈室20における滞在時間が確保され、希釈室20の水蒸気を吸収して効果的に希釈化される。吸収液9は水蒸気を吸収すると、粘性を低下させる。このため、希釈吸収液95は伝熱管60の外表面62から、下側の伝熱管60に重力により落下する。
【0062】
このように水蒸気を吸収して希釈された吸収液9は、粘性を低下させ、伝熱管60の外表面62から、下側の伝熱管60に落下したり、貯留室20eに落下したりする。下側の伝熱管60に落下して付着した吸収液9は、再び水蒸気と接触する時間が確保され、粘性を更に低下させて流下する。このように本実施形態によれば、図3に示すように、高さ方向に沿って伝熱管60が複数段に設けられているため、上側の伝熱管60に付着した吸収液9は、水蒸気を吸収して粘性を低下させるにつれて、次第に下側の伝熱管60に付着することになり、最終的には、希釈吸収液95として貯留室20eに貯留される。
【0063】
ここで本実施形態によれば、伝熱管60の外表面62の横断面形状は円形状であるため、伝熱管60に付着した高粘性吸収液9は、粘性を低下させると、自動的に落下する。また、伝熱管60の外表面62に付着しなかった粘性物質の微粒子92も、希釈室20の水蒸気を吸収して希釈化され、希釈吸収液95として貯留室20eに向けて落下し、貯留室20eに貯留される。このように微粒子92は伝熱管60の外表面62に付着している時間が確保されるため、微粒子92が直ちに落下する場合に比較して、伝熱管60の外表面62に付着している吸収液9と水蒸気との接触時間が確保され、吸収量を高めるのに有利である。
【0064】
前述したように、スパイラル羽根36が回転するため、貯留室20eに貯留されている希釈吸収液95をスパイラル羽根36は吸い上げ、希釈吸収液95の微粒子92Bの微粒子群93を形成する。この場合、スパイラル羽根36で形成された希釈吸収液95の微粒子92Bは、伝熱管群6に向かい、伝熱管60の外表面62に付着する。伝熱管60に付着した希釈吸収液95の微粒子92Bは、水蒸気を吸収して再び希釈化される。希釈吸収液95は重力により伝熱管60から貯留室20eに向けて落下し、貯留室20eに再び溜まる。また伝熱管60に付着しなかった希釈吸収液95の微粒子92Bも、水蒸気を吸収して希釈化され、希釈吸収液95として貯留室20eに向けて落下し、希釈吸収液95として貯留室20eに溜まる。このようにいったん希釈された希釈吸収液95を回転体3のスパイラル羽根36の回転により再び吸い上げて微粒子化させ、水蒸気と接触させるため、本実施形態装置の希釈性能を更に向上させることができる。
【0065】
ここで、スパイラル羽根36は回転すると、スパイラル羽根36の螺旋角に対応して、スパイラル羽根36に接触している物質(水蒸気など)を上向きに押し出す押出力を発揮させ得る。このためスパイラル羽根36が希釈室20において回転すると、スパイラル羽根36の螺旋角に応じて、スパイラル羽根36上の水蒸気が上向きに希釈室20において移動し、更に上向きに移動した水蒸気は、器体1の上壁2uで規制されるため、更に下向きに移動する。このように水蒸気が希釈室20において移動する水蒸気の循環流WAが形成される。従って、スパイラル羽根36は、水蒸気流の循環流WAを形成する水蒸気循環流生成要素としても機能でき、更に、吸収液9の多数の微粒子92からなる微粒子群93、希釈吸収液95の多数の微粒子92Bからなる微粒子群93Bを生成させる要素として機能できる。このため、高粘性吸収液9の微粒子92と水蒸気との接触頻度、希釈吸収液95の微粒子92Bと水蒸気との接触頻度を増加させ、水蒸気の吸収量を高めて吸収液9,95を希釈させるのに有利となる。
【0066】
以上説明したように本実施形態によれば、図3に示すように、回転体3のスパイラル羽根36の回転により形成された高粘性吸収液9の微粒子92の微粒子群93と水蒸気とを接触させるため、高粘性をもつ高粘性吸収液9と水蒸気とが接触する接触面積および接触頻度が増加する。このため吸収液供給部27から供給される高粘性吸収液9が高い粘性を有するときであっても、この高粘性吸収液9に水蒸気を効率よく吸収させて、吸収液9を希釈させることができる。
【0067】
殊に、本実施形態で用いられる高粘性吸収液9は、水を吸収すると反応熱により温度上昇するため、高粘性吸収液9を冷却された方が、高粘性吸収液9に水蒸気を吸収させ易い性質を有する。この点について本実施形態によれば、伝熱管群6を構成する伝熱管60の外表面62に被着した高粘性吸収液9を、伝熱管60の通路60pを流れる冷媒により冷却させつつ、高粘性吸収液9に水蒸気を吸収させるため、高粘性吸収液9に水蒸気を効率よく吸収させることができる。
【0068】
更に本実施形態よれば、水蒸気をいったん吸収させた貯留室20eにおける希釈吸収液95をスパイラル羽根36の回転に基づいて吸い上げて、希釈吸収液95の微粒子92Bを再び形成し、その希釈吸収液95の微粒子92Bを伝熱管群6に付着させて伝熱管群6で冷却させつつ水蒸気を吸収させる。このため高粘性吸収液9に水蒸気を更に吸収させることができる利点が得られる。なお本実施形態では、図3に示すように、スパイラル羽根36は1個装備されているが、これに限らず、複数個並設させても良い。この場合、複数個のスパイラル羽根36を同一方向に回転させることが好ましい。
【0069】
(実施形態4)
図4は実施形態4を示す。本実施形態は実施形態1と基本的には同様の構成および同様の作用効果を有するものである。以下、相違する部分を中心として説明する。図4に示すように、回転体3Kは、器体2の希釈室20内に回転可能に設けられており、駆動源39により回転軸30の軸芯の周りで回転される縦型の回転軸30と、回転軸30の一端30u側(上側)に保持された遠心式の第1回転噴霧器を形成する円盤状をなす第1回転体31Kと、回転軸30の他端30d側(下側)に保持された遠心式の第2回転噴霧器を形成する第2回転体32(再希釈用回転部)とを有する。
【0070】
回転体3Kが回転軸30の回りで回転すると、円盤状をなす第1回転体31Kが同方向に回転する。そして、吸収液供給部27から吸収液9が滴下されると、滴下された吸収液9は、円盤状をなす第1回転体31Kに衝突し、遠心力により微粒子92とされる。ここで、円盤状をなす第1回転体31Kは第1固定体41に包囲されているため、第1回転体31Kの回転に基づく遠心力で生成された微粒子92は、円錐状の第1固定体41の内側円錐面41iに衝突する。このため、微粒子92が過剰に飛散することが抑制される。従って微粒子92は、第1固定体41の内側円錐面41iにより伝熱管6に向けて案内され、伝熱管群6の伝熱管60に付着される。水蒸気供給部28から水蒸気が下向きに吹き出されるため、伝熱管60に付着している吸収液9,95は水蒸気により希釈される。
【0071】
(実施形態5)
図5は実施形態5を示す概念図である。本実施形態は実施形態1と基本的には同様の構成および同様の作用効果を有するものであり、吸収式ヒートポンプ装置(吸収式冷凍機)100に適用されている。この装置100は、凝縮室101を有する凝縮器102と、高真空状態に維持されている蒸発室111をもつ蒸発器112(水蒸気供給源,希釈剤供給源)と、希釈室20を有する吸収器1と、再生室131を有する再生器132(吸収液供給源,粘性物質供給源)とを有する。吸収器1は、前記した図1〜図4に示す実施形態に係る吸収器で形成されている。この吸収器1は、前述したように高粘性吸収液を、回転体の回転に基づく遠心力により微粒子とし、水蒸気と接触させる方式である。
【0072】
更に、再生器132の再生室131と吸収器1の希釈室20とを繋ぐ吸収液供給部142(粘性物質供給部)が設けられている。蒸発器112の蒸発室111と吸収器1の希釈室20とを繋ぐ水蒸気供給部140(希釈剤供給部)が設けられている。
【0073】
図5に示すように、凝縮器102は冷媒を流す冷却パイプ103を有する。凝縮器102では、再生器132から流路151を介して供給された水蒸気を、冷却パイプ103で冷却させて凝縮させて液相水を形成すると共に、凝縮潜熱を得る。凝縮器102で形成された液相水は、流路152を介して蒸発器112に移動する。蒸発器112では、流路152の孔から液相水が蒸発室111に滴下する。滴下された液相水は、高真空状態の蒸発室111において水蒸気となる。このように蒸発器112では、凝縮器101で形成された液相水を蒸発させて水蒸気を形成させると共に、蒸発潜熱(吸熱作用)を得る。蒸発潜熱は、空調器190の冷房作用として利用される。蒸発器112で蒸発された水蒸気は、水蒸気供給部140を介して水蒸気供給口22から吸収器1の希釈室20に供給される。
【0074】
吸収器1では、粘性物質として機能する高粘性吸収液9が、吸収液供給部142から重力により吸収器1の希釈室20に供給される。希釈室20に供給された高粘性吸収液9は、回転体3の高速回転に基づく遠心力により細断され、多数の細断片からなる細断片群となり、吸収面積を飛躍的に増加させる。この結果、細断片は希釈室20において水蒸気を吸収して希釈化され、希釈吸収液95となる。
【0075】
吸収器1の希釈室20において形成された希釈吸収液95は、流路146のポンプ180(吸収液搬送源)によって搬送され、再生器132の再生室131に帰還する。再生室131に帰還した希釈吸収液95は、粘性が低くなっている。このように再生室131に帰還した希釈吸収液95は、燃焼バーナや電気ヒータなどの加熱部160により加熱され、水蒸気を蒸散させて濃縮される。水蒸気は、流路151から凝縮室121に供給される。このように希釈吸収液95は再生室131において濃縮されて、再び高濃度の高粘性吸収液9となる。高粘性吸収液9は、再生室131(粘性物質供給源)から重力により吸収液供給部142を通過し、再び吸収器1の希釈室20に供給される。そして、高粘性吸収液9は、回転体3の回転に基づく遠心力により細断化されて多数の細断片(微粒子)からなる細断片群(微粒子群)となり、更に、伝熱管群6に付着された状態で、伝熱管群6により冷却されつつ水蒸気と接触して水蒸気で希釈化される。
【0076】
ここで、吸収液9は臭化リチウムまたはヨウ化リチウムが例示される。これらは高濃度であると、高い粘性をもつ。このように吸収式ヒートポンプ装置では、凝縮器102で凝縮熱が得られて加熱作用が得られる。また、蒸発器112では、蒸発潜熱により吸熱作用が得られて冷却作用が得られる。
【0077】
上記した吸収式ヒートポンプ装置における吸収器1は、上記した各実施形態に係る吸収器1で構成されている。このため、吸収器1の吸収液供給部の滴下口212から、高濃度の吸収液9が吸収器1の希釈室20に滴下される。このように滴下された吸収液9は、水蒸気供給口22から希釈室20に供給された水蒸気を吸収し、希釈されて希釈吸収液95となる。
【0078】
この場合、上記した実施形態において説明したように、高濃度の吸収液9は、細断化された状態で水蒸気と接触する。このため吸収液9が高粘性物質であっても、微粒子化された吸収液9は、自身の露出面積を飛躍的に増加させるため、水蒸気との接触面積を飛躍的に増加させ、水蒸気を効率よく吸収することができる。
【0079】
本実施例によれば、希釈吸収液95を吸収器1から再生器132に搬送させるポンプ180(吸収液搬送源)のモータは、図1〜図4に示す実施形態で使用されている細断化(微粒子化)のための遠心力を発揮させる回転体3を回転させるモータで形成された駆動源39と共通化させることが好ましい。この場合、モータが共通化されため、部品点数の削減に有利である。吸収式ヒートポンプ装置が運転されるときには、ポンプ180を駆動させるが、同様に吸収器1も同様に作動させる必要があるため、都合が良い。更に、吸収式ヒートポンプ装置の運転が停止されるときには、ポンプ180の運転を停止させるが、同様に吸収器1の作動も停止させるため、都合が良い。
【0080】
(その他)上記した実施形態1によれば、被付着部材として、水蒸気の吸収性を高めるべく、伝熱管4上の吸収液を冷却させる作用を果たす伝熱管4が採用されているが、これに限らず、伝熱作用を有する伝熱管4に代えて、単なる中空パイプ、棒材、平板材、網材を被付着部材として希釈室20に配置しても良い。この場合、中空パイプ、棒材、平板材、網材等で形成されている被付着部材に、高粘性吸収液9が付着される。この場合、希釈室20の内部を冷却させる冷却部を希釈室20に設け、吸収液を冷却させることが好ましい。冷却部としては、冷却水等の冷却液を流す構造でも良いし、冷凍サイクルの冷却ヘッドを用いても良い。
【0081】
場合によっては、微粒子状の吸収液を付着させる被付着部材を廃止しても良い。この場合においても、水蒸気が希釈室20において攪拌されるため、攪拌される水蒸気と吸収液との接触頻度を確保させることができ、吸収液の希釈を実行させることができる。
【0082】
上記した実施形態1によれば、第1回転体31の他に第2回転体32が設けられているが、場合によっては第2回転体32を廃止しても良い。更に、第1固定体41および第2固定体42が設けられているが、場合によっては、第1固定体41および第2固定体42を廃止しても良い。この場合においても、翼43,44により水蒸気が攪拌されるため、水蒸気と吸収液との接触頻度を増加させることができる。
【0083】
本発明は上記し且つ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。上記した記載から次の技術的思想も把握できる。
【0084】
[付記項1]希釈室をもつ器体と、前記器体に設けられ、粘性物質を前記希釈室に供給させる粘性物質供給部と、器体の前記希釈室内に回転可能に設けられ、希釈室に供給される粘性物質を回転により細断片化させて粘性物質の多数の細断片からなる細断片群を形成する回転体と、器体に設けられ、回転体の回転で形成された細断片群と希釈剤とが接触するように希釈剤を希釈室に供給させる希釈剤供給部と、器体の前記希釈室に設けられ、熱交換媒体が流れる通路をもち、微粒子として粘性物質が付着すると共に付着している粘性物質を熱交換媒体と熱交換させる被付着部材とを具備する熱交換器。この場合、被被着部材に付着されている粘性物質は、熱交換媒体と熱交換されつつ、希釈剤に接触して希釈化される。熱交換器交換は、粘性物質を冷却させる形態でも良いし、粘性物質を加熱させる加熱でも良い。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、高粘性をもつ粘性物質を細断片とした後に、希釈剤で希釈させる粘性物質希釈装置に適用できる。例えば、吸収式ヒータポンプ装置における吸収器に適用できる。
【符号の説明】
【0086】
図中、1は吸収器、2は器体、20は希釈室、27は吸収液供給部(粘性物質供給部)、28は水蒸気供給部(希釈剤供給部)、3は回転体、30は回転軸、31は第1回転体、32は第2回転体(再希釈用回転部)、34は受け面、35は通過孔、38は吸込口、36はスパイラル羽根、39は駆動源、41は第1は固定体、42は第2固定体、43は第1翼(希釈剤攪拌部)、44は第2翼(希釈剤攪拌部)、51は第1通路、52は第2通路、53は第1吐出口、54は第2吐出口、6は伝熱管群(被付着部材)、60は伝熱管、60pは通路、62は外表面、9は吸収液(粘性物質)、92,92Bは微粒子(細断片)、93は微粒子群(細断片群)、95は希釈吸収液(粘性物質)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
希釈室をもつ器体と、
前記器体に設けられ、粘性物質を前記希釈室に供給させる粘性物質供給部と、
前記器体の前記希釈室内に回転可能に設けられ、前記希釈室に供給される粘性物質を回転により細断片化させて粘性物質の多数の細断片からなる細断片群を形成する回転体と、
前記器体に設けられ、前記回転体の回転で形成された細断片群と希釈剤とが接触するように、希釈剤を前記希釈室に供給させる希釈剤供給部とを具備する粘性物質希釈装置。
【請求項2】
請求項1において、希釈剤で希釈される粘性物質の細断片が付着する被付着部材が前記器体の前記希釈室に設けられている粘性物質希釈装置。
【請求項3】
請求項2において、前記被付着部材は、前記被付着部材に付着している粘性物質を冷却させる冷却機能を有する粘性物質希釈装置。
【請求項4】
請求項1〜3のうちの一項において、前記被付着部材は、冷媒が流れる通路をもつ複数の伝熱管からなる伝熱管群で形成されている粘性物質希釈装置。
【請求項5】
請求項1〜4のうちの一項において、前記器体は、細断片群と希釈剤との接触で希釈された粘性物質を貯留させる貯留室を有しており、
前記貯留室に貯留されている粘性物質を回転により再び細断片とし、且つ、その細断片と希釈剤とを再び接触させて更に希釈化させる再希釈用回転部を有する粘性物質希釈装置。
【請求項6】
請求項1〜5のうちの一項において、前記希釈剤供給部は、前記希釈室において生成された細断片群の外側に希釈剤を供給させて希釈剤流を形成し、前記希釈室における粘性物質の細断片群の過剰飛散を希釈剤流により抑える粘性物質希釈装置。
【請求項7】
請求項1〜6のうちの一項において、前記希釈室において希釈剤を攪拌させることにより、細断片と希釈剤との接触確率を増加させる希釈剤攪拌部が、前記希釈室の内部に設けられている粘性物質希釈装置。
【請求項8】
請求項1〜7のうちの一項において、吸収式ヒータポンプ装置における吸収器に用いられる粘性物質希釈装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−33236(P2011−33236A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−178068(P2009−178068)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】