説明

粘着シートの粘着剤層表面に凹部を形成するための剥離シート

【課題】剥離シートをはがして粘着シートを被着体に貼付する際、貼付面に気泡を巻き込まずに貼付でき、また気泡を巻き込んだ場合においても容易に気泡を抜いて貼付できる粘着剤面を形成するための、表面に線状の凸部が形成された剥離シートを提供する。
【解決手段】粘着シートの粘着剤層表面に凹部を形成するための剥離シートであって、該剥離シートは、剥離シート基材と、該シート基材上に形成された第一の連続した線状の凸部及び第二の連続した線状の凸部を備えてなり、前記第一の連続した線状の凸部と前記第二の連続した線状の凸部は互いに交差して、該剥離シートの長手方向側に鋭角部位を有する四辺からなる格子を多数形成してなることを特徴とする、剥離シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貼付面に空気を巻き込まずに被着体に貼ることができる粘着シートを形成するために用いられる、粘着シートの粘着剤層表面に凹部を形成するための剥離シートに関する。
更に該剥離シートを用いて得られる粘着シート並びにその粘着剤層表面に凹部を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粘着シートは、一般に、基材に粘着剤を塗布乾燥させた後、平滑な面を有する剥離シートを貼り合わせる方法、或いは反対に、剥離シートに粘着剤を塗布乾燥させた後、基材に転写する方法、などの方法により作製される。
【0003】
このような粘着シートは、被着体に貼付した際に空気の逃げ道がないことから、空気を巻き込みやすく、すなわち気泡ができやすいため、気泡ができた個所に針やナイフで穴を開けて空気を押し出し、見栄えの悪さを解消する必要があった。
また別の方法として、貼付する際に粘着剤層表面に水や石鹸水を吹きかけて粘着強度を一旦弱め、被着体にあてがっておおよその位置を決めて貼付した後、スキージー等を用いて水や石けん水を貼付面から掻き出すなどして貼付する方法も行われていた。
しかしながらこれらの方法は、基材に針等で傷をつけるため耐久性に問題を生じることとなり、また、作業に手間がかかるなどの問題があった。
【0004】
こうした問題を改善するための一つの方法として、貼付時に入り込んだ空気を抜けやすくするために、粘着剤層表面に凹凸を設けて空気の通り道を形成した粘着フィルムが提案されている。
例えば粘着フィルム本体と剥離フィルムから構成される粘着加工フィルムにおいて、粘着フィルム本体の粘着面側に所定パターンをもって連続する細凹溝を設けたものが提案されている(特許文献1)。
しかしながら、該細凹溝は相互に積層された粘着フィルム本体と剥離フィルムにおいて、剥離フィルム側からエンボス加工によって押圧することにより形成されているため、剥離フィルムが厚い場合、エンボスの形成が剥離フィルムのみにとどまり、粘着フィルム本体の粘着面までエンボス形成が到達しないという欠点がある。
【0005】
また、フィルム状支持体面に粘着層が形成されていると共に、該粘着層面に深さ30μm以下の凹溝が、その長さ方向に対して斜交するように設けられている表面保護用粘着フィルムが提案されている(特許文献2)。
該凹溝は基材片面に粘着剤を塗布し、乾燥させつつ彫刻ローラーにて粘着層面を押圧することにより形成されており、すなわち、完全に粘着剤が乾燥していない段階で凹溝が形成されるため、粘着層が乾燥不十分となったり、彫刻ローラーによる押圧中に粘着剤が発泡したりする問題がある。たとえ問題なく凹溝が形成できたとしても、粘着シートを貼り合わせる場合、該凹溝の長手方向と垂直あるいは比較的大きな角度を有する方向には気泡が抜けにくいという問題も有する。
【0006】
こうした問題に対し、剥離フィルム表面にエンボス加工を施し、これを粘着剤層表面に転写させることにより、粘着剤層表面に凸凹形状を作製する方法が提案されている。
例えば、壁紙等向けの貼着シートにおいて、平滑な表面を有する基材の一面に感圧性粘着剤層を設けた後、一面に多数の凹部を有する剥離シートの該面をあてがい更にこれを押圧することによって凸部を形成する方法が提案されている(特許文献3)。
【0007】
また、基材、粘着剤層、離型紙の順で積層された易剥離性タックラベルにおいて、離型紙の粘着剤層側が凹凸状表面を有することにより、凹凸状表面が粘着剤層に転写され、凹凸状表面を有する粘着剤層が形成される方法が提案されている(特許文献4)。
【0008】
さらに、剥離フィルムとして1〜15μmの連続した凸線状にエンボス加工されている合成樹脂フィルムを用い、この連続した凸線が粘着剤層の粘着面に転写されることにより、粘着剤層に連続した凹線を形成した粘着フィルムが提案されている(特許文献5)。
【特許文献1】特開平7−138541号公報
【特許文献2】実開昭59−44750号公報
【特許文献3】実開昭53−162156号公報
【特許文献4】実開平7−29569号公報
【特許文献5】特開昭59−78285号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献4に記載の発明は、そこに記載の図7を参照すると、粘着剤層上に斜め方向にのみ溝状の凹凸が設けられており、溝の形成方向には空気が抜けやすいものの、溝の形成方向に対して垂直或いは比較的大きな角度を有してローラー等により押圧した場合、特に高速回転のローラーにて押圧した場合には、空気が抜けが不十分となるという問題を有している。
【0010】
また、特許文献5に記載の発明は、そこに記載の実施例によると、剥離フィルム上に粘着剤を塗布して粘着フィルムを作製している。そして連続した凸線の一例として、直線状(図1)、波線状(図2)、格子状(図3)が示されているが、これらエンボス模様がフィルムの長さ方向に対してどのような方向で形成されているかは示されていない。
仮に、剥離フィルムの長さ方向に対して直角或いは比較的大きな角度を有して直線状又は波線状のエンボス模様が形成された剥離フィルムを使用すると、該剥離フィルムのエンボス模様形成面上に粘着剤を塗布する際、気泡を抱き込みやすい。
他方、剥離フィルムの長さ方向に対して同じ方向(平行)又は比較的小さい角度を有して線状のエンボス模様が形成された剥離フィルムを使用した場合、粘着剤塗布時には気泡を抱き込みにくく、更に基材フィルムを貼り合わせた際にも気泡を巻き込みにくい。しかし、粘着シートの使用時に、線状のエンボス模様の形成方向に対して垂直の方向には貼付面にできた気泡が抜けない。
また、図3のように格子状にエンボス模様を形成された剥離フィルムを採用しても、凸線が交差する個所で、剥離フィルムの長さ方向に対して交差の角度が大きいと、前記同様に気泡を抱きこみやすいという欠点がある。
【0011】
このように、粘着剤層表面に凹溝を設けて、粘着シート貼付時に気泡を巻き込まないようにする方法として多くの提案がなされてきたが、粘着剤を剥離フィルム等に塗布する際に気泡を巻き込んだり、或いは、粘着シートを貼付する際に気泡が抜けにくいものがあるなどの問題があった。
【0012】
本発明は上記問題点を鑑みて為されたものであって、すなわち、気泡を抜くための溝を粘着剤面に形成するに当たって、凸部を形成した剥離紙を粘着シートの粘着剤面に押圧して溝を形成するとき、流れ方向に対して左右に斜めの凸線に加えて、流れ方向に沿った凸線を加えることによって気泡を抱き込みにくく、さらに、被着体に貼付する際、貼付面に気泡を巻き込まずに貼付でき、また気泡を巻き込んだ場合においても容易に気泡を抜いて貼付できる粘着剤層表面を形成するための、表面に凸部を有する剥離シートに関する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、表面に凸部を有する剥離シートにおいて、剥離シート基材上に設けた連続する線状の凸部の配置方向及び配置間隔を所定のものとすることにより、粘着シートの基材上面に設けられた粘着剤層表面に該剥離シートを圧着する際の空気の抱きこみという問題を改善し、さらに、該剥離シートを圧着した際、粘着剤層表面に剥離シートの凸部が転写され、表面に凹部を有する粘着剤層が形成されることにより、該粘着シートを被着面に貼付する際に起こる空気の巻き込みという問題を解消できることを見出した。
すなわち本発明は、粘着シートの粘着剤層表面に凹部を形成するための剥離シートであって、該剥離シートは、剥離シート基材と、該シート基材上に形成された第一の連続した線状の凸部及び第二の連続した線状の凸部を備えてなり、前記第一の連続した線状の凸部は、該剥離シートの長さ方向に対して右斜め0°より大きく15°未満の角度を有して、100〜2000μmの間隔にて平行に複数本設けられており、前記第二の連続した線状の凸部は、該剥離シートの長さ方向に対して左斜め0°より大きく15°未満の角度を有して、100〜2000μmの間隔にて平行に複数本設けられており、前記第一の連続した線状の凸部と前記第二の連続した線状の凸部は互いに交差して、該剥離シートの長手方向側に鋭角部位を有する四辺からなる格子を多数形成してなることを特徴とする、剥離シートに関する。
【0014】
また本発明は、粘着シートの粘着剤層表面に凹部を形成するための剥離シートであって、該剥離シートは、剥離シート基材と、該シート基材上に形成された第三の連続した線状の凸部、第四の連続した線状の凸部及び第五の連続した線状の凸部を備えてなり、前記第三の連続した線状の凸部は、該剥離シートの長さ方向に対して右斜め10乃至45°の角度を有して、100〜2000μmの間隔にて平行に複数本設けられており、前記第四の連続した線状の凸部は、該剥離シートの長さ方向に対して左斜め10乃至45°の角度を有して、100〜2000μmの間隔にて平行に複数本設けられており、前記第五の連続した線状の凸部が、該剥離シートの長さ方向に対して左右斜め10°未満の角度を有して、100〜2000μmの間隔にて平行に複数本設けられており、前記第三の連続した線状の凸部と前記第四の連続した線状の凸部は互いに交差して、さらに、前記第五の連続した線状の凸部の少なくとも一部は、前記第三の連続した線状の凸部と前記第四の連続した線状の凸部との交点を通り、該剥離シートの長手方向側に鋭角部位を有する三辺からなる格子を多数形成してなることを特徴とする、剥離シートに関する。
【0015】
上記剥離シートにおいて、前記第一又は第二の連続した線状の凸部の横断面が略三角形及び/又は略四角形の断面を有することが望ましい。
このとき、凸部の横断面が略三角形の断面を有するとき、該凸部の底辺の長さが5乃至100μm、高さが5乃至50μmであることが望ましく、また、凸部の横断面が略四角形の断面を有するとき、該凸部の底辺の長さが5乃至100μm、上辺の長さが0より大きく100μm以下、高さが5乃至50μmであることが望ましい。
【0016】
上記剥離シートにおいて、前記第三乃至第五の連続した線状の凸部の横断面のいずれかが略三角形及び/又は略四角形の断面を有することが望ましい。
このとき、凸部の横断面が略三角形のいずれかが断面を有するとき、該凸部の底辺の長さが5乃至100μm、高さが5乃至50μmであることが望ましく、また、凸部の横断面のいずれかが略四角形の断面を有するとき、該凸部の底辺の長さが5乃至100μm、上辺の長さが0より大きく100μm以下、高さが5乃至50μmであることが望ましい。
【0017】
さらに前記第一又は第二の連続した線状の凸部は、剥離シートの上方から見て、直線状及び/又は周期性を有する波線状の形状を有しており、このとき、前記第一又は第二の連続した線状の凸部のうち少なくとも一部は、剥離シートの上方から見て、周期1000μ
m以上、振幅100μm以下の周期性を有する波線状の形状を有していることが望ましい。
【0018】
また、前記第三乃至第五の連続した線状の凸部は、剥離シートの上方から見て、直線状及び/又は周期性を有する波線状の形状を有しており、このとき、前記第三乃至第五の連続した線状の凸部のうち少なくとも一部は、剥離シートの上方から見て、周期1000μm以上、振幅100μm以下の周期性を有する波線状の形状を有していることが望ましい。
【0019】
さらに本発明は、粘着シート基材上に形成された粘着剤層の表面に、請求項1乃至請求項12のうち何れか一項に記載の剥離シートを圧着させることにより、該剥離シート表面の凸部が転写されて、連続した線状の凹部が形成された粘着剤層を有する粘着シートに関する。
また、本発明は、粘着シート基材上に形成された粘着剤層の表面に、請求項1乃至請求項12のうち何れか一項に記載の剥離シートを圧着させ、粘着剤層表面に前記剥離シートの凸部形状を転写させることによる、粘着シートの粘着剤層表面に連続した線状の凹部を形成する方法にも関する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の剥離シートは、剥離シートの基材上に形成された所定の連続した線状の凸部を粘着シートの粘着剤表面に押圧することにより、所定の形状を有する連続した線状の凹部を粘着剤表面に容易に形成(転写)することができる。
また、本発明の剥離シートは、剥離シートの基材上に形成された所定の連続した線状の凸部により、粘着シート基材の上面に設けられた粘着剤層と剥離シートを押圧する際、界面において空気の抱き込みがなく、また空気を抱き込んだ場合においても押圧によって容易に空気を押し出すことができる。
【0021】
そして本発明の粘着シートは、前記剥離シートから転写されて粘着剤層に形成された連続した線状の凹部により、前記粘着シートを被着体に貼付した際、貼付面に気泡を巻き込まずに貼付でき、また気泡を巻き込んだ場合においても容易に気泡を抜いて貼付することができる。
【0022】
また本発明の粘着シートの粘着剤層表面に連続した線状の凹部を形成する方法によれば、粘着シート基材上に粘着剤を塗布・乾燥させた後、前記剥離シートを押圧するという方法を採用しているため、粘着剤層が未乾燥となったり、あるいは粘着剤層にエンボスローラー等を用いて直接凹部を形成した場合に起こる粘着剤の発泡などの問題点がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
前述の通り、これまでにも剥離シート表面にエンボス加工を施し、これを粘着剤層表面に転写させることにより、粘着剤層表面に凹凸の形状を作製する方法が提案されている(特許文献3乃至5参照)。しかしこれら提案によっても、剥離シートに粘着剤を塗布する際に空気を抱き込みやすく、従って粘着シート基材に貼り合わせた際に気泡ができてしまったり、或いは、被着体に接着する際に粘着剤層からの気泡の抜けが不十分なものとなったりするなど、粘着シートの製造時及び粘着シートの貼付時のいずれにおいても十分満足できるものではないという点で課題を残すものであった。
【0024】
本発明は、まず、表面に凹部が形成された粘着剤層を有する粘着シートの作製方法として、粘着シート基材上に粘着剤を塗布・乾燥させた後、連続した線状の凸部が形成された剥離シートを押圧するという方法を選択した。
また剥離シートとして、その長さ方向に対して、一定の角度を有して交差するように複
数本の連続した線状の凸部が配置されている剥離シートを採用し、その詳細条件を検討した。
【0025】
まず始めに、従来提案されている四角格子状に連続した線状の凸部が配置されている剥離シートについて検討した。
このとき、図1に示すように、剥離シートの長さ方向に対してひし形格子状に連続した線状の凸部を形成し、長さ方向の角(γ)を鋭角としたとき、該剥離シートを粘着剤層に押圧させた際、空気を抱き込みにくく、また、粘着シート貼付時にも空気の巻き込みを抑えられることを見出した。なお、図1において、図の上下方向が剥離シートの長さ方向を表し、1、2が直線状の凸部を示す。
さらに、図1に示すγの角度を様々に変化させて検討を行った結果、γの角度が30°以上の剥離シートを用いた場合、該剥離シートを粘着剤層に押圧ロールを用いて押圧させた際に抱き込んだ空気が抜けにくく、特に凸線が格子状に交差する個所(A点)において、気泡が残存しやすいことがわかった。無論、押圧時に加熱して粘着剤を軟化させることにより、気泡を抜けやすくすることもできるが、この場合、剥離シートに付与した凹凸形状が失われるおそれがあることから、押圧温度を十分に高くすることはできない。
尚、気泡が残存すると基材上の粘着剤層と剥離層が接した状態で製品となるため、経時で気泡はミクロな溝で囲まれた微小な粘着剤層上の中央に集まる傾向にあり、粘着剤層上に気泡の跡が形成され、貼付時、気泡は除去されるが、気泡の跡により外観が悪くなる。
これに対し、γの角度を30°未満とした剥離シートを用いた場合、詳細には、図1において、γを長さ方向に平行な直線で分断した際、αとβの角度が何れも15°未満の場合、粘着剤層に押圧させた際に空気を抱き込むことがなく、粘着シート貼付時にも空気の巻き込みを抑えることを見出した。
【0026】
さらに本発明者らは、剥離シートに連続した線状の凸部によって形成される空気の通り道を増やすこと、すなわち、従来提案されている四角格子状に形成された連続した線状の凸部を分断して、三角格子状に連続した線状の凸部を有する剥離シートを作成した。このとき、底角が鋭角である二等辺三角形の格子形状を有する連続した線状の凸部を、該三角格子形状の三角形の底辺に相当する部分を剥離シートの長さ方向に対して左右斜め10°未満の角度を有して配置させたとき、該剥離シートを粘着剤層に押圧させた際、空気を抱き込みにくく、また、粘着シート貼付時にも空気の巻き込みを抑えられることを見出した。
さらに該二等辺三角形の底角の数値を様々に変化させて検討した結果、例えば剥離シートの一部の拡大図である図4(及び図5)に示すように、連続した線状の凸部3a、4b及び5a(図5:3a’、4b’、5a’)によって三角格子状の凸部を形成し、点Cにおける連続した線状の凸部3a(図5:3a’)と連続した線状の凸部5a(図5:5a’)又は連続した線状の凸部5a(図5:5a’)と連続した線状の凸部4a(図5:4a’)が交差することによって形成される角度(α’、β’)(図5:α’’、β’’)が10〜45°である場合に、粘着剤層に押圧させた際に空気を抱き込むことがなく、粘着シート貼付時にも空気の巻き込みを抑えることを見出した。
【0027】
以下、本発明の剥離シート及び粘着シートに関する詳細を説明する。
【0028】
[剥離シート]
本発明に用いる剥離シートの材料としてはPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム、OPP(二軸延伸ポリプロピレン)フィルム等のフィルムや、紙にポリエチレンをラミネートしたポリエチレンラミネート紙等を使用可能である。
また、PETフィルム、OPPフィルム等のフィルムにポリエチレンをラミネートし、このポリエチレン部分にエンボスを付与して用いることもできる。
【0029】
本発明に用いる剥離シートは、剥離シート基材と、該シート基材上に形成された第一の連続した線状の凸部及び第二の連続した線状の凸部を備えてなり、或いは、剥離シート基材と、該シート基材上に形成された第三の連続した線状の凸部乃至第五の連続した線状の凸部を備えてなる。
【0030】
本発明に用いる剥離シートに設けられる複数本の第一及び第二、又は第三乃至第五の連続した線状の凸部は、長さ方向に対して一定角度の傾きを持ち、一定の間隔をあけて設けられている。ここで「連続した線状の凸部」とは、凸部が例えば剥離シートの外周のある一辺から別の一辺に到達するまで、実質的につながっていればよく、その途中で一部が分断されて、例えば破線状となっていてもよい。
上述の連続した線状の凸部に関して、図2〜図14を用いて詳細に説明するが、図2〜図14に示した線状の凸部は一例であって、図に示した大きさ、形状等に何等限定されるものではない。
【0031】
図2〜図5は本発明の剥離シートを上方から見たときの一部分を拡大して示した模式図である。いずれの図も、図の上下方向が剥離シートの長さ方向を示しており、図中、1(1a、1b)、2(2a、2b)、3a(3a’)、3b(3b’)、4a(4a’)、4b(4b’)、5a(5a’)、5b(5b’)、5cが線状の凸部を表す。
【0032】
図2及び図3は本発明の第一形態の剥離シートの模式図を示したものである。剥離シートを上方から見たとき、複数の連続した線状の凸部1及び2によって四角(菱形)格子状の凸部が形成されている。
図3に示すとおり、剥離シート上には、剥離シートの長さ方向(長さ方向に平行な線を点線で示す)に対して角度(α、β)を有して配された複数本の連続した線状の凸部1a(第一の連続した線状の凸部に相当する)と連続した線状の凸部2a(第二の連続した線状の凸部に相当する)が互いに交差して設けられている。
このとき、α、βの角度はいずれも0°より大きく15°未満であり、好ましくはα=βである。
また、連続した線状の凸部1a(又は2a)と隣り合う連続した線状の凸部1b(又は2b)の間隔d1は、100〜2000μmであり、より好ましくは200〜600μm
である。
【0033】
第一形態の剥離シートにおいて、α、βの角度が15°を超える(すなわち、γが30°以上の場合)と、連続した線状の凸部1aと2aの交点Bにおいて、該剥離シートの粘着剤への押圧時に空気を抱き込みやすく、また、該剥離シートを粘着剤に貼り合わせて形成した粘着シートの貼付時にも空気を巻き込みやすくなる。
また、連続した線状の凸部の間隔d1が100μm未満であると、粘着剤に転写されて
形成される凹溝が多くなり、粘着性が悪くなり、2500μmを超えると気泡の抜け道を十分に確保することができない。
【0034】
図4、図5は本発明の第二形態の剥離シートの模式図を示したものである。図4に示す剥離シートは、上方から見たとき、連続した線状の凸部によって三角格子状の凸部が形成されており、図5に示す剥離シートは、三角格子の凸部がさらに底辺に平行な直線状の凸部によって分断されて、三角格子状の凸部と四角(台形)格子状の凸部が形成されている。
本発明の第二形態の剥離シート(図4)においては、連続した複数の線状の凸部3a、3b(第三の連続した線状の凸部に相当する)と4a、4b(第四の連続した線状の凸部に相当する)に加えて、連続した線状の凸部3aと4aの交点Cと、連続した線状の凸部3bと4bの交点C’を結ぶ、連続した複数の線状の凸部5a、5b(第五の連続した線状の凸部に相当、第三と第四の連続した線状の凸部の交点を通る場合)が設けられる。
このとき、α’、β’の角度はいずれも10〜45°であり、好ましくはα=βである。
また、連続した線状の凸部3a(又は4a)と隣り合う連続した線状の凸部3b(又は4b)の間隔d2は、100〜2000μmであり、より好ましくは200〜600μm
である。また凸部5aと5bの間隔d3は、100〜2000μmであり、より好ましく
は200〜600μmである。
【0035】
本発明の別の第二形態の剥離シート(図5)においては、凸部5a’に平行であって、交点C’’を通らない連続した線状の凸部、例えば、連続した線状の凸部5a’と5b’の間に位置する連続した複数の線状の凸部5c(第五の連続した線状の凸部に相当、第三と第四の連続した線状の凸部の交点を通らない場合)がさらに設けられる。剥離シートの長さ方向に平行な線状の凸部同士(例えば図5における5a’と5c、5cと5b’)の間隔d5は、100〜2000μmであり、より好ましくは200〜600μmである。
【0036】
本発明の第二形態の剥離シートにおいて、第五の連続した線状の凸部は第三と第四の連続した線状の凸部の交点の少なくとも一部を通ればよく、該交点を通らない第五の連続した線状の凸部が存在しなくてもよいし、該交点を通る第五の連続した線状の凸部と該交点を通らない第五の連続した線状の凸部が混在してもよい。
この場合、該交点を通る第五の連続した線状の凸部と該交点を通らない第五の連続した線状の凸部の配置(並び)は特に限定されない。例えば、該交点を通る第五の連続した線状の凸部と、該交点を通らない第五の連続した線状の凸部が1本置きに並んでいてもよいし、該交点を通る第五の連続した線状の凸部が二本並んだ隣に該交点を通らない第五の連続した線状の凸部が1本並ぶといった配置でもよい。
【0037】
図4又は図5の剥離シートにおいて、α’、β’又はα’’、β’’の角度が45°を超えると、交点C及びC’又はC’’及びC’’’において、該剥離シートの粘着剤への押圧時に空気を抱き込みやすく、また、該剥離シートを粘着剤に貼り合わせて形成した粘着シートの貼付時にも空気を巻き込みやすくなる。また、α’、β’又はα’’、β’’の角度が10°以下であると、交点C、C’又はC’’及びC’’’周辺で粘着剤の凹部分が大きくなり、粘着性が悪くなるだけでなく、気泡が溜まりやすくなる。
また、連続した線状の凸部の間隔d2又はd4が100μm未満であると、粘着剤に転写されて形成される凹溝が多くなるために、粘着性が悪くなり、2500μmを超えると気泡の抜け道を十分に確保することができない。
【0038】
前記連続した線状の凸部1a、1b、2a、2b、3a(3a’)、3b(3b’)、4a(4a’)、4b(4b’)、5a(5a’)、5b(5b’)及び5cの長手方向に対して直交する断面(横断面)の形状としては、図6に示すように三角形(図6(a))、四角形(図6(b))、台形(図6(c))、半円(図6(d))或いは、四角形と半円の組み合わせ(図6(e))や楕円(図6(f))などの半円以外のドーム形等、様々な形状を挙げることができ、このうち略三角形又は略四角形の断面を有することが望ましい。
本発明の剥離シート10の長手方向の横断面の断面形状において、好適な例の模式図を図7〜図11に示す。
【0039】
図7、図8に示すように剥離シート基材20上に設けられた凸部61の横断面が略三角形の断面を有する場合、底辺63の長さ(wb)は5乃至100μm、より好ましくは30乃至60μm、剥離シート基材2の上面62から頂点65の高さ(h)は5乃至50μm、より好ましくは10乃至20μmである。なお、図7及び図8において、dwは凸部
61(例えば図3の1aに相当する)と隣り合う凸部61(例えば図3の1bに相当する)の間隔を示し、100〜2000μmであり、より好ましくは200〜600μmであ
る(なお、図7及び図8の場合には、例えば前述した凸部61の頂点65と隣に位置する凸部61の頂点65の間隔がdwに相当する)。一枚の剥離シート中、dwの値は上記数値範囲内で変化してもよい。
三角形の形状は、二等辺三角形(図7)でも、不等辺三角形(図8)でもよく、また、連続した線状の凸部毎に三角形の形状が異なっていてもよく、さらに一本の連続した線状の凸部において三角形の形状が変化(例えば底辺の増減、高さの増減、底辺の移動など)してもよい。連続した線状の凸部の斜視図にて、凸部の高さの増減がある場合(図13)及び凸部の底辺の増減がある場合(図14)を示す。
さらに図8に示すように、複数の連続した線状の凸部の間の凹部64は、剥離シート基材2の上面62と重複していなくてもよい。なおこの場合、三角形の底辺63の長さwbは、斜辺66、67の延長線と剥離シート基材の上面の交点の間の長さに相当する。
【0040】
図9〜図11に示すように凸部81の横断面が略四角形の断面を有する場合、底辺84の長さ(wb)は5乃至100μm、より好ましくは30乃至60μm、上辺83の長さ(wt)が0より大きく100μm以下、より好ましくは0より大きく20μm以下、剥離シート基材2の上面82からの高さ(h)は5乃至50μm、より好ましくは10乃至20μmである。好ましくはwb>wtである。なお、図9及び図11において、dw
前述の通り凸部81(例えば図3の1aに相当する)と隣り合う凸部81(例えば図3の1bに相当する)の間隔を示し、100〜2000μmであり、より好ましくは200〜600μmである(なお、図9及び図11の場合には、例えば前述した凸部81の上辺83の中点88と隣に位置する凸部81の上辺83の中点88の間隔がdwに相当する)。
一枚の剥離シート中、dwの値は上記数値範囲内で変化してもよい。
【0041】
図9〜図11に示すように凸部81の横断面が略四角形の断面を有する場合、一例として断面形状は台形(図9)となるが、例えば図10に示すように上辺83が底辺84と平行でない場合や、底辺84と斜辺85又は86が為す角度(δ、ε)が異なっている場合でもよく、また、連続した線状の凸部毎に四角形の形状が異なっていてもよい。さらに、一本の連続した線状の凸部において四角形の形状が変化(例えば底辺の増減、上辺の増減、高さの増減、底辺の左右移動など)してもよい。
さらに図11に示すように、複数の連続した線状の凸部の間の凹部87は、剥離シート基材2の上面82と重複していなくてもよい。なおこの場合、四角形の底辺84の長さwbは斜辺85、86の延長線と剥離シート基材の上面の交点の間の長さに相当する。
【0042】
また、図7及び図8に示すように、横断面が略三角形の断面を有する連続した線状の凸部61と、図9〜図11に示すように、横断面が略四角形の断面を有する連続した線状の凸部81は、1枚の剥離シート中に混在してもよい。
なお、断面が略三角形の連続した線状の凸部61と、図9〜図11に示す断面が略四角形の連続した線状の凸部81が隣接する場合、例えば、凸部61の頂点65と、凸部81の中点88を、線状の凸部の間隔dwとしてよい。
【0043】
断面形状において、上述の略三角形及び略四角形の形状のいずれも、底辺(63又は84)の長さwbが5μm未満であると気泡の抜け道が確保できず、100μm以上であると凹溝が大きくなりすぎて粘着面が小さくなり、粘着性が悪くなる。また、高さhが5μm未満であると気泡の抜け道が確保できず、50μmを超えると粘着剤層の厚さを薄くしすぎることにもつながるだけでなく、粘着剤層に押圧する際に大きな圧力が必要になる。
【0044】
上記剥離シートの上方から見た連続した線状の凸部は、直線状又は周期性を有する波線状の外観を有してよい。例えば、本発明の第一の形態の剥離シートに設けられた第一及び第二の連続した線状の凸部、又は第二の形態の剥離シートに設けられた第三乃至第五の連続した線状の凸部は、上方から見たとき、いずれも直線状又は波線状の外観を有してもよ
いし、またそれぞれ別々な形状(直線状、波線状)の外観を有してもよい。
周期性を有する波線状としては、例えば三角波、正弦波、あるいは半円を組み合わせた形状等、様々なものであってよい。
また、図12に示すように連続した線状の凸部毎に波線状の形状が異なっていてもよく、さらに一本の連続した線状の凸部において波線状の形状が変化(例えば振幅の増減、周期の増減など)してもよい。
なお剥離シートの上方から見た連続した線状の凸部の外観が周期性を有する波線状である場合、前記凸部の間隔d1は、例えば図12に示すように、周期性を有する波線状の凸
部の中心線(例えば周期関数を想定した場合x軸)と隣の周期性を有する波線状の凸部の中心線との間隔を指す。
【0045】
本発明の剥離シートを上方から見た連続した線状の凸部が、正弦波線状又は三角波線状等のように周期性を有する波線状の外観を有する場合、周期の長さが1000μm以上であり、振幅が100μm以下である波形状であることが望ましい。周期の長さが1000μm未満になっても、振幅が100μmを超えても気泡が抜けにくくなる。
【0046】
前記剥離シートへの凹凸部の付与は、上記に示した所定の条件で彫刻を施されたエンボスロールと、加圧ロールの間を、所定の条件で剥離シートを通すことにより達成される。
なお剥離シートの剥離処理は、エンボス処理の前後いずれでも可能であり、剥離処理を施さなくてもよい。
【0047】
[粘着シート]
粘着シートに用いる基材としてはPETフィルム、OPPフィルム、紙、和紙、布、不織布、これらの複合基材等、様々なものを使用可能である。
また粘着剤はゴム系、アクリル系、シリコン系等、種々のものを使用可能であり、架橋タイプ、非架橋タイプの何れも使用可能である。
粘着シートは、上記基材に粘着剤を塗布し、乾燥させて粘着剤層を形成する。
【0048】
[粘着剤層における凹部の形成方法]
上述の粘着剤層を形成された粘着シートと、連続した線状の凸部が形成された剥離シートは、粘着剤層表面と凸部が形成された剥離シート表面とを貼り合わせ、空隙を調整した2つの圧着ロールを通過させて圧着することができる。
このとき、剥離シートに形成された連続した線状の凸部が潰れない程度に加熱することにより、粘着剤が軟化し、気泡が抜けやすくなる。例えばポリエチレンに凸部を形成した剥離シートを用いた場合には、60℃〜80℃の温度で加熱しながら圧着することが望ましい。
【0049】
[効果発生のメカニズムの考察]
本発明により奏する「粘着シート製造時に空気の抱き込みを防ぐ」及び「貼付面に空気を巻き込まずに粘着シートを被着体に貼ることができる」という効果は、如何なる原理・作用によって生ずるものかは定かではないが、下記に示す作用によるものと推量される。
本発明の(剥離シート付き)粘着シートは、粘着シートの粘着剤層と剥離シートの凸部形成面は、粘着シート(又は剥離シート)の長さ方向に押圧され、形成される。このとき、粘着剤層と貼り合わせる際に生ずる凸部による抵抗を小さくすることにより、粘着剤層と剥離シートの界面における気泡の抱き込みを低減することができるものとみられる。
したがって、剥離シートの長手方向側に鋭角部位を有する四辺からなる格子を多数形成するか(第一形態の剥離ライナー)、あるいは、長手方向側に鋭角部位を有する三辺からなる格子を多数形成する(第二形態の剥離ライナー)ことによって、上記抵抗を小さくすることができるとみられ、これが粘着シート形成時の気泡の抱き込みの低減につながるものとみられる。
【0050】
そして剥離シートに形成された凸部が転写されて形成した粘着剤層の凹部は、粘着剤層表面から粘着剤層中に延びている。この凹部(溝)は、粘着剤層の外周に至り、或いは、粘着剤層上に設けられ、粘着剤層の外周に到達する他の凹部と連通しているため、粘着シートを被着体に貼付する際、この凹部から粘着剤層と被着体表面との界面に存在する気泡を粘着シートの外周に流出させることができる。
このとき、粘着シートの長手方向側に鋭角部位を有する四辺からなる格子を多数形成する(第一形態の剥離ライナー)ことにより、粘着シートの貼付と同時に気泡の流出がスムーズに進み、気泡の巻き込みを低減できるとみられる。また、気泡の流通経路(方向)を増やすこと(第二形態の剥離ライナー)によっても、取り残された気泡の迅速な流出を助け、結果的に気泡の巻き込みを低減することにつながるものとみられる。
【実施例】
【0051】
以下、実施例を挙げて、本発明を更に詳しく説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものでない。
【0052】
[剥離シート付き粘着シートの作製]
剥離シートの基材としてポリエチレンテレフタレート(PET#50)フィルムを採用し、これにポリエチレンを溶融して25μmの厚さに塗布した。得られたフィルムのポリエチレン面に剥離処理を施した後、該シートをエンボスロールで加圧する直前に100℃に加温し、後述の所定形状のエンボスパターンを形成できるエンボスロールに通して加圧し、エンボス面を有する剥離フィルムを作製した。
粘着シートの基材としてポリエチレンテレフタレート(PET#125)フィルムを使用し、乾燥後の厚さ25μmにてゴム系粘着剤を塗布し、粘着シートを作製した。
上記エンボス面を有する剥離シートと粘着シートを、加圧ロールを通して貼り合わせ、剥離シート付き粘着シートを得た。
【0053】
[評価]
剥離シート付き粘着シートを作製して5日経過後、貼り合わせた両シートの接着面に存在する気泡の有無について、ビデオマイクロスコープで150倍に拡大し、観察した(評価1)。
また、剥離シートを粘着シートから剥がした後の、粘着剤層表面の凹部の形状(状態)も、同様にビデオマイクロスコープで150倍に拡大して観察した(評価2)。
さらに、剥離シートを剥がした後、粘着シートのアクリル板への貼付性と、貼付面の気泡の有無を官能的に又は目視でマクロ的に確認した(評価3)。
【0054】
[剥離シートのエンボスパターン]
実施例1.
断面が図7に示すように底辺の長さ(wb)25μm、高さ(h)20μmの略二等辺三角形である、直線状の凸部を図2及び図3に示す四角格子状に形成した。
直線状の凸部の長さ方向に対する角度を約6°(すなわち図3においてα、βが6°、γが12°)とし、また、直線状の凸部の配置間隔(d1)を300μmとした。
【0055】
実施例2.
凸部の断面形状を実施例1と同様にし、線状の凸部を図4のように形成した。
直線状の凸部の長さ方向に対する角度(すなわち図4におけるα’及びβ’)を30°とし、配置間隔(d2)を600μmとした。さらに、長さ方向に平行な直線状の凸部を
、配置間隔(d3)を300μmにて、また、左右斜め方向に形成された直線状の凸部の
交点を通るように配置した。
【0056】
実施例3.
凸部の断面形状を実施例1と同様にし、線状の凸部を図5に示す三角格子状に形成した。
直線状の凸部の長さ方向に対する角度(すなわち図5におけるα’’及びβ’’)を30°とし、配置間隔(d4)を1200μmとした。さらに、長さ方向に平行な直線状の
凸部を、配置間隔(d5)を300μmにて、また、前述の左右斜め方向に形成された直
線状の凸部の交点を通るように配置した(なお、図5にも示されるように、交点を通らない長さ方向に平行な直線状の凸部は、斜め方向に形成された直線状の凸部の交点の中間点を通る)。
【0057】
比較例1.
凸部の断面形状を実施例1と同様にし、長さ方向に平行な直線状の凸部のみを、配置間隔300μmにて作製した。
比較例2.
凸部の断面形状を実施例1と同様にし、長さ方向に平行な直線状の凸部、並びに長さ方向に直交する方向に線状の凸部を形成した。このとき、長さ方向に平行な凸部の配置間隔を300μm、直交方向の凸部の配置間隔を1200μmとした。
比較例3.
凸部の断面形状を実施例1と同様にし、線状の凸部を図3に示すような四角格子状に形成した。このとき、α、βを30°(すなわちγが60°)とし、直線状の凸部の配置間隔(d1)を300μmとした。
比較例4.
凸部の断面形状を実施例1と同様にし、線状の凸部を図3に示すような四角格子状に形成した。このとき、α、βを22.5°(すなわちγが45°)とし、直線状の凸部の配置間隔(d1)を300μmとした。
比較例5.
凸部の断面形状を実施例1と同様にし、線状の凸部を図3に示すような四角格子状に形成した。このとき、α、βを15°(すなわちγが30°)とし、直線状の凸部の配置間隔(d1)を300μmとした。
比較例6.
凸部の断面形状を実施例1と同様にし、線状の凸部を図3に示すような四角格子状に形成した。このとき、α、βを6°(すなわちγが12°)とし、直線状の凸部の配置間隔(d1)を80μmとした。
比較例7.
凸部の断面形状を実施例1と同様にし、線状の凸部を図3に示すような四角格子状に形成した。このとき、α、βを6°(すなわちγが12°)とし、直線状の凸部の配置間隔(d1)を2500μmとした。
比較例8.
凸部の断面形状を実施例1と同様にし、線状の凸部を図4に示すような三角格子状に形成した。このとき、α’及びβ’を60°とし、d2を600μm、d3を300μmとした。
【0058】
[試験結果]
【表1】

【0059】
表1に示すように、実施例1乃至3のエンボスパターンを有する剥離シートにおいては、粘着シートと貼り合わせた後に粘着面に気泡を生じさせず、また、剥離シートを剥がした後にも粘着剤層表面の形状も気泡の跡がなく良好であった。
さらに、アクリル板への貼付時にも気泡を巻き込むことなく、良好な外観形状にて貼付することができた。
【0060】
一方、剥離シートの長さ方向に平行な直線状の凸部のみを形成した比較例1においては、粘着シートと貼り合わせた際、粘着面における気泡の巻き込みが無かったが、アクリル板への貼付時に気泡の巻き込みが起こった。剥離シートの長さ方向及び直交する方向に線状の凸部を形成した比較例2は、アクリル板への貼付時には気泡の巻き込みが起こらず、良好な外観を有していたが、粘着シートと張り合わせた際に、粘着面における気泡の巻き込みが起こった。
また、四角格子状に凸部を形成したものの、剥離シートの長さ方向に対する角度が本発明で規定する範囲を超えるもの(比較例3乃至5)、直線状の凸部の配置間隔が規定する範囲外となるもの(比較例6、7)、さらに、三角格子状に凸部を形成したものの、剥離シートの長さ方向に対する角度が本発明で規定する範囲を超えるもの(比較例8)も、粘着シートとの貼り合わせ時の気泡のなさ、剥離シートを剥がした後の粘着剤層表面の形状、アクリル板への貼付時の気泡のなさの全てを満足する結果を得ることはできなかった。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】図1は剥離シートを上方から見たときの一部を拡大した図である。
【図2】図2は本発明の第一形態の剥離シートを上方から見たときの模式図を示したものである。
【図3】図3は本発明の第一形態の剥離シートを上方から見たときの模式図を示したものである。
【図4】図4は本発明の第二形態の剥離シートを上方から見たときの模式図を示したものである。
【図5】図5は本発明の第二形態の剥離シートを上方から見たときの模式図を示したものである。
【図6】図6は連続した線状の凸部の、剥離シートの長手方向に対して直交する断面の様々な形状を示した図である。
【図7】図7は連続した線状の凸部の、剥離シートの長手方向に対して直交する断面(略三角形)を示した図である。
【図8】図8は連続した線状の凸部の、剥離シートの長手方向に対して直交する断面(略三角形)を示した図である。
【図9】図9は連続した線状の凸部の、剥離シートの長手方向に対して直交する断面(略四角形)を示した図である。
【図10】図10は連続した線状の凸部の、剥離シートの長手方向に対して直交する断面(略四角形)を示した図である。
【図11】図11は連続した線状の凸部の、剥離シートの長手方向に対して直交する断面(略四角形)を示した図である。
【図12】図12は本発明の剥離シートの上方からみた模式図を示す図である。
【図13】図13は略三角形の断面を有する連続した線状の凸部の斜視図を示した図である。
【図14】図14は略三角形の断面を有する連続した線状の凸部の斜視図を示した図である。
【符号の説明】
【0062】
1(1a、1b)、2(2a、2b)、3a(3a’)、3b(3b’)、4a(4a’)、4b(4b’)、5a(5a’)、5b(5b’)、5c ・・・ 線状の凸部
10 ・・・ 剥離シート
20 ・・・ 剥離シート基材
61 ・・・ 略三角形の断面を有する凸部
62 ・・・ 剥離シート基材の上面
63 ・・・ 略三角形の底辺
64 ・・・ 複数の線状の凸部の間の凹部
65 ・・・ 略三角形の頂点
66 ・・・ 略三角形の斜辺
67 ・・・ 略三角形の斜辺
81 ・・・ 略四角形の断面を有する凸部
82 ・・・ 剥離シート基材の上面
83 ・・・ 略四角形の上辺
84 ・・・ 略四角形の底辺
85 ・・・ 略四角形の斜辺
86 ・・・ 略四角形の斜辺
87 ・・・ 複数の線状の凸部の間の凹部
88 ・・・ 略四角形の凸部の上辺の中点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着シートの粘着剤層表面に凹部を形成するための剥離シートであって、
該剥離シートは、剥離シート基材と、該シート基材上に形成された第一の連続した線状の凸部及び第二の連続した線状の凸部を備えてなり、
前記第一の連続した線状の凸部は、該剥離シートの長さ方向に対して右斜め0°より大きく15°未満の角度を有して、100〜2000μmの間隔にて平行に複数本設けられており、
前記第二の連続した線状の凸部は、該剥離シートの長さ方向に対して左斜め0°より大きく15°未満の角度を有して、100〜2000μmの間隔にて平行に複数本設けられており、
前記第一の連続した線状の凸部と前記第二の連続した線状の凸部は互いに交差して、該剥離シートの長手方向側に鋭角部位を有する四辺からなる格子を多数形成してなることを特徴とする、剥離シート。
【請求項2】
粘着シートの粘着剤層表面に凹部を形成するための剥離シートであって、
該剥離シートは、剥離シート基材と、該シート基材上に形成された第三の連続した線状の凸部、第四の連続した線状の凸部及び第五の連続した線状の凸部を備えてなり、
前記第三の連続した線状の凸部は、該剥離シートの長さ方向に対して右斜め10乃至45°の角度を有して、100〜2000μmの間隔にて平行に複数本設けられており、
前記第四の連続した線状の凸部は、該剥離シートの長さ方向に対して左斜め10乃至45°の角度を有して、100〜2000μmの間隔にて平行に複数本設けられており、
前記第五の連続した線状の凸部が、該剥離シートの長さ方向に対して左右斜め10°未満の角度を有して、100〜2000μmの間隔にて平行に複数本設けられており、
前記第三の連続した線状の凸部と前記第四の連続した線状の凸部は互いに交差して、さらに、前記第五の連続した線状の凸部の少なくとも一部は、前記第三の連続した線状の凸部と前記第四の連続した線状の凸部との交点を通り、該剥離シートの長手方向側に鋭角部位を有する三辺からなる格子を多数形成してなることを特徴とする、剥離シート。
【請求項3】
前記第一又は第二の連続した線状の凸部の横断面が略三角形及び/又は略四角形の断面を有する、請求項1に記載の剥離シート。
【請求項4】
前記第一又は第二の連続した線状の凸部の横断面が略三角形の断面を有するとき、該凸部の底辺の長さが5乃至100μm、高さが5乃至50μmである、請求項3記載の剥離シート。
【請求項5】
前記第一又は第二の連続した線状の凸部の横断面が略四角形の断面を有するとき、該凸部の底辺の長さが5乃至100μm、上辺の長さが0より大きく100μm以下、高さが5乃至50μmである、請求項3記載の剥離シート。
【請求項6】
前記第三乃至第五の連続した線状の凸部の横断面のいずれかが略三角形及び/又は略四角形の断面を有する、請求項2に記載の剥離シート。
【請求項7】
前記第三乃至第五の連続した線状の凸部の横断面のいずれかが略三角形の断面を有するとき、該凸部の底辺の長さが5乃至100μm、高さが5乃至50μmである、請求項6記載の剥離シート
【請求項8】
前記第三乃至第五の連続した線状の凸部の横断面のいずれかが略四角形の断面を有するとき、該凸部の底辺の長さが5乃至100μm、上辺の長さが0より大きく100μm以下、高さが5乃至50μmである、請求項6記載の剥離シート。
【請求項9】
前記第一又は第二の連続した線状の凸部は、剥離シートの上方から見て、直線状及び/又は周期性を有する波線状の形状を有している、請求項1及び請求項3乃至請求項5のうち何れか一項に記載の剥離シート。
【請求項10】
前記第一又は第二の連続した線状の凸部のうち少なくとも一部は、剥離シートの上方から見て、周期1000μm以上、振幅100μm以下の周期性を有する波線状の形状を有している、請求項9に記載の剥離シート。
【請求項11】
前記第三乃至第五の連続した線状の凸部は、剥離シートの上方から見て、直線状及び/又は周期性を有する波線状の形状を有している、請求項2及び請求項6乃至請求項8のうち何れか一項に記載の剥離シート。
【請求項12】
前記第三乃至第五の連続した線状の凸部のうち少なくとも一部は、剥離シートの上方から見て、周期1000μm以上、振幅100μm以下の周期性を有する波線状の形状を有している、請求項11に記載の剥離シート。
【請求項13】
粘着シート基材上に形成された粘着剤層の表面に、請求項1乃至請求項12のうち何れか一項に記載の剥離シートを圧着させることにより、該剥離シート表面の凸部が転写されて、連続した線状の凹部が形成された粘着剤層を有する粘着シート。
【請求項14】
粘着シート基材上に形成された粘着剤層の表面に、請求項1乃至請求項12のうち何れか一項に記載の剥離シートを圧着させ、粘着剤層表面に前記剥離シートの凸部形状を転写させることによる、粘着シートの粘着剤層表面に連続した線状の凹部を形成する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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