説明

粘着剤組成物及びそれを用いた医療用粘着材

【課題】
接着力、凝集力又は保持性、及びタックを有し、かつ剥離性にも優れた粘着剤組成物及び該粘着剤組成物を用いた医療用粘着材を提供することを課題とする。
【解決手段】
アクリルポリマーとオルガノシロキサンポリマーの優れた配合比からなる粘着剤組成物及び該粘着剤組成物を用いた医療用粘着材による。具体的には、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とするアクリルポリマーとオルガノシロキサンポリマーが、0.1:99.9〜50:50の配合比で構成されるポリマー成分を100重量部、及びオルガノシロキサン樹脂を0.1〜50重量部を含むことを特徴とする粘着剤組成物及び該粘着剤組成物を用いた医療用粘着材による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着性、タック及び保持性を有しながら、剥離性に優れた粘着剤組成物に関し、該粘着剤組成物を用いた医療及び衛生材料用粘着材に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用粘着材は、病気の予防や治癒、傷の治療を目的として幅広く使用されている。これらは、病院での手術用品、入院及び外来患者の治療から一般家庭でのすり傷、切り傷の処置のために用いられる救急絆、絆創膏等の巻絆が主であり、このような医療用粘着材は、皮膚面から剥離することなく貼付状態が所定時間保持される必要がある。
【0003】
しかし、手術を伴った入院患者は入浴の制限があるため、患部以外の皮膚の表面には角質の他、トリグリセリド、ジグリセリド、脂肪酸、ワックスエステル等を含む皮脂が多く存在している。傷治療の外来患者の他、一般家庭でのすり傷、切り傷の治療する者の場合でも、傷付近を洗浄することが制限される場合があり、皮膚表面に皮脂等が存在することは同様である。皮脂は、頬、額、鼻等に特に多く存在している。カテーテル、チューブ、ガーゼ等の固定のために、皮脂等が多く存在する部位に、粘着材を貼付し、所定時間保持するのは困難である。
【0004】
皮脂等が多く存在する皮膚面に対して、医療用粘着材を貼付して所定時間保持するために、該粘着材は適度な接着性、密着性、保持性を有することが要求される。一方、皮膚への粘着性が強すぎると、使用後に該粘着材を皮膚から剥離する場合に、物理的刺激により痛みを感じたり、体表面の体毛を強制的に削除されたり、逆に皮膚面に粘着剤が残留して、いわゆる「糊残り」が生じるという不都合がある。
医療用粘着材は、皮膚への適度な接着性が必要であると同時に、一定時間経過後に粘着剤が残留したり、物理的刺激による痛みや体毛の削除をすること無く容易に剥離可能であることが要求される。
【0005】
医療用粘着材には、アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とするアクリルポリマーをベースとした粘着剤組成物が多く用いられている(特許文献1)。アクリル系粘着剤組成物は、従来の天然ゴム、合成ゴムなどをベースとした粘着剤に比べて粘着特性の多様性に富み、しかもアレルギー性、糊残り性などに優れ、粘着剤組成物の改良が比較的容易である利点を備えている。
【0006】
医療用粘着材は指圧程度で容易に接着可能であり、接着作業性に優れている。しかし、被着体表面に水分及び/又は油分が存在した場合、又は表面エネルギーが低い場合には接着性が劣ることとなる。このような現象は、アクリル系粘着剤においても同様である。
【0007】
この様な耐皮脂性を改善するために、SEBS、油状物、Tgが-15℃未満の水素化脂環族粘性樹脂を用いた親油性接着剤、又はフェニル基含有ポリオルガノシロキサン縮合体のシリコーン系で対処する方法が提案されている。しかし、前記SEBS、油状物及び/又は水素化脂環族粘性樹脂を用いた親油性粘着剤では、汗などの水分が若干皮膚の表面に存在する場合では接着性が十分ではない。またフェニル基を含有するポリオルガノシロキサン縮合体のシリコーン系粘着剤は、接着性は十分であるが、使用後にテープを皮膚から剥離する場合において物理的刺激により痛みを感じたり、体表面の体毛を強制的に削除されたり、逆に皮膚面に粘着剤が残留し、糊残りが生じるという問題点がある。このように、接着性、保持性及び皮膚からの剥離性は両立させるのが困難である。
【0008】
粘着テープから被着体に粘着剤が移行することがない粘着剤として、無機充填剤を1〜10重量%含有したオルガノシロキサン系感圧粘着剤が開示されている(特許文献2)。該粘着剤は、炭酸カルシウム、酸化チタンなどの無機充填剤を含有したオルガノポリシロキサン系粘着剤にアクリル系粘着剤を含有したものである。さらにアクリル系粘着剤は、2-エチルヘキシル及びアクリル酸ブチルの混合系であるが、無機充填剤とオルガノポリシオキサン系粘着剤とアクリル系粘着剤との相溶性を良好にするために、アクリル系粘着剤の組成に制限があること、また常温でも長期に保存された場合、又は高温での保存された場合など保存状態によって特性が変化し、本来の機能が発現されない可能性がある。また、アクリル系粘着剤とはいえ、2-エチルヘキシル及びアクリル酸ブチルの混合系であるため、選択の幅が狭く、皮脂が多く存在している場合などの特殊な用途では制約があり、十分とは言えない。
【0009】
オルガノシロキサン系ポリマー及び(メタ)アクリル酸エステルを主成分とするアクリル系ポリマーを20:80〜89:11重量%の比率で含有する皮膚貼着用粘着剤について、開示がある(特許文献3)。しかし、アクリル系粘着剤が粘着剤全体の比率の1/2以上に多くなると、皮脂が多く存在している場合では貼付後に十分な皮膚への接着性が得られないため、本来の機能が発見されない可能性がある。
【0010】
すぐれた粘着特性(タック、保持力、粘着力等)を示し、また粘着特性の経時的安定性に優れる創傷覆材用粘着剤組成物として、ポリジオルガノシロキサン100重量部と分岐状ポリオルガノシロキサン70〜135重量部とを、水酸化リチウムにより部分縮合して得られたフェニル基含有ポリオルガノシロキサン縮合体からなる粘着剤組成物の開示がある(特許文献4)。しかし、アクリル系粘着剤が、2-エチルヘキシル及びアクリル酸ブチルの混合系であるので、皮脂が多く存在している場合は十分な初期接着性が得られず、貼合せ直後に剥離し、本来の機能が発見されない可能性がある。
【特許文献1】特許第2539330号公報
【特許文献2】特開平7-52326号公報
【特許文献3】特開平9-206369号公報
【特許文献4】特開2002-200160号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、接着力、凝集力又は保持性、及びタックを有し、かつ剥離性にも優れた医療用粘着剤組成物及びそれを用いた医療用粘着材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するためにアクリルポリマーとオルガノシロキサンポリマーの配合比に着目し、鋭意研究を重ねた結果、これらのポリマー組成物の優れた配合比を見出し、本発明の粘着剤組成物を完成した。
【0013】
すなわち本発明は、以下よりなる。
1.(メタ)アクリル酸エステルを主成分とするアクリルポリマーとオルガノシロキサンポリマーが、0.1:99.9〜50:50の配合比で構成されるポリマー成分を100重量部、及びオルガノシロキサン樹脂を0.1〜50重量部を含むことを特徴とする粘着剤組成物。
2.前記アクリルポリマーが、炭素数が4〜12の脂肪族基を有する(メタ)アクリル酸エステルを主成分するアクリルエステル100重量部に対し、カルボキシル基を有する共重合化合物を1〜15重量部含み、該アクリルポリマーの重量平均分子量が10万以上であることを特徴とする前項1に記載の粘着剤組成物。
3.前記オルガノシロキサンポリマーが、フェニル基を有することを特徴とする前項1又は2に記載の粘着剤組成物。
4.前項1〜3のいずれか一に記載の粘着剤組成物を含む医療用粘着材。
【発明の効果】
【0014】
本発明の粘着剤組成物は、角質及び皮脂が多く存在する皮膚への貼着性及び固定性に優れる。しかも貼着物を引き剥がす際に、皮膚への粘着剤の移行(以下、糊残り)及び物理的刺激が少ない。つまり、本発明の粘着剤組成物を用いた医療及び衛生材料用粘着材は、医療用粘着材として優れた効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の粘着剤組成物は、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とするアクリルポリマーとオルガノシロキサンポリマーで構成されるポリマー成分と、オルガノシロキサン樹脂を含むことを特徴とする。
【0016】
(メタ)アクリル酸エステルを主成分とするアクリルポリマー及びオルガノシロキサンポリマーによって構成されるポリマー成分の配合比は、アクリルポリマー:オルガノシロキサンポリマーが0.1:99.9〜50:50であり、好ましくは0.2:99.8〜49:51である。本発明の粘着剤組成物は、前記ポリマー成分100重量部に対して、さらにオルガノシロキサン樹脂成分を0.1〜50重量部、好ましくは0.15〜49.5重量部含む。
【0017】
上記のポリマー成分に含まれるアクリルポリマーとオルガノシロキサンポリマーの配合比において、アクリルポリマーが0.1未満では、頬などの皮脂成分が多く存在する部位において長時間にわたる接着性の維持や耐水性は十分であるが、使用後に粘着材を皮膚から剥離する場合に、粘着力が強すぎて物理的刺激により痛みを感じたり、体表面の体毛を強制的に削除されるという問題点がある。
【0018】
アクリルポリマーが50以上では、貼付時の初期の接着性は十分であるが、貼付部位に皮脂の成分であるトリグリセリド、ジグリセリド、脂肪酸、ワックスエステル等が多く存在する場合は、例えばカテーテル、チューブ、ガーゼ等の固定性のために、粘着材を貼付するのは困難である。
【0019】
また上記のポリマー成分100重量部に対して、オルガノシロキサン樹脂成分が0.1重量部未満では接着性、特に初期の接着性は十分であるが、使用後に皮膚から剥離する場合において、物理的刺激による痛みや体毛を強制的に削除される等の問題がある。該樹脂成分が、50重量部以上では長時間貼付後の粘着性は十分と考えられるが、タックが不足し、初期の接着性が十分に得られず、カテーテル、ガーゼ等の固定性が十分とはいえない。
【0020】
上記のポリマー成分に含まれるアクリルポリマーとして、アクリル系共重合体を使用することができる。該アクリル系共重合体は、炭素数が4〜12の脂肪族基を有する(メタ)アクリル酸エステルを主成分とするアクリルエステルに、カルボキシル基を有するビニルエステルの共重合化合物を含む。配合比は、該アクリルエステル100重量部に対し、カルボキシル基を有する共重合化合物を1〜15重量部、好ましくは1.2〜14.5重量部である。該共重合化合物の配合量が、1重量部未満では、アクリルポリマーの受け持つであろう接着性が得られない。また15重量部以上ではアクリルポリマーの極性が大きくなり、オルガノシロキサンポリマーとの相溶性が低下し、十分な特性が発現できなくなる。
【0021】
アクリルポリマーの重量平均分子量は、10万以上であることを特徴とする。重量平均分子量が10万以上であれば、アクリルポリマーの配合比が少なくなり、オルガノシロキサンポリマーが多くなる場合であっても皮脂が存在する皮膚への初期接着性も十分にあり、かつ糊残りもない。該重量平均分子量が10万未満では、粘着剤に配合した場合、初期の接着性は良好であるが、相溶性が悪くなり、アクリルポリマーのブルームが発生し、凝集破壊をおこして、糊残りや皮膚刺激の原因となる。
【0022】
本発明におけるアクリル酸エステルの例として、ブチル基、2-エチルヘキシル基、イソノニル基、イソオクチル基のごとく脂肪族基を有するアクリル酸又はメタクリル酸のエステル等を挙げることができる。アクリルエステルにカルボキシル基を有するビニルエステルは、アクリル酸又はメタクリル酸のエステル等を挙げることができる。また凝集性、接着性の向上のために、必要に応じてメチル基を有するアクリル酸エステルを共重合させてもよい。メチル基を有するアクリル酸エステルは、アクリル酸エステルと同様であるが、一般的に、メチル基、ラウリル基、ステアリル基等が挙げられる。さらに必要に応じて共重合モノマーとして、一分子中に2個以上の重合性炭素−炭素二重結合を有する多官能不飽和モノマーであるジビニルアクリレート、トリメチルプロパノールトリアクレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等を併用することもできる。
【0023】
開始剤は公知の一般的なものを使用することができ、例えば、過酸化水素、過酸化ベンゾイルなどの過酸化物、又はAIBNに代表されるアゾ系などの熱分解によりラジカルを発生させるか、紫外線によりラジカルを発生させるものが挙げられる。重合方法は、公知の一般的な手法により行うことができ、例えば溶媒存在下で熱分解による開始剤を用いてラジカルを発生させるか、紫外線による開始剤を用いてラジカルを発生させる方法等が挙げられる。必要に応じて、本特許の範囲内を逸脱しない範囲で、上述の多官能不飽和モノマーの代替として、架橋剤を使用してもよい。架橋剤として、エポキシ系、イソシアネート系、金属イオン系、アミン系、シラノール系及び過酸化物系などを使用することができる。これらの架橋剤を用いた化学的な手法の他に電子線などの物理的な手法等の一般的な方法によることもできる。
【0024】
上記のポリマー成分に含まれるオルガノシロキサンポリマーは、フェニル基を含むのが好適である。具体的には、ケイ素に結合した有機基の10〜20モル%がフェニル基であるオルガノシロキサンと(CH3)3SiO1/2とSiO2/4からなるオルガノシロキサンを含むものが挙げられる。
【0025】
フェニル基を含むオルガノシロキサンとして、SiO1/2に(CH3)3をもつものをM、SiO1/2に(CH3)2と(OH)をM(OH)、(CH3)2SiO2/2をD、SiO2/2に(CH3)と(CH2=CH)をD(VI)、SiO2/2に(C6H5)2をD(2Ph)とし、オルガノシロキサンポリマーとしてM(OH)-D(2Ph)-D-M(OH)、M(OH)-D(2Ph)-D(VI)-D-M(OH)が挙げられる。(CH3)3SiO1/2及びSiO2/4からなるオルガノシロキサンとして、SiO4/2をQとし、M4Q8、M8Q8等が挙げられる。これらフェニル基を含むオルガノシロキサンは、一般的な手法で合成することができる。またそれに適する市販された材料を用いてもよい。さらにオルガノシロキサンポリマー及びオルガノシロキサン樹脂が合成されたものを用いてもよい。市販された材料として、PSA6574、XR37-B5389、XR37-B4399、TSR1560(GE東芝シリコーン株式会社製)、355(ダウコーニング株式会社製)等を使用することができる。
【0026】
オルガノシロキサン樹脂成分は、R3SiO1/2及びSiO2/4からなるオルガノシロキサンが挙げられる。Rは1価の炭化水素基であり、メチル、エチルなどのアルキル基、ビニル、アリルなどのアルケニル基及びフェニル基である。
R3SiO1/2 とSiO2/4からなるオルガノシロキサンは、周知の方法、例えば米国特許3627851号及び米国特許3772247号により変形された、米国特許2676182号のシリカヒドロゾルキャッピング法、又は、米国特許2857356号に開示されるトリアルキル加水分解性シラン及びアルキルシリケートの共加水分解による方法、あるいは米国特許第2857357号に開示される手法を参考とする加水分解可能な基を持ったトリアルキルシラン及びテトラアルコキシ基を有するシランの共加水分解生成物等が挙げられる。合成法は、公知の一般的方法によることができ、ゾル−ゲルによる方法やそれ以外の適当な方法によることができる。
【0027】
加水分解可能な基を持ったトリアルキルシランとして、塩素、臭素、フッ素などのハロゲン、メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基、アクリロキシ基などが用いられる。 テトラアルコキシ基を持ったシランとして、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基の1〜4個の炭素を有する低級アルキル基と酸素が結合したアルコキシ基を4つ有するものが挙げられる。これらを触媒存在下にて反応させ、得ることができる。必要に応じて、得られたオルガノシロキサンの一部をメチル基、フェニル基、アルキル基、高級脂肪酸のエステル基及びエーテル、アルコール基、カルボキシル基、エポキシ基等で修飾してもよい。
【0028】
なお、本発明の粘着剤組成物は、必要に応じて酸化防止剤、紫外線吸収剤などの常用配合剤をさらに添加してもよい。
【0029】
本発明の医療用粘着材は、上記詳述した本発明の粘着剤組成物を支持基材の片面又は両面に設けたものであり、医療用粘着テープ、医療用粘着シート等が挙げられる。その製造方法は、支持基材上に該粘着剤組成物を塗布する方式など、自体公知の医療用粘着材の製造方法を適用することができる。支持基材は、医療用粘着材に用いられる自体公知のものを使用することができ、例えばプラスチック、紙、布、不織布、金属箔等のシート状のものを使用することができる。その素材として、ポリエチレンやポリプロピレン、PVC、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート等を使用することができ、また、必要に応じて、改質剤、老化防止剤など配合してもよい。必要に応じて、支持基材は単層のみでなく、二層以上の多層構造にすることもできる。
【0030】
重量平均分子量の測定方法
予め、分散溶媒を十分に取り除いたポリマーを約10mg採取し、特級THFで溶解して0.1%THF溶液を作成する。十分に溶解した0.1%THF溶液を0.45μmフィルターで濾過して、試料液を調製する。この試料液を以下の測定条件にて測定し、ポリスチレン換算の分子量を重量平均分子量とした。
装置 :HLC8120GPC(東ソー社製)
カラム :G7000HXL+GMHXL+GMHXL(東ソー社製)
カラム温度:40℃
溶離液 :特級THF
流速 :0.8mL/min
標準試料 :ポリスチレン
【実施例】
【0031】
以下に本発明の実施例を示してさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の応用が可能である。
【0032】
(実施例1)
冷却管、窒素ガス導入管、温度計、攪拌機を備えた反応容器に、アクリル酸イソノニルエステル950g、メタアクリル酸50gからなるモノマー混合物を、溶媒として酢酸エチル2300gを攪拌しながら窒素ガスパージした後、加熱して反応相を70℃にした。これに重合開始剤として過酸化ベンゾイル1.0gを添加し重合反応を開始させ、さらに5時間反応させた。その後、重合を完結させるために85℃で2時間熟成してアクリルポリマーを得た。得られポリマーの重量平均分子量は、35万であった。
【0033】
(実施例2)
アクリル酸2-エチルヘキシルエステル960g、アクリル酸40g、ペンタエリスリトールトリアクリレート0.01gからなるモノマー混合物以外は、実施例1と同様の方法にて操作を行い、ポリマーを得た。得られたポリマーの重量平均分子量は、55万であった。
【0034】
(実施例3)
実施例1で得られたアクリルポリマーを100g、PSA6574(GE東芝シリコーン社製)を129g、周知の方法で作製されたM4Q8を8.5g、各々を均一に混合した攪拌液を得た。これを厚さ50μmのポリエステルフィルムの片面に乾燥後の厚さで40μmとなるよう均一に塗布して約120℃で5分乾燥し、さらに60℃で24時間エージングした後、医療用テープを得た。ここで、Mは(CH3)3SiO1/2であり、QはSiO4/2である。
【0035】
(実施例4)
実施例2で得られたアクリルポリマーを20g、PSA6574(GE東芝シリコーン社製)を209g、周知の方法で作成されたM8Q8を40gとする以外は、実施例3と同様の方法にて医療用テープを得た。
【0036】
(実施例5)
実施例1で得られたアクリルポリマーを100g、XR37-B5389(GE東芝シリコーン社製)を118g、M8Q8を17g、イソシアネート系架橋剤(コロネートL:日本ポリウレタン社製)を0.025gとする以外は、実施例3と同様の方法にて医療用テープを得た。
【0037】
(実施例6)
実施例1で得られたアクリルポリマーを50g、XR37-B5389(GE東芝シリコーン社製)を227g、M4Q8を7.5g、イソシアネート系架橋剤(コロネートHL:日本ポリウレタン社製)を0.01gとする以外は、実施例3と同様の方法にて医療用テープを得た。
【0038】
(比較例1)
実施例2で得られたアクリルポリマーを100g、PSA6574(GE東芝シリコーン社製)を6g、M4Q8を10gとする以外は、実施例4と同様の方法にて医療用テープを得た。
【0039】
(比較例2)
実施例1で得られたアクリルポリマーを0.1g、XR37-B5389(GE東芝シリコーン社製)を250g、M8Q8を10gとする以外は、実施例4と同様の方法にて医療用テープを得た。
【0040】
(比較例3)
実施例2で得られたアクリルポリマーを50g、PSA6574(GE東芝シリコーン社製)を250g、M4Q8を400gとする以外は、実施例4と同様の方法にて医療用テープを得た。
【0041】
(比較例4)
実施例1で得られたアクリルポリマーを11.2g、XR37-B5389(GE東芝シリコーン社製)を200gとする以外は、実施例4と同様の方法にて医療用テープを得た。
【0042】
(試験例)
上記実施例3〜6及び比較例1〜4により得られた医療用テープ片を下記の手法にて評価した。その結果を表1に示した。
【0043】
1)接着力:
作製した粘着テープを20mm幅に切断し、23℃/65%RHの雰囲気下で、その粘着剤を介してベーク板に2kg/cm2の圧力で圧着した。圧着後30分経過時、引き剥がし力(180°ピール、剥離速度300mm/min)を測定した。
2)皮膚接着性:
各サンプルを健常なボランティアの前腕内側及び頬に貼付し、12時間経過後の接着状態を目視によって判定した。判定は、剥がれが全く無いか、サンプル周縁部のみ剥離(浮き)が生じている場合を○とし、それ以外を×とした。
3)皮膚刺激性:
上記のように皮膚接着力試験において、12時間前腕内側及び頬に貼付した各サンプルを引き剥がす際の痛さにより判定した。剥がす際に全く痛くないと感じるか、わずかに痛みを感じるか、苦痛を感じない程度のものを〇とし、苦痛を感じるものを×とした。
4)糊残り:
上記皮膚接着試験において、12時間前腕内側に貼付した各サンプルを引き剥がした後に、皮膚面に粘着剤の一部が凝集破壊によって残っているか否かを目視により判定した。判定は糊残りが無かった場合を〇とし、糊残りがあった場合には×とした。
【0044】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0045】
以上説明したように、本発明の粘着剤組成物は、角質及び皮脂が多く存在する皮膚への貼着性及び固定性に優れており、しかも貼着物を引き剥がす際に、皮膚へ糊残り及び物理的刺激が少ない。つまり、本発明の粘着剤組成物を用いた医療用粘着材は、角質の他、皮脂が多く存在している皮膚の表面であっても、必要な時間皮膚へ貼着し、剥がす際にも皮膚への負担が極めて軽いため、医療用粘着材として優れた機能を発揮する。本発明の医療用粘着材は、病気の予防や治癒、傷の治療を目的として幅広く使用が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸エステルを主成分とするアクリルポリマーとオルガノシロキサンポリマーが、0.1:99.9〜50:50の配合比で構成されるポリマー成分を100重量部、及びオルガノシロキサン樹脂を0.1〜50重量部を含むことを特徴とする粘着剤組成物。
【請求項2】
前記アクリルポリマーが、炭素数が4〜12の脂肪族基を有する(メタ)アクリル酸エステルを主成分するアクリルエステル100重量部に対し、カルボキシル基を有する共重合化合物を1〜15重量部含み、該アクリルポリマーの重量平均分子量が10万以上であることを特徴とする請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
前記オルガノシロキサンポリマーが、フェニル基を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一に記載の粘着剤組成物を含む医療用粘着材。

【公開番号】特開2006−204384(P2006−204384A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−17506(P2005−17506)
【出願日】平成17年1月25日(2005.1.25)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】