説明

粘着力測定装置

【課題】 異なる種々の試料の粘着力の測定に際し、非常に安価にしかも簡単に選択して試料の粘着力を測定できる新規な粘着力測定装置を提供することを目的とする。
【課題手段】 接触子3をオーリング形状に構成してあり、この接触子3の接触面を2軸方向とも円弧としたことを特徴とし、このオーリング形状の接触子3を接触子取付部材6に対し着脱自在に装着してあることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着性を有する材料、例えば未加硫ゴム物体或いは粘着テープその他の粘着性を有する材料の粘着力を、どこでも簡単に測定できる粘着力測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
粘着力測定装置は、従来、大型のものが多く、粘着性を有する材料の粘着力を測定するためには、試料を粘着力測定装置が設置されている場所に持参する必要があるという不便があった。
この不便を考慮しどこでも粘着力の測定ができる携帯可能とした粘着力測定装置が開発され公知となっている(例えば特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−273316号公報
【特許文献2】特開2001−159598号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の先行発明では、被測定物の表面に凹凸がある場合に効果的に作用するため、試料取り付け部材に設けた枢軸にタイコ型環状試料取り付け本体、即ち接触子を連結したものが開示されている。
次に、特許文献2の先行発明では、接触子に球形状又は半球形状をしたものが開示されている。
これら先行例では、何れも専用に製作してユーザーに提供する必要がある。ところが、試料の粘着力を測定するに際し、異なる種々の試料の粘着力を測定する場合があり、上記公知の発明では異なる種々の試料の粘着力の測定ができないという課題がある。
本発明は、上記課題に鑑み、異なる種々の試料の粘着力の測定に際し、非常に安価にしかも簡単に選択して試料の粘着力を測定できる新規な粘着力測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そのために、本発明粘着力測定装置は、接触子をオーリング形状に構成してあり、この接触子の接触面を2軸方向とも円弧としたことを特徴とし、このオーリング形状の接触子を接触子取付部材に対し着脱自在に装着してあることを特徴とするものである。
【0006】
上記接触子が単一又は複数であるとよい。
上記接触子に近接して、試料の表面温度を測定する放射温度計を設けてあるとよい。
試料押当板に起立して接触子取付部材の取付軸に平行して起立部材を設け、この起立部材の上端に操作板を設け、粘着力測定装置のグリップおよび駆動モータを支持する基板と上記操作板との間に拡圧バネを設け、基板下部にスタートスイッチを設ける一方、接触子取付部材の取付軸にロードセルを設け、このロードセルに連結して雌ネジを設け、駆動モータの駆動軸に送りネジを設け、この送りネジを上記雌ネジに螺合し、グリップの押下げ操作によりスタートスイッチが自動的にON作動し、駆動モータを起動し、接触子を粘着試料に押圧し引き剥がして試験するようにしたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明粘着力測定装置は、接触子をオーリング形状に構成してあり、この接触子の接触面を2軸方向とも円弧状としたことを特徴とし、このオーリング形状の接触子を接触子取付部材に対し着脱自在に装着してあることを特徴とするから、試験片の表面に凹凸形状がある場合でも、この凹凸形状に上手に追従して、再現性のあるデータを得ることができる効果を有する。また、本発明粘着力測定装置は、特にオーリング形状の接触子を着脱自在にしてあるから、異なる種々の試料に簡単に対応でき、しかも安価に種々の試料を選択できる効果がある。
【0008】
また、本発明粘着力測定装置は、上記接触子が単一又は複数であるから、試験対象となる試験片の状態が変ることによって、適正な接触子を選択できる効果がある。
さらに、本発明粘着力測定装置は、上記接触子に近接して、試料の表面温度を測定する放射温度計を設けてあるから、試験片がどのような温度条件下にあることかを明確にすることができる効果がある。
【0009】
また、本発明粘着力測定装置は、試料押当板に起立して接触子取付部材の取付軸に平行して起立部材を設け、この起立部材の上端に操作板を設け、粘着力測定装置のグリップおよび駆動モータを支持する基板と上記操作板との間に拡圧バネを設け、基板下部にスタートスイッチを設ける一方、接触子取付部材の取付軸にロードセルを設け、このロードセルに連結して雌ネジを設け、駆動モータの駆動軸に送りネジを設け、この送りネジを上記雌ネジに螺合し、グリップの押下げ操作によりスタートスイッチが自動的にON作動し、駆動モータを起動し、接触子を粘着試料に押圧し引き剥がして試験するようにしたものであるから、試験開始のスイッチON操作を自動化することができた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明粘着力測定装置の概略的な正面図である。
【図2】本発明粘着力測定装置の複数の接触子の例を示す概略的な側面図である。
【図3】本発明粘着力測定装置の単数の接触子の例を示す概略的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図中1が本発明粘着力測定装置を把持するためのグリップで、本発明装置の基礎となる基板2上に備えてあり、この基板2上に該グリップ1と平行して、後述する粘着試料を押しつける接触子3の押しつけ又は引き剥がしを操作する駆動モータ4を設けてある。
接触子3はオーリング形状に構成してあり、この接触子3の粘着試料5への接触面を2軸方向にも円弧状としたものであり、円板状をした接触子取付部材6に着脱自在にしてある。
図2に接触子3を複数とした実施例が示してあり、図3に接触子3を単一のものとした実施例が示してあり、何れもその接触子3は2軸方向とも円弧状としてある。
【0012】
上記駆動モータ4には基板2を貫通する駆動軸7を設けてあり、この駆動軸7に上記接触子3の押しつけ又は引き剥がしを操作する送りネジ8を設けてある。
上記接触子取付部材6は、倒立L字状をした取付板9に水平方向に突設した取付中心軸10に軸支してあり、取付板9の水平板11に垂直に起立した取付軸12上に上記ロードセル13を設けてある。
上記ロードセル13に倒立L字状をした支持板14を設けその水平部15に雌ネジ16を設け、この雌ネジ16に上記送りネジ8を螺合してある。
【0013】
粘着試料5上に載置して試料押当板17を設けてあり、この試料押当板17に上記接触子3が位置付けられる透孔18を設けてあり、この試料押当板17に上記接触子取付部材6の取付軸12に平行して起立部材19を起立して設けてある。この起立部材19の上端に水平の操作板20を設けてある。そしてこの操作板20と上記基板2との間に拡圧バネ21を設け、基板2にスタートスイッチ22を、操作板20の上昇によってスタートスイッチ22がONするように位置付けてある。そして起立部材19に放射温度計23を取り付けてある。
【0014】
図1には接触子3が粘着試料5に接触している状態を示しているが、試験前の状況は拡圧バネ21の拡圧弾力により基板2が図1の状況より上昇しており、接触子3が粘着試料より上方に離れており、スタートスイッチ22もOFFの状況にある。
そこでグリップ1を把持して基板2を押し下げると拡圧バネ21が収縮し、起立部材19の操作板20がスタートスイッチ22をON作動する。
このスタートスイッチ22のON作動により駆動モータ4が作動し、送りネジ8により接触子3を押し下げて粘着試料3を押しつける。この接触子3の粘着試料5への接触圧力をロードセル13で監視し、設定の押し圧になった時点で駆動モータ4の駆動を停止し、接触子3の粘着試料5に対する押しつけを停止する。
【0015】
この停止状態を設定時間保持し、この間に放射温度計23で粘着試料の温度を測定して、次に駆動モータ4を反転すると、粘着試料5が試料押当板に拡圧バネ21の弾力で押えられており、接触子3が上昇し、粘着試料5から引き剥がされる。この際ロードセル13が粘着試料と接触子3が離れる時間のピーク値を測定する。そしてその値を装置の表示器又は外部のパソコン又はプリンタに出力する。
【符号の説明】
【0016】
1 グリップ
2 基板
3 接触子
4 駆動モータ
5 粘着試料
6 接触子取付部材
7 駆動軸
8 送りネジ
9 取付板
10 取付中心軸
11 水平板
12 取付軸
13 ロードセル
14 支持板
15 水平部
16 雌ネジ
17 試料押当板
18 透孔
19 起立部材
20 操作板
21 拡圧バネ
22 スタートスイッチ
23 放射温度計



【特許請求の範囲】
【請求項1】
接触子をオーリング形状に構成してあり、この接触子の接触面を2軸方向とも円弧としたことを特徴とし、このオーリング形状の接触子を接触子取付部材に対し着脱自在に装着してあることを特徴とする粘着力測定装置。
【請求項2】
上記接触子が単一又は複数である上記請求項1に記載の粘着力測定装置。
【請求項3】
上記接触子に近接して、試料の表面温度を測定する放射温度計を設けてある上記請求項1または2に記載の粘着力測定装置。
【請求項4】
試料押当板に起立して接触子取付部材の取付軸に平行して起立部材を設け、この起立部材の上端に操作板を設け、粘着力測定装置のグリップおよび駆動モータを支持する基板と上記操作板との間に拡圧バネを設け、基板下部にスタートスイッチを設ける一方、接触子取付部材の取付軸にロードセルを設け、このロードセルに連結して雌ネジを設け、駆動モータの駆動軸に送りネジを設け、この送りネジを上記雌ネジに螺合し、グリップの押下げ操作によりスタートスイッチが自動的にON作動し、駆動モータを起動し、接触子を粘着試料に押圧し引き剥がして試験するようにした上記請求項1乃至3の何れかに記載の粘着力測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−19776(P2013−19776A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153613(P2011−153613)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(000151852)株式会社東洋精機製作所 (26)