説明

粘着性制振材料

【課題】粘着性及び制振性に優れると共に、リサイクル性に優れた粘着性制振材料を提供すること。
【解決手段】スチレン系エラストマーからなる基材樹脂と、軟化剤と、基材樹脂と相溶性を有する粘着付与樹脂とを含有する粘着性制振材料である。該粘着性制振材料は、基材樹脂100重量部に対して、軟化剤を50〜600重量部、及び粘着付与樹脂を30〜500重量部含有する。また、粘着性制振材料は、ローリングボールタック試験法において、100mm以内という粘着性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着性及び制振性に優れた粘着性制振材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、パソコンや携帯電話等の情報関連機器、スピーカー等の音響関連機器等の分野においては、作動時に各種部材が共振を起こす場合がある。このような共振が起こると、騒音が大きくなったり、また、各種機器自体へも悪影響を及ぼしたりするおそれがあった。
そのため、共振を防止する目的で共振を起こすおそれのある部位に、軟性の制振材料を配置することが行われてきた。
【0003】
このような制振材料としては、優れた制振効果を有すると共に、粘着性にも優れていることが望まれている。優れた粘着性を有することにより、他部材との密着性が良くなるため、より一層優れた制振効果を発揮できるからである。また、近年の環境問題に対する高まりから、リサイクルが容易な材料からなるものが望まれている。
【0004】
従来、このような制振材料としては、例えばポリウレタン樹脂からなるものが用いられていた(特許文献1〜3参照)。
また、スチレン系の熱可塑性エラストマーからなる制振材料も用いられていた(特許文献4及び5参照)。
【0005】
しかしながら、従来の制振材料においては、その制振性が充分ではなかった。また、周波数によっては、大きな共振が発生するおそれがあった。
また、特にポリウレタン系樹脂からなる制振材料は、比較的リサイクルが困難であるという問題があった。
【0006】
【特許文献1】特開2001−146549号公報
【特許文献2】特開2001−316447号公報
【特許文献3】特開2001−316448号公報
【特許文献4】特開平11−257395号公報
【特許文献5】特開2000−301640号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はかかる従来の問題点に鑑みてなされたものであって、粘着性及び制振性に優れると共に、リサイクル性に優れた粘着性制振材料を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、スチレン系エラストマーからなる基材樹脂と、軟化剤と、上記基材樹脂と相溶性を有する粘着付与樹脂とを含有する粘着性制振材料であって、
該粘着性制振材料は、上記基材樹脂100重量部に対して、上記軟化剤を50〜600重量部、及び上記粘着付与樹脂を30〜500重量部含有し、
上記粘着性制振材料は、ローリングボールタック試験法において、100mm以内という粘着性を有することを特徴とする粘着性制振材料にある(請求項1)。
【0009】
本発明の粘着性制振材料においては、上記基材樹脂と上記軟化剤と上記粘着付与樹脂とを、上記特定量含有している。また、上記ローリングボールタック試験法において、100mm以内という粘着性を有する。
そのため、上記粘着性制振材料は、高い粘着性を発揮できると共に、優れた制振性を発揮することができる。それ故、上記粘着性制振材料は、他部材に対して密着性良く貼着させることが容易にでき、また、共振を抑制又は防止することができる。
【0010】
また、上記粘着性制振材料においては、上記基材樹脂として熱可塑性のスチレン系エラストマーを含有している。
そのため、上記粘着性制振材料は、比較的容易にリサイクルを行うことができる。
【0011】
このように、本発明によれば、粘着性及び制振性に優れると共に、リサイクル性に優れた粘着性制振材料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明の実施の形態について説明する。
本発明の粘着性制振材料は、上記ローリングボールタック試験法において、100mm以内という粘着性を有する。
ローリングボールタック試験法における粘着性が100mmを超える場合には、粘着性が不充分となり、上記粘着性制振材料の他部材に対する密着性が低下するおそれがある。そのためこの場合には、上記粘着性制振材料の優れた制振性が充分に発揮できなくなるおそれがある。
【0013】
また、上記粘着性制振材料の粘着性は、下記のローリングボールタック試験法により測定することができる。即ち、一定の傾斜角度及び高さを有する傾斜板を準備し、該傾斜板の下部に傾斜面と連続するように配置した粘着性制振材料に、傾斜板の頂点から剛球を滑らせたときに、粘着性新材料の上を剛球が移動する距離で表すことができる(ローリングボールタック試験法)。
【0014】
具体的には、例えば図4に示すごとく、まず傾斜角度θ=21°30’、傾斜高さ(頂点の高さ)a=65.1mmの傾斜板9を準備する。また、試験片(粘着性制振材料)の面(粘着面)が傾斜板9の斜面と連続するように試験片1を傾斜面の下部に水平に配置する。次いで、直径11.1mmの鋼球99を準備し、この鋼球99を傾斜板9の頂点から転がし、水平に置かれた試験片1の粘着面の上を走らせる。このとき、試験片1上を移動した鋼球99の距離lを測定し、この距離をもって粘着性とすることができる。
【0015】
次に、上記粘着性制振材料は、上記基材樹脂100重量部と、上記軟化剤50重量部〜600重量部と、上記粘着付与樹脂30〜500重量部とを含有する。
また、上記軟化剤の含有量が50重量部未満の場合には、上記粘着性制振材料の柔軟性が低下し、被着体への密着性が低下するおそれがある。一方、600重量部を超える場合には、軟化剤がブリードしたり、圧縮永久歪特性が大きくなってしまうおそれがある。好ましくは、上記軟化剤の含有量は、100〜300重量部がよい。
また、上記粘着付与材の含有量が30重量部未満の場合には、上記粘着性制振材料の制振性が低下するおそれがある。一方、500重量部を超える場合には、上記粘着性制振材料の制振性が低下すると共に、柔軟性や粘着性が低下するおそれがある。好ましくは、上記粘着付与樹脂の含有量は、40〜450重量部がよく、より好ましくは、100〜400重量部がよく、さらにより好ましくは、250〜350重量部がよい。
【0016】
次に、上記基材樹脂は、スチレン系エラストマーからなる。このようなスチレン系エラストマーとしては、例えばスチレンエチレンプロピレンスチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレンエチレンエチレンプロピレンスチレンブロック共重合体(SEEPS)、及びスチレンイソブチレンスチレン共重合体(SIBS)等から選ばれる1種以上を用いることができる。
【0017】
また、上記軟化剤としては、例えばパラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ポリαオレフィン(PAO)、液状ポリブテン、及び液状ポリイソブチレン等から選ばれる1種以上を用いることができる。
好ましくは、上記軟化剤は、温度40℃における動粘度100mm2/s以上のパラフィン系プロセスオイルであることがよい(請求項2)。
この場合には、上記基材樹脂と上記軟化剤との相溶性が高くなり、オイルブリードの発生を抑制することができる。また、オイルブリードにより発生したオイルが上記粘着性制振材料の被着体に移行して被着体が汚染されてしまうことを抑制することができる。
【0018】
上記軟化剤の動粘度が100mm2/s未満の場合には、軟化剤が揮発し易くなるため、高温時に上記粘着性制振材料の重量が減少したり、臭気が強くなるおそれがある。また、この場合には、圧縮永久歪が大きくなるおそれがある。
上記軟化剤の動粘度は、例えばJIS K 2283に規定された「原油及び石油製品−動粘度試験方法及び粘度指数算出方法」等により測定することができる。
【0019】
また、上記粘着付与樹脂としては、例えばロジン樹脂、テルペン樹脂、石油樹脂、石炭樹脂、フェノール樹脂、及びキシレン樹脂等から選ばれる1種以上を用いることができる。
上記ロジン樹脂としては、例えばガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジン、水素添加ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、及び変性ロジン等がある。
【0020】
テルペン樹脂としては、例えばα−ピネン系テルペン樹脂、β−ピネン系テルペン樹脂、ジペンテン系テルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、及び水素添加テルペン樹脂等を用いることができる。
石油樹脂としては、例えば脂肪族系(C5系)石油樹脂、芳香族系(C9系)石油樹脂、共重合系(C5/C9系)石油樹脂、脂環族系(水素添加系、ジシクロペンタジエン(DCPD)系)石油樹脂、及びスチレン系(スチレン系、置換スチレン系)石油樹脂等を用いることができる。
石炭樹脂としては、例えばクマロン・インデン樹脂等を用いることができる。
【0021】
また、上記粘着付与樹脂は、上記基材樹脂と相溶性を有する。
相溶性を支配する因子としては、例えば溶解度パラメータ(SP値)等がある。
【0022】
一般的に、上記粘着付与樹脂は、そのSP値が上記基材樹脂のSP値に近く、低分子量、かつ狭分布である程、上記基材樹脂との相溶性が高い。
上記スチレン系エラストマーからなる基材樹脂のSP値は、およそ8〜9である。したがって、上記粘着付与樹脂としては、SP値が7〜10であるものを用いることが好ましい。より好ましくは、上記粘着付与樹脂と上記基材樹脂とのSP値の差が1以下であることがよい。
【0023】
SP値は、モル蒸発エネルギー(ΔE)及びモル体積(V)に基づいて、例えば以下の式(1)に基づいて算出できる。
δ=(ΔE/V)1/2 ・・・・(1)
【0024】
また、上記粘着付与樹脂は、耐熱性に優れるものであることが好ましい。具体的には、上記粘着付与樹脂は、JIS K 2207に規定の石油アスファルト軟化点試験法(環球法)による軟化点が100℃以上であることが好ましい。環球法による軟化点が100℃未満の場合には、上記粘着付与樹脂の耐熱性が低下するため、上記粘着性制振材料の使用環境温度の上限が低くなり過ぎてしまうおそれがある。
【0025】
好ましくは、上記粘着付与樹脂は水添石油樹脂であることがよい(請求項3)。
この場合には、上記基材樹脂と上記粘着付与樹脂との相溶性をより向上させることができる。また、この場合には、上記粘着性制振材料の耐候性を向上させることができる。
【0026】
また、上記粘着性制振材料は、上記基材樹脂、上記軟化剤、及び上記粘着付与樹脂の他に、流動性向上樹脂、フィラー、及び着色顔料等を含有することができる。
上記流動性向上樹脂は、上記基材樹脂100重量部に対して、1〜50重量部含有させることができる。
この場合には、上記粘着性制振材料の流動性を高め、上記粘着性制振材料の成形性を向上させることができる。
上記流動性向上樹脂の含有量が1重量部未満の場合には、上記粘着性制振材料の流動性の向上効果が充分に得られないおそれがある。一方、50重量部を超える場合には、上記粘着性制振材料が硬くなり、柔軟性が低下するおそれがある。
また、上記流動性向上樹脂としては、例えばポリプロピレン、ポリスチレン、変性ポリオレフィン、ポリペンテン、及びフッ素系ポリマー等から選ばれる1種以上を用いることができる。好ましくはポリプロピレンがよい。
【0027】
また、上記フィラーは、上記基材樹脂100重量部に対して、100重量部以下含有させることができる。
この場合には、上記粘着性制振材料が有する粘着性及び制振性を充分に維持しつつ、上記粘着性制振材料の製造コストを低下させることができる。
フィラーの含有量が100重量部を超える場合には、上記粘着性制振材料の粘着性や制振性が充分に発揮されなくなるおそれがある。
【0028】
また、上記着色顔料は、上記基材樹脂100重量部に対して、0.1〜50重量部含有させることができる。
この場合には、上記粘着性制振材料に所望の色を付与することができる。
上記着色顔料の含有量が0.1重量部未満の場合には、所望の着色を充分に付与することができないおそれがある。一方50重量部を超える場合には、着色顔料が凝集して分散不良を起こし、被着体に色が移行してしまうおそれがある。
【0029】
上記着色顔料としては、例えば天然無機顔料、合成無機顔料、天然有機顔料、合成有機顔料等がある。
天然無機顔料としては、例えばイエローオーカー、テールベルト、ローシェンナ、ローアンバー、カッセルアース、白亜、石膏等の土系顔料、バーントシェンナ、バーントアンバー等の焼成土、ラピスラズリ、アズライト、マラカイト、オーピメント、辰砂等の鉱物性顔料、珊瑚末、胡粉等がある。
合成無機顔料としては、例えばコバルトブルー、セルリアンブルー、コバルトバイオレット、コバルトグリーン、ジンクホワイト、チタニウムホワイト、ライトレッド、クロムオキサイドグリーン、マルスブラック等の酸化物顔料、ビリジャン、イエローオーカー、アルミナホワイト等の水酸化物顔料、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、バーミリオン、リトポン等の硫化物顔料、ウルトラマリーン、タルク、ホワイトカーボン、クレー等の珪酸塩顔料、ミネラルバイオレット、ローズコバルトバイオレット等の燐酸塩顔料、シルバーホワイト、炭酸カルシウム等の炭酸塩顔料、金粉、ブロンズ粉、アルミニウム粉等の金属粉顔料、アイボリーブラック、ピーチブラック、ランプブラック、カーボンブラック等の炭素顔料、プルシャンブルー、オーレオリン、雲母チタン等がある。
【0030】
天然有機顔料としては、例えばマダーレーキ、ピンクマダー、ガンボージ、龍の血等の植物性顔料、コチニール、ケルメスレーキ、チリアンパープル、セピア等の動物性顔料、ビチューメン等の鉱物性顔料等がある。
合成有機顔料としては、例えばアリザリンレーキ、ローダミンレーキ、キノリンイエローレーキ等の染付レーキ顔料、レーキレッドC、ブリリアントカーミン6B、パーマネントレッド2B等の溶性アゾ顔料、ファーストイエロー、ジスアゾイエロー、ナフトールレッド等の不溶性アゾ顔料、クロモフタルイエロー、クロモフタルレッド等の縮合アゾ顔料、ニッケルアゾイエロー、ベンズイミダゾロンイエロー等のアゾ錯塩顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン顔料、チオインジゴ、ペリレンレッド、ジオキサジンバイオレット、キナクリドンレッド−アントラキノン、ペリノン、イソインドリノン、アゾメチン等の縮合多環顔料、蛍光顔料等がある。
【0031】
また、上記粘着性制振材料は、上記基材樹脂、上記軟化剤、及び上記粘着付与樹脂をニーダーや押出機などを用いて加熱溶融・混練することにより作製することができる。また、必要に応じて上記流動性向上樹脂、フィラー、着色顔料等を加えることができる。
混練後、例えば射出成形、コンプレッション成形、Tダイ押出成形等により、シート状等の所望の形状に成形することができる。
【0032】
上記粘着性制振材料は、例えば、パソコンのハードディスク、スピーカー、DVDドライブ、CDドライブ、光学装置、精密機械等の振動を防止するための制振材料として用いることができる。また、車のビビリ音等のように振動によって生じる音を防止又は抑制するためにも用いることができる。さらに、上記粘着性制振材料は、地震等における家具、テレビ、金庫、花瓶、美術品等の転倒防止等の用途にも用いることができる。
【実施例】
【0033】
(実施例1)
次に、本発明の実施例につき、図1〜図3を用いて説明する。
本例の粘着性制振材料は、スチレン系エラストマーからなる基材樹脂と、軟化剤と、上記基材樹脂と相溶性を有する粘着付与樹脂とを含有する。この粘着性制振材料は、基材樹脂100重量部に対して、軟化剤を200重量部、及び粘着付与樹脂を40重量部含有する。基材樹脂としては、SEEPSを、軟化剤としては、パラフィン系プロセスオイルを、粘着付与材としては、水添石油樹脂を用いた。
【0034】
また、本例の粘着性制振材料は、さらに、流動性向上樹脂15重量部と、フィラー45重量部と、着色顔料10重量部とを含有する。
流動性向上樹脂としてはポリプロピレンを、フィラーとしては炭酸カルシウムを、着色顔料としてはカーボンブラックを用いた。
【0035】
本例の粘着性制振材料の製造にあたっては、まず、原料として、SEEPS(数平均分子量が20万程度でスチレン含有量が30wt%のもの)、パラフィン系プロセスオイル(温度40℃における動粘度が400mm2/sのもの)、水添石油樹脂(脂環族系水添石油樹脂で軟化点が100℃のもの)、ランダムポリプロピレン(MFRが33g/10minのもの)、重質炭酸カルシウム(平均粒子径が2.7μmのもの)、及びカーボンブラック(粒子径が16nmで窒素吸着比表面積が250m2/gのもの)を準備した。
次いで、これらの原料を、上述の配合割合でニーダーや押出機等を用いて加熱溶融・混練した。混練後、射出成形によりシート状に成形し、粘着性制振材料を得た。これを試料E1とする。
【0036】
また、本例においては、上記粘着付与樹脂としての水添石油樹脂の含有量を変え、他は上記試料E1と同様にして2種類の粘着性制振材料を作製した。これらを試料E2及び試料E3とする。
【0037】
即ち、試料E2は、基材樹脂100重量部に対して、軟化剤を200重量部、粘着付与樹脂を300重量部、流動性向上樹脂を15重量部、フィラー45重量部、及び着色顔料を10重量部含有する。
試料E3は、基材樹脂100重量部に対して、軟化剤を200重量部、粘着付与樹脂を500重量部、流動性向上樹脂を15重量部、フィラー45重量部、及び着色顔料を10重量部含有する。
試料E2及び試料E3においては、基材樹脂、軟化剤、粘着付与樹脂、流動性向上樹脂、フィラー、及び着色顔料の種類としては、上記試料E1と同様のものを用い、これらを原料として、上記試料E1と同様に加熱溶融・混練し、シート状に成形することにより作製した。
【0038】
次に、上記試料E1〜試料E3について、その粘着性を、上記ローリングボールタック試験法により測定した。その結果を、各試料の組成と共に表1に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
表1より知られるごとく、試料E1〜試料E3は、いずれも100mm以下という優れた粘着性を示した。とりわけ試料E1及び試料E2は、40mm以下という非常に優れた粘着性を発揮し、特に試料E1は、0mmという驚異的な粘着性を発揮することができた。
【0041】
次に、各試料(試料E1〜試料E3)について、下記のようにして制振性の評価を行った(制振性試験)。
【0042】
「制振性試験」
まず、各試料から、厚み3mm、縦5mm、横5mmのサイズの試験片をそれぞれ4枚ずつ切り出した。次いで、図1に示すごとく加振装置2を準備した。この加振装置2は、所定の周波数の振動を発生して振台25を振動させる装置である。また、400gの荷重板3を準備した。
この振台25に4枚の試験片(粘着性制振材料)1をそれぞれ配置し、振台25と荷重板3とで試験片を挟み込むように試験片1の上から荷重板3を配置して固定した。このとき、各試験片1は、荷重板3を4点で支持するように振台25の四隅にそれぞれ配置した。
次いで、加振装置2を加速度0.4Gで作動させて振台25を振動させた。このとき、2.5min/sweepという掃引条件下において、振動の周波数を1000Hzまで変化させた。そして、各試料の試験片1の上部に配置した荷重板3の振動を加速度ピックアップで検出し、共振曲線を作製した。その結果を図2に示す。なお、この制振性試験は、温度23℃という条件で行った。また、図2においては、横軸を周波数(Hz)とし、縦軸を共振倍率(dB)とした。
【0043】
また、上記制振性試験にて得られる各試料の共振周波数(Hz)、共振倍率(dB)、及び損失係数を後述の表2に示す。
ここで、共振周波数は、最も大きな共振が発生したときの周波数を示すものである。また、共振倍率は、最も大きな共振を示したときにおける、加振装置が発生した加速度に対する荷重板から得られた加速度の比をデシベルで換算したものである。
【0044】
また、損失係数tanδは下記のようにして、共振曲線から求めることができる。例えば試料E1の損失係数の算出方法について、説明する。
まず、試料E1の共振曲線(図2における実線)において、共振倍率が極大となる部分を拡大した図を図3に示す。
損失係数tanδは、図3に示すごとく、共振曲線において、共振倍率が極大値(共振倍率のピーク値)を示したときの周波数f0と、共振倍率のピーク値から3dB低い共振倍率を示したときの周波数f1及びf2(f1<f0<f2)とに基づいて、下記の数式(2)から算出した(半値幅法)。
tanδ=Δf/f0=(f2−f1)/f0・・・・(2)
【0045】
【表2】

【0046】
図2及び表2より知られるごとく、試料E1においては、周波数約55Hz未満の領域において、比較的高い共振倍率を示すものの、周波数約55Hz以上においては、共振倍率がマイナスの値となっており、試料E1は、特に約55Hz以上の周波数に対して高い制振性を発揮できることがわかる。
【0047】
試料E2においては、共振点が存在せず、即ち、全く共振を起こさないという驚異的な結果が得られた。また、試料E2においては、周波数約75Hz以上の領域で共振倍率がマイナスの値となっており、試料E2は、特に約75Hz以上の周波数に対して高い制振性を発揮できることがわかる。
また、試料E3においては、周波数約100Hz程度以下において、共振倍率がほぼ0付近の値を維持していた。そのため、試料E3は、約100Hz以下において特に優れた制振性を発揮できることがわかる。
【0048】
このように本例の粘着性制振材料(試料E1〜試料E3)は、高い粘着性を示すと共に、優れた制振性を発揮できることがわかる。また、試料E1〜試料E3は基材樹脂としてスチレン系エラストマーを用いており、リサイクル性にも優れていることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】実施例1にかかる、粘着性制振材料(試料E1〜試料E3)の共振倍率を測定する様子を示す説明図。
【図2】実施例1にかかる、粘着性制振材料(試料E1〜試料E3)の共振曲線を示す線図。
【図3】図2における試料E1の共振倍率の極大(共振倍率のピーク)部分の拡大図。
【図4】ローリングボールタック試験法の概略を示す説明図。
【符号の説明】
【0050】
1 粘着性制振材料
2 加振装置
25 振台
3 荷重板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系エラストマーからなる基材樹脂と、軟化剤と、上記基材樹脂と相溶性を有する粘着付与樹脂とを含有する粘着性制振材料であって、
該粘着性制振材料は、上記基材樹脂100重量部に対して、上記軟化剤を50〜600重量部、及び上記粘着付与樹脂を30〜500重量部含有し、
上記粘着性制振材料は、ローリングボールタック試験法において、100mm以内という粘着性を有することを特徴とする粘着性制振材料。
【請求項2】
請求項1において、上記軟化剤は、温度40℃における動粘度100mm2/s以上のパラフィン系プロセスオイルであることを特徴とする粘着性制振材料。
【請求項3】
請求項1又は2において、上記粘着付与樹脂は水添石油樹脂であることを特徴とする粘着性制振材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−111756(P2006−111756A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−301479(P2004−301479)
【出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【出願人】(000242231)北川工業株式会社 (268)
【Fターム(参考)】