説明

粘着製品用皮膚保護剤

【課題】 皮膚との付着性が良く、皮膚に対し刺激性が無く、通気性や透湿性が高く皮膚呼吸や発汗等の生理機能上も問題がなく、排泄物収納袋等の粘着製品を一定時間保持できる粘着力を有し、該収納袋から排泄物を廃棄する際等に該収納袋の粘着絆を剥離しても、皮膚に痛み等の悪影響を与えることがなく、皮膚の角質層を保護できる粘着製品用皮膚保護剤を提供する。
【解決手段】 式(1)で表されるシロキサンモノマーから誘導される単位/(メタ)アクリル酸誘導体から誘導される単位の重量比率が1/99〜25/75の範囲内にある(メタ)アクリル酸誘導体・シロキサンモノマー共重合体が揮発性シリコーン油中に分散されてなる粘着製品用皮膚保護剤。
【化1】


〔式(1)中、Xはラジカル重合性基、Yは2価の連結基、mは10〜1,500の整数を表す。R〜Rは炭素数1〜10の炭化水素基、Rは炭素数1〜20の炭化水素基である。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着製品用皮膚保護剤に関する。更に詳しくは、各種粘着製品を皮膚に貼付する際に粘着製品の物理的刺激や化学的刺激から皮膚を保護し、また、体内からの滲出物や排泄物による皮膚汚染を防止するための皮膚保護剤に関する。
【背景技術】
【0002】
消化器や泌尿器等の疾患で体表面にストーマ(人工の排泄孔)を造設したオストメートや各種の疾患で体表面に人工的に設けた造瘻や自然にできた瘻孔を有する患者は排泄コントロールができない為、ストーマや瘻孔から排泄される排泄物を収納する収納袋を、常時、ストーマや瘻孔の周囲に取付けている必要がある。
この収納袋の取付けには、粘着絆が使用されている。この粘着絆は、排泄物の収納に耐える強力な粘着力を有する必要がある。一方、排泄物の廃棄等の際には、収納袋を取り外す必要があるが、このとき、粘着絆の強力な粘着力のために、皮膚を保護している角質が粘着絆とともに剥ぎ取られてしまう。粘着絆の貼付−剥離を繰り返す場合は、角質の受ける損傷が大きくなり、皮膚炎を惹起してしまうことがある。また、皮膚の弱い人は、粘着絆に含まれる成分により、皮膚炎を起こすことがある。
これらの問題の解決のために、粘着剤成分を極力非刺激性のものにする、pH緩衝作用を有する皮膚保護剤や抗炎症剤を配合する、粘着製品の粘着絆の適用面積を少なくする等の方法が提案されているが、十分な効果が得られているとは言い難い。
また、粘着力が低い粘着剤を使用する、軟膏やパウダーを貼付部位に適用して粘着力を低下させる等の方策も検討されているが、いずれの方法も、本来の要求特性である安定した粘着力を確保する上で問題があり、採用できない。
【0003】
特許文献1には、アクリル酸エステル系重合体と、この重合体と相溶する液状成分とを含む架橋された粘着剤層を有し、粘着剤層中のゲル分率が特定範囲内にあることを特徴とするアクリル系ゲル材が開示されている。このアクリル系ゲル材は、皮膚面への粘着性や密着性が良好であり、しかも皮膚面から剥離除去する際に物理的刺激を与えず、皮膚面を損傷させないことを目的として開発されたものである。その主たる用途が皮膚面に貼付して皮膚面を保護したり、この粘着剤層中に薬物を含有させたりするものであり、上述のような、排泄物収納袋を一定時間保持する粘着力はない。
【0004】
従って、排泄物収納袋を一定時間保持することができる粘着力を有し、しかも、収納袋から排泄物を廃棄する際等に収納袋の粘着絆を剥離しても、皮膚に痛み等の悪影響を与えることがなく、皮膚の角質層を保護することができる粘着性を有する皮膚保護剤が求められていた。
【0005】
【特許文献1】特開平06−23029号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく、鋭意研究を進めた結果、特定の構成を有する重合体と特定の溶媒とを必須構成成分とする組成物を用いれば、皮膚との付着性が良く、皮膚に対し刺激性が無く、しかも通気性や透湿性が高く皮膚呼吸や発汗等の生理機能上も問題がない皮膚保護膜を形成し、且つその上から通常の粘着製品が適用できる粘着特性を有する皮膚保護剤を見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かくして、本発明によれば、下記一般式(1)で表されるシロキサンモノマーから誘導される単位と(メタ)アクリル酸誘導体から誘導される単位との重量比率(シロキサンモノマーから誘導される単位/(メタ)アクリル酸誘導体から誘導される単位)が1/99〜25/75の範囲内にある(メタ)アクリル酸誘導体・シロキサンモノマー共重合体が揮発性シリコーン油中に分散されてなる粘着製品用皮膚保護剤が提供される。
【0008】
【化1】

【0009】
〔一般式(1)中、Xはラジカル重合性基を、Yは2価の連結基を、mは10〜1,500の整数を表す。R、R、R、R、R及びRは炭素数1〜10の炭化水素基であり、Rは炭素数1〜20の炭化水素基である。〕
【0010】
本発明の粘着製品用皮膚保護剤において、上記シロキサンモノマーの数平均分子量は1,000〜120,000であることが好ましい。
本発明の粘着製品用皮膚保護剤において、(メタ)アクリル酸誘導体は、アクリル酸誘導体5〜70重量%とメタクリル酸誘導体95〜30重量%とからなることが好ましい。また、(メタ)アクリル酸誘導体は、−30〜+90℃の範囲内のガラス転移温度を有する単独重合体又は共重合体を与える組成を有するものであることが好ましい。
【0011】
本発明の粘着製品用皮膚保護剤において、(メタ)アクリル酸誘導体・シロキサンモノマー共重合体は、5,000〜500,000の重量平均分子量を有するものであることが好ましい。また、(メタ)アクリル酸誘導体・シロキサンモノマー共重合体は、揮発性シリコーン油中に平均粒径0.05〜2.5μmの粒状体として分散していることが好ましい。
本発明の粘着製品用皮膚保護剤において、揮発性シリコーン油は、250℃以下の沸点及び25℃において330mPa・s以下の粘度を有するものであることが好ましい。
更に、本発明の粘着製品用皮膚保護剤は、それに貼付した粘着製品を剥離する時の剥離強度(1)が0.3〜1.5Nであることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の粘着製品用皮膚保護剤は、皮膚との付着性が良く、皮膚に対し非刺激性で、皮膚呼吸や発汗を阻害しない高い通気性と高い透湿性とを有し、更に皮膚の動きに対しても違和感を与えない追従性を有する皮膚保護膜を形成することができる。一方、この粘着製品用皮膚保護剤は、粘着製品との粘着性が良好で十分な粘着力を有し、この粘着製品用皮膚保護剤を皮膚に塗布して形成した皮膚保護膜上に粘着製品を貼付し、用済み後この粘着製品を除去する際に、皮膚の角質層に損傷を与えないよう皮膚保護膜を維持できる皮膚保護膜強度を有している。
また、本発明の粘着製品用皮膚保護剤は、低粘度であり、速乾性に優れている。従って、皮膚に適用後直ちに、外気温、体温により乾燥して均一な皮膚保護剤の被膜を形成し、塗布後直ちに粘着製品を適用しても、十分な粘着力を示す被膜を形成することができる。
更に、本発明の粘着製品用皮膚保護剤は、これから形成した被膜を皮膚から除去するときには、摩擦するだけで、物理的刺激なしに、皮膚から容易に除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の粘着製品用皮膚保護剤は、特定のシロキサンモノマーと特定の(メタ)アクリル酸誘導体との共重合体(以下、「(メタ)アクリル酸誘導体・シロキサンモノマー共重合体」ということがある。)を必須成分とする。
本発明において用いる(メタ)アクリル酸誘導体・シロキサンモノマー共重合体を得るためのシロキサンモノマーは、一般式(1)で表される。
【0014】
【化2】

【0015】
一般式(1)において、Xは、ラジカル重合性基であれば特に限定されず、その具体例として、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、スチリル基、アリル基、ビニルベンジル基、ビニルエーテル基、アクリルアミド基、ビニルケトン基等を挙げることができる。これらのうち、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基が好ましい。
Yは、単結合又は2価の連結基である。Yは、好ましくは、アルキレン基又は1個又は2以上の酸素原子で遮断される炭化水素鎖を有する直鎖状もしくは分岐鎖状の炭素原子2から10個の飽和炭化水素基である。その具体例としては、−CH−、−CHCH−、−(CH−、−CH−CH(CH)−CH−、−CHCHOCHCH−、−CHOCHCHCH−、−CHCHOCHCH(CH)−、−CHCHOCHCHOCHCH−等を挙げることができる。
、R、R、R、R及びRは炭素数1〜10の炭化水素基であり、好ましくは、メチル基、エチル基又はフェニル基である。
は、炭素数1〜20の炭化水素基であり、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基又はオクチル基である。
mは、10〜1,500の整数であり、好ましくは20〜500の整数である。
【0016】
一般式(1)で表されるシロキサンモノマーの好ましい具体例としては、ポリ(ジメチルシロキサニル)メチル(メタ)アクリレート、ω−ブチルポリ(ジメチルシロキサニル)メチル(メタ)アクリレート、ポリ(ジメチルシロキサニル)プロピル(メタ)アクリレート、ω−ブチルポリ(ジメチルシロキサニル)プロピル(メタ)アクリレート、ポリ(ジメチルシロキサニル)メチルプロピルエーテル(メタ)アクリレート、ω−ブチルポリ(ジメチルシロキサニル)メチルプロピルエーテル(メタ)アクリレート、ポリ(メチルフェニルシロキサニル)メチル(メタ)アクリレート、ω−ブチルポリ(メチルフェニルシロキサニル)メチル(メタ)アクリレート、ポリ(メチルフェニルシロキサニル)プロピル(メタ)アクリレート、ω−ブチルポリ(メチルフェニルシロキサニル)プロピル(メタ)アクリレート、ポリ(メチルフェニルシロキサニル)メチルプロピルエーテル(メタ)アクリレート、ω−ブチルポリ(メチルフェニルシロキサニル)メチルプロピルエーテル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
これらのうち特に、ポリ(ジメチルシロキサニル)メチル(メタ)アクリレート、ω−ブチルポリ(ジメチルシロキサニル)メチル(メタ)アクリレート、ポリ(ジメチルシロキサニル)プロピル(メタ)アクリレート、ω−ブチルポリ(ジメチルシロキサニル)プロピル(メタ)アクリレート等が好ましい。
【0017】
これらのシロキサンモノマーは、従来公知の方法、例えば、片末端(メタ)アクリレート置換クロロシラン化合物と片末端水酸基置換ジメチルポリシロキサンとを常法に従い脱塩素反応させることにより得ることができる。市販品としては信越化学社製のX−24−8201(重合度25)、X−22−174DX(重合度60),X−22−2426(重合度150)、チッソ社製のサイラプレーンFM−0711(分子量1,000)、同FM−0721(分子量5,000)、同FM−0725(10,000)等がある。
【0018】
これらのシロキサンモノマーは、1,000〜120,000の数平均分子量を有することが好ましい。数平均分子量は、より好ましくは、2,000〜50,000である。
数平均分子量が上記下限よりも高いことにより、分散安定性に優れ、上記上限より低いことにより、適度の粘度を有する非水分散体である粘着製品用皮膚保護剤を得ることができる。
【0019】
本発明で用いる(メタ)アクリル酸誘導体・シロキサンモノマー共重合体を得るための(メタ)アクリル酸誘導体の具体例としては、(メタ)アクリル酸及びその誘導体を挙げることができる。
なお、本発明において、「(メタ)アクリル酸」は、「アクリル酸及び/又はメタクリル酸」を意味する。同様に、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート及び/又はメタクリレート」を意味する。
【0020】
(メタ)アクリル酸エステルは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルでも(メタ)アクリル酸アリールエステルでもよく、エステルのアルキル基部分又はアリール基部分に官能基を有していてもよい。
(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル等を挙げることができる。
【0021】
官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジエチルアミノエチル等のアミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸グリシジル等のオキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル;燐酸基含有(メタ)アクリル酸エステル;アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート等のカルボニル含有(メタ)アクリル酸エステル;等を挙げることができる。
(メタ)アクリル酸のアミド誘導体の具体例としては、N−メチロール(メタ)アクリルミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等のN−置換(メタ)アクリルアミド;ダイアセトンアクリルアミド;等を挙げることができる。
(メタ)アクリル酸のニトリル誘導体の具体例としては、(メタ)アクリロニトリルを挙げることができる。
【0022】
本発明において、(メタ)アクリル酸誘導体は、一種類を単独で使用してもよく、二種類以上を併用してもよいが、得られる単独重合体又は共重合体のガラス転移温度が、−30〜+90℃、好ましくは−20〜+60℃の範囲内になるような組成を有するものであることが好ましい。ガラス転移温度を上記範囲内とすることにより、皮膚保護膜形成性が良好で、皮膚保護膜の強度が大きくなり、更に皮膚への付着性が優れたものとなる。
【0023】
上記のようなガラス転移温度の範囲内とするには、単量体の種類や組成を適宜選定すればよいが、例えば、アクリル酸誘導体5〜70重量%/メタクリル酸誘導体95〜30重量%のような組み合わせを例示することができる。
中でも、エステル部分のアルキル基の炭素数が8以下であるアクリル酸アルキルモノマー(アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2−エチルへキシル等)とエステル部分のアルキル基の炭素数が8以下であるメタクリル酸アルキルモノマー(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸2−エチルへキシル等)との組み合わせが好ましい。
【0024】
本発明において、(メタ)アクリル酸誘導体の一部を、これ以外のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸及びその誘導体で置き換えることができる。
このようなα,β−エチレン性不飽和カルボン酸及びその誘導体の具体例としては、クロトン酸等のモノカルボン酸;イタコン酸、フマル酸、マレイン酸等のポリカルボン酸;イタコン酸メチル、フマル酸エチル、マレイン酸ブチル等のポリカルボン酸部分エステル;イタコン酸ジメチル、フマル酸ジエチル、マレイン酸ジブチル等のポリカルボン酸完全エステル;等を挙げることができる。
なお、これらのα,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステルは、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステルでもα,β−エチレン性不飽和カルボン酸アリールエステルでもよく、エステルのアルキル基部分又はアリール基部分に官能基を有していてもよい。
【0025】
本発明に用いる(メタ)アクリル酸誘導体・シロキサンモノマー共重合体においては、一般式(1)で表されるシロキサンモノマー及び(メタ)アクリル酸誘導体に、これらと共重合可能なその他の単量体を共重合させてもよい。
このような単量体の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニルモノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、カプロン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル;等を挙げることができる。
更に、架橋性の単量体を共重合してもよい。架橋性単量体の具体例としては、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0026】
本発明に用いる(メタ)アクリル酸誘導体・シロキサンモノマー共重合体において、シロキサンモノマーから誘導される単位と(メタ)アクリル酸誘導体から誘導される単位との重量比率は、(シロキサンモノマーから誘導される単位/(メタ)アクリル酸誘導体から誘導される単位)の値が、1/99〜25/75の範囲内にあることが必要であり、好ましくは2/98〜15/85、更に好ましくは5/95〜10/90である。
【0027】
シロキサンモノマーから誘導される単位の重量比率が上記下限より低いと、得られる(メタ)アクリル酸誘導体・シロキサン共重合体の撥水性や透湿性が悪く、更に粘着製品との粘着力が高過ぎて、剥離時に皮膚保護膜が皮膚から剥ぎ取られてしまうばかりでなく、更に皮膚保護膜と皮膚との粘着力も高くなるので、結果的に皮膚の角質まで剥ぎ取ってしまうことになる。
また、この(メタ)アクリル酸誘導体・シロキサンモノマー共重合体が揮発性シリコーン油に分散せず、安定な(メタ)アクリル酸誘導体・シリコーン共重合体の分散液(粘着製品用皮膚保護剤)が得られない。
【0028】
一方、シロキサンモノマーから構成される単位の重量比率が上記上限より高いと、(メタ)アクリル酸誘導体・シロキサンモノマー共重合体を塗布して得られる皮膚保護膜は、通気性や透湿性の劣るものとなり、皮膚への違和感が高くなる。更に、この(メタ)アクリル酸誘導体・シロキサンモノマー共重合体は、皮膚への粘着力が小さく、また、粘着製品とも粘着しなくなる。
また、この(メタ)アクリル酸誘導体・シロキサンモノマー共重合体は揮発性シリコーン油に溶解するので、目的とする(メタ)アクリル酸誘導体・シロキサンモノマー共重合体の粒状の分散物(粘着製品用皮膚保護剤)が得られない。
【0029】
本発明において使用する(メタ)アクリル酸誘導体・シロキサンモノマー共重合体は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算値で、5,000〜500,000の重量平均分子量を有することが好ましい。重量平均分子量は、10,000〜100,000であることがより好ましい。
重量平均分子量が、上記範囲内にあることにより皮膚に対し付着性に優れ、十分な皮膚保護膜形成性を有し、且つ、べたつき感がなく、皮膚の動きに対しても違和感を与えない、優れた粘着製品用皮膚保護剤を得ることができる。
【0030】
本発明で使用する(メタ)アクリル酸誘導体・シロキサンモノマー共重合体は、従来公知の方法で重合して得ることができる。
具体的には、シロキサンモノマーと(メタ)アクリル酸誘導体とを、揮発性シリコーン油中で、ラジカル重合開始剤を用いて重合させればよい。これにより、揮発性シリコーン油中に粒状体として分散した状態の(メタ)アクリル酸誘導体・シロキサンモノマー共重合体を得ることができる。
上記重合において、ラジカル重合開始剤は特に限定されず、公知の過酸化物、アゾ化合物等を使用することができる。その具体例としては、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、アゾビスイソブチロニトリル等を挙げることができる。ラジカル重合開始剤の使用量は、モノマーの全量に対し、通常、0.1〜3重量%である。
重合温度は、通常、50〜150℃、好ましくは80〜120℃の範囲であり、重合時間は通常、6〜10時間程度である。また、必要に応じて連鎖移動剤を用いて分子量を調整してもよい。連鎖移動剤の具体例としては、特に限定されるものではないが、メルカプタン、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノール、エチルメルカプトアセテート等を示すことができる。
【0031】
本発明の粘着製品用皮膚保護剤は、(メタ)アクリル酸誘導体・シロキサンモノマー共重合体を揮発性シリコーン油中に分散させてなる。
揮発性シリコーン油の使用量は、特に限定されないが、通常、(メタ)アクリル酸誘導体・シロキサンモノマー共重合体100重量部に対して、300〜10,000重量部である。
本発明において使用できる揮発性シリコーン油は、250℃以下の沸点及び25℃において330mPa・s以下の粘度を有するものであることが好ましい。
揮発性シリコーン油は、更に好ましくは、沸点が220℃以下、融点が30℃以下、粘度が200mPa・s以下(25℃)のものである。
【0032】
具体的にはジメチルポリシロキサン、ジエチルポリシロキサン、ジブチルポリシロキサン等の鎖状ジアルキルポリシロキサン;メチルフェニルポリシロキサン、エチルフェニルポリシロキサン等の鎖状アルキルフェニルポリシロキサン;環状ジメチルポリシロキサン、環状ジエチルポリシロキサン、環状ジブチルポリシロキサン類の環状ジアルキルポリシロキサン;環状メチルフェニルポリシロキサン、環状エチルフェニルポリシロキサン、環状ブチルフェニルポリシロキサン等の環状アルキルフェニルポリシロキサン;等を挙げることができる。
また、アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン類も使用できる。
これらの揮発性シリコーン油は、用途に応じて単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、安全性、乾燥性及びアクリレート・シリコーン共重合体の分散性から、鎖状ジメチルポリシロキサン及び環状ジメチルポリシロキサンが好ましい。
鎖状ジメチルポリシロキサンの具体例としては、へキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、テトラデカメチルヘキサシロキサン、ヘキサデカメチルヘプタシロキサン;メチルトリス(トリメチルシロキシ)シラン;等を挙げることができる。また、環状ジメチルポリシロキサンの具体例としては、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、テトラデカメチルシクロヘプタシロキサン;等を挙げることができる。
【0033】
本発明の粘着製品用皮膚保護剤は、必要に応じて、保湿剤、凝集防止材、抗菌剤、芳香剤等を含有していてもよい。
保湿剤の具体例としては、エイコセン酸オクチル、イソノナン酸イソデシル、パルミチン酸オクチル、ヒアルロン酸、トレハロース、コラーゲン、セラミド、スクワラン、ヒアルロン酸ナトリウムが挙げられる。凝集防止材の具体例としては、ジメチコンが挙げられる。抗菌剤の具体例としては、金属系、無機・有機複合系の各種抗菌剤が挙げられる。芳香剤の具体例としては、ティートリー、ローズウッド、プチグレン、ラバンサラ、ホホバオイル等の各種精油を挙げることができる。
【0034】
本発明の粘着製品用皮膚保護剤の製法は、特に限定されないが、揮発性シリコーン油中で、シロキサンモノマーと(メタ)アクリル酸誘導体とを重合させることにより、(メタ)アクリル酸誘導体・シロキサンモノマー共重合体が粒子の形態で揮発性シリコーン油中に分散した分散体として得ることができる。
得られた揮発性シリコーン油中の(メタ)アクリル酸誘導体・シロキサンモノマー共重合体は、シロキサン構造が表面に配向した粒子構造を有するので、(メタ)アクリル酸誘導体・シロキサンモノマー共重合体の持つ耐水性、耐油性、付着性等の性質に加えて、粘度が低いという利点を有しており、また、速乾性に優れている。
【0035】
本発明の粘着製品用皮膚保護剤中の(メタ)アクリル酸誘導体・シロキサンモノマー共重合体の平均粒径は、0.05〜2.5μmであることが好ましい。特に、皮膚保護膜を透明性に優れたものとするためには、平均粒径は、0.1〜1.5μmであることが好ましい。粒径が上記上限以下であることにより、分散粒子の安定性が十分なものとなるとともに、得られる皮膚保護膜の透明性が優れたものとなる。
【0036】
本発明の粘着製品用皮膚保護剤を皮膚に適用することにより、(メタ)アクリル酸誘導体・シロキサンモノマー共重合体からなる粘着製品用皮膚保護剤の皮膚保護膜を皮膚の上に形成することができる。
本発明の粘着製品用皮膚保護剤を皮膚に適用する方法は、特に限定されないが、粘着製品用皮膚保護剤を皮膚に塗布する方法によるのが、均一な膜厚を有する皮膜を簡便に迅速に形成する上で好ましい。
このとき、粘着製品用皮膚保護剤中の(メタ)アクリル酸誘導体・シリコーンモノマー共重合体の濃度は、特に限定されないが、通常、5%程度である。
【0037】
本発明の皮膚保護剤を塗布して得られる皮膚保護膜は、(メタ)アクリル酸誘導体・シロキサンモノマー共重合体粒子が、その形態を保持したまま、その界面において融着した構造を有しており、(メタ)アクリル酸誘導体・シロキサンモノマー共重合体粒子間に空間が存在する。このため、皮膚保護膜は、通気性及び透湿性に優れていて、皮膚呼吸や汗等の発汗を抑制することがない。また、得られる皮膚保護膜は、フィルム状でないため皮膚の動きを抑制せず、違和感の少ないものとなる。
これに対して、溶液から形成した皮膚保護膜の場合は、フィルム状であって通気性及び透湿性に劣り、皮膚につっぱり感を与える。
【0038】
本発明の粘着製品用皮膚保護剤を適用して得られる(メタ)アクリル酸誘導体・シロキサンモノマー共重合体皮膚保護膜は、(メタ)アクリル酸誘導体のシロキサンモノマーに対する重量比率が大きいことから、皮膚に対して良好な付着性を有し、また、これを皮膚に塗布して、その上から貼付した粘着製品に対して十分な粘着力を発揮する。
本発明の粘着製品用皮膚保護剤は、好適には、皮膚上に形成した皮膚保護剤皮膜の上に適用された粘着製品の剥離時の剥離強度(1)が0.3〜1.5Nの範囲である。
【0039】
更に、この(メタ)アクリル酸誘導体・シロキサンモノマー共重合体皮膚保護膜はシリコーンの撥水性を有し、外部からの汚染水や排泄物を浸透させないので、優れた粘着製品用皮膚保護剤となる。
【0040】
本発明の粘着製品用皮膚保護剤の皮膜を皮膚上に形成する方法としては、スプレー、はけ塗り、ティッシュペーパー等に含浸して塗布する等の方法を示すことができる。このうち、衛生的な観点や均一な塗布の観点から、スプレーやティッシュペーパー等に含浸して塗布によるのが好ましい。
【0041】
スプレーにより粘着製品用皮膚保護剤の皮膜を皮膚上に形成するには、濃度を5%程度に調整した粘着製品用皮膚保護剤を、自然圧で又は噴射剤を用いてスプレー容器に充填し、適用する皮膚面から100mm程度離れた距離から噴霧することにより、適量の粘着製品用皮膚保護剤が皮膚面に均一に散布される。散布後、30秒〜1分で揮発性シリコーン油が気化し、皮膚に薄い粘着製品用皮膚保護剤の膜が形成される。
この膜の上に通常の適用方法に沿って、粘着絆や粘着包帯、例えばオストミー用パウチ、ドレープ、サージカルテープ、牽引用粘着テープ、アスレチックテープ等の粘着製品を適用することができ、短時間に所望の粘着強度を得ることができる。なお、粘着製品を剥がす時も通常の粘着製品を剥がす方法と同様に行えばよい。この粘着製品を剥がした後の皮膚には、スプレーで形成した粘着製品用皮膚保護剤皮膜の大半が膜状に残っている。更に、粘着剤製品を継続して使用する際は、残っている粘着製品用皮膚保護剤皮膜を取り除く必要がなく、その上から不足分を補給して使用でき、経済的でもある。また、残った粘着製品用皮膚保護剤皮膜は無理に除去する必要はないが、これを除去したいときには、軽く指で擦るか、石鹸水で洗うことにより、容易に除去することができる。
【実施例】
【0042】
以下に、実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、本実施例において、特に言及のない限り、部及び%は重量基準である。
【0043】
モノマー、重合体及び皮膚保護剤の特性は、以下のようにして評価した。
(平均分子量)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)装置を用いて測定し、標準ポリスチレン換算で表示する。
(重合体平均粒径)
レーザードップラー/周波数解析型の粒度分析計(日機装社製、商品名「UPA150」)を用いて測定する。
(粘度)
BH型粘度計(東京計器社製)を用いて、2号ローター、30rpm、25℃で測定する。
【0044】
得られた粘着製品用皮膚保護剤(以下、実施例中において、単に「皮膚保護剤」という。)の評価は、以下の試験方法で行った。
(1)皮膚上に形成した皮膚保護剤皮膜からの粘着製品の剥離強度(1)(以下、単に「剥離強度(1)」という。)
剥離強度は、健康な成人男性10人の前腕内側を石鹸洗浄後、充分乾燥し、試験に用いる粘着製品であるサージカルテープ(アクリル系粘着テープ(アルケア社製、商品名「シルキーポア」))を貼付し剥離することを3回繰り返して被検部の前処理を行い、皮膚保護剤試料をケイドライ(登録商標)ウイスパー−132−S(クレシア社製)に含浸させ、前記前腕内側に均一に塗布し、自然乾燥させて皮膚保護剤皮膜を形成した後、この皮膜上に、幅25mm、長さ150mmの前記アクリル系粘着テープを貼付する。48時間後、温度23℃、湿度65%の条件下に、引き剥がし角度180度で測定できるよう前腕を固定し、引張り試験機(インストロン社製、形式5564)を用い、引き剥がし速度1,000mm/分で、前記アクリル系粘着テープの引き剥がしを行い、引き剥がし長さ(引き剥がしによって皮膚から離れた部分の長さ)が85〜145mmの間の平均剥離強度を求めて、剥離強度(1)とする。
なお、上記サージカルテープは、ポリエステル基布にアクリル酸エステル共重合体からなる粘度700Pa・sの粘着剤を50g/m塗布して得られるもので、JIS Z 0237に準じて23℃、相対湿度65%の環境下で、引き剥がし速度300mm/分で180°ピール剥離試験を行ったとき、4N/25mmの剥離強度を有するものである。
【0045】
(2)皮膚上に形成した皮膚保護剤皮膜からの粘着製品の剥離時の粘着力感
上記(1)の剥離強度測定時における粘着剤の粘着力感を下記の4段階で評価する。
◎:充分皮膚に粘着し脱落や周囲の剥れがなく、剥離時充分粘着している状態。
○:確実に粘着している状態。
△:部分的に浮いているか、又は、剥がす際に全く抵抗感がない状態。
×:粘着しない、剥れている又は載っている程度の状態。
【0046】
(3)皮膚上に形成した皮膚保護剤皮膜からの粘着製品の剥離時の痛み
上記(1)の剥離強度測定時における痛みの有無を評価する。
【0047】
(4)ステンレス板上に形成した皮膚保護剤皮膜からの剥離強度(2)(以下、単に「剥離強度(2)」という。)
SUS304鋼板を耐水研磨紙(320番)で磨き、皮膚保護剤試料をケイドライ(登録商標)ワイパー−132−S(クレシア社製)に含浸させてステンレス板に塗布し、自然乾燥させて皮膚保護剤皮膜を形成した後、この皮膜上に、幅25mm、長さ150mmのサージカルテープ(アクリル系粘着テープ(アルケア社製、商品名「シルキーポア」))を貼り、その上をJIS Z 0237 10.2.4に記載する方法の手動式2kgのローラーで2往復させ、37℃で48時間放置した後、23℃、湿度65%の条件下に、引張り試験機(インストロン社製、形式5564)を用い、引き剥がし速度300mm/分、引き剥がし角度180度で、前記アクリル系粘着テープの引き剥がしを行い、引き剥がし長さ(引き剥がしによってSUS304鋼板から離れた部分の長さ)が85〜145mmの間の平均剥離強度を求めて、剥離強度(2)とする。
【0048】
(5)(皮膚保護剤皮膜形成時の違和感と皮膚追従性)
健康な成人男性10人の上腕内側(肘部の内側)を石鹸洗浄後、充分乾燥し、スプレー容器に充填した皮膚保護剤試料を前記上腕内側に約10cmの距離から噴霧し、乾燥後、腕を屈曲させたときの違和感を下記の4段階で評価する。
◎:全く違和感がない。
○:多少気になる。
△:異物感がある。
×:ツッパリ感がある。
【0049】
(6)(透湿性)
皮膚保護剤試料0.7gを採取し、ケイドライ(登録商標)ワイパー−132−S(直径70mm、クレシア社製)に含浸させ、常温で一昼夜自然乾燥する。得られた皮膚保護剤含浸ワイパーをJIS L 1099 A−2ウオーター法に基づいて4時間測定に供し、1時間当たりに換算して透湿量(単位:g/m/h)を求める。透湿量が大きいほど、透湿性がよい。
【0050】
(実施例1)
温度計、還流冷却器、滴下ロート及び攪拌機を取付けた4つ口フラスコに、デカメチルシクロペンタシロキサン(揮発性シリコーン油。沸点210℃、25℃における粘度3.7mPa・s、信越化学工業社製、商品名「KF−995」)65.9部を仕込み、窒素ガスで置換後、120℃に加温し、メタクリル酸メチル(MMA)61.5部、アクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)31.2部、ポリ(ジメチルシロキサニル)プロピルメタクリレート(数平均分子量4,600、信越化学工業社製、商品名「LSF−240」)(シロキサンモノマー(4))7.3部及びt−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート(PBO)1.6部の混合物を200分かけて滴下し、更に200分間同温度に保持して重合させた後、室温に戻して、(メタ)アクリル酸誘導体・シロキサンモノマー共重合体の乳白色非水系分散液(粘着製品用皮膚保護剤(1))を得た。この分散液の固形分濃度は60%、粘度は570mPa・sであった。また、この共重合体の重量平均分子量は31,000で、粒子の平均粒径は0.83μmであった。これらの結果を表1に示す。
この粘着製品用皮膚保護剤(1)をヘキサメチルジシロキサン(沸点99−100℃)で希釈して、共重合体濃度を5%とした。この粘着製品用皮膚保護剤(1)について、各特性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0051】
【表1】

【0052】
表1の注
シロキサンモノマー(1):3−メタクリロイルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン(分子量458)
シロキサンモノマー(2):ポリ(ジメチルシロキサニル)プロピルメタクリレート(数平均分子量2,000)
シロキサンモノマー(3):ポリ(ジメチルシロキサニル)プロピルメタクリレート(数平均分子量4,000)
シロキサンモノマー(4):ポリ(ジメチルシロキサニル)プロピルメタクリレート(数平均分子量4,600)
シロキサンモノマー(5):ω−ブチルポリ(ジメチルシロキサニル)プロピルメタクリレート(数平均分子量10,000)
シロキサンモノマー(6):ポリ(ジメチルシロキサニル)プロピルメタクリレート(数平均分子量12,000)
シロキサンモノマー(7):ポリ(ジメチルシロキサニル)プロピルメタクリレート(数平均分子量70,000)
シロキサンモノマー(8):ポリ(ジメチルシロキサニル)プロピルメタクリレート(数平均分子量130,000)
【0053】
【表2】

【0054】
(実施例2)
シロキサンモノマーとして、ポリ(ジメチルシロキサニル)プロピルメタクリレート(数平均分子量2,000の信越化学工業社製、商品名「LSF−230」)(シロキサンモノマー(2))を用い、単量体組成、揮発性シリコーン油量及び触媒量を表1に示すように変更するほかは、実施例1と同様にして、(メタ)アクリル酸誘導体・シロキサンモノマー共重合体の乳白色非水系分散液(粘着製品用皮膚保護剤(2))を得た。この分散液の固形分濃度は55%、粘度は430mPa・sであった。また、この共重合体の重量平均分子量は23,000で、粒子の平均粒径は0.23μmであった。
この粘着製品用皮膚保護剤(2)をヘキサメチルジシロキサンで希釈して、共重合体濃度を5%とした。この粘着製品用皮膚保護剤(2)について、各特性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0055】
(実施例3)
シロキサンモノマーとして、ω−ブチルポリ(ジメチルシロキサニル)プロピルメタクリレート(数平均分子量10,000、チッソ社製、商品名「FM‐0725」)(シロキサンモノマー(5))を用い、単量体組成、揮発性シリコーン油量及び触媒量を表1に示すように変更するほかは、実施例1と同様にして、(メタ)アクリル酸誘導体・シロキサンモノマー共重合体の乳白色非水系分散液(粘着製品用皮膚保護剤(3))を得た。
この分散液の固形分濃度は60%、粘度は250mPa・sであった。また、この共重合体の重量平均分子量は56,000で、粒子の平均粒径は0.28μmであった。
この粘着製品用皮膚保護剤(3)をヘキサメチルジシロキサンで希釈して、共重合体濃度を5%とした。この粘着製品用皮膚保護剤(3)について、各特性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0056】
(実施例4)
シロキサンモノマーとして、新たに合成したポリ(ジメチルシロキサニル)プロピルメタクリレート(数平均分子量70,000)(シロキサンモノマー(7))を用い、単量体組成、揮発性シリコーン油量及び触媒量を表1に示すように変更するほかは、実施例1と同様にして、(メタ)アクリル酸誘導体・シロキサンモノマー共重合体の乳白色非水系分散液(粘着製品用皮膚保護剤(4))を得た。この分散液の固形分濃度は59%、粘度は220mPa・sであった。また、この共重合体の重量平均分子量は74,000で、粒子の平均粒径は1.15μmであった。
この粘着製品用皮膚保護剤(4)をヘキサメチルジシロキサンで希釈して、共重合体濃度を5%とした。この粘着製品用皮膚保護剤(4)について、各特性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0057】
(実施例5)
単量体組成、揮発性シリコーン油量及び触媒量を表1に示すように変更するほかは、実施例2と同様にして、(メタ)アクリル酸誘導体・シロキサンモノマー共重合体の乳白色非水系分散液(粘着製品用皮膚保護剤(5))を得た。この分散液の固形分濃度は65%、粘度は530mPa・sであった。また、この共重合体の重量平均分子量は25,000で、粒子の平均粒径は0.07μmであった。
この粘着製品用皮膚保護剤(5)をヘキサメチルジシロキサンで希釈して、共重合体濃度を5%とした。この粘着製品用皮膚保護剤(5)について、各特性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0058】
(実施例6)
シロキサンモノマーとして、新たに合成したポリ(ジメチルシロキサニル)プロピルメタクリレート(数平均分子量4,000)(シロキサンモノマー(3))を用い、単量体組成、揮発性シリコーン油量及び触媒量を表1に示すように変更するほかは、実施例1と同様にして、(メタ)アクリル酸誘導体・シロキサンモノマー共重合体の乳白色非水系分散液(粘着製品用皮膚保護剤(6))を得た。この分散液の固形分濃度は62%、粘度は400mPa・sであった。また、この共重合体の重量平均分子量は28,000で、粒子の平均粒径は0.13μmであった。
この粘着製品用皮膚保護剤(6)をヘキサメチルジシロキサンで希釈して、共重合体濃度を5%とした。この粘着製品用皮膚保護剤(6)について、各特性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0059】
(実施例7)
単量体組成、揮発性シリコーン油量及び触媒量を表1に示すように変更するほかは、実施例6と同様にして、(メタ)アクリル酸誘導体・シロキサンモノマー共重合体の乳白色非水系分散液(粘着製品用皮膚保護剤(7))を得た。この分散液の固形分濃度は62%、粘度は380mPa・sであった。また、この共重合体の重量平均分子量は29,000で、粒子の平均粒径は0.15μmであった。
この粘着製品用皮膚保護剤(7)をヘキサメチルジシロキサンで希釈して、共重合体濃度を5%とした。この粘着製品用皮膚保護剤(7)について、各特性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0060】
(比較例1)
シロキサンモノマーとして、3−メタクリロイルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン(シロキサンモノマー(1))を用い、単量体組成、揮発性シリコーン油量及び触媒量を表1に示すように変更するほかは、実施例1と同様にして、(メタ)アクリル酸誘導体・シロキサンモノマー共重合体の透明な粘性溶液(粘着製品用皮膚保護剤(C1))を得た。この粘性液状物の固形分濃度は62%、粘度は620mPa・sであった。また、この共重合体の重量平均分子量は12,000であった。
この粘着製品用皮膚保護剤(C1)をヘキサメチルジシロキサンで希釈して、共重合体濃度を5%とした。この粘着製品用皮膚保護剤(C1)について、各特性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0061】
(比較例2)
シロキサンモノマーとして、新たに合成したポリ(ジメチルシロキサニル)プロピルメタクリレート(数平均分子量130,000)(シロキサンモノマー(8))を用い、単量体組成、揮発性シリコーン油量及び触媒量を表1に示すように変更するほかは、実施例1と同様にして、(メタ)アクリル酸誘導体・シロキサンモノマー共重合体の透明な粘性溶液(粘着製品用皮膚保護剤(C2))を得た。この半透明液状物の固形分濃度は61%、粘度は500mPa・sであった。また、この共重合体の重量平均分子量は115,000であった。
この粘着製品用皮膚保護剤(C2)をヘキサメチルジシロキサンで希釈して、共重合体濃度を5%とした。この粘着製品用皮膚保護剤(C2)について、各特性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0062】
(比較例3)
ポリ(ジメチルシロキサニル)プロピルメタクリレート(数平均分子量12,000、信越化学工業社製片末端反応性シリコーンオイル「LSF−250」)(シロキサンモノマー(6))40部をデカメチルシクロペンタシロキサン(揮発性シリコーン油。信越化学工業社製、商品名「KF−995」)100部に溶解して、固形分濃度28%、粘度260mPa・sの透明な粘性溶液(粘着製品用皮膚保護剤(C3))を得た。
この粘着製品用皮膚保護剤(C3)をヘキサメチルジシロキサンで希釈して、固形分濃度を5%とした。この粘着製品用皮膚保護剤(C3)について、各特性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0063】
(比較例4)
シロキサンモノマーとして、ポリ(ジメチルシロキサニル)プロピルメタクリレート(数平均分子量4,600、信越化学工業社製片末端反応性シリコーンオイル、商品名「LSF−240」)(シロキサンモノマー(4))を用い、単量体組成、揮発性シリコーン油量及び触媒量を表1に示すように変更するほかは、実施例1と同様にして、(メタ)アクリル酸誘導体・シロキサンモノマー共重合体の透明な粘性溶液(粘着製品用皮膚保護剤(C4))を得た。この透明粘性液状物の固形分濃度は56%、粘度は460mPa・sであった。また、この共重合体の重量平均分子量は34,000であった。
この粘着製品用皮膚保護剤(C4)をヘキサメチルジシロキサンで希釈して、共重合体濃度を5%とした。この粘着製品用皮膚保護剤(C4)について、各特性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0064】
(参考例)
皮膚保護剤を全く用いないほかは、実施例1と同様に各特性の試験を行った。結果を表2に示す。
【0065】
表2に示すように、(メタ)アクリル酸誘導体・シロキサンモノマー共重合体の組成比率は、本発明の規定に合致するが、本発明で規定するシロキサンモノマーとは構造の異なるシロキサンモノマーを使用して得た共重合体を含有する粘着製品用皮膚保護剤(C1)(比較例1)及び本発明の規定より大きい分子量を有するシロキサンモノマーを使用して得た粘着製品用皮膚保護剤(C2)(比較例2)は、無色透明の粘性溶液であり、これから得られる保護皮膜は、フィルム状で、透湿度も小さく、貼付中にツッパリ感があった。
シロキサンモノマーのみからなり、本発明で規定する(メタ)アクリル酸誘導体を共重合していない粘着製品用皮膚保護剤(C3)(比較例3)は、無色透明の粘性溶液であり、これから得られる保護皮膜は、ベタツキがあり、しかも皮膚に付着しなかった。
更に、単量体組成比率が本発明の規定を外れる(メタ)アクリル酸誘導体・シロキサンモノマー共重合体を用いて得られる粘着製品用皮膚保護剤(C4)(比較例4)は、無色透明の粘性溶液であり、これから得られる保護皮膜は、皮膚に付着せず、皮膚保護剤としての機能を有しなかった。
これに対して、本発明の粘着製品用皮膚保護剤は、乳白色分散液であり、これを皮膚に噴霧又は塗布することにより得た保護皮膜は、違和感を与えず、これに粘着製品を貼付したときに十分な粘着力(剥離強度)を有し、粘着製品を剥離する際に皮膚に痛みを与えることがない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるシロキサンモノマーから誘導される単位と(メタ)アクリル酸誘導体から誘導される単位との重量比率(シロキサンモノマーから誘導される単位/(メタ)アクリル酸誘導体から誘導される単位)が1/99〜25/75の範囲内にある(メタ)アクリル酸誘導体・シロキサンモノマー共重合体が揮発性シリコーン油中に分散されてなる粘着製品用皮膚保護剤。
【化1】

〔一般式(1)中、Xはラジカル重合性基を、Yは2価の連結基を、mは10〜1,500の整数を表す。R、R、R、R、R及びRは炭素数1〜10の炭化水素基であり、Rは炭素数1〜20の炭化水素基である。〕
【請求項2】
シロキサンモノマーの数平均分子量が1,000〜120,000である請求項1に記載の粘着製品用皮膚保護剤。
【請求項3】
(メタ)アクリル酸誘導体が、アクリル酸誘導体5〜70重量%とメタクリル酸誘導体95〜30重量%とからなることを特徴とする請求項1に記載の粘着製品用皮膚保護剤。
【請求項4】
(メタ)アクリル酸誘導体が、−30〜+90℃の範囲内のガラス転移温度を有する単独重合体又は共重合体を与える組成を有するものである請求項1に記載の粘着製品用皮膚保護剤。
【請求項5】
(メタ)アクリル酸誘導体・シロキサンモノマー共重合体が、5,000〜500,000の重量平均分子量を有するものである請求項1に記載の粘着製品用皮膚保護剤。
【請求項6】
(メタ)アクリル酸誘導体・シロキサンモノマー共重合体が、揮発性シリコーン油中に平均粒径0.05〜2.5μmの粒状体として分散している請求項1に記載の粘着製品用皮膚保護剤。
【請求項7】
揮発性シリコーン油が、250℃以下の沸点及び25℃において330mPa・s以下の粘度を有するものである請求項1に記載の粘着製品用皮膚保護剤。
【請求項8】
粘着製品剥離時の剥離強度(1)が0.3〜1.5Nである請求項1〜7のいずれかに記載の粘着製品用皮膚保護剤。

【公開番号】特開2007−20597(P2007−20597A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−202538(P2005−202538)
【出願日】平成17年7月12日(2005.7.12)
【出願人】(000151380)アルケア株式会社 (88)
【Fターム(参考)】