説明

精米機用抵抗装置

【課題】玄米タンクからそのまま無精白で玄米を取出すことができるコンパクトな共用式の精米システムの中心としての精米機の構成要素として、簡易構成により、製造コスト、メンテナンス、取扱いの問題を回避できる精米機用抵抗装置を提供する。
【解決手段】精米機用抵抗装置は、搗精部(2)の送出口(2a)に臨む抵抗板(3)と、この抵抗板(3)を進退可能に揺動支持する開閉アーム(4)と、抵抗板(3)に所定の弾発力を作用する加圧機構(5)と、この加圧機構(5)による弾発力を回動軸(6a)の回動操作によって調節するための回動調節機構(6)とから構成され、上記回動調節機構(6)と開閉アーム(4)との間には、回動調節機構(6)の回動軸(6a)の回動操作によって抵抗板(3)を開放動作させる作用部(7a)と従動部(7b)とからなる開放機構(7)を形成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回動調節機構を備えて搗精圧力を調節する精米機用抵抗装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
搗精圧力を回動軸操作によって調節する回動調節機構を備えた精米機用抵抗装置が知られている。例えば、特許文献1に示される精米機用抵抗装置は、搗精部の送出口に臨む抵抗板と、この抵抗板を進退可能に揺動支持する開閉アームと、この開閉アームを介して抵抗板に所定の弾発力を加える加圧機構と、この加圧機構の弾発力を回動軸操作によって調節する回動調節機構等を備えて構成される。この抵抗装置を備える精米機は、回動調節機構の回動操作により、無圧を含む広い範囲に及ぶ搗精圧で玄米を精米処理することができる。
【特許文献1】特開平11−19523号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記構成の抵抗装置は、回動調節機構を操作して加圧機構による弾発力を無圧に調節した場合にあっても、抵抗板と開閉アームによる揺動部分の自重によるモーメントが弾発力として搗精部の送出口に作用することから、特に、揺動部分が大きな自重を有する大型機では、搗精部から玄米を無圧排出しようとしても、その自重による搗精圧力が作用して玄米表面に白っぽい荒れが生じるという問題を有し、その解決のために抵抗板を開放するための開放レバーを開閉アーム等に別設した場合には、構成の複雑化により、コスト、メンテナンスの点で問題を招き、また、別設の開放レバーと回動調節機構が競合しないように煩雑な取扱いを強いられるという問題を招くこととなる。
【0004】
解決しようとする問題点は、玄米タンクからそのまま無精白で玄米を取出すことができるコンパクトな共用式の精米システムの中心としての精米機の構成要素として、簡易構成により、製造コスト、メンテナンス、取扱いの問題を回避できる精米機用抵抗装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、搗精部の送出口に臨む抵抗板と、この抵抗板を進退可能に揺動支持する開閉アームと、この開閉アームを介して抵抗板に所定の弾発力を作用する加圧機構と、この加圧機構による弾発力を回動軸の回動操作によって調節するための回動調節機構とからなる精米機用抵抗装置において、上記回動調節機構と開閉アームとの間には、回動調節機構の回動軸の回動操作によって抵抗板を開放動作させる作用部と従動部とからなる開放機構を形成したことを特徴とする。
上記構成の精米機用抵抗装置は、加圧機構から開閉アームを介して抵抗板に作用する弾発力が搗精部に搗精圧力として作用して精米処理を可能とし、その弾発力は回動調節機構によって調節され、また、回動調節機構と開閉アームとの間に抵抗板の開放機構を組み込んだことから、回動調節機構により開閉アームを介して抵抗板が開放動作され、送出口との間の隙間から玄米の無圧排出が可能となる。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1の構成において、前記開放機構は、回動調節機構の回動軸から径方向に突設した揺動アームを作用部とし、この作用部の回動干渉範囲に開閉アームから突設した突状部材を従動部として構成したことを特徴とする。
上記構成の精米機用抵抗装置は、揺動アームと突状部材とによる簡易な構成の開放機構により、抵抗板の開放動作が可能となる。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1の構成において、前記回動調節機構の回動軸の回動位置について、開放機構が抵抗板を開放動作させる開放動作位置は、抵抗板の弾発力が最小の最小圧位置から最大の最大圧位置までの調節範囲における最小圧位置の外側に配置したことを特徴とする。
上記構成の精米機用抵抗装置は、回動調節機構の開放動作位置が最小圧位置の外に位置することから、抵抗板の抵抗が最小となる角度位置を越えると抵抗板の開放によって玄米そのままの無精白送出ができる。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の構成の精米機用抵抗装置は、加圧機構から開閉アームを介して抵抗板に作用する弾発力が搗精部に搗精圧力として作用して精米処理を可能とし、その弾発力は回動調節機構によって調節され、また、回動調節機構と開閉アームとの間に抵抗板の開放機構を組み込んだことから、回動調節機構により開閉アームを介して抵抗板が開放動作され、送出口との間の隙間から玄米の無圧排出が可能となる。
上記のように、抵抗板の開放機構を回動調節機構に組み込んだ簡易な構成の抵抗装置により、コスト、メンテナンス、取扱いの問題を回避して精米機から玄米そのままの無精白送出が可能となるので、その結果、玄米タンクからの送路切替え機構を要することのない簡易な構成により、コンパクトな構成で玄米送出が可能な共用式の精米システムについて、低コスト化、メンテナンスの容易化を実現することができる。
【0009】
請求項2の構成の精米機用抵抗装置は、揺動アームと突状部材とによる簡易な構成の開放機構により、抵抗板の開放動作が可能となる。
【0010】
請求項3の構成の精米機用抵抗装置は、回動調節機構の開放動作位置が最小圧位置の外に位置することから、抵抗板の抵抗が最小となる角度位置を越えると抵抗板の開放によって玄米そのままの無精白送出ができるので、精米と玄米の目的に応じた簡易な回動操作により、違和感なく、かつ、確実な操作が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
上記技術思想に基づいて具体的に構成された実施の形態について以下に図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明に係る精米機用抵抗装置の正面図(a)と縦断断面図(b)である。
抵抗装置1は、搗精部2の送出口2aに臨む抵抗板3と、この抵抗板3を進退可能に揺動支持する開閉アーム4と、この開閉アーム4を介して抵抗板3に所定の弾発力を加える加圧機構5と、この加圧機構5による弾発力を回動調節するための回動軸6aによる回動調節機構6とから構成され、回動調節機構6と開閉アーム4との間には、回動軸6aの回動操作によって抵抗板3を開放動作させる開放機構7を形成する。
【0012】
詳細に説明すると、精米機の搗精部2は、機体の前後方向に沿って配置した筒状金網2bの内部に搗精ロール2cを回転可能に備え、その前端位置に送出口2aを開口する。
抵抗板3は、搗精部2の送出口2aを閉鎖可能な円板体であり、送出口2aの正面に臨んで進退動作可能に開閉アーム4の下端に支持する。
開閉アーム4は、その中段位置を左右の側板4b,4bの間に架設した水平支軸4aによって揺動可能に軸支するとともに、その上端を加圧機構5の正面に配置する。
加圧機構5は、開閉アーム4の上端に所定の弾発力を正面方向に作用するコイルスプリング5aと、その後端部を進退可能に受けて弾発力を設定するスライド体5bをガイド筒5cに収容して構成する。スライド体5bは、その進退位置に応じてコイルスプリング5aを圧縮することにより、開閉アーム4を介して対応する弾発力Dを抵抗板3に作用する。
【0013】
回動調節機構6は、機体の前後方向に沿って軸支した回動軸6aと、その後端に取付けた円筒カム6bと、前端位置に取付けた調節ダイヤル6cとから構成される。円筒カム6bには螺旋状のカム面Eを形成し、このカム面Eを加圧機構5のスライド体5bと摺動可能に当接することにより、調節ダイヤル6cの回動角度位置と対応してコイルスプリング5aの弾発力を変更可能に構成する。
【0014】
調節ダイヤル6cの調節範囲は、抵抗板3が搗精部2の送出口2aを閉鎖した状態において、加圧機構5のコイルスプリング5aが自由長となる最小圧位置から最圧縮長となる最大圧位置に至る範囲を越えて回動可能に、好ましくは、最小圧位置の外方まで無加圧の範囲を拡大した所定の延長位置まて回動可能に構成する。
【0015】
開放機構7は、その要部拡大平面図を図2に示すように、回動調節機構6の回動軸6aからその径方向に突出する揺動アーム7aによる作用部を転動可能なカラーによって構成し、この揺動アーム7aの干渉動作を受け入れるガイド面Fを備えて所定の従動距離Gを従動動作する突状部材7bを従動部として開閉アーム4の上部に設ける。
【0016】
調節ダイヤル6cの回動操作範囲においては、回動軸6aと一体構成の揺動アーム7aが突状部材7bに干渉して抵抗板3が強制開放され、この時の揺動アーム7aの位置を開放位置Aとすると、加圧機構5が無加圧となる時および最大圧となる時の揺動アーム7aの角度位置をそれぞれ最小圧位置B、最大圧位置Cとして、この最小圧位置Bから最大圧位置Cまでの角度範囲から外れた位置に開放位置Aを配置し、好ましくは、最小圧位置Bの外方の延長位置に配置する。
【0017】
上記構成の精米機用抵抗装置1は、加圧機構5から開閉アーム4を介して弾発力Dが抵抗板3に作用し、この弾発力Dによって搗精部2に搗精圧力が作用して玄米を精米処理し、その抵抗板3の弾発力Dは回動調節機構6の調節ダイヤル6cの回動操作によって調節することができる。すなわち、精米運転する際の調節ダイヤル6cの位置は、加圧機構5のコイルスプリング5aが自由長から最圧縮長に至る範囲において、所望の精白圧力位置に回動操作することにより、揺動アーム7aが最小圧位置Bから最大圧位置Cまでの範囲内で突状部材7bに干渉することなく、加圧機構5の弾発力が抵抗板3に伝達され、この弾発力Dが搗精部2の送出口2aから送出される精白米に作用することにより、対応する搗精圧力が搗精部2に作用して精米処理が行われる。
【0018】
また、精米機の搗精部2から玄米をそのまま排出する場合は、調節ダイヤル6cを回動操作して開放機構7の揺動アーム7aが最小圧位置Bを越えることにより突状部材7bとの干渉が始まり、開放位置Aにおける突状部材7bの従動動作により、干渉状態の要部縦断側面図を図3に示すように、開閉アーム4を介して抵抗板3が開放側に揺動動作し、抵抗板3と送出口2aとの間に所定の隙間Hが確保される。
【0019】
この開放機構7によって形成される送出口2aの隙間Hは、抵抗板3が抵抗圧力を生じることのない程度の寸法に設定することにより、抵抗板3を含む揺動部分が大きな自重を有する場合においても、搗精部2から玄米そのままの無圧排出が可能となる。この場合において、最小の弾発力位置を越えた位置で玄米の無精白送出ができるので、精米と玄米の目的に応じた簡易な回動操作により、違和感なく、かつ、確実な操作が可能となる。
【0020】
このような開放機構7を回動調節機構6に組み込んだ簡易な構成の抵抗装置により、コスト、メンテナンス、誤操作の問題を回避して精米機から玄米そのままの無精白送出が可能となるので、その結果、玄米タンクからの送路切替え機構を要することのない簡易な構成により、コンパクトな構成で玄米送出が可能な共用式の精米システムについて、低コスト化、メンテナンスの容易化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る精米機用抵抗装置の正面図(a)と縦断断面図(b)
【図2】開放機構の要部拡大平面図
【図3】開放状態の要部縦断側面図
【符号の説明】
【0022】
1 精米機用抵抗装置
2 搗精部
2a 送出口
3 抵抗板
4 開閉アーム
4a 水平支軸
5 加圧機構
5a コイルスプリング
6 回動調節機構
6a 回動軸
6b 円筒カム
7 開放機構
7a 揺動アーム(作用部)
7b 突状部材(従動部)
A 開放位置
B 最小圧位置
C 最大圧位置
D 弾発力
E カム面
F ガイド面
G 従動距離
H 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搗精部(2)の送出口(2a)に臨む抵抗板(3)と、この抵抗板(3)を進退可能に揺動支持する開閉アーム(4)と、この開閉アーム(4)を介して抵抗板(3)に所定の弾発力を作用する加圧機構(5)と、この加圧機構(5)による弾発力を回動軸(6a)の回動操作によって調節するための回動調節機構(6)とからなる精米機用抵抗装置において、
上記回動調節機構(6)と開閉アーム(4)との間には、回動調節機構(6)の回動軸(6a)の回動操作によって抵抗板(3)を開放動作させる作用部(7a)と従動部(7b)とからなる開放機構(7)を形成したことを特徴とする精米機用抵抗装置。
【請求項2】
前記開放機構(7)は、回動調節機構(6)の回動軸(6a)から径方向に突設した揺動アームを作用部(7a)とし、この作用部(7a)の回動干渉範囲に開閉アーム(4)から突設した突状部材を従動部(7b)として構成したことを特徴とする請求項1記載の精米機用抵抗装置。
【請求項3】
前記回動調節機構(6)の回動軸(6a)の回動位置について、開放機構(7)が抵抗板(3)を開放動作させる開放動作位置(A)は、抵抗板(3)の弾発力(D)が最小の最小圧位置(B)から最大の最大圧位置(C)までの調節範囲における最小圧位置(B)の外側に配置したことを特徴とする請求項1記載の精米機用抵抗装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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