精製所関連ガスからの付加価値製品の高剪断製造
精製所関連ガスから付加価値製品を製造する方法であり、C1-C8化合物とその組み合わせから構成されるグループから選択される少なくとも一つの化合物からなる精製所関連ガスを提供する段階と、精製所関連ガスを高剪断装置の中で液体キャリアと均質に混合して、液体キャリアの中に分散物を形成する段階と、より大きな炭化水素、オレフィン、アルコール、アルデヒド、およびケトンから構成されるグループから選択される少なくとも一つの化合物からなる付加価値製品を抽出する段階を有する。又、精製所関連ガスから付加価値製品を製造するためのシステムであり、少なくとも一つのロータと、少なくとも一つの相補的な形状のステータからなる少なくとも一つの高剪断装置と、C1-C8化合物の一つあるいは複数からなる精製所関連ガスを製造するための装置と、液体キャリアからなる液体ストリームを高剪断装置へ供給するためのポンプを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許願の相互参照
この特許願は、2009年7月28に登録された米国仮特許願No. 61/229,082の35 U.S.C. §119(e)のもとでの特権(benefit)を請求しており、前記仮特許願の明細書はここで参考のために組み込まれている。
【0002】
連邦政府の支援による研究あるいは開発に関する記述
非適用。
【背景技術】
【0003】
技術分野
この発明は精製所関連ガスからの付加価値製品の高剪断製造に関する。さらに詳しくは、この発明は精製所関連ガスの剪断促進反応を介して得られる酸素化物からなる製品を製造するための装置およびプロセスに関する。
【0004】
背景技術
精油所は、原油を処理して、それをガソリンやディーゼル燃料、アスファルト基(base)、灯油、ケロシン、液化石油ガスなど、より有用な石油製品へと精製するために利用されている。精油所は一般に大きく広がる工業コンビナートであり、大きな化学処理ユニットの間で流体を輸送するパイプラインが全体に延びている。
【0005】
精油所で利用されている処理の多くでは大量のガスが発生する。このガスの大部分はネガティブバリューガスである。すなわち、そのガスを廃棄するとき財政的な損失になる。精製所において発生するガスの大部分は、価値を付与した製品を製造するためか、そうでなければ燃料ガスとして使用するまえ、あるいは環境中へガスを燃焼させる(flare)まえにそのガスを処理するためのガスプラントへ送られる。燃焼は環境規制のために望ましくない。さらに、原油は、通常、原油を精製するまえに一般にそこから分離される付随ガスといっしょに発見される。
【0006】
したがって、工業界では精製所関連ガスを価値が付与された製品へと変換するシステムおよび方法が必要とされている。この変換は、精製関連ガスの付加価値製品への変換が経済的に利益のあるようなものであることが望ましい。このシステムおよびプロセスは既存の精製所に組み込まれるか、あるいは新たな精製所の建物の中に設計されることが望ましい。また、原油のAPIを増大させ、かつ/あるいは原油の安定性を増大させるためのシステムおよびプロセスも必要である。ある場合には触媒を完全になくすることも可能である。
【発明の概要】
【0007】
発明の概要
ここには精製所関連ガスから付加価値製品を製造する方法が開示されている。この方法は、C1-C8化合物か、あるいはそれらの組み合わせから構成されるグループから選択された少なくとも一つの化合物からなる精製所関連ガスを提供する段階と、(b) 高剪断装置の中で精製所関連ガスを液体キャリアと均質に(intimately)混合させて、液体キャリアの中にガスの分散物(dispersion)を形成し、この分散物中のガスバブルが約5ミクロン以下の平均直径を有するようにする段階と、(c)より大きな(higher)炭化水素やオレフィン、アルコール、アルデヒド、およびケトンから構成されるグループから選択される少なくとも一つの成分からなる付加価値製品を抽出する段階を有している。ある場合には、精製所関連ガスは、熱分解ガス、FCCオフガス、付随ガス、水素化脱硫オフガス、コーカのオフガス、接触分解装置のオフガス、サーマルクラッカのオフガス、およびそれらの組み合わせから構成されるグループから選択される。ある場合には、C1-C8化合物は二酸化炭素からなっている。
【0008】
ある実施の形態においては、付加価値製品としてのアルコールは、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、プロパノールから構成されるグループから選択される。ある実施の形態においては、段階(b)は精錬所関連ガスとキャリアを触媒と接触させる段階をさらに有している。ある場合には、この触媒は、リン酸、スルホン酸、硫酸、ゼオライト、固体酸触媒、液体酸触媒から構成されるグループから選択される少なくとも一つの成分からなっている。ある実施の形態においては、キャリアは触媒である。ある実施の形態においては、キャリアは硫酸からなっている。ある実施の形態においては、キャリアは水からなっている。ある実施の形態においては、段階(c)はキャリアおよび付加価値製品から軽質(light)ガスを分離する段階を有している。別の実施の形態においては、この方法はさらに、キャリアおよび付加価値製品を、水素化触媒、水酸化触媒、部分酸化触媒、水素化脱硫触媒、水素化脱窒素触媒、水素化仕上(hydrofinishing)触媒、改質触媒、水和触媒、水素化分解触媒、フィッシャー・トロプシュ(Fischer-Tropsch)触媒、脱水素化触媒、重合触媒から構成されるグループから選択される触媒と接触させる段階を有している。
【0009】
ある実施の形態においては、原油のAPI比重を増大させる方法が開示されている。この方法は、原油と、酸素化物、付随ガス、非付随ガス、キャリアおよび付加価値製品から分離された軽質ガス、およびそれらの組み合わせから構成されるグループから選択されるガスとを、少なくとも一つのロータと少なくとも一つのステータからなる高剪断装置の中に導入する段階と、ロータを回転させて少なくとも22.9m/sの先端速度を提供する段階とを有している。ある実施の形態においては、API比重は少なくとも1.5倍だけ増加される。
【0010】
この明細書にはさらに、精製所関連ガスから付加価値製品を製造するためのシステムも開示されている。このシステムは、少なくとも一つのロータとそれと相補的な形状の少なくとも一つのステータからなっていて液体キャリアの中に精製所関連ガスのバブルからなる分散物を形成する少なくとも一つの高剪断装置と、一つあるいは複数のC1-C8化合物からなる精製所関連ガスを製造するための装置と、液体キャリアからなる液体ストリームを高剪断装置まで供給するためのポンプとを有している。ある実施の形態においては、このシステムはさらに、高剪断装置へ連結された容器を有している。この容器は高剪断装置から分散物を受容するようになっている。
【0011】
ある実施の形態においては、前記少なくとも一つのロータは少なくとも22.9 m/s(4,500 ft/min)の先端速度で回転が可能である。ここで、先端速度はpDnで定義され、Dはロータの直径、nは回転周波数である。ある実施の形態においては、前記少なくとも一つのロータは前記少なくとも一つのステータから、約0.02 mmから約5 mmの範囲の剪断ギャップだけ離間されている。ここで、剪断ギャップとは、前記少なくとも一つのロータと前記少なくとも一つのステータとの間の最小距離である。ある実施の形態においては、前記少なくとも一つのロータは、動作中、少なくとも20,000s−1の剪断速度を提供することができる。ここで、剪断速度は先端速度を剪断ギャップで割ったものとして定義され、先端速度はpDnで定義され、Dはロータの直径、nは回転周波数である。
【0012】
ある実施の形態においては、このシステムは一つよりも多くの高剪断装置からなる。ある実施の形態においては、高剪断装置は少なくとも二つのジェネレータからなり、各ジェネレータはロータとそれと相補的な形状のステータからなっている。ある実施の形態においては、精製所関連ガスを製造するための装置は、有機分子をより簡単な分子に分解するクラッカからなる。ある実施の形態においては、精製所関連ガスを製造するための装置は、精油所あるいはそのうちのいくつかのコンポーネント、化石燃料燃焼施設あるいはそのいくつかのコンポーネントからなっている。ある実施の形態においては、化石燃料燃焼施設は電力プラントあるいは電力ステーションである。
【0013】
ここでは、精製所関連ガスから付加価値製品を製造する方法が開示されている。この方法は(a)主にC1−C8化合物と水素から選択される少なくとも一つからなる精製所関連ガスを提供する段階と、(b) 高剪断装置の中で精製所関連ガスを液体キャリアと均質に混合させて、液体キャリアの中にガスの分散物を形成し、この分散物中のガスバブルが約5ミクロン以下の平均直径を有するようにする段階と、(c)より大きな炭化水素やオレフィン、アルコールから選択される少なくとも一つの成分からなる付加価値製品を抽出する段階を有している。ある実施の形態においては、ガスバブルは約5、4、3、2、1、0.5、0.4、0.3、0.2、あるいは0.1 mm以下の平均直径を有する。ある実施の形態においては、ガスバブルは約100 nm以下の平均直径を有する。精製所関連ガスは、熱分解ガス、FCCオフガス、付随ガス、水素化脱硫オフガス、コーカオフガス、接触分解装置のオフガス、サーマルクラッカのオフガス、あるいはその他の炭化水素処理源あるいは燃焼源、およびそれらの組み合わせから選択することが可能である。ある実施の形態においては、高剪断装置は、少なくとも一つのロータと少なくとも一つのステータを有し、また(b)は少なくとも約23 m/secの先端速度でガス−液体ストリームを高剪断混合する段階を有する。ここで、先端速度はpDnで定義され、Dは前記少なくとも一つのロータの直径、nは回転周波数である。ある実施の形態においては、高剪断装置は少なくとも一つのロータと少なくとも一つのステータを有し、また(b)は少なくとも20,000 s−1の剪断速度を提供する段階を有する。ここで、剪断速度は先端速度を剪断ギャップで割ったものとして定義され、先端速度はpDnで定義され、Dは前記少なくとも一つのロータの直径、nは回転周波数である。少なくとも20,000 s−1の剪断速度を提供することによって、前記少なくとも一つのロータの先端において少なくとも約1034.2 Mpa(150,000 psi)の局所的圧力が発生される。少なくとも20,000 s−1の剪断速度を提供する段階は、少なくとも22.9 m/s(4,500 ft/min)の先端速度で前記少なくとも一つのロータを回転させる段階からなる。ここで、先端速度はpDnで定義され、Dはロータの直径、nは回転周波数である。分散物を形成する段階は、少なくとも約1000 W/m3、5000 W/m3、7500 W/m3、1 kW/m3、500 kW/m3、1000 kW/m3、5000 kW/m3、7500 kW/m3、あるいはそれ以上のエネルギ消費になり得る。
【0014】
ある実施の形態においては、(b)はさらに精製所関連ガスとキャリアを触媒に接触させる段階を有する。触媒は固体酸触媒および液体酸触媒から選択される。触媒は、リン酸、スルホン酸、硫酸、ゼオライト、ハイドロシランおよびそれらの組み合わせから選択される。触媒はまた、ニッケルやルテニウム、ロジウム、プラチナなどの貴金属を活性成分として含んでいてもよい。生体触媒を利用してもよい。ある実施の形態においては、キャリアは触媒である。ある実施の形態においては、キャリアは硫酸からなっていてもよい。ある実施の形態においては、製造されるアルコールは、メタノール、エタノール、イソプパノール、ブタノール、およびプロパノールから選択された少なくとも一つからなっている。
【0015】
ある実施の形態においては、 (c)はキャリアと付加価値製品から軽質ガスを分離する段階を有する。この方法はさらに、軽質ガスに高剪断を加える段階を有する。軽質ガスに高剪断を加える段階は、少なくとも一つのロータと少なくとも一つのステータからなる高剪断装置へフィッシャー・トロプシュの存在のもとで軽質ガスを導入する段階を有し、それによってフィッシャー・トロプシュ炭化水素が製造される。軽質ガスに高剪断を加える段階は、少なくとも20,000 s−1の剪断速度を提供する段階を有する。ここで、剪断速度は先端速度を剪断ギャップで割ったものとして定義され、先端速度はpDnで定義され、Dは前記少なくとも一つのロータの直径、nは回転周波数である。軽質ガスに高剪断を加える段階は、軽質ガスと原油を少なくとも一つのロータと少なくとも一つのステータからなる高剪断装置の中へ導入する段階と、高剪断装置の内容物に少なくとも20,000 s−1の剪断速度を加える段階を有している。さまざまな実施の形態において、高剪断が液体あるいはスラリとともに軽質ガスへ加えられる。
【0016】
この方法はさらに、キャリア(液体あるいはスラリ)と精製所関連ガスを、水素化触媒、水酸化触媒、部分酸化触媒、水素化脱硫触媒、水素化脱窒素触媒、水素化仕上触媒、改質触媒、水和触媒、水素化分解触媒、フィッシャー・トロプシュ触媒、脱水素化触媒、重合触媒から構成されるグループから選択される触媒と接触させる段階を有している。
【0017】
原油のAPI比重を増大させる方法も開示されている。この方法は、原油と、酸素化物、付随ガス、非付随ガス、精製所関連ガスから付加価値製品を製造する上述した方法からの軽質ガス、あるいはそれらの組み合わせを、少なくとも一つのロータと少なくとも一つのステータからなる高剪断装置の中に導入する段階と、ロータを回転させて少なくとも22.9m/sの先端速度を提供する段階とを有している。ある実施の形態においては、API比重は少なくとも1.5倍だけ増大される。ある実施の形態においては、API比重は少なくとも2倍だけ増大される。
【0018】
精製所関連ガスから付加価値製品を製造するためのシステムも開示されている。このシステムは、少なくとも一つのロータとそれと相補的な形状の少なくとも一つのステータからなっていて液体キャリアの中に精製所関連ガスのバブルからなる分散物を製造する少なくとも一つの高剪断装置と、一つあるいは複数のC1−C8化合物と水素からなる精製所関連ガスを製造するための装置と、液体キャリアからなる液体ストリームを高剪断装置へ供給するためのポンプとを有している。ある実施の形態においては、このシステムはさらに、高剪断装置へ連結された容器を有している。この容器は高剪断装置から分散物を受容するようになっている。ある実施の形態においては、前記少なくとも一つのロータは少なくとも22.9 m/s(4,500 ft/min)の先端速度で回転可能である。ここで、先端速度はpDnで定義され、Dはロータの直径、nは回転周波数である。ある実施の形態においては、高剪断装置は、少なくとも40 m/secの先端速度で動作する。ある実施の形態においては、前記少なくとも一つのロータは前記少なくとも一つのステータから約0.02 mmから約5 mmの範囲の剪断ギャップだけ離間している。ここで、剪断ギャップとは、前記少なくとも一つのロータと前記少なくとも一つのステータとの間の最小距離である。ある実施の形態においては、動作中に前記少なくとも一つのロータの回転によって提供される剪断速度は少なくとも20,000 s−1である。ここで、剪断速度は先端速度を剪断ギャップで割ったものとして定義され、先端速度はpDnで定義され、Dはロータの直径、nは回転周波数である。ある実施の形態においては、高剪断装置は、二つあるいはそれより多くのロータと、二つあるいはそれより多くのステータからなっている。ある実施の形態においては、前記少なくとも一つの高剪断装置は液相の中に精製所関連ガスのバブルの分散物を製造するようになっており、この分散物は約5、4、3、2、1、0.5、0.4、0.3、0.2、あるいは0.1 mm以下の平均バブル直径を有する。このシステムは複数の高剪断装置を有していてもよい。ある実施の形態においては、高剪断装置は少なくとも二つのジェネレータを有し、各ジェネレータはロータとそれと相補的な形状のステータを有する。一つのジェネレータによって提供される剪断速度は別のジェネレータによって提供される剪断速度より大きくてもよい。
【0019】
ある実施の形態においては、精製所関連ガスを製造するための装置は、有機分子をより簡単な分子に分解するクラッカからなる。このクラッカは流動接触分解装置からなっていてもよい。このクラッカはサーマルクラッカでもよい。サーマルクラッカはコーカからなっていてもよい。ある実施の形態においては、精製所関連ガスを製造するための装置はスチームクラッカからなっている。ある実施の形態においては、精製所関連ガスを製造するための装置は精油所あるいはそのうちのいくつかのコンポーネントからなっている。
【0020】
FCCオフガスから付加価値製品を製造するシステムも開示されている。このシステムは、少なくとも一つのロータと少なくとも一つのそれと相補的な形状のステータからなる少なくとも一つの高剪断装置と、流動接触分解装置と、液体キャリアからなる液体ストリームを高剪断装置へ供給するポンプとを有する。前記少なくとも一つのロータは、少なくとも22.9 m/s(4,500 ft/min)の先端速度で回転可能である。ここで、先端速度はpDnで定義され、Dはロータの直径、nは回転周波数である。流動接触分解装置はFCCフィードストックの接触分解を行い、FCCオフガスを発生する。前記少なくとも一つの高剪断装置は、FCCオフガスの少なくとも一部を前記少なくとも一つの高剪断装置へ運ぶためのラインと連通している。ある実施の形態においては、FCCフィードストックはAGO、VGO、軽質減圧蒸留物、重質減圧蒸留物、あるいはそれらの組み合わせからなっている。このシステムはさらに、FCCオフガスから少なくとも一つの成分を分離する流動接触分解蒸気回収ユニットを有している。ある実施の形態においては、高剪断装置は液体キャリアの中にFCCオフガスの分散物を形成することができる。分散物中のFCCオフガスのバブルは5ミクロン以下の平均バブル直径を有する。ある実施の形態においては、分散物中のFCCオフガスのバブルは、5、4、3、2、1、0.5、0.4、0.3、0.2、あるいは0.1 mm以下の平均バブル直径を有する。ある実施の形態においては、前記少なくとも一つのロータは少なくとも40 m/sの先端速度で回転可能である。
【0021】
コーカオフガスから付加価値製品を製造するためのシステムも開示されている。このシステムは、少なくとも一つのロータと少なくとも一つのそれと相補的な形状のステータからなる少なくとも一つの高剪断装置と、コーカと、液体キャリアからなる液体ストリームを高剪断装置へ供給するポンプとを有する。前記少なくとも一つのロータは、少なくとも22.9 m/s(4,500 ft/min)の先端速度で回転可能である。ここで、先端速度はpDnで定義され、Dはロータの直径、nは回転周波数である。コーカはコーカフィードストックのサーマルクラッキングを行い、コーカオフガスを製造する。前記少なくとも一つの高剪断装置は、コーカオフガスの少なくとも一部を前記少なくとも一つの高剪断装置へ運ぶためのラインと連通している。ある実施の形態においては、コーカはディレードコーカである。ある実施の形態においては、コーカフィードストックは残留物からなっている。ある実施の形態においては、高剪断装置は液体キャリアの中にコーカオフガスの分散物を形成することができる。このとき、分散物中のコーカオフガスのバブルは、5、4、3、2、1、0.5、0.4、0.3、0.2、あるいは0.1 mm以下の平均バブル直径を有する。ある実施の形態においては、分散物中のコーカオフガスのバブルは1ミクロン以下の平均バブル直径を有する。ある実施の形態においては、前記少なくとも一つのロータは少なくとも40 m/sの先端速度で回転可能である。
【0022】
熱分解から付加価値製品を製造するためのシステムも開示されている。このシステムは、少なくとも一つのロータと少なくとも一つのそれと相補的な形状のステータからなる少なくとも一つの高剪断装置と、スチームクラッカと、液体キャリアからなる液体ストリームを高剪断装置へ供給するポンプとを有する。前記少なくとも一つのロータは、少なくとも22.9 m/s(4,500 ft/min)の先端速度で回転可能である。ここで、先端速度はpDnで定義され、Dはロータの直径、nは回転周波数である。スチームクラッカはフィードストックから熱分解ガスを発生する。前記少なくとも一つの高剪断装置は、熱分解ガスの少なくとも一部を前記少なくとも一つの高剪断装置へ運ぶためのラインと連通している。ある実施の形態においては、このシステムは熱分解ガスから少なくとも一つの成分を分離するために、前記少なくとも一つの高剪断装置の上流にセパレータも有する。ある実施の形態においては、スチームクラッカフィードストックはナフサからなっている。ある実施の形態においては、高剪断装置は液体キャリアの中に熱分解ガスの分散物を形成することができる。このとき、分散物中の熱分解ガスのバブルは、5、4、3、2、1、0.5、0.4、0.3、0.2、あるいは0.1 mm以下の平均バブル直径を有する。ある実施の形態においては、分散物中の熱分解ガスのバブルは1ミクロン以下の平均バブル直径を有する。ある実施の形態においては、前記少なくとも一つのロータは少なくとも40 m/sの先端速度で回転可能である。
【0023】
上述した方法あるいはシステムのいくつかの実施の形態は、触媒の使用を減らし、流体のスループットを向上させ、より低い温度および/あるいは圧力での動作を可能にし、かつ/あるいは、資本および/かつ運転コストを低減することによって全体のコストを削減できる可能性がある。以上の、またそれ以外の実施の形態および利点は以下での詳細な説明および図面から明らかになろう。
【0024】
この発明の実施の形態をさらに詳しく説明するために、ここで添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】外部に高剪断分散手段を有するこの発明による高剪断システムの実施の形態を示す図である。
【図2】図1のシステムの実施の形態において使用するのに適した高剪断混合装置の縦断面図である。
【図3】この発明の実施の形態による精製所関連ガス(Refinery-Related Gas(RRG))製造装置15Aを示す図である。
【図4】この発明の実施の形態によるRRG製造装置15Bを示す図である。
【図5】この発明の実施の形態によるRRG製造装置15Cを示す図である。
【図6】この発明の実施の形態によるRRG製造装置15Dを示す図である。
【図7】この発明の実施の形態によるRRGG製造装置15Eを示す図である。
【図8】この発明の実施の形態にしたがってRRGから価値製品を製造する方法250を示す図である。
【図9】この発明の実施の形態にしたがってRRGを提供する方法300Aを示すブロック図である。
【図10】この発明の実施の形態にしたがってクラッカフィードストックを提供する方法301Aを示す図である。
【図11】この発明の実施の形態にしたがってRRGを提供する方法300Bを示すブロック図である。
【図12】この発明の実施の形態にしたがってRRGを提供する方法300Cを示すブロック図である。
【図13】この発明の実施の形態にしたがってRRGを提供する方法300Dを示すブロック図である。
【図14】この発明の実施の形態にしたがって原油の安定性および、あるいはAPI比重を調整する方法600Aを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
表記及び命名
ここで使用される場合の“分散物(dispersion)”という用語は、容易には混合せず一体に溶解しないような少なくとも二つの区別可能な物質(あるいは“相”)を含んでいる液体状の混合物を指している。ここで使用される場合の“分散物”は、その中に他の相あるいは物質からなる不連続な液滴、バブル、および/あるいは粒子を保持している“連続した”相(あるいは“マトリックス”)からなっている。したがって、分散物という用語は、液体の連続した相の中に浮遊するガスバブルからなる泡や、第1の液体の液滴が第1の液体と混和しない第2の液体からなる連続した相の全体に分散しているようなエマルジョン、そして、固体粒子が全体にわたって分布している連続した液相を指している。ここで使用される場合の“分散物”という用語は、ガスバブルが全体に分布しているような連続した液相や、固体粒子(例えば固体触媒)が全体に分布しているような連続した液相、第1の液体からなる連続した液相の中にほとんど溶解しない第2の液体の液滴が全体に分布しているような連続した液相、そして固体粒子、不混和性の液滴、ガスバブルの任意の一つあるいはそれらの組み合わせが全体に分布しているような液相を含んでいる。したがって、分散物は、組み合わせとして選択した材料の特性によって、ある場合には同種の混合物(例えば、液体/液体の相)として、あるいは異種の混合物(例えば、気体/液体、固体/液体、あるいは気体/固体/液体)として存在し得る。
【0027】
“精製所関連ガス(refinery-related gas)”あるいはその頭文字である“RRG”を使用する場合は、精油所で得られる、あるいは原油の抽出から得られる任意のガス、および/あるいは地球から採れる関連ガスを指している。一般に、RRGはC1からC8の少なくとも一つからなっていて、水素を含んでいてもよい。ある実施の形態においては、RRGはC1からC4の少なくとも一つからなっていて、水素を含んでいてもよい。例えば、RRGは、メタン、エタン、プロパン、ブタン、エチレン、プロピレン、ブチレン、二酸化炭素、一酸化炭素、そして水素から選択された一つあるいは複数からなっている。
【0028】
“ガスオイル”という用語は、約350°Fから750°Fの沸騰範囲を有する中間蒸留の石油部分を指しており、ディーゼル燃料やケロシン、灯油、軽質(light)燃料油が含まれる。
【0029】
“ガソリン”という用語は、ナフサと、十分に大きなオクタン価と内燃エンジンにおける燃料として使用するのに適したその他の望ましい特性とを有するようなその他の精製製品とのブレンドを指している。
【0030】
“すべて、あるいはその一部”という表現は、ここでは“全体のすべて、あるいはその部分”あるいは“すべて、あるいはそのいくつかのコンポーネント”を意味するために用いられている。
【0031】
詳細な説明
概観
精製所関連ガス(以後はRRG)から付加価値製品を製造する方法およびプロセスは、リアクタ/ミキサ装置中の制御された環境で反応物を急速に接触させ、混合するために、外部の高剪断機械装置を有している。ここに記載されている外部の高剪断装置(HSD)あるいはミキサを有するリアクタアセンブリは、物質移動制限(mass transfer limitation)を減らし、それによって、触媒を用いるかもしれない反応を、機械的かつ/あるいは熱力学的制限により近づけることが可能となる。また、混合を増強することによって、反応ゾーン内における温度が均質化される。高剪断を用いて接触を増強することによって、従来のプロセスに比べてスループットが向上し、かつ/あるいは触媒の使用量が減少する。HSDを使用することによって、ある場合には触媒はまったく使用されない。
【0032】
精製所関連ガスから付加価値製品を製造するための高剪断システム
図1を参照して精製所関連ガスから付加価値製品を製造するための高剪断システム100を説明する。図1は高剪断システム100の実施の形態におけるプロセスの流れを示す図である。代表的なシステムの基本コンポーネントには外部高剪断装置(HSD)40とポンプ5が含まれる。以下でこれらのコンポーネントのそれぞれについてさらに詳しく説明する。ポンプ5の中に反応物を導入するために、ポンプ5にはライン21が接続されている。ライン13はポンプ5をHSD40へ接続しており、ライン19はHSD40からの製品の分散物を輸送する。これ以降の高剪断プロセスの説明を読めば明らかになるように、望むならば、フローライン19とHSD40との間に、あるいはポンプ5あるいはHSD40の前に、追加のコンポーネントあるいはプロセス工程を組み込むことができる。例えば、ライン20をフローライン19あるいはリアクタ10からライン21あるいはライン13へ接続して、フローライン19の中の、あるいは容器10からの流体をHSD40へ循環させることができる。製品はフローライン19を介してシステム100から取り出される。フローライン19は、製品の分散物(少なくとも液体とガスからなる)と、HSD40からの任意の未反応の反応物がその中へ流れ込む任意のラインである。
【0033】
以下でさらに説明するように、システム100はさらに容器10と、RRG製造装置15を有する。ライン22が分散可能な(dispersible)ガス(すなわちRRG)をHSD40の中へ導入する。ライン22は分散可能なガスを直接HSDの中へ導入するか、あるいはライン13の中へRRGを導入する。ある実施の形態においては、ライン22はRRG製造装置15と接続されている。別の場合には、分散可能なガスの流入ライン22はRRGガスの貯蔵ユニットへ接続されている。
【0034】
高剪断装置
ときに高剪断ミキサと呼ばれることもある外部高剪断装置(HSD)40は、ライン13を介して、反応物からなるインレットストリームを受け取る。別の場合には、HSD40は別々のインレットラインを介して反応物を受け取るようになっている。図1には一つのHSDのみが示されているが、このシステムのいくつかの実施の形態は、直列に、あるいは並列に配置された二つあるいはそれより多くのHSDを有していてもよいことを理解すべきである。
【0035】
HSD40は、ロータ/ステータの組み合わせからなる一つあるいは複数のジェネレータを利用する機械装置であり、それぞれのジェネレータはロータとステータとの間にギャップを有している。各ジェネレータのロータとステータとの間に設定されるギャップは固定されているか、あるいは調節可能である。HSD40はその中で、ある回転速度で反応物を触媒と効率よく接触させられるような構造を有している。HSDはその中の流体の圧力および温度を制御できるようなエンクロージャあるいはハウジングを有する。
【0036】
高剪断ミキサは、流体を混合する能力によって一般に三つのクラスに分類される。混合とは、流体内の粒子、あるいは異なる種のサイズを小さくするプロセスのことである。混合の度合い、あるいは完全さの一つの指標は、流体の粒子を粉砕するために混合装置が発生する単位体積当たりのエネルギ密度である。クラスは、供給されるエネルギ密度にもとづいて区分される。サブミクロンから50 mmまでの範囲の粒子サイズの混合物あるいはエマルジョンを常に製造するのに十分なエネルギ密度を有する産業用ミキサの三つのクラスには、ホモジェナイゼーションバルブシステム、コロイドミル、高速ミキサが含まれる。ホモジェナイゼーションバルブシステムと呼ばれる高エネルギ装置の第1のクラスにおいては、処理される流体は非常な高圧のもとで狭いギャップのバルブを通して、より低い圧力環境へ圧送される。バルブを介する圧力傾斜と、その結果起きる乱流とキャビテーションが流体中の粒子を粉砕する。これらのバルブシステムは最も一般的には牛乳の均質化に用いられており、サブミクロンから約1ミクロンの範囲の平均粒子サイズを実現できる。
【0037】
エネルギ密度スペクトルにおける対極には低エネルギ装置と呼ばれる第3の装置クラスがある。これらのシステムは、通常、一般的な用途の多くにおいては食料製品からなる処理流体の貯蔵器中で高速で回転するパドルあるいは流体ロータを有している。こうした低エネルギシステムは、通常は、処理される流体中での平均粒子サイズが20ミクロン以上でもよいときに使用される。
【0038】
流体へ供給される混合エネルギ密度に関して、低エネルギ装置とホモジェナイゼーションバルブシステムとの間にはコロイドミルやその他の高速ロータ−ステータ装置があるが、これらは中間エネルギ装置として分類される。代表的なコロイドミル構造は円錐形、あるいは円盤状のロータを有する。このロータは、それと相補的な液体冷却式のステータから、精密に制御されたロータ−ステータギャップだけ離間されている。ギャップは一般に0.025 mmから10 mm(0.001-0.40インチ)の間である。ロータは一般に、直接駆動あるいはベルト機構を介して電気モータによって駆動される。ロータが高速で回転するにつれて、ロータがロータの外側表面とステータの内側表面との間で流体を圧送し、ギャップの中に発生する剪断力によって流体が処理される。適切な調節が行われる多くのコロイドミルでは、処理流体の中に0.1から25ミクロンの平均粒子サイズを実現できる。こうした能力のために、コロイドミルは、化粧品やマヨネーズ、あるいはシリコーン/銀アマルガム形成、ルーフィングタール(roofing-tar)混合などに対して必要とされる処理など、コロイドおよび油/水をベースとしたエマルジョン処理を含む様々な用途に適したものとなっている。
【0039】
HSDは、その中の反応物へ加えられる機械的な力を発生する少なくとも一つの回転部材を有している。HSDは、隙間によって離間された少なくとも一つのステータと少なくとも一つのロータを有する。例えば、ロータは円錐形あるいは円盤状の形状でよく、またそれと相補的な形状のステータから離間されている。ある実施の形態においては、ロータとステータの両方が、相補的な形状の先端を有する、周辺が離間された複数のリングからなる。リングは、ロータおよびステータを取り囲む唯一の(solitary)表面あるいは先端を有する。ある実施の形態においては、ロータとステータの両方が周辺が離間されたリングを2個より多く有し、あるいは3個より多くの、あるいは4個より多くのリングを有している。例えば、ある実施の形態においては、三つのジェネレータの各々が、それぞれ3個の相補的なリングを有するロータおよびステータを有していて、HSD40を通過すると処理材料は9個の剪断ギャップあるいは剪断ステージを通ることになる。別の場合には、三つのジェネレータの各々は四つのリングを有していて、HSD40を通過すると処理材料は12個の剪断ギャップあるいは剪断ステージを通ることになる。ある実施の形態においては、ステータを調節して、各ジェネレータ(ロータ/ステータのセット)のロータとステータとの間に所望の剪断ギャップを得ることができる。各ジェネレータは、所望の回転を提供する任意の適当な駆動システムによって駆動される。
【0040】
ある実施の形態においては、HSD40はシングルステージの分散チャンバ(すなわち単一のロータ/ステータの組み合わせ、単一の高剪断ジェネレータ)からなっている。ある実施の形態においては、HSD40はマルチステージのインラインディスパーサと複数のジェネレータである。ある実施の形態においては、HSD40は少なくとも二つのジェネレータを有する。他の実施の形態においては、HSD40は少なくとも三つのジェネレータを有する。ある実施の形態においては、HSD40はマルチステージのミキサであって、剪断速度(これは先端速度に比例し、ロータ/ステータギャップ幅に反比例して変化する)は、以下でさらに説明するように、流路に沿った長手方向の位置によって変わる。
【0041】
この明細書では、HSD40内の少なくとも一つの表面は、所望の反応に触媒作用を施すのに適した触媒から形成されているか、それが含浸されている(impregnated)か、あるいはコーティングされている。これについては米国特許願No. 12/476,415に記載されており、この特許願は本明細書に反しないすべての目的で、参考のためにここに組み込まれている。例えば、ある実施の形態においては、少なくとも一つのロータ、少なくとも一つのステータ、少なくとも一つのロータ/ステータのセット(すなわち少なくとも一つのジェネレータ)のすべて、あるいはその一部が、適当な触媒から形成されているか、それがコーティングあるいは含浸されている。ある用途では、二つの、あるいはそれより多くの触媒を用いることが望ましいかもしれない。そうした場合には、ジェネレータは第1の触媒材料から形成されているか、それが含浸あるいはコーティングされており、そのジェネレータの、対応するステータは第2の触媒材料から形成されているか、それが含浸あるいはコーティングされている。別の場合には、ロータの一つあるいは複数のリングが第1の触媒から形成されているか、それがコーティングあるいは含浸されており、ロータの一つあるいは複数のリングが第2の触媒から形成されているか、それがコーティングあるいは含浸されている。別の場合には、ステータの一つあるいは複数のリングが第1の触媒から形成されているか、それがコーティングあるいは含浸されており、ステータの一つあるいは複数のリングが第2の触媒から形成されているか、それがコーティングあるいは含浸されている。ステータ、ロータ、あるいはその両方の接触表面のすべて、あるいはその一部が触媒材料から形成されているか、それがコーティングされている。
【0042】
HSD40の接触表面はプラチナなどの多孔質の焼結された触媒材料から形成されている。ある実施の形態においては、接触表面には多孔質の焼結された触媒材料がコーティングされている。ある用途では、HSD40の接触表面は焼結材料がコーティングされるか、それから形成され、そのあと、所望の触媒が含浸される。焼結材料はセラミックでもよいし、例えばステンレススチールや擬似ベーマイト(pseudoboehmite)などの金属粉末から形成されていてもよい。焼結材料の孔はミクロンあるいはサブミクロンの範囲である。孔のサイズは、所望の流れおよび触媒効果が得られるように選択することができる。孔のサイズをもっと小さくすると、反応物と触媒からなる流体との間の接触を改善することができる。多孔質材料(セラミックあるいは焼結金属)の孔サイズを変更することによって、利用可能な触媒表面積を所望の値に調節することができる。焼結材料は、例えば容積で焼結材料の約70%から約99%、あるいは容積で焼結材料の約80%から約90%からなっており、その他は孔が占めている。
【0043】
ある実施の形態においては、ロータ/ステータの先端によって形成されるリングは開口部(すなわち歯あるいは溝)を有しておらず、その結果、従来のディスパーサに一般的に存在する開口部あるいは溝を通過することによって触媒を迂回するのではなく、反応物のほとんどすべてが焼結材料の孔の中を通される。このようにして、例えば反応物は焼結材料の中を強制的に通されて、触媒と接触させられる。
【0044】
ある実施の形態においては、接触表面がそれから形成されている焼結材料はステンレススチールあるいは青銅からなっている。焼結材料(焼結金属あるいはセラミック)はパッシベーションが施されてもよい。そのあと、触媒がそこへ付着される。触媒は当該分野において周知の任意の手段によって付着される。そのあと、接触表面をか焼して金属酸化物(例えばステンレススチール)を形成する。第1の金属酸化物(例えばステンレススチール酸化物)に第2の金属をコーティングして、再びか焼してもよい。例えば、ステンレススチールの酸化物にアルミニウムをコーティングして、か焼し、アルミニウム酸化物を形成する。そのあとの処理によって他の材料が得られる。例えば、アルミニウム酸化物にシリコンをコーティングし、か焼してシリカを形成する。所望の接触表面および触媒を得るために、いくつかのか焼/コーティング工程を行ってもよい。このようにして、接触表面を形成する、あるいは接触表面をコーティングする焼結材料に、様々な触媒を含浸してもよい。別のコーティング方法は、例えば、シリコンウェハーに金属をコーティングするために一般的に用いられる金属蒸着や化学気相蒸着である。
【0045】
ある実施の形態においては、(例えばロータあるいはステータの)焼結金属接触表面はある材料で処理される。例えば、テトラエチルオルソシリケート(TEOS)。真空蒸着のあと、TEOSは表面の孔の中に留まる。か焼を用いてTEOSをシリカに変換する。この含浸を所望のすべての金属触媒に対して繰り返してもよい。形成、コーティング、含浸を行ったら、製造者の手順にしたがって触媒を活性化させる。例えば、水素などの活性ガスと接触させることによって触媒を活性化する。ベース材料は、か焼するとそれぞれアルミナあるいはシリカに変換されるシリコンあるいはアルミニウムでよい。それに限定されるわけではないが、レニウム、パラジウム、ロジウムなどの相応しい触媒をそのあと孔の中に含浸する。
【0046】
ある実施の形態においては、ステータとロータとの間の最小の隙間(剪断ギャップ幅)は約0.025mm(0.001インチ)から約3 mm(0.125インチ)までの範囲である。ある実施の形態においては、ステータとロータとの間の最小の隙間(剪断ギャップ幅)は約1 mm(0.00004インチ)から約3 mm(0.012インチ)までの範囲である。ある実施の形態においては、ステータとロータとの間の最小の隙間(剪断ギャップ幅)は約10 mm(0.0004インチ)以下か、約50 mm(0.002インチ)以下か、約100 mm(0.004インチ)以下か、約200 mm(0.008インチ)以下か、約400 mm(0.016インチ)以下である。ある実施の形態においては、ステータとロータとの間の最小の隙間(剪断ギャップ幅)は約1.5 mm(0.06インチ)である。ある実施の形態においては、ステータとロータとの間の最小の隙間(剪断ギャップ幅)は約0.2 mm(0.008インチ)である。ある実施の形態においては、ステータとロータとの間の最小の隙間(剪断ギャップ幅)は少なくとも約1.7 mm(0.07インチ)である。HSDによって発生する剪断速度は流路に沿った長手方向の位置によって変わる。ある実施の形態においては、ロータは、ロータの直径と所望の先端速度に相応しい速度で回転するように設定される。ある実施の形態においては、HSDはステータとロータとの間の隙間(剪断ギャップ幅)が固定されている。別の場合には、HSDは隙間(剪断ギャップ幅)が調節可能である。この剪断ギャップは、約5マイクロメータ(0.0002インチ)から約4 mm(0.016インチ)までの範囲である。
【0047】
先端速度とは、単位時間当たりにロータの先端が移動する周辺距離である。したがって、先端速度はロータの直径と回転周波数の関数である。(例えばメートル/分の単位の)先端速度は、ロータの先端が描く(transcribe)周辺距離である2pRに回転周波数(例えば1分当たりの回転数rpm)をかけることによって計算される。ここで、Rはロータの半径である(例えばメートルの)。回転周波数は250 rpm以上か、500 rpm以上か、1000 rpm以上か、5000 rpm以上か、7500 rpm以上か、10,000 rpm以上か、13,000 rpm以上か、15,000 rpm以上である。所望の製品特性を得るために、回転周波数や、流量、温度を調節してもよい。もしチャネリング(channeling)が起き、反応物のいくらかが反応せずに通過した場合には、回転周波数を上げて、望ましくないチャネリングを最小限に抑えてもよい。別の場合には、あるいは追加的に、未反応の反応物を別の、あるいはそのあとのHSD40へ導入するか、あるいは未反応の反応物の一部を製品から分離してHSD40へリサイクルしてもよい。
【0048】
HSD40は22.9 m/s(4500 ft/min)以上の先端速度を有するか、40m/s(7900 ft/min)、50 m/s(9800 ft/min)、100 m/s(19,600 ft/min)、150 m/s(29,500 ft/min)、200 m/s(39,300 ft/min)、あるいは225 m/s(44,300 ft/min)さえ越え、ある用途ではそれ以上である。この明細書では、“高剪断(high shear)”という用語は、5.1 m/s(1000 ft/min)を越える先端速度が可能であって、反応させるべき製品の流れにエネルギを供給するために外部の機械的に駆動される動力装置を必要とするような機械式ロータステータ装置(例えばコロイドミルあるいはロータ−ステータディスパーサ)を指している。反応物を、固定された触媒から形成された、あるいはそれがコーティングあるいは含浸された回転部材と接触させることによって、大きなエネルギが反応に伝えられる。特に、反応物が気体である場合には、HSD40のエネルギ消費は非常に小さい。温度を調節することによって製品の特性を制御したり、触媒の寿命を延ばしたりすることができる。
【0049】
ある実施の形態においては、HSDは少なくとも22.9 m/s(4500 ft/min)の先端速度で少なくとも300 L/hで供給が可能である。電力消費は約1.5kWである。HSD40は大きな先端速度と非常に小さな剪断ギャップと組み合わせて、処理する材料に対して大きな剪断を発生することができる。剪断の量はHSD40内の流体の粘性に依存する。したがって、HSD40の動作中にはロータの先端に局所的に圧力と温度が高い領域が形成される。ある場合には、局所的に上昇する圧力は約1034.2 Mpa(150,000 psi)である。ある場合には、局所的に上昇する温度は約500℃である。ある場合には、これらの局所的な圧力および温度の上昇はナノ秒あるいはピコ秒のあいだ続く。
【0050】
流体中へのエネルギ入力(kW/L/min)は、モータのエネルギ(kW)と流体出力(L/min)を測定することによって近似的に推定できる。上述したように、先端速度は、流体へ加えられる機械的な力を発生する一つあるいは複数の回転部材の端部に関する速度(ft/minまたはm/s)である。ある実施の形態においては、HSD40のエネルギ消費は、その中の流体の単位立方メートル当たり1000ワット以上である。ある実施の形態においては、HSD40のエネルギ消費は、約3000 W/m3から約7500 kW/m3までの範囲である。ある実施の形態においては、HSD40のエネルギ消費は、約3000 W/m3から約7500 W/m3までの範囲である。実際に必要なエネルギ入力は、フィードストック材料を分散させて混合するのに必要な機械的エネルギとともに、例えば吸熱および/あるいは発熱反応などHSD内部でどんな反応が起きているかによる。ある場合には、HSD内部で発熱反応が起きていると、モータ入力による必要な反応エネルギのいくらか、あるいはほとんどすべてが軽減される。液体中にガスを分散させるときのエネルギ必要量はかなり小さい。
【0051】
剪断速度は、先端速度を剪断ギャップ幅(ロータとステータとの間の最小の隙間)で割ったものである。HSD40で発生される剪断速度は20,000 s−1以上である。ある実施の形態においては、剪断速度は少なくとも40,000 s−1である。ある実施の形態においては、剪断速度は少なくとも100,000 s−1である。ある実施の形態においては、剪断速度は少なくとも500,000 s−1である。ある実施の形態においては、剪断速度は少なくとも1,000,000 s−1である。ある実施の形態においては、剪断速度は少なくとも1,600,000 s−1である。ある実施の形態においては、剪断速度は少なくとも3,000,000 s−1である。ある実施の形態においては、剪断速度は少なくとも5,000,000 s−1である。ある実施の形態においては、剪断速度は少なくとも7,000,000 s−1である。ある実施の形態においては、剪断速度は少なくとも9,000,000 s−1である。ロータが大きな直径を有するような実施の形態においては、剪断速度は約9,000,000 s−1を超える。ある実施の形態においては、HSD40によって発生される剪断速度は、20,000 s−1から10,000,000 s−1までの範囲である。例えば、一つの用途においては、ロータの先端速度は約40 m/s(7900 ft/min)であり、剪断ギャップ幅は0.0254 mm(0.001インチ)であって、1,600,000 s−1の剪断速度を生じる。別の用途においては、ロータの先端速度は約22.9 m/s(4500 ft/min)であり、剪断ギャップ幅は0.0254 mm(0.001インチ)であって、約901,600 s−1の剪断速度を生じる。
【0052】
ある実施の形態においては、HSD40はコロイドミルからなっている。相応しいコロイドミルが、例えばノースカロライナ州ウィルミントン(Wilmington, NC)のIKA(R) Works,Inc.およびマサチュセッツ州ウィルミントン(Wilmington,NC)のAPV North America, Inc.によって製造されている。ある場合には、HSD40はIKA(R) Works, Inc.のDISPAX REACTOR(R)である。
【0053】
ある実施の形態においては、外部HSDの各ステージは交換可能な混合ツールを有していて、柔軟性を提供している。例えば、ノースカロライナ州ウィルミントンのIKA(R) Works, Inc.およびマサチュセッツ州ウィルミントンのAPV North America, Inc.のDR 2000/4 DISPAX REACTOR(R)は、3ステージの分散モジュールを有する。このモジュールは三つまでのロータ/ステータの組み合わせ(ジェネレータ)を有していて、各ステージに対して、fine、medium、coarse、super-fineを選択できる。これによって、流れ方向に沿って剪断速度を変えることが可能になる。ある実施の形態においては、各ステージはsuper-fineのジェネレータで駆動される。ある実施の形態においては、ジェネレータセットの少なくとも一つは、約5 mm(0.2インチ)以上のロータ/ステータ最小隙間(剪断ギャップ幅)を有する。ある実施の形態においては、ジェネレータセットの少なくとも一つは、約0.2 mm(0.008インチ)のロータ/ステータ最小隙間(剪断ギャップ幅)を有する。別の実施の形態においては、ジェネレータセットの少なくとも一つは、約1.7 mm(0.07インチ)以上のロータ/ステータ最小隙間(剪断ギャップ幅)を有する。
【0054】
ある実施の形態においては、DISPAX REACTOR(R)の規模を大きくしたバージョンが用いられる。例えば、ある実施の形態においては、HSD40はSUPERDISPAX REACTOR(R) DRS 2000からなっている。HSDユニットは、時間当たり125,000リットルの流量能力を有するDR2000/50ユニットでも、40,000リットル/時の流量能力を有するDRS 2000/50でもよい。DRSユニット内での滞留時間が長くなるため、その中の流体はより多くの剪断を受ける。ここで図2を参照する。図には相応しいHSD200の縦断面図が示されている。図2のHSD200はロータ−ステータの組み合わせ220、230、240からなる三つのステージを有する分散装置である。ロータ−ステータの組み合わせは、それに限定されるわけではないが、ジェネレータ220、230、240あるいはステージとして知られている。三つのロータ/ステータのセットあるいはジェネレータ220、230、240は駆動シャフト250に沿って直列に配置されている。
【0055】
第1のジェネレータ220はロータ222とステータ227を有する。第2のジェネレータ230はロータ223とステータ228を有する。第3のジェネレータ240はロータ224とステータ229を有する。各ジェネレータに対して、ロータは入力250によって駆動され、矢印265で示されているように軸260のまわりに回転する。回転方向は矢印265によって示されているものと逆でもよい(例えば回転軸260のまわりに時計方向あるいは反時計方向)。ステータ227、228、229は、HSD200の壁255へ固定されている。上述したように、それぞれのロータおよびステータは相補的な形状の先端からなるリングを有していて、各ジェネレータ内にはいくつかの剪断ギャップが形成されている。
【0056】
上述したように、HSD40の接触表面は、所望の反応に触媒作用を施す適当な触媒から形成されているか、それがコーティングあるいは含浸されている。ある実施の形態においては、各ロータあるいはステータの一つのリングの接触表面は、そのロータ及びステータの別のリングの接触表面とは異なる触媒から形成されているか、それがコーティングあるいは含浸されている。別の場合には、あるいは追加的に、ステータの一つのリングの接触表面を、ロータの相補的なリングとは異なる触媒から形成するか、それをコーティングあるいは含浸してもよい。接触表面はロータの少なくとも一部、あるいはステータの少なくとも一部、あるいはその両方からなっている。接触表面は、例えばロータの外側表面の少なくとも一部、ステータの内側表面の少なくとも一部、あるいは両方の少なくとも一部からなっている。
【0057】
上述したように、各ジェネレータはロータとステータとの間の最小距離である剪断ギャップ幅を有している。図2の実施の形態においては、第1のジェネレータ220は第1の剪断ギャップ225を有し、第2のジェネレータ230は第2の剪断ギャップ235を有し、第3のジェネレータ240は第3の剪断ギャップ245を有する。ある実施の形態においては、剪断ギャップ225、235、245は約0.025 mmから約10 mmまでの範囲の幅を有する。別の場合には、このプロセスは、ギャップ225、235、245が約0.5mmから約2.5 mmまでの範囲の幅を有するようなHSD200を用いている。ある場合には、剪断ギャップ幅は約1.5mmに維持される。別の場合には、剪断ギャップ225、235、245の幅はジェネレータ220、230、240で異なる。ある場合には、第1のジェネレータ220の剪断ギャップ225の幅は第2のジェネレータ230の剪断ギャップ235の幅よりも大きく、剪断ギャップ235の幅は第3のジェネレータ240の剪断ギャップ245の幅よりも大きい。上述したように、各ステージのジェネレータは交換が可能であって、柔軟性を提供するようになっていてもよい。HSD200は、剪断速度が流れの方向260に沿った長手方向に同じままでも、増大しても、減少してもよい。
【0058】
ジェネレータ220、230、240はcoarse、medium、fine、super-fineという特性を有しており、それらはロータおよび相補的なステータ上の相補的リングの数が異なっている。一般的にはあまり好ましくないが、ロータ222、223、224とステータ227、228、229は歯状設計になっている。各ジェネレータは相補的なロータ−ステータのリングのセットを二つあるいはそれより多く有する。ある実施の形態においては、ロータ222、223、224は、相補的なロータ−ステータのリングを3セットより多く有する。ある実施の形態においては、ロータおよびステータは歯を持たず、したがって反応物は焼結材料の孔の中を通される。
【0059】
HSD40は大規模な装置でも小規模な装置でもよい。ある実施の形態においては、HSD40は時間当たり10トン以下から時間当たり50トンまでを処理するために使用される。ある実施の形態においては、HSD40は10トン/時、20トン/時、30トン/時、40トン/時、50トン/時、あるいは50トン/時以上を処理する。大規模なユニットは1000 gal/h(24バレル/時)を製造する。ロータの内径は所望の用途に適した任意のサイズでよい。ある実施の形態においては、ロータの内径は約12 cm(4インチ)から約40 cm(15インチ)までである。ある実施の形態において、ロータの直径は約6 cm(2.4インチ)である。ある実施の形態においては、ステータの外径は約15 cm(5.9インチ)である。ある実施の形態においては、ステータの直径は約6.4 cm(2.5インチ)である。ある実施の形態においては、直径がロータは60 cm(2.4インチ)でステータは6.4 cm(2.5インチ)であり、約4 mmの隙間が提供されている。ある実施の形態においては、三つのステージの各々は多数の相補的なロータ/ステータのリングを有する最高級(super-fine)ジェネレータで動作する。
【0060】
HSD200はインレット205でライン13からの流体混合物を受け取る。混合物は反応物からなっている。反応物はRRGからなる。ある実施の形態においては、少なくとも一つの反応物はガス状であり、少なくとも一つの反応物は液体である。インレット205に流入する供給ストリームは、ジェネレータ220、230の中、そしてジェネレータ240の中を順に圧送されて、製品が形成される。製品はアウトレット210(および図1のライン19)を介してHSD200から流出する。各ジェネレータのロータ222、223、224は固定されたステータ227、228、229に対して高速で回転して、大きな剪断速度を提供する。ロータが回転することによって、インレット205へ流入する供給ストリームなどの流体が剪断ギャップの中を(そして、もし存在すればロータの歯の間のスペースおよびステータの歯の間のスペースの中を)外側へ圧送されて、局所的な高剪断条件を形成する。流体が中を流れる剪断ギャップ225、235、245内の(そして、存在するときは、ロータの歯とステータの歯の間のギャップ内の)流体に加えられる高い剪断力がその流体を処理して、製品を形成する。この製品は、液体(例えば液体製品およびキャリア/触媒)の連続相の中における、未反応ガス、あるいは製品ガスの分散物からなる。製品は高剪断アウトレット210(および図1のライン19)を介してHSD200から流出する。
【0061】
上述したように、ある場合には、HSD200はノースカロライナ州ウィルミントンのIKA(R)Works, Inc.およびマサチュセッツ州ウィルミントンのAPVNorth America, Inc.のDISPAX REACTOR(R)からなっている。様々なインレット/アウトレット接続、馬力、先端速度、出力rpm、および流量を有するいくつかのモデルが利用可能である。HSDの選択は、スループットの選択と、HSD200のアウトレット210から出るライン10(図1)内の分散物中の粒子、液滴、バブルのサイズに依存する。例えばIKA(R)(登録標章)のモデルDR2000/4はベルトドライブ、4Mジェネレータ、PTFEシーリングリング、インレットフランジ25.4mm(1インチ)サニタリクランプ、アウトレットフランジ19 mm(3/4インチ)サニタリクランプ、2HPのパワー、7900 rpmの出力速度、およそ300-700 L/h(ジェネレータによる)の流量能力(水)、9.4-41 m/s(1850 ft/minから8070 ft/min)の先端速度からなっている。複数のHSDを使用することによって、あるいはより大きなHSDを利用することによって大規模化を行ってもよい。大きなモデルを使用した大規模化は容易に実行できる。より大きなHSD40のユニットを用いる結果、ある場合には実験室規模の装置の効率に比べて効率が改善される。大規模なユニットはDISPAX(R) 2000(登録標章)/ ユニットでよい。例えば、DRS 2000/5ユニットは51 mm(2インチ)のインレットサイズと、38 mm(1.5インチ)のアウトレットを有する。
【0062】
キャリアとして強酸が用いられる実施の形態においては、HSD40およびシステム100のその他の部分は耐火性/耐腐食性の材料から形成される。例えば、Inconel(R)(登録標章)合金、タングステン、あるいはHastelloy(R)(登録標章)材料が使用できる。
【0063】
容器
容器あるいはリアクタ10は、上述した変換反応を実行するために多相反応を促進することができる任意のタイプの容器である。例えば、連続的な、あるいは半連続的な攪拌タンクリアクタや、一つあるいは複数のバッチリアクタを直列あるいは並列にして用いることができる。ある用途においては、容器10はタワーリアクタであり、別の用途では管状リアクタあるいはマルチ管状リアクタである。システムを動作させるときには、触媒溶液あるいはスラリを受容するために、容器10には触媒インレットラインが接続される。HSD40内において著しい反応が起きるような実施の形態においては、容器10は、未反応ガスおよび軽質製品ガス、液体キャリア、触媒、および付加価値製品から選択される成分を分離するのに適した一つあるいは複数の精留塔を有する。容器10は、未反応ガスあるいは軽質製品ガス16、酸素化製品17、およびキャリア流体20に対するアウトレットラインを有する。ある実施の形態においては、システム100は、未反応の、かつ/あるいは軽質のガスを付加価値製品から分離したり、キャリア流体を付加価値製品から分離したり、触媒を付加価値製品から分離したり、それらのある組み合わせを分離したりするようになった個別の装置からなっている。
【0064】
容器10は以下のコンポーネント、すなわち反応容器設計分野において周知の攪拌システム、加熱および/あるいは冷却設備、圧力測定器具、温度測定器具、一つあるいは複数の注入ポイント、レベルレギュレータのうちの一つあるいは複数を含んでいる。例えば、攪拌システムはモータ駆動のミキサを有している。加熱および/あるいは冷却装置は例えば熱交換器を有している。これと違って、ある実施の形態においては、HSD40内において反応の大部分が起きるため、容器10はある場合には主として貯蔵容器として機能する。一般的にはあまり望ましくないが、ある用途においては、特に以下でさらに説明するように多数の高剪断/リアクタを直列に用いる場合には、容器10をなくしてもよい。
【0065】
RRG製造装置
分散可能な精製所関連ガスすなわちRRGは、C1−C8化合物の少なくとも一つからなる任意の適当な精製所関連ガスである。RRGは一般にC1からC4の部分と水素からなっている。例えば、RRGはメタン、エタン、プロパン、ブタン、エチレン、プロピレン、ブチレン、一酸化炭素、および二酸化炭素の任意の組み合わせからなっている。RRGは、硫化水素など、水素および/あるいは硫黄の化合物からなっていてもよい。最も望ましくは、RRGは精製からのネガティブバリューガス(negative value gas)からなっていることである。ここで用いるときのネガティブバリューガスとは、通常、燃焼(flare)されるか、たぶん燃焼のまえに高価な費用を掛けて処理されるガスなど、それの廃棄にコストがかかり、かつ/あるいは利益のないようなガスのことである。ある実施の形態においては、RRGとして使用されるガスはこれまで一般的にボイラの燃料として使われるか、燃焼されるガスのことである。ある実施の形態においては、RRGは通常は精製所のガスプラントの中へ導入されるガスからなっている。ある実施の形態においては、RRGは熱分解ガス、コーカオフガス、FCCオフガス、軽質FCCオフガス、付随ガス、あるいはそれらの組み合わせである。
【0066】
図3は代表的な精製所15Aの図である。RRG製造装置15は精製所15Aに示されているような装置か、図示されているユニットを複数含むそのサブセットの任意の組み合わせである。そうした装置およびプロセスが例えばOSHAテクニカルマニュアルTED01-00-015の2章IV節に記載されている。ある実施の形態においては、RRGは図3のガスプラントへ導かれるよう図示されている任意のガスから誘導されるか、それからなっている。ある実施の形態においては、RRGは原油から分離される(すなわち付随ガスとして)。ある実施の形態においては、RRGはクラッキングのときに製造されるガスから誘導されるか、それからなっている。ある実施の形態においては、RRGはサーマルクラッキングのときに製造されるガスから誘導されるか、それからなっている。例えば、ある実施の形態においては、RRGはコーキング作業におけるサーマルクラッキングによって製造されるコーカオフガスから誘導されるか、それからなっている。ある実施の形態においては、RRGは接触分解(catalytic cracking)のときに製造されるガスから誘導されるか、それからなっている。ある実施の形態においては、RRGは流動接触分解(fluid catalytic cracking)のときに製造されるガスから誘導されるか、それからなっている。ある実施の形態においては、RRGは軽質FFCオフガスからなっている。RRG製造装置15は、そこからオフガスが得られる当該分野において周知の接触分解装置でよい。ある実施の形態においては、RRG製造装置15は流動接触分解に対して当該分野において周知の任意のFCC装置である。例えば、図4は適したRRG製造装置15Bを示す図である。装置15Bのある部分を用いてRRGが製造される。装置15Bの実施例では、RRG製造装置15Bはそこからオフガスが製造されるFCCシステムである。ある実施の形態においては、図4に示されているオフガスの一つあるいは複数の成分が除去され、残ったガスがRRGとして利用される。当該分野において周知の任意のFCC蒸気回収ユニットがRRG製造装置として使用できる。例えば、図4のFCCシステム15Bのオフガスは、RRGとして使用するまえに、図5のシステム15Cに類似したシステムあるいはそのシステムの一部を介して精留される。
【0067】
ある実施の形態においては、RRG製造装置15はそこから熱分解ガスが得られるスチームクラッキング装置からなる。当該分野では様々な相応しいスチームクラッキング装置が知られている。図6は熱分解ガスを製造するのに適した装置15D(すなわち図6の水素処理およびBTX抽出ステージの上流の装置)を示す図である。ある実施の形態においては、RRG製造装置はスチームクラッカからなり、図6に示されているようにさらにセパレータも有する。そうした場合には、スチームクラッカからのC6+ガスや、セパレータからのC6部分、C6−C8あるいはC8+部分をRRGとして使用できる。
【0068】
ある実施の形態においては、RRG製造装置15は、そこからコーカオフガスが得られ/誘導されるコーキング装置である。当該分野では様々な相応しいコーキング装置が知られている。例えば、図7に示されているRRG製造装置15Eやそのいくつかの部分を高剪断システム100において利用することができる。
【0069】
熱伝達装置
処理すべき流体を加熱するための内部あるいは外部の熱伝達装置もシステムの変形においては考えられる。例えば、反応物は当該分野において周知の任意の方法で予備加熱してもよい。そうした熱伝達装置を一つあるいは複数配置するのに適したいくつかの場所は、ポンプ5とHSD40との間、HSD40とフローライン19との間、またフローライン19内の流体がHSD40へリサイクルされるときにはフローライン19とポンプ5との間である。HSD40は内側シャフトを有する。この内側シャフトは、HSD40内の温度を部分的に、あるいは完全に制御するために、例えば水冷によって冷却される。それに限定されるわけではないが、そうした熱伝達装置のいくつかの例は、当該分野において周知のように、シェル、チューブ、プレート、コイルの熱交換器である。
【0070】
ポンプ
ポンプ5は連続的か、あるいは半連続的な動作を行うようになっており、HSD40およびシステム100の中の流れを制御することができる任意の適当なポンプ装置でよい。ある用途では、ポンプ5は202.65 kPa(2 atm)以上の圧力、あるいは303.97 kPa(3 atm)以上の圧力を提供する。ポンプ5はローパーポンプカンパニ(Roper Pump Company) (コマースジョージア(Commerce Georgia))の ローパータイプ(Roper Type) 1ギアポンプでよく、デイトンプレッシャーブースターポンプモデル(Dayton PressureBooster Pump Model) 2P372E、デイトンエレクトロニックカンパニ(Dayton Electric Co) (ナイルズ、イリノイ州(Niles, IL))は一つの相応しいポンプである。ポンプのすべての接触部分は例えば316ステンレススチールなどのステンレススチールからなっていることが好ましい。このシステムのある実施の形態においては、ポンプ5は約2026.5 kPa(20 atm)以上の圧力が可能である。ポンプ5に加えて、一つあるいは複数の追加の高圧ポンプを図1に示されているシステムに含めてもよい。例えば、ポンプ5に類似したブースタポンプを、フローライン19内の圧力を増大させるために、HSD40とフローライン19との間に含めてもよい。
【0071】
精製所関連ガスから付加価値製品を製造するための高剪断プロセス
精製所関連ガスから付加価値製品を製造するためのプロセスを、図8に関して説明する。図8はこの発明による高剪断プロセス250を示す流れ図である。プロセス250は、精製所関連ガスを提供する段階300と、RRGをキャリアおよび/あるいは触媒と高剪断で均質に混合して分散物と付加価値製品からなる製品を形成する段階400と、未反応ガスとキャリアおよび/あるいは触媒と、付加価値製品を分離する段階500を有する。プロセス250はさらに、軽質ガスに高剪断を加える段階600を有する。
【0072】
精製所関連ガスRRGを提供する段階
精製所関連ガス(RRG)を提供する段階300は、通常はガスプラントへ送られる任意の精製所関連ガスを得る、あるいは製造する段階を有する。それと違って、あるいは追加的に、精製所関連ガスを製造する段階は付随ガスを得る段階を有する。オイル精製とも呼ばれる石油精製のために利用される現代の石油精製は、クリーンなガソリンや低硫黄のディーゼル燃料を提供する一連のコアプロセスおよびプロセスユニットを用いている。精製プロセスでは様々なオフガスが製造される。RRGは熱分解ガス、FCCガス、コーカオフガス、付随ガス、あるいはそれらの任意の組み合わせである。RRGは、通常、燃焼されるか、あるいは燃焼が適切ではないときには費用をかけてより望ましい製品に変換される“ネガティブバリューガス”であることが好ましい。RRGはオレフィンであってもよい。RRGは少なくとも一つのC1からC8化合物、水素、あるいはその組み合わせからなっていることが望ましい。ある実施の形態においては、RRGはC1からC4までの化合物と水素から選択された少なくとも一つからなっている。
【0073】
RRGは、以下の組成、すなわち、40-50%(例えば〜46%)N2、20-25%(例えば〜24%)CO、20-30%(例えば〜26%)CO2、1-5%(例えば4%)H2、そして少量の(例えば〜4%)O2、および/あるいはCH4、あるいは類似の組成を有する溶炉ガスである。FCC供給における炭化水素タイプは大きく、パラフィン、オレフィン、ナフテン、芳香族化合物(PONA)のように分類される。通常、精製作業で燃料として使用されるか燃焼されるガス、したがってこの発明においてRRGとしての使用に適したガスが、この発明に反しないようなすべての目的でその全体が組み込まれているアール・エヌ・ワトキンス(R.N. Watkins)による石油精製蒸留(Petroleum Refinery Distillation)第2版(ISBN 0-87201-672-2)に記載されている。
【0074】
精製所関連ガスを提供するための実施の形態が図9の流れ図に描かれている。図9は精製所関連ガスを提供する方法300Aの流れ図であり、そこではRRGは接触分解(CC)からのオフガスである。しかし、RRGはサーマル(すなわち触媒によらない)クラッキングからのオフガスでもよい。接触分解は、重い炭化水素分子を熱や触媒を用いてより軽い炭化水素部分に分解するプロセスである。図9におけるRRGを提供する方法300Aは、CCフィードストックを提供する段階301と、CCフィードストックを接触分解する段階302と、CCオフガスをCC製品から分離する段階303からなる。図10はCCフィードストックを提供するのに適した方法301Aを示す図である。CCフィードストックは常圧ガスオイル(AGO)および/あるいはヴァキュームガスオイル(VGO)からなる。CCフィードストックを提供する方法301Aは、原油を提供する段階304と、原油を脱塩する段階305と、脱塩された原油を常圧で蒸留する段階306と、306からの常圧タワーの残留物を減圧蒸留してCCフィードストックを得る段階307を有する。
【0075】
原油を提供する段階304は、当該分野において周知の方法を用いて一つあるいは複数の原油を提供する段階からなる。原油は、少量の硫黄、窒素、炭化水素の酸素誘導体を、微量金属とともに含む、自然にできる炭化水素の複雑な混合物である。原油は、油田によって見かけや組成が異なる多くの様々な炭化水素化合物を含んでいる。原油は、濃度については水からタール状の固体まで、また色については透明から黒色までの範囲に及ぶ。“平均的な”原油は約84%の炭素、14%の水素、1%-3%の硫黄、そして窒素、酸素、金属、及び塩の各々を1%以下含んでいる。原油は、類似した炭化水素分子の主要な割合に基づいて、一般にパラフィン系、ナフテン系、あるいは芳香族化合物系に分類される。混合ベースの原油は炭化水素の各タイプを様々な量だけ含んでいる。精製原油ベースのストックは通常、二つあるいはそれより多くの異なる原油の混合物からなっている。
【0076】
比較的簡単な原油アセイが、原油をパラフィン系か、ナフテン系か、芳香族化合物系か、あるいは混合かに分類するために使われている。一つのアセイ方法(United States Bureau of Mines)は蒸留に基づいており、別の方法(UOP“K”ファクタ)は比重よおび沸点に基づいている。原油の価値(すなわち有用製品の産出高および質)やプロセスパラメータを評価するには、さらに包括的な原油アセイを利用する。原油は一般に産出高構造にしたがってグループ化される。
【0077】
原油はAPI(American Petroleum Institute)比重を用いても定義される。API比重は石油製品の濃度を表現する任意の尺度である。API比重が大きいほど、原油は軽い。例えば、軽質原油は大きなAPI比重と小さな比重を有する。低炭素、高水素、高API比重を有する原油は、通常、パラフィンが豊富で、ガソリンや軽質石油製品を産出する比率が大きい傾向にある。一方、高炭素、低水素、低API比重を有する原油は、通常、芳香族化合物が豊富である。
【0078】
かなりの量の硫化水素やその他の反応性硫黄化合物を含んでいる原油は“サワー(sour)”と呼ばれる。含有する硫黄が少ない原油は“スウィート(sweet)”と呼ばれる。このルールに対するよく知られた例外は、それらの硫化水素含有量にかかわらず常に“サワー”と考えられている西テキサス(West Texas)の原油や、その中の硫化化合物があまり反応性でないために“サワー”と考えられていないアラブの高硫黄原油である。原油を提供する段階304は、スウィート原油、サワー原油、低API原油、高API原油、中API原油、パラフィン系原油、ナフテン系原油、芳香族化合物系原油、混合原油、あるいはそれらの任意の組み合わせから選択される一つあるいは複数を提供する段階を有する。表1は種々の原油の代表的な特性や性質、ガソリン潜在力(potential)を示している。
【0079】
【0080】
FCCフィードストックを製造する段階は、提供された原油を脱塩する段階を有する。当該分野において周知のように、脱塩は、一つあるいは複数の常圧タワーにおける蒸留のまえに、原油から塩や水そしてその他の不純物を取り除くために行われる。CCフィードストックを提供する段階は、原油を蒸留する一つあるいは複数の段階を有する。原油の精留(蒸留)は、常圧蒸留タワーおよび減圧蒸留タワーの中で、原油を、“フラクション(fraction=留分)”あるいは“カット(cut)”と呼ばれる様々な沸点範囲の炭化水素化合物グループに分離することである。精留は原油を、常圧タワーおよび減圧タワーの中での蒸留によって種々のフラクションあるいはストレートランカットに分類する。得られる主要なフラクションあるいは“カット”は特定の沸点範囲を有し、揮発度が小さくなる順に、ガス、軽質蒸留物、中間蒸留物、ガスオイル、残滓へ分類される。
【0081】
ある実施の形態においては、脱塩された原油は常圧で蒸留され、常圧蒸留のときに得られた常圧タワー残留物はそのあと減圧蒸留される。常圧蒸留する段階306は、当該分野において周知の常圧蒸留タワーを動作させて、脱塩された原油を精留する段階からなる。常圧蒸留の段階は、原油を、ナフサフラクション、ケロシンフラクション、ディーゼルフラクション、中間蒸留フラクション、ガスオイルフラクション、常圧残留オイルあるいは常圧タワー残留物と呼ばれる底部の液体に分離する段階を有する。
【0082】
脱塩された原油フィードストックは回収したプロセス熱を用いて予備加熱できる。フィードストックは直火の原油チャージヒータの中に導入され、そこで常圧よりも若干高い圧力と650°Fから700°F(原油をこれらの温度以上に加熱すると望ましくないサーマルクラッキングが起きる)の範囲の温度で底部のすぐ上方の垂直蒸留コラムの中へ供給される。最も重いフラクション以外はすぐに蒸気になる。高温の蒸気がタワーの中を上昇するにつれて、その温度は低下する。重質燃料オイルあるいはアスファルト残留物は底部から取り出される。タワーのより高いポイントで、潤滑油や灯油、ケロシン、ガソリン、凝集していないガス(これはもっと低い温度で凝集する)を含む種々の主要な製品が順々に抜き取られる。
【0083】
常圧蒸留のために使用される精留タワーは、当該分野において周知の任意の蒸留コラムでよい。精留タワーは約120フィートの高さのスチール円筒からなっており、液体を分離し収集するために水平のスチールトレイを有している。各トレイでは、下方からの蒸気が孔とバブルキャップに入る。蒸気は、孔とバブルキャップによってトレイ上の液体の中で泡立ち(bubble)、そのトレイの温度でいくらか凝集する。オーバーフローパイプが凝集した液体を各トレイから排出して下のトレイへ戻し、そこでより高い温度によって再蒸発が行われる。所望の製品純度が達成されるまで、蒸発と凝集、そして洗浄作業が何度も繰り返される。つぎに、あるトレイからサイドストリームが取り出されて、所望のフラクションが得られる。上部の凝集していない固定ガスから底部の重質燃料オイルまでの製品が精留タワーから連続的に抽出できる。蒸気の圧力を下げて部分的な減圧を形成するためにタワー内でスチームを使用してもよい。蒸留プロセスによって原油の主要な組成はいわゆるストレートラン製品に分離される。ときに、原油は、軽質フラクションのみが蒸留によって切り取られ(topped off)、通常は高真空のもとでさらに蒸留される重質残留物が残される。
【0084】
減圧して蒸留する段階307は、当該分野において周知の任意の方法によって実行される。ある実施の形態においては、減圧蒸留の段階307は常圧タワー残留物を、減圧蒸留を介してガスオイル、軽質減圧蒸留分、重質蒸留分、減圧残留オイル、あるいはそれらの組み合わせへと精留する段階を有する。減圧蒸留は減圧下における石油の蒸留であり、フィードストックのクラッキングあるいは分解を防止するために沸騰温度は十分に下げられる。ある実施の形態においては、CCフィードストックは常圧蒸留および/あるいは減圧蒸留からのガスオイル、軽質減圧蒸留分、重質減圧蒸留分、あるいはそれらの組み合わせからなる。
【0085】
減圧蒸留においては、高温状態にある常圧蒸留タワーからの残滓あるいは切り取りが行われた原油をさらに蒸留するために、低い圧力が用いられてサーマルクラッキングが防止される。減圧蒸留は一つあるいは複数の減圧蒸留タワーの中で実施される。減圧蒸留の原理は分留のそれと似ており、低い圧力で同程度の蒸気速度を維持するために大きな直径のコラムを使用することを除くと装置も類似している。トレイの代わりにランダムパッキングとデミスタパッドを使用する点で、減圧タワーの内部設計は常圧蒸留タワーとは異なる。代表的な第1相(first-phase)の減圧タワーを使用して、ガスオイル、潤滑油ベースストック、そしてプロパンの脱アスファルト化(deasphalt)のための重質残留物を製造する。脱アスファルト化は、非アスファルト化合物を分解するために液体プロパンを用いて常圧蒸留残油(reduced crude)からアスファルト材料を除去するプロセスである。より低い真空で動作する第2相のタワーを使って、潤滑油(lube-stock)処理に用いられない常圧タワーからの余剰残滓と、脱アスファルト化に使用されない第1の減圧タワーからの余剰残滓を蒸留する。一つあるいは複数の減圧タワーを用いて、余剰残滓から接触分解フィードストックを分離する。
【0086】
RRGを提供する段階は、さらにCCフィードストックに接触分解を実施する段階を有する。より軽くより望ましい製品の品質と量を増大させるため、また残留物の量を減らすために、接触分解によって複雑な炭化水素はより単純な分子に分解される。このプロセスは、炭化水素化合物の分子構造を再配置して、重い炭化水素フィードストックを、ケロシンやガソリン、LPG、灯油、石油化学製品フィードストックなどのより軽いフラクションに変換する。
【0087】
触媒が重い分子からより軽い分子への変換を容易にすることを除くと、接触分解はサーマルクラッキングと似ている。クラッキング反応に触媒(すなわち化学反応を助けるがそれには加わらない材料)を使用することによって、サーマルクラッキングにおけるよりも、ずっと緩い動作条件のもとで品質が改善された製品を産出できる。代表的な温度は、10から20 psiというずっと低い圧力で850°Fから950°Fである。クラッキングユニットで使用される触媒は、粉末やビーズ、ペレットの形になった、あるいはエクストルダイト(extradites)と呼ばれる整形材料である固体材料(例えばゼオライト、アルミニウムハイドロシリケート(aluminum hydrosilicate)、処理されたベントナイトクレイ、フラー土、ボーキサイト、およびシリカ−アルミナ)である。接触分解においては、接触分解フィードストックは触媒と反応して様々な炭化水素に分解し、コークスを燃焼することによって触媒が活性化され、分解された炭化水素製品が種々の製品に分離される。
【0088】
RRGは接触分解プロセスの三つのタイプ、すなわち流動接触分解(FCC)、移動床接触分解、そしてサーモフォア(Thermofor)接触分解(TCC)の任意のものを介して得られるか、あるいは誘導できる。接触分解プロセスは非常に柔軟性があり、様々な製品要求を満足させるように動作パラメータを調節することができる。RRGとして利用されるオフガス組成はクラッキングの動作パラメータに応じて変わる。触媒の活性には、クラッキングの他に、脱水素化、水素化、および/あるいは異性化がある。表2は、接触分解プロセスのフィードストックと、代表的な製品を示している。表に示されているように、接触分解からのオフガスのすべて、あるいはその一部を、この発明によってRRGとして利用することができる。
【0089】
ある実施の形態においては、RRGを提供する段階は、例えば図4に示されているFCCのような、流動接触分解(FFC)からのオフガスを提供する段階を有する。流動接触分解(FFC)は石油精製において使用される最も重要な変換プロセスである。それは、原油の高沸点炭化水素フラクションを、より価値のあるガソリンやオレフィン系ガス(軽質オレフィン)およびその他の製品に変換するのに広く使用されている。FCCフィードストックは、常圧において340℃あるいはそれより高い初期沸点と、約200から600、あるいはそれ以上の平均分子量を有するような原油フラクションからなっている。FCCプロセスによって、フィードストックが高温かつ適度な圧力において流動化した粉末触媒と接触させられることによって、高沸点炭化水素液体の長鎖分子が蒸発して、ずっと短い分子に分解される。CCフィードストックに接触分解を実施する段階302は、細かく分割した触媒が存在するところで当該分野において周知の手段によってオイルフィードストック(すなわちFCCフィードストック)をクラッキングする段階を有する。FCC触媒はオイル蒸気によって通気した、あるいは流動化した状態に維持される。流動接触分解装置は、一体化された処理ユニットとして動作する触媒セクションと精留セクションを有している。触媒セクションはリアクタと再生器を含んでおり、スタンドパイプ(standpipe)とライザとともに触媒循環ユニットを形成している。流動触媒は、空気やオイル蒸気、および/あるいはスチームを運搬媒体として使用して、FCCのリアクタと再生器との間を連続的に循環させることができる。
【0090】
【0091】
ある実施の形態においては、FCCは、予備加熱された炭化水素チャージ(すなわちFCCフィードストック)がFCCリアクタにつながるライザへ入ったときに、それを高温の再生された触媒と混合することによって実施される。チャージはライザの内部でリサイクルストリームといっしょにされ、蒸発され、高温の触媒によって反応温度(900°Fから1,000°F)まで上げられる。この混合物がライザを上昇するとき、チャージは10から30 psiで分解される。最近のFCCユニットを用いた実施の形態においては、すべてのクラッキングがライザの中で行われる。したがって、FCC“リアクタ”は単にサイクロン(cyclone)に対する保持容器としてのみ働いている。クラッキングは、オイル蒸気がリアクタのサイクロン中の触媒から分離されるまで続く。
【0092】
300Aを用いてRRGを提供する段階はCC製品からCCオフガスを分離する段階を有する。接触分解が流動接触分解であるような実施の形態においては、その結果できるFCC製品ストリーム(分解された製品)は、提供されるRRGとして利用されるFCCオフガスフラクションを含めて種々のフラクションへと精留される。したがって、流動接触分解の製品はFCC製品分留塔の中へ導かれ、そこでFCCオフガスフラクションを含めたフラクションに分離される。
【0093】
消費されたFCC触媒は、FCCプロセスのときに触媒上に集まるコークスをなくして再生することができる。消費された触媒は触媒ストリッパを通って再生器まで流れ、予備加熱された空気と消費された触媒が混合されるその底部でコークスの堆積の大部分が燃え尽くす。クラッキングプロセスを最適化するために、新鮮な触媒が追加され、消耗した触媒は除去される。
【0094】
開示されている方法のRRGとしてFCCオフガスを利用することは、そうしたオフガスの従来の処理法よりも望ましい。従来は、主要な精留塔オフガスは、いわゆるガス回収ユニットへ送られ、そこでブタンやブチレン、プロパン、プロピレン、そしてより小さい分子量ガス(水素、メタン、エチレン、およびエタン)に分離される。いくつかの従来型FCCガス回収ユニットもエタンやエチレンのいくらかを分離する。
【0095】
従来は、一般的に精製燃料として消費されるか、あるいは燃焼されてしまうテールガス流からのオレフィンからキャッシュフロー(cash flow)を提供するために、精製所のFCCオフガス流からのオレフィン回収が用いられてきた。こうした回収スキームを精製所あるいはオレフィンプラントで用いることができ、またそれぞれの要求に合わせることができる。しかし、FCCオフガスの従来の処理は複雑で、資本的に高価である。図4に示されているように、ある実施の形態においては、当該分野において周知のようにオレフィンを除去するためにFCCオフガスは例えば図5に示されているようにしてさらに処理され、種々の製品が除去されたあと軽質ガスのみがRRGとして利用される。図5に示されているように、FCCユニットから取り出され、またH2、CO、および/あるいはSも含んでいるかもしれない軽質のC1からC4ガスのすべて、あるいはその一部がこの発明にしたがってRRGとして使用される。
【0096】
ある実施の形態においては、CCフィードストックに接触分解を実施する段階302は、当該分野において周知の方法によって、CCフィードストックに移動床接触分解を実施する段階からなる。移動床接触分解プロセスはFCCプロセスに類似している。触媒はペレットの形をしており、コンベヤや空気圧式リフトチューブによってユニットの上部へ貯蔵ホッパまで連続的に移動され、そのあと重力によってリアクタの中を下方へ流れ、最後に再生器に至る。再生器とホッパはスチームシール(steam seal)によってリアクタから隔離されている。分解された製品は、リサイクルガス、オイル、精製オイル、蒸留物、ナフサ、およびウェットガスに分離される。ガスあるいはウェットガス、あるいはそれらの一部は提供される(provided)RRGとして使用される。
【0097】
ある実施の形態においては、CCフィードストックに接触分解を実施する段階302は、CCフィードストックに当該分野において周知のサーモフォア接触分解を実施する段階からなる。代表的なサーモフォア接触分解ユニットにおいては、予備加熱されたフィードストックが重力によって触媒リアクタベッドの中を流れる。蒸気は触媒から分離され、精留塔へ送られ、RRGとして使用するためにそこからCCオフガスが得られる。消費された触媒は再生され、冷却され、リサイクルされる。再生によって生じた排煙は熱の回収のために一酸化炭素ボイラへ送られる。
【0098】
ある実施の形態においては、RRGを提供する段階は、サーマルクラッキングからオフガス(これは通常、ガスプラントあるいは精製所へ送られる)を回収する段階を有する。サーマルクラッキングは、触媒の助けを借りずに、高温を用いることによって、重いオイル分子をより軽いフラクションへ分解することである。サーマルクラッキングは、さらにガソリンと蒸留燃料を製造するために、重い燃料に圧力と強い熱の両方を加えて物理的に大きな分子を小さな分子に分解する。オフガスとしてRRGを製造するために利用されるサーマルクラッキングは、サーマルクラッキングの別の形であるビスブレーキングでもよい。
【0099】
原油の単純な蒸留では、市場が必要とする製品とは量およびタイプが一致しない製品が製造されるため、そのあとの精製プロセスによって炭化水素の分子構造を変えることによって製品の構成(mix)を変更する。この変更を達成する方法の一つは、より重くて沸点が高い石油フラクションをガソリンや燃料オイル、ガスオイルなどのより価値のある製品に破壊あるいは分解するプロセスである“クラッキング”を用いることである。クラッキングの二つの基本的なタイプは、熱および圧力を使用するサーマルクラッキングと、上述した接触分解である。
【0100】
RRGは、ビスブレーキング、スチームクラッキング、コーキング、およびそれらの組み合わせから選択されるサーマルクラッキングプロセスのオフガス(通常は、ガスプラント、燃料、燃焼へ送られる)でよい。
【0101】
RRGはビスブレーキングを介して得られてもよい。ビスブレーキングは、沸点範囲に影響を与えることなく、重質の原油残留物の粘性あるいはポアポイント(pour point)を著しく低下させるサーマルクラッキングの穏やかな形(低温)である。常圧蒸留タワーからの残留物を常圧で加熱(800°Fから950°F)して、ヒータの中で穏やかに分解する。つぎに、オーバークラッキングを制御するために冷たいガスオイルで急冷して、蒸留タワーでflashする。ビスブレーキングは通常、ワックス状の残留物のポアポイントを下げ、またより軽い燃料オイルとブレンドするために使用される残留物の粘性を下げるために使われる。製品の要求によって、中間蒸留物もビスブレーキングによって製造される。精留塔の底部に堆積するサーマルクラッキングされた残留タールはストリッパの中で真空flashされ、蒸留物はリサイクルされる。表3は代表的なフィードストックと、ビスブレーキングの結果できる製品を示しており、RRGのためのビスブレーキング作業あるいはその一部のオフガスの用途を示している。
【0102】
ある実施の形態においては、RRGを提供する段階300は熱分解ガスを提供する段階からなる。熱分解ガスは、ナフサあるいはガスオイルなどの炭化水素フラクションをスチームクラッキングすることによるエチレン製造の副産物である。熱分解ガソリンあるいはパイガス(pygas)はスチームクラッキングのオレフィンプラントにおける副産物として得られるか、製造され、C5-からC10-炭化水素から構成されている。図6には適した熱分解ガス製造装置が示されている。パイガスは一般に芳香族化合物(例えばベンゼン)製造用のフィードストックとして使用されるが、ときどきガソリン製造など、他の目的にも応用される。生のパイガスはジエンやオレフィン、そして硫黄成分などの不安定で望ましくない成分を含んでいるため、ストリームは、通常、(2ステージの)水素化あるいは水素処理が施される。水素処理は、エチレンの製造の副産物である熱分解ガソリン(パイガス)の品質を改善するためにも用いることができる。伝統的には、パイガスに対する販路(outlet)は、そのオクタン価が大きいことを考慮すると相応しいルートである自動車用ガソリンの混合であった。しかし、この材料が有する受け入れ難い臭いや色のため、またそれが粘性を形成する傾向を有するために、非常に少量の混合しかできなかった。ジオレフィン含有量が高いパイガスの品質は、従来、ときに水素処理によってジオレフィンをモノオレフィンに変換することによって改善され、自動車用ガソリン混合として許容できる製品にされる。価値のある製品を製造するためにパイガスを利用するここに述べられている酸素化物を製造する方法を考えると、そうした水素処理は望ましくない。
【0103】
【0104】
この発明の実施の形態においては、パイガスが付加価値製品の製造に利用される。RRGは、図11のフローチャートに示されたRRGを提供する方法300Bを介して提供される。RRGを提供する段階300Bは、スチームクラッカのフィードストックを提供する段階308と、スチームクラッカのフィードストックをクラッキングする段階309と、クラックされた製品から熱分解ガスを分離する段階310を有する。スチームクラッカのフィードストックを提供する段階308は、当該分野において周知の任意の適当なスチームクラッカフィードストックを製造する、あるいは得る段階からなる。スチームクラッカフィードストックはナフサからなっている。ナフサはガソリンの主要成分である低沸点炭化水素フラクションに対して使用される一般的な用語である。脂肪族ナフサは、0.1%以下のベンゼンを含んでいてC3からC16の炭素数を有するナフサを指している。芳香族ナフサはC6からC16の炭素数を有していて、ベンゼン(>0.1%)や、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素を多く含んでいる。ナフサは、主に高オクタンガソリン成分を(触媒改質プロセスを介して)製造するためのフィードストックとして用いられる。それはまた、スチームクラッカにおいてオレフィンを製造するために石油化学産業において、また化学産業においては溶剤(洗浄)用途で使用される。
【0105】
スチームクラッカのフィードストックはエタンから真空ガスオイルまでの範囲に及び、より重いフィード(feed)はナフサなどの副産物をより多く産出する。スチームクラッカのフィードストックはエタン、ブタン、ナフサ、あるいはそれらの組み合わせからなる。スチームクラッカのフィードストックをクラッキングしてクラックされた製品を提供する段階309は、スチームクラッカフィードストックをスチームクラッカに導入する段階を有する。スチームクラッカは、スチームクラッカフィードストック(例えばナフサやおそらく軽質炭化水素)を、オレフィン(例えばエチレン、プロピレン)や他の化学原材料に変換する石油化学装置である。ある実施の形態においては、スチームクラッキングは1,500°Fから1,600°Fの温度と、常圧よりも若干高い圧力で実施される。スチームクラッカのフィードストックをクラッキングする段階309に続いて、段階310で熱分解ガスがクラックされた製品から分離される。クラックされた製品(化学物質)は通常の方法によってパイプラインやその他の方法によって、例えば石油化学および高分子施設まで輸送され、オレフィンをベースにした製品に変換される。スチームクラッキングから製造されたナフサは、水素処理のまえに抽出されるベンゼンを一般には含んでいる。スチームクラッキングからの残留物はときに重油とブレンドされる。熱分解ガスはこの発明においてはRRG300として提供される。
【0106】
ある実施の形態においては、RRGを提供する段階300は当該分野において周知の任意の方法によってコーカオフガスを製造する、あるいは得る段階を有する。コーカオフガスを提供するためのシステム例が図7に与えられている。図12は、この発明の実施の形態においてRRGとして提供する段階300C用のコーカオフガスを製造する方法の流れ図である。RRGを提供する段階300Cはコーカフィードストックを提供する段階311と、コーカフィードストックを熱的にクラッキングする段階312と、コーカ製品からコーカオフガスを抽出する段階313を有する。コーカオフガスはコーキングから得られる。コーキングは、重い残留物を、軽い製品および副産物である石油コークスへ熱的に変換して改善する(upgrade)プロセスである。コークスは、石油残留物の破壊的な蒸留で残った高炭素含有残留物である。
【0107】
コーキングは、重い残留物をより軽い製品あるいは蒸留物へと改善するために使用されるサーマルクラッキングの厳しい方法である。コーカフィードストックを提供する段階311は常圧タワーおよび/あるいは減圧蒸留タワーからの残留物を提供する段階を有する。コーカフィードストックのコーキングによって、ストレートランガソリン(コーカナフサ)と、接触分解のフィードストックとして使用される種々の中間蒸留フラクションが、この発明においてRRGとして使用されるコーカオフガスとともに製造される。したがって、コーキングは完全に水素を還元(reduce)するため、残留物は“コークス”と呼ばれる炭素の形になる。ディレード(delayed)コーキングおよび/あるいは連続(コンタクトあるいはフルード)コーキングは、RRGとして使用されるコーカオフガスを提供する。
【0108】
ある実施の形態においては、RRGはディレードコーキングからのオフガスとして提供される。減圧残留オイルは、原油からの重油をより軽質の製品へと変換するディレードコーキングユニットの中で通常は処理される。ディレードコーキングにおいては、加熱されたチャージ(コーカフィードストック、一般的には常圧蒸留タワーからの残留物)が大きなコークスドラムへ移され、そこでクラッキング反応が完了するのに必要なだけの滞留時間が与えられる。最初に、重いフィードストックが炉に供給される。残留物を低圧力(25あるいは30 psi)で高温(900°Fから950°F)に加熱するこの炉はヒータチューブの中で未熟な(premature)コーキングが行われないように設計されており、そのように制御される。混合物はヒータから一つあるいは複数のコーカドラムへ移され、そこで高温の材料はより軽質の製品にクラックするまで、25から75 psiで約24時間保持(遅滞(delayed))される。ドラムからの蒸気は精留塔へ戻され、そこでオフガス、ナフサ、およびガスオイルが分離される。コーカオフガスはRRGを提供する段階300に使用される。
【0109】
通常、コークスが一つのドラムで予め決められたレベルに達すると、連続的な作業を維持するために、流れは別のドラムへ向けられる。一杯になったドラムはクラックしなかった炭化水素をストリッピングするために蒸らされ、水を注入して冷却され、機械的に、あるいは水圧で脱炭素処理(decoke)される。コークスはドラムの底部から上昇するオーガによって機械的に取り除かれる。水圧式脱炭素処理(hydraulic decoking)は、回転カッタから放出される高圧の水でコークスベッドを粉砕する段階からなっている。
【0110】
ある実施の形態においては、RRGは連続コーキングからのオフガスとして提供される。連続(コンタクトあるいはフルード)コーキングは、ディレードコーキングよりも高い温度で動作する移動床プロセスである。連続コーキングにおいては、高温のリサイクルされるコークス粒子からリアクタと呼ばれるラジアルミキサ内のフィードストックへ伝達される熱を使用することにより、50 psiでサーマルクラッキングが行われる。ガスおよび蒸気はリアクタから取り出され、それ以上の反応を停止するために急冷され、精留される。コーキング作業の代表的なフィードストックおよび製品を掲げる表4に示されているように、コーカオフガスあるいはその一部はこの発明におけるRRGとして使用される。反応を行ったコークスはサージドラムへ入り、フィーダおよびクラシファイヤ(classifier)まで持ち上げられ、そこで大きなコークス粒子は製品として取り除かれる。残ったコークスはプリヒータの中に落下し、フィードストックとともにリサイクルされる。コーキングはリアクタおよびサージドラムの中で行われる。このプロセスは、コークスとフィードストックが連続的に流れるという点で、自動的である。上述したように、可能性のあるオフガス組成もアール・エヌ・ワトキンスによる石油精製蒸留第2版(ISBN 0-87201-672-2)に記載されている。
【0111】
【0112】
ある実施の形態においては、RRGを提供する段階300は、付随ガスを提供する段階からなる。付随ガスを利用するような付随ガスを提供する段階300Dの方法が図13に示されている。RRGを提供する段階300Dは、原油を提供する段階314と、原油から付随ガスを分離する段階315を有する。原油を提供する段階314は図10に関連して上述した段階304におけるようにして実施される。付随ガスは、埋蔵地において高圧下で原油に溶解しているガスや、オイル上方のガスキャップとして存在するガスである。付随ガスは天然ガスからなる。原油から付随ガスを分離する段階は当該分野において周知の方法で行われる。
【0113】
その他の精製所関連ガスをこの発明におけるRRGとして使用してもよい。通常はガスプラントへ送られる任意のガスをRRGとして使用して、この発明の方法によって付加価値製品に変換できる。例えば、水素化脱硫の、あるいはその一部において製造されるオフガスを、RRGを提供するために使用してもよい。水素化脱硫とは、主要な目的が水素の存在のもとで石油フラクションから硫黄を除去することであるような触媒プロセスのことである。ある実施の形態においては、通常はRRGとして使用されるまえにガス処理プラントへ送られるガスから一つあるいは複数の製品が除去される。不飽和および、あるいは飽和(unsaturated or saturated)ガスプラントでは、RRGとして使用するまえに一つあるいは複数の成分が除去される。例えば、ブタンとブテンがアルキル化のフィードストックとして使用するために除去され、重い成分はガソリン混合へと送られ、プロパンはLPG用に回収され、プロピレンは石油化学で使用するために除去される。
【0114】
RRGをキャリアおよび/あるいは触媒と均質に混合して付加価値製品を形成する
精製所関連ガスから付加価値製品を製造する本発明のプロセス250は、提供されたRRGをキャリアおよび/あるいは触媒と均質に混合して分散物および付加価値製品を形成する段階400を有する。付加価値製品はオレフィンおよび/あるいはアルコールを含めた酸素化物である。通常の精製所に一つあるいは複数のHSD40を組み込むことが特に望ましい。硫酸は一般的な精油所で行われる酸処理プロセスに最も一般的に使用されることから、硫酸が最も適したキャリアである。また、RRGは一般に硫黄を有し、高剪断プロセスによってRRG中の硫黄は硫酸に変換され、キャリアで除去される。硫酸処理は、ガソリンやケロシン、潤滑油のストックなどの未完成な石油製品が硫酸で処理されて色や臭い、その他の特性が改善されるようなプロセスである。
【0115】
通常の硫酸処理では、不飽和炭化水素、硫黄、窒素、酸素の化合物、そして樹脂性およびアスファルト系の化合物の一部あるいは全部が除去される。それは、オイルの臭いや色、安定性、炭素残留、その他の特性を改善するために使われる。精製所における硫酸の一部は、この発明による種々のRRGから付加価値製品を製造するために使われる。
【0116】
均質に混合する段階400は、以下でさらに説明するように、RRGとキャリアおよび/あるいは触媒との混合物に少なくとも20,000 s−1あるいはそれ以上の剪断速度を加える段階を有する。均質に混合する段階400は、混合して、キャリア(触媒であるか、触媒を含んでいる)の中に分散したRRGのバブルからなる分散物を形成する段階を有する。このとき、バブルは約5、4、3、2、1ミクロンあるいは1ミクロン以下の平均粒子直径を有する。ある実施の形態においては、バブルはナノメートル範囲か、ミクロン範囲、あるいはサブミクロン範囲の平均粒子直径を有する。
【0117】
ここで図1を参照する。均質に混合する段階400は、分散可能なガスストリーム22を介する適当なRRGと、ストリーム21を介してキャリアおよび/あるいは触媒を高剪断装置40へ導入する段階を有する。HSDは前述したようにロータとステータからなる装置である。
【0118】
動作時には、RRGからなる分散可能なガス流はライン22を介してシステム100の中に導入され、ライン13の中でキャリア流と合わされて、ガス−液体流を形成する。キャリアは触媒でもよいし、その中に触媒を含んでいてもよい。キャリア21は任意の適当な液体キャリアでよく、また水性あるいは有機物でよい。ある実施の形態においては、キャリアは硫酸からなっており、これは触媒としても作用する。ある実施の形態においては、キャリアおよび/あるいは触媒は、硫酸、リン酸、スルホン酸、およびそれらの組み合わせから選択される。ある実施の形態においては、水和反応に触媒作用を及ぼすのに適した触媒が用いられる。窒素などの不活性ガスを用いてリアクタ10を充填することで、システム100を動作させるまえに空気および/あるいは酸素をパージする。ある実施の形態では、それに限定されるわけではないが、触媒はシリカなどの固体サポートの上に配置される。別の実施の形態においては、触媒は硫酸あるいはスルホン酸である。ある実施の形態では、触媒はゼオライトである。様々な実施の形態において使用可能なゼオライトの例としては、モルデン沸石、エリオナイト(erionite)、フェリエライト(ferierite)、そしてモービルオイル(Mobil Oil Corp.)によって開発されたZSMゼオライトなどの結晶性アルミノケイ酸塩、ホウ素や鉄、ガリウム、チタン、銅、銀などの異物(foreign element)を含んだアルミノメタロケイ酸塩、そしてガソシリケート(gallosilicate)やホウケイ酸塩などの、アルミニウムがほとんどないメタロケイ酸塩が含まれる。ゼオライト中で交換可能なカチオン種に関しては、プロトン交換タイプ(Hタイプ)が通常は使用されるが、例えばMgやCa、Srなどのアルカリ土類元素、LaやCeなどの希土類元素、Fe、Co、Ru、Pd、PtなどのVIII属元素、あるいはTi、Zr、Hf、Cr、Mo、W、Thなどのその他の元素など、少なくとも一つのカチオン種でイオン交換されたゼオライトを使用することも可能である。触媒は触媒供給ストリームを介してリアクタ10の中へ供給される。別の場合には、触媒は固定床あるいは流動床10の中に存在する。
【0119】
別の場合には、分散可能なガスは、ライン13の中でキャリア(例えば硫酸)と合わされる代わりに、HSD40へ直接供給される。ポンプ5を駆動してライン21を介してキャリアを圧送し、圧力を形成してHSD40に供給を行い、高剪断装置(HSD)40および高剪断システム100全体にわたって流れが制御される。ある実施の形態においては、ポンプ5がライン13のHSD流入ストリームの圧力を、200 kPa(2 atm)まで、あるいは約300 kPa(3 atm)以上に増大させる。このようにして、高剪断システム100は高剪断と圧力を組み合わせて、反応物の均質な混合を増強している。
【0120】
ある実施の形態においては、分散可能なRRGガスは連続的にキャリア流13の中へ供給され、高剪断供給ストリーム(例えばガス−液体の供給流)を形成する。高剪断装置40の中でキャリアとRRGは十分に分散されて、RRGのナノバブルおよび/あるいはマイクロバブルが形成され、RRGは溶液の中に十分に溶解する。いったん分散されると、分散物は高剪断アウトレットライン19を介して高剪断装置40を出る。オプションとして、ストリーム19は容器10に流入してもよい。容器10は流動床あるいは固定床からなり、スラリ触媒プロセスの代わりに、あるいはそれに追加されて使用される。しかし、(例えばスラリ触媒の実施の形態においては)高剪断アウトレットストリーム19は、さらなる反応のためにリアクタ/容器10へ直接流入する。反応ストリームは、反応温度を維持するためにリアクタ10内に設けられた冷却コイルを用いて、特定の反応温度に維持される。反応生成物(例えばオレフィンやアルコール、および/あるいは酸素化物からなる付加価値製品)が製品ストリーム17で取り出される。未反応/軽質ガスはライン16を介して容器10から除去される。キャリアはライン20を介してリサイクルされる。容器10は、付加価値製品、軽質ガス、キャリア液体および触媒の任意の組み合わせを分離するために、一つあるいは複数の分離容器を有している。
【0121】
RRGはRRGの供給源によって変わってくるため、HSD40および/あるいは容器10の中で起きる反応や、その結果できる付加価値製品は変わるであろう。起きるであろう反応は、FT反応(例えば、RRGが一酸化炭素と水素、すなわち合成ガスからなるとき;FT触媒が利用されるとき)、オレフィン水素化反応(例えばRRGがオレフィンからなるとき、キャリアが硫酸からなるとき、ゼオライト触媒が存在するとき)、メタノール生成(例えばRRGがメタンからなるとき、キャリアが硫酸からなるとき)、クラッキング反応、および当該分野において周知であり所望のRRGを用いた実験を介して過度な反応なく認識可能な(discernible without undue reaction)その他の反応である。前述したように、FT反応はシステム100内で起きる。そうした反応は、この発明に反しないすべての目的のためにここに組み込まれている米国特許願No. 12/138,269に記載されている。オレフィン水素化反応はシステム100内で起きる。そうした反応は、それぞれこの発明に反しないすべての目的のためにここに組み込まれている米国特許No. 7,482,497および米国特許願No.12/335,270およびNo. 12/140,763に記載されている。
【0122】
付加価値製品は一般に、酸素化物とオレフィンから選択された少なくとも一つの成分からなっている。ある実施の形態においては、付加価値製品は少なくとも一つのアルコールからなっている。このアルコールは、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、あるいはそれらの組み合わせからなっている。オレフィンフィードストックをアルコールからなる製品に高剪断変換する段階が、この発明に合致するすべての目的のためにここに組み込まれている米国特許No. 12/335,270に記載されている。アルコールを形成するために、任意のOH源を使用できる。例えば、水をOH源として提供してもよい。ある実施の形態においては、RRGはFCCオフガスからなる。ある実施の形態においては、FCCオフガスはエチレンおよび/あるいはエタンからなる。そうした/あるいは他の実施の形態においては、付加価値製品は主としてアルコールからなる。ある実施の形態においては、付加価値製品は酸素化物から選択される少なくとも一つからなる。ある実施の形態においては、付加価値製品はアルコールから選択される少なくとも一つからなる。
【0123】
反応物は、反応物に高剪断を加えるHSD40内で均質に混合される。ある実施の形態においては、反応物ストリームの中に触媒がさらに存在することも考えられる。例えば、固相、気相、液相の触媒をライン13,ライン21、あるいはライン22を介してHSD40へ導入する。ある実施の形態においては、高剪断装置は、前述したように直列に配置されたステータと組み合わされる三つのロータを有する3ステージの高剪断分散装置であるIKA(R)モデルDR 2000/4などの市販のディスパーサからなる。ディスパーサは液体キャリアの中にRRGの分散物を形成するために使用される。ロータ/ステータのセットは例えば図2に示されているような構造である。そうした実施の形態においては、合わされた反応物がライン13を介して高剪断装置に流入し、周辺部で離間した第1ステージの剪断開口部を有する第1のロータ/ステータの組み合わせに流入する。第1ステージから出た粗い分散物は、第2ステージの剪断開口部を有する第2のロータ/ステータステージに流入する。第2ステージから出たバブル寸法が小さくなった分散物は、第3ステージの剪断開口部を有する第3のロータ/ステータの組み合わせに流入する。ジェネレータのロータとステータは周辺で離間した相補的な形状のリングを有する。分散物はライン19を介して高剪断装置から流出する。ある実施の形態においては、剪断速度は、流れ260の方向に沿った長手方向に、あるいはあるジェネレータの内側リングセットから同じジェネレータの外側リングセットまで行くにつれて段階的に増大する。他の実施の形態においては、剪断速度は流れ260の方向に沿った長手方向に、あるいはあるジェネレータの内側リングセットから同じジェネレータの外側リングセットまで(軸200から外側へ)行くにつれて段階的に減少する。例えば、ある実施の形態においては、第1のロータ/ステータステージにおける剪断速度は、そのあとのステージにおける剪断速度よりも大きい。例えば、ある実施の形態においては、第1のロータ/ステータステージにおける剪断速度は、そのあとのステージにおける剪断速度よりも大きいか、あるいは小さい。他の実施の形態においては、同じステージで、剪断速度は流れの方向に沿ってほぼ一定である。もしHSD40が例えばPTFEシールを有するとき、このシールは当該分野において周知の任意の適当な方法を用いて冷却される。HSD40は中心にシャフトを有し、このシャフトはHSD40内の温度を制御するために使用される。例えば、ライン13の中を流れるキャリア流はシールを冷却するために使用され、そうすることで、高剪断装置へ流入するまえに所望のように予備加熱される。ある実施の形態においては、反応を促進するために(シャフトを介して、あるいはそうでなければHSD40の外部でなど)HSD40に熱を加えてもよい。
【0124】
HSD40のロータは、ロータの直径と所望の先端速度に相応しい速度で回転するように設定される。前述したように、HSD(コロイドミルあるいは歯状周縁を有するディスパーサ)は、ステータとロータとの間に固定の隙間、あるいは調節可能な隙間を有する。
【0125】
HSD40はRRGとキャリアを均質に混合する。このプロセスに対するいくつかの実施の形態においては、一つあるいは複数の反応の速度(すなわち反応速度)が約5倍以上増加するように高剪断装置を動作させることによって、反応物の輸送抵抗が低減される。ある実施の形態においては、反応速度は少なくとも10倍だけ増加される。ある実施の形態においては、速度は約10から約100の範囲の係数(factor)で増加される。ある実施の形態においては、HSD40は少なくとも22 m/s(4500 ft/min)、40 m/s(7900 ft/min)、および225 m/s(4,500 ft/min)を越える公称先端速度において少なくとも300 L/hを供給する。電力消費は約1.5kWか、望めばそれ以上である。HSD40の回転する剪断ユニットあるいは回転部材における瞬時的な温度および圧力の測定は困難であるけれども、高剪断条件のもとでは均質に混合された反応物から見た局所的な温度は500℃以上、圧力は500 kg/cm2以上であるものと見積もられる。
【0126】
液体、気体、および固体を含む化学反応速度は、接触時間、温度、および圧力に依存する。異なる相の二つあるいはそれより多くの原材料(例えば固体と液体、液体と気体、固体と液体と気体)を反応させることが望ましい場合には、反応速度を制御する制限要因の一つとして反応物の接触時間が含まれる。反応速度を加速するときは、滞留時間が短くなり、それによって、得られるスループットは増大する。
【0127】
異種の触媒反応の場合には、触媒がさらに反応物に触媒作用を施せるようにするために固体触媒の表面から、反応した製品を除去するという、別の速度制限要因が存在する。反応物および/あるいは触媒に対する接触時間は、通常、化学反応に関係する反応物との接触を行わせる混合によって制御される。
【0128】
理論的には制限されるわけではないが、エマルジョン化学では、液体中に分散したサブミクロンの粒子あるいはバブルは主としてブラウン運動による動きをする。そうしたサブミクロンサイズの粒子あるいはバブルは固体触媒粒子の界面層を通過する大きな移動性を有しており、反応物の輸送が向上することで触媒反応が容易になり、かつ加速される。
【0129】
高剪断の結果、ミクロンあるいはサブミクロンのバブルあるいは液滴としてRRGの分散物が形成される。ある実施の形態においては、結果としてできる分散物は約1.5 mm以下の平均バブルサイズを有する。したがって、ライン19を介してHSD40を出る分散物はミクロンおよび/あるいはサブミクロンサイズのガスバブルからなる。ある実施の形態においては、平均バブルサイズは約0.4 mmから約1.5 mmの範囲である。ある実施の形態においては、結果としてできる分散物は約1 mm以下の平均バブルあるいは液滴サイズを有する。ある実施の形態においては、平均バブルサイズは約400 nm以下であり、ある場合には約100nm以下でもよい。多くの実施の形態においては、マイクロバブルの分散物は常圧において少なくとも15分の間、分散したままでいることが可能である。
【0130】
いったん分散されると、その結果できる分散物はライン19を介してHSD40を出て、図1に示されているように容器10の中へ供給される。容器10へ入るまえに反応物が均質に混合されている結果、触媒が存在しても、しなくても、大部分の化学反応がHSD40内で起きる。したがって、ある実施の形態においては、リアクタ/容器10は、主として付加価値製品から揮発性の反応生成物を加熱して分離するために使用される。別の場合には、あるいは追加的に、容器10は主要反応容器として機能し、そこで付加価値製品の大部分が製造される。容器/リアクタ10は連続あるいは半連続流れモードで駆動されるか、あるいはバッチモードで駆動される。容器10の内容物は加熱用および/あるいは冷却用の設備(例えば冷却用コイル)と温度測定装置を使って、当該分野において周知の技術を用いて特定の反応温度に維持される。容器内の圧力は適当な圧力測定装置を用いてモニタされ、容器内の反応物のレベルはレベルレギュレータを使い、また当該分野の技術者に周知の技術を用いて制御される。内容物は連続的に、あるいは半連続的に攪拌される。
【0131】
温度や圧力、空間速度(space velocity)、反応組成の条件は、所望の製品特性を得るために調節される。HSD40を使用することによって、反応物のよりよい相互作用とより均一な混合が可能となり、したがって可能なスループットおよび/あるいは製品産出量を増加させることが可能である。ある実施の形態においては、システム100の動作条件は、大気温度の、あるいはそれに近い温度と、大気圧力、あるいはそれに近い全体(global)圧力からなる。HSD40はロータの先端において高圧(例えば150,000 psi)を形成するため、反応の温度は高剪断が存在しない従来の反応システムに対して低下する。ある実施の形態においては、動作温度は、同じ反応に対して、従来の動作温度の約70%以下か、従来の温度の約60%以下か、従来の温度の約50%以下である。
【0132】
HSD40内の滞留時間は一般に短い。例えば、滞留時間はミリ秒の範囲が可能であり、約10、20、30、40、50、60、70、80、90、あるいは約100ミリ秒が可能であり、約100、200、300、400、500、600、700、800、あるいは約900ミリ秒が可能であり、秒の範囲が可能であり、その間の、任意の範囲が可能である。
【0133】
一般に知られた水素化反応条件を、触媒を用いてRRG中のオレフィンを水素化することによるアルコール製造を促進するための条件として用いることができる。反応条件に関して特定の制限はない。オレフィンの水素化は、逆反応、すなわちアルコールの脱水素化反応に対する平衡反応である。そして、低温および高圧が通常はアルコールの形成に対して有利である。しかし、好ましい条件は、特定の開始オレフィンに大いに依存する。反応速度の観点からは、より高温であることが好ましい。したがって、反応条件を単純に決定することは難しい。しかし、ある実施の形態においては、反応温度は約50℃から約350℃の範囲であり、好ましくは約100℃から約300℃の範囲である。さらに、反応圧力は約1から300大気の範囲であり、別の場合には約1から250大気の範囲である。
【0134】
もし反応を促進するために触媒を用いる場合には、それは水溶性あるいは非水溶性のスラリあるいはストリームとして容器10の中へ直接導入される。別の場合には、あるいは追加的に、触媒をシステム100中のどこか他のところに追加してもよい。例えば、触媒スラリをライン21の中へ注入してもよい。ある実施の形態においては、ライン21は新鮮なキャリアストリームおよび/あるいは容器10からのリサイクルストリームを収容している。
【0135】
反応物の大部分あるいは全体の動作温度は、それらの引火点以下に維持されることが望ましい。ある実施の形態においては、システム100の動作条件は、約50℃から約300℃の範囲の温度からなる。特定の実施の形態においては、容器10内の反応温度は特に約90℃から約220℃の範囲である。ある実施の形態においては、容器10内の反応圧力は約5 atmから約50 atmの範囲である。
【0136】
もし望むなら、分散物は容器10の中に流入するまえにさらに処理してもよい。容器10の中で反応(例えばオレフィン水素化)は続く。容器の内容物は連続的に、あるいは半連続的に攪拌され、反応物の温度は制御され(例えば熱交換器を用いて)、容器10内の流体レベルは標準的な方法を用いて調節される。反応は、特定の用途に応じて望ましいように、連続的か、半連続的か、バッチ的に行われる。
【0137】
軽質ガス、キャリア、触媒、および付加価値製品を分離する
方法250は、軽質ガス、キャリア、および付加価値製品を分離する段階500をさらに有する。キャリアが触媒でないか、別の触媒(例えば固体触媒)を利用する場合には、段階500は固体触媒を容器10内の他の成分から分離する段階をさらに有する。この分離は、容器10を介して、あるいは別の分離容器を介して行われる。製造された製品である軽質反応ガス、あるいはRRGの未反応成分はガスライン16を介してリアクタ10から流出する。ある実施の形態においては、このガス流はHSD40へリサイクルされる。当該分野において周知の任意の分離方法を用いて、軽質ガス、キャリア液体、触媒(もし存在すれば)、および付加価値製品を分離する。例えば、蒸気液体分離、固体/液体分離、蒸留、およびその他の分離手段の一つあるいは複数を用いて、HSD40および/あるいは容器10を出る所望の成分を分離する。
【0138】
軽質ガスに高剪断を加える
方法250は、軽質ガスに高剪断を加える段階600をさらに有する。軽質ガス16は、二酸化炭素、水素、メタン、およびその他の軽質成分からなる。ある実施の形態においては、軽質ガス16に高剪断を加える段階600は、FT触媒の存在のもとで軽質ガスを均質に混合する段階を有していて、FT製品が製造される。このようにして、FT液体炭化水素の気体−液体製造が行われる。任意の適当なFT触媒を利用することができる。高剪断FTプロセスは、米国特許No. 12/138,269に記載されているようにして実行される。そうした実施の形態においては、HSDの一部はFT触媒から形成されるか、それがコーティングされるか、FT触媒のスラリが循環されるか、あるいは容器10がFT触媒の固定床あるいはスラリベッドからなっている。
【0139】
軽質ガスに高剪断を加える段階600は、原油と軽質ガスを均質に混合する段階を有する。ある実施の形態においては、図14に示されているように、ライン16内のガスを、図14に示されているように原油のAPI比重を安定化し、かつ/あるいは変更する方法600Aにおいて利用する。この方法は、付随ガス、非付随ガス、図1の段階600からの軽質ガス、RRG、酸素化物、およびそれらの組み合わせから選択されるガスと原油を提供する段階601と、原油と選択されたガスに高剪断を加える段階602を有する。RRGは図9〜図13に関して説明したようにして得られる。付随ガスは図13に関して説明したようにして得られる。ここでの“非付随ガス”という語句は当該分野において周知の、油がない貯蔵器で得られるガスを指している。原油は、上の図10の段階304や図13の段階314に関して説明したようにして提供される。原油と選択されたガスには、上述したようにHSD40の中に導入することによって高剪断が加えられる。ある実施の形態においては、地球から付随ガスとともに抽出された原油はHSD40を介して均質に混合され(好ましくは圧力が低下するまえに)、その安定性/API比重が調節される。ある実施の形態においては、地球から抽出された原油(付随ガスがあろうが、なかろうが)はHSD40を介して非付随ガスと均質に混合されて、その安定性/API比重が調節される。原油を選択されたガスと均質に混合する段階は、一つあるいは複数のHSD40の中に原油を通す段階を有する。原油を選択されたガスと均質に混合する段階は、二つあるいはそれより多くのHSD40の中に原油を通す段階を有する。原油を選択されたガスと均質に混合する段階は、三つあるいはそれより多くのHSD40の中に原油を通す段階を有する。追加の選択ガスをそのあとの各HSDの中に導入してもよい。方法600Aを用いて、原油の中の揮発性成分を低減することによって、原油のAPI比重を変更および/あるいは原油を安定化してもよい。ある実施の形態においては、方法600Aによって原油のAPIは少なくとも1.5あるいは2の係数だけ増加させられる。ある実施の形態においては、原油のAPIは、方法600Aを介して約15から約30まで、約5から約20まで、あるいは約10から約20まで増加させられる。方法600Aを用いて、精製作業の間に望ましくないアスファルテン(asphaltenes)の生成を減らしてもよい。“アスファルテン”という用語は、二硫化炭素に可溶であるがパラフィンナフサには不溶であるようなアスファルト化合物を指している。
【0140】
ライン17を介して回収された付加価値製品は当該分野において周知のように、さらに処理される。例えば、付加価値製品は冷水と接触させられて、そこから硫酸が除去される。例えば酸素化物などの製品を、当該分野で周知のように使用し、かつ/あるいは分離する。分離された成分は要望に応じてリサイクルされる。
【0141】
二酸化炭素の低減(reduction)
ある実施の形態においては、二酸化炭素(RRGガスおよび温室ガスと考えられる)と水を付加価値製品に変換する。ある実施の形態においては、付加価値製品はメタノールなどのアルコールからなる。その他の実施の形態においては、付加価値製品はアルデヒドやケトン、およびその他の有機酸素化物からなる。
【0142】
ある実施の形態においては、二酸化炭素源は、電力プラントからの精製所関連ガス(RRG)であり、これは主としてN2、CO2、水、いくらかのO2、CO、硫黄、亜酸化窒素を含んでいる。不飽和、硫黄、および/あるいは酸素がほとんどないような石油精製の実施例においては、水素が存在する。ある実施の形態においては、二酸化炭素源は溶鉱炉ガスである。ある場合には、溶鉱炉ガスの主要組成は、46%の窒素、24%の一酸化炭素、26%の二酸化炭素、4%の水素、いくらかの酸素およびメタンである。ある実施の形態においては、二酸化炭素源はFCCオフガスである。ある場合には、FCCオフガスの主要組成は1.1%のH2、13.31%のN2、1.54%のCO、27.48%のCH4、22.94%のC2H4、23.35%のC2H6、2.11%のC3H6、0.4%のC3H8、4.61%のC4H8、0.27%のC4H10、および2.63%のC5+である。
【0143】
ある実施の形態においては、二酸化炭素は化石燃料(例えば石炭、天然ガス、石油)燃焼施設(FFBF)、あるいはそのいくつかのコンポーネントからのものである。ある場合には、化石燃料燃焼施設(FFBF)は電力プラントあるいは電力ステーションである。その他のある場合には、FFBFはバーナあるいは炉である。そうしたFFBFは当該分野の技術者には周知のものである。この発明は、FFBFを、そのサイズや機能の目的、あるいは動作機構で区別をするものではない。
【0144】
ある実施の形態においては、二酸化炭素と水の変換は生体触媒物質(例えば酵素)によって促進される。ある実施の形態においては、反応は電子触媒的な方法によって促進される。ある場合には、二酸化炭素と水はメタノールに変換される。
【0145】
ある実施の形態においては、二酸化炭素と水の変換は上述したように、生体触媒物質(例えば酵素)を無機触媒と組み合わせて促進される。ある場合には、二酸化炭素と水は、アルコール、アルデヒド、ケトン、およびその他の有機酸素化物に変換される。
【0146】
理論的に制限したいわけではないが、二酸化炭素と水との間の反応は、高剪断条件のもとでH2OとCO2からのフリーラジカルの生成を介して加速される。さらに、高剪断によって生じる均質な混合とキャビテーション効果によって物質移動制限は低下し、反応速度は増加する。
【0147】
この発明の原理を例証し、実証する目的のために、種々の寸法、サイズ、量、容積、速度、およびその他の数値的なパラメータや数を使用してきた。これらは、この発明を、ここで図示や説明した、あるいはそれ以外にここで述べた数値パラメータおよび数に限定しようとするものではない。同様に、特に断らない限り、段階の順番は重要ではない。以下で述べる実施の形態の様々な教示は、所望の結果を得るために、別々に、あるいは任意の適当な組み合わせで用いることができる。
【0148】
マルチパス動作
図1に示された実施の形態においては、システムはシングルパス動作の構造になっており、HSD40で製造された製品はフローライン17に沿って続いていく。HSD40の出力はそのあとのHSDの中に流される。ある実施の形態においては、フローライン19の内容物、あるいはその一部は、第2のパスではHSD40の中に送ることが望ましい。この場合には、フローライン19の内容物の少なくとも一部をフローライン19からリサイクルし、ポンプ5によってライン13の中に、またそこからHSD40の中に圧送する。追加の反応物を、ライン22を介してライン13の中に注入してもよいし、HSDの中へ直接追加してもよい。他の実施の形態においては、製品はその一部をHSD40へリサイクルするまえにさらに処理される。
【0149】
マルチHSD
ある実施の形態においては、HSD40に似た、あるいはそれと異なる構造のHSDを二つ、あるいはそれより多く直列に配置して使用し、反応をさらに促進する。ミキサの動作はバッチモードか、連続モードかのどちらかである。シングルパスすなわち“一度の通過”プロセスが望ましい場合には、直列の多数のHSDを使用することも利点がある。ある実施の携帯においては、反応物は直列あるいは並列の、多数のHSD40の中を通過する。ある実施の形態においては、アウトレットライン19内の反応物は第2のHSDの中に供給される。多数のHSDを直列、あるいは並列に動作させるときは、追加の反応物および/あるいはキャリア(液体あるいは気体の)が各HSDのインレット供給ストリームの中に注入される。例えば、水素や二酸化炭素、および/あるいは一酸化炭素などの異なる分散可能なガスが第2の、あるいはそのあとのHSD40の中に導入される。ある実施の形態においては、酸素化物からなるガスがインレット供給ストリームの中に注入される。例えば、一酸化炭素、二酸化炭素、酸素、軽質アルコール、あるいはそれらの組み合わせからなるガスが、直列あるいは並列に配置されたHSDそれぞれのインレットの中に注入される。
【0150】
例えば、第1のHSD40を使用して、エチレンおよび/あるいはエタンからなるFCCオフガスからなるRRGを、エタノールおよび/あるいは他の酸素化物および/あるいはより大きな炭化水素からなる製品に変換する。HSD40の中に残った、あるいは製造されたガスは、軽質製品ガスのアウトレットライン16を介して容器10から出る。軽質ガスのインレットライン16内のガスは、HSD40へリサイクルされるか、液体キャリアといっしょに第2のHSDの中に導入される。軽質ガスのアウトレットライン16内の軽質ガスは、例えば水素からなる。軽質ガスのアウトレットライン16内の軽質ガスは、直列HSDの中に、例えば利用可能な別のRRGなどの追加ガスといっしょに導入される。追加ガスは例えば二酸化炭素、一酸化炭素、メタン、あるいはそれらの組み合わせからなる。例えば、一酸化炭素および/あるいは二酸化炭素はFCC触媒の再生から利用可能である。HSD40と、第2の、あるいはそのあとのHSDとでは、同じ触媒も異なる触媒も使用できる。触媒は、その中で処理されるガスに基づいて選択される。ある実施の形態においては、多数のHSD40が並列に動作し、そこからのアウトレット製品は一つあるいは複数のフローライン19の中に導入される。記載されている方法を用いた処理のあとに残ったガスは燃料として利用されるか、燃焼される。この量は、一般的な精製所で燃料あるいは燃焼でこれまで使用されている量よりも一般にずっと少ない。
【0151】
特徴
HSD40内における反応物の均質な接触の結果、反応物の反応はより速く、かつ/あるいはより完全になる。ある実施の形態においては、外部HSD40を介して反応物の混合を行うこの発明のプロセスを使用することで、従来の構造および方法よりも触媒の量を減らすことができ、かつ/あるいは製品の産出量および/あるいは反応物の変換が増加する。ある実施の形態においては、この方法は、外部HSD40を確立されたプロセスの中に組み込むことによって所望の反応を行うのに必要な触媒の量を減らす段階、および/あるいは例えば従来のスラリベッドリアクタ中の触媒を交換することに関連するダウンタイムを減らすことによって、HSD40なしで動作するプロセスからの生産スループットを増大させる段階を有する。ある実施の形態においては、この方法は操業コストを低減し、かつ/あるいは既存のプロセスからの生産を増大させる。別の場合には、この発明は新しいプロセスを設計する資本コストを低減できる。
【0152】
特定の理論に制限したいわけではないが、高剪断混合のレベルあるいは度合いは、物質移動の速度を増加させるとともに、局所的な非理想的条件(熱力学的な面で)を形成するのにも十分であると考えられる。局所的な非理想的条件は、ギッブス(Gibbs)の自由エネルギ予想に基づいては起きないと考えられる反応を起こさせる。局所的な非理想的条件がHSD内部で起き、その結果、温度および圧力が増加し、最も顕著な増加は局所化された圧力の中であると考えられる。HSD内におけるこの圧力と温度の増加は瞬時的で局所的であり、HSDを出ると全体的な(bulk)、あるいは平均的なシステム条件にすぐに戻る。理論的に制限したいわけではないが、ある場合には、HSDは十分な強度のキャビテーションを誘起して、反応物の一つあるいは複数をフリーラジカルに解離させ、それによって化学反応を強めたり、そうでないときに必要とされるよりも緩い条件で反応を起こさせたりする。キャビテーションは、局所的乱流や液体の微小循環(音響ストリーミング)を発生させることによって、輸送プロセスの速度も増加させる。化学的/物理的処理用途におけるキャビテーション現象の応用に関する概観が、ゴゲイト(Gogate)らによる“Cavitation:A technology on the horizon”、CurrentScience 91(No. 1): 35-46 (2006)に記載されている。この発明のシステムおよび方法によるある実施の形態のHSDはキャビテーションを誘起し、それによって一つあるいは複数の反応物がフリーラジカルに解離し、それらが反応する。ある実施の形態においては、ロータ/ステータの先端における極めて大きな圧力によって液相反応が起き、キャビテーションは行われない。
【0153】
例
以下の節では、様々な実施の形態に関するさらなる詳細を述べる。
【0154】
CO2と原油が高剪断ユニットの中に通され、水とCO2を用いてアルコールが形成される(高剪断:1000 rpm;90℃および100 psigでCO2を用いるリアクタ)。
【0155】
可能なメカニズム:CO2がルテニウムカルボニルと反応してルテニウム酸化物を形成し、これがCOと水との反応に触媒作用を施して、水素およびより多くの二酸化炭素を発生する。つぎに、水素は一酸化炭素と反応してメタノールを発生する(CO+2H2=CH3OH)。この反応は、おそらく、製造されたルテニウム酸化物によって触媒作用を施される。
【0156】
ガスクロマトグラフィ(GC)によるサンプルの水相(aqueous phase)分析によって、サンプルの水相はおよそ65%のメタノールを含んでいることが明らかになる。
ガスクロマトグラフィ(GC)の仕様(モデル アジレント 6850;検出器:TCD)
カラム モデルアジレン(Model Agilen) 19095N-123E
AP-INNOWax ポリエチレングリコール(Polyethylene Glycol)
キャピラリティ(Capilarity) 30.0 m ×530 m×1 mm 名目
動作条件 インレット温度 175 C
キャリアガス ヘリウム
カラム圧力 3.99 psi
オーブン温度 75 C 保持時間 6 分
流速 4.7 ml/min
【0157】
この発明の実施の形態を示して説明してきたが、当該分野の技術者にはこの発明の精神および教示から逸脱することなくその修正は可能であろう。ここで説明した実施の形態は単に例であり、発明を制限するものではない。ここに開示されているこの発明に対する多くの変形および修正が発明の範囲内で可能である。数値の範囲あるいは制限が明確に述べられているところでは、そうした明確な範囲あるいは制限は、その明確に述べられている範囲あるいは制限内にある同様の大きさを反復した範囲あるいは制限を含むものと理解すべきである(例えば約1から約10は、2、3、4などを含む;0.1以上は0.11、0.12、0.13などを含む)。請求項の任意の要素に関して“オプションとして”という用語の使用は、問題の要素が必要であったり、別の場合には必要でなかったりすることを意味している。両方が請求項の範囲内であることを意図している。なる、含む、有するなどのより広義の用語の使用は、構成される、本質的に構成される、ほぼ構成されている、などのより狭義の用語をサポートしている。
【0158】
したがって、保護の範囲は上述した記述によって制限されるのではなく、以下の請求項によってのみ制限される。請求項の範囲は請求項の主題となる内容のすべての等価物を含んでいる。それぞれの、またすべての請求項はこの発明の実施の形態として明細書に組み込まれている。したがって、請求項はこの発明の実施の形態に対するさらなる説明であり、追加である。ここで述べたことを補足する例示的、手続き的、あるいはその他の詳細を提供してくれる範囲で、ここに引用されているすべての特許、特許願、および出版物の内容は参考のために組み込まれている。
【技術分野】
【0001】
関連特許願の相互参照
この特許願は、2009年7月28に登録された米国仮特許願No. 61/229,082の35 U.S.C. §119(e)のもとでの特権(benefit)を請求しており、前記仮特許願の明細書はここで参考のために組み込まれている。
【0002】
連邦政府の支援による研究あるいは開発に関する記述
非適用。
【背景技術】
【0003】
技術分野
この発明は精製所関連ガスからの付加価値製品の高剪断製造に関する。さらに詳しくは、この発明は精製所関連ガスの剪断促進反応を介して得られる酸素化物からなる製品を製造するための装置およびプロセスに関する。
【0004】
背景技術
精油所は、原油を処理して、それをガソリンやディーゼル燃料、アスファルト基(base)、灯油、ケロシン、液化石油ガスなど、より有用な石油製品へと精製するために利用されている。精油所は一般に大きく広がる工業コンビナートであり、大きな化学処理ユニットの間で流体を輸送するパイプラインが全体に延びている。
【0005】
精油所で利用されている処理の多くでは大量のガスが発生する。このガスの大部分はネガティブバリューガスである。すなわち、そのガスを廃棄するとき財政的な損失になる。精製所において発生するガスの大部分は、価値を付与した製品を製造するためか、そうでなければ燃料ガスとして使用するまえ、あるいは環境中へガスを燃焼させる(flare)まえにそのガスを処理するためのガスプラントへ送られる。燃焼は環境規制のために望ましくない。さらに、原油は、通常、原油を精製するまえに一般にそこから分離される付随ガスといっしょに発見される。
【0006】
したがって、工業界では精製所関連ガスを価値が付与された製品へと変換するシステムおよび方法が必要とされている。この変換は、精製関連ガスの付加価値製品への変換が経済的に利益のあるようなものであることが望ましい。このシステムおよびプロセスは既存の精製所に組み込まれるか、あるいは新たな精製所の建物の中に設計されることが望ましい。また、原油のAPIを増大させ、かつ/あるいは原油の安定性を増大させるためのシステムおよびプロセスも必要である。ある場合には触媒を完全になくすることも可能である。
【発明の概要】
【0007】
発明の概要
ここには精製所関連ガスから付加価値製品を製造する方法が開示されている。この方法は、C1-C8化合物か、あるいはそれらの組み合わせから構成されるグループから選択された少なくとも一つの化合物からなる精製所関連ガスを提供する段階と、(b) 高剪断装置の中で精製所関連ガスを液体キャリアと均質に(intimately)混合させて、液体キャリアの中にガスの分散物(dispersion)を形成し、この分散物中のガスバブルが約5ミクロン以下の平均直径を有するようにする段階と、(c)より大きな(higher)炭化水素やオレフィン、アルコール、アルデヒド、およびケトンから構成されるグループから選択される少なくとも一つの成分からなる付加価値製品を抽出する段階を有している。ある場合には、精製所関連ガスは、熱分解ガス、FCCオフガス、付随ガス、水素化脱硫オフガス、コーカのオフガス、接触分解装置のオフガス、サーマルクラッカのオフガス、およびそれらの組み合わせから構成されるグループから選択される。ある場合には、C1-C8化合物は二酸化炭素からなっている。
【0008】
ある実施の形態においては、付加価値製品としてのアルコールは、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、プロパノールから構成されるグループから選択される。ある実施の形態においては、段階(b)は精錬所関連ガスとキャリアを触媒と接触させる段階をさらに有している。ある場合には、この触媒は、リン酸、スルホン酸、硫酸、ゼオライト、固体酸触媒、液体酸触媒から構成されるグループから選択される少なくとも一つの成分からなっている。ある実施の形態においては、キャリアは触媒である。ある実施の形態においては、キャリアは硫酸からなっている。ある実施の形態においては、キャリアは水からなっている。ある実施の形態においては、段階(c)はキャリアおよび付加価値製品から軽質(light)ガスを分離する段階を有している。別の実施の形態においては、この方法はさらに、キャリアおよび付加価値製品を、水素化触媒、水酸化触媒、部分酸化触媒、水素化脱硫触媒、水素化脱窒素触媒、水素化仕上(hydrofinishing)触媒、改質触媒、水和触媒、水素化分解触媒、フィッシャー・トロプシュ(Fischer-Tropsch)触媒、脱水素化触媒、重合触媒から構成されるグループから選択される触媒と接触させる段階を有している。
【0009】
ある実施の形態においては、原油のAPI比重を増大させる方法が開示されている。この方法は、原油と、酸素化物、付随ガス、非付随ガス、キャリアおよび付加価値製品から分離された軽質ガス、およびそれらの組み合わせから構成されるグループから選択されるガスとを、少なくとも一つのロータと少なくとも一つのステータからなる高剪断装置の中に導入する段階と、ロータを回転させて少なくとも22.9m/sの先端速度を提供する段階とを有している。ある実施の形態においては、API比重は少なくとも1.5倍だけ増加される。
【0010】
この明細書にはさらに、精製所関連ガスから付加価値製品を製造するためのシステムも開示されている。このシステムは、少なくとも一つのロータとそれと相補的な形状の少なくとも一つのステータからなっていて液体キャリアの中に精製所関連ガスのバブルからなる分散物を形成する少なくとも一つの高剪断装置と、一つあるいは複数のC1-C8化合物からなる精製所関連ガスを製造するための装置と、液体キャリアからなる液体ストリームを高剪断装置まで供給するためのポンプとを有している。ある実施の形態においては、このシステムはさらに、高剪断装置へ連結された容器を有している。この容器は高剪断装置から分散物を受容するようになっている。
【0011】
ある実施の形態においては、前記少なくとも一つのロータは少なくとも22.9 m/s(4,500 ft/min)の先端速度で回転が可能である。ここで、先端速度はpDnで定義され、Dはロータの直径、nは回転周波数である。ある実施の形態においては、前記少なくとも一つのロータは前記少なくとも一つのステータから、約0.02 mmから約5 mmの範囲の剪断ギャップだけ離間されている。ここで、剪断ギャップとは、前記少なくとも一つのロータと前記少なくとも一つのステータとの間の最小距離である。ある実施の形態においては、前記少なくとも一つのロータは、動作中、少なくとも20,000s−1の剪断速度を提供することができる。ここで、剪断速度は先端速度を剪断ギャップで割ったものとして定義され、先端速度はpDnで定義され、Dはロータの直径、nは回転周波数である。
【0012】
ある実施の形態においては、このシステムは一つよりも多くの高剪断装置からなる。ある実施の形態においては、高剪断装置は少なくとも二つのジェネレータからなり、各ジェネレータはロータとそれと相補的な形状のステータからなっている。ある実施の形態においては、精製所関連ガスを製造するための装置は、有機分子をより簡単な分子に分解するクラッカからなる。ある実施の形態においては、精製所関連ガスを製造するための装置は、精油所あるいはそのうちのいくつかのコンポーネント、化石燃料燃焼施設あるいはそのいくつかのコンポーネントからなっている。ある実施の形態においては、化石燃料燃焼施設は電力プラントあるいは電力ステーションである。
【0013】
ここでは、精製所関連ガスから付加価値製品を製造する方法が開示されている。この方法は(a)主にC1−C8化合物と水素から選択される少なくとも一つからなる精製所関連ガスを提供する段階と、(b) 高剪断装置の中で精製所関連ガスを液体キャリアと均質に混合させて、液体キャリアの中にガスの分散物を形成し、この分散物中のガスバブルが約5ミクロン以下の平均直径を有するようにする段階と、(c)より大きな炭化水素やオレフィン、アルコールから選択される少なくとも一つの成分からなる付加価値製品を抽出する段階を有している。ある実施の形態においては、ガスバブルは約5、4、3、2、1、0.5、0.4、0.3、0.2、あるいは0.1 mm以下の平均直径を有する。ある実施の形態においては、ガスバブルは約100 nm以下の平均直径を有する。精製所関連ガスは、熱分解ガス、FCCオフガス、付随ガス、水素化脱硫オフガス、コーカオフガス、接触分解装置のオフガス、サーマルクラッカのオフガス、あるいはその他の炭化水素処理源あるいは燃焼源、およびそれらの組み合わせから選択することが可能である。ある実施の形態においては、高剪断装置は、少なくとも一つのロータと少なくとも一つのステータを有し、また(b)は少なくとも約23 m/secの先端速度でガス−液体ストリームを高剪断混合する段階を有する。ここで、先端速度はpDnで定義され、Dは前記少なくとも一つのロータの直径、nは回転周波数である。ある実施の形態においては、高剪断装置は少なくとも一つのロータと少なくとも一つのステータを有し、また(b)は少なくとも20,000 s−1の剪断速度を提供する段階を有する。ここで、剪断速度は先端速度を剪断ギャップで割ったものとして定義され、先端速度はpDnで定義され、Dは前記少なくとも一つのロータの直径、nは回転周波数である。少なくとも20,000 s−1の剪断速度を提供することによって、前記少なくとも一つのロータの先端において少なくとも約1034.2 Mpa(150,000 psi)の局所的圧力が発生される。少なくとも20,000 s−1の剪断速度を提供する段階は、少なくとも22.9 m/s(4,500 ft/min)の先端速度で前記少なくとも一つのロータを回転させる段階からなる。ここで、先端速度はpDnで定義され、Dはロータの直径、nは回転周波数である。分散物を形成する段階は、少なくとも約1000 W/m3、5000 W/m3、7500 W/m3、1 kW/m3、500 kW/m3、1000 kW/m3、5000 kW/m3、7500 kW/m3、あるいはそれ以上のエネルギ消費になり得る。
【0014】
ある実施の形態においては、(b)はさらに精製所関連ガスとキャリアを触媒に接触させる段階を有する。触媒は固体酸触媒および液体酸触媒から選択される。触媒は、リン酸、スルホン酸、硫酸、ゼオライト、ハイドロシランおよびそれらの組み合わせから選択される。触媒はまた、ニッケルやルテニウム、ロジウム、プラチナなどの貴金属を活性成分として含んでいてもよい。生体触媒を利用してもよい。ある実施の形態においては、キャリアは触媒である。ある実施の形態においては、キャリアは硫酸からなっていてもよい。ある実施の形態においては、製造されるアルコールは、メタノール、エタノール、イソプパノール、ブタノール、およびプロパノールから選択された少なくとも一つからなっている。
【0015】
ある実施の形態においては、 (c)はキャリアと付加価値製品から軽質ガスを分離する段階を有する。この方法はさらに、軽質ガスに高剪断を加える段階を有する。軽質ガスに高剪断を加える段階は、少なくとも一つのロータと少なくとも一つのステータからなる高剪断装置へフィッシャー・トロプシュの存在のもとで軽質ガスを導入する段階を有し、それによってフィッシャー・トロプシュ炭化水素が製造される。軽質ガスに高剪断を加える段階は、少なくとも20,000 s−1の剪断速度を提供する段階を有する。ここで、剪断速度は先端速度を剪断ギャップで割ったものとして定義され、先端速度はpDnで定義され、Dは前記少なくとも一つのロータの直径、nは回転周波数である。軽質ガスに高剪断を加える段階は、軽質ガスと原油を少なくとも一つのロータと少なくとも一つのステータからなる高剪断装置の中へ導入する段階と、高剪断装置の内容物に少なくとも20,000 s−1の剪断速度を加える段階を有している。さまざまな実施の形態において、高剪断が液体あるいはスラリとともに軽質ガスへ加えられる。
【0016】
この方法はさらに、キャリア(液体あるいはスラリ)と精製所関連ガスを、水素化触媒、水酸化触媒、部分酸化触媒、水素化脱硫触媒、水素化脱窒素触媒、水素化仕上触媒、改質触媒、水和触媒、水素化分解触媒、フィッシャー・トロプシュ触媒、脱水素化触媒、重合触媒から構成されるグループから選択される触媒と接触させる段階を有している。
【0017】
原油のAPI比重を増大させる方法も開示されている。この方法は、原油と、酸素化物、付随ガス、非付随ガス、精製所関連ガスから付加価値製品を製造する上述した方法からの軽質ガス、あるいはそれらの組み合わせを、少なくとも一つのロータと少なくとも一つのステータからなる高剪断装置の中に導入する段階と、ロータを回転させて少なくとも22.9m/sの先端速度を提供する段階とを有している。ある実施の形態においては、API比重は少なくとも1.5倍だけ増大される。ある実施の形態においては、API比重は少なくとも2倍だけ増大される。
【0018】
精製所関連ガスから付加価値製品を製造するためのシステムも開示されている。このシステムは、少なくとも一つのロータとそれと相補的な形状の少なくとも一つのステータからなっていて液体キャリアの中に精製所関連ガスのバブルからなる分散物を製造する少なくとも一つの高剪断装置と、一つあるいは複数のC1−C8化合物と水素からなる精製所関連ガスを製造するための装置と、液体キャリアからなる液体ストリームを高剪断装置へ供給するためのポンプとを有している。ある実施の形態においては、このシステムはさらに、高剪断装置へ連結された容器を有している。この容器は高剪断装置から分散物を受容するようになっている。ある実施の形態においては、前記少なくとも一つのロータは少なくとも22.9 m/s(4,500 ft/min)の先端速度で回転可能である。ここで、先端速度はpDnで定義され、Dはロータの直径、nは回転周波数である。ある実施の形態においては、高剪断装置は、少なくとも40 m/secの先端速度で動作する。ある実施の形態においては、前記少なくとも一つのロータは前記少なくとも一つのステータから約0.02 mmから約5 mmの範囲の剪断ギャップだけ離間している。ここで、剪断ギャップとは、前記少なくとも一つのロータと前記少なくとも一つのステータとの間の最小距離である。ある実施の形態においては、動作中に前記少なくとも一つのロータの回転によって提供される剪断速度は少なくとも20,000 s−1である。ここで、剪断速度は先端速度を剪断ギャップで割ったものとして定義され、先端速度はpDnで定義され、Dはロータの直径、nは回転周波数である。ある実施の形態においては、高剪断装置は、二つあるいはそれより多くのロータと、二つあるいはそれより多くのステータからなっている。ある実施の形態においては、前記少なくとも一つの高剪断装置は液相の中に精製所関連ガスのバブルの分散物を製造するようになっており、この分散物は約5、4、3、2、1、0.5、0.4、0.3、0.2、あるいは0.1 mm以下の平均バブル直径を有する。このシステムは複数の高剪断装置を有していてもよい。ある実施の形態においては、高剪断装置は少なくとも二つのジェネレータを有し、各ジェネレータはロータとそれと相補的な形状のステータを有する。一つのジェネレータによって提供される剪断速度は別のジェネレータによって提供される剪断速度より大きくてもよい。
【0019】
ある実施の形態においては、精製所関連ガスを製造するための装置は、有機分子をより簡単な分子に分解するクラッカからなる。このクラッカは流動接触分解装置からなっていてもよい。このクラッカはサーマルクラッカでもよい。サーマルクラッカはコーカからなっていてもよい。ある実施の形態においては、精製所関連ガスを製造するための装置はスチームクラッカからなっている。ある実施の形態においては、精製所関連ガスを製造するための装置は精油所あるいはそのうちのいくつかのコンポーネントからなっている。
【0020】
FCCオフガスから付加価値製品を製造するシステムも開示されている。このシステムは、少なくとも一つのロータと少なくとも一つのそれと相補的な形状のステータからなる少なくとも一つの高剪断装置と、流動接触分解装置と、液体キャリアからなる液体ストリームを高剪断装置へ供給するポンプとを有する。前記少なくとも一つのロータは、少なくとも22.9 m/s(4,500 ft/min)の先端速度で回転可能である。ここで、先端速度はpDnで定義され、Dはロータの直径、nは回転周波数である。流動接触分解装置はFCCフィードストックの接触分解を行い、FCCオフガスを発生する。前記少なくとも一つの高剪断装置は、FCCオフガスの少なくとも一部を前記少なくとも一つの高剪断装置へ運ぶためのラインと連通している。ある実施の形態においては、FCCフィードストックはAGO、VGO、軽質減圧蒸留物、重質減圧蒸留物、あるいはそれらの組み合わせからなっている。このシステムはさらに、FCCオフガスから少なくとも一つの成分を分離する流動接触分解蒸気回収ユニットを有している。ある実施の形態においては、高剪断装置は液体キャリアの中にFCCオフガスの分散物を形成することができる。分散物中のFCCオフガスのバブルは5ミクロン以下の平均バブル直径を有する。ある実施の形態においては、分散物中のFCCオフガスのバブルは、5、4、3、2、1、0.5、0.4、0.3、0.2、あるいは0.1 mm以下の平均バブル直径を有する。ある実施の形態においては、前記少なくとも一つのロータは少なくとも40 m/sの先端速度で回転可能である。
【0021】
コーカオフガスから付加価値製品を製造するためのシステムも開示されている。このシステムは、少なくとも一つのロータと少なくとも一つのそれと相補的な形状のステータからなる少なくとも一つの高剪断装置と、コーカと、液体キャリアからなる液体ストリームを高剪断装置へ供給するポンプとを有する。前記少なくとも一つのロータは、少なくとも22.9 m/s(4,500 ft/min)の先端速度で回転可能である。ここで、先端速度はpDnで定義され、Dはロータの直径、nは回転周波数である。コーカはコーカフィードストックのサーマルクラッキングを行い、コーカオフガスを製造する。前記少なくとも一つの高剪断装置は、コーカオフガスの少なくとも一部を前記少なくとも一つの高剪断装置へ運ぶためのラインと連通している。ある実施の形態においては、コーカはディレードコーカである。ある実施の形態においては、コーカフィードストックは残留物からなっている。ある実施の形態においては、高剪断装置は液体キャリアの中にコーカオフガスの分散物を形成することができる。このとき、分散物中のコーカオフガスのバブルは、5、4、3、2、1、0.5、0.4、0.3、0.2、あるいは0.1 mm以下の平均バブル直径を有する。ある実施の形態においては、分散物中のコーカオフガスのバブルは1ミクロン以下の平均バブル直径を有する。ある実施の形態においては、前記少なくとも一つのロータは少なくとも40 m/sの先端速度で回転可能である。
【0022】
熱分解から付加価値製品を製造するためのシステムも開示されている。このシステムは、少なくとも一つのロータと少なくとも一つのそれと相補的な形状のステータからなる少なくとも一つの高剪断装置と、スチームクラッカと、液体キャリアからなる液体ストリームを高剪断装置へ供給するポンプとを有する。前記少なくとも一つのロータは、少なくとも22.9 m/s(4,500 ft/min)の先端速度で回転可能である。ここで、先端速度はpDnで定義され、Dはロータの直径、nは回転周波数である。スチームクラッカはフィードストックから熱分解ガスを発生する。前記少なくとも一つの高剪断装置は、熱分解ガスの少なくとも一部を前記少なくとも一つの高剪断装置へ運ぶためのラインと連通している。ある実施の形態においては、このシステムは熱分解ガスから少なくとも一つの成分を分離するために、前記少なくとも一つの高剪断装置の上流にセパレータも有する。ある実施の形態においては、スチームクラッカフィードストックはナフサからなっている。ある実施の形態においては、高剪断装置は液体キャリアの中に熱分解ガスの分散物を形成することができる。このとき、分散物中の熱分解ガスのバブルは、5、4、3、2、1、0.5、0.4、0.3、0.2、あるいは0.1 mm以下の平均バブル直径を有する。ある実施の形態においては、分散物中の熱分解ガスのバブルは1ミクロン以下の平均バブル直径を有する。ある実施の形態においては、前記少なくとも一つのロータは少なくとも40 m/sの先端速度で回転可能である。
【0023】
上述した方法あるいはシステムのいくつかの実施の形態は、触媒の使用を減らし、流体のスループットを向上させ、より低い温度および/あるいは圧力での動作を可能にし、かつ/あるいは、資本および/かつ運転コストを低減することによって全体のコストを削減できる可能性がある。以上の、またそれ以外の実施の形態および利点は以下での詳細な説明および図面から明らかになろう。
【0024】
この発明の実施の形態をさらに詳しく説明するために、ここで添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】外部に高剪断分散手段を有するこの発明による高剪断システムの実施の形態を示す図である。
【図2】図1のシステムの実施の形態において使用するのに適した高剪断混合装置の縦断面図である。
【図3】この発明の実施の形態による精製所関連ガス(Refinery-Related Gas(RRG))製造装置15Aを示す図である。
【図4】この発明の実施の形態によるRRG製造装置15Bを示す図である。
【図5】この発明の実施の形態によるRRG製造装置15Cを示す図である。
【図6】この発明の実施の形態によるRRG製造装置15Dを示す図である。
【図7】この発明の実施の形態によるRRGG製造装置15Eを示す図である。
【図8】この発明の実施の形態にしたがってRRGから価値製品を製造する方法250を示す図である。
【図9】この発明の実施の形態にしたがってRRGを提供する方法300Aを示すブロック図である。
【図10】この発明の実施の形態にしたがってクラッカフィードストックを提供する方法301Aを示す図である。
【図11】この発明の実施の形態にしたがってRRGを提供する方法300Bを示すブロック図である。
【図12】この発明の実施の形態にしたがってRRGを提供する方法300Cを示すブロック図である。
【図13】この発明の実施の形態にしたがってRRGを提供する方法300Dを示すブロック図である。
【図14】この発明の実施の形態にしたがって原油の安定性および、あるいはAPI比重を調整する方法600Aを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
表記及び命名
ここで使用される場合の“分散物(dispersion)”という用語は、容易には混合せず一体に溶解しないような少なくとも二つの区別可能な物質(あるいは“相”)を含んでいる液体状の混合物を指している。ここで使用される場合の“分散物”は、その中に他の相あるいは物質からなる不連続な液滴、バブル、および/あるいは粒子を保持している“連続した”相(あるいは“マトリックス”)からなっている。したがって、分散物という用語は、液体の連続した相の中に浮遊するガスバブルからなる泡や、第1の液体の液滴が第1の液体と混和しない第2の液体からなる連続した相の全体に分散しているようなエマルジョン、そして、固体粒子が全体にわたって分布している連続した液相を指している。ここで使用される場合の“分散物”という用語は、ガスバブルが全体に分布しているような連続した液相や、固体粒子(例えば固体触媒)が全体に分布しているような連続した液相、第1の液体からなる連続した液相の中にほとんど溶解しない第2の液体の液滴が全体に分布しているような連続した液相、そして固体粒子、不混和性の液滴、ガスバブルの任意の一つあるいはそれらの組み合わせが全体に分布しているような液相を含んでいる。したがって、分散物は、組み合わせとして選択した材料の特性によって、ある場合には同種の混合物(例えば、液体/液体の相)として、あるいは異種の混合物(例えば、気体/液体、固体/液体、あるいは気体/固体/液体)として存在し得る。
【0027】
“精製所関連ガス(refinery-related gas)”あるいはその頭文字である“RRG”を使用する場合は、精油所で得られる、あるいは原油の抽出から得られる任意のガス、および/あるいは地球から採れる関連ガスを指している。一般に、RRGはC1からC8の少なくとも一つからなっていて、水素を含んでいてもよい。ある実施の形態においては、RRGはC1からC4の少なくとも一つからなっていて、水素を含んでいてもよい。例えば、RRGは、メタン、エタン、プロパン、ブタン、エチレン、プロピレン、ブチレン、二酸化炭素、一酸化炭素、そして水素から選択された一つあるいは複数からなっている。
【0028】
“ガスオイル”という用語は、約350°Fから750°Fの沸騰範囲を有する中間蒸留の石油部分を指しており、ディーゼル燃料やケロシン、灯油、軽質(light)燃料油が含まれる。
【0029】
“ガソリン”という用語は、ナフサと、十分に大きなオクタン価と内燃エンジンにおける燃料として使用するのに適したその他の望ましい特性とを有するようなその他の精製製品とのブレンドを指している。
【0030】
“すべて、あるいはその一部”という表現は、ここでは“全体のすべて、あるいはその部分”あるいは“すべて、あるいはそのいくつかのコンポーネント”を意味するために用いられている。
【0031】
詳細な説明
概観
精製所関連ガス(以後はRRG)から付加価値製品を製造する方法およびプロセスは、リアクタ/ミキサ装置中の制御された環境で反応物を急速に接触させ、混合するために、外部の高剪断機械装置を有している。ここに記載されている外部の高剪断装置(HSD)あるいはミキサを有するリアクタアセンブリは、物質移動制限(mass transfer limitation)を減らし、それによって、触媒を用いるかもしれない反応を、機械的かつ/あるいは熱力学的制限により近づけることが可能となる。また、混合を増強することによって、反応ゾーン内における温度が均質化される。高剪断を用いて接触を増強することによって、従来のプロセスに比べてスループットが向上し、かつ/あるいは触媒の使用量が減少する。HSDを使用することによって、ある場合には触媒はまったく使用されない。
【0032】
精製所関連ガスから付加価値製品を製造するための高剪断システム
図1を参照して精製所関連ガスから付加価値製品を製造するための高剪断システム100を説明する。図1は高剪断システム100の実施の形態におけるプロセスの流れを示す図である。代表的なシステムの基本コンポーネントには外部高剪断装置(HSD)40とポンプ5が含まれる。以下でこれらのコンポーネントのそれぞれについてさらに詳しく説明する。ポンプ5の中に反応物を導入するために、ポンプ5にはライン21が接続されている。ライン13はポンプ5をHSD40へ接続しており、ライン19はHSD40からの製品の分散物を輸送する。これ以降の高剪断プロセスの説明を読めば明らかになるように、望むならば、フローライン19とHSD40との間に、あるいはポンプ5あるいはHSD40の前に、追加のコンポーネントあるいはプロセス工程を組み込むことができる。例えば、ライン20をフローライン19あるいはリアクタ10からライン21あるいはライン13へ接続して、フローライン19の中の、あるいは容器10からの流体をHSD40へ循環させることができる。製品はフローライン19を介してシステム100から取り出される。フローライン19は、製品の分散物(少なくとも液体とガスからなる)と、HSD40からの任意の未反応の反応物がその中へ流れ込む任意のラインである。
【0033】
以下でさらに説明するように、システム100はさらに容器10と、RRG製造装置15を有する。ライン22が分散可能な(dispersible)ガス(すなわちRRG)をHSD40の中へ導入する。ライン22は分散可能なガスを直接HSDの中へ導入するか、あるいはライン13の中へRRGを導入する。ある実施の形態においては、ライン22はRRG製造装置15と接続されている。別の場合には、分散可能なガスの流入ライン22はRRGガスの貯蔵ユニットへ接続されている。
【0034】
高剪断装置
ときに高剪断ミキサと呼ばれることもある外部高剪断装置(HSD)40は、ライン13を介して、反応物からなるインレットストリームを受け取る。別の場合には、HSD40は別々のインレットラインを介して反応物を受け取るようになっている。図1には一つのHSDのみが示されているが、このシステムのいくつかの実施の形態は、直列に、あるいは並列に配置された二つあるいはそれより多くのHSDを有していてもよいことを理解すべきである。
【0035】
HSD40は、ロータ/ステータの組み合わせからなる一つあるいは複数のジェネレータを利用する機械装置であり、それぞれのジェネレータはロータとステータとの間にギャップを有している。各ジェネレータのロータとステータとの間に設定されるギャップは固定されているか、あるいは調節可能である。HSD40はその中で、ある回転速度で反応物を触媒と効率よく接触させられるような構造を有している。HSDはその中の流体の圧力および温度を制御できるようなエンクロージャあるいはハウジングを有する。
【0036】
高剪断ミキサは、流体を混合する能力によって一般に三つのクラスに分類される。混合とは、流体内の粒子、あるいは異なる種のサイズを小さくするプロセスのことである。混合の度合い、あるいは完全さの一つの指標は、流体の粒子を粉砕するために混合装置が発生する単位体積当たりのエネルギ密度である。クラスは、供給されるエネルギ密度にもとづいて区分される。サブミクロンから50 mmまでの範囲の粒子サイズの混合物あるいはエマルジョンを常に製造するのに十分なエネルギ密度を有する産業用ミキサの三つのクラスには、ホモジェナイゼーションバルブシステム、コロイドミル、高速ミキサが含まれる。ホモジェナイゼーションバルブシステムと呼ばれる高エネルギ装置の第1のクラスにおいては、処理される流体は非常な高圧のもとで狭いギャップのバルブを通して、より低い圧力環境へ圧送される。バルブを介する圧力傾斜と、その結果起きる乱流とキャビテーションが流体中の粒子を粉砕する。これらのバルブシステムは最も一般的には牛乳の均質化に用いられており、サブミクロンから約1ミクロンの範囲の平均粒子サイズを実現できる。
【0037】
エネルギ密度スペクトルにおける対極には低エネルギ装置と呼ばれる第3の装置クラスがある。これらのシステムは、通常、一般的な用途の多くにおいては食料製品からなる処理流体の貯蔵器中で高速で回転するパドルあるいは流体ロータを有している。こうした低エネルギシステムは、通常は、処理される流体中での平均粒子サイズが20ミクロン以上でもよいときに使用される。
【0038】
流体へ供給される混合エネルギ密度に関して、低エネルギ装置とホモジェナイゼーションバルブシステムとの間にはコロイドミルやその他の高速ロータ−ステータ装置があるが、これらは中間エネルギ装置として分類される。代表的なコロイドミル構造は円錐形、あるいは円盤状のロータを有する。このロータは、それと相補的な液体冷却式のステータから、精密に制御されたロータ−ステータギャップだけ離間されている。ギャップは一般に0.025 mmから10 mm(0.001-0.40インチ)の間である。ロータは一般に、直接駆動あるいはベルト機構を介して電気モータによって駆動される。ロータが高速で回転するにつれて、ロータがロータの外側表面とステータの内側表面との間で流体を圧送し、ギャップの中に発生する剪断力によって流体が処理される。適切な調節が行われる多くのコロイドミルでは、処理流体の中に0.1から25ミクロンの平均粒子サイズを実現できる。こうした能力のために、コロイドミルは、化粧品やマヨネーズ、あるいはシリコーン/銀アマルガム形成、ルーフィングタール(roofing-tar)混合などに対して必要とされる処理など、コロイドおよび油/水をベースとしたエマルジョン処理を含む様々な用途に適したものとなっている。
【0039】
HSDは、その中の反応物へ加えられる機械的な力を発生する少なくとも一つの回転部材を有している。HSDは、隙間によって離間された少なくとも一つのステータと少なくとも一つのロータを有する。例えば、ロータは円錐形あるいは円盤状の形状でよく、またそれと相補的な形状のステータから離間されている。ある実施の形態においては、ロータとステータの両方が、相補的な形状の先端を有する、周辺が離間された複数のリングからなる。リングは、ロータおよびステータを取り囲む唯一の(solitary)表面あるいは先端を有する。ある実施の形態においては、ロータとステータの両方が周辺が離間されたリングを2個より多く有し、あるいは3個より多くの、あるいは4個より多くのリングを有している。例えば、ある実施の形態においては、三つのジェネレータの各々が、それぞれ3個の相補的なリングを有するロータおよびステータを有していて、HSD40を通過すると処理材料は9個の剪断ギャップあるいは剪断ステージを通ることになる。別の場合には、三つのジェネレータの各々は四つのリングを有していて、HSD40を通過すると処理材料は12個の剪断ギャップあるいは剪断ステージを通ることになる。ある実施の形態においては、ステータを調節して、各ジェネレータ(ロータ/ステータのセット)のロータとステータとの間に所望の剪断ギャップを得ることができる。各ジェネレータは、所望の回転を提供する任意の適当な駆動システムによって駆動される。
【0040】
ある実施の形態においては、HSD40はシングルステージの分散チャンバ(すなわち単一のロータ/ステータの組み合わせ、単一の高剪断ジェネレータ)からなっている。ある実施の形態においては、HSD40はマルチステージのインラインディスパーサと複数のジェネレータである。ある実施の形態においては、HSD40は少なくとも二つのジェネレータを有する。他の実施の形態においては、HSD40は少なくとも三つのジェネレータを有する。ある実施の形態においては、HSD40はマルチステージのミキサであって、剪断速度(これは先端速度に比例し、ロータ/ステータギャップ幅に反比例して変化する)は、以下でさらに説明するように、流路に沿った長手方向の位置によって変わる。
【0041】
この明細書では、HSD40内の少なくとも一つの表面は、所望の反応に触媒作用を施すのに適した触媒から形成されているか、それが含浸されている(impregnated)か、あるいはコーティングされている。これについては米国特許願No. 12/476,415に記載されており、この特許願は本明細書に反しないすべての目的で、参考のためにここに組み込まれている。例えば、ある実施の形態においては、少なくとも一つのロータ、少なくとも一つのステータ、少なくとも一つのロータ/ステータのセット(すなわち少なくとも一つのジェネレータ)のすべて、あるいはその一部が、適当な触媒から形成されているか、それがコーティングあるいは含浸されている。ある用途では、二つの、あるいはそれより多くの触媒を用いることが望ましいかもしれない。そうした場合には、ジェネレータは第1の触媒材料から形成されているか、それが含浸あるいはコーティングされており、そのジェネレータの、対応するステータは第2の触媒材料から形成されているか、それが含浸あるいはコーティングされている。別の場合には、ロータの一つあるいは複数のリングが第1の触媒から形成されているか、それがコーティングあるいは含浸されており、ロータの一つあるいは複数のリングが第2の触媒から形成されているか、それがコーティングあるいは含浸されている。別の場合には、ステータの一つあるいは複数のリングが第1の触媒から形成されているか、それがコーティングあるいは含浸されており、ステータの一つあるいは複数のリングが第2の触媒から形成されているか、それがコーティングあるいは含浸されている。ステータ、ロータ、あるいはその両方の接触表面のすべて、あるいはその一部が触媒材料から形成されているか、それがコーティングされている。
【0042】
HSD40の接触表面はプラチナなどの多孔質の焼結された触媒材料から形成されている。ある実施の形態においては、接触表面には多孔質の焼結された触媒材料がコーティングされている。ある用途では、HSD40の接触表面は焼結材料がコーティングされるか、それから形成され、そのあと、所望の触媒が含浸される。焼結材料はセラミックでもよいし、例えばステンレススチールや擬似ベーマイト(pseudoboehmite)などの金属粉末から形成されていてもよい。焼結材料の孔はミクロンあるいはサブミクロンの範囲である。孔のサイズは、所望の流れおよび触媒効果が得られるように選択することができる。孔のサイズをもっと小さくすると、反応物と触媒からなる流体との間の接触を改善することができる。多孔質材料(セラミックあるいは焼結金属)の孔サイズを変更することによって、利用可能な触媒表面積を所望の値に調節することができる。焼結材料は、例えば容積で焼結材料の約70%から約99%、あるいは容積で焼結材料の約80%から約90%からなっており、その他は孔が占めている。
【0043】
ある実施の形態においては、ロータ/ステータの先端によって形成されるリングは開口部(すなわち歯あるいは溝)を有しておらず、その結果、従来のディスパーサに一般的に存在する開口部あるいは溝を通過することによって触媒を迂回するのではなく、反応物のほとんどすべてが焼結材料の孔の中を通される。このようにして、例えば反応物は焼結材料の中を強制的に通されて、触媒と接触させられる。
【0044】
ある実施の形態においては、接触表面がそれから形成されている焼結材料はステンレススチールあるいは青銅からなっている。焼結材料(焼結金属あるいはセラミック)はパッシベーションが施されてもよい。そのあと、触媒がそこへ付着される。触媒は当該分野において周知の任意の手段によって付着される。そのあと、接触表面をか焼して金属酸化物(例えばステンレススチール)を形成する。第1の金属酸化物(例えばステンレススチール酸化物)に第2の金属をコーティングして、再びか焼してもよい。例えば、ステンレススチールの酸化物にアルミニウムをコーティングして、か焼し、アルミニウム酸化物を形成する。そのあとの処理によって他の材料が得られる。例えば、アルミニウム酸化物にシリコンをコーティングし、か焼してシリカを形成する。所望の接触表面および触媒を得るために、いくつかのか焼/コーティング工程を行ってもよい。このようにして、接触表面を形成する、あるいは接触表面をコーティングする焼結材料に、様々な触媒を含浸してもよい。別のコーティング方法は、例えば、シリコンウェハーに金属をコーティングするために一般的に用いられる金属蒸着や化学気相蒸着である。
【0045】
ある実施の形態においては、(例えばロータあるいはステータの)焼結金属接触表面はある材料で処理される。例えば、テトラエチルオルソシリケート(TEOS)。真空蒸着のあと、TEOSは表面の孔の中に留まる。か焼を用いてTEOSをシリカに変換する。この含浸を所望のすべての金属触媒に対して繰り返してもよい。形成、コーティング、含浸を行ったら、製造者の手順にしたがって触媒を活性化させる。例えば、水素などの活性ガスと接触させることによって触媒を活性化する。ベース材料は、か焼するとそれぞれアルミナあるいはシリカに変換されるシリコンあるいはアルミニウムでよい。それに限定されるわけではないが、レニウム、パラジウム、ロジウムなどの相応しい触媒をそのあと孔の中に含浸する。
【0046】
ある実施の形態においては、ステータとロータとの間の最小の隙間(剪断ギャップ幅)は約0.025mm(0.001インチ)から約3 mm(0.125インチ)までの範囲である。ある実施の形態においては、ステータとロータとの間の最小の隙間(剪断ギャップ幅)は約1 mm(0.00004インチ)から約3 mm(0.012インチ)までの範囲である。ある実施の形態においては、ステータとロータとの間の最小の隙間(剪断ギャップ幅)は約10 mm(0.0004インチ)以下か、約50 mm(0.002インチ)以下か、約100 mm(0.004インチ)以下か、約200 mm(0.008インチ)以下か、約400 mm(0.016インチ)以下である。ある実施の形態においては、ステータとロータとの間の最小の隙間(剪断ギャップ幅)は約1.5 mm(0.06インチ)である。ある実施の形態においては、ステータとロータとの間の最小の隙間(剪断ギャップ幅)は約0.2 mm(0.008インチ)である。ある実施の形態においては、ステータとロータとの間の最小の隙間(剪断ギャップ幅)は少なくとも約1.7 mm(0.07インチ)である。HSDによって発生する剪断速度は流路に沿った長手方向の位置によって変わる。ある実施の形態においては、ロータは、ロータの直径と所望の先端速度に相応しい速度で回転するように設定される。ある実施の形態においては、HSDはステータとロータとの間の隙間(剪断ギャップ幅)が固定されている。別の場合には、HSDは隙間(剪断ギャップ幅)が調節可能である。この剪断ギャップは、約5マイクロメータ(0.0002インチ)から約4 mm(0.016インチ)までの範囲である。
【0047】
先端速度とは、単位時間当たりにロータの先端が移動する周辺距離である。したがって、先端速度はロータの直径と回転周波数の関数である。(例えばメートル/分の単位の)先端速度は、ロータの先端が描く(transcribe)周辺距離である2pRに回転周波数(例えば1分当たりの回転数rpm)をかけることによって計算される。ここで、Rはロータの半径である(例えばメートルの)。回転周波数は250 rpm以上か、500 rpm以上か、1000 rpm以上か、5000 rpm以上か、7500 rpm以上か、10,000 rpm以上か、13,000 rpm以上か、15,000 rpm以上である。所望の製品特性を得るために、回転周波数や、流量、温度を調節してもよい。もしチャネリング(channeling)が起き、反応物のいくらかが反応せずに通過した場合には、回転周波数を上げて、望ましくないチャネリングを最小限に抑えてもよい。別の場合には、あるいは追加的に、未反応の反応物を別の、あるいはそのあとのHSD40へ導入するか、あるいは未反応の反応物の一部を製品から分離してHSD40へリサイクルしてもよい。
【0048】
HSD40は22.9 m/s(4500 ft/min)以上の先端速度を有するか、40m/s(7900 ft/min)、50 m/s(9800 ft/min)、100 m/s(19,600 ft/min)、150 m/s(29,500 ft/min)、200 m/s(39,300 ft/min)、あるいは225 m/s(44,300 ft/min)さえ越え、ある用途ではそれ以上である。この明細書では、“高剪断(high shear)”という用語は、5.1 m/s(1000 ft/min)を越える先端速度が可能であって、反応させるべき製品の流れにエネルギを供給するために外部の機械的に駆動される動力装置を必要とするような機械式ロータステータ装置(例えばコロイドミルあるいはロータ−ステータディスパーサ)を指している。反応物を、固定された触媒から形成された、あるいはそれがコーティングあるいは含浸された回転部材と接触させることによって、大きなエネルギが反応に伝えられる。特に、反応物が気体である場合には、HSD40のエネルギ消費は非常に小さい。温度を調節することによって製品の特性を制御したり、触媒の寿命を延ばしたりすることができる。
【0049】
ある実施の形態においては、HSDは少なくとも22.9 m/s(4500 ft/min)の先端速度で少なくとも300 L/hで供給が可能である。電力消費は約1.5kWである。HSD40は大きな先端速度と非常に小さな剪断ギャップと組み合わせて、処理する材料に対して大きな剪断を発生することができる。剪断の量はHSD40内の流体の粘性に依存する。したがって、HSD40の動作中にはロータの先端に局所的に圧力と温度が高い領域が形成される。ある場合には、局所的に上昇する圧力は約1034.2 Mpa(150,000 psi)である。ある場合には、局所的に上昇する温度は約500℃である。ある場合には、これらの局所的な圧力および温度の上昇はナノ秒あるいはピコ秒のあいだ続く。
【0050】
流体中へのエネルギ入力(kW/L/min)は、モータのエネルギ(kW)と流体出力(L/min)を測定することによって近似的に推定できる。上述したように、先端速度は、流体へ加えられる機械的な力を発生する一つあるいは複数の回転部材の端部に関する速度(ft/minまたはm/s)である。ある実施の形態においては、HSD40のエネルギ消費は、その中の流体の単位立方メートル当たり1000ワット以上である。ある実施の形態においては、HSD40のエネルギ消費は、約3000 W/m3から約7500 kW/m3までの範囲である。ある実施の形態においては、HSD40のエネルギ消費は、約3000 W/m3から約7500 W/m3までの範囲である。実際に必要なエネルギ入力は、フィードストック材料を分散させて混合するのに必要な機械的エネルギとともに、例えば吸熱および/あるいは発熱反応などHSD内部でどんな反応が起きているかによる。ある場合には、HSD内部で発熱反応が起きていると、モータ入力による必要な反応エネルギのいくらか、あるいはほとんどすべてが軽減される。液体中にガスを分散させるときのエネルギ必要量はかなり小さい。
【0051】
剪断速度は、先端速度を剪断ギャップ幅(ロータとステータとの間の最小の隙間)で割ったものである。HSD40で発生される剪断速度は20,000 s−1以上である。ある実施の形態においては、剪断速度は少なくとも40,000 s−1である。ある実施の形態においては、剪断速度は少なくとも100,000 s−1である。ある実施の形態においては、剪断速度は少なくとも500,000 s−1である。ある実施の形態においては、剪断速度は少なくとも1,000,000 s−1である。ある実施の形態においては、剪断速度は少なくとも1,600,000 s−1である。ある実施の形態においては、剪断速度は少なくとも3,000,000 s−1である。ある実施の形態においては、剪断速度は少なくとも5,000,000 s−1である。ある実施の形態においては、剪断速度は少なくとも7,000,000 s−1である。ある実施の形態においては、剪断速度は少なくとも9,000,000 s−1である。ロータが大きな直径を有するような実施の形態においては、剪断速度は約9,000,000 s−1を超える。ある実施の形態においては、HSD40によって発生される剪断速度は、20,000 s−1から10,000,000 s−1までの範囲である。例えば、一つの用途においては、ロータの先端速度は約40 m/s(7900 ft/min)であり、剪断ギャップ幅は0.0254 mm(0.001インチ)であって、1,600,000 s−1の剪断速度を生じる。別の用途においては、ロータの先端速度は約22.9 m/s(4500 ft/min)であり、剪断ギャップ幅は0.0254 mm(0.001インチ)であって、約901,600 s−1の剪断速度を生じる。
【0052】
ある実施の形態においては、HSD40はコロイドミルからなっている。相応しいコロイドミルが、例えばノースカロライナ州ウィルミントン(Wilmington, NC)のIKA(R) Works,Inc.およびマサチュセッツ州ウィルミントン(Wilmington,NC)のAPV North America, Inc.によって製造されている。ある場合には、HSD40はIKA(R) Works, Inc.のDISPAX REACTOR(R)である。
【0053】
ある実施の形態においては、外部HSDの各ステージは交換可能な混合ツールを有していて、柔軟性を提供している。例えば、ノースカロライナ州ウィルミントンのIKA(R) Works, Inc.およびマサチュセッツ州ウィルミントンのAPV North America, Inc.のDR 2000/4 DISPAX REACTOR(R)は、3ステージの分散モジュールを有する。このモジュールは三つまでのロータ/ステータの組み合わせ(ジェネレータ)を有していて、各ステージに対して、fine、medium、coarse、super-fineを選択できる。これによって、流れ方向に沿って剪断速度を変えることが可能になる。ある実施の形態においては、各ステージはsuper-fineのジェネレータで駆動される。ある実施の形態においては、ジェネレータセットの少なくとも一つは、約5 mm(0.2インチ)以上のロータ/ステータ最小隙間(剪断ギャップ幅)を有する。ある実施の形態においては、ジェネレータセットの少なくとも一つは、約0.2 mm(0.008インチ)のロータ/ステータ最小隙間(剪断ギャップ幅)を有する。別の実施の形態においては、ジェネレータセットの少なくとも一つは、約1.7 mm(0.07インチ)以上のロータ/ステータ最小隙間(剪断ギャップ幅)を有する。
【0054】
ある実施の形態においては、DISPAX REACTOR(R)の規模を大きくしたバージョンが用いられる。例えば、ある実施の形態においては、HSD40はSUPERDISPAX REACTOR(R) DRS 2000からなっている。HSDユニットは、時間当たり125,000リットルの流量能力を有するDR2000/50ユニットでも、40,000リットル/時の流量能力を有するDRS 2000/50でもよい。DRSユニット内での滞留時間が長くなるため、その中の流体はより多くの剪断を受ける。ここで図2を参照する。図には相応しいHSD200の縦断面図が示されている。図2のHSD200はロータ−ステータの組み合わせ220、230、240からなる三つのステージを有する分散装置である。ロータ−ステータの組み合わせは、それに限定されるわけではないが、ジェネレータ220、230、240あるいはステージとして知られている。三つのロータ/ステータのセットあるいはジェネレータ220、230、240は駆動シャフト250に沿って直列に配置されている。
【0055】
第1のジェネレータ220はロータ222とステータ227を有する。第2のジェネレータ230はロータ223とステータ228を有する。第3のジェネレータ240はロータ224とステータ229を有する。各ジェネレータに対して、ロータは入力250によって駆動され、矢印265で示されているように軸260のまわりに回転する。回転方向は矢印265によって示されているものと逆でもよい(例えば回転軸260のまわりに時計方向あるいは反時計方向)。ステータ227、228、229は、HSD200の壁255へ固定されている。上述したように、それぞれのロータおよびステータは相補的な形状の先端からなるリングを有していて、各ジェネレータ内にはいくつかの剪断ギャップが形成されている。
【0056】
上述したように、HSD40の接触表面は、所望の反応に触媒作用を施す適当な触媒から形成されているか、それがコーティングあるいは含浸されている。ある実施の形態においては、各ロータあるいはステータの一つのリングの接触表面は、そのロータ及びステータの別のリングの接触表面とは異なる触媒から形成されているか、それがコーティングあるいは含浸されている。別の場合には、あるいは追加的に、ステータの一つのリングの接触表面を、ロータの相補的なリングとは異なる触媒から形成するか、それをコーティングあるいは含浸してもよい。接触表面はロータの少なくとも一部、あるいはステータの少なくとも一部、あるいはその両方からなっている。接触表面は、例えばロータの外側表面の少なくとも一部、ステータの内側表面の少なくとも一部、あるいは両方の少なくとも一部からなっている。
【0057】
上述したように、各ジェネレータはロータとステータとの間の最小距離である剪断ギャップ幅を有している。図2の実施の形態においては、第1のジェネレータ220は第1の剪断ギャップ225を有し、第2のジェネレータ230は第2の剪断ギャップ235を有し、第3のジェネレータ240は第3の剪断ギャップ245を有する。ある実施の形態においては、剪断ギャップ225、235、245は約0.025 mmから約10 mmまでの範囲の幅を有する。別の場合には、このプロセスは、ギャップ225、235、245が約0.5mmから約2.5 mmまでの範囲の幅を有するようなHSD200を用いている。ある場合には、剪断ギャップ幅は約1.5mmに維持される。別の場合には、剪断ギャップ225、235、245の幅はジェネレータ220、230、240で異なる。ある場合には、第1のジェネレータ220の剪断ギャップ225の幅は第2のジェネレータ230の剪断ギャップ235の幅よりも大きく、剪断ギャップ235の幅は第3のジェネレータ240の剪断ギャップ245の幅よりも大きい。上述したように、各ステージのジェネレータは交換が可能であって、柔軟性を提供するようになっていてもよい。HSD200は、剪断速度が流れの方向260に沿った長手方向に同じままでも、増大しても、減少してもよい。
【0058】
ジェネレータ220、230、240はcoarse、medium、fine、super-fineという特性を有しており、それらはロータおよび相補的なステータ上の相補的リングの数が異なっている。一般的にはあまり好ましくないが、ロータ222、223、224とステータ227、228、229は歯状設計になっている。各ジェネレータは相補的なロータ−ステータのリングのセットを二つあるいはそれより多く有する。ある実施の形態においては、ロータ222、223、224は、相補的なロータ−ステータのリングを3セットより多く有する。ある実施の形態においては、ロータおよびステータは歯を持たず、したがって反応物は焼結材料の孔の中を通される。
【0059】
HSD40は大規模な装置でも小規模な装置でもよい。ある実施の形態においては、HSD40は時間当たり10トン以下から時間当たり50トンまでを処理するために使用される。ある実施の形態においては、HSD40は10トン/時、20トン/時、30トン/時、40トン/時、50トン/時、あるいは50トン/時以上を処理する。大規模なユニットは1000 gal/h(24バレル/時)を製造する。ロータの内径は所望の用途に適した任意のサイズでよい。ある実施の形態においては、ロータの内径は約12 cm(4インチ)から約40 cm(15インチ)までである。ある実施の形態において、ロータの直径は約6 cm(2.4インチ)である。ある実施の形態においては、ステータの外径は約15 cm(5.9インチ)である。ある実施の形態においては、ステータの直径は約6.4 cm(2.5インチ)である。ある実施の形態においては、直径がロータは60 cm(2.4インチ)でステータは6.4 cm(2.5インチ)であり、約4 mmの隙間が提供されている。ある実施の形態においては、三つのステージの各々は多数の相補的なロータ/ステータのリングを有する最高級(super-fine)ジェネレータで動作する。
【0060】
HSD200はインレット205でライン13からの流体混合物を受け取る。混合物は反応物からなっている。反応物はRRGからなる。ある実施の形態においては、少なくとも一つの反応物はガス状であり、少なくとも一つの反応物は液体である。インレット205に流入する供給ストリームは、ジェネレータ220、230の中、そしてジェネレータ240の中を順に圧送されて、製品が形成される。製品はアウトレット210(および図1のライン19)を介してHSD200から流出する。各ジェネレータのロータ222、223、224は固定されたステータ227、228、229に対して高速で回転して、大きな剪断速度を提供する。ロータが回転することによって、インレット205へ流入する供給ストリームなどの流体が剪断ギャップの中を(そして、もし存在すればロータの歯の間のスペースおよびステータの歯の間のスペースの中を)外側へ圧送されて、局所的な高剪断条件を形成する。流体が中を流れる剪断ギャップ225、235、245内の(そして、存在するときは、ロータの歯とステータの歯の間のギャップ内の)流体に加えられる高い剪断力がその流体を処理して、製品を形成する。この製品は、液体(例えば液体製品およびキャリア/触媒)の連続相の中における、未反応ガス、あるいは製品ガスの分散物からなる。製品は高剪断アウトレット210(および図1のライン19)を介してHSD200から流出する。
【0061】
上述したように、ある場合には、HSD200はノースカロライナ州ウィルミントンのIKA(R)Works, Inc.およびマサチュセッツ州ウィルミントンのAPVNorth America, Inc.のDISPAX REACTOR(R)からなっている。様々なインレット/アウトレット接続、馬力、先端速度、出力rpm、および流量を有するいくつかのモデルが利用可能である。HSDの選択は、スループットの選択と、HSD200のアウトレット210から出るライン10(図1)内の分散物中の粒子、液滴、バブルのサイズに依存する。例えばIKA(R)(登録標章)のモデルDR2000/4はベルトドライブ、4Mジェネレータ、PTFEシーリングリング、インレットフランジ25.4mm(1インチ)サニタリクランプ、アウトレットフランジ19 mm(3/4インチ)サニタリクランプ、2HPのパワー、7900 rpmの出力速度、およそ300-700 L/h(ジェネレータによる)の流量能力(水)、9.4-41 m/s(1850 ft/minから8070 ft/min)の先端速度からなっている。複数のHSDを使用することによって、あるいはより大きなHSDを利用することによって大規模化を行ってもよい。大きなモデルを使用した大規模化は容易に実行できる。より大きなHSD40のユニットを用いる結果、ある場合には実験室規模の装置の効率に比べて効率が改善される。大規模なユニットはDISPAX(R) 2000(登録標章)/ ユニットでよい。例えば、DRS 2000/5ユニットは51 mm(2インチ)のインレットサイズと、38 mm(1.5インチ)のアウトレットを有する。
【0062】
キャリアとして強酸が用いられる実施の形態においては、HSD40およびシステム100のその他の部分は耐火性/耐腐食性の材料から形成される。例えば、Inconel(R)(登録標章)合金、タングステン、あるいはHastelloy(R)(登録標章)材料が使用できる。
【0063】
容器
容器あるいはリアクタ10は、上述した変換反応を実行するために多相反応を促進することができる任意のタイプの容器である。例えば、連続的な、あるいは半連続的な攪拌タンクリアクタや、一つあるいは複数のバッチリアクタを直列あるいは並列にして用いることができる。ある用途においては、容器10はタワーリアクタであり、別の用途では管状リアクタあるいはマルチ管状リアクタである。システムを動作させるときには、触媒溶液あるいはスラリを受容するために、容器10には触媒インレットラインが接続される。HSD40内において著しい反応が起きるような実施の形態においては、容器10は、未反応ガスおよび軽質製品ガス、液体キャリア、触媒、および付加価値製品から選択される成分を分離するのに適した一つあるいは複数の精留塔を有する。容器10は、未反応ガスあるいは軽質製品ガス16、酸素化製品17、およびキャリア流体20に対するアウトレットラインを有する。ある実施の形態においては、システム100は、未反応の、かつ/あるいは軽質のガスを付加価値製品から分離したり、キャリア流体を付加価値製品から分離したり、触媒を付加価値製品から分離したり、それらのある組み合わせを分離したりするようになった個別の装置からなっている。
【0064】
容器10は以下のコンポーネント、すなわち反応容器設計分野において周知の攪拌システム、加熱および/あるいは冷却設備、圧力測定器具、温度測定器具、一つあるいは複数の注入ポイント、レベルレギュレータのうちの一つあるいは複数を含んでいる。例えば、攪拌システムはモータ駆動のミキサを有している。加熱および/あるいは冷却装置は例えば熱交換器を有している。これと違って、ある実施の形態においては、HSD40内において反応の大部分が起きるため、容器10はある場合には主として貯蔵容器として機能する。一般的にはあまり望ましくないが、ある用途においては、特に以下でさらに説明するように多数の高剪断/リアクタを直列に用いる場合には、容器10をなくしてもよい。
【0065】
RRG製造装置
分散可能な精製所関連ガスすなわちRRGは、C1−C8化合物の少なくとも一つからなる任意の適当な精製所関連ガスである。RRGは一般にC1からC4の部分と水素からなっている。例えば、RRGはメタン、エタン、プロパン、ブタン、エチレン、プロピレン、ブチレン、一酸化炭素、および二酸化炭素の任意の組み合わせからなっている。RRGは、硫化水素など、水素および/あるいは硫黄の化合物からなっていてもよい。最も望ましくは、RRGは精製からのネガティブバリューガス(negative value gas)からなっていることである。ここで用いるときのネガティブバリューガスとは、通常、燃焼(flare)されるか、たぶん燃焼のまえに高価な費用を掛けて処理されるガスなど、それの廃棄にコストがかかり、かつ/あるいは利益のないようなガスのことである。ある実施の形態においては、RRGとして使用されるガスはこれまで一般的にボイラの燃料として使われるか、燃焼されるガスのことである。ある実施の形態においては、RRGは通常は精製所のガスプラントの中へ導入されるガスからなっている。ある実施の形態においては、RRGは熱分解ガス、コーカオフガス、FCCオフガス、軽質FCCオフガス、付随ガス、あるいはそれらの組み合わせである。
【0066】
図3は代表的な精製所15Aの図である。RRG製造装置15は精製所15Aに示されているような装置か、図示されているユニットを複数含むそのサブセットの任意の組み合わせである。そうした装置およびプロセスが例えばOSHAテクニカルマニュアルTED01-00-015の2章IV節に記載されている。ある実施の形態においては、RRGは図3のガスプラントへ導かれるよう図示されている任意のガスから誘導されるか、それからなっている。ある実施の形態においては、RRGは原油から分離される(すなわち付随ガスとして)。ある実施の形態においては、RRGはクラッキングのときに製造されるガスから誘導されるか、それからなっている。ある実施の形態においては、RRGはサーマルクラッキングのときに製造されるガスから誘導されるか、それからなっている。例えば、ある実施の形態においては、RRGはコーキング作業におけるサーマルクラッキングによって製造されるコーカオフガスから誘導されるか、それからなっている。ある実施の形態においては、RRGは接触分解(catalytic cracking)のときに製造されるガスから誘導されるか、それからなっている。ある実施の形態においては、RRGは流動接触分解(fluid catalytic cracking)のときに製造されるガスから誘導されるか、それからなっている。ある実施の形態においては、RRGは軽質FFCオフガスからなっている。RRG製造装置15は、そこからオフガスが得られる当該分野において周知の接触分解装置でよい。ある実施の形態においては、RRG製造装置15は流動接触分解に対して当該分野において周知の任意のFCC装置である。例えば、図4は適したRRG製造装置15Bを示す図である。装置15Bのある部分を用いてRRGが製造される。装置15Bの実施例では、RRG製造装置15Bはそこからオフガスが製造されるFCCシステムである。ある実施の形態においては、図4に示されているオフガスの一つあるいは複数の成分が除去され、残ったガスがRRGとして利用される。当該分野において周知の任意のFCC蒸気回収ユニットがRRG製造装置として使用できる。例えば、図4のFCCシステム15Bのオフガスは、RRGとして使用するまえに、図5のシステム15Cに類似したシステムあるいはそのシステムの一部を介して精留される。
【0067】
ある実施の形態においては、RRG製造装置15はそこから熱分解ガスが得られるスチームクラッキング装置からなる。当該分野では様々な相応しいスチームクラッキング装置が知られている。図6は熱分解ガスを製造するのに適した装置15D(すなわち図6の水素処理およびBTX抽出ステージの上流の装置)を示す図である。ある実施の形態においては、RRG製造装置はスチームクラッカからなり、図6に示されているようにさらにセパレータも有する。そうした場合には、スチームクラッカからのC6+ガスや、セパレータからのC6部分、C6−C8あるいはC8+部分をRRGとして使用できる。
【0068】
ある実施の形態においては、RRG製造装置15は、そこからコーカオフガスが得られ/誘導されるコーキング装置である。当該分野では様々な相応しいコーキング装置が知られている。例えば、図7に示されているRRG製造装置15Eやそのいくつかの部分を高剪断システム100において利用することができる。
【0069】
熱伝達装置
処理すべき流体を加熱するための内部あるいは外部の熱伝達装置もシステムの変形においては考えられる。例えば、反応物は当該分野において周知の任意の方法で予備加熱してもよい。そうした熱伝達装置を一つあるいは複数配置するのに適したいくつかの場所は、ポンプ5とHSD40との間、HSD40とフローライン19との間、またフローライン19内の流体がHSD40へリサイクルされるときにはフローライン19とポンプ5との間である。HSD40は内側シャフトを有する。この内側シャフトは、HSD40内の温度を部分的に、あるいは完全に制御するために、例えば水冷によって冷却される。それに限定されるわけではないが、そうした熱伝達装置のいくつかの例は、当該分野において周知のように、シェル、チューブ、プレート、コイルの熱交換器である。
【0070】
ポンプ
ポンプ5は連続的か、あるいは半連続的な動作を行うようになっており、HSD40およびシステム100の中の流れを制御することができる任意の適当なポンプ装置でよい。ある用途では、ポンプ5は202.65 kPa(2 atm)以上の圧力、あるいは303.97 kPa(3 atm)以上の圧力を提供する。ポンプ5はローパーポンプカンパニ(Roper Pump Company) (コマースジョージア(Commerce Georgia))の ローパータイプ(Roper Type) 1ギアポンプでよく、デイトンプレッシャーブースターポンプモデル(Dayton PressureBooster Pump Model) 2P372E、デイトンエレクトロニックカンパニ(Dayton Electric Co) (ナイルズ、イリノイ州(Niles, IL))は一つの相応しいポンプである。ポンプのすべての接触部分は例えば316ステンレススチールなどのステンレススチールからなっていることが好ましい。このシステムのある実施の形態においては、ポンプ5は約2026.5 kPa(20 atm)以上の圧力が可能である。ポンプ5に加えて、一つあるいは複数の追加の高圧ポンプを図1に示されているシステムに含めてもよい。例えば、ポンプ5に類似したブースタポンプを、フローライン19内の圧力を増大させるために、HSD40とフローライン19との間に含めてもよい。
【0071】
精製所関連ガスから付加価値製品を製造するための高剪断プロセス
精製所関連ガスから付加価値製品を製造するためのプロセスを、図8に関して説明する。図8はこの発明による高剪断プロセス250を示す流れ図である。プロセス250は、精製所関連ガスを提供する段階300と、RRGをキャリアおよび/あるいは触媒と高剪断で均質に混合して分散物と付加価値製品からなる製品を形成する段階400と、未反応ガスとキャリアおよび/あるいは触媒と、付加価値製品を分離する段階500を有する。プロセス250はさらに、軽質ガスに高剪断を加える段階600を有する。
【0072】
精製所関連ガスRRGを提供する段階
精製所関連ガス(RRG)を提供する段階300は、通常はガスプラントへ送られる任意の精製所関連ガスを得る、あるいは製造する段階を有する。それと違って、あるいは追加的に、精製所関連ガスを製造する段階は付随ガスを得る段階を有する。オイル精製とも呼ばれる石油精製のために利用される現代の石油精製は、クリーンなガソリンや低硫黄のディーゼル燃料を提供する一連のコアプロセスおよびプロセスユニットを用いている。精製プロセスでは様々なオフガスが製造される。RRGは熱分解ガス、FCCガス、コーカオフガス、付随ガス、あるいはそれらの任意の組み合わせである。RRGは、通常、燃焼されるか、あるいは燃焼が適切ではないときには費用をかけてより望ましい製品に変換される“ネガティブバリューガス”であることが好ましい。RRGはオレフィンであってもよい。RRGは少なくとも一つのC1からC8化合物、水素、あるいはその組み合わせからなっていることが望ましい。ある実施の形態においては、RRGはC1からC4までの化合物と水素から選択された少なくとも一つからなっている。
【0073】
RRGは、以下の組成、すなわち、40-50%(例えば〜46%)N2、20-25%(例えば〜24%)CO、20-30%(例えば〜26%)CO2、1-5%(例えば4%)H2、そして少量の(例えば〜4%)O2、および/あるいはCH4、あるいは類似の組成を有する溶炉ガスである。FCC供給における炭化水素タイプは大きく、パラフィン、オレフィン、ナフテン、芳香族化合物(PONA)のように分類される。通常、精製作業で燃料として使用されるか燃焼されるガス、したがってこの発明においてRRGとしての使用に適したガスが、この発明に反しないようなすべての目的でその全体が組み込まれているアール・エヌ・ワトキンス(R.N. Watkins)による石油精製蒸留(Petroleum Refinery Distillation)第2版(ISBN 0-87201-672-2)に記載されている。
【0074】
精製所関連ガスを提供するための実施の形態が図9の流れ図に描かれている。図9は精製所関連ガスを提供する方法300Aの流れ図であり、そこではRRGは接触分解(CC)からのオフガスである。しかし、RRGはサーマル(すなわち触媒によらない)クラッキングからのオフガスでもよい。接触分解は、重い炭化水素分子を熱や触媒を用いてより軽い炭化水素部分に分解するプロセスである。図9におけるRRGを提供する方法300Aは、CCフィードストックを提供する段階301と、CCフィードストックを接触分解する段階302と、CCオフガスをCC製品から分離する段階303からなる。図10はCCフィードストックを提供するのに適した方法301Aを示す図である。CCフィードストックは常圧ガスオイル(AGO)および/あるいはヴァキュームガスオイル(VGO)からなる。CCフィードストックを提供する方法301Aは、原油を提供する段階304と、原油を脱塩する段階305と、脱塩された原油を常圧で蒸留する段階306と、306からの常圧タワーの残留物を減圧蒸留してCCフィードストックを得る段階307を有する。
【0075】
原油を提供する段階304は、当該分野において周知の方法を用いて一つあるいは複数の原油を提供する段階からなる。原油は、少量の硫黄、窒素、炭化水素の酸素誘導体を、微量金属とともに含む、自然にできる炭化水素の複雑な混合物である。原油は、油田によって見かけや組成が異なる多くの様々な炭化水素化合物を含んでいる。原油は、濃度については水からタール状の固体まで、また色については透明から黒色までの範囲に及ぶ。“平均的な”原油は約84%の炭素、14%の水素、1%-3%の硫黄、そして窒素、酸素、金属、及び塩の各々を1%以下含んでいる。原油は、類似した炭化水素分子の主要な割合に基づいて、一般にパラフィン系、ナフテン系、あるいは芳香族化合物系に分類される。混合ベースの原油は炭化水素の各タイプを様々な量だけ含んでいる。精製原油ベースのストックは通常、二つあるいはそれより多くの異なる原油の混合物からなっている。
【0076】
比較的簡単な原油アセイが、原油をパラフィン系か、ナフテン系か、芳香族化合物系か、あるいは混合かに分類するために使われている。一つのアセイ方法(United States Bureau of Mines)は蒸留に基づいており、別の方法(UOP“K”ファクタ)は比重よおび沸点に基づいている。原油の価値(すなわち有用製品の産出高および質)やプロセスパラメータを評価するには、さらに包括的な原油アセイを利用する。原油は一般に産出高構造にしたがってグループ化される。
【0077】
原油はAPI(American Petroleum Institute)比重を用いても定義される。API比重は石油製品の濃度を表現する任意の尺度である。API比重が大きいほど、原油は軽い。例えば、軽質原油は大きなAPI比重と小さな比重を有する。低炭素、高水素、高API比重を有する原油は、通常、パラフィンが豊富で、ガソリンや軽質石油製品を産出する比率が大きい傾向にある。一方、高炭素、低水素、低API比重を有する原油は、通常、芳香族化合物が豊富である。
【0078】
かなりの量の硫化水素やその他の反応性硫黄化合物を含んでいる原油は“サワー(sour)”と呼ばれる。含有する硫黄が少ない原油は“スウィート(sweet)”と呼ばれる。このルールに対するよく知られた例外は、それらの硫化水素含有量にかかわらず常に“サワー”と考えられている西テキサス(West Texas)の原油や、その中の硫化化合物があまり反応性でないために“サワー”と考えられていないアラブの高硫黄原油である。原油を提供する段階304は、スウィート原油、サワー原油、低API原油、高API原油、中API原油、パラフィン系原油、ナフテン系原油、芳香族化合物系原油、混合原油、あるいはそれらの任意の組み合わせから選択される一つあるいは複数を提供する段階を有する。表1は種々の原油の代表的な特性や性質、ガソリン潜在力(potential)を示している。
【0079】
【0080】
FCCフィードストックを製造する段階は、提供された原油を脱塩する段階を有する。当該分野において周知のように、脱塩は、一つあるいは複数の常圧タワーにおける蒸留のまえに、原油から塩や水そしてその他の不純物を取り除くために行われる。CCフィードストックを提供する段階は、原油を蒸留する一つあるいは複数の段階を有する。原油の精留(蒸留)は、常圧蒸留タワーおよび減圧蒸留タワーの中で、原油を、“フラクション(fraction=留分)”あるいは“カット(cut)”と呼ばれる様々な沸点範囲の炭化水素化合物グループに分離することである。精留は原油を、常圧タワーおよび減圧タワーの中での蒸留によって種々のフラクションあるいはストレートランカットに分類する。得られる主要なフラクションあるいは“カット”は特定の沸点範囲を有し、揮発度が小さくなる順に、ガス、軽質蒸留物、中間蒸留物、ガスオイル、残滓へ分類される。
【0081】
ある実施の形態においては、脱塩された原油は常圧で蒸留され、常圧蒸留のときに得られた常圧タワー残留物はそのあと減圧蒸留される。常圧蒸留する段階306は、当該分野において周知の常圧蒸留タワーを動作させて、脱塩された原油を精留する段階からなる。常圧蒸留の段階は、原油を、ナフサフラクション、ケロシンフラクション、ディーゼルフラクション、中間蒸留フラクション、ガスオイルフラクション、常圧残留オイルあるいは常圧タワー残留物と呼ばれる底部の液体に分離する段階を有する。
【0082】
脱塩された原油フィードストックは回収したプロセス熱を用いて予備加熱できる。フィードストックは直火の原油チャージヒータの中に導入され、そこで常圧よりも若干高い圧力と650°Fから700°F(原油をこれらの温度以上に加熱すると望ましくないサーマルクラッキングが起きる)の範囲の温度で底部のすぐ上方の垂直蒸留コラムの中へ供給される。最も重いフラクション以外はすぐに蒸気になる。高温の蒸気がタワーの中を上昇するにつれて、その温度は低下する。重質燃料オイルあるいはアスファルト残留物は底部から取り出される。タワーのより高いポイントで、潤滑油や灯油、ケロシン、ガソリン、凝集していないガス(これはもっと低い温度で凝集する)を含む種々の主要な製品が順々に抜き取られる。
【0083】
常圧蒸留のために使用される精留タワーは、当該分野において周知の任意の蒸留コラムでよい。精留タワーは約120フィートの高さのスチール円筒からなっており、液体を分離し収集するために水平のスチールトレイを有している。各トレイでは、下方からの蒸気が孔とバブルキャップに入る。蒸気は、孔とバブルキャップによってトレイ上の液体の中で泡立ち(bubble)、そのトレイの温度でいくらか凝集する。オーバーフローパイプが凝集した液体を各トレイから排出して下のトレイへ戻し、そこでより高い温度によって再蒸発が行われる。所望の製品純度が達成されるまで、蒸発と凝集、そして洗浄作業が何度も繰り返される。つぎに、あるトレイからサイドストリームが取り出されて、所望のフラクションが得られる。上部の凝集していない固定ガスから底部の重質燃料オイルまでの製品が精留タワーから連続的に抽出できる。蒸気の圧力を下げて部分的な減圧を形成するためにタワー内でスチームを使用してもよい。蒸留プロセスによって原油の主要な組成はいわゆるストレートラン製品に分離される。ときに、原油は、軽質フラクションのみが蒸留によって切り取られ(topped off)、通常は高真空のもとでさらに蒸留される重質残留物が残される。
【0084】
減圧して蒸留する段階307は、当該分野において周知の任意の方法によって実行される。ある実施の形態においては、減圧蒸留の段階307は常圧タワー残留物を、減圧蒸留を介してガスオイル、軽質減圧蒸留分、重質蒸留分、減圧残留オイル、あるいはそれらの組み合わせへと精留する段階を有する。減圧蒸留は減圧下における石油の蒸留であり、フィードストックのクラッキングあるいは分解を防止するために沸騰温度は十分に下げられる。ある実施の形態においては、CCフィードストックは常圧蒸留および/あるいは減圧蒸留からのガスオイル、軽質減圧蒸留分、重質減圧蒸留分、あるいはそれらの組み合わせからなる。
【0085】
減圧蒸留においては、高温状態にある常圧蒸留タワーからの残滓あるいは切り取りが行われた原油をさらに蒸留するために、低い圧力が用いられてサーマルクラッキングが防止される。減圧蒸留は一つあるいは複数の減圧蒸留タワーの中で実施される。減圧蒸留の原理は分留のそれと似ており、低い圧力で同程度の蒸気速度を維持するために大きな直径のコラムを使用することを除くと装置も類似している。トレイの代わりにランダムパッキングとデミスタパッドを使用する点で、減圧タワーの内部設計は常圧蒸留タワーとは異なる。代表的な第1相(first-phase)の減圧タワーを使用して、ガスオイル、潤滑油ベースストック、そしてプロパンの脱アスファルト化(deasphalt)のための重質残留物を製造する。脱アスファルト化は、非アスファルト化合物を分解するために液体プロパンを用いて常圧蒸留残油(reduced crude)からアスファルト材料を除去するプロセスである。より低い真空で動作する第2相のタワーを使って、潤滑油(lube-stock)処理に用いられない常圧タワーからの余剰残滓と、脱アスファルト化に使用されない第1の減圧タワーからの余剰残滓を蒸留する。一つあるいは複数の減圧タワーを用いて、余剰残滓から接触分解フィードストックを分離する。
【0086】
RRGを提供する段階は、さらにCCフィードストックに接触分解を実施する段階を有する。より軽くより望ましい製品の品質と量を増大させるため、また残留物の量を減らすために、接触分解によって複雑な炭化水素はより単純な分子に分解される。このプロセスは、炭化水素化合物の分子構造を再配置して、重い炭化水素フィードストックを、ケロシンやガソリン、LPG、灯油、石油化学製品フィードストックなどのより軽いフラクションに変換する。
【0087】
触媒が重い分子からより軽い分子への変換を容易にすることを除くと、接触分解はサーマルクラッキングと似ている。クラッキング反応に触媒(すなわち化学反応を助けるがそれには加わらない材料)を使用することによって、サーマルクラッキングにおけるよりも、ずっと緩い動作条件のもとで品質が改善された製品を産出できる。代表的な温度は、10から20 psiというずっと低い圧力で850°Fから950°Fである。クラッキングユニットで使用される触媒は、粉末やビーズ、ペレットの形になった、あるいはエクストルダイト(extradites)と呼ばれる整形材料である固体材料(例えばゼオライト、アルミニウムハイドロシリケート(aluminum hydrosilicate)、処理されたベントナイトクレイ、フラー土、ボーキサイト、およびシリカ−アルミナ)である。接触分解においては、接触分解フィードストックは触媒と反応して様々な炭化水素に分解し、コークスを燃焼することによって触媒が活性化され、分解された炭化水素製品が種々の製品に分離される。
【0088】
RRGは接触分解プロセスの三つのタイプ、すなわち流動接触分解(FCC)、移動床接触分解、そしてサーモフォア(Thermofor)接触分解(TCC)の任意のものを介して得られるか、あるいは誘導できる。接触分解プロセスは非常に柔軟性があり、様々な製品要求を満足させるように動作パラメータを調節することができる。RRGとして利用されるオフガス組成はクラッキングの動作パラメータに応じて変わる。触媒の活性には、クラッキングの他に、脱水素化、水素化、および/あるいは異性化がある。表2は、接触分解プロセスのフィードストックと、代表的な製品を示している。表に示されているように、接触分解からのオフガスのすべて、あるいはその一部を、この発明によってRRGとして利用することができる。
【0089】
ある実施の形態においては、RRGを提供する段階は、例えば図4に示されているFCCのような、流動接触分解(FFC)からのオフガスを提供する段階を有する。流動接触分解(FFC)は石油精製において使用される最も重要な変換プロセスである。それは、原油の高沸点炭化水素フラクションを、より価値のあるガソリンやオレフィン系ガス(軽質オレフィン)およびその他の製品に変換するのに広く使用されている。FCCフィードストックは、常圧において340℃あるいはそれより高い初期沸点と、約200から600、あるいはそれ以上の平均分子量を有するような原油フラクションからなっている。FCCプロセスによって、フィードストックが高温かつ適度な圧力において流動化した粉末触媒と接触させられることによって、高沸点炭化水素液体の長鎖分子が蒸発して、ずっと短い分子に分解される。CCフィードストックに接触分解を実施する段階302は、細かく分割した触媒が存在するところで当該分野において周知の手段によってオイルフィードストック(すなわちFCCフィードストック)をクラッキングする段階を有する。FCC触媒はオイル蒸気によって通気した、あるいは流動化した状態に維持される。流動接触分解装置は、一体化された処理ユニットとして動作する触媒セクションと精留セクションを有している。触媒セクションはリアクタと再生器を含んでおり、スタンドパイプ(standpipe)とライザとともに触媒循環ユニットを形成している。流動触媒は、空気やオイル蒸気、および/あるいはスチームを運搬媒体として使用して、FCCのリアクタと再生器との間を連続的に循環させることができる。
【0090】
【0091】
ある実施の形態においては、FCCは、予備加熱された炭化水素チャージ(すなわちFCCフィードストック)がFCCリアクタにつながるライザへ入ったときに、それを高温の再生された触媒と混合することによって実施される。チャージはライザの内部でリサイクルストリームといっしょにされ、蒸発され、高温の触媒によって反応温度(900°Fから1,000°F)まで上げられる。この混合物がライザを上昇するとき、チャージは10から30 psiで分解される。最近のFCCユニットを用いた実施の形態においては、すべてのクラッキングがライザの中で行われる。したがって、FCC“リアクタ”は単にサイクロン(cyclone)に対する保持容器としてのみ働いている。クラッキングは、オイル蒸気がリアクタのサイクロン中の触媒から分離されるまで続く。
【0092】
300Aを用いてRRGを提供する段階はCC製品からCCオフガスを分離する段階を有する。接触分解が流動接触分解であるような実施の形態においては、その結果できるFCC製品ストリーム(分解された製品)は、提供されるRRGとして利用されるFCCオフガスフラクションを含めて種々のフラクションへと精留される。したがって、流動接触分解の製品はFCC製品分留塔の中へ導かれ、そこでFCCオフガスフラクションを含めたフラクションに分離される。
【0093】
消費されたFCC触媒は、FCCプロセスのときに触媒上に集まるコークスをなくして再生することができる。消費された触媒は触媒ストリッパを通って再生器まで流れ、予備加熱された空気と消費された触媒が混合されるその底部でコークスの堆積の大部分が燃え尽くす。クラッキングプロセスを最適化するために、新鮮な触媒が追加され、消耗した触媒は除去される。
【0094】
開示されている方法のRRGとしてFCCオフガスを利用することは、そうしたオフガスの従来の処理法よりも望ましい。従来は、主要な精留塔オフガスは、いわゆるガス回収ユニットへ送られ、そこでブタンやブチレン、プロパン、プロピレン、そしてより小さい分子量ガス(水素、メタン、エチレン、およびエタン)に分離される。いくつかの従来型FCCガス回収ユニットもエタンやエチレンのいくらかを分離する。
【0095】
従来は、一般的に精製燃料として消費されるか、あるいは燃焼されてしまうテールガス流からのオレフィンからキャッシュフロー(cash flow)を提供するために、精製所のFCCオフガス流からのオレフィン回収が用いられてきた。こうした回収スキームを精製所あるいはオレフィンプラントで用いることができ、またそれぞれの要求に合わせることができる。しかし、FCCオフガスの従来の処理は複雑で、資本的に高価である。図4に示されているように、ある実施の形態においては、当該分野において周知のようにオレフィンを除去するためにFCCオフガスは例えば図5に示されているようにしてさらに処理され、種々の製品が除去されたあと軽質ガスのみがRRGとして利用される。図5に示されているように、FCCユニットから取り出され、またH2、CO、および/あるいはSも含んでいるかもしれない軽質のC1からC4ガスのすべて、あるいはその一部がこの発明にしたがってRRGとして使用される。
【0096】
ある実施の形態においては、CCフィードストックに接触分解を実施する段階302は、当該分野において周知の方法によって、CCフィードストックに移動床接触分解を実施する段階からなる。移動床接触分解プロセスはFCCプロセスに類似している。触媒はペレットの形をしており、コンベヤや空気圧式リフトチューブによってユニットの上部へ貯蔵ホッパまで連続的に移動され、そのあと重力によってリアクタの中を下方へ流れ、最後に再生器に至る。再生器とホッパはスチームシール(steam seal)によってリアクタから隔離されている。分解された製品は、リサイクルガス、オイル、精製オイル、蒸留物、ナフサ、およびウェットガスに分離される。ガスあるいはウェットガス、あるいはそれらの一部は提供される(provided)RRGとして使用される。
【0097】
ある実施の形態においては、CCフィードストックに接触分解を実施する段階302は、CCフィードストックに当該分野において周知のサーモフォア接触分解を実施する段階からなる。代表的なサーモフォア接触分解ユニットにおいては、予備加熱されたフィードストックが重力によって触媒リアクタベッドの中を流れる。蒸気は触媒から分離され、精留塔へ送られ、RRGとして使用するためにそこからCCオフガスが得られる。消費された触媒は再生され、冷却され、リサイクルされる。再生によって生じた排煙は熱の回収のために一酸化炭素ボイラへ送られる。
【0098】
ある実施の形態においては、RRGを提供する段階は、サーマルクラッキングからオフガス(これは通常、ガスプラントあるいは精製所へ送られる)を回収する段階を有する。サーマルクラッキングは、触媒の助けを借りずに、高温を用いることによって、重いオイル分子をより軽いフラクションへ分解することである。サーマルクラッキングは、さらにガソリンと蒸留燃料を製造するために、重い燃料に圧力と強い熱の両方を加えて物理的に大きな分子を小さな分子に分解する。オフガスとしてRRGを製造するために利用されるサーマルクラッキングは、サーマルクラッキングの別の形であるビスブレーキングでもよい。
【0099】
原油の単純な蒸留では、市場が必要とする製品とは量およびタイプが一致しない製品が製造されるため、そのあとの精製プロセスによって炭化水素の分子構造を変えることによって製品の構成(mix)を変更する。この変更を達成する方法の一つは、より重くて沸点が高い石油フラクションをガソリンや燃料オイル、ガスオイルなどのより価値のある製品に破壊あるいは分解するプロセスである“クラッキング”を用いることである。クラッキングの二つの基本的なタイプは、熱および圧力を使用するサーマルクラッキングと、上述した接触分解である。
【0100】
RRGは、ビスブレーキング、スチームクラッキング、コーキング、およびそれらの組み合わせから選択されるサーマルクラッキングプロセスのオフガス(通常は、ガスプラント、燃料、燃焼へ送られる)でよい。
【0101】
RRGはビスブレーキングを介して得られてもよい。ビスブレーキングは、沸点範囲に影響を与えることなく、重質の原油残留物の粘性あるいはポアポイント(pour point)を著しく低下させるサーマルクラッキングの穏やかな形(低温)である。常圧蒸留タワーからの残留物を常圧で加熱(800°Fから950°F)して、ヒータの中で穏やかに分解する。つぎに、オーバークラッキングを制御するために冷たいガスオイルで急冷して、蒸留タワーでflashする。ビスブレーキングは通常、ワックス状の残留物のポアポイントを下げ、またより軽い燃料オイルとブレンドするために使用される残留物の粘性を下げるために使われる。製品の要求によって、中間蒸留物もビスブレーキングによって製造される。精留塔の底部に堆積するサーマルクラッキングされた残留タールはストリッパの中で真空flashされ、蒸留物はリサイクルされる。表3は代表的なフィードストックと、ビスブレーキングの結果できる製品を示しており、RRGのためのビスブレーキング作業あるいはその一部のオフガスの用途を示している。
【0102】
ある実施の形態においては、RRGを提供する段階300は熱分解ガスを提供する段階からなる。熱分解ガスは、ナフサあるいはガスオイルなどの炭化水素フラクションをスチームクラッキングすることによるエチレン製造の副産物である。熱分解ガソリンあるいはパイガス(pygas)はスチームクラッキングのオレフィンプラントにおける副産物として得られるか、製造され、C5-からC10-炭化水素から構成されている。図6には適した熱分解ガス製造装置が示されている。パイガスは一般に芳香族化合物(例えばベンゼン)製造用のフィードストックとして使用されるが、ときどきガソリン製造など、他の目的にも応用される。生のパイガスはジエンやオレフィン、そして硫黄成分などの不安定で望ましくない成分を含んでいるため、ストリームは、通常、(2ステージの)水素化あるいは水素処理が施される。水素処理は、エチレンの製造の副産物である熱分解ガソリン(パイガス)の品質を改善するためにも用いることができる。伝統的には、パイガスに対する販路(outlet)は、そのオクタン価が大きいことを考慮すると相応しいルートである自動車用ガソリンの混合であった。しかし、この材料が有する受け入れ難い臭いや色のため、またそれが粘性を形成する傾向を有するために、非常に少量の混合しかできなかった。ジオレフィン含有量が高いパイガスの品質は、従来、ときに水素処理によってジオレフィンをモノオレフィンに変換することによって改善され、自動車用ガソリン混合として許容できる製品にされる。価値のある製品を製造するためにパイガスを利用するここに述べられている酸素化物を製造する方法を考えると、そうした水素処理は望ましくない。
【0103】
【0104】
この発明の実施の形態においては、パイガスが付加価値製品の製造に利用される。RRGは、図11のフローチャートに示されたRRGを提供する方法300Bを介して提供される。RRGを提供する段階300Bは、スチームクラッカのフィードストックを提供する段階308と、スチームクラッカのフィードストックをクラッキングする段階309と、クラックされた製品から熱分解ガスを分離する段階310を有する。スチームクラッカのフィードストックを提供する段階308は、当該分野において周知の任意の適当なスチームクラッカフィードストックを製造する、あるいは得る段階からなる。スチームクラッカフィードストックはナフサからなっている。ナフサはガソリンの主要成分である低沸点炭化水素フラクションに対して使用される一般的な用語である。脂肪族ナフサは、0.1%以下のベンゼンを含んでいてC3からC16の炭素数を有するナフサを指している。芳香族ナフサはC6からC16の炭素数を有していて、ベンゼン(>0.1%)や、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素を多く含んでいる。ナフサは、主に高オクタンガソリン成分を(触媒改質プロセスを介して)製造するためのフィードストックとして用いられる。それはまた、スチームクラッカにおいてオレフィンを製造するために石油化学産業において、また化学産業においては溶剤(洗浄)用途で使用される。
【0105】
スチームクラッカのフィードストックはエタンから真空ガスオイルまでの範囲に及び、より重いフィード(feed)はナフサなどの副産物をより多く産出する。スチームクラッカのフィードストックはエタン、ブタン、ナフサ、あるいはそれらの組み合わせからなる。スチームクラッカのフィードストックをクラッキングしてクラックされた製品を提供する段階309は、スチームクラッカフィードストックをスチームクラッカに導入する段階を有する。スチームクラッカは、スチームクラッカフィードストック(例えばナフサやおそらく軽質炭化水素)を、オレフィン(例えばエチレン、プロピレン)や他の化学原材料に変換する石油化学装置である。ある実施の形態においては、スチームクラッキングは1,500°Fから1,600°Fの温度と、常圧よりも若干高い圧力で実施される。スチームクラッカのフィードストックをクラッキングする段階309に続いて、段階310で熱分解ガスがクラックされた製品から分離される。クラックされた製品(化学物質)は通常の方法によってパイプラインやその他の方法によって、例えば石油化学および高分子施設まで輸送され、オレフィンをベースにした製品に変換される。スチームクラッキングから製造されたナフサは、水素処理のまえに抽出されるベンゼンを一般には含んでいる。スチームクラッキングからの残留物はときに重油とブレンドされる。熱分解ガスはこの発明においてはRRG300として提供される。
【0106】
ある実施の形態においては、RRGを提供する段階300は当該分野において周知の任意の方法によってコーカオフガスを製造する、あるいは得る段階を有する。コーカオフガスを提供するためのシステム例が図7に与えられている。図12は、この発明の実施の形態においてRRGとして提供する段階300C用のコーカオフガスを製造する方法の流れ図である。RRGを提供する段階300Cはコーカフィードストックを提供する段階311と、コーカフィードストックを熱的にクラッキングする段階312と、コーカ製品からコーカオフガスを抽出する段階313を有する。コーカオフガスはコーキングから得られる。コーキングは、重い残留物を、軽い製品および副産物である石油コークスへ熱的に変換して改善する(upgrade)プロセスである。コークスは、石油残留物の破壊的な蒸留で残った高炭素含有残留物である。
【0107】
コーキングは、重い残留物をより軽い製品あるいは蒸留物へと改善するために使用されるサーマルクラッキングの厳しい方法である。コーカフィードストックを提供する段階311は常圧タワーおよび/あるいは減圧蒸留タワーからの残留物を提供する段階を有する。コーカフィードストックのコーキングによって、ストレートランガソリン(コーカナフサ)と、接触分解のフィードストックとして使用される種々の中間蒸留フラクションが、この発明においてRRGとして使用されるコーカオフガスとともに製造される。したがって、コーキングは完全に水素を還元(reduce)するため、残留物は“コークス”と呼ばれる炭素の形になる。ディレード(delayed)コーキングおよび/あるいは連続(コンタクトあるいはフルード)コーキングは、RRGとして使用されるコーカオフガスを提供する。
【0108】
ある実施の形態においては、RRGはディレードコーキングからのオフガスとして提供される。減圧残留オイルは、原油からの重油をより軽質の製品へと変換するディレードコーキングユニットの中で通常は処理される。ディレードコーキングにおいては、加熱されたチャージ(コーカフィードストック、一般的には常圧蒸留タワーからの残留物)が大きなコークスドラムへ移され、そこでクラッキング反応が完了するのに必要なだけの滞留時間が与えられる。最初に、重いフィードストックが炉に供給される。残留物を低圧力(25あるいは30 psi)で高温(900°Fから950°F)に加熱するこの炉はヒータチューブの中で未熟な(premature)コーキングが行われないように設計されており、そのように制御される。混合物はヒータから一つあるいは複数のコーカドラムへ移され、そこで高温の材料はより軽質の製品にクラックするまで、25から75 psiで約24時間保持(遅滞(delayed))される。ドラムからの蒸気は精留塔へ戻され、そこでオフガス、ナフサ、およびガスオイルが分離される。コーカオフガスはRRGを提供する段階300に使用される。
【0109】
通常、コークスが一つのドラムで予め決められたレベルに達すると、連続的な作業を維持するために、流れは別のドラムへ向けられる。一杯になったドラムはクラックしなかった炭化水素をストリッピングするために蒸らされ、水を注入して冷却され、機械的に、あるいは水圧で脱炭素処理(decoke)される。コークスはドラムの底部から上昇するオーガによって機械的に取り除かれる。水圧式脱炭素処理(hydraulic decoking)は、回転カッタから放出される高圧の水でコークスベッドを粉砕する段階からなっている。
【0110】
ある実施の形態においては、RRGは連続コーキングからのオフガスとして提供される。連続(コンタクトあるいはフルード)コーキングは、ディレードコーキングよりも高い温度で動作する移動床プロセスである。連続コーキングにおいては、高温のリサイクルされるコークス粒子からリアクタと呼ばれるラジアルミキサ内のフィードストックへ伝達される熱を使用することにより、50 psiでサーマルクラッキングが行われる。ガスおよび蒸気はリアクタから取り出され、それ以上の反応を停止するために急冷され、精留される。コーキング作業の代表的なフィードストックおよび製品を掲げる表4に示されているように、コーカオフガスあるいはその一部はこの発明におけるRRGとして使用される。反応を行ったコークスはサージドラムへ入り、フィーダおよびクラシファイヤ(classifier)まで持ち上げられ、そこで大きなコークス粒子は製品として取り除かれる。残ったコークスはプリヒータの中に落下し、フィードストックとともにリサイクルされる。コーキングはリアクタおよびサージドラムの中で行われる。このプロセスは、コークスとフィードストックが連続的に流れるという点で、自動的である。上述したように、可能性のあるオフガス組成もアール・エヌ・ワトキンスによる石油精製蒸留第2版(ISBN 0-87201-672-2)に記載されている。
【0111】
【0112】
ある実施の形態においては、RRGを提供する段階300は、付随ガスを提供する段階からなる。付随ガスを利用するような付随ガスを提供する段階300Dの方法が図13に示されている。RRGを提供する段階300Dは、原油を提供する段階314と、原油から付随ガスを分離する段階315を有する。原油を提供する段階314は図10に関連して上述した段階304におけるようにして実施される。付随ガスは、埋蔵地において高圧下で原油に溶解しているガスや、オイル上方のガスキャップとして存在するガスである。付随ガスは天然ガスからなる。原油から付随ガスを分離する段階は当該分野において周知の方法で行われる。
【0113】
その他の精製所関連ガスをこの発明におけるRRGとして使用してもよい。通常はガスプラントへ送られる任意のガスをRRGとして使用して、この発明の方法によって付加価値製品に変換できる。例えば、水素化脱硫の、あるいはその一部において製造されるオフガスを、RRGを提供するために使用してもよい。水素化脱硫とは、主要な目的が水素の存在のもとで石油フラクションから硫黄を除去することであるような触媒プロセスのことである。ある実施の形態においては、通常はRRGとして使用されるまえにガス処理プラントへ送られるガスから一つあるいは複数の製品が除去される。不飽和および、あるいは飽和(unsaturated or saturated)ガスプラントでは、RRGとして使用するまえに一つあるいは複数の成分が除去される。例えば、ブタンとブテンがアルキル化のフィードストックとして使用するために除去され、重い成分はガソリン混合へと送られ、プロパンはLPG用に回収され、プロピレンは石油化学で使用するために除去される。
【0114】
RRGをキャリアおよび/あるいは触媒と均質に混合して付加価値製品を形成する
精製所関連ガスから付加価値製品を製造する本発明のプロセス250は、提供されたRRGをキャリアおよび/あるいは触媒と均質に混合して分散物および付加価値製品を形成する段階400を有する。付加価値製品はオレフィンおよび/あるいはアルコールを含めた酸素化物である。通常の精製所に一つあるいは複数のHSD40を組み込むことが特に望ましい。硫酸は一般的な精油所で行われる酸処理プロセスに最も一般的に使用されることから、硫酸が最も適したキャリアである。また、RRGは一般に硫黄を有し、高剪断プロセスによってRRG中の硫黄は硫酸に変換され、キャリアで除去される。硫酸処理は、ガソリンやケロシン、潤滑油のストックなどの未完成な石油製品が硫酸で処理されて色や臭い、その他の特性が改善されるようなプロセスである。
【0115】
通常の硫酸処理では、不飽和炭化水素、硫黄、窒素、酸素の化合物、そして樹脂性およびアスファルト系の化合物の一部あるいは全部が除去される。それは、オイルの臭いや色、安定性、炭素残留、その他の特性を改善するために使われる。精製所における硫酸の一部は、この発明による種々のRRGから付加価値製品を製造するために使われる。
【0116】
均質に混合する段階400は、以下でさらに説明するように、RRGとキャリアおよび/あるいは触媒との混合物に少なくとも20,000 s−1あるいはそれ以上の剪断速度を加える段階を有する。均質に混合する段階400は、混合して、キャリア(触媒であるか、触媒を含んでいる)の中に分散したRRGのバブルからなる分散物を形成する段階を有する。このとき、バブルは約5、4、3、2、1ミクロンあるいは1ミクロン以下の平均粒子直径を有する。ある実施の形態においては、バブルはナノメートル範囲か、ミクロン範囲、あるいはサブミクロン範囲の平均粒子直径を有する。
【0117】
ここで図1を参照する。均質に混合する段階400は、分散可能なガスストリーム22を介する適当なRRGと、ストリーム21を介してキャリアおよび/あるいは触媒を高剪断装置40へ導入する段階を有する。HSDは前述したようにロータとステータからなる装置である。
【0118】
動作時には、RRGからなる分散可能なガス流はライン22を介してシステム100の中に導入され、ライン13の中でキャリア流と合わされて、ガス−液体流を形成する。キャリアは触媒でもよいし、その中に触媒を含んでいてもよい。キャリア21は任意の適当な液体キャリアでよく、また水性あるいは有機物でよい。ある実施の形態においては、キャリアは硫酸からなっており、これは触媒としても作用する。ある実施の形態においては、キャリアおよび/あるいは触媒は、硫酸、リン酸、スルホン酸、およびそれらの組み合わせから選択される。ある実施の形態においては、水和反応に触媒作用を及ぼすのに適した触媒が用いられる。窒素などの不活性ガスを用いてリアクタ10を充填することで、システム100を動作させるまえに空気および/あるいは酸素をパージする。ある実施の形態では、それに限定されるわけではないが、触媒はシリカなどの固体サポートの上に配置される。別の実施の形態においては、触媒は硫酸あるいはスルホン酸である。ある実施の形態では、触媒はゼオライトである。様々な実施の形態において使用可能なゼオライトの例としては、モルデン沸石、エリオナイト(erionite)、フェリエライト(ferierite)、そしてモービルオイル(Mobil Oil Corp.)によって開発されたZSMゼオライトなどの結晶性アルミノケイ酸塩、ホウ素や鉄、ガリウム、チタン、銅、銀などの異物(foreign element)を含んだアルミノメタロケイ酸塩、そしてガソシリケート(gallosilicate)やホウケイ酸塩などの、アルミニウムがほとんどないメタロケイ酸塩が含まれる。ゼオライト中で交換可能なカチオン種に関しては、プロトン交換タイプ(Hタイプ)が通常は使用されるが、例えばMgやCa、Srなどのアルカリ土類元素、LaやCeなどの希土類元素、Fe、Co、Ru、Pd、PtなどのVIII属元素、あるいはTi、Zr、Hf、Cr、Mo、W、Thなどのその他の元素など、少なくとも一つのカチオン種でイオン交換されたゼオライトを使用することも可能である。触媒は触媒供給ストリームを介してリアクタ10の中へ供給される。別の場合には、触媒は固定床あるいは流動床10の中に存在する。
【0119】
別の場合には、分散可能なガスは、ライン13の中でキャリア(例えば硫酸)と合わされる代わりに、HSD40へ直接供給される。ポンプ5を駆動してライン21を介してキャリアを圧送し、圧力を形成してHSD40に供給を行い、高剪断装置(HSD)40および高剪断システム100全体にわたって流れが制御される。ある実施の形態においては、ポンプ5がライン13のHSD流入ストリームの圧力を、200 kPa(2 atm)まで、あるいは約300 kPa(3 atm)以上に増大させる。このようにして、高剪断システム100は高剪断と圧力を組み合わせて、反応物の均質な混合を増強している。
【0120】
ある実施の形態においては、分散可能なRRGガスは連続的にキャリア流13の中へ供給され、高剪断供給ストリーム(例えばガス−液体の供給流)を形成する。高剪断装置40の中でキャリアとRRGは十分に分散されて、RRGのナノバブルおよび/あるいはマイクロバブルが形成され、RRGは溶液の中に十分に溶解する。いったん分散されると、分散物は高剪断アウトレットライン19を介して高剪断装置40を出る。オプションとして、ストリーム19は容器10に流入してもよい。容器10は流動床あるいは固定床からなり、スラリ触媒プロセスの代わりに、あるいはそれに追加されて使用される。しかし、(例えばスラリ触媒の実施の形態においては)高剪断アウトレットストリーム19は、さらなる反応のためにリアクタ/容器10へ直接流入する。反応ストリームは、反応温度を維持するためにリアクタ10内に設けられた冷却コイルを用いて、特定の反応温度に維持される。反応生成物(例えばオレフィンやアルコール、および/あるいは酸素化物からなる付加価値製品)が製品ストリーム17で取り出される。未反応/軽質ガスはライン16を介して容器10から除去される。キャリアはライン20を介してリサイクルされる。容器10は、付加価値製品、軽質ガス、キャリア液体および触媒の任意の組み合わせを分離するために、一つあるいは複数の分離容器を有している。
【0121】
RRGはRRGの供給源によって変わってくるため、HSD40および/あるいは容器10の中で起きる反応や、その結果できる付加価値製品は変わるであろう。起きるであろう反応は、FT反応(例えば、RRGが一酸化炭素と水素、すなわち合成ガスからなるとき;FT触媒が利用されるとき)、オレフィン水素化反応(例えばRRGがオレフィンからなるとき、キャリアが硫酸からなるとき、ゼオライト触媒が存在するとき)、メタノール生成(例えばRRGがメタンからなるとき、キャリアが硫酸からなるとき)、クラッキング反応、および当該分野において周知であり所望のRRGを用いた実験を介して過度な反応なく認識可能な(discernible without undue reaction)その他の反応である。前述したように、FT反応はシステム100内で起きる。そうした反応は、この発明に反しないすべての目的のためにここに組み込まれている米国特許願No. 12/138,269に記載されている。オレフィン水素化反応はシステム100内で起きる。そうした反応は、それぞれこの発明に反しないすべての目的のためにここに組み込まれている米国特許No. 7,482,497および米国特許願No.12/335,270およびNo. 12/140,763に記載されている。
【0122】
付加価値製品は一般に、酸素化物とオレフィンから選択された少なくとも一つの成分からなっている。ある実施の形態においては、付加価値製品は少なくとも一つのアルコールからなっている。このアルコールは、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、あるいはそれらの組み合わせからなっている。オレフィンフィードストックをアルコールからなる製品に高剪断変換する段階が、この発明に合致するすべての目的のためにここに組み込まれている米国特許No. 12/335,270に記載されている。アルコールを形成するために、任意のOH源を使用できる。例えば、水をOH源として提供してもよい。ある実施の形態においては、RRGはFCCオフガスからなる。ある実施の形態においては、FCCオフガスはエチレンおよび/あるいはエタンからなる。そうした/あるいは他の実施の形態においては、付加価値製品は主としてアルコールからなる。ある実施の形態においては、付加価値製品は酸素化物から選択される少なくとも一つからなる。ある実施の形態においては、付加価値製品はアルコールから選択される少なくとも一つからなる。
【0123】
反応物は、反応物に高剪断を加えるHSD40内で均質に混合される。ある実施の形態においては、反応物ストリームの中に触媒がさらに存在することも考えられる。例えば、固相、気相、液相の触媒をライン13,ライン21、あるいはライン22を介してHSD40へ導入する。ある実施の形態においては、高剪断装置は、前述したように直列に配置されたステータと組み合わされる三つのロータを有する3ステージの高剪断分散装置であるIKA(R)モデルDR 2000/4などの市販のディスパーサからなる。ディスパーサは液体キャリアの中にRRGの分散物を形成するために使用される。ロータ/ステータのセットは例えば図2に示されているような構造である。そうした実施の形態においては、合わされた反応物がライン13を介して高剪断装置に流入し、周辺部で離間した第1ステージの剪断開口部を有する第1のロータ/ステータの組み合わせに流入する。第1ステージから出た粗い分散物は、第2ステージの剪断開口部を有する第2のロータ/ステータステージに流入する。第2ステージから出たバブル寸法が小さくなった分散物は、第3ステージの剪断開口部を有する第3のロータ/ステータの組み合わせに流入する。ジェネレータのロータとステータは周辺で離間した相補的な形状のリングを有する。分散物はライン19を介して高剪断装置から流出する。ある実施の形態においては、剪断速度は、流れ260の方向に沿った長手方向に、あるいはあるジェネレータの内側リングセットから同じジェネレータの外側リングセットまで行くにつれて段階的に増大する。他の実施の形態においては、剪断速度は流れ260の方向に沿った長手方向に、あるいはあるジェネレータの内側リングセットから同じジェネレータの外側リングセットまで(軸200から外側へ)行くにつれて段階的に減少する。例えば、ある実施の形態においては、第1のロータ/ステータステージにおける剪断速度は、そのあとのステージにおける剪断速度よりも大きい。例えば、ある実施の形態においては、第1のロータ/ステータステージにおける剪断速度は、そのあとのステージにおける剪断速度よりも大きいか、あるいは小さい。他の実施の形態においては、同じステージで、剪断速度は流れの方向に沿ってほぼ一定である。もしHSD40が例えばPTFEシールを有するとき、このシールは当該分野において周知の任意の適当な方法を用いて冷却される。HSD40は中心にシャフトを有し、このシャフトはHSD40内の温度を制御するために使用される。例えば、ライン13の中を流れるキャリア流はシールを冷却するために使用され、そうすることで、高剪断装置へ流入するまえに所望のように予備加熱される。ある実施の形態においては、反応を促進するために(シャフトを介して、あるいはそうでなければHSD40の外部でなど)HSD40に熱を加えてもよい。
【0124】
HSD40のロータは、ロータの直径と所望の先端速度に相応しい速度で回転するように設定される。前述したように、HSD(コロイドミルあるいは歯状周縁を有するディスパーサ)は、ステータとロータとの間に固定の隙間、あるいは調節可能な隙間を有する。
【0125】
HSD40はRRGとキャリアを均質に混合する。このプロセスに対するいくつかの実施の形態においては、一つあるいは複数の反応の速度(すなわち反応速度)が約5倍以上増加するように高剪断装置を動作させることによって、反応物の輸送抵抗が低減される。ある実施の形態においては、反応速度は少なくとも10倍だけ増加される。ある実施の形態においては、速度は約10から約100の範囲の係数(factor)で増加される。ある実施の形態においては、HSD40は少なくとも22 m/s(4500 ft/min)、40 m/s(7900 ft/min)、および225 m/s(4,500 ft/min)を越える公称先端速度において少なくとも300 L/hを供給する。電力消費は約1.5kWか、望めばそれ以上である。HSD40の回転する剪断ユニットあるいは回転部材における瞬時的な温度および圧力の測定は困難であるけれども、高剪断条件のもとでは均質に混合された反応物から見た局所的な温度は500℃以上、圧力は500 kg/cm2以上であるものと見積もられる。
【0126】
液体、気体、および固体を含む化学反応速度は、接触時間、温度、および圧力に依存する。異なる相の二つあるいはそれより多くの原材料(例えば固体と液体、液体と気体、固体と液体と気体)を反応させることが望ましい場合には、反応速度を制御する制限要因の一つとして反応物の接触時間が含まれる。反応速度を加速するときは、滞留時間が短くなり、それによって、得られるスループットは増大する。
【0127】
異種の触媒反応の場合には、触媒がさらに反応物に触媒作用を施せるようにするために固体触媒の表面から、反応した製品を除去するという、別の速度制限要因が存在する。反応物および/あるいは触媒に対する接触時間は、通常、化学反応に関係する反応物との接触を行わせる混合によって制御される。
【0128】
理論的には制限されるわけではないが、エマルジョン化学では、液体中に分散したサブミクロンの粒子あるいはバブルは主としてブラウン運動による動きをする。そうしたサブミクロンサイズの粒子あるいはバブルは固体触媒粒子の界面層を通過する大きな移動性を有しており、反応物の輸送が向上することで触媒反応が容易になり、かつ加速される。
【0129】
高剪断の結果、ミクロンあるいはサブミクロンのバブルあるいは液滴としてRRGの分散物が形成される。ある実施の形態においては、結果としてできる分散物は約1.5 mm以下の平均バブルサイズを有する。したがって、ライン19を介してHSD40を出る分散物はミクロンおよび/あるいはサブミクロンサイズのガスバブルからなる。ある実施の形態においては、平均バブルサイズは約0.4 mmから約1.5 mmの範囲である。ある実施の形態においては、結果としてできる分散物は約1 mm以下の平均バブルあるいは液滴サイズを有する。ある実施の形態においては、平均バブルサイズは約400 nm以下であり、ある場合には約100nm以下でもよい。多くの実施の形態においては、マイクロバブルの分散物は常圧において少なくとも15分の間、分散したままでいることが可能である。
【0130】
いったん分散されると、その結果できる分散物はライン19を介してHSD40を出て、図1に示されているように容器10の中へ供給される。容器10へ入るまえに反応物が均質に混合されている結果、触媒が存在しても、しなくても、大部分の化学反応がHSD40内で起きる。したがって、ある実施の形態においては、リアクタ/容器10は、主として付加価値製品から揮発性の反応生成物を加熱して分離するために使用される。別の場合には、あるいは追加的に、容器10は主要反応容器として機能し、そこで付加価値製品の大部分が製造される。容器/リアクタ10は連続あるいは半連続流れモードで駆動されるか、あるいはバッチモードで駆動される。容器10の内容物は加熱用および/あるいは冷却用の設備(例えば冷却用コイル)と温度測定装置を使って、当該分野において周知の技術を用いて特定の反応温度に維持される。容器内の圧力は適当な圧力測定装置を用いてモニタされ、容器内の反応物のレベルはレベルレギュレータを使い、また当該分野の技術者に周知の技術を用いて制御される。内容物は連続的に、あるいは半連続的に攪拌される。
【0131】
温度や圧力、空間速度(space velocity)、反応組成の条件は、所望の製品特性を得るために調節される。HSD40を使用することによって、反応物のよりよい相互作用とより均一な混合が可能となり、したがって可能なスループットおよび/あるいは製品産出量を増加させることが可能である。ある実施の形態においては、システム100の動作条件は、大気温度の、あるいはそれに近い温度と、大気圧力、あるいはそれに近い全体(global)圧力からなる。HSD40はロータの先端において高圧(例えば150,000 psi)を形成するため、反応の温度は高剪断が存在しない従来の反応システムに対して低下する。ある実施の形態においては、動作温度は、同じ反応に対して、従来の動作温度の約70%以下か、従来の温度の約60%以下か、従来の温度の約50%以下である。
【0132】
HSD40内の滞留時間は一般に短い。例えば、滞留時間はミリ秒の範囲が可能であり、約10、20、30、40、50、60、70、80、90、あるいは約100ミリ秒が可能であり、約100、200、300、400、500、600、700、800、あるいは約900ミリ秒が可能であり、秒の範囲が可能であり、その間の、任意の範囲が可能である。
【0133】
一般に知られた水素化反応条件を、触媒を用いてRRG中のオレフィンを水素化することによるアルコール製造を促進するための条件として用いることができる。反応条件に関して特定の制限はない。オレフィンの水素化は、逆反応、すなわちアルコールの脱水素化反応に対する平衡反応である。そして、低温および高圧が通常はアルコールの形成に対して有利である。しかし、好ましい条件は、特定の開始オレフィンに大いに依存する。反応速度の観点からは、より高温であることが好ましい。したがって、反応条件を単純に決定することは難しい。しかし、ある実施の形態においては、反応温度は約50℃から約350℃の範囲であり、好ましくは約100℃から約300℃の範囲である。さらに、反応圧力は約1から300大気の範囲であり、別の場合には約1から250大気の範囲である。
【0134】
もし反応を促進するために触媒を用いる場合には、それは水溶性あるいは非水溶性のスラリあるいはストリームとして容器10の中へ直接導入される。別の場合には、あるいは追加的に、触媒をシステム100中のどこか他のところに追加してもよい。例えば、触媒スラリをライン21の中へ注入してもよい。ある実施の形態においては、ライン21は新鮮なキャリアストリームおよび/あるいは容器10からのリサイクルストリームを収容している。
【0135】
反応物の大部分あるいは全体の動作温度は、それらの引火点以下に維持されることが望ましい。ある実施の形態においては、システム100の動作条件は、約50℃から約300℃の範囲の温度からなる。特定の実施の形態においては、容器10内の反応温度は特に約90℃から約220℃の範囲である。ある実施の形態においては、容器10内の反応圧力は約5 atmから約50 atmの範囲である。
【0136】
もし望むなら、分散物は容器10の中に流入するまえにさらに処理してもよい。容器10の中で反応(例えばオレフィン水素化)は続く。容器の内容物は連続的に、あるいは半連続的に攪拌され、反応物の温度は制御され(例えば熱交換器を用いて)、容器10内の流体レベルは標準的な方法を用いて調節される。反応は、特定の用途に応じて望ましいように、連続的か、半連続的か、バッチ的に行われる。
【0137】
軽質ガス、キャリア、触媒、および付加価値製品を分離する
方法250は、軽質ガス、キャリア、および付加価値製品を分離する段階500をさらに有する。キャリアが触媒でないか、別の触媒(例えば固体触媒)を利用する場合には、段階500は固体触媒を容器10内の他の成分から分離する段階をさらに有する。この分離は、容器10を介して、あるいは別の分離容器を介して行われる。製造された製品である軽質反応ガス、あるいはRRGの未反応成分はガスライン16を介してリアクタ10から流出する。ある実施の形態においては、このガス流はHSD40へリサイクルされる。当該分野において周知の任意の分離方法を用いて、軽質ガス、キャリア液体、触媒(もし存在すれば)、および付加価値製品を分離する。例えば、蒸気液体分離、固体/液体分離、蒸留、およびその他の分離手段の一つあるいは複数を用いて、HSD40および/あるいは容器10を出る所望の成分を分離する。
【0138】
軽質ガスに高剪断を加える
方法250は、軽質ガスに高剪断を加える段階600をさらに有する。軽質ガス16は、二酸化炭素、水素、メタン、およびその他の軽質成分からなる。ある実施の形態においては、軽質ガス16に高剪断を加える段階600は、FT触媒の存在のもとで軽質ガスを均質に混合する段階を有していて、FT製品が製造される。このようにして、FT液体炭化水素の気体−液体製造が行われる。任意の適当なFT触媒を利用することができる。高剪断FTプロセスは、米国特許No. 12/138,269に記載されているようにして実行される。そうした実施の形態においては、HSDの一部はFT触媒から形成されるか、それがコーティングされるか、FT触媒のスラリが循環されるか、あるいは容器10がFT触媒の固定床あるいはスラリベッドからなっている。
【0139】
軽質ガスに高剪断を加える段階600は、原油と軽質ガスを均質に混合する段階を有する。ある実施の形態においては、図14に示されているように、ライン16内のガスを、図14に示されているように原油のAPI比重を安定化し、かつ/あるいは変更する方法600Aにおいて利用する。この方法は、付随ガス、非付随ガス、図1の段階600からの軽質ガス、RRG、酸素化物、およびそれらの組み合わせから選択されるガスと原油を提供する段階601と、原油と選択されたガスに高剪断を加える段階602を有する。RRGは図9〜図13に関して説明したようにして得られる。付随ガスは図13に関して説明したようにして得られる。ここでの“非付随ガス”という語句は当該分野において周知の、油がない貯蔵器で得られるガスを指している。原油は、上の図10の段階304や図13の段階314に関して説明したようにして提供される。原油と選択されたガスには、上述したようにHSD40の中に導入することによって高剪断が加えられる。ある実施の形態においては、地球から付随ガスとともに抽出された原油はHSD40を介して均質に混合され(好ましくは圧力が低下するまえに)、その安定性/API比重が調節される。ある実施の形態においては、地球から抽出された原油(付随ガスがあろうが、なかろうが)はHSD40を介して非付随ガスと均質に混合されて、その安定性/API比重が調節される。原油を選択されたガスと均質に混合する段階は、一つあるいは複数のHSD40の中に原油を通す段階を有する。原油を選択されたガスと均質に混合する段階は、二つあるいはそれより多くのHSD40の中に原油を通す段階を有する。原油を選択されたガスと均質に混合する段階は、三つあるいはそれより多くのHSD40の中に原油を通す段階を有する。追加の選択ガスをそのあとの各HSDの中に導入してもよい。方法600Aを用いて、原油の中の揮発性成分を低減することによって、原油のAPI比重を変更および/あるいは原油を安定化してもよい。ある実施の形態においては、方法600Aによって原油のAPIは少なくとも1.5あるいは2の係数だけ増加させられる。ある実施の形態においては、原油のAPIは、方法600Aを介して約15から約30まで、約5から約20まで、あるいは約10から約20まで増加させられる。方法600Aを用いて、精製作業の間に望ましくないアスファルテン(asphaltenes)の生成を減らしてもよい。“アスファルテン”という用語は、二硫化炭素に可溶であるがパラフィンナフサには不溶であるようなアスファルト化合物を指している。
【0140】
ライン17を介して回収された付加価値製品は当該分野において周知のように、さらに処理される。例えば、付加価値製品は冷水と接触させられて、そこから硫酸が除去される。例えば酸素化物などの製品を、当該分野で周知のように使用し、かつ/あるいは分離する。分離された成分は要望に応じてリサイクルされる。
【0141】
二酸化炭素の低減(reduction)
ある実施の形態においては、二酸化炭素(RRGガスおよび温室ガスと考えられる)と水を付加価値製品に変換する。ある実施の形態においては、付加価値製品はメタノールなどのアルコールからなる。その他の実施の形態においては、付加価値製品はアルデヒドやケトン、およびその他の有機酸素化物からなる。
【0142】
ある実施の形態においては、二酸化炭素源は、電力プラントからの精製所関連ガス(RRG)であり、これは主としてN2、CO2、水、いくらかのO2、CO、硫黄、亜酸化窒素を含んでいる。不飽和、硫黄、および/あるいは酸素がほとんどないような石油精製の実施例においては、水素が存在する。ある実施の形態においては、二酸化炭素源は溶鉱炉ガスである。ある場合には、溶鉱炉ガスの主要組成は、46%の窒素、24%の一酸化炭素、26%の二酸化炭素、4%の水素、いくらかの酸素およびメタンである。ある実施の形態においては、二酸化炭素源はFCCオフガスである。ある場合には、FCCオフガスの主要組成は1.1%のH2、13.31%のN2、1.54%のCO、27.48%のCH4、22.94%のC2H4、23.35%のC2H6、2.11%のC3H6、0.4%のC3H8、4.61%のC4H8、0.27%のC4H10、および2.63%のC5+である。
【0143】
ある実施の形態においては、二酸化炭素は化石燃料(例えば石炭、天然ガス、石油)燃焼施設(FFBF)、あるいはそのいくつかのコンポーネントからのものである。ある場合には、化石燃料燃焼施設(FFBF)は電力プラントあるいは電力ステーションである。その他のある場合には、FFBFはバーナあるいは炉である。そうしたFFBFは当該分野の技術者には周知のものである。この発明は、FFBFを、そのサイズや機能の目的、あるいは動作機構で区別をするものではない。
【0144】
ある実施の形態においては、二酸化炭素と水の変換は生体触媒物質(例えば酵素)によって促進される。ある実施の形態においては、反応は電子触媒的な方法によって促進される。ある場合には、二酸化炭素と水はメタノールに変換される。
【0145】
ある実施の形態においては、二酸化炭素と水の変換は上述したように、生体触媒物質(例えば酵素)を無機触媒と組み合わせて促進される。ある場合には、二酸化炭素と水は、アルコール、アルデヒド、ケトン、およびその他の有機酸素化物に変換される。
【0146】
理論的に制限したいわけではないが、二酸化炭素と水との間の反応は、高剪断条件のもとでH2OとCO2からのフリーラジカルの生成を介して加速される。さらに、高剪断によって生じる均質な混合とキャビテーション効果によって物質移動制限は低下し、反応速度は増加する。
【0147】
この発明の原理を例証し、実証する目的のために、種々の寸法、サイズ、量、容積、速度、およびその他の数値的なパラメータや数を使用してきた。これらは、この発明を、ここで図示や説明した、あるいはそれ以外にここで述べた数値パラメータおよび数に限定しようとするものではない。同様に、特に断らない限り、段階の順番は重要ではない。以下で述べる実施の形態の様々な教示は、所望の結果を得るために、別々に、あるいは任意の適当な組み合わせで用いることができる。
【0148】
マルチパス動作
図1に示された実施の形態においては、システムはシングルパス動作の構造になっており、HSD40で製造された製品はフローライン17に沿って続いていく。HSD40の出力はそのあとのHSDの中に流される。ある実施の形態においては、フローライン19の内容物、あるいはその一部は、第2のパスではHSD40の中に送ることが望ましい。この場合には、フローライン19の内容物の少なくとも一部をフローライン19からリサイクルし、ポンプ5によってライン13の中に、またそこからHSD40の中に圧送する。追加の反応物を、ライン22を介してライン13の中に注入してもよいし、HSDの中へ直接追加してもよい。他の実施の形態においては、製品はその一部をHSD40へリサイクルするまえにさらに処理される。
【0149】
マルチHSD
ある実施の形態においては、HSD40に似た、あるいはそれと異なる構造のHSDを二つ、あるいはそれより多く直列に配置して使用し、反応をさらに促進する。ミキサの動作はバッチモードか、連続モードかのどちらかである。シングルパスすなわち“一度の通過”プロセスが望ましい場合には、直列の多数のHSDを使用することも利点がある。ある実施の携帯においては、反応物は直列あるいは並列の、多数のHSD40の中を通過する。ある実施の形態においては、アウトレットライン19内の反応物は第2のHSDの中に供給される。多数のHSDを直列、あるいは並列に動作させるときは、追加の反応物および/あるいはキャリア(液体あるいは気体の)が各HSDのインレット供給ストリームの中に注入される。例えば、水素や二酸化炭素、および/あるいは一酸化炭素などの異なる分散可能なガスが第2の、あるいはそのあとのHSD40の中に導入される。ある実施の形態においては、酸素化物からなるガスがインレット供給ストリームの中に注入される。例えば、一酸化炭素、二酸化炭素、酸素、軽質アルコール、あるいはそれらの組み合わせからなるガスが、直列あるいは並列に配置されたHSDそれぞれのインレットの中に注入される。
【0150】
例えば、第1のHSD40を使用して、エチレンおよび/あるいはエタンからなるFCCオフガスからなるRRGを、エタノールおよび/あるいは他の酸素化物および/あるいはより大きな炭化水素からなる製品に変換する。HSD40の中に残った、あるいは製造されたガスは、軽質製品ガスのアウトレットライン16を介して容器10から出る。軽質ガスのインレットライン16内のガスは、HSD40へリサイクルされるか、液体キャリアといっしょに第2のHSDの中に導入される。軽質ガスのアウトレットライン16内の軽質ガスは、例えば水素からなる。軽質ガスのアウトレットライン16内の軽質ガスは、直列HSDの中に、例えば利用可能な別のRRGなどの追加ガスといっしょに導入される。追加ガスは例えば二酸化炭素、一酸化炭素、メタン、あるいはそれらの組み合わせからなる。例えば、一酸化炭素および/あるいは二酸化炭素はFCC触媒の再生から利用可能である。HSD40と、第2の、あるいはそのあとのHSDとでは、同じ触媒も異なる触媒も使用できる。触媒は、その中で処理されるガスに基づいて選択される。ある実施の形態においては、多数のHSD40が並列に動作し、そこからのアウトレット製品は一つあるいは複数のフローライン19の中に導入される。記載されている方法を用いた処理のあとに残ったガスは燃料として利用されるか、燃焼される。この量は、一般的な精製所で燃料あるいは燃焼でこれまで使用されている量よりも一般にずっと少ない。
【0151】
特徴
HSD40内における反応物の均質な接触の結果、反応物の反応はより速く、かつ/あるいはより完全になる。ある実施の形態においては、外部HSD40を介して反応物の混合を行うこの発明のプロセスを使用することで、従来の構造および方法よりも触媒の量を減らすことができ、かつ/あるいは製品の産出量および/あるいは反応物の変換が増加する。ある実施の形態においては、この方法は、外部HSD40を確立されたプロセスの中に組み込むことによって所望の反応を行うのに必要な触媒の量を減らす段階、および/あるいは例えば従来のスラリベッドリアクタ中の触媒を交換することに関連するダウンタイムを減らすことによって、HSD40なしで動作するプロセスからの生産スループットを増大させる段階を有する。ある実施の形態においては、この方法は操業コストを低減し、かつ/あるいは既存のプロセスからの生産を増大させる。別の場合には、この発明は新しいプロセスを設計する資本コストを低減できる。
【0152】
特定の理論に制限したいわけではないが、高剪断混合のレベルあるいは度合いは、物質移動の速度を増加させるとともに、局所的な非理想的条件(熱力学的な面で)を形成するのにも十分であると考えられる。局所的な非理想的条件は、ギッブス(Gibbs)の自由エネルギ予想に基づいては起きないと考えられる反応を起こさせる。局所的な非理想的条件がHSD内部で起き、その結果、温度および圧力が増加し、最も顕著な増加は局所化された圧力の中であると考えられる。HSD内におけるこの圧力と温度の増加は瞬時的で局所的であり、HSDを出ると全体的な(bulk)、あるいは平均的なシステム条件にすぐに戻る。理論的に制限したいわけではないが、ある場合には、HSDは十分な強度のキャビテーションを誘起して、反応物の一つあるいは複数をフリーラジカルに解離させ、それによって化学反応を強めたり、そうでないときに必要とされるよりも緩い条件で反応を起こさせたりする。キャビテーションは、局所的乱流や液体の微小循環(音響ストリーミング)を発生させることによって、輸送プロセスの速度も増加させる。化学的/物理的処理用途におけるキャビテーション現象の応用に関する概観が、ゴゲイト(Gogate)らによる“Cavitation:A technology on the horizon”、CurrentScience 91(No. 1): 35-46 (2006)に記載されている。この発明のシステムおよび方法によるある実施の形態のHSDはキャビテーションを誘起し、それによって一つあるいは複数の反応物がフリーラジカルに解離し、それらが反応する。ある実施の形態においては、ロータ/ステータの先端における極めて大きな圧力によって液相反応が起き、キャビテーションは行われない。
【0153】
例
以下の節では、様々な実施の形態に関するさらなる詳細を述べる。
【0154】
CO2と原油が高剪断ユニットの中に通され、水とCO2を用いてアルコールが形成される(高剪断:1000 rpm;90℃および100 psigでCO2を用いるリアクタ)。
【0155】
可能なメカニズム:CO2がルテニウムカルボニルと反応してルテニウム酸化物を形成し、これがCOと水との反応に触媒作用を施して、水素およびより多くの二酸化炭素を発生する。つぎに、水素は一酸化炭素と反応してメタノールを発生する(CO+2H2=CH3OH)。この反応は、おそらく、製造されたルテニウム酸化物によって触媒作用を施される。
【0156】
ガスクロマトグラフィ(GC)によるサンプルの水相(aqueous phase)分析によって、サンプルの水相はおよそ65%のメタノールを含んでいることが明らかになる。
ガスクロマトグラフィ(GC)の仕様(モデル アジレント 6850;検出器:TCD)
カラム モデルアジレン(Model Agilen) 19095N-123E
AP-INNOWax ポリエチレングリコール(Polyethylene Glycol)
キャピラリティ(Capilarity) 30.0 m ×530 m×1 mm 名目
動作条件 インレット温度 175 C
キャリアガス ヘリウム
カラム圧力 3.99 psi
オーブン温度 75 C 保持時間 6 分
流速 4.7 ml/min
【0157】
この発明の実施の形態を示して説明してきたが、当該分野の技術者にはこの発明の精神および教示から逸脱することなくその修正は可能であろう。ここで説明した実施の形態は単に例であり、発明を制限するものではない。ここに開示されているこの発明に対する多くの変形および修正が発明の範囲内で可能である。数値の範囲あるいは制限が明確に述べられているところでは、そうした明確な範囲あるいは制限は、その明確に述べられている範囲あるいは制限内にある同様の大きさを反復した範囲あるいは制限を含むものと理解すべきである(例えば約1から約10は、2、3、4などを含む;0.1以上は0.11、0.12、0.13などを含む)。請求項の任意の要素に関して“オプションとして”という用語の使用は、問題の要素が必要であったり、別の場合には必要でなかったりすることを意味している。両方が請求項の範囲内であることを意図している。なる、含む、有するなどのより広義の用語の使用は、構成される、本質的に構成される、ほぼ構成されている、などのより狭義の用語をサポートしている。
【0158】
したがって、保護の範囲は上述した記述によって制限されるのではなく、以下の請求項によってのみ制限される。請求項の範囲は請求項の主題となる内容のすべての等価物を含んでいる。それぞれの、またすべての請求項はこの発明の実施の形態として明細書に組み込まれている。したがって、請求項はこの発明の実施の形態に対するさらなる説明であり、追加である。ここで述べたことを補足する例示的、手続き的、あるいはその他の詳細を提供してくれる範囲で、ここに引用されているすべての特許、特許願、および出版物の内容は参考のために組み込まれている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
精製所関連ガスから付加価値製品を製造する方法であって、
(a)C1-C8化合物とその組み合わせから構成されるグループから選択される少なくとも一つの化合物からなる精製所関連ガスを提供する段階と、
(b)前記精製所関連ガスを高剪断装置の中で液体キャリアと均質に混合して、液体キャリアの中にガスの分散物を形成する段階と、
(c)より大きな炭化水素、オレフィン、アルコール、アルデヒド、およびケトンから構成されるグループから選択される少なくとも一つの成分からなる付加価値製品を抽出する段階と、
を有し、前記分散物中のガスバブルが約5ミクロンより小さいか、あるいは等しい平均直径を有する方法。
【請求項2】
前記精製所関連ガスが、熱分解ガス、FCCオフガス、付随ガス、水素化脱硫オフガス、コーカオフガス、接触分解オフガス、サーマルクラッカオフガス、およびその組み合わせから構成されるグループから選択される請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記C1-C8化合物が二酸化炭素からなる請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記アルコールが、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、およびプロパノールから構成されるグループから選択される請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記段階(b)が、精製所関連ガスとキャリアを触媒に接触させる段階をさらに有する請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記触媒が、リン酸、スルホン酸、硫酸、ゼオライト、固体酸触媒、および液体酸触媒から構成されるグループから選択される少なくとも一つの成分からなる請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記キャリアが触媒である請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記キャリアが硫酸からなる請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記キャリアが水からなる請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記段階(c)が、キャリアと付加価値製品から軽質ガスを分離する段階を有する請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記キャリアと精製所関連ガスを、水素化触媒、水酸化触媒、部分酸化触媒、水素化脱硫触媒、水素化脱窒素触媒、水素化仕上(hydrofinishing)触媒、改質触媒、水和触媒、水素化分解触媒、フィッシャー・トロプシュ(Fischer-Tropsch)触媒、脱水素化触媒、および重合触媒から構成されるグループから選択される触媒と接触させる段階を有する請求項1記載の方法。
【請求項12】
原油のAPI比重を増大させる方法であって、
原油と、酸素化物、付随ガス、非付随ガス、請求項10からの軽質ガスおよびそれらの組み合わせから構成されるグループから選択されたガスを、少なくとも一つのロータと少なくとも一つのステータからなる高剪断装置の中へ導入する段階と、
前記ロータを回転して、少なくとも22.9 m/sの先端速度を提供する段階と、
を有する方法。
【請求項13】
前記API比重が少なくとも1.5倍だけ増大させられる請求項12記載の方法。
【請求項14】
精製所関連ガスから付加価値製品を製造するためのシステムであって、
少なくとも一つのロータと、少なくとも一つの相補的な形状のステータとからなる少なくとも一つの高剪断装置と、
C1−C8化合物の一つあるいは複数からなる精製所関連ガスを製造するための装置と、
液体キャリアからなる液体ストリームを高剪断装置へ供給するためのポンプと、
を有し、前記高剪断装置が、液体キャリアの中に精製所関連ガスのバブルからなる分散物を形成するようなシステム。
【請求項15】
前記高剪断装置へ連結された容器を有し、この容器が前記高剪断装置から分散物を受容するようになっている請求項14記載のシステム。
【請求項16】
前記少なくとも一つのロータが少なくとも22.9 m/s (4,500 ft/min)の先端速度で回転可能であり、Dをロータの直径、nを回転周波数としたとき前記先端速度がpDnで定義される請求項14記載のシステム。
【請求項17】
前記少なくとも一つのロータが前記少なくとも一つのステータから、約0.02 mmから約5 mmの範囲の剪断ギャップだけ離間されており、前記剪断ギャップが前記少なくとも一つのロータと少なくとも一つのステータとの間の最小距離である請求項14記載のシステム。
【請求項18】
前記少なくとも一つのロータが、動作中に少なくとも20,000 s−1の剪断速度を提供することができ、この剪断速度が先端速度を剪断ギャップで割ったものとして定義され、Dをロータの直径、nを回転周波数としたとき前記先端速度がpDnで定義される請求項14記載のシステム。
【請求項19】
一つより多くの高剪断装置からなる請求項14記載のシステム。
【請求項20】
前記高剪断装置が少なくとも二つのジェネレータからなり、各ジェネレータが、ロータと、相補的な形状のステータとからなる請求項14記載のシステム。
【請求項21】
前記精製所関連ガスを製造するための装置が、有機分子をより簡単な分子に分解するクラッカからなる請求項14記載のシステム。
【請求項22】
前記精製所関連ガスを製造するための装置が、精油所あるいはそのいくつかのコンポーネント、化石燃料燃焼施設、あるいはそのいくつかのコンポーネントからなる請求項14記載のシステム。
【請求項23】
前記化石燃料燃焼施設が電力プラントあるいは電力ステーションである請求項22記載のシステム。
【請求項1】
精製所関連ガスから付加価値製品を製造する方法であって、
(a)C1-C8化合物とその組み合わせから構成されるグループから選択される少なくとも一つの化合物からなる精製所関連ガスを提供する段階と、
(b)前記精製所関連ガスを高剪断装置の中で液体キャリアと均質に混合して、液体キャリアの中にガスの分散物を形成する段階と、
(c)より大きな炭化水素、オレフィン、アルコール、アルデヒド、およびケトンから構成されるグループから選択される少なくとも一つの成分からなる付加価値製品を抽出する段階と、
を有し、前記分散物中のガスバブルが約5ミクロンより小さいか、あるいは等しい平均直径を有する方法。
【請求項2】
前記精製所関連ガスが、熱分解ガス、FCCオフガス、付随ガス、水素化脱硫オフガス、コーカオフガス、接触分解オフガス、サーマルクラッカオフガス、およびその組み合わせから構成されるグループから選択される請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記C1-C8化合物が二酸化炭素からなる請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記アルコールが、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、およびプロパノールから構成されるグループから選択される請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記段階(b)が、精製所関連ガスとキャリアを触媒に接触させる段階をさらに有する請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記触媒が、リン酸、スルホン酸、硫酸、ゼオライト、固体酸触媒、および液体酸触媒から構成されるグループから選択される少なくとも一つの成分からなる請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記キャリアが触媒である請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記キャリアが硫酸からなる請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記キャリアが水からなる請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記段階(c)が、キャリアと付加価値製品から軽質ガスを分離する段階を有する請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記キャリアと精製所関連ガスを、水素化触媒、水酸化触媒、部分酸化触媒、水素化脱硫触媒、水素化脱窒素触媒、水素化仕上(hydrofinishing)触媒、改質触媒、水和触媒、水素化分解触媒、フィッシャー・トロプシュ(Fischer-Tropsch)触媒、脱水素化触媒、および重合触媒から構成されるグループから選択される触媒と接触させる段階を有する請求項1記載の方法。
【請求項12】
原油のAPI比重を増大させる方法であって、
原油と、酸素化物、付随ガス、非付随ガス、請求項10からの軽質ガスおよびそれらの組み合わせから構成されるグループから選択されたガスを、少なくとも一つのロータと少なくとも一つのステータからなる高剪断装置の中へ導入する段階と、
前記ロータを回転して、少なくとも22.9 m/sの先端速度を提供する段階と、
を有する方法。
【請求項13】
前記API比重が少なくとも1.5倍だけ増大させられる請求項12記載の方法。
【請求項14】
精製所関連ガスから付加価値製品を製造するためのシステムであって、
少なくとも一つのロータと、少なくとも一つの相補的な形状のステータとからなる少なくとも一つの高剪断装置と、
C1−C8化合物の一つあるいは複数からなる精製所関連ガスを製造するための装置と、
液体キャリアからなる液体ストリームを高剪断装置へ供給するためのポンプと、
を有し、前記高剪断装置が、液体キャリアの中に精製所関連ガスのバブルからなる分散物を形成するようなシステム。
【請求項15】
前記高剪断装置へ連結された容器を有し、この容器が前記高剪断装置から分散物を受容するようになっている請求項14記載のシステム。
【請求項16】
前記少なくとも一つのロータが少なくとも22.9 m/s (4,500 ft/min)の先端速度で回転可能であり、Dをロータの直径、nを回転周波数としたとき前記先端速度がpDnで定義される請求項14記載のシステム。
【請求項17】
前記少なくとも一つのロータが前記少なくとも一つのステータから、約0.02 mmから約5 mmの範囲の剪断ギャップだけ離間されており、前記剪断ギャップが前記少なくとも一つのロータと少なくとも一つのステータとの間の最小距離である請求項14記載のシステム。
【請求項18】
前記少なくとも一つのロータが、動作中に少なくとも20,000 s−1の剪断速度を提供することができ、この剪断速度が先端速度を剪断ギャップで割ったものとして定義され、Dをロータの直径、nを回転周波数としたとき前記先端速度がpDnで定義される請求項14記載のシステム。
【請求項19】
一つより多くの高剪断装置からなる請求項14記載のシステム。
【請求項20】
前記高剪断装置が少なくとも二つのジェネレータからなり、各ジェネレータが、ロータと、相補的な形状のステータとからなる請求項14記載のシステム。
【請求項21】
前記精製所関連ガスを製造するための装置が、有機分子をより簡単な分子に分解するクラッカからなる請求項14記載のシステム。
【請求項22】
前記精製所関連ガスを製造するための装置が、精油所あるいはそのいくつかのコンポーネント、化石燃料燃焼施設、あるいはそのいくつかのコンポーネントからなる請求項14記載のシステム。
【請求項23】
前記化石燃料燃焼施設が電力プラントあるいは電力ステーションである請求項22記載のシステム。
【図1】
【図2】
【図3−1】
【図3−2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3−1】
【図3−2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2013−500973(P2013−500973A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522978(P2012−522978)
【出願日】平成22年7月27日(2010.7.27)
【国際出願番号】PCT/US2010/043424
【国際公開番号】WO2011/017118
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(509218652)エイチ アール ディー コーポレーション (17)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月27日(2010.7.27)
【国際出願番号】PCT/US2010/043424
【国際公開番号】WO2011/017118
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(509218652)エイチ アール ディー コーポレーション (17)
【Fターム(参考)】
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