説明

糠漬装置

【課題】 一般家庭の糠床は、密閉されて保管されると共に、定期的に一様にかき混ぜられて空気と適度に接触する。これにより、嫌気性細菌と好気性細菌のバランスを適度に保っている。糠漬装置を実現させるためには、糠床を定期的に攪拌するだけでは不十分であり、糠床の密閉保管と、定期的な糠床と空気との一様な攪拌とを、実現しなくてはならない。
【解決手段】 糠床収納部の大きさを変更できる構成として、保管時には糠床収納部に糠床をほぼ密閉して保管すると共に、攪拌時には糠床収納部が拡大して空気との一様な攪拌を行う糠漬装置を提供する。具体的には、糠床収納容器内の半円筒状の内底面に沿って回転する2枚の回転板(7,8)間に糠床収納部を形成し、この2枚の回転板(7,8)の間隔が変更できるようして、攪拌時(回転時)に拡大可能としたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糠床収納容器内で回転部材を回転することによって糠床に空気を送る回転式糠漬装置に関する。
【背景技術】
【0002】
糠床収納容器内で回転部材を回転することによって糠床に空気を送る回転式糠漬装置がある。その一つとして、上面に開口を有し半円筒内周面を形成した容器の半円筒の中心軸方向に相対向する両端壁に両端部が回転自在に支承された支持軸を設け、この支持軸の外周方向の90°で離間する攪拌部を設け、この攪拌部相互間にある糠床にナス等の野菜を漬け込むものがある(特許文献1参照)。
【0003】
また、上面に漬け物の取り出し開口を有した上下方向円筒状の糠床容器の中心に立設した攪拌軸に攪拌羽根組立体が取り付けられ、モータによって攪拌羽根組立体が回転することによって糠床容器内の糠床を攪拌する構成がある(特許文献2参照)。この構成では、漬け込み材料の漬け込み中は、漬け込み材料の裁断防止のためにこの攪拌は行われない。
【0004】
また、上面に漬け物の取り出し開口を有した左右方向円筒状の糠床容器の中心軸に回転ロッドが設けられ、この回転ロッドの軸方向に所定間隔をおいて複数の棒状又は板状の攪拌部材が設けられ、ハンドルを回すことによって、回転ロッドが正回転又は逆回転して回転ロッドを軸方向へ進行又は後退させて、糠床容器内の糠床を攪拌するようにしたものがある(特許文献3参照)。
【0005】
特許文献1のものは、ハンドルの回転によって支持軸を回転させてその外周方向の90°で離間する攪拌部によって糠床を攪拌する。そして、ハンドルを回すことにより、漬け込んだ野菜を攪拌部によって開口部側へ移動できるため、箸によって取り出せば、糠床に手を差し入れることなく取り出せるようにしたものである。しかし、攪拌部は支持軸の外周方向に90°間隔に設けているため、この攪拌によって、攪拌部の外周端付近では糠床と空気との接触は得られ易いが、支持軸付近の糠床は支持軸周辺で回るため、空気との接触が悪くなることが考えられる。
【0006】
また特許文献2のものも、糠床容器の中心に立設した攪拌軸の周りを攪拌羽根が回転するため、糠床容器底部分の糠床は空気に触れ難く、空気との接触が悪くなることが考えられる。
【0007】
また特許文献3のものは、ハンドルを回すことによって、回転ロッドの外周に設けた複数の攪拌部材が糠床を攪拌するが、ハンドルの正回転又は逆回転にて回転ロッドを軸方向へ進行又は後退させる点で、特許文献1のものよりも糠床の攪拌の均一性が向上するであろうが、やはり回転ロッド付近の糠床は回転ロッド周辺で回るため、空気との接触が悪くなることが考えられる。
【特許文献1】特開平5‐199833号公報(段落0012〜0026、図1)
【特許文献2】特開2001‐292694号公報(段落0021〜0042、図1〜図4)
【特許文献3】特開2002‐58422号公報(段落0009〜0015、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の従来技術では、糠床収納部の大きさが一定であるため、糠床の量に応じてその大きさを変更できる構成ではない。糠漬けは、嫌気性細菌と好気性細菌のバランスを適度に保つために、糠床へ適度の空気供給が必要である。本発明は、このような点に鑑みて、糠床の量に応じて好ましい糠漬けができるように糠床収納部の大きさを変更できる構成とする。また、糠床の中心部まで空気と適度に接触することができる構成の回転式糠漬装置を提供するものである。
【0009】
また本発明は、漬け込み位置では糠床内に漬け込み材料を安定的に保持し、漬け込み材料の取り出し時には取り出し位置へ糠床を移動させることにより、糠床内から漬け込み材料を取り出し易くした回転式糠漬装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の回転式糠漬装置は、上面に漬け込み材料の取り出し開口を有し半円筒状の内底面を形成した糠床収納容器内に前記半円筒状の内底面に沿って回転する回転部材が配置された回転式糠漬装置において、前記回転部材は、電動機装置によって一方向に回転駆動される駆動回転板と、この駆動回転板の前方に位置してこの駆動回転板との間に糠床を挟持して前記半円筒状の内底面に沿った糠床収納部を形成するように配置された従動回転板を備え、前記駆動回転板の一回転中に前記糠床収納部を拡大するように前記従動回転板が先行回転することにより前記糠床収納部に収納された糠床に空気が供給される工程を具備したことを特徴とする。
【0011】
このように、駆動回転板の前方に位置してこの駆動回転板との間に糠床を挟持する従動回転板を備えるため、糠床収納部を糠床の量に適応した大きさに形成できる効果がある。そして、駆動回転板の一回転中に糠床収納部が拡大されて糠床に空気が供給されるため、糠床の中心部まで空気と適度に接触することができ、糠床の周辺部から中心部まで嫌気性細菌と好気性細菌のバランスを適度に保つことができるため、良好な漬け物を得ることができる。
【0012】
また本発明の回転糠漬装置は、上面に漬け込み材料の取り出し開口を有し半円筒状の内底面を形成した糠床収納容器内に前記半円筒状の内底面に沿って回転する回転部材が配置された回転式糠漬装置において、前記回転部材は、電動機装置によって所定回転方向へ駆動される駆動回転板と、前記所定回転方向の前方に位置して前記駆動回転板との間に糠床を挟持する従動回転板を備え、漬け込み位置では前記駆動回転板が略垂下方向に向くと共に前記従動回転板が横方向に向いて前記半円筒状の内底面に沿った糠床収納部を形成し、前記所定方向回転に伴って前記糠床収納部が前記漬け物の取り出し開口側に向くと共に、前記従動回転板は前記所定方向回転に伴い上向き状態から前記所定方向へ重力にて落下回転するように自由回転可能に支持されたことを特徴とする。
【0013】
このように、駆動回転板の前方に位置してこの駆動回転板との間に糠床を挟持する従動回転板を備えるため、糠床収納部を糠床の量に適応した大きさに形成できる効果がある。そして、駆動回転板の一回転中に糠床収納部が拡大されて糠床に空気が供給されるため、糠床の中心部まで空気と適度に接触することができ、糠床の周辺部から中心部まで嫌気性細菌と好気性細菌のバランスを適度に保つことができるため、良好な漬け物を得ることができる。また、糠床収納容器の円筒状の内底面に沿って駆動回転板と従動回転板との間に形成された糠床収納部は、電動機装置によってその位置が移動するため、漬け込み状態と漬け込み材料の取り出し状態の二つの状態制御を的確に行うことができ、漬け込み状態では糠床を安定保持でき、漬け込み材料を取り出すときには漬け込み材料の取り出し開口側に向く状態に回転させることによって漬け込み材料の取り出しが容易となる。
【0014】
また本発明の回転糠漬装置は、前記糠床収納容器内の糠床の温度を所定温度範囲に保つための冷却及び加熱の装置を備えたこと特徴とする。これによって、周囲温度の変化があ また本発明の回転糠漬装置は、前記従動回転板に操作用取っ手を設けたこと特徴とする。これによって、糠床を任意に混ぜる場合や、漬け込み材料の漬け込みや取り出しを容易に行えることとなる。
【0015】
また本発明の回転糠漬装置は、前記糠床収納容器の取り出し開口の内側に開閉自在な内蓋を設けたこと特徴とする。これによって、糠床収納容器の取り出し開口からの落下物が糠床に入り込むことの防止ができる。また、この内蓋の形状を駆動回転板と従動回転板の回転半径の外側に沿った上方に膨らんだ円弧状に形成することによって、これら回転部材の回転によって糠床や漬け込み材料の浮き上りを防止して、良好な回転を得ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、駆動回転板の前方に位置してこの駆動回転板との間に糠床を挟持する従動回転板を備えるため、糠床収納部を糠床の量に適応した大きさに形成できる効果がある。そして、駆動回転板の一回転中に糠床収納部が拡大されて糠床に空気が供給され、糠床の中心部まで空気と適度に接触することができ、糠床の周辺部から中心部まで嫌気性細菌と好気性細菌のバランスを適度に保つことができるため、良好な漬け物を得ることができる。
【0017】
また、請求項2の発明では、上記の効果に加えて、糠床収納容器の円筒状の内底面に沿って駆動回転板と従動回転板との間に形成された糠床収納部は、電動機装置によってその位置が移動するため、漬け込み状態と漬け込み材料の取り出し状態の二つの状態制御を的確に行うことができ、漬け込み状態では糠床を安定保持でき、漬け込み材料を取り出すときには漬け込み材料の取り出し開口側に向く状態に回転させることによって漬け込み材料の取り出しが容易となる。
【0018】
また、請求項3の発明では、上記の効果に加えて、周囲温度の変化があっても糠床を良好な状態に維持できるため、糠漬けの酸化や腐敗も防止できる。
請求項4の発明では、上記の効果に加えて、従動回転板を開くことにより、糠床を任意に混ぜる場合や、漬け込み材料の漬け込みや取り出しの作業を容易に行えることとなる。
請求項5の発明では、上記の効果に加えて、糠床収納容器の取り出し開口からの落下物が糠床に入り込むことの防止ができ、また、この内蓋の形状を駆動回転板と従動回転板の回転半径の外側に沿った上方に膨らんだ円弧状に形成することによって、これら回転部材の回転によって糠床や漬け込み材料の浮き上りを防止して、良好な回転を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、本発明の回転式糠漬装置について説明する。各図は本発明に係る回転式糠漬装置の実施形態を示しており、図1は本発明に係る回転式糠漬装置の斜視図、図2は本発明に係る回転式糠漬装置の漬け込み位置を示す断面図、図3は本発明に係る回転式糠漬装置の漬け込み材料の取り出し位置を示す断面図、図4は本発明に係る回転式糠漬装置の従動回転板が先行回転した状態を示す断面図、図5は図4の状態から駆動回転板が更に回転した状態を示す断面図、図6は本発明に係る駆動回転板と従動回転板の関係を示す斜視図、図7は部分断面によって本発明に係る電動機装置側の構成を示す説明図である。
【0020】
これらの図において、1は回転式糠漬装置であり、その本体1Aの上面に漬け込み材料Pの取り出し開口2を有して半円筒状の内底面3を形成した糠床収納容器4を備え、糠床収納容器4内には半円筒状の内底面3に沿って回転する回転部材5が配置され、回転部材5は電動機装置6によって回転駆動される仕組みである。回転部材5は、電動機装置6によって所定回転方向Rへ駆動される駆動回転板7と、駆動回転板7よりも所定回転方向Rの前方に位置した従動回転板8を備えている。
【0021】
駆動回転板7と従動回転板8は、その基部7A、8Bを回転軸9に保持されており、回転軸9は電動機装置6によって回転駆動される。駆動回転板7は回転軸9と一体回転するように回転軸9に固定されており、逆回転しない構成である。一方、従動回転板8は、回転軸9に正逆両方向に自由に回転するように保持されており、駆動回転板7と間隔を保つことにより、駆動回転板7と従動回転板8との間に円筒状の内底面3に沿った糠床収納部10を形成するように構成されている。
【0022】
本発明の回転糠漬装置1は、糠床収納容器4内の糠床Qの温度を所定温度範囲に保つための冷却及び加熱の装置40を備えている。この装置として、冷却装置と加熱装置とを別個に備えた場合、この冷却装置は、糠床収納容器4の外面に冷媒が流れる冷却パイプ41を配置した構成であり、この冷却装置は冷蔵庫と同様の原理で冷却する仕組みである。即ち、この冷媒パイプ41には圧縮機で圧縮した冷媒が凝縮器で凝縮した後、減圧器を通った冷媒が流入し、この冷媒が冷媒パイプ41内で蒸発することにより糠床収納容器4を冷却し、冷媒パイプ41を出た冷媒は再び圧縮機で圧縮されて上記の循環を行う仕組みである。この糠床収納容器4の冷却によってその中の糠床Qが冷却される。また、加熱装置は、電気ヒータ42を糠床収納容器4の外面に取り付けた構成である。
【0023】
糠床収納容器4に取り付けた温度検知器によって糠床Qの温度又は糠床収納容器4の温度を検知し、その検知に基づき制御回路によって前記圧縮機の運転のON、OFFと電気ヒータ42の通電のON、OFFを行うことにより、糠床Qの温度を所定の温度範囲に保つ制御を行う。これによって、周囲温度の変化があっても糠床を良好な状態に維持できるため、糠漬けの腐敗も防止できる。
【0024】
また、冷却及び加熱の装置40をペルチェ素子によって冷却と加熱が行える電子冷却システムによって構成することもできる。この場合、ペルチェ素子は、PN接合の複数の半導体素子で冷却加熱部を構成し、これを糠床収納容器4の外面に接合し、ペルチェ効果によって冷却と加熱が行える方式とする。そして、糠床収納容器4に取り付けた温度検知器によって糠床Qの温度又は糠床収納容器4の温度を検知し、その検知に基づき制御回路によって前記冷却加熱部が冷却状態となるか加熱状態となるかに前記ペルチェ素子への通電を切り替えることにより、糠床Qの温度を所定の温度範囲に保つ制御を行う。これによって、周囲温度の変化があっても糠床を良好な状態に維持できるため、糠漬けの腐敗も防止できる。
【0025】
従動回転板8には、従動回転板8を軸9の回りに回動させるための操作用取っ手45を設けている。これによって、従動回転板8を回動させて糠床収納部10を開くことによって、糠床を任意に混ぜる場合や、漬け込み材料の漬け込みや取り出しの作業を容易に行えることとなる。
【0026】
また、糠床収納容器4の取り出し開口2の内側に開閉自在な内蓋50を設けている。内蓋50によって、駆動回転板7と従動回転板8からなる回転部材5を上方から覆う。これによって、糠床収納容器4の取り出し開口2からの埃やその他の落下物が糠床Qに入り込むことを防止できる。また、この内蓋50の形状は、駆動回転板7と従動回転板8の回転半径の外側に沿った上方に膨らんだ円弧状に形成することによって、これら回転部材5の回転によって糠床Qや漬け込み材料Pの浮き上がりを防止して、良好な回転を得ることができる。内蓋50は、その下端部を糠床収納容器4の側壁に形成した段状の支え部51によって支持されており、内蓋50は上面の取っ手52を掴んで上方の取り出し開口2から取り出すことができる。内蓋50は、回転部材5の回転によって浮き上がらないように、糠床収納容器4に止め具によって保持できる構成とするか、内蓋50に所定の重量を持たせることができる。
【0027】
駆動回転板7と従動回転板8は、漬け込み材料Pの漬け込み位置では駆動回転板7が略垂下方向に向くと共に従動回転板8が横方向に向いて円筒状の内底面3に沿った糠床収納部10を形成するように構成している。駆動回転板7と従動回転板8との間に糠床収納部10が形成されるため、駆動回転板7と従動回転板8とが円筒状の内底面3に沿って任意の角度の糠床収納部10を形成できるようにしている。駆動回転板7と従動回転板8とが略90°に開いて糠床収納部10が形成された状態が図2に示す状態である。
【0028】
電動機装置6は、糠床収納部10と区画壁11で区画された機械室12に配置され、電動機13の回転が減速歯車装置14に伝達され、減速歯車装置14に連結した回転軸9が一方向へゆっくりと回転する構成である。回転軸9は、電動機装置6側が区画壁11に軸受け15で支持され、他方側は糠床収納部10の側壁の軸受け部に支持されている。
【0029】
糠床収納容器4の上面、即ち本体1Aの上面に形成した漬け込み材料Pの取り出し開口2は、開閉可能な蓋16を備え、この蓋16は、回転式糠漬装置1の本体1A上部にヒンジ装置によって開閉できる構成でもよく、また本体1Aから取り外すことができる構成でもよい。図のタイプは取り外し式蓋であり、上面に取っ手17を備え、下面には開口2に嵌り込む裏蓋部18を備えている。
【0030】
19は本体上面に設けた操作部であり、漬け込み開始スイッチ20、取り出しスイッチ21、攪拌スイッチ22、タイマースイッチ23と、これら各スイッチに対応した表示灯24〜27を備えている。また、回転式糠漬装置1の操作方法や、時刻や、回転式糠漬装置1の周囲の温度や、糠床収納容器4内の温度等のような適当な表示を液晶や有機EL等の構成によって行う表示部28と、電動機装置6の故障を表示する表示灯29も備えている。
【0031】
先ず、漬け込み材料Pを漬け込む場合は、漬け込み開始スイッチ20を押すことにより、表示灯24が点灯すると共に電動機装置6が始動して回転部材5が所定方向Rの回転を始め、図2に示すように駆動回転板7が略垂下した状態で停止する。この制御は、回転部材5の現在位置をスイッチ(図示せず)で検出し、漬け込み開始スイッチ20によって制御回路(図示せず)を介して電動機装置6が始動し、回転軸9が回転して図2の状態になったことを回転軸9に取り付けたカム32によって作動するスイッチ30が検出することにより、駆動回転板7が略垂下した図2の状態で電動機装置6が停止すると共に表示灯24が消灯するように前記制御回路にて制御される。この場合、糠床Qが収納されていない状態では従動回転板8が駆動回転板7の前方位置で略垂下した状態である。
【0032】
図2の状態では、駆動回転板7が垂下状態であるため、蓋16と内蓋50を開き、従動回転板8をその取っ手45を掴んで所定方向Rへ回動させて糠床収納部10を開く。この状態で、予め作った糠床Qを糠床収納部10に収納し、この糠床Q内に漬け込み材料Pとして茄子、きゅうり、その他の野菜類を漬け込む。この漬け込み後に糠床Qの上面を従動回転板8で閉じ、そして内蓋50と蓋16を閉じる。
【0033】
図2の状態は、漬け込み材料Pが糠床Q内に漬け込まれた状態であり、これを漬け込み位置、又は漬け込み中の位置と称することとする。この漬け込み位置では、糠床収納部10に十分な量の糠床Qが収納されている場合には、略垂下方向に向いた駆動回転板7と略水平方向の従動回転板8との間に、糠床収納容器4の円筒状の内底面3に沿って縦断面が扇型の糠床収納部10を形成している。
【0034】
漬け込み材料Pの種類によって糠床Q内での漬け込み時間が異なる。漬け込み材料Pの漬け込みが終了した頃合いを見計らって、取り出しスイッチ21を押すことによって、表示灯25が点灯すると共に電動機装置6が始動し、回転軸9が所定方向Rへ回転を始め、それと共に駆動回転板7が所定方向Rへ回転し、従動回転板8は糠床Qによって押されつつ所定方向Rへ回転する。この回転によって図3又は図4の状態になったことを回転軸9に取り付けたカム33によって作動するスイッチ31が検出することにより、電動機装置6が停止すると共に表示灯25が消灯するように前記制御回路にて制御される。この図3又は図4の状態は糠床収納部10が取り出し開口2側に向いた取り出し位置であり、この位置で糠床Qから漬け込み材料Pを取り出すことができる。
【0035】
漬け込み材料Pを取り出した後の糠床Qの補充や、漬け込み材料Pの補充は、上記のようにこの図3又は図4の状態で行うことができる。そしてその後、スイッチ20を押すことにより、上記と同様に、表示灯24が点灯すると共に電動機装置6が始動し、回転軸9が所定方向Rへ回転を始め、図4〜図5の状態を経て図2の漬け込み位置となる。なお、漬け込み材料Pの補充は、図2の状態で行うこともできる。
【0036】
上記において、電動機装置6が始動し、回転軸9が所定方向Rへ回転することによって、糠床収納部10が漬け込み材料Pの取り出し開口2側に向くように上昇する過程において、図4に示すように従動回転板8が重力、即ち従動回転板8の荷重及び後述の錘36によって駆動回転板7の回転に先んじて回転する。このため、糠床収納部10は大きく拡大され、糠床の補充や漬け込み材料Pの取り出しがし易い状態となる。そして、この状態によって、糠床Qは図4に示すように駆動回転板7側と従動回転板8側とに分割されるため、この分割された糠床Qの表面は空気に晒され、糠床Q内への空気供給状態となる。そして図4の状態から駆動回転板7の回転に伴って分割された糠床Qは再び図5のように接合する。図4の状態から図5の状態へ移行する間に駆動回転板7側の糠床に一部は重力によって従動回転板8側の糠床上に落下することがある。
【0037】
このように、駆動回転板7の一回転中に糠床収納部10を拡大するように従動回転板8が先行回転することにより、糠床収納部10に収納された糠床Qに空気を供給する工程を有する。図4の状態から図5の状態を経て図2の状態へ移行する間に、糠床Q内に入った空気を圧縮しつつ余分な空気は排除される。このように糠床Qに空気を供給し余分な空気を排除し糠床を圧縮するため、この一連の工程は糠床の攪拌工程又は空気供給工程と称することができる。
【0038】
本発明では、上記の他に、糠床Qの攪拌を行うためには、例えば図2の状態において攪拌スイッチ22を押すことにより、表示灯26が点灯すると共に電動機装置6が始動して駆動回転板7の回転と共に従動回転板8が回転して、図3、図4、図5の状態を経て図2の状態に帰還する一回転を行う。糠床Qの攪拌が更に良好になるためには、この一回転を複数回繰り返せばよいため、攪拌スイッチ22を1回押すことにより、前記制御回路によって、所定回数の回転が継続するようにすることができる。この回転が終了したとき表示灯26は消灯する。このような攪拌工程の制御は、攪拌スイッチ22を押した後、カム32によって作動するスイッチ30の作動の1回又は所定回数を前記制御回路が検出することによって、一回転又は所定回数の回転が行われるように制御する。
【0039】
タイマー機能によって定期的に糠床Qの攪拌を行うためには、タイマースイッチ23を押す。スイッチ23を押すことにより表示灯27が点灯し、前記制御回路のタイマー装置が作動して所定時間間隔で電動機装置6が始動し、駆動回転板7の回転と共に従動回転板8が回転して、図3、図4、図5の状態を経て図2の状態に帰還する一回転又は複数回転を行い、表示灯27が消灯して終わる。このタイマー装置による定期的攪拌の中止は、途中でスイッチ23をもう1度押すことにより表示灯27が消灯して図2の状態で終わる。
【0040】
上記では従動回転板8が重力によって落下するようにしたが、これに拘束されず、糠床収納部10が漬け込み材料Pの取り出し開口2側に向くように上昇してから、従動回転板8が駆動回転板7の回転に先んじて回転するように軸9との関係を形成した構成としたものでもよい。
【0041】
上記では、漬け込み位置では駆動回転板7が略垂下方向に向くと共に従動回転板8が横方向に向いて円筒状の内底面3に沿った糠床収納部10を形成するように構成して、駆動回転板7と従動回転板8とが略90°の間隔で開いた糠床収納部10を形成している。この場合、駆動回転板7と従動回転板8との間に形成される糠床収納部10の大きさは、駆動回転板7と従動回転板8とのなす角度が可変であり、駆動回転板7と従動回転板8とで挟まれる糠床の量によって糠床収納部10の大きさが自然に決まる。そして、糠床Qが従動回転板8によって押されることにより、糠床Qに適度の圧縮が得られその中の余分な空気が排出されることとなる。
【0042】
上記のように、駆動回転板7の前方に位置してこの駆動回転板7との間に糠床Qを挟持して円筒状の内底面3に沿った糠床収納部10を形成するように配置された従動回転板8を備えているため、糠床収納部10を糠床Qの量に適応した大きさに形成できる効果がある。
【0043】
また、駆動回転板7の一回転中に糠床収納部10が拡大されて糠床Qに空気が供給されるため、糠床Qの中心部まで空気と適度に接触することができ、糠床の周辺部から中心部まで嫌気性細菌と好気性細菌のバランスを適度に保つことができるため、良好な漬け物を得ることができる。また、糠床Qは電動機装置6によって回転駆動され、手動で回転させる方式に比して糠床の攪拌を容易にすると共に、漬け物の取り出し位置に正確に停止させる制御ができるものとなる。また、糠床収納容器4の円筒状の内底面3に沿って駆動回転板7と従動回転板8との間に形成された糠床収納部10は、電動機装置6によってその位置が移動するため、漬け込み状態と漬け物の取り出し状態の二つ状態制御を的確に行うことができ、漬け込み状態では糠床を安定保持でき、漬け物を取り出すときには漬け物の取り出し開口側に向く状態に回転させることによって、漬け物の取り出しが容易となる。
【0044】
なお、従動回転板8による糠床Qの押し圧力は、従動回転板8に錘36を設けることによって調節することができる。錘36は一定重量のものを従動回転板8に固定した構成でもよいが、漬け込み材料Pに応じて錘36の種類を選択できるようにするために、複数種の錘36を付属品として備えておき、漬け込み材料Pに応じてその一つを選択的に従動回転板8に取り付け可能な構成とするものでもよい。
【0045】
本体1Aは、糠床収納容器4と外板34との間に断熱材35を充填した構成とすることによって、糠床Qが周囲温度による影響を受け難くなるため、糠床Qの温度管理がし易くなり、安定した糠漬けを造ることができる。また、蓋16も断熱構造とすることにより、より温度管理がしやすい構成となる。
【0046】
本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の技術的範囲を逸脱しない限り種々の変更が考えられ、それに係る種種の実施形態を包含するものである。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係る回転式糠漬装置の斜視図である。
【図2】本発明に係る回転式糠漬装置の漬け込み位置を示す断面図である。
【図3】本発明に係る回転式糠漬装置の漬け物取り出し位置を示す断面図である。
【図4】本発明に係る回転式糠漬装置の従動回転板が先行回転した状態を示す断面図である。
【図5】図4の状態から駆動回転板が更に回転した状態を示す断面図である。
【図6】本発明に係る駆動回転板と従動回転板の関係を示す斜視図である。
【図7】部分断面によって本発明に係る電動機装置側の構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0048】
1・・・回転式糠漬装置
1A・・・本体
2・・・取り出し開口
3・・・半円筒状の内底面
4・・・糠床収納容器
5・・・回転部材
6・・・電動機装置
7・・・駆動回転板
8・・・従動回転板
9・・・回転軸
10・・糠床収納部
13・・電動機
16・・蓋
36・・錘
40・・冷却及び加熱の装置
45・・従動回転板の取っ手
50・・内蓋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に漬け込み材料の取り出し開口を有し半円筒状の内底面を形成した糠床収納容器内に前記半円筒状の内底面に沿って回転する回転部材が配置された回転式糠漬装置において、前記回転部材は、電動機装置によって一方向に回転駆動される駆動回転板と、この駆動回転板の前方に位置してこの駆動回転板との間に糠床を挟持して前記半円筒状の内底面に沿った糠床収納部を形成するように配置された従動回転板を備え、前記駆動回転板の一回転中に前記糠床収納部を拡大するように前記従動回転板が先行回転することにより前記糠床収納部に収納された糠床に空気が供給される工程を具備したことを特徴とする回転式糠漬装置。
【請求項2】
上面に漬け込み材料の取り出し開口を有し半円筒状の内底面を形成した糠床収納容器内に前記半円筒状の内底面に沿って回転する回転部材が配置された回転式糠漬装置において、前記回転部材は、電動機装置によって所定回転方向へ駆動される駆動回転板と、前記所定回転方向の前方に位置して前記駆動回転板との間に重力にて糠床を挟持する従動回転板を備え、漬け込み位置では前記駆動回転板が略垂下方向に向くと共に前記従動回転板が横方向に向いて前記半円筒状の内底面に沿った糠床収納部を形成し、前記所定方向回転に伴って前記糠床収納部が前記漬け物の取り出し開口側に向くと共に、前記従動回転板は前記所定方向回転に伴い上向き状態から前記所定方向へ重力にて落下回転するように自由回転可能に支持されたことを特徴とする回転式糠漬装置。
【請求項3】
前記糠床収納容器内の糠床の温度を所定温度範囲に保つための冷却及び加熱の装置を備えたこと特徴とする請求項1又は2に記載の回転式糠漬装置。
【請求項4】
前記従動回転板に操作用取っ手を設けたこと特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の回転式糠漬装置。
【請求項5】
前記糠床収納容器の取り出し開口の内側に開閉自在な内蓋を設けたこと特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の回転式糠漬装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−187302(P2006−187302A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−110360(P2006−110360)
【出願日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【分割の表示】特願2003−165422(P2003−165422)の分割
【原出願日】平成15年6月10日(2003.6.10)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】