糸条の糸継ぎ方法と糸条の糸継ぎ装置ならびに糸条の糸継ぎ装置を備えた自動ワインダ装置
【課題】糸条の継ぎ目部分が目立たず、染めムラも生じない糸継ぎ方法とその糸継ぎ装置ならびに該糸継ぎ装置を備えた自動ワインダ装置を提供することを目的とする。
【解決手段】糸条1に液化したワックスを供給し、前記糸条1の外周で凝固させることによってワックス被覆域1AR・1BRを形成し、前記ワックス被覆域1AR・1BRの中途部を切断して得た糸端部1M・1N同士を互いに突き合わせて、接着剤を用いることにより2本の糸条1を継ぐようにした。
【解決手段】糸条1に液化したワックスを供給し、前記糸条1の外周で凝固させることによってワックス被覆域1AR・1BRを形成し、前記ワックス被覆域1AR・1BRの中途部を切断して得た糸端部1M・1N同士を互いに突き合わせて、接着剤を用いることにより2本の糸条1を継ぐようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸条の糸継ぎ方法と糸条の糸継ぎ装置ならびに糸条の糸継ぎ装置を備えた自動ワインダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、糸条を継ぐ技術として、2本の糸条を結ぶノッティング方式や、2本の糸端部を揃えた後に旋回気流を用いることで撚り上げるエアスプライサ方式等が知られている。ノッティング方式では、継ぎ目の強度に優れるものの結び目ができるために、この結び目を裏地に押し込む作業等が必要であった。また、エアスプライサ方式では、撚り上げて継ぐために、継ぎ目は目立たないものの強度に劣る場合や染めムラが生じる場合がある等の問題点があった。
【0003】
そこで、2本の糸条の糸端部同士を突き合わせて、突き合わせ部分に接着剤を供給することで糸条を継ぐ糸継ぎ方法が提案されている(例えば特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−12232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示す糸継ぎ方法では、糸条の外周に付着した接着剤が硬化することによって糸条の継ぎ目部分が太くなり目立つ場合や、糸条の外周の接着剤によって染色不良が発生して染めムラが生じる場合があった。
【0006】
本発明は、かかる問題を解決すべくなされたものであり、糸条の継ぎ目部分が目立たず、染めムラも生じない糸継ぎ方法と糸条の糸継ぎ装置ならびに糸条の糸継ぎ装置を備えた自動ワインダ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
次に、この課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、第1の発明は、2本の糸条を継ぎ合わせる糸継ぎ方法であって、前記糸条の糸端面を除く外周をワックスで覆った糸端部同士を互いに突き合わせて、接着剤を用いることにより2本の糸条を継ぐものである。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、前記糸条に液化したワックスを供給し、前記糸条の外周で凝固させることによってワックス被覆域を形成し、前記ワックス被覆域の中途部を切断して得た糸端部同士を互いに突き合わせて、接着剤を用いることにより2本の糸条を継ぐものである。
【0010】
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記糸端部同士を互いに突き合わせた後に、前記接着剤を供給することで2本の糸条を継ぐものである。
【0011】
第4の発明は、第1または第2の発明において、前記接着剤を一方または双方の前記糸端部に供給した後に、前記糸端部同士を互いに突き合わせて2本の糸条を継ぐものである。
【0012】
第5の発明は、第1から第4のいずれかに記載の発明において、前記接着剤は、光硬化性の接着剤としたものである。
【0013】
第6の発明は、2本の糸条を継ぎ合わせる糸継ぎ装置であって、前記糸条の糸端面を除く外周をワックスで覆った糸端部同士を互いに突き合わせて、接着剤を用いることにより2本の糸条を継ぐものである。
【0014】
第7の発明は、第6の発明において、前記糸条に液化したワックスを供給するワックス供給装置と、前記ワックスが前記糸条の外周で凝固して形成されたワックス被覆域の中途部を切断するカッターと、前記糸条を継ぐために接着剤を供給する接着剤供給装置とを備え、前記ワックス被覆域の中途部で前記カッターにより切断して得た前記糸条の糸端部同士を互いに突き合わせて、接着剤を用いることにより2本の糸条を継ぐものである。
【0015】
第8の発明は、第6または第7の発明において、前記接着剤は、光硬化性の接着剤としたものである。
【0016】
第9の発明は、第6から第8のいずれかに記載の糸継ぎ装置を備えた自動ワインダ装置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0018】
第1の発明によれば、糸条の外周に接着剤が付着しないために、2本の糸条の継ぎ目部分が太くならず、染色不良も発生しない糸条を得ることができる。
【0019】
第2の発明によれば、糸端面を除く外周をワックスで覆った糸端部を容易に得ることができて、糸条の外周に接着剤が付着しないために、2本の糸条の継ぎ目部分が太くならず、染色不良も発生しない糸条を得ることができる。
【0020】
第3の発明によれば、2本の糸条の糸端部を突き合わせた後に接着剤を供給するために、接着剤を即座に硬化することができて糸継ぎにかかる時間を短縮できる。
【0021】
第4の発明によれば、接着剤を糸端面に確実に付着させた後に糸端部を突き合わせて継ぐために継ぎ目の強度にバラツキが生じない。
【0022】
第5の発明によれば、接着剤を硬化させる光源の点灯時期を調整することで、接着剤の硬化時期を調節できる。
【0023】
第6の発明によれば、糸条の外周に接着剤が付着しないために、2本の糸条の継ぎ目部分が太くならず、染色不良も発生しない糸継ぎを行うことができる。
【0024】
第7の発明によれば、糸端面を除く外周をワックスで覆った糸端部を容易に得ることができて、糸条の外周に接着剤が付着しないために、2本の糸条の継ぎ目部分が太くならず、染色不良も発生しない糸継ぎを行うことができる。
【0025】
第8の発明によれば、接着剤を硬化させる光源の点灯時期を調整することで、接着剤の硬化時期を調節することが可能となり、糸種等に応じた糸継ぎを行うことができる。
【0026】
第9の発明によれば、糸条の欠点部を除去できるとともに、2本の糸条を継ぐ際に糸条の外周に接着剤が付着しないために継ぎ目部分が太くならず、染色不良も発生しない糸継ぎを行うことができて、良好な糸条の品質を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る糸継ぎ方法の工程を示すフロー図。
【図2】本発明に係る糸継ぎ方法のワックス供給工程S110を示す図。
【図3】本発明に係る糸継ぎ方法の切断工程S120を示す図。
【図4】本発明に係る糸継ぎ方法の突き合わせ工程S130を示す図。
【図5】本発明に係る糸継ぎ方法の接着剤供給工程S140を示す図。
【図6】本発明に係る糸継ぎ方法の硬化処理工程S150を示す図。
【図7】本発明に係る自動ワインダ装置100を示す右側面図。
【図8】本発明に係る自動ワインダ装置100の動作を示すフロー図。
【図9】本発明に係る自動ワインダ装置100の糸条1の切断時を示す図。
【図10】本発明に係る自動ワインダ装置100の配置動作S230を示す図。
【図11】本発明に係る自動ワインダ装置100の配置動作S230を示す図。
【図12】本発明に係る糸継ぎ装置3を示す図。
【図13】本発明に係る糸継ぎ装置3の工程を示すフロー図。
【図14】本発明に係る糸継ぎ装置3のクランプ動作S241を示す図。
【図15】本発明に係る糸継ぎ装置3のワックス供給動作S242を示す図。
【図16】本発明に係る糸継ぎ装置3の切断動作S243を示す図。
【図17】本発明に係る糸継ぎ装置3の突き合わせ動作S244を示す図。
【図18】本発明に係る糸継ぎ装置3の接着剤供給動作S245を示す図。
【図19】本発明に係る糸継ぎ装置3の硬化処理動作S246を示す図。
【図20】本発明に係る糸継ぎ装置3の糸継ぎ動作の終了後を示す図。
【図21】本発明に係る糸端部1M(1N)の構造を示す図。
【図22】(22a)従来の糸条1の継ぎ目を示す図。(22b)本発明に係る糸条1の継ぎ目を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
まず、図1から図6を用いて、本発明に係る糸継ぎ方法について説明する。
【0029】
図1に示すように、本発明の糸継ぎ方法は、主にワックス供給工程S110、切断工程S120、突き合わせ工程S130、接着剤供給工程S140、硬化処理工程S150から成る。
【0030】
ワックス供給工程S110は、2本の糸条Yに対して液化したワックスを供給し、ワックスの被覆を形成する工程である。
【0031】
図2に示すように、クランプCLに挟持されたそれぞれの糸条Yにワックスを供給し、供給されたワックスは、糸条Yの外周に付着した後に凝固することでワックス被覆域Wを形成する。このとき、ワックスの温度や供給量を糸種に応じて適切なものとすることで、糸条Yを構成する繊維の隙間には浸透せずに外周のみでワックスが凝固される。
【0032】
切断工程S120は、2本の糸条Yのそれぞれをワックスの被覆とともに切断する工程である。
【0033】
図3に示すように、2本の糸条Yに形成された、それぞれのワックス被覆域Wの中途部で、カッターCによってワックスの被覆とともに糸条Yが切断される。これにより、それぞれの糸条Yの糸端部YEは、外周にはワックスの被覆が形成されて、糸端面YFにはワックスの被覆がない構造となる。
【0034】
突き合わせ工程S130は、上記の切断工程S120で得られた糸端部YE同士をそれぞれ突き合わせて、配置する工程である。
【0035】
図4に示すように、それぞれの糸条Yを挟持する一方又は双方のクランプCLは、糸条Yを挟持した状態で移動し、それぞれの糸端部YE同士を突き合わせるように配置する。このとき、一方の糸端面YFと他方の糸端面YFの距離は可能な限り狭められる。
【0036】
接着剤供給工程S140は、上記の突き合わせ工程S130で配置された糸条Yの突き合わせ部分に対して接着剤を供給する工程である。
【0037】
図5に示すように、一方の糸端部YEならびに他方の糸端部YEの突き合わせ部分に、接着剤が供給される。このとき、接着剤はワックスに弾かれるために糸条Yの外周には付着せずにワックスで被覆されていない糸端面YFにのみ付着し、近接して配置されている2本の糸条Yの各糸端面YFによって保持される。つまり、接着剤は、一方の糸端面YFから他方の糸端面YFへ表面張力によって架け渡される。
【0038】
硬化処理工程S150は、2本の糸条Yの間に介在する接着剤を硬化させる工程である。
【0039】
図6に示すように、接着剤が硬化する波長に応じた光源Lにより接着剤に対して光が照射される。これにより、一方の糸端面YFから他方の糸端面YFへ架け渡されていた接着剤が硬化することで2本の糸条Yは継がれることになる。
【0040】
本実施形態では、互いの糸端部YE同士を突き合わせるように配置した後に接着剤を供給しているが、一方又は双方の糸端部YEに接着剤を供給した後に突き合わせるようにしても良い。また、本実施形態では、光硬化性の接着剤を用いているが所定の時間の経過により硬化するものや、熱硬化性のものであっても良い。
【0041】
次に、図7を用いて本発明に係る自動ワインダ装置100を説明する。これらの図面は、重力の作用方向を上下方向とし、図示右方を前側とした右側面図となっている。
【0042】
図7に示すように、自動ワインダ装置100は、給糸ボビン6から供給された糸条1に欠点が発見された場合に、当該欠点部1E(図12参照。)のみを切断、除去することによって糸品質を整えるものである。
【0043】
自動ワインダ装置100には、糸条1の送り方向に沿って、主にバルーンコントローラ2、糸継ぎ装置3、ヤーンクリアラー4、及び綾振ドラム5等が備えられている。また、糸条1の糸道近傍には上糸用サクションアーム8及び下糸用サクションアーム9が備えられている。
【0044】
バルーンコントローラ2は、糸条1に対して巻き始めから巻き終わりまで常に適切な張力を掛けることにより糸条1の高速巻取りを可能とするものである。
【0045】
糸継ぎ装置3は、糸条1の欠点部1Eの切断及び除去を行い、切断されて分割した糸条1を継ぎ合わせるものである。
【0046】
ヤーンクリアラー4は、糸条1の欠点部1Eを検出するものである。ヤーンクリアラー4は、図示しない制御部に電気的に接続されており、例えば発光ダイオードを光源として糸条1からの反射光量を検出することで、異物混入等の欠点部1Eの有無を判断するものである。
【0047】
綾振ドラム5は、図示しないモータにより回転駆動することで、糸条1を巻き取るパッケージ7を従動回転させるとともに、糸条1を綾振することでパッケージ7に巻き取る際の偏りを防ぐものである。
【0048】
上糸用サクションアーム8は、自動ワインダ装置100の本体部に回動可能に軸着された吸気ダクトである。上糸用サクションアーム8の先端部には、空気吸い込み口8aが設けられており、該空気吸い込み口8aより空気を吸引することによって糸条1を吸着して保持することができる。また、上糸用サクションアーム8は、糸条1を保持したまま回動することにより、糸継ぎ時における所定の位置に糸条1を配置する。
【0049】
下糸用サクションアーム9は、自動ワインダ装置100の本体部に回動可能に軸着された吸気ダクトである。下糸用サクションアーム9の先端部には、空気吸い込み口9aが設けられており、該空気吸い込み口9aより空気を吸引することによって糸条1を吸着して保持することができる。また、下糸用サクションアーム9は、糸条1を保持したまま回動することにより、糸継ぎ時における所定の位置に糸条1を配置する。
【0050】
以下では、図8から図11までを用いて、自動ワインダ装置100の糸継ぎ時における動作態様について説明する。
【0051】
図8に示すように、自動ワインダ装置100は糸継ぎ時において、主に検出動作S210、切断動作S220、配置動作S230、糸継ぎ動作S240等を行う。
【0052】
検出動作S210は、給糸ボビン6から供給される糸条1の欠点部1Eを検出する動作である。
【0053】
給糸ボビン6から供給された糸条1は、バルーンコントローラ2、糸継ぎ装置3、ヤーンクリアラー4、綾振ドラム5を順次介してパッケージ7に巻き取られる。このとき、ヤーンクリアラー4は、巻き取られていく糸条1の欠点部1Eの有無を常に判断しており、異物混入等の欠点部1Eは、前述のように糸条1からの反射光量が変化することにより検出される。
【0054】
切断動作S220は、糸条1の欠点部1Eを検出した際に当該糸条1を切断する動作である。
【0055】
図9に示すように、ヤーンクリアラー4が反射光量の変化を検出した際、つまり、欠点部1Eを検出した際には、即座にヤーンクリアラー4近傍に備えられた図示しないカッターが糸条1を切断し、綾振ドラム5の回転を停止する制御が行われる。これにより、糸条1の切断部より下流側である上糸1Aはパッケージ7に巻き取られた状態、糸条1の切断部より上流側である下糸1Bは下糸用サクションアーム9に保持された状態となる。なお、欠点部1Eの検出と糸条1の切断の時間差によって該欠点部1はヤーンクリアラー4を通過することになるために、欠点部1Eは上糸1Aとしてパッケージ7に巻き取られている。
【0056】
配置動作S230は、上糸1A及び下糸1Bを糸継ぎ装置3の所定の位置へ配置する動作である。
【0057】
図10に示すように、パッケージ7に巻き取られた上糸1Aの糸端は、上糸用サクションアーム8を上方へ回動(図示反時計回転)することで、上糸用サクションアーム8の空気吸い込み口8aに吸引されて、保持されることになる。
【0058】
そして、図11に示すように、上糸1Aの糸端を保持した状態で上糸用サクションアーム8を下方へ回動(図示時計回転)することで、上糸1Aは糸継ぎ装置3の所定の位置へ配置されることとなる。なお、上糸1Aの糸端は、上糸用サクションアーム8により吸引されているために上下方向に張架された状態となる。
【0059】
一方、図11に示すように、下糸用サクションアーム9に保持されている下糸1Bは、該下糸1Bを保持した状態で下糸用サクションアーム9を上方へ回動(図示反時計回転)することで糸継ぎ装置3の所定の位置へ配置されることとなる。なお、下糸1Bは、下糸用サクションアーム9により吸引されているために上下方向に張架された状態となる。
【0060】
詳細には、上糸1Aは、後述するクランプ10Aを構成する一対のアーム部材の間を通るように上糸用サクションアーム8によって配置され、下糸1Bは、後述するクランプ10Bを構成する一対のアーム部材の間を通るように下糸用サクションアーム9によって配置される。また、上糸1Aならびに下糸1Bは互いに平行に配置される。
【0061】
糸継ぎ動作S240は、糸継ぎ装置3によって所定の位置に配置された上糸1Aと下糸1Bとを継ぐ動作である。糸継ぎ装置3の構成と糸継ぎ動作については以下に説明する。
【0062】
図12に本発明に係る糸継ぎ装置3を示す。なお、本図は、上述したように上糸1Aならびに下糸1Bが所定位置に配置された状態を示している。
【0063】
糸継ぎ装置3は、主に各糸1A・1Bを挟持するクランプ10A・10Bと、各糸1A・1Bにワックスを供給するワックス供給装置20A・20Bと、各糸1A・1Bを切断するカッター30A・30Bと、各糸1A・1Bを継ぐための接着剤を供給する接着剤供給装置40と、接着剤を硬化させるための光源50とから構成され、基台60に配置される。
【0064】
クランプ10A・10Bは、対向するように配置された一対のアーム部材から構成されて、該アーム部材を開閉自在に駆動することで各糸1A・1Bを挟持可能とするものである。
【0065】
ワックス供給装置20A・20Bは、常温域では固体であるワックスを適温に暖めることにより液化させるワックス溶解部21A・21Bと、この液化したワックスを糸条に供給するワックス供給ノズル22A・22Bから構成されて、ワックスを各糸1A・1Bの外周で凝固させることによってワックスの被覆を形成するものである。
【0066】
カッター30A・30Bは、セラミック素材を用いた刃物であって各糸1A・1Bを切断するものである。
【0067】
接着剤供給装置40は、接着剤供給ノズル41を備えて、上糸1Aと下糸1Bを継ぐ際に、接着剤を供給するものである。本実施形態では、光硬化性の接着剤を用いているために、後述する光源50の点灯時期を調節することによって接着時期を調節可能としている。
【0068】
光源50は、接着剤が硬化する波長に応じた発光ダイオード等であって、光硬化性の接着剤を硬化させるために接着剤供給装置40の近傍に配置されている。
【0069】
これらは基台60の上に設けられて、図示しない制御部とそれぞれに電気的に接続されており、該制御部からの電気信号を受けて可動される。
【0070】
以下では、図13から図20までを用いて、糸継ぎ装置3による糸継ぎ工程を時経列に説明する。
【0071】
図13に示すように、糸継ぎ装置3は、主にクランプ動作S241、ワックス供給動作S242、切断動作S243、突き合わせ動作S244、接着剤供給動作S245、硬化処理動作S246を行う。
【0072】
クランプ動作S241は、上糸1Aならびに下糸1Bを各クランプ10A・10Bにより挟持する動作である。
【0073】
図14において、上糸1Aならびに下糸1Bは、クランプ10Aならびにクランプ10Bがそれぞれ閉駆動することによって挟持される。なお、上糸1Aの糸端部分にある欠点部1Eは、上糸用サクションアーム8の空気吸い込み口8aとクランプ10Aの間に位置することとなる。
【0074】
ワックス供給動作S242は、上糸1Aならびに下糸1Bに対して液化したワックスを供給し、ワックスの被覆を形成する動作である。
【0075】
図15において、上糸1Aを挟持しているクランプ10Aの近傍であって、該クランプ10Aより下方に位置するように設けられたワックス供給ノズル22Aから、液化したワックスが上糸1Aに供給される。また、下糸1Bを挟持しているクランプ10Bの近傍であって、該クランプ10Bより上方に位置するように設けられたワックス供給ノズル22Bから、液化したワックスが下糸1Bに供給される。
【0076】
このワックスは、適温に暖められているためにワックス供給ノズル22A・22Bから供給される際には液状であるが、各糸1A・1Bの外周に付着した後に冷えると凝固する。これによって、上糸1Aならびに下糸1Bにそれぞれワックス被覆域1AR・1BRが形成される。
【0077】
切断動作S243は、上糸1Aならびに下糸1Bのそれぞれをワックスの被覆とともに切断する動作である。
【0078】
図16において、各ワックス供給ノズル22A・22Bの近傍には、カッター30A・30Bがそれぞれ備えられており、各ワックス被覆域1AR・1BRの中途部でワックスの被覆とともに上糸1Aならびに下糸1Bが切断される。これにより、上糸1Aを挟持するクランプ10Aの下方にあった欠点部1Eは、上糸用サクションアーム8の空気吸い込み口8aに吸引されて除去されることとなる。
【0079】
こうして得られた上糸1Aの糸端部1Mならびに下糸1Bの糸端部1Nは、図21に示すように、外周にワックスの被覆が形成されて、その糸端面1m・1nにはワックスが付着していない構造となっている。なお、各糸1A・1Bにワックスを供給する際には、ワックスの温度や供給量を適切なものとすることで、各糸1A・1Bを構成する繊維の隙間には浸透せず、外周のみでワックスが凝固される。
【0080】
突き合わせ動作S244は、上記の切断動作S243で得られた上糸1Aならびに下糸1Bの糸端部同士をそれぞれ突き合わせて、配置する動作である。
【0081】
図17において、上糸1Aを挟持するクランプ10Aは、上糸1Aを挟持した状態で水平に基台60に沿って移動され、下糸1Bを挟持するクランプ10Bは、下糸1Bを挟持した状態で上方へ基台60に沿って移動されて、各糸端部1M・1Nが突き合わされた状態に配置される。このとき、糸端部1Mの糸端面1mと糸端部1Nの糸端面1nの距離は可能な限り狭められ、例えば糸継ぎ装置3の精度が許す程度とされる。
【0082】
接着剤供給動作S245は、突き合わせるように配置された上糸1Aならびに下糸1Bの糸端部に対して接着剤を供給する動作である。
【0083】
図18において、各糸端部1M・1Nの突き合わせ部分に接着剤供給ノズル41から接着剤が供給される。このとき、接着剤はワックスに弾かれるために各糸1A・1Bの外周には付着せずにワックスで被覆されていない糸端面1m・1nにのみ付着し、近接して配置されている両糸端面1m・1nによって保持される。つまり、接着剤は、一方の糸端面1mから他方の糸端面1nへ表面張力によって架け渡されることになる。
【0084】
硬化処理動作S246は、上糸1Aの糸端面1mならびに下糸1Bの糸端面1nの間に介在する接着剤を硬化させる動作である。
【0085】
図19において、接着剤の供給から時期を計って光源50を点灯させることで、接着剤は各糸端面1m・1nを横架した状態のままで硬化されて、各糸1A・1Bは継がれることになる。
【0086】
その後、図20に示すように、上糸1Aと下糸1Bが継がれて構成された糸条1は、各クランプ10A・10Bが開駆動されてから再び送り出され、再びパッケージ7に巻き取られていくこととなる。
【0087】
なお、本実施形態では、糸端部1M・1Nを突き合わせた後に接着剤を供給するように構成しているが、一方又は双方の糸端部1M・1Nに接着剤を供給した後に突き合わせるようにしても良い。また、本実施形態では、光硬化性の接着剤を用いているが所定の時間の経過により硬化するものや、熱硬化性のものであっても良い。
【0088】
こうして継がれた糸条1の継ぎ目を図22(b)に模式的に示す。なお、図22(a)は従来の糸継ぎ方法で継がれた継ぎ目を示している。本発明による糸継ぎ装置により継がれた糸条1の継ぎ目は従来の継ぎ目と比較して、糸端面1m・1nのみで接着されているために継ぎ目が太くなることがなく、糸条1の外周に接着剤が付着することもない。なお、糸条1の外周に凝固しているワックスは、その後の工程で行われる洗浄等により除去されるために最終工程を経た製品に残留することはない。
【0089】
これにより、各糸1A・1Bの外周に接着剤が付着せず、糸端面1m・1nにのみ供給できるために継ぎ目が目立たず、染めムラが生じない糸条1を得ることが可能となる。
【符号の説明】
【0090】
100 自動ワインダ装置
Y 糸条
W ワックス被覆域
C カッター
CL クランプ
YE 糸端部
YF 糸端面
1 糸条
1A 上糸
1B 下糸
1M・1N 糸端部
1m・1n 糸端面
1AR・1BR ワックス被覆域
1E 欠点部
3 糸継ぎ装置
10A・10B クランプ
20A・20B ワックス供給装置
22A・22B ワックス供給ノズル
30A・30B カッター
40 接着剤供給装置
41 接着剤供給ノズル
50 光源
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸条の糸継ぎ方法と糸条の糸継ぎ装置ならびに糸条の糸継ぎ装置を備えた自動ワインダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、糸条を継ぐ技術として、2本の糸条を結ぶノッティング方式や、2本の糸端部を揃えた後に旋回気流を用いることで撚り上げるエアスプライサ方式等が知られている。ノッティング方式では、継ぎ目の強度に優れるものの結び目ができるために、この結び目を裏地に押し込む作業等が必要であった。また、エアスプライサ方式では、撚り上げて継ぐために、継ぎ目は目立たないものの強度に劣る場合や染めムラが生じる場合がある等の問題点があった。
【0003】
そこで、2本の糸条の糸端部同士を突き合わせて、突き合わせ部分に接着剤を供給することで糸条を継ぐ糸継ぎ方法が提案されている(例えば特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−12232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示す糸継ぎ方法では、糸条の外周に付着した接着剤が硬化することによって糸条の継ぎ目部分が太くなり目立つ場合や、糸条の外周の接着剤によって染色不良が発生して染めムラが生じる場合があった。
【0006】
本発明は、かかる問題を解決すべくなされたものであり、糸条の継ぎ目部分が目立たず、染めムラも生じない糸継ぎ方法と糸条の糸継ぎ装置ならびに糸条の糸継ぎ装置を備えた自動ワインダ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
次に、この課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、第1の発明は、2本の糸条を継ぎ合わせる糸継ぎ方法であって、前記糸条の糸端面を除く外周をワックスで覆った糸端部同士を互いに突き合わせて、接着剤を用いることにより2本の糸条を継ぐものである。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、前記糸条に液化したワックスを供給し、前記糸条の外周で凝固させることによってワックス被覆域を形成し、前記ワックス被覆域の中途部を切断して得た糸端部同士を互いに突き合わせて、接着剤を用いることにより2本の糸条を継ぐものである。
【0010】
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記糸端部同士を互いに突き合わせた後に、前記接着剤を供給することで2本の糸条を継ぐものである。
【0011】
第4の発明は、第1または第2の発明において、前記接着剤を一方または双方の前記糸端部に供給した後に、前記糸端部同士を互いに突き合わせて2本の糸条を継ぐものである。
【0012】
第5の発明は、第1から第4のいずれかに記載の発明において、前記接着剤は、光硬化性の接着剤としたものである。
【0013】
第6の発明は、2本の糸条を継ぎ合わせる糸継ぎ装置であって、前記糸条の糸端面を除く外周をワックスで覆った糸端部同士を互いに突き合わせて、接着剤を用いることにより2本の糸条を継ぐものである。
【0014】
第7の発明は、第6の発明において、前記糸条に液化したワックスを供給するワックス供給装置と、前記ワックスが前記糸条の外周で凝固して形成されたワックス被覆域の中途部を切断するカッターと、前記糸条を継ぐために接着剤を供給する接着剤供給装置とを備え、前記ワックス被覆域の中途部で前記カッターにより切断して得た前記糸条の糸端部同士を互いに突き合わせて、接着剤を用いることにより2本の糸条を継ぐものである。
【0015】
第8の発明は、第6または第7の発明において、前記接着剤は、光硬化性の接着剤としたものである。
【0016】
第9の発明は、第6から第8のいずれかに記載の糸継ぎ装置を備えた自動ワインダ装置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0018】
第1の発明によれば、糸条の外周に接着剤が付着しないために、2本の糸条の継ぎ目部分が太くならず、染色不良も発生しない糸条を得ることができる。
【0019】
第2の発明によれば、糸端面を除く外周をワックスで覆った糸端部を容易に得ることができて、糸条の外周に接着剤が付着しないために、2本の糸条の継ぎ目部分が太くならず、染色不良も発生しない糸条を得ることができる。
【0020】
第3の発明によれば、2本の糸条の糸端部を突き合わせた後に接着剤を供給するために、接着剤を即座に硬化することができて糸継ぎにかかる時間を短縮できる。
【0021】
第4の発明によれば、接着剤を糸端面に確実に付着させた後に糸端部を突き合わせて継ぐために継ぎ目の強度にバラツキが生じない。
【0022】
第5の発明によれば、接着剤を硬化させる光源の点灯時期を調整することで、接着剤の硬化時期を調節できる。
【0023】
第6の発明によれば、糸条の外周に接着剤が付着しないために、2本の糸条の継ぎ目部分が太くならず、染色不良も発生しない糸継ぎを行うことができる。
【0024】
第7の発明によれば、糸端面を除く外周をワックスで覆った糸端部を容易に得ることができて、糸条の外周に接着剤が付着しないために、2本の糸条の継ぎ目部分が太くならず、染色不良も発生しない糸継ぎを行うことができる。
【0025】
第8の発明によれば、接着剤を硬化させる光源の点灯時期を調整することで、接着剤の硬化時期を調節することが可能となり、糸種等に応じた糸継ぎを行うことができる。
【0026】
第9の発明によれば、糸条の欠点部を除去できるとともに、2本の糸条を継ぐ際に糸条の外周に接着剤が付着しないために継ぎ目部分が太くならず、染色不良も発生しない糸継ぎを行うことができて、良好な糸条の品質を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る糸継ぎ方法の工程を示すフロー図。
【図2】本発明に係る糸継ぎ方法のワックス供給工程S110を示す図。
【図3】本発明に係る糸継ぎ方法の切断工程S120を示す図。
【図4】本発明に係る糸継ぎ方法の突き合わせ工程S130を示す図。
【図5】本発明に係る糸継ぎ方法の接着剤供給工程S140を示す図。
【図6】本発明に係る糸継ぎ方法の硬化処理工程S150を示す図。
【図7】本発明に係る自動ワインダ装置100を示す右側面図。
【図8】本発明に係る自動ワインダ装置100の動作を示すフロー図。
【図9】本発明に係る自動ワインダ装置100の糸条1の切断時を示す図。
【図10】本発明に係る自動ワインダ装置100の配置動作S230を示す図。
【図11】本発明に係る自動ワインダ装置100の配置動作S230を示す図。
【図12】本発明に係る糸継ぎ装置3を示す図。
【図13】本発明に係る糸継ぎ装置3の工程を示すフロー図。
【図14】本発明に係る糸継ぎ装置3のクランプ動作S241を示す図。
【図15】本発明に係る糸継ぎ装置3のワックス供給動作S242を示す図。
【図16】本発明に係る糸継ぎ装置3の切断動作S243を示す図。
【図17】本発明に係る糸継ぎ装置3の突き合わせ動作S244を示す図。
【図18】本発明に係る糸継ぎ装置3の接着剤供給動作S245を示す図。
【図19】本発明に係る糸継ぎ装置3の硬化処理動作S246を示す図。
【図20】本発明に係る糸継ぎ装置3の糸継ぎ動作の終了後を示す図。
【図21】本発明に係る糸端部1M(1N)の構造を示す図。
【図22】(22a)従来の糸条1の継ぎ目を示す図。(22b)本発明に係る糸条1の継ぎ目を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
まず、図1から図6を用いて、本発明に係る糸継ぎ方法について説明する。
【0029】
図1に示すように、本発明の糸継ぎ方法は、主にワックス供給工程S110、切断工程S120、突き合わせ工程S130、接着剤供給工程S140、硬化処理工程S150から成る。
【0030】
ワックス供給工程S110は、2本の糸条Yに対して液化したワックスを供給し、ワックスの被覆を形成する工程である。
【0031】
図2に示すように、クランプCLに挟持されたそれぞれの糸条Yにワックスを供給し、供給されたワックスは、糸条Yの外周に付着した後に凝固することでワックス被覆域Wを形成する。このとき、ワックスの温度や供給量を糸種に応じて適切なものとすることで、糸条Yを構成する繊維の隙間には浸透せずに外周のみでワックスが凝固される。
【0032】
切断工程S120は、2本の糸条Yのそれぞれをワックスの被覆とともに切断する工程である。
【0033】
図3に示すように、2本の糸条Yに形成された、それぞれのワックス被覆域Wの中途部で、カッターCによってワックスの被覆とともに糸条Yが切断される。これにより、それぞれの糸条Yの糸端部YEは、外周にはワックスの被覆が形成されて、糸端面YFにはワックスの被覆がない構造となる。
【0034】
突き合わせ工程S130は、上記の切断工程S120で得られた糸端部YE同士をそれぞれ突き合わせて、配置する工程である。
【0035】
図4に示すように、それぞれの糸条Yを挟持する一方又は双方のクランプCLは、糸条Yを挟持した状態で移動し、それぞれの糸端部YE同士を突き合わせるように配置する。このとき、一方の糸端面YFと他方の糸端面YFの距離は可能な限り狭められる。
【0036】
接着剤供給工程S140は、上記の突き合わせ工程S130で配置された糸条Yの突き合わせ部分に対して接着剤を供給する工程である。
【0037】
図5に示すように、一方の糸端部YEならびに他方の糸端部YEの突き合わせ部分に、接着剤が供給される。このとき、接着剤はワックスに弾かれるために糸条Yの外周には付着せずにワックスで被覆されていない糸端面YFにのみ付着し、近接して配置されている2本の糸条Yの各糸端面YFによって保持される。つまり、接着剤は、一方の糸端面YFから他方の糸端面YFへ表面張力によって架け渡される。
【0038】
硬化処理工程S150は、2本の糸条Yの間に介在する接着剤を硬化させる工程である。
【0039】
図6に示すように、接着剤が硬化する波長に応じた光源Lにより接着剤に対して光が照射される。これにより、一方の糸端面YFから他方の糸端面YFへ架け渡されていた接着剤が硬化することで2本の糸条Yは継がれることになる。
【0040】
本実施形態では、互いの糸端部YE同士を突き合わせるように配置した後に接着剤を供給しているが、一方又は双方の糸端部YEに接着剤を供給した後に突き合わせるようにしても良い。また、本実施形態では、光硬化性の接着剤を用いているが所定の時間の経過により硬化するものや、熱硬化性のものであっても良い。
【0041】
次に、図7を用いて本発明に係る自動ワインダ装置100を説明する。これらの図面は、重力の作用方向を上下方向とし、図示右方を前側とした右側面図となっている。
【0042】
図7に示すように、自動ワインダ装置100は、給糸ボビン6から供給された糸条1に欠点が発見された場合に、当該欠点部1E(図12参照。)のみを切断、除去することによって糸品質を整えるものである。
【0043】
自動ワインダ装置100には、糸条1の送り方向に沿って、主にバルーンコントローラ2、糸継ぎ装置3、ヤーンクリアラー4、及び綾振ドラム5等が備えられている。また、糸条1の糸道近傍には上糸用サクションアーム8及び下糸用サクションアーム9が備えられている。
【0044】
バルーンコントローラ2は、糸条1に対して巻き始めから巻き終わりまで常に適切な張力を掛けることにより糸条1の高速巻取りを可能とするものである。
【0045】
糸継ぎ装置3は、糸条1の欠点部1Eの切断及び除去を行い、切断されて分割した糸条1を継ぎ合わせるものである。
【0046】
ヤーンクリアラー4は、糸条1の欠点部1Eを検出するものである。ヤーンクリアラー4は、図示しない制御部に電気的に接続されており、例えば発光ダイオードを光源として糸条1からの反射光量を検出することで、異物混入等の欠点部1Eの有無を判断するものである。
【0047】
綾振ドラム5は、図示しないモータにより回転駆動することで、糸条1を巻き取るパッケージ7を従動回転させるとともに、糸条1を綾振することでパッケージ7に巻き取る際の偏りを防ぐものである。
【0048】
上糸用サクションアーム8は、自動ワインダ装置100の本体部に回動可能に軸着された吸気ダクトである。上糸用サクションアーム8の先端部には、空気吸い込み口8aが設けられており、該空気吸い込み口8aより空気を吸引することによって糸条1を吸着して保持することができる。また、上糸用サクションアーム8は、糸条1を保持したまま回動することにより、糸継ぎ時における所定の位置に糸条1を配置する。
【0049】
下糸用サクションアーム9は、自動ワインダ装置100の本体部に回動可能に軸着された吸気ダクトである。下糸用サクションアーム9の先端部には、空気吸い込み口9aが設けられており、該空気吸い込み口9aより空気を吸引することによって糸条1を吸着して保持することができる。また、下糸用サクションアーム9は、糸条1を保持したまま回動することにより、糸継ぎ時における所定の位置に糸条1を配置する。
【0050】
以下では、図8から図11までを用いて、自動ワインダ装置100の糸継ぎ時における動作態様について説明する。
【0051】
図8に示すように、自動ワインダ装置100は糸継ぎ時において、主に検出動作S210、切断動作S220、配置動作S230、糸継ぎ動作S240等を行う。
【0052】
検出動作S210は、給糸ボビン6から供給される糸条1の欠点部1Eを検出する動作である。
【0053】
給糸ボビン6から供給された糸条1は、バルーンコントローラ2、糸継ぎ装置3、ヤーンクリアラー4、綾振ドラム5を順次介してパッケージ7に巻き取られる。このとき、ヤーンクリアラー4は、巻き取られていく糸条1の欠点部1Eの有無を常に判断しており、異物混入等の欠点部1Eは、前述のように糸条1からの反射光量が変化することにより検出される。
【0054】
切断動作S220は、糸条1の欠点部1Eを検出した際に当該糸条1を切断する動作である。
【0055】
図9に示すように、ヤーンクリアラー4が反射光量の変化を検出した際、つまり、欠点部1Eを検出した際には、即座にヤーンクリアラー4近傍に備えられた図示しないカッターが糸条1を切断し、綾振ドラム5の回転を停止する制御が行われる。これにより、糸条1の切断部より下流側である上糸1Aはパッケージ7に巻き取られた状態、糸条1の切断部より上流側である下糸1Bは下糸用サクションアーム9に保持された状態となる。なお、欠点部1Eの検出と糸条1の切断の時間差によって該欠点部1はヤーンクリアラー4を通過することになるために、欠点部1Eは上糸1Aとしてパッケージ7に巻き取られている。
【0056】
配置動作S230は、上糸1A及び下糸1Bを糸継ぎ装置3の所定の位置へ配置する動作である。
【0057】
図10に示すように、パッケージ7に巻き取られた上糸1Aの糸端は、上糸用サクションアーム8を上方へ回動(図示反時計回転)することで、上糸用サクションアーム8の空気吸い込み口8aに吸引されて、保持されることになる。
【0058】
そして、図11に示すように、上糸1Aの糸端を保持した状態で上糸用サクションアーム8を下方へ回動(図示時計回転)することで、上糸1Aは糸継ぎ装置3の所定の位置へ配置されることとなる。なお、上糸1Aの糸端は、上糸用サクションアーム8により吸引されているために上下方向に張架された状態となる。
【0059】
一方、図11に示すように、下糸用サクションアーム9に保持されている下糸1Bは、該下糸1Bを保持した状態で下糸用サクションアーム9を上方へ回動(図示反時計回転)することで糸継ぎ装置3の所定の位置へ配置されることとなる。なお、下糸1Bは、下糸用サクションアーム9により吸引されているために上下方向に張架された状態となる。
【0060】
詳細には、上糸1Aは、後述するクランプ10Aを構成する一対のアーム部材の間を通るように上糸用サクションアーム8によって配置され、下糸1Bは、後述するクランプ10Bを構成する一対のアーム部材の間を通るように下糸用サクションアーム9によって配置される。また、上糸1Aならびに下糸1Bは互いに平行に配置される。
【0061】
糸継ぎ動作S240は、糸継ぎ装置3によって所定の位置に配置された上糸1Aと下糸1Bとを継ぐ動作である。糸継ぎ装置3の構成と糸継ぎ動作については以下に説明する。
【0062】
図12に本発明に係る糸継ぎ装置3を示す。なお、本図は、上述したように上糸1Aならびに下糸1Bが所定位置に配置された状態を示している。
【0063】
糸継ぎ装置3は、主に各糸1A・1Bを挟持するクランプ10A・10Bと、各糸1A・1Bにワックスを供給するワックス供給装置20A・20Bと、各糸1A・1Bを切断するカッター30A・30Bと、各糸1A・1Bを継ぐための接着剤を供給する接着剤供給装置40と、接着剤を硬化させるための光源50とから構成され、基台60に配置される。
【0064】
クランプ10A・10Bは、対向するように配置された一対のアーム部材から構成されて、該アーム部材を開閉自在に駆動することで各糸1A・1Bを挟持可能とするものである。
【0065】
ワックス供給装置20A・20Bは、常温域では固体であるワックスを適温に暖めることにより液化させるワックス溶解部21A・21Bと、この液化したワックスを糸条に供給するワックス供給ノズル22A・22Bから構成されて、ワックスを各糸1A・1Bの外周で凝固させることによってワックスの被覆を形成するものである。
【0066】
カッター30A・30Bは、セラミック素材を用いた刃物であって各糸1A・1Bを切断するものである。
【0067】
接着剤供給装置40は、接着剤供給ノズル41を備えて、上糸1Aと下糸1Bを継ぐ際に、接着剤を供給するものである。本実施形態では、光硬化性の接着剤を用いているために、後述する光源50の点灯時期を調節することによって接着時期を調節可能としている。
【0068】
光源50は、接着剤が硬化する波長に応じた発光ダイオード等であって、光硬化性の接着剤を硬化させるために接着剤供給装置40の近傍に配置されている。
【0069】
これらは基台60の上に設けられて、図示しない制御部とそれぞれに電気的に接続されており、該制御部からの電気信号を受けて可動される。
【0070】
以下では、図13から図20までを用いて、糸継ぎ装置3による糸継ぎ工程を時経列に説明する。
【0071】
図13に示すように、糸継ぎ装置3は、主にクランプ動作S241、ワックス供給動作S242、切断動作S243、突き合わせ動作S244、接着剤供給動作S245、硬化処理動作S246を行う。
【0072】
クランプ動作S241は、上糸1Aならびに下糸1Bを各クランプ10A・10Bにより挟持する動作である。
【0073】
図14において、上糸1Aならびに下糸1Bは、クランプ10Aならびにクランプ10Bがそれぞれ閉駆動することによって挟持される。なお、上糸1Aの糸端部分にある欠点部1Eは、上糸用サクションアーム8の空気吸い込み口8aとクランプ10Aの間に位置することとなる。
【0074】
ワックス供給動作S242は、上糸1Aならびに下糸1Bに対して液化したワックスを供給し、ワックスの被覆を形成する動作である。
【0075】
図15において、上糸1Aを挟持しているクランプ10Aの近傍であって、該クランプ10Aより下方に位置するように設けられたワックス供給ノズル22Aから、液化したワックスが上糸1Aに供給される。また、下糸1Bを挟持しているクランプ10Bの近傍であって、該クランプ10Bより上方に位置するように設けられたワックス供給ノズル22Bから、液化したワックスが下糸1Bに供給される。
【0076】
このワックスは、適温に暖められているためにワックス供給ノズル22A・22Bから供給される際には液状であるが、各糸1A・1Bの外周に付着した後に冷えると凝固する。これによって、上糸1Aならびに下糸1Bにそれぞれワックス被覆域1AR・1BRが形成される。
【0077】
切断動作S243は、上糸1Aならびに下糸1Bのそれぞれをワックスの被覆とともに切断する動作である。
【0078】
図16において、各ワックス供給ノズル22A・22Bの近傍には、カッター30A・30Bがそれぞれ備えられており、各ワックス被覆域1AR・1BRの中途部でワックスの被覆とともに上糸1Aならびに下糸1Bが切断される。これにより、上糸1Aを挟持するクランプ10Aの下方にあった欠点部1Eは、上糸用サクションアーム8の空気吸い込み口8aに吸引されて除去されることとなる。
【0079】
こうして得られた上糸1Aの糸端部1Mならびに下糸1Bの糸端部1Nは、図21に示すように、外周にワックスの被覆が形成されて、その糸端面1m・1nにはワックスが付着していない構造となっている。なお、各糸1A・1Bにワックスを供給する際には、ワックスの温度や供給量を適切なものとすることで、各糸1A・1Bを構成する繊維の隙間には浸透せず、外周のみでワックスが凝固される。
【0080】
突き合わせ動作S244は、上記の切断動作S243で得られた上糸1Aならびに下糸1Bの糸端部同士をそれぞれ突き合わせて、配置する動作である。
【0081】
図17において、上糸1Aを挟持するクランプ10Aは、上糸1Aを挟持した状態で水平に基台60に沿って移動され、下糸1Bを挟持するクランプ10Bは、下糸1Bを挟持した状態で上方へ基台60に沿って移動されて、各糸端部1M・1Nが突き合わされた状態に配置される。このとき、糸端部1Mの糸端面1mと糸端部1Nの糸端面1nの距離は可能な限り狭められ、例えば糸継ぎ装置3の精度が許す程度とされる。
【0082】
接着剤供給動作S245は、突き合わせるように配置された上糸1Aならびに下糸1Bの糸端部に対して接着剤を供給する動作である。
【0083】
図18において、各糸端部1M・1Nの突き合わせ部分に接着剤供給ノズル41から接着剤が供給される。このとき、接着剤はワックスに弾かれるために各糸1A・1Bの外周には付着せずにワックスで被覆されていない糸端面1m・1nにのみ付着し、近接して配置されている両糸端面1m・1nによって保持される。つまり、接着剤は、一方の糸端面1mから他方の糸端面1nへ表面張力によって架け渡されることになる。
【0084】
硬化処理動作S246は、上糸1Aの糸端面1mならびに下糸1Bの糸端面1nの間に介在する接着剤を硬化させる動作である。
【0085】
図19において、接着剤の供給から時期を計って光源50を点灯させることで、接着剤は各糸端面1m・1nを横架した状態のままで硬化されて、各糸1A・1Bは継がれることになる。
【0086】
その後、図20に示すように、上糸1Aと下糸1Bが継がれて構成された糸条1は、各クランプ10A・10Bが開駆動されてから再び送り出され、再びパッケージ7に巻き取られていくこととなる。
【0087】
なお、本実施形態では、糸端部1M・1Nを突き合わせた後に接着剤を供給するように構成しているが、一方又は双方の糸端部1M・1Nに接着剤を供給した後に突き合わせるようにしても良い。また、本実施形態では、光硬化性の接着剤を用いているが所定の時間の経過により硬化するものや、熱硬化性のものであっても良い。
【0088】
こうして継がれた糸条1の継ぎ目を図22(b)に模式的に示す。なお、図22(a)は従来の糸継ぎ方法で継がれた継ぎ目を示している。本発明による糸継ぎ装置により継がれた糸条1の継ぎ目は従来の継ぎ目と比較して、糸端面1m・1nのみで接着されているために継ぎ目が太くなることがなく、糸条1の外周に接着剤が付着することもない。なお、糸条1の外周に凝固しているワックスは、その後の工程で行われる洗浄等により除去されるために最終工程を経た製品に残留することはない。
【0089】
これにより、各糸1A・1Bの外周に接着剤が付着せず、糸端面1m・1nにのみ供給できるために継ぎ目が目立たず、染めムラが生じない糸条1を得ることが可能となる。
【符号の説明】
【0090】
100 自動ワインダ装置
Y 糸条
W ワックス被覆域
C カッター
CL クランプ
YE 糸端部
YF 糸端面
1 糸条
1A 上糸
1B 下糸
1M・1N 糸端部
1m・1n 糸端面
1AR・1BR ワックス被覆域
1E 欠点部
3 糸継ぎ装置
10A・10B クランプ
20A・20B ワックス供給装置
22A・22B ワックス供給ノズル
30A・30B カッター
40 接着剤供給装置
41 接着剤供給ノズル
50 光源
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2本の糸条を継ぎ合わせる糸継ぎ方法であって、
前記糸条の糸端面を除く外周をワックスで覆った糸端部同士を互いに突き合わせて、接着剤を用いることにより2本の糸条を継ぐ、ことを特徴とする糸継ぎ方法。
【請求項2】
前記糸条に液化したワックスを供給し、前記糸条の外周で凝固させることによってワックス被覆域を形成し、
前記ワックス被覆域の中途部を切断して得た糸端部同士を互いに突き合わせて、接着剤を用いることにより2本の糸条を継ぐ、ことを特徴とする請求項1に記載の糸継ぎ方法。
【請求項3】
前記糸端部同士を互いに突き合わせた後に、前記接着剤を供給することで2本の糸条を継ぐ、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の糸継ぎ方法。
【請求項4】
前記接着剤を一方または双方の前記糸端部に供給した後に、前記糸端部同士を互いに突き合わせて2本の糸条を継ぐ、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の糸継ぎ方法。
【請求項5】
前記接着剤は、光硬化性の接着剤であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の糸継ぎ方法。
【請求項6】
2本の糸条を継ぎ合わせる糸継ぎ装置であって、
前記糸条の糸端面を除く外周をワックスで覆った糸端部同士を互いに突き合わせて、接着剤を用いることにより2本の糸条を継ぐ、ことを特徴とする糸継ぎ装置。
【請求項7】
前記糸条に液化したワックスを供給するワックス供給装置と、
前記ワックスが前記糸条の外周で凝固して形成されたワックス被覆域の中途部を切断するカッターと、
前記糸条を継ぐために接着剤を供給する接着剤供給装置とを備え、
前記ワックス被覆域の中途部で前記カッターにより切断して得た前記糸条の糸端部同士を互いに突き合わせて、接着剤を用いることにより2本の糸条を継ぐ、ことを特徴とする請求項6に記載の糸継ぎ装置。
【請求項8】
前記接着剤は、光硬化性の接着剤であることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の糸継ぎ装置。
【請求項9】
請求項6から請求項8のいずれか一項に記載の糸継ぎ装置を備えた、ことを特徴とする自動ワインダ装置。
【請求項1】
2本の糸条を継ぎ合わせる糸継ぎ方法であって、
前記糸条の糸端面を除く外周をワックスで覆った糸端部同士を互いに突き合わせて、接着剤を用いることにより2本の糸条を継ぐ、ことを特徴とする糸継ぎ方法。
【請求項2】
前記糸条に液化したワックスを供給し、前記糸条の外周で凝固させることによってワックス被覆域を形成し、
前記ワックス被覆域の中途部を切断して得た糸端部同士を互いに突き合わせて、接着剤を用いることにより2本の糸条を継ぐ、ことを特徴とする請求項1に記載の糸継ぎ方法。
【請求項3】
前記糸端部同士を互いに突き合わせた後に、前記接着剤を供給することで2本の糸条を継ぐ、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の糸継ぎ方法。
【請求項4】
前記接着剤を一方または双方の前記糸端部に供給した後に、前記糸端部同士を互いに突き合わせて2本の糸条を継ぐ、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の糸継ぎ方法。
【請求項5】
前記接着剤は、光硬化性の接着剤であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の糸継ぎ方法。
【請求項6】
2本の糸条を継ぎ合わせる糸継ぎ装置であって、
前記糸条の糸端面を除く外周をワックスで覆った糸端部同士を互いに突き合わせて、接着剤を用いることにより2本の糸条を継ぐ、ことを特徴とする糸継ぎ装置。
【請求項7】
前記糸条に液化したワックスを供給するワックス供給装置と、
前記ワックスが前記糸条の外周で凝固して形成されたワックス被覆域の中途部を切断するカッターと、
前記糸条を継ぐために接着剤を供給する接着剤供給装置とを備え、
前記ワックス被覆域の中途部で前記カッターにより切断して得た前記糸条の糸端部同士を互いに突き合わせて、接着剤を用いることにより2本の糸条を継ぐ、ことを特徴とする請求項6に記載の糸継ぎ装置。
【請求項8】
前記接着剤は、光硬化性の接着剤であることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の糸継ぎ装置。
【請求項9】
請求項6から請求項8のいずれか一項に記載の糸継ぎ装置を備えた、ことを特徴とする自動ワインダ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
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【図4】
【図5】
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【図9】
【図10】
【図11】
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【図13】
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【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2010−168192(P2010−168192A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−13574(P2009−13574)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】
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