説明

糸状菌におけるデフェンシンの組換え発現

本発明は、糸状菌におけるデフェンシン抗菌ペプチドの組換え発現に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸状菌におけるデフェンシン抗菌ペプチドの組換え発現に関する。
【背景技術】
【0002】
技術背景:
デフェンシンは、小さな抗菌ペプチドの種類に属する。それらは、広範囲の微生物を殺害することができ、それらの微生物のいくつかは従来の抗生物質に対してますますより耐性になっている。この理由のために、デフェンシンを低費用で多量に生成できることが、ますます興味の対象になっている。
【0003】
デフェンシンは通常わずか30〜50個のアミノ酸残基を含むので、それらは組換え発酵方法の使用により効率良く生成することはしばしば困難である。化学的ペプチド合成は代りの方法であるが、しかしこれは、ペプチドが25〜30個のアミノ酸残基を越える場合、費用がかかり過ぎる。デフェンシンが、化学的合成により創造するのに困難である特徴的なシステインパターンを含むことがもう1つの複雑さである。
従って、糸状菌の組換え発酵によりデフェンシン抗菌ペプチドの改良された発現レベルを得るための方法を提供することが、本発明の目的である。
【発明の開示】
【0004】
発明の要約:
本発明者は、デフェンシンの発現を方向づける1又は複数のイントロン配列を核酸構造体に挿入することにより、組換え発現レベルが、イントロン配列のない核酸構造体を用いる場合に比較して、50%以上、改良され得ることを見出した。イントロン配列は、核酸構造体、例えば成熟デフェンシンコード配列、又はさらに、シグナルペプチドコード配列のいずれかの位置に挿入され得る。
【0005】
従って、本発明は、デフェンシンをコードする外来性核酸配列、及び1又は複数のイントロン配列を含んで成る核酸構造体を含んで成る組換え糸状菌宿主細胞に関する。
第2の観点においては、本発明は、デフェンシンペプチドをコードする核酸配列及び1又は複数のイントロン配列を含んで成る核酸構造体を含んで成る糸状菌宿主細胞を培養し;そしてデフェンシンペプチドを回収することを包含する、糸状菌宿主細胞におけるデフェンシンの組換え生成方法に関する。
第3の観点においては、本発明は、デフェンシンペプチドをコードする核酸配列及び1又は複数のイントロン配列を含んで成る核酸構造体の、糸状菌宿主細胞におけるデフェンシンの組換え発現レベルを改良するための使用に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
定義:
抗菌活性:用語“抗菌活性”とは、微生物細菌を殺害するか、又はその増殖を阻害できる活性として本明細書において定義される。本発明においては、用語“抗菌”とは、殺細菌及び/又は静菌、及び/又は殺真菌及び/又は静真菌効果、及び/又はウィルス効果が存在することを意味し、ここで用語“殺菌”とは、細菌細胞を殺害できるものとして理解されるべきである。用語“静菌”とは、細菌増殖を阻害でき、すなわち細菌細胞の増殖を阻害できるものとして理解されるべきである。用語“殺真菌”とは、真菌を阻害でき、すなわち真菌細胞の増殖を阻害できるものとして理解されるべきである。用語“殺ウィルス”とは、ウィルスを不活性化できるものとして理解されるべきである。用語“微生物細胞”とは、細菌又は真菌細胞(酵母を包含する)を示す。
【0007】
本発明においては、用語“微生物細胞の増殖の阻害”とは、前記細胞が非増殖状態にあり、すなわちそれが増殖できないことを意味する。
本発明のためには、抗菌活性は、Lehrer など., Journal of Immunological Methods, Vol. 137 (2) pp. 167-174 (1991)により記載される方法に従って決定され得る。他方では、抗菌活性は、CLSI (Clinical and Laboratory Standards Institute; National Committee for Clinical and Laboratory Standardsとして以前は知られている)からのNCCLSガイドラインに従って決定され得る。
【0008】
抗菌活性を有するデフェンシンは、抗菌活性を有するデフェンシンの25%(w/w)水溶液;好ましくは10%(w/w)水溶液;より好ましくは5%(w/w)水溶液;さらにより好ましくは1%(w/w)水溶液;最も好ましくは0.5%(w/w)水溶液;及び特に0.1%(w/w)水溶液における20℃での8時間(好ましくは、4時間、より好ましくは、2時間、最も好ましくは1時間、及び特に30分)のインキュベーションの後、E. コリ(DSM1576)の生存細胞の数を1/100に低めることができる。
【0009】
抗菌活性を有するデフェンシンはまた、1000ppmの濃度で添加される場合;好ましくは500ppmの濃度で添加される場合;より好ましくは250ppmの濃度で添加される場合;さらに好ましくは100ppmの濃度で添加される場合;最も好ましくは50ppmの濃度で添加される場合;及び特に25ppmの濃度で添加される場合、微生物増殖基質における25℃での24時間で、E. コリ(DSM1576)の増殖を阻害することができる。抗菌活性を有するデフェンシンは、抗菌活性を有するデフェンシンの25%(w/w)水溶液;好ましくは10%(w/w)水溶液;より好ましくは5%(w/w)水溶液;さらにより好ましくは1%(w/w)水溶液;最も好ましくは0.5%(w/w)水溶液;及び特に0.1%(w/w)水溶液における20℃での8時間(好ましくは、4時間、より好ましくは、2時間、最も好ましくは1時間、及び特に30分)のインキュベーションの後、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)(ATCC6633)の生存細胞の数を1/100に低めることができる。
【0010】
抗菌活性を有するデフェンシンはまた、1000ppmの濃度で添加される場合;好ましくは500ppmの濃度で添加される場合;より好ましくは250ppmの濃度で添加される場合;さらに好ましくは100ppmの濃度で添加される場合;最も好ましくは50ppmの濃度で添加される場合;及び特に25ppmの濃度で添加される場合、微生物増殖基質における25℃での24時間で、バチルス・サブチリス(ATCC6633)の増殖を阻害することができる。
【0011】
本発明のデフェンシンは、少なくとも20%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%、及びさらに最も好ましくは少なくとも100%の、配列番号2のアミノ酸1〜42として示されるアミノ酸配列から成るデフェンシンの抗菌活性を有する。
【0012】
cDNA:用語“cDNA”とは、本明細書において使用される場合、真核細胞から得られた成熟した、スプライシングされたmRNA分子から逆転写により調製され得るDNA分子として定義される。cDNAは、その対応するゲノムDNAに通常存在するイントロン配列を欠いている。初期の一次RNA転写体はmRNAへの前駆体であり、そしてそれは、成熟したスプライシングされたmRNAとして出現する前、一連の段階を通してプロセッシングされる。それらの段階は、スプライシングと呼ばれる工程によるイントロン配列の除去を包含する。従って、mRNA由来のcDNAは、いずれのイントロン配列をも欠いている。
【0013】
核酸構造体:本明細書において使用される場合、用語“核酸構造体”とは、天然に存在する遺伝子から単離され、又は他方では、天然に存在しない態様で核酸のセグメントを含むように修飾されている、一本鎖又は二本鎖核酸分子として定義される。用語“核酸構造体”とは、核酸構造体が本発明のコード配列の発現のために必要とされるすべての制御配列を含む場合、用語“発現カセット”と同じ意味である。
【0014】
制御配列:用語“制御配列”とは、デフェンシンをコードするポリヌクレオチドの発現のために必要であるか、又はそのために好都合であるすべての成分を包含するよう定義される。個々の制御配列は、デフェンシンをコードする核酸配列に対して生来であっても又は外来性であっても良い。そのような制御配列は、リーダー、ポリアデニル化配列、プロペプチド配列、プロモーター、シグナルペプチド配列、及び転写ターミネーターを包含するが、但しそれらだけには限定されない。最少で、制御配列は、プロモーター、及び転写及び翻訳停止シグナルを包含する。制御配列は、デフェンシンをコードするヌクレオチド配列のコード領域と制御配列との連結を促進する特定の制限部位を導入するためにリンカーを提供され得る。
【0015】
操作可能的に連結される:用語“操作可能的に連結される”とは、制御配列が、デフェンシンのコード配列の発現を指図するようポリヌクレオチド配列のコード配列に対する位置で適切に配置されている配置として本明細書において定義される。
【0016】
コード配列:本明細書において使用される場合、用語“コード配列”とは、そのタンパク質生成物のアミノ酸配列を直接的に特定するヌクレオチド配列を包含する。コード配列の境界は一般的に、ATG開始コドン又は他の開始コドン、例えばGTG及びTTGにより通常開始する読取枠により決定される。コード配列は、DNA、cDNA、又は組換えヌクレオチド配列であり得る。
【0017】
発現:用語“発現”とは、デフェンシンの生成に包含されるいずれかの段階、例えば転写、後−転写修飾、翻訳、後−翻訳修飾及び分泌(但し、それらだけには制限されない)を包含する。
【0018】
発現ベクター:本明細書においては、用語“発現ベクター”とは、本発明のポリペプチドとコードするポリヌクレオチドを含んで成り、そしてその発現を提供する追加のヌクレオチドに操作可能的に連結される線状又は環状DNA分子を包含する。
【0019】
宿主細胞:用語“宿主細胞”とは、本明細書において使用される場合、本発明のポリヌクレオチドを含んで成る核酸構造体による形質転換、トランスフェクション、トランスダクション及び同様のものに対して感受性であるいずれかの細胞型を包含する。
【0020】
修飾:用語“修飾”とは本明細書において、デフェンシンの化学的修飾、及び前記ポリペプチドをコードするDNAの遺伝子操作を意味する。前記修飾は、アミノ酸の置換、欠失及び/又は挿入、及びアミノ酸側鎖の置換;又はアミノ酸配列における類似する特徴を有する異常アミノ酸の使用であり得る。特に、修飾は、アミド化、例えばC-末端のアミド化であり得る。
同一性:2種のアミノ酸配列間の又は2種のヌクレオチド配列間の関連性が、パラメーター“同一性”により記載される。
【0021】
本発明に関しては、2種のアミノ酸配列間の同一性の程度は、FASTAプログラムパッケージのバージョン2.0xに包含されるプログラムFASTAを用いて決定され得る(W. R. Pearson and D. J. Lipman (1988), "Improved Tools for Biological Sequence Analysis", PNAS 85:2444-2448; and W. R. Pearson (1990) "Rapid and Sensitive Sequence Comparison with FASTP and FASTA", Methods in Enzymology 183:63- 98を参照のこと)。使用される評点マトリックスはBLOSUM50であり、ギャップペナルティーは−12であり、そしてギャップ延長ペナルティーは−2であった。
【0022】
2種のヌクレオチド配列間の同一性の程度は、上記と同じアルゴリズム及びソフトウェアパッケージを用いて決定される。使用される評点マトリックスは同一性マトリックスであり、ギャップペナルティーは−16であり、そしてギャップ延長ペナルティーは−4であった。
【0023】
他方では、2種のアミノ酸配列は、EMBOSSパッケージ (http://emboss.org)バージョン2.8.0からのNeedleプログラムを用いることにより決定される。このNeedleプログラムは、Needleman, S. B. and Wunsch, C. D. (1970) J. Mol. Biol. 48, 443-453に記載される世界的一列整列アルゴリズムを実行する。使用される置換マトリックスはBLOSUM62であり、ギャップ開放ペナルティーは10であり、そしてギャップ延長ペナルティーは0.5である。
【0024】
本発明のアミノ酸配列(“発明の配列”、例えば配列番号2のアミノ酸1〜40)と、異なったアミノ酸配列(“外来性配列”)との間の同一性の程度は、“発明の配列”の長さ、又はいずれにせよ、最も短い“外来性配列”の長さにより割り算された、2種の配列一列整列での正確な適合の数として計算される。結果は、%同一性で表される。
【0025】
正確な適合は、“発明の配列”及び“外来性配列”がオーバーラップの同じ位置において同一のアミノ酸残基を有する場合、発生する。配列の長さは、配列におけるアミノ酸残基の数である(例えば、配列番号2のアミノ酸1〜40の長さは40である)。
【0026】
特定の記載:
デフェンシン
本発明のデフェンシンは、デフェンシン種類の抗菌ペプチドに属する、当業者により認識されるいずれかの抗菌ペプチドである。抗菌ペプチドが本発明のデフェンシンであるかどうかを決定するためには、アミノ酸配列が好ましくは、良く知られているPFAMデータベースの隠れたmarkovモデルプロフィール(HMMプロフィール)と比較される(例6を参照のこと)。
【0027】
デフェンシンは、αデフェンシン種類、βデフェンシン種類、θデフェンシン種類、節足動物デフェンシン種類、昆虫デフェンシン種類又は植物デフェンシン種類に属する。
デフェンシンはまた、いずれかのデフェンシン種類の特徴を共有する合成デフェンシンであり得る。
【0028】
1つの態様においては、本発明のデフェンシンのアミノ酸配列は、4,5,6,7,8,9又は10個のシステイン残基、好ましくは6,7,8,9又は10個のシステイン残基、より好ましくは6,8又は10個のシステイン残基、及び最も好ましくは6又は8個のシステイン残基を含んで成る。
【0029】
デフェンシンの例は、次のものを包含するが、但しそれらだけには限定されない:α−デフェンシンHNP-1(ヒト好中球ペプチド)、HNP-2及びHNP-3;βデフェンシン−12、ドロソマイシン、ヘリオミシン、γ1―プロチオニン、昆虫デフェンシンA、及びPCT出願WO 9953053号 (RHONE POULENC AGROCHIMIE). 1999-10-21及びWO 02085934 号(ENTOMED). 2002-10-31(それらは引用により本明細書に組み込まれる)に開示されるデフェンシン;又は配列番号2,4,6,8,10, 12, 14及び16の成熟アミノ酸配列で示されるそれら、又はそれらの配列に対して、少なくとも60%、好ましくは70%、より好ましくは80%、さらにより好ましくは90%、及び最も好ましくは95%同一であるアミノ酸配列で示されるそれら。本発明のデフェンシンはさらに、それらのアミノ酸配列に比較して、1又は複数の化学的修飾を含んで成ることができる。
【0030】
α−デフェンシンは、下記アミノ酸配列を含んで成る抗菌ペプチドとして定義され得る:
C-X1 -C-X2 -C-X3 -C-X4 -C-C
ここでX1は、1個のアミノを表し;好ましくはX1 =Y, F, A, R, I, S, T, H 又は V;より好ましくはX1=Y, F, A又はR;さらにより好ましくはX1=Y又はF;最も好ましくはX1=Y;
X2は、4又は5個のアミノ酸を表し;好ましくは4個のアミノ酸を表し;より好ましくはX2 =Z1 -Z2 -Z3 -Z4、ここでZ1はいずれかのアミノ酸を表し;好ましくはZ1=R, T又はK;より好ましくはZ1=R;Z2はいずれかのアミノ酸を表し;好ましくはZ2=R, I, T, K;Z3はいずれかのアミノ酸を表し;好ましくはZ3=R, P 又はG;Z4はいずれかのアミノ酸を表し;好ましくはZ4=G, A 又は R;
【0031】
X3は、9個のアミノ酸を表し;好ましくはX3=Z1 -Z2 -Z3 -Z4 -Z5 -Z6 -Z7 -G-Z8、ここでZ1はいずれかのアミノ酸を表し;好ましくはZ1=K, L 又は R;Z2はいずれかのアミノ酸を表し;好ましくはZ2=R, F, A, S 又はG;Z3はいずれかのアミノ酸を表し;好ましくはZ3=R, G, P 又は T;より好ましくはZ3=R又はG;Z4はいずれかのアミノ酸を表し;Z4=E又はY;好ましくはZ4=E;Z5はいずれかのアミノ酸を表し;好ましくはZ5=R、H又はS;Z6はいずれかのアミノ酸を表し;好ましくはZ6=R, M又はL;Z7はいずれかのアミノ酸を表し;好ましくはZ7=N, S, Y又はI;Z8はいずれかのアミノ酸を表し;好ましくはZ8=T, S, Y又はA;
【0032】
X4は9個のアミノ酸を表し;好ましくはX4=Z1 -Z2 -Z3 -Z4-Z5 -Z6 -Z7 -Z8 -Z9、ここでZ1はいずれかのアミノ酸を表し;好ましくはZ1=R又はI;Z2はいずれかのアミノ酸を表し;好ましくはZ2= K, I, Y, F 又は L;Z3はいずれかのアミノ酸を表し;好ましくはZ3= G, N, R 又は Q;Z4はいずれかのアミノ酸を表し;好ましくはZ4=G, H又はN;Z5はいずれかのアミノ酸を表し;好ましくはZ5=R又はL;Z6はいずれかのアミノ酸を表し;好ましくはZ6= I, L, M, V 又は R;Z7はいずれかのアミノ酸を表し;好ましくはZ7=Y, W, H 又は F;Z8はいずれかのアミノ酸を表し;好ましくはZ8=T, R又はA;Z9はいずれかのアミノ酸を表し;好ましくはZ9=L, F又はR;より好ましくはZ9=L又はF。
【0033】
β−デフェンシンは、下記アミノ酸配列を含んで成る抗菌ペプチドとして定義され得る:
C-X1 -C-X2 -C-X3 -C-X4 -C-C
ここでX1は6個のアミノ酸を表し;好ましくはX1=Z1 -Z2 -Z3 -Z4 -Z5 -Z6、ここでZ1はいずれかのアミノ酸を表し;好ましくはZ1=R, V 又は L;Z2はいずれかのアミノ酸を表し;好ましくはZ2= R, I, K 又は Q;Z3はいずれかのアミノ酸を表し;好ましくはZ3= N 又はS;Z4はいずれかのアミノ酸を表し;好ましくはZ4= G, K 又は R;Z5はいずれかのアミノ酸を表し;好ましくはZ5= G;Z6はいずれかのアミノ酸を表し;好ましくはZ6= Q, I, V 又は F;
【0034】
X2は3又は4個のアミノ酸を表し;好ましくはX2は4個のアミノ酸を表し;より好ましくはX2=Z1-Z2-Z3-Z4、ここでZ1はいずれかのアミノ酸を表し;好ましくはZ1= L, V, I, H 又は A;Z2はいずれかのアミノ酸を表し;好ましくはZ2= P又は Y;Z3はいずれかのアミノ酸を表し;好ましくはZ3= S, I, N 又は G;Z4はいずれかのアミノ酸を表し;好ましくはZ4= R, A 又は S;
【0035】
X3は9個のアミノ酸を表し;好ましくはX3 =Z1 -Z2 -Z3 -Z4 -Z5 -Z6 -Z7 -Z8 -Z9、ここでZ1はいずれかのアミノ酸を表し;好ましくはZ1=P;Z2はいずれかのアミノ酸を表し;好ましくはZ2= G, I, R 又は P;Z3はいずれかのアミノ酸を表し;好ましくはZ3= Y, N, P, R, F 又は H;Z4はいずれかのアミノ酸を表し;好ましくはZ4= T, M 又はY;Z5はいずれかのアミノ酸を表し;好ましくはZ5= R又はK;Z6はいずれかのアミノ酸を表し;好ましくはZ6= Q又は I;Z7はいずれかのアミノ酸を表し;好ましくはZ7=I又はQ;Z8はいずれかのアミノ酸を表し;好ましくはZ8=S;Z9はいずれかのアミノ酸を表し;好ましくはZ9=T;
【0036】
X4は6個のアミノ酸を表し;好ましくはX4 =Z1 -Z2 -Z3 -Z4 -Z5 -Z6、ここでZ1はいずれかのアミノ酸を表し;好ましくはZ1= Y, F, G 又は L;Z2はいずれかのアミノ酸を表し;好ましくはZ2= G, H, P, L, R 又は T;Z3はいずれかのアミノ酸を表し;好ましくはZ3= G, P 又は R;Z4はいずれかのアミノ酸を表し;好ましくはZ4= K, P, R, G 又は Q;Z5はいずれかのアミノ酸を表し;好ましくはZ5= V, A, I 又は G;Z6はいずれかのアミノ酸を表し;好ましくはZ6= K。
【0037】
昆虫−デフェンシンは、下記アミノ酸配列を含んで成る抗菌ペプチドとして定義され得る:
C-X1 -C-X2 -C-X3 -C-X4 -C-X5 -C
ここでX1は5〜16個のアミノ酸を表し;
X2は3個のアミノ酸を表し;好ましくはX2=Z1-Z2-Z3、ここでZ1はいずれかのアミノ酸を表し;好ましくはZ1= A又はH;Z2はいずれかのアミノ酸を表し;好ましくはZ2= A又はR;Z3はいずれかのアミノ酸を表し;好ましくはZ3= H;
X3は9〜11個のアミノ酸を表し;
X4は4〜10個のアミノ酸を表し;
X5は1個のアミノ酸を表し;好ましくはX5 =V, T, I, H, K, N 又はL。
【0038】
1つの態様においては、本発明のデフェンシンは、抗菌活性、抗細菌活性及び抗ウィルス活性から選択された1以上の抗菌活性を有する。
本発明のデフェンシンは、いずれかの属の微生物から得られる。本発明のためには、用語“〜から得られる”とは、所定の源に関して本明細書において使用される場合、ヌクレオチド配列によりコードされるデフェンシンが前記源により、又はその源からのヌクレオチド配列が挿入されている細胞により生成されることを意味する。好ましい態様においては、デフェンシンは細胞外に分泌される。
【0039】
本発明のデフェンシンは、菌類ポリペプチド、及びより好ましくは、酵母ポリペプチド、例えばカンジダ(Candida)、クルイベロミセス(Kluyveromyces)、ピチア(Pichia)、サッカロミセス(Saccharomyces)、シゾサッカロミセス(Schizos accharomyces)、又はヤロウイア(Yarrowia)デフェンシン;又はより好ましくは、糸状菌デフェンシン、例えばアクレモニウム(Acremonium)、アスペルギラス(Aspergillus)、アウレオバシジウム(Aureobasidium)、クリプトコーカス(Cryptococcus)、フィリバシジウム(Filibasidium)、フサリウム(Fusarium)、ヒューミコラ(Humicola)、マグナポリス(Magnaporthe)、ムコル(Mucor)、ミセリオプソラ(Myceliophthora)、ネオカノマスチックス(Neocallimastix)、ネウロスポラ(Neurospora)、パエシロミセス(Paecilomyces)、ペニシリウム(Penicillium)、ピロミセス(Piromyces)、シゾフィラム(Schizophyllum)、タラロミセス(Talaromyces)、サーモアスカス(Thermoascus)、チエラビア(Thielavia)、トリポクラジウム(Tolypocladium)又はトリコダーマ(Trichoderma)デフェンシンであり得る。
【0040】
好ましい観点においては、デフェンシンは、抗菌活性を有する、サッカロミセス・カルスベルゲンシス(Saccharomyces carlsbergensis)、サッカロミセス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス・ジアスタチカス(Saccharomyces diastaticus)、サッカロミセス・ドウグラシ(Saccharomyces douglasii)、サッカロミセス・クルイベリ(Saccharomyces kluyveri)、サッカロミセス・ノルベンシス(Saccharomyces norbensis)又はサッカロミセス・オビホルミス(Saccharomyces oviformis)デフェンシンである。
【0041】
もう1つの好ましい態様においては、デフェンシンは、アスペルギラス・アキュレアタス(Aspergillus aculeatus)、アスペルギラス・アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギラス・フミガーツフ(Aspergillus fumigatus)、アスペルギラス・ホエチダス(Aspergillus foetidus)、アスペルギラス・ジャポニカス(Aspergillus japonicus)、アスペルギラス・ニジュランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギラス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギラス・オリザエ(Aspergillus oryzae)、フサリウム・バクトリジオイデス(Fusarium bactridioides)、フサリウム・セレアリス(Fusarium cerealis)、フサリウム・クロックウェレンズ(Fusarium crookwellense)、フサリウム・クルモラム(Fusarium culmorum)、フサリウム・グラミネアラム(Fusarium graminearium)、フサリウム・グラミナム(Fusarium graminum)、フサリウム・ヘテロスポラム(Fusarium heterosporum)、フサリウム・ネグンジ(Fusarium negundi)、フサリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)、フサリウム・レチキュラタム(Fusarium reticulatum)、フサリウム・ロゼウム(Fusariumu roseum)、フサリウム・サムブシウム(Fusarium sambucinum)、
【0042】
フサリウム・サルコクロウム(Fusarium sarcochroum)、フサリウム・スポロトリキオイデス(Fusarium sporotrichioides)、フサリウム・スルフレウム(Fusarium sulphureum)、フサリウム・トルロサム(Fusarium torulosaum)、フサリウム・トリコセシオイデス(Fusarium trichothecioides)又はフサリウム・ベネナタム(Fusarium venenatum)、ヒュミコラ・インソレンス(Humicola insolens)、ヒュミコラ・ラヌギノサ(Humicola lanuginosa)、ムコル・ミエヘイ(Mucor miehei)、ミセリオプラソラ・サーモフィラ(Myceliophthora thermophila)、ネウロスポラ・クラサ(Neurospora crassa)、ペニシリウム・プルプロゲナム(Penicillium purpurogenum)、トリコダーマ・ハルジアナル(Trichoderma harzianum)、トリコダーマ・コニンギ(Trichoderma koningii)、トリコダーマ・ロンジブラキアタム(Trichoderma longibrachiatum)、トリコダーマ・レセイ(Trichoderma reesei)又はトリコダーマ・ビリデ(Trichoderma viride)デフェンシンである。
【0043】
前述の種に関しては、本発明は完全及び不完全状態の両者、及び他の分類学的同等物、例えばアナモルフを、それらが知られている種の名称にかかわらず、包含することが理解されるであろう。当業者は適切な同等物の正体を容易に理解するであろう。
それらの種の株は、次の多くの培養物寄託所から容易に入手できる:American Type Culture Collection (ATCC), Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH (DSM), Centraalbureau Voor Schimmelcaltures (CBS), 及びAgricultural Research Service Patent Culture Collection, Northern Regional Research Center (NRRL)。
【0044】
さらに、そのようなデフェンシンは、他の源、例えば天然源(例えば、土壌、培養土、水、等)から単離された微生物から、上記プローブを用いて同定され、そして得られる。天然の生息地から微生物を単離する技法は当業界において良く知られている。次に、ポリヌクレオチド配列は、もう1つの微生物のゲノム又はcDNAライブラリーを同様にスクリーニングすることによって誘導され得る。ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列がプローブにより検出されると、配列は当業者に知られている技法を用いることによって同定され、又はクローン化され得る(例えば、Sambrook , . Molecular Cloning: A Laboratory Manual. 2., : Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989. ISBN 0879693096を参照のこと)。
【0045】
本発明のデフェンシンはまた、もう1つのデフェンシンが前記デフェンシン又はフラグメントのN−末端又はC−末端で融合されている、融合された又は切断可能な融合デフェンシンも包含することができる。融合されたデフェンシンは、1つのデフェンシンをコードするヌクレオチド配列(又はその一部)を、本発明のヌクレオチド配列(又はその一部)に融合することによって生成される。融合デフェンシンを生成するための技法は、当業界において知られており、そしてデフェンシンをコードするコード配列を、それらが整合して存在し、そして融合されたデフェンシンの発現が同じプロモーター及びターミネーターの制御下にあるよう、連結することを包含する。
【0046】
核酸配列
本発明はまた、本発明のデフェンシンをコードするヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドにも関する。
そのようなポリヌクレオチドの例は、引用により本明細書に組み込まれるPCT出願WO99/53053号に開示されるそれらを包含するが、但しそれらだけには限定されない。
【0047】
好ましい態様においては、ヌクレオチド配列は、本発明の配列番号1,3,5,7,9,11, 13又は15で示される。もう1つの好ましい態様においては、ヌクレオチド配列は、配列番号1,3,5,7,9,11, 13又は15の成熟デフェンシンコード領域である。本発明はまた、遺伝子コードの縮重により、それぞれ配列番号1,3,5,7,9,11, 13又は15とは異なる、配列番号2,4,6,8,10,12,14又は16のアミノ酸配列を有するデフェンシン、又はそれらの成熟デフェンシンをコードするヌクレオチド配列も包含する。
【0048】
デフェンシンをコードするポリヌクレオチドを単離し、又はクローン化するために使用される技法は、当業界において知られており、そしてゲノムDNAからの単離、cDNAからの調製、又はそれらの組み合わせを包含する。そのようなゲノムDNAからの本発明のデフェンシンをコードするポリヌクレオチドのクローニングは、例えば良く知られているポリメラーゼ鎖反応(PCR)、又は共有する構造特徴を有するクローン化されたDNAフラグメントを検出するために発現ライブラリーの抗体スクリーニングを用いることによってもたらされ得る。
【0049】
例えば、Innisなど., 1990, PCR: A Guide to Methods and Application; Academic Press, New York を参照のこと。他の核酸増幅方法、例えばリガーゼ鎖反応(LCR)、連結された活性化転写(LAT)及び核酸配列に基づく増幅(NASBA)が使用され得る。ポリヌクレオチドは、ユーロチウム(Eurotium)、アスペルギラス(Aspergillus)、シュードプレクタニア(Pseudoplectania)、クラソストレア(Crassostrea)、メソブサス(Mesobuthus)株、又は他の又は関連する生物からクローン化され得、そして従って、ヌクレオチド配列のデフェンシンコード領域の対立遺伝子又は種変異体であり得る。
【0050】
本発明はまた、デフェンシン抗菌ポリペプチドをコードする、少なくとも60%、好ましくは少なくとも65%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、及び最も好ましくは少なくとも97%の配列番号1,3,5,7,9,11, 13又は15の成熟デフェンシンコード配列に対する同一性の程度を有するヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドにも関する。
【0051】
本発明のデフェンシンをコードするヌクレオチド配列の修飾は、そのデフェンシンに実質的に類似するデフェンシンの合成のために必要である。用語、デフェンシンに“実質的に類似する”とは、デフェンシンの天然に存在しない形を意味する。それらのデフェンシンは、その天然源から単離されたデフェンシンとは、いくつかの構築された態様で異なり、例えば非活性、熱安定性、pH最適性又は同様のものにおいて異なる変異体であり得る。変異体配列は、配列番号1,3,5,7,9,11, 13又は15のデフェンシンコード部分として提供されるヌクレオチド配列、例えばその副配列に基づいて、及び/又はヌクレオチド配列によりコードされるデフェンシンのもう1つのアミノ酸配列を生ぜしめないが、しかし酵素の生成のために意図された宿主生物のコドン使用法に対応するヌクレオチド置換の導入により、又は異なったアミノ酸配列を生ぜしめることができるヌクレオチド置換の導入により構成され得る。ヌクレオチド置換の一般的記載のためには、Fordなど., 1991, Protein Expression and Purification 2:95-107を参照のこと。
【0052】
そのような置換は、分子の機能に対して決定的である領域外で行われ、そしてさらに活性デフェンシンをもたらすことは、当業者に明らかであろう。本発明のデフェンシンの活性に必須であり、そして従って、好ましくは置換を受けやすくないアミノ酸残基は、当業界において知られている方法、例えば特定部位の突然変異誘発又はアラニン−走査突然変異誘発に従って同定され得る(例えば、Cunningham and Wells, 1989, Science 244: 1081-1085を参照のこと)。
【0053】
後者の技法においては、突然変異は分子における正に荷電された残基ごとに導入され、そしてその得られる変異体分子は、分子の活性に対して決定的であるアミノ酸残基を同定するために抗菌活性について試験される。相互作用の部位はまた、核磁気共鳴分析、クリスタログラフィー又は光親和性ラベリングのような技法により決定されるように、立体構造体の分析により決定され得る(例えば、de Vos など., 1992, Science 255: 306-312; Smith など., 1992, Journal of Molecular Biology 224: 899-904; Wlodaver など., 1992, FEBS Letters 309: 59-64を参照のこと)。
【0054】
本発明はまた、本明細書に定義されるように、(i)配列番号1,3,5,7,9,11, 13又は15に含まれる成熟ペプチドコードヌクレオチド配列、(ii)配列番号1,3,5,7,9,11, 13又は15に含まれるcDNA配列、又は(iii)(i)又は(ii)の相補的鎖;又はその対立遺伝子変異体及び副配列(Sambrookなど., 1989, 前記)と、低い緊縮条件、好ましくは中位の緊縮条件、より好ましくは中位の高い緊縮条件、さらにより好ましくは高い緊縮条件、及び最も好ましくは非常に高い緊縮条件下でハイブリダイズする、本発明のデフェンシンをコードする単離されたポリヌクレオチドにも関する。
【0055】
本発明はまた、(a)(i)配列番号1,3,5,7,9,11, 13又は15に含まれる成熟ペプチドコードヌクレオチド配列、(ii)配列番号1,3,5,7,9,11, 13又は15に含まれるcDNA配列、又は(iii)(i)又は(ii)の相補的鎖と、低い、中位、中位の高い、高い、又は非常に高い緊縮条件下でDNA集団とをハイブリダイズし;そして(b)抗菌活性を有するポリペプチドをコードする、前記ハイブリダイズするポリヌクレオチドを単離することにより得られる、ポリヌクレオチドにも関する。
【0056】
核酸構造体
本発明はまた、制御配列と適合できる条件下で、適切な宿主細胞におけるコード配列の発現を指図する1又は複数の制御配列に操作可能的に連結される本発明のデフェンシンをコードするポリヌクレオチドを含んで成る核酸構造体にも関する。
【0057】
本発明のデフェンシンをコードするポリヌクレオチドは、デフェンシンの発現を提供するために種々の手段で操作され得る。ベクター中へのその挿入の前、ポリヌクレオチド配列の操作は、発現ベクターに依存して、所望されるか又は必要とされる。組換えDNA方法を用いてポリヌクレオチド配列を修飾するための技法は、当業界において良く知られている。
【0058】
制御配列は、適切なプロモーター配列、すなわち本発明のデフェンシンをコードするポリヌクレオチドの発現のために宿主細胞により認識されるヌクレオチド配列であり得る。プロモーター配列は、デフェンシンの発現を仲介する転写制御配列を含む。プロモーターは、宿主細胞において転写活性を示すいずれかのヌクレオチド配列、例えば変異体の、切断された、及びハイブリッドのプロモーターであり得、そして宿主細胞に対して相同であるか又は異種である細胞外又は細胞内ポリペプチドをコードする遺伝子から得られる。
【0059】
糸状菌宿主細胞における本発明の核酸構造体の転写を方向づけるための適切なプロモーターの例は、アスペルギラス・オリザエTAKAアミラーゼ、リゾムコル・ミエヘイ アスパラギン酸プロテイナーゼ、アスペルギラス・ニガー中性α−アミラーゼ、アスペルギラス・ニガー酸安定性α−アミラーゼ、アスペルギラス・ニガー又はアスペルギラス・アワモリグルコアミラーゼ(glaA)、リゾムコル・ミエヘイリパーゼ、アスペルギラス・オリザエ アルカリプロテアーゼ、アスペルギラス・オリザエトリオースリン酸イソメラーゼ、アスペルギラス・ニジュランスアセトアミダーゼ、フサリウム・ベネナタムアミログルコシダーゼ(WO00/56900号)、フサリウム・ベネナタムDaria(WO00/56900号)、フサリウム・ベネナタムQuinn(WO00/56900号)、フサリウム・オキシスポラムトリプシン様プロテアーゼ(WO96/00787号)、トリコダーマ・レセイβ−グルコシダーゼ、トリコダーマ・レセイセロビオヒドロラーゼI、トリコダーマ・レセイエンドグルカナーゼI、トリコダーマ・レセイエンドグルカナーゼII、トリコダーマ・レセイエンドグルカナーゼIII 、トリコダーマ・レセイエンドグルカナーゼIV、トリコダーマ・レセイエンドグルカナーゼV、トリコダーマ・レセイキシラナーゼI、トリコダーマ・レセイキシラナーゼII、トリコダーマ・レセイβ−キシロシダーゼ、並びにNA2-tpiプロモーター(アスペルギラス・ニガー中性α−アミラーゼ及びアスペルギラス・オリザエトリオースリン酸イソメラーゼをコードする遺伝子からのプロモーターのハイブリッド)、及びそれらの変異体の切断され、及びハイブリッドのプロモーターである。
【0060】
制御配列はまた、適切な転写ターミネーター配列、すなわち転写を終結するために宿主細胞により認識される配列でもあり得る。ターミネーター配列は、デフェンシンをコードするヌクレオチド配列の3’側末端に操作可能的に連結される。選択の宿主細胞において機能的であるいずれかのターミネーターが本発明において使用され得る。
【0061】
糸状菌宿主細胞のための好ましいターミネーターは、アスペルギラス・オリザエTAKAアミラーゼ、アスペルギラス・ニガーグルコアミラーゼ、アスペルギラス・ニジュランスアントラニル酸シンターゼ、アスペルギラス・ニガーα−グルコシダーゼ及びフサリウム・オキシスポラムトリプシン−様プロテアーゼについての遺伝子から得られる。
【0062】
制御配列はまた、適切なリーダー配列、すなわち宿主細胞による翻訳のために重要であるmRNAの非翻訳領域でもあり得る。リーダー配列は、デフェンシンをコードするヌクレオチド配列の5’末端に操作可能的に連結される。選択の宿主細胞において機能的であるいずれかのリーダー配列が、本発明において使用され得る。
糸状菌宿主細胞のための好ましいリーダーは、アスペルギラス・オリザエTAKAアミラーゼ、アスペルギラス・ニジュランストリオースリン酸イソメラーゼについての遺伝子から得られる。
【0063】
制御配列はまた、ポリアデニル化配列、すなわちヌクレオチド配列の3’末端に操作可能に連結され、そして転写される場合、転写されたmRNAにポリアデノシン残基を付加するためにシグナルとして宿主細胞により認識される配列でもあり得る。選択の宿主細胞において機能的であるいずれかのポリアデニル化配列が,本発明において使用される。
【0064】
糸状菌宿主細胞のための好ましいポリアデニル化配列は、アスペルギラス・オリザエTAKAアミラーゼ、アスペルギラス・ニガーグルコアミラーゼ、アスペルギキラス・ニジュランスアントラニル酸シンターゼ、フサリウム・オキシスポラムトリプシン−様プロテアーゼ及びアスペルギラス・ニガーα−グルコシダーゼについての遺伝子から得られる。
【0065】
制御配列はまた、デフェンシンのアミノ末端に連結されるアミノ酸配列をコードし、そしてそのコードされたデフェンシンを細胞の分泌路中に方向づけるシグナルペプチドコード領域でもあり得る。核酸配列のコード配列の5’側末端は、本来、分泌されたデフェンシンをコードするコード領域のセグメントと翻訳読み取り枠を整合して、天然において連結されるシグナルペプチドコード領域を含むことができる。他方では、コード配列の5’側末端は、そのコード配列に対して外来性であるシグナルペプチドコード領域を含むことができる。そのコード配列が天然において、シグナルペプチドコード領域を含まない外来性シグナルペプチドコード領域が必要とされる。他方では、外来性シグナルペプチドコード領域は、デフェンシンの分泌を増強するために、天然のシグナルペプチドコード領域を単純に置換することができる。しかしながら、分泌路中に発現されたデフェンシンを方向づけるいずれかのシグナルペプチドコード領域が、本発明に使用され得る。
【0066】
糸状菌宿主細胞のための効果的なシグナルペプチドコード領域は、アスペルギラス・オリザエTAKAアミラーゼ、アスペルギラス・ニガー中性アミラーゼ、アスペルギラス・ニガーグルコアミラーゼ、リゾムコル・ミエヘイアスペラギン酸プロテイナーゼ、ヒューミコラ・インソレンスセルラーゼ及びヒューミコラ・ラヌギノサリパーゼについての遺伝子から得られたシグナルペプチドコート領域である。
【0067】
好ましい観点においては、シグナルペプチドコード領域は、配列番号2のアミノ酸−55〜−33をコードする、配列番号1のヌクレオチド1〜69;配列番号4のアミノ酸−48〜−29をコードする、配列番号3のヌクレオチド1〜60;配列番号6のアミノ酸−50〜−31をコードする、配列番号5のヌクレオチド1〜60;配列番号8のアミノ酸−22〜−1をコードする、配列番号7のヌクレオチド1〜66;配列番号10のアミノ酸−24〜−1をコードする、配列番号9のヌクレオチド1〜72;配列番号12のアミノ酸−22〜−1をコードする、配列番号11のヌクレオチド1〜66;配列番号14のアミノ酸−22〜−1をコードする、配列番号13のヌクレオチド1〜66;又は配列番号16のアミノ酸−26〜−9をコードする、配列番号15のヌクレオチド1〜54である。
【0068】
制御配列はまた、ポリペプチドのアミノ末端で位置するアミノ酸配列をコードするプロペプチドコード領域であり得る。得られるポリペプチドは、プロ酵素又はプロポリペプチド(又は多くの場合、チモーゲン)として知られている。プロポリペプチドは一般的に不活性であり、そしてプロポリペプチドからプロペプチドの触媒又は自己触媒分解により成熟した活性ポリペプチドに転換され得る。プロペプチドコード領域は、バチルス・サブチリスアルカリプロテアーゼ(aprE)、バチルス・サブチリス中性プロテアーゼ(nprT)、サッカロミセス・セレビシアエα−因子、リゾムコル・ミエヘイ アスパラギン酸プロテイナーゼ遺伝子、及びミセリオプソラ・サーモフィリア ラッカーゼについての遺伝子から得られる(WO95/33836号)。
【0069】
好ましい観点においては、プロペプチドコード領域は、配列番号2のアミノ酸−32〜−1をコードする、配列番号1のヌクレオチド70〜165;配列番号4のアミノ酸−28〜−1をコードする、配列番号3のヌクレオチド61〜144;配列番号6のアミノ酸−30〜−1をコードする、配列番号5のヌクレオチド61〜150;又は配列番号16のアミノ酸−8〜−1をコードする、配列番号15のヌクレオチド55〜78である。
【0070】
シグナルペプチド及びプロペプチド領域の両者がポリペプチドのアミノ末端に存在する場合、そのプロペプチド領域は、ポリペプチドのアミノ末端の次に位置し、そしてシグナルペプチド領域は、プロペプチド領域のアミノ末端の次に位置する。
【0071】
宿主細胞の増殖に関して、ポリペプチドの発現の調節を可能にする調節配列を付加することがまた所望される。調節システムの例は、調節化合物の存在を包含する、化学的又は物理的刺激に応答して、遺伝子の発現の開始又は停止を引き起こすそれらのシステムである。原核生物系における調節システムは、lac, tac及びtrpオペレーターシステムを包含する。酵母においては、ADH2システム又はGAL1システムが使用され得る。糸状菌においては、TAKAα−アミラーゼプロモーター、アスペルギラス・ニガーグルコアミラーゼプロモーター及びアスペルギラス・オリザエグルコアミラーゼプロモーターが、調節配列として使用され得る。調節配列の他の列は、遺伝子増幅を可能にするそれらの配列である。真核システムにおいては、それらはメトトレキセートの存在下で増幅されるジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子、及び重金属と共に増幅されるメタロチオネイン遺伝子を包含する。それらの場合、ポリペプチドをコードする核酸配列が、調節配列により操作可能的に連結される。
【0072】
発現ベクター
本発明はまた、本発明のデフェンシン、プロモーター、及び転写及び翻訳停止シグナルを含んで成る組換え発現ベクターにも関する。上記の種々の核酸及び制御配列は、1又は複数の便利な制限部位でデフェンシンをコードするヌクレオチド配列の挿入又は置換を可能にするためにそれらの部位を含むことができる組換え発現ベクターを生成するために一緒に連結され得る。他方では、本発明のヌクレオチド配列は、前記ヌクレオチド配列又は前記配列を含んで成る核酸構造体を、発現のための適切なベクター中に挿入することによって発現され得る。発現ベクターを創造する場合、そのコード配列はベクターに位置し、その結果、コード配列は発現のための適切な制御配列により操作可能的に連結される。
【0073】
組換え発現ベクターは、組換えDNA方法に便利にゆだねられ得、そしてヌクレオチド配列の発現をもたらすことができるいずれかのベクター(例えば、プラスミド又はウィルス)であり得る。ベクターの選択は典型的には、ベクターが導入される予定である宿主細胞とベクターとの適合性に依存するであろう。ベクターは、線状又は閉環された環状プラスミドであり得る。
【0074】
ベクターは自律的に複製するベクター、すなわち染色体存在物として存在するベクター(その複製は染色体複製には無関係である)、例えばプラスミド、染色体外要素、ミニクロモソーム又は人工染色体であり得る。ベクターは自己複製を確かめるためのいずれかの手段を含むことができる。他方では、ベクターは、糸状菌細胞中に導入される場合、ゲノム中に組み込まれ、そしてそれが組み込まれている染色体と一緒に複製されるベクターであり得る。さらに、宿主細胞のゲノム中に導入される全DNA又はトランスポゾンを一緒に含む、単一のベクター又はプラスミド、又は複数のベクター又はプラスミドが使用され得る。
【0075】
本発明のデフェンシンの発現のために使用されるベクターは好ましくは、形質転換された細胞の容易な選択を可能にする1又は複数の選択マーカーを含む。選択マーカーは、1つの遺伝子であり、その生成物は、殺生物剤又はウィルス耐性、重金属に対する耐性、栄養要求性に対する原栄養要求性、及び同様のものを提供する。
【0076】
糸状菌宿主細胞に使用するための選択マーカーは、次の群から選択されるが、但しそれらだけには限定されない;amdS (アセトアミダーゼ)、argB (オルニチンカルバモイルトランスフェラーゼ)、bar (ホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼ)、hph (ヒグロマイシンホスホトランスフェラーゼ)、niaD (硝酸レダクターゼ)、pyrG (オロチジン−5’−リン酸デカルボキシラーゼ)、sC (硫酸アデニルトランスフェラーゼ) 及びtrpC (アントラニル酸シンターゼ)、並びにそれらの同等物。アスペルギラス・ニジュランス又はアスペルギラス・オリザエのamdS及びpyrG遺伝子及びストレプトミセス・ヒグロスコピカスのbar遺伝子が、アスペルギラス細胞への使用のために好ましい。
【0077】
ベクターは好ましくは、宿主細胞ゲノム中へのベクターの安定した組み込み、又は細胞のゲノムに無関係に細胞におけるベクターの自律的複製を可能にする要素を含む。
【0078】
宿主細胞のゲノム中への組み込みのためには、ベクターは、相同又は非相同組換えによるゲノム中へのベクターの安定した組み込みのためのベクター中のデフェンシン、又はいずれか他の要素をコードするポリヌクレオチド配列に依存する。他方では、ベクターは、染色体における正確な位置で、宿主細胞のゲノム中への相同組換えによる組み込みを方向づけるための追加のヌクレオチド配列を含むことができる。正確な位置での組み込みの可能性を高めるために、組み込み要素は好ましくは、相同組換えの可能性を高めるためにその対応する標的配列と高い程度の同一性を示す十分な数の核酸、例えば100〜10,000個の塩基対、好ましくは400〜10,000個の塩基対、及び最も好ましくは800〜10,000個の塩基対を含むべきである。組み込み要素は、宿主細胞のゲノムにおける標的配合と相同であるいずれかの配列であり得る。さらに、組み込み要素は、非コード又はコードヌクレオチド配列であり得る。他方では、ベクターは非相同組換えにより宿主細胞のゲノム中に組み込まれ得る。
【0079】
自律複製のためには、ベクターはさらに、問題の宿主細胞においてのベクターの自律的な複製を可能にする複製の起点を含んで成る。複製の起点は、細胞において機能する自律複製を仲介するいずれかのプラスミド複製体であり得る。用語“複製の起点”又は“プラスミド複製体”とは、本明細書においては、プラスミド又はベクターのインビボでの複製を可能にするヌクレオチド配列として定義される。
【0080】
糸状菌細胞において有用な複製の起点の例は、AMA1及びANS1である(Gems など., 1991 , Gene 98:61-67; Cullen et al., 1987, Nucleic Acids Research 15: 9163-9175; WO 00/24883号)。AMA1遺伝子の単離及び前記遺伝子を含んで成るプラスミド又はベクターの構成は、WO00/24883号に開示される方法に従って達成され得る。
【0081】
本発明のデフェンシンをコードするポリヌクレオチドの1以上のコピーが、遺伝子生成物の生成を高めるために宿主細胞中に挿入され得る。ポリヌクレオチドのコピー数の上昇は、宿主細胞ゲノム中に配列の少なくとも1つの追加のコピーを組み込むことによって、又はポリヌクレオチドと共に増幅可能な選択マーカー遺伝子を含むことによって得られ、ここで細胞は選択マーカー遺伝子の増幅されたコピーを含み、そしてそれにより、ポリヌクレオチドの追加のコピーが、適切な選択剤の存在下で前記細胞を培養することによって選択され得る。
【0082】
本発明の組換え発現ベクターを構成するために上記要素を連結するために使用される方法は、当業者に良く知られている(例えば、Sambrookなど., 1989, 前記を参照のこと)。
【0083】
糸状菌宿主細胞
本発明の宿主細胞(又は生物)は、門アスコミコタ(Ascomycota)、バシジオミコタ(Basidiomycota)、キトリジオミコタ(Chytridiomycota)及びヅイゴミコタ(Zygomycota)のすべての糸状形を包含する糸状菌である(Kirk, P.M. など., In, Ainsworth and Bisby's Dictionary of The Fungi, 9th edition, 2001, CAB International, Wallingford, UKにより定義される場合)。糸状菌は、キチン及びグルカン、及び/又は他の複雑な多糖類から構成される増殖性菌糸体により特徴づけられる。増殖性成長は菌糸延長によってである。好ましくは炭素異化作用は絶対好気性である。
【0084】
1つの態様においては、糸状菌宿主細胞(又は生物)は、亜網子嚢菌の目ユーロチアレス(Eurotiales)に属し;好ましくは、それはより特定にはトリココマセアエ(Trichocomaceae)科に属する。
【0085】
より好ましい態様においては、糸状菌宿主細胞(又は生物)は、アクレモニウム(Acremonium)、アスペルギラス(Aspergillus)、エメリセラ(Emericella)、ユーロチウム(Eurotium)、フサリウム(Fusarium)、ヒューミコラ(Humicola)、ムコル(Mucor)、ミセリオプソラ(Myceliophthora)、ネウロスポラ(Neurospora)、ペニシリウム(Penicilium)、ユーペニシラム(Eupenicillium)、チエラビア(Thielavia)、トリポクラジウム(Tolypocladium)及びトリコダーマ(Trichoderma)又はソノテレモルフ又は類似体の種の細胞であるが、但しそれらだけには限定されない。
【0086】
さらにより好ましい態様においては、糸状菌宿主細胞は、アスペルギラス細胞である。もう1つのさらにより好ましい態様においては、菌類宿主細胞は、アクレモニウム細胞である。もう1つのさらにより好ましい態様においては、菌類宿主細胞は、フサリウム細胞である。もう1つのさらにより好ましい態様においては、菌類宿主細胞は、ヒューミコラ細胞である。もう1つのさらにより好ましい態様においては、菌類宿主細胞は、ムコル細胞である。もう1つのさらにより好ましい態様においては、菌類宿主細胞は、ミセリオプソラ細胞である。もう1つのさらにより好ましい態様においては、菌類宿主細胞は、ネウロスポラ細胞である。もう1つのさらにより好ましい態様においては、菌類宿主細胞は、ペニシリウム細胞である。もう1つのさらにより好ましい態様においては、菌類宿主細胞は、チエラビア細胞である。
【0087】
もう1つのさらにより好ましい態様においては、菌類宿主細胞は、トリポクラジウム細胞である。もう1つのさらにより好ましい態様においては、菌類宿主細胞は、トリコダーマ細胞である。最も好ましい態様においては、糸状菌宿主細胞は、アスペルギラス・アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギラス・ホエチダス(Aspergillus foetidus)、アスペルギラス・ジャポニカ(Aspergillus japonicus)、アスペルギラス・アキュレアタス(Aspergillus aculeatus)、アスペルギラス・ニガー(Aspergillus niger)、又はアスペルギラス・オリザエ(Aspergillus oryzae)細胞である。もう1つの好ましい態様においては、糸状菌宿主細胞は、セクションジスカラー(Discolor)(また、セクションフサリウムとしても知られている)のフサリウム細胞である。
【0088】
例えば、糸状菌親細胞は、フサリウム・バクトリジオイデス(Fusarium bactridioides)、フサリウム・セレアリス(Fusarium cerealis)、フサリウム・クロックウェレンズ(Fusarium crookwellense) 、フサリウム・クルモラム(Fusarium culmorum)、フサリウム・グラミネアラム(Fusarium graminearum)、フサリウム・グラミナム(Fusarium graminum)、フサリウム・ヘテロスポラム(Fusarium heterosporum)、フサリウム・ネグンジ(Fusarium negundi)、フサリウム・レチキュラタム(Fusarium reticulatum)、フサリウム・ロゼウム(Fusarium roseum)、フサリウム・サムブシウム(Fusarium sambucinum)、フサリウム・サルコクロウム(Fusarium sarcochroum)、フサリウム・スルフレウム(Fusarium sulphureum)、又はフサリウム・トリコセシオイデス(Fusarium trichothecioides)細胞である。もう1つの好ましい態様においては、糸状菌宿主細胞は、セクションエレガンス(Elegans)のフサリウム株、例えばフサリウム・オキシスポラム細胞である。
【0089】
もう1つの最も好ましい態様においては、糸状菌宿主細胞は、ヒューミコラ・インソレンス(Humicola insolens)、又はヒューミコラ・ラヌギノサ(Humicola lanuginosa)細胞である。もう1つの最も好ましい態様においては、糸状菌宿主細胞は、ムコル・ミエヘイ(Mucor miehei)細胞である。もう1つの最も好ましい態様においては、糸状菌宿主細胞は、ミセリオプソラ・サーモフィリア(Myceliophthora thermophilum)細胞である。もう1つの最も好ましい態様においては、糸状菌宿主細胞は、ネウロスポラ・クラサ細胞である。
【0090】
もう1つの最も好ましい態様においては、糸状菌宿主細胞は、ペニシリウム・プルプロゲナム(Penicillium purpurogenum)、又はペニシリウム・フニキュロサム(Penicillium funiculosum)細胞である(WO00/68401号)。もう1つの最も好ましい態様においては、糸状菌宿主細胞は、チエラビア・テレストリス(Thielavia terrestris)細胞である。もう1つの最も好ましい態様においては、トリコダーマ細胞は、トリコダーマ・ハルジアナム(Trichoderma harzianum)、トリコダーマ・コニンギ(Trichoderma koningii)、トリコダーマ・ロンジブラキアタム(Trichoderma longibrachiatum)、トリコダーマ・レセイ(Trichoderma reesei)又はトリコダーマ・ビリデ(Trichoderma viride)細胞である。
【0091】
特定の態様においては、糸状菌宿主細胞は、A. オリザエ又はA. ニガー細胞である。
本発明の好ましい態様においては、宿主細胞は、プロテアーゼ欠失又はプロテアーゼマイナス株である。
【0092】
これは、“alp”欠失されたと称するアルカリプロテアーゼ遺伝子を有するプロテアーゼ欠失株アスペルギラス・オリザエJaL 125であり得る。この株は、WO 9735956号 (NOVO NORDISK A/S). 1997-10-02.又はヨーロッパ特許第429,490号(GENENCOR). 1991-06-05.に記載され、特にA. ニガーの株がWO96/14404号(NOVO NORDISK A/S). 1996-05-17.に開示される。さらに、WO01/68864号(NOVOZYMES A/S). 2001-09-20.に記載のように転写活性化因子(prtT)の低められた生成を有するA. ニガー又はA. オリザエが、本発明により特に企画される。
【0093】
イントロン
真核生物遺伝子は、機能的mRNAを生成するために前躯体転写体において修飾されるべきである介在配列(イントロン)により中断され得る。イントロン除去のこの工程は、プレ−mRNAスプライシングとして知られている。通常イントロンのブランチポイント配列は、ラリアート(lariat)の形成を通してイントロンスプライシングのために必要である。スプライシングのためのシグナルは、スプライス部位の境界で直接的に存在する。イントロンスプライス部位の境界は通常、それぞれ、それらの5’及び3’末端でコンセンサスイントロン配列GT及びAGを有する。
【0094】
AG以外の3’スプライス部位は報告されていないが、5’GTスプライス部位側での少数の例外の報告がある。例えば、CT又はGCが5’境界でGTにより置換される先例が存在する。ヌクレオチド塩基ANGT、続いてGTについての強い選択があり、ここでNはA, C又はT(サッカロミセス種においては、主にA又はT)であり、ところがGTスプライス部位に続いていずれの特定のヌクレオチドについての著しい選択は存在しない。3’スプライス部位AGに続いて、主にピリミジンヌクレオチド塩基(Py)、すなわちC又はTが存在する。
【0095】
菌類遺伝子を中断することができるイントロンの数は、1〜12又はそれ以上のイントロンの範囲である。それらは、1つの遺伝子を通して分配され得るか、又は遺伝子の5’又は3’末端の方に位置している。サッカロミセス・セレビシアエにおいては、イントロンは主に、遺伝子の5’末端に位置する。イントロンは一般的に、1kb以下のサイズであり、そして通常、酵母においては、400bp以下であり、そして糸状菌においては100bp以下である。
【0096】
サッカロミセス・セレビシアエイントロンブランチポイント配列5’−TACTAAC−3’は、まれに糸状菌イントロンに正確に出現する。TACTAACに密接に又はおおよそ類似する配列拡張が、一般的コンセンサスNRCTRAC(ここで、NはA, C, G又はTであり、そしてRはA又はGである)を有する糸状菌イントロンにおいて同等の点で見られる。例えば、第4位置Tは、ニューロスポラ・クラサ及びアスペルギラス・ニジュランスの推定上のコンセンサス配列において不変である。
【0097】
さらに、ヌクレオチドG, A及びCは、それぞれ位置3,6及び7の80%以上で優位を占めるが、但しアスペルギラス・ニジュランスにおける位置7は、わずか65%のCを伴って、より柔軟性である。しかしながら、位置1,2,5及び8は、ニューロスポラ・クラサ及びアスペルギラス・ニジュランスの両者において、より厳格ではない。他の糸状菌は、それらのイントロンにおいて同等の位置で類似するブランチポイント拡張を有するが、しかしサンプリングは、いずれの明確な傾向を識別することには小さ過ぎる。
【0098】
方法及び使用
第1の観点においては、本発明は、デフェンシンをコードする外来性核酸配列、及び1又は複数のイントロン配列を含んで成る核酸構造体を含んで成る組換え糸状菌宿主細胞を提供する。用語“外来性核酸配列”とは、外部から(外来性源から)導入された核酸配列を意味する。
【0099】
糸状菌宿主細胞は、イントロン配列、例えばcDNA配列を有さない核酸構造体を用いて得られる量の少なくとも150%、好ましくは200%、より好ましくは200%及び最も好ましくは300%の量でデフェンシンを発現する(生成する)ことができる。
糸状菌宿主細胞は、YPM増殖培地において、30〜35℃で3〜5日間、適切な撹拌下で増殖され得る。糸状菌を培養するためのこの及び他の適切な方法は、当業界において良く知られている。糸状菌宿主細胞は、デフェンシンの組換え生成のために使用され得る。
【0100】
第2の観点においては、本発明は、デフェンシンペプチドをコードする核酸配列及び1又は複数のイントロン配列を含んで成る核酸構造体を含んで成る糸状菌宿主細胞を培養し;そしてデフェンシンペプチドを回収することを包含する、糸状菌宿主細胞におけるデフェンシンの組換え生成方法を提供する。適切な回収方法は、当業者において良く知られている。
【0101】
本発明はまた、デフェンシンペプチドをコードする核酸配列及び1又は複数のイントロン配列を含んで成る核酸構造体の、糸状菌宿主細胞におけるデフェンシンの組換え発現レベルを改良するための使用にも関する。
【0102】
デフェンシンの発現レベルは、イントロン配列、例えばcDNA配列を含まない核酸構造体を用いる場合に比較して、少なくとも50%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも100%、さらに好ましくは少なくとも125%、最も好ましくは150%及び特に200%高い。他方では、デフェンシンの発現レベルは、イントロン配列、例えばcDNA配列を有さない核酸構造体を用いる場合に得られる発現レベルの少なくとも150%、好ましくは200%、より好ましくは250%及び最も好ましくは300%であり得る。発現レベルは、1Lの発酵流体当たりのデフェンシンタンパク質で測定される。
【0103】
1つの態様においては、本発明の核酸構造体は、1,2,3,4又は5個のイントロン配列、好ましくは1,2,3又は4個のイントロン配列、及び最も好ましくは1個のイントロン配列を含む。
もう1つの態様においては、本発明の核酸構造体は、デフェンシンペプチドをコードする核酸配列、及び少なくとも1個、好ましくは少なくとも2個の、より好ましくは少なくとも3個の及び最も好ましくは少なくとも4個のイントロン配列を含んで成る。
【0104】
イントロン配列は、本発明の核酸構造体のシグナル−、プロ−又は成熟ペプチドコード部分に位置する。核酸構造体が1つよりも多くのイントロンを含む場合、そのイントロンは構造体の異なった部分に位置することができる。
イントロン配列は、mRNAに転写されるデフェンシン遺伝子のいずれかの部分に実際、位置することができる。
【0105】
医薬配合物
本発明のデフェンシンは、治療投与のために種々の医薬配合物中に組込まれ得る。特に、本発明のデフェンシンは、適切な医薬的に許容できるキャリヤー又は希釈剤と組合すことにより医薬組成物中に配合され、そして固体、半固体、液体又は気体形、例えば錠剤、カプセル、粉末、顆粒、軟膏、クリーム、発泡体、溶液、坐剤、注射剤、吸入剤、ゲル、微小球、ローション及びエアロゾルでも調製物中に配合され得る。デフェンシンの投与は、種々の手段、例えば経口、頬内、直腸、非経口、腹膜内、皮膚内、経皮内、鞘内、等の投与で達成され得る。本発明によれば、デフェンシンは、投与の後、全身性である。
【0106】
本発明のデフェンシンは、単独で、お互い組合して投与されるか、又はそれらは、他の既知化合物(例えば、ペルホリン、抗−炎症剤、抗生物質、等)と組合して使用され得る。医薬投与形においては、デフェンシンは、それらの医薬的に許容できる塩の形で投与され得る。次の方法及び賦形剤は単なる例示であり、制限するものではない。
【0107】
経口調製物に関しては、デフェンシンは、錠剤、粉末、顆粒、又はカプセルを製造するために、単独で、又は適切な添加剤、例えば従来の添加剤、例えばラクトース、マンニトール、コーンスターチ又はジャガイモ澱粉;結合剤、例えば結晶性セルロース、セルロース誘導体、アカシア、コーンスターチ又はゼラチン;砕解剤、例えばコーンスターチ、ジャガイモ澱粉又はナトリウムカルボキシメチルセルロース;滑剤、例えばタルク又はステアリン酸マグネシウム;及び所望により、希釈剤、緩衝剤、保湿剤、保存剤及び風味剤と組合して使用され得る。
【0108】
デフェンシンは、水性又は非水性溶媒、例えば植物油又は他の類似する油、合成脂肪酸グリセリド、高級脂肪酸のエステル又はプロピレングリコールに、それら;及び所望により、従来の添加剤、例えば溶解剤、等張剤、沈殿防止剤、乳化剤、安定剤及び保存剤を溶解し、懸濁し、又は乳化することにより注射用調製物に配合され得る。
本発明のデフェンシンは、吸入を通して投与されるエアロゾル配合物に使用され得る。本発明のデフェンシンは、加圧された許容できる噴射剤、例えばジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素及び同様のものの中に配合され得る。
【0109】
さらに、デフェンシンは、種々の塩基、例えば乳化塩基又は水溶性塩基と共に混合することにより、坐剤に製造され得る。デフェンシンは、坐剤を通して直腸投与され得る。坐剤は、ビークル、例えば体温で溶解し、室温で固化される、コアアバター、カーボワックス及びポリエチレングリコールを含むことができる。
【0110】
経口又は直腸投与のための単位用量形、例えばシロップ、エリキシル及び懸濁液が供給され得、ここで個々の用量単位、例えば錠剤又は坐剤は、本発明の1又は複数の化合物を含む、予定された量の組成物を含む。同様に、注射又は静脈内投与のための単位用量形は、無菌水、通常の塩溶液又はもう1つの医薬的に許容できるキャリヤーに溶液としての組成物に本発明のデフェンシンを含んで成ることができる。
【0111】
用語“単位用量形”とは、本明細書において使用される場合、ヒト及び動物対象のための単位用量として適切な、生理学的に別々の単位を意味し、個々の単位は、医薬的に許容できる希釈剤、キャリヤー又はビークルと共に、所望する効果を生成するのに十分な量で、計算された予測される量の本発明のデフェンシンを含む。本発明の単位用量形についての規定は、使用される特定の化合物、達成されるべき効果、及び宿主における化合物に関連する薬力学に依存する。
【0112】
医薬的に許容できる賦形剤、例えばビークル、アジュバント、キャリヤー又は希釈剤は、公的に容易に入手できる。さらに、医薬的に許容できる補助物質、例えばpH調節及び緩衝剤、張度調節剤、安定剤、湿潤剤及び同様のものは、公的に容易に入手できる。
【0113】
全身性投与のための典型的な用量は、投与当たり0.1pg〜100mg/kg体重である。典型的な用量は、毎日2〜6度、摂取される1つの錠剤であり得るか、又は1日1度、摂取され、そして比較的高い量の活性成分を含む1つの持効性カプセルであり得る。持効性効果は、異なったpH値で溶解するカプセル材料により、浸透圧によりゆっくり開放するカプセルにより、又は調節された開放性のいずれか他の既知手段により得られる。
【0114】
当業者は、用量レベルが特定のデフェンシンの機能、徴候の重症度及び副作用に対する対象の感受性として変化することができることを容易に理解するであろう。特定のデフェンシンのいくつかは、他のものよりもより有能である。所定のデフェンシンについての好ましい用量は、種々の手段により当業者により容易に決定できる。好ましい手段は、所定のデフェンシンの生理学的能力を測定することである。
【0115】
供給ビークルとしてのリポソームの使用は、1つの興味ある方法である。リポソームは標的細胞と融合し、そして内腔中の内容物を細胞中に供給する。リポソームは、接触を維持するために種々の手段、例えば単離、結合剤及び同様のものを用いて、融合のための十分な時間、細胞と接触して維持される。本発明の1つの観点においては、リポソームは、膜の融合に介在する精製されたタンパク質又はペプチド、例えばセンダイウィルス又はインフルエンザウィルス、等により調製され得る。脂質は、既知のリポソーム形成脂質、例えばカチオン性又は両性イオン性脂質、例えばホスファチジルコリンのいずれかの有用な組合せであり得る。残る脂質は通常、中性又は酸性脂質、例えばコレステロール、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール及び同様のものであろう。
【0116】
リポソームの調製に関しては、KATO, . Expression of hepatitis B virus surface antigen in adult rat liver. Co- introduction of DNA and nuclear protein by a simplified liposome method. J. biol. chem., uaryFebr vol. 266, p. 3361-3364. ISSN 0021-9258により記載される方法が使用され得る。手短には、ペプチドを含む、脂質及び内腔組成物が、適切な水性媒体、便利には、合計固形物が約1〜10重量%の範囲で存在する塩溶液媒体において組み合わされる。約5〜60秒の短時間の強い攪拌の後、管を約25〜40℃で暖かな水浴に配置し、そしてこのサイクルを、約5〜10回、反復する。次に、組成物が便利な時間、一般的に約1〜10秒間、音波処理され、そしてさらに、かき混ぜることにより攪拌される。次に、その体積が、水性媒体を添加し、一般的には、体積を約1〜2倍に増加することにより拡張され、続いて振盪され、そして冷却される。この方法は、高分子量分子の内腔中への組込みを可能にする。
【0117】
他の活性剤を有する配合物
本発明の方法への使用に関しては、本発明のデフェンシンは、当業界においてよく知られている他の医薬的活性剤(例えば、ステロイド)、特に他の抗菌剤により配合され得る。興味ある他の剤は、当業界において知られているような広範囲の種類の抗生物質を包含する。抗生物質の種類は、ペニシリン、例えばペニシリンG、ペニシリンV、メチシリン、オキサシリン、カルベニシリン、ナフシリン、アンピシリン、等;β−ラクタマーゼインヒビターと組合してのペニシリン、セファロスポリン、例えばセファクロール、セファゾリン、セフロキシム、モキサラクタム、等;カルバペネム;モノベクタム;アミノグリコシド;テトラサイクリン;マクロリド;リンコマイシン;ポリミキシン;スルホンアミド;キノロン;クロラムフェニコール;メトロニダゾール;スペクチノマイシン;トリメトプリム、バンコマイシン、等を包含する。
【0118】
抗−真菌剤、例えばポリエン、例えばアンホテリシンB、ナイスタチン;5−フルコシン;及びアゾール、例えばミコナゾール、ケイコナゾール、イトラコナゾール及びフルコナゾールはまた、有用である。抗結核薬剤は、イソニアジド、エタムブトール、ストレプトマイシン及びリファンピンを包含する。サイトカイン、例えばインターフェロンγ、腫瘍壊死因子α、インターロイキン12、等はまた、本発明のデフェンシンの配合物に含まれ得る。
【0119】
本発明はさらに次の例により記載されるが、但しそれらは、本発明の範囲を制限するものではない。
【実施例】
【0120】
緩衝液及び基質として使用される化学製品は、少なくとも試薬品種の市販の製品である。
例1:デフェンシンコード配列を含むイントロンのアスペルギラス・オリザエにおける発現
P.ニグレラ cDNAライブラリー(WO 03044049号 (NOVOZYMES A/S). 2003-05-30.からの配列番号6)から増殖された、361bpのBamH1-Xho1消化されたPCR生成物を、WO03/044049号に記載のようにして、アスペルギラス発現ベクター中にクローン化し、プラスミドpMT2549を得た。pMT2549のプレクタシンコード配列におけるイントロンの配列を、標準のインビトロ突然変異発現及びSOEを用いるより、修飾し、単一の特別な塩基を導入し、それにより、イントロン内に制限部位を創造した。得られるイントロン含有(59bp)プレクタシンコード配列を、配列番号17として示す。対応する発現プラスミドを、pMT2647と命名した。
【0121】
pMT2647を用いて、WO03/044049号に記載のようにして、アスペルギラス・オリザエBECh2を形質転換した。まず第1に、14個の個々の形質転換体を2度、再単離し、YPM培地(1%酵母抽出物、2%バクトペプトン及び2%マルトース)上で増殖し、そして最終的に、10μlのサンプルをWO03/044049号に記載のようにして、SDSゲル上で分析した。いくつかの形質転換体に関して、生成されるプレクタシンの量は、イントロンフリーcDNAコードのプレクタシンをコードする発現プラスミドを有するA. オリザエの形質転換に関して、それらの増殖条件下で得られた、推定される50mg/lの最大レベルを相当に超えることが、染色強度から明白であった(WO03/044049号を参照のこと)。
【0122】
14個のpMT2549形質転換体のいくつかは、WO03/044049号において分析された30イントロン以下の形質転換体よりも、高いレベルのプレクタシンを形成することが明らかであるが、個々のアセトアミド選択された形質転換体は、個々の形質転換体間での収率の相当な差異をもたらす、個々の形質転換及び組込み現象を表すことが注意されるべきである。そのような収率の差異は、非相同組換えに基づくシステムにおいて生じることが良く知られており、そして一般的に、ランダム組込み遺伝子座、及び組込まれる発現プラスミドの数の結果であると思われる。従って、確定された遺伝子座で組み込まれる発現ベクターの単一コピーからの発現を比較することが決定された。
【0123】
例2:確定された単一コピーインテグラントからのデフェンシンのアスペルギラス・オリザエにおける発現
イントロン含有プレクタシンコード配列からの発現と、イントロンを欠くcDNAからのプレクタシンのA. オリザエにおける発現とを直接的に比較するために、それらを、それぞれ、pMT2548(WO03/044049号を参照のこと)及びpMT2549(上記)からの約1.1kbのBamH1-Xba1フラグメントを、pJaL485(WO 03008575 (NOVOZYMES A/S). 2003-01-30.の例3を参照のこと)に基づくベクターのBamH1-Xba1フラグメント(8.3kb)にトランスファーした。pJaL485は、選択のために、硝酸レダクターゼのC-末端部分をコードするA. オリザエniaD遺伝子の一部のみを含む。
【0124】
宿主細胞、例えばJaL507を用いて、niaD遺伝子のこの部分における欠失、機能的硝酸レダクターゼ、及び従って、窒素源としての硝酸塩上で増殖する能力を含むJaL294(WO03/008575号における例8を参照のこと)の誘導体を、相同組換えによってのみ再生することができる。この手段で選択されるほとんどの形質転換体は、実際、単一の相同クロスオーバーに起因する単一コピーのインテグラントであることが見出された。niaD部位でのタンデムインテグラントは、低い頻度で発生する。イントロンを欠いている及びイントロンを含むpJaL485誘導発生プラスミドを、それぞれpMT2777及びpMT2836と命名した。それらのプラスミドの個々のために、A. オリザエJaL507の4個の形質転換体が選択され、そしてniaD遺伝子座で相同的に組み込まれた形質転換プラスミドの単一コピーを含むことが、サザン分析により示された。
【0125】
pMT2777誘導A. オリザエ形質転換体を、MT2882-2885と命名し、そしてpMT2836誘導形質転換体をMT2886-2889 と命名した。形質転換体MT2882−2889の個々を、上記のようにしてYPM上で増殖し、そして3及び7日の増殖後、培養上清液からのサンプル10μlを、上記のようにして、PAGE SDSゲルにより分析した。この結果は、個々のプラスミドを有する形質転換体間で非常に低い分散性を明らかに示す(それらは独立しているが、しかし同一の株であるべきであるので、予測される)。他方では、MT2886-2889(イントロン含有)における発現レベルは、MT2882-2885(イントロン欠失)における発現レベルよりも高いことが明白である。
【0126】
MT2882-2889の7日目のサンプルにおける相対的プレクタシンレベルをまた、ELISAアッセイにより決定した(例4を参照のこと)。
【0127】
例3:異なった位置でイントロン及び/又は異なったイントロンを含む遺伝子からのデフェンシンの高められた発現
例えばE. コリ及びS. セレビシアエベクターからのプレクタシン変異体コード配列のアスペルギラス発現ベクターへのトランスファーを促進するために、成熟プレクタシンコード配列に本来位置する位置からプレプロ−ペプチドコード配列における位置にプレクタシンイントロンを移動することが決定された。
【0128】
これを行うためには、突然変異を、シグナルペプチドコード配列に位置するMluN1をもたらすインビトロ突然変異誘発により、イントロン欠失プレクタシンコード配列に導入した。シグナルペプチドにおけるアミノ酸変更を可能にすることにより(Leu17がAlaに変更される)、MluN1部位を導入することが可能である。このアミノ酸変更は、通常使用されるシグナル予測プログラムによれば、シグナルペプチド機能を害することが予測されない。イントロン欠失MluN1含有プレクタシンコード配列の配列は、配列番号18として示され;対応するアスペルギラス発現プラスミドは、pMT2898と呼ばれる。
【0129】
A. ニガーグルコアミラーゼの第2イントロンから誘導され、そして55bpのSnaB1-Pvu2(WO 03104457 (NOVOZYMES A/S). 2003-12-18.の例1を参照のこと)としてプラスミドpMT2374から切除され得るよう構成されたイントロンを、pMT2898のMluN1部位に挿入し、イントロンが適切な配向で挿入されていることが確かめられているpMT2899を得た。pMT2899のイントロン含有プレクタシンコード配列の配列を、配列番号19として示す。
【0130】
また、成熟プレクタシンをコードする配列に本来存在するイントロンを、それがSnaB1-Pvu2フラグメントとして同様に移動されるよう、合成的に製造した。これは、TからCに、最後の、但し2個の塩基を変更することによってのみ可能であった。このイントロンをまた、pMT2898のMluN1部位にトランスファーし、正しいイントロン配向が配列決定により確かめられているpMT2900を得た。pMT2900のイントロン含有プレクタシンコード配列の配列を、配列番号20として示す。
【0131】
プラスミドpMT2988, 2899及び2900を用いて、アセトアミド上での増殖について選択するA. オリザエBECh2を形質転換した。個々のプラスミドを有する約20個の形質転換体を、上記のようにして、2度、再単離し、そしてYPM上で増殖した。上清液のSDS PAGEゲルから、平均プレクタシン発現レベルが、イントロン欠失構造体pMT2898に比較して、イントロン含有構造体pMT2899及びpMT2900を有する形質転換体に関して、相当に高いことが明白であった。再び、個々のアセトアミド選択形質転換体間の発現レベルは広く異なるので、上記例2に記載のようにして、MT2898−2900の発現カセットを、pJaL485由来のniaDに基づく発現プラスミドにトランスファーすることが決定された。
【0132】
得られる発現プラスミドは、それぞれpMT2898, pMT2899 及び pMT2900に対応する、pMT2901, pMT2902, 及びpMT2903であった。pMT2901−2903を用いて、上記例2に記載のようにして、niaD欠失宿主JaL507を形質転換した。多くの形質転換体を、個々の形質転換のために再単離した。形質転換体を、上記のようにして、YPM上で増殖し、そして上清液をSDS PAGEゲル上で試験した。また、この場合、発現レベルは、構造体pMT2901を有する形質転換体よりも、イントロン含有構造体pMT2902及びpMT2903に関して、高いことが明白である。
【0133】
形質転換体が実際、単一コピーのインテグラントであることがサザン分析によりわかっているが、しかし実験から、硝酸塩選択された大部分の形質転換体が、タンデム組込みが生じたとしても、単一コピーのインテグラントであることが示され得る。2個の形質転換体を、pMT2901 (株MT2946 及びMT2947), pMT2902 (株MT2948 及び MT2949), 及び pMT2903 (株MT2952及びMT2953)の個々のための代表的株として選択した。
プレクタシンのELISA定量化をまた、MT2946−2949について行った(例4を参照のこと)。
【0134】
例4:競争ELISA−アスペルギラス・オリザエ発酵におけるプレクタシン収率の評価
精製されたプレクタシンに対して生成されたウサギポリクローナル抗体を用いて、間接的競争ELISAを適用し、アスペルギラス・オリザエ発酵ブイヨンにおける収率を評価した。このタイプのアッセイは、抗血清が生成される場合、所定のタンパク質/ペプチドの量を定量化するために一般的に適用される標準方法である。
【0135】
次の材料及び緩衝液を使用した:
−プレクタシン−PCT出願WO03/044049号に記載されるデフェンシン;
- F96 MaxiSorp プレート (Nunc, カタログ番号439454);
- F96 Microwell プレート (Nunc, カタログ番号269787);
- 脱脂粉乳(MERCK, カタログ番号1.15363.0500);
- Tween 20 (MERCK, カタログ番号8.22184.0500);
- プレクタシン特異的ウサギポリクローナル抗体(Novozymes);
- ブタ抗−ウサギ免疫グロブリン/HRP (DAKO, P0448) ;
- TMB Plus, Ready-to-Go (KemEnTek, カタログ番号: 4390);
【0136】
- 硫酸 (MERCK, カタログ番号: 1.00731.1000);
- PBS, pH 7.2, 1L:
・8.00 g NaCl,
・0.20 g KCl,
・1.04 g K2HPO4 ,
・0.32 g KH2PO4;
-ブロッキング緩衝液: PBS, 2 % 脱脂乳;
- 洗浄緩衝液: PBS, 0.05% Tween 20;
- 希釈緩衝液: PBS, 0.5 % 脱脂乳, 0.05 % Tween 20。
【0137】
手短には、希釈されていない及び一連の2倍希釈の培養物ブイヨンを、希釈緩衝液中、1:1000のポリクローナル抗体と共にプレインキュベートした。室温での2時間のインキュベーション後、それらのサンプルを、プレクタシンにより予備被覆されたプレート(0.1μg/mlのプレクタシンにより被覆され、そして残留結合は、ブロッキング緩衝液を用いてブロックされた)にトランスファーした。室温での1時間のインキュベーションの後、結合された抗体を、第2抗体(ブタ抗ウサギ−HRP)及びその後、色原体(TMB+)を用いて検出した。プレクタシン結合された抗体の検出を、抗体結合の滴定曲線をもたらす、450nmでの吸光度を通して測定した。
【0138】
アッセイを通して、プレートを洗浄緩衝液を用いて洗浄し、そして物質の希釈を、その製造業者(DAKO&KemEnTck)により記載のようにして行った。
【0139】
解釈:ウェルに結合される抗体の検出の不在は、未知の発酵ブイヨンへの抗体の完全な結合(阻害)が存在したことを意味し;ところが測定される最大吸光度は競争体(未知の発酵ブイヨン)による阻害の不在に等しい。この場合、本発明者は、ウェルへの結合の50%を阻害することが必要とされる量(希釈されたブイヨン)を推定することができた。結果は、下記表に示される。結果は、イントロン欠失の(MT2882, MT2883, MT2884 及び MT2885)を有する発酵ブイヨンにより測定される収率に対して相対的に計算された。結果は、表1に示される。
【0140】
結果は、イントロンを含む遺伝子構造体を用いることにより、発現レベルが、イントロン欠失の遺伝子構造体を用いることにより得られる発現レベルの約330%まで上昇したことを意味する。
【0141】
【表1】

【0142】
例5:ユーロチウム・アムステロダミ(Eurotium amstelodami)からのデフェンシンの高められた発現
ユーロチウム・アムステロダミのからのcDNAをコードするデフェンシンは同定されており、そしてそのデフェンシンをユーロシンと命名した(DK 2005/000725 (NOVOZYMES A/S)の例又は配列番号3を参照のこと)。前記cDNAを、活性ユーロシンデフェンシンペプチドを得るために、A. オリザエにおいて発現した。その発現レベルを高めるために、ゲノムDNA配列(2個のイントロンを含む)を含む発現構造体を製造した。
E. アムステロダミからのゲノムDNAを、菌類ゲノムDNAの調製についての標準方法を用いて調製した。約50ngのゲノムDNAを、次のプライマーとしてのPCR反応において鋳型として使用した。
プライマーA:TCTTGGATCCACCATGCACTTCACCAAGGTCTCC(配列番号21)
プライマーB:TCTTCTCGAGTTAGAAAGAACAGGTGCAGGTAC (配列番号22)
【0143】
10pモルの個々のプライマーを、50μlの反応体積で使用した。アニーリング温度は、55℃であり、そして拡張は72℃で1分間であった。合計35サイクルを、Expand High Fidelity PCR System (Roche)を用いて行った。PCR生成物を、BamH1及びXho1により消化し、PCRプライマーにより導入されたオーバーハングを切除した。消化物を2%アガロースゲル上で試験し、そして約400bpのバンドを単離した。単離されたバンドを、BamH1-Xho1消化されたプラスミドpMT2786(PCT/DK2005/000725号の例2を参照のこと)中に連結し、そしてE. コリMT173を形質転換し、ロイシン原栄養性について選択する。BamH1-Xho1挿入体を配列決定し、そして以前に特徴づけられたcDNA(PCT/DK2005/000725号又は配列番号3を参照のこと)に対応し、また、それぞれ45及び53個の塩基の2種のイントロン配列を含むプレプロ−ユーロシン配列をコードすることを示した。BamH1-Xho1の配列及び構造体は、配列番号23で示される。その挿入体を含むアスペルギラス発現プラスミドを、pMT2945と命名した。
【0144】
pMT2945を用いて、A. オリザエBECh2を、例1に記載のようにして形質転換し、そして20の形質転換体を、例1におけるようにして、再単離し、そして発酵した。上清液を、上記のようにして、SDSゲル上で分析した。前のようにして、同様の実験をまた、ユーロシン、cDNaに基づく発現プラスミドpMT2935(PCT/DK2005/000725号の例2を参照のこと)を有する形質転換体を用いて行った。
【0145】
cDNA構造体pMT2935及びイントロン含有構造体pMT2945に基づく形質転換体はすべて、SDSゲル上でサイズ的にユーロシンに対応する明白なバンドを生成した。
イントロン含有ゲノム構造体pMT2945に基づく形質転換体は、cDNA構造体pMT2935に基づかれる形質転換体により得られる発現レベルの300〜400%の生成することが推定された。
【0146】
例6:デフェンシンを同定するためのPFAMデータベースからのHMMファイルの使用
隠されたmarkovモデルプロフィール(HMMプロフィール)を用いての配列分析を、インターネット上でのオンラインで、又は良く知られたHMMERの自由に入手できるソフトウェアパッケージを用いて、コンピューター上で局部的に実施することができる。現在のバージョンは、2003年10月からのHMMER2.3.2である。
【0147】
HMMプロフィールは、良く知られたPFAMデータベースから得られる。現在のバージョンは、2004年11月からのPFAM16.0である。HMMER及びPFAMの両者は、例えばWashington University in St. Louis (USA), School of Medicine (http://pfam.wustl.edu and http://hmmer.wustl.edu)からすべてのコンピュータープラットフォームについて入手できる。
【0148】
問題のアミノ酸配列、又はそのフラグメントが次の5種のPFAMファミリーの1つに属する場合、そのアミノ酸配列は本発明のデフェンシンである:
- デフェンシン_β 又は "β デフェンシン", 受託番号: PF00711 ;
- デフェンシン_propep 又は "デフェンシン プロペプチド", 受託番号: PF00879;
- デフェンシン_1 又は"哺乳類デフェンシン", 受託番号: PF00323;
- デフェンシン_2 又は "節足動物デフェンシン", 受託番号: PF01097;
- γ-チオニン 又は "γ-チオニンファミリー", 受託番号: PF00304。
【0149】
アミノ酸配列は、それが0.1以上であるE−値を生成し、そしてPFAMデータベースがオンラインで使用されるか、又はhmmpfamプログラム(HMMERソフトウェアパッケージからの)が局部的に使用される場合、ゼロ以上か又はゼロに等しい評点を生成する場合、本発明に従って、PFAMファミリーに属する。
【0150】
配列分析がhmmpfamプログラムを用いて局部的に行われる場合、PFAMデータベースからHMMプロフィールを得る(ダウンロードされる)必要がある。次の2種のプロフィールが個々のファミリーのために存在し:世界的調査のためのxxx_ls.hmm、及び局部調査のためのxxx_fs.hmm(“XXX”はファミリーの名称である)。これは、上記5種のファミリーのために合計10のプロフィールを製造する。
【0151】
それらの10のプロフィールを個々に使用するか、又は例えば、デフェンシン・hmmと命名され得る単一のプロフィール中に連結され得る(追加され得る)(テキストエディターを用いて−プロフィールはASCIIファイルである)。次に、問題のアミノ酸配列が、次のコマンドラインを用いることにより評価され得る:
hmmpfam -E 0.1 defensin.hmm sequence_file
【0152】
ここで“sequence_file”は、HMMERソフトウェアパッケージにより認識されるいずれかのフォーマットにおける問題のアミノ酸配列を有するファイルである。
評点がゼロ(0.0)よりも大きいか又は等しく、そしてE−値が0.1以上である場合、問題のアミノ酸配列は、本発明によればデフェンシンである。
PFAMデータベースはさらに、BATEMAN, . The Pfam Protein Families Database. Nucleic acids res., ary Janu vol.32, p. D138-D141. ISSN 0305-1048に記載されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デフェンシンをコードする外来性核酸配列、及び1又は複数のイントロン配列を含んで成る核酸構造体を含んで成る組換え糸状菌宿主細胞。
【請求項2】
アスペルギラス(Aspergillus)宿主細胞である請求項1記載の宿主細胞。
【請求項3】
アスペルギラス・ニガー(Aspergillus niger)又はアスペルギラス・オリザエ(Aspergillus oryzae)である請求項2記載のアスペルギラス宿主細胞。
【請求項4】
前記デフェンシンが、αデフェンシン、βデフェンシン、θデフェンシン、節足動物デフェンシン、昆虫デフェンシン又は植物デフェンシンである請求項1〜3のいずれか1項記載の宿主細胞。
【請求項5】
イントロン配列を有さない核酸構造体を用いる場合に得られる量の少なくとも150%の量のデフェンシンを生成することができる請求項1〜4のいずれか1項記載の宿主細胞。
【請求項6】
デフェンシンペプチドをコードする核酸配列及び1又は複数のイントロン配列を含んで成る核酸構造体を含んで成る糸状菌宿主細胞を培養し;そしてデフェンシンペプチドを回収することを包含する、糸状菌宿主細胞におけるデフェンシンの組換え生成方法。
【請求項7】
前記糸状菌宿主細胞が、アスペルギラス宿主細胞である請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記アスペルギラス宿主細胞が、アスペルギラス・ニガー又はアスペルギラス・オリザエである請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記デフェンシンが、αデフェンシン、βデフェンシン、θデフェンシン、節足動物デフェンシン、昆虫デフェンシン又は植物デフェンシンである請求項6〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
イントロン配列を有さない核酸構造体を用いる場合に得られる量の少なくとも150%の量のデフェンシンの生成をもたらす請求項6〜9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
デフェンシンペプチドをコードする核酸配列及び1又は複数のイントロン配列を含んで成る核酸構造体の、糸状菌宿主細胞におけるデフェンシンの組換え発現レベルを改良するための使用。
【請求項12】
前記糸状菌宿主細胞が、アスペルギラス宿主細胞である請求項11記載の使用。
【請求項13】
前記アスペルギラス宿主細胞が、アスペルギラス・ニガー又はアスペルギラス・オリザエである請求項12記載の使用。
【請求項14】
前記デフェンシンが、αデフェンシン、βデフェンシン、θデフェンシン、節足動物デフェンシン、昆虫デフェンシン又は植物デフェンシンである請求項11〜13のいずれか1項記載の使用。
【請求項15】
前記デフェンシンの発現レベルが、イントロン配列を含まない核酸構造体を使用する場合に比較して、少なくとも50%高い請求項11〜14のいずれか1項記載の使用。

【公表番号】特表2008−532533(P2008−532533A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−501288(P2008−501288)
【出願日】平成18年3月14日(2006.3.14)
【国際出願番号】PCT/EP2006/060695
【国際公開番号】WO2006/097464
【国際公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(500586299)ノボザイムス アクティーゼルスカブ (164)
【Fターム(参考)】