説明

系統電力安定化システム、系統電力安定化方法、及び充放電器

【課題】分散型電源が接続されている配電系統毎に、より上位の変電設備への影響を最小限に抑えつつ、生じた電力変動を吸収することを可能とし、電力変動吸収用の二次電池に過度の負荷を与えない系統電力安定化技術の提供。
【解決手段】配電系統における供給電力の変動量を検出する電力管理装置と、二次電池搭載機器に対して前記配電系統からの充電又は前記配電系統への放電を行うための充放電器と、充放電動作設定部とを備え、前記電力管理装置が、前記変動量が所定の閾値を超えたと判定した場合、前記充放電動作設定部の設定状態を調べ、前記変動量を最小化するために、接続された前記二次電池搭載機器の充電又は放電動作を実行させることが可能である前記充放電器があると判定した場合、当該充放電器から前記変動量を最小化する充電又は放電動作を可能とする充放電器の組み合わせを決定し、当該充放電器に対して充電又は放電動作の実施命令を送出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は系統電力安定化システム、系統電力安定化方法、及び充放電器に係わり、特に分散型電源が接続されている配電系統毎に、より上位の変電設備への影響を最小限に抑えつつ、生じた電力変動を吸収することを可能とする系統電力安定化システム、系統電力安定化方法、及び充放電器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化対策の推進等により、いわゆる新エネルギーの利用拡大が急速に進んできている。代表的な新エネルギーの形態である太陽光発電についてもその売電価格が上昇するにつれ、オフィスビル、集合・個人住宅への普及率も高くなってきた。このような配電系統に接続される小規模な発電設備は分散型電源と呼ばれ、電力事業者が運営する従来の発電所が生産する電力を補完する役割を果たすが、一方でその普及率が高くなってくると、天候の変化等による発電量の急変に起因して、配電系統の安定性を阻害する要因ともなりうる。
【0003】
この分散型電源の導入に伴う問題に対しては、従来様々な解決手法が提案されている。主要なものとしては、例えば配電系統に分散型電源とともに蓄電池を接続して常時、あるいは電力余剰時にはこれを充電し、電力不足時には充電された蓄電池から放電させることで系統電力の変動を補おうとする構成がある。また、今後電気自動車(Electric Vehicle、以下「EV」)が急速に普及することを見越して、EVに搭載されている蓄電池を配電系統に接続してその充放電機能を利用する、いわゆるV2G(Vehicle to Grid)のコンセプトも提案されている。
【0004】
特許文献1は、電力貯蔵事業者が需要家の電力系統内に分散型電源としての電力貯蔵装置を設置し、制御センターより情報通信ネットワークを介して需要家の電力負荷を監視しつつ電力貯蔵装置を遠隔操作してその運用を行う電力貯蔵装置の運用システムの構成を開示する。また、特許文献2は、少なくとも2つ以上の素電池からなり、正負の出力端子を有する組電池と、前記素電池の電圧をそれぞれ検出する電圧検出回路と、前記電圧検出回路によって検出された電圧検出信号を電力線通信信号に変調し、変調した電力線通信信号を前記正負の出力端子間に重畳して出力する電力線通信回路とを備える電池監視回路の構成を開示する。これにより、複数の素電池の電圧情報を、一つの電力線通信回路を用いて組電池の出力端子から電力線通信により外部に出力することができるので、通信用の配線を必要とせず多数の素電池の過充電状態および過放電状態をモニタすることができる効果を奏すると述べている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−60826号公報
【特許文献2】特開2009−89453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1における電力貯蔵装置のように、二次電池の充放電機能によって太陽光発電のような分散型電源の電力変動補完(いわゆるしわ取り)を実現しようとする場合には、太陽光発電設備から発生する電力の変動に応じて二次電池への充放電が連続的に繰り返されることから、二次電池の寿命に悪影響を及ぼすことが考えられる。この点、特許文献2には、二次電池の過放電、過充電等の発生を監視する構成が提案されているが、前記した二次電池への頻繁な充放電が反復されるという事象は解消されないため、根本的な解決には至らないと考えられる。また、EVの二次電池を前記しわ取り用に接続してある場合には、EV所有者の意思とは無関係に系統電力の変動状況に従って充放電が実行されることになるため、EV所有者が充電しようと考えてEVを電源に接続しておいたにもかかわらず、期待通りに充電がなされない場合が起こりうるという問題も考えられる。
【0007】
本発明は上記の、及び他の課題を解決するためになされたものであり、その一つの目的は、分散型電源が接続されている配電系統毎に、より上位の変電設備への影響を最小限に抑えつつ、生じた電力変動を吸収することを可能とし、また電力変動吸収用の二次電池に過度の負荷を与えない系統電力安定化システム、系統電力安定化方法、及び充放電器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために本発明の一態様は、分散型電源を有する配電系統内で発生する系統電力の変動を抑制するための系統電力安定化システムであって、前記配電系統における供給電力を監視して、その供給電力の変動量を検出する電力管理装置と、前記配電系統に接続され、二次電池を搭載した機器である二次電池搭載機器に対して前記配電系統からの充電又は前記配電系統への放電を行うための充放電器について、その充電又は放電動作の実行状態を制御する充放電器制御部と、前記充放電器について、充電動作を行わせるか、放電動作を行わせるかを設定するための充放電動作設定部とを備え、前記電力管理装置が、前記配電系統の前記供給電力に発生した前記変動量が所定の閾値を超えたと判定した場合、前記充放電器の前記充放電動作設定部の設定状態を調べ、前記変動量を最小化するために、接続された前記二次電池搭載機器の充電又は放電動作を実行させることが可能である前記充放電器があると判定した場合、当該充放電器から前記変動量を最小化する充電又は放電動作を可能とする充放電器の組み合わせを決定し、当該充放電機に対して充電又は放電動作の実施命令を送出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様に係る系統電力安定化システム、系統電力安定化方法、及び充放電器によれば、分散型電源が接続されている配電系統毎に、より上位の変電設備への影響を最小限に抑えつつ、生じた電力変動を吸収することを可能とし、また電力変動吸収用の二次電池に過度の負荷を与えない効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る系統電力安定化システム1を設置した配変電系統模式図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る充放電器500の構成例を示す図である。
【図3】系統電力安定化システム1に使用されるコンピュータ10の構成例である。
【図4】系統電力安定化システム1の親局装置2000のソフトウェア構成例を示す図である。
【図5】系統電力安定化システム1の中継局装置3000のソフトウェア構成例を示す図である。
【図6】充放電器情報テーブル2500の構成の一例を示す図である。
【図7】親局装置2000等で実行される系統安定処理フローの一例を示す図である。
【図8】親局装置2000等で実行される電力減少時安定化処理フローの一例を示す図である。
【図9】親局装置2000等で実行される電力増加時安定化処理フローの一例を示す図である。
【図10】親局装置2000で実行される他系統通知処理フローの一例を示す図である。
【図11】他系統から通知を受けた親局装置2000等で実行される系統安定処理フローの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明をその一実施形態に即して添付図面を参照しつつ説明する。
【0012】
==系統電力安定化システムの概要==
図1に、本発明の一実施形態に係る系統電力安定化システム1が適用されている配変電系統の一例を模式的に示している。図1の配変電系統では、上位の変電所100の配下にx配電系統とy配電系統の2つの配電系統が接続されており、それぞれ配変電所200、300から電力が供給されている。変電所100はさらに上位の変電所(高圧変電所、特高圧変電所等)に接続されてそこから電力供給を受けて降圧し、x配電系統の配変電所200とy配電系統の配変電所300に電力を供給している。
【0013】
x配電系統の配変電所200には、変圧器2100、2200、及び2300が接続されており、各需要家向けにAC200VあるいはAC100V電源を供給している。y配電系統の配変電所300にも、同様に変圧器3100、3200が接続されている。
【0014】
x配電系統では、各需要家の変圧器2100、2200、2300に、インバータ2120、2220、2320及び太陽電池(PhotoVoltaic cell、「PV」)2130、2230、2330と、充放電器2140、2240、2340が接続されている。y配電系統では、各需要家の変圧器3100、3200に充放電器3140、3240がそれぞれ接続され、上流側の需要家にある変圧器3100にはさらに、インバータ3130及びPV3130が接続されている。
【0015】
インバータ2120、2220、2320、3120とPV2130、2230、2330、3130とが組み合わされて、太陽光発電設備を構成している。PV2130、2230、2330、3130は、太陽光を受けて、その強度に応じた直流電力を発生する。インバータ2120、2220、2320、3120は、PV2130、2230、2330、3130からの直流電力を交流電力に変換して配電系統に戻す機能を有する。PV2130、2230、2330、3130の起電力は太陽光の強度によって大きく変化するため、天候の変化(晴天から曇天等)によりPV2130、2230、2330、3130からの電力が急激に低下した場合には、各配電系統に配変電所200、300から供給すべき電力量が急増する。逆にPV2130、2230、2330、3130からの電力が急増した場合には、各配電系統における余剰電力が増加することとなる。
【0016】
各需要家の変圧器2100、2200、2300、3100、3200には、充放電器2140、2240、2340、3140、3240が接続される。各充放電器2140、2240、2340、3140、3240には、二次電池を搭載した電気機器、例えばEVが接続される。各充放電器2140、2240、2340、3140、3240は、後出の親局装置210、310からの制御指令を、中継局装置2110、2210、2310、3110、3210を介して受信することにより、接続されている二次電池への充電あるいは二次電池からの放電を制御する機能を有する。充放電器2140、2240、2340、3140、3240の構成と作用については後述する。
【0017】
次に、以上の配電系統に適用されている系統電力安定化システム1の構成について説明する。系統電力安定化システム1は、上位変電所装置110、親局装置210、310(電力管理装置)、中継局装置2110、2210,2310、3110、3210を備え、上位変電所装置110と親局装置210、310の間、親局装置210、310と中継局装置2110、2210,2310、3110、3210の間は通信回線400によって通信可能に接続されている。各需要家に設置されている充放電器2140、2240、2340、3140、3240も、系統電力安定化システム1を構成する要素である。
【0018】
上位変電所装置110は、x配電系統の親局装置210、y配電系統の親局装置310から情報を取得して両配電系統の稼働状況を監視し、管理する機能を有するコンピュータであるが、本実施形態においては各配電系統における電力変動をその配電系統のレベルで吸収する構成であるため、本実施形態の系統電力安定化システム1の構成には含まれない。
【0019】
親局装置210、310は、それぞれx、y配電系統の系統電力の変動を監視し、各配電系統における電力変動が所定の閾値を超えたか否かを判定し、その判定結果に応じて充放電器2140、2240、2340、3140、3240の充放電設定を制御する。また、各親局装置210、310は、自身が管理しているx、y配電系統における電力変動が、当該配電系統内での充放電器2140、2240、2340、3140、3240の制御によって吸収できない場合には、他の親局装置210、310と協働して電力変動を吸収する機能も備えている。
【0020】
中継局装置2110、2210,2310、3110、3210は、各需要家に設置されている変圧器2100、2200、2300、3100、3200に接続され、各需要家への電力供給状況を監視する機能、親局装置210、310から各充放電器2140、2240、2340、3140、3240への制御指令を中継する機能を有する。このため、各充放電器2140、2240、2340、3140、3240と中継局装置2110、2210,2310、3110、3210は、それぞれ通信回線400によって通信可能に接続されている。
【0021】
通信回線400は、コンピュータ間を接続するデータ通信回線であればどのようなものであってもよく、例えばLAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、あるいは専用線が採用される。
【0022】
なお、x、y各配電系統には図示以外の需要家機器が接続されていてもよく、また上位変電所100はx、y配電系統以外の配電系統をさらに有していてもよい。
【0023】
==充放電器の構成==
次に、本実施形態の系統電力安定化システム1で使用される充放電器2140、2240、2340、3140、3240の構成について説明する。なお、充放電器2140、2240、2340、3140、3240は同様の構成を有しているので、以下充放電器単体については充放電器500として示すこととする。図2に、充放電器500の構成例を示している。充放電器500は、配電系統から充放電器500に接続された機器に搭載されている二次電池への充電、当該機器から配電系統への放電を、親局装置210、310からの制御指令に応じて切り替える機能を有する。
【0024】
充放電器500は、電力量計510、交流直流変換器520、切替スイッチ531、532、533、逆流防止ユニット540、充放電設定器550、及び充放電器制御部560を備えている。電力量計510、交流直流変換器520、切替スイッチ531、532、533、逆流防止ユニット540、及び充放電設定器550は、変圧器2100、2200、2300、3100、3200と充放電器500に接続される二次電池搭載機器との間の電力線に介設され、充放電器500内の充放電回路を構成する。充放電器制御部560は、この充放電回路を管理し制御する機能を有する。プラグ570は、充放電器500に接続される二次電池搭載機器、例えばEVに設けられている充電用接続プラグPLGに接続される。充電用接続プラグPLGと充放電器500のプラグ570を介して、充電電流だけでなく、充放電時の電力量等の情報を充放電器500の充放電器制御部560に送信する構成とすることもでき、その際にはJEVS(Japan Electric Vehicle Standard、日本電動車両規格)及び他の通信規格に従って充放電器500とEVとが通信可能に接続されるように構成することができる。
【0025】
電力量計510は、配電系統からの充電電力、あるいは二次電池搭載機器から配電系統への放電電力を計測するための交流電力計であり、計測結果の電力量値データは、後述する充放電器制御部560の充放電管理部561へ送信される。
【0026】
交流直流変換器520は、配電系統からの交流充電電流を直流に、二次電池搭載機器からの直流放電電流を交流に変換するための電力変換器であり、例えば半導体電力素子を備えたコンバータ/インバータとして構成することができる。
【0027】
切替スイッチ531、532、及び533は、充放電器500内の充放電回路を、充電回路、放電回路、充電及び放電回路のいずれとして構成するかを設定するためのスイッチ群であり、親局装置210、310からの制御指令に従って、後述する充放電器制御部560の充放電管理部561からの制御信号によって切り替えられる。切替スイッチ531は、放電回路のオンオフを、切替スイッチ533は充電回路のオンオフを切り替える。切替スイッチ532は、充電回路又は放電回路を選択的に切り替えることができる充放電回路を設定する。図2には切替スイッチ531、532、533を機械的接点で示しているが、適宜のスイッチング素子など、スイッチング機能を有するいかなる手段を用いて構成してもよい。
【0028】
逆流防止ユニット540は、切替スイッチ531、532、533によって構成される充放電回路における充放電電流の逆流を防止するために設けられる、例えばダイオード群である。
【0029】
充放電設定器550は、充放電器500が設置されている需要家のニーズに応じて、充放電器500に接続されている二次電池搭載機器に対する充放電器500の機能を、充電専用とするか、放電専用とするか、あるいは配電系統側の電力需給状況に応じて充電、放電のいずれもが可能となるようにするかを需要家が設定するための手動スイッチである。この充放電設定器550により、プラグ570を介した放電回路が切替スイッチ531を介して、充電回路が切替スイッチ533を介して設定される。充放電設定器550が「充電」又は「放電」に設定されていた場合は、EV等の二次電池搭載機器への充電あるいはそれら機器からの放電タイミングは、切替スイッチ531又は533によって制御される。また、充放電設定器550により「充放電」が設定されていた場合には、切替スイッチ532を介した充放電回路が構成され、切替スイッチ532によってEV等の二次電池搭載機器への充電あるいはそれら機器からの放電タイミングが制御される。すなわち、充放電設定器550が「充電」又は「放電」に設定されていた場合、配電系統側の電力需給状態によって需要家の意に反した二次電池搭載機器との間の充放電が行われることはない。
【0030】
充放電設定器550にはまた、時間条件設定部551が設けられている。時間条件設定部551は、需要家が二次電池搭載機器への充電に関する時間条件、例えば電気料金の深夜割引が受けられる「深夜充電設定」、あるいはEV等の二次電池搭載機器を使用していない任意の時間を充電可能時間として設定することができる「タイマー充電設定」等の充電時間帯条件を設定することができるようにする設定ユニットである。時間条件設定部551には、前記の設定を需要家に可能とする任意の構成の入出力インタフェース(タッチパネル付き液晶ディスプレイ、ボタンスイッチ、ダイアルスイッチ等)が設けられ、その設定条件情報は充放電器制御部560の充放電管理部561に送信される。なお、配変電系統の電力需給状態によっては、自系統及び近隣の他配電系統に対して、充放電器500に設定されている充電時間帯条件を考慮した負荷創出、つまり充電時間帯条件を考慮して充電動作を行う充放電器500を新たに設定する制御を実行しても、系統電力変動を十分に吸収することができない場合が考えられる。本実施形態では、このように緊急の負荷創出が必要であると判断された場合に、時間条件設定部551によって設定されている充電時間帯設定を満たしていない充放電器500についても、後述の親局装置210、310から充放電器制御部560を通じて充放電器500に強制的に充電動作させることができる構成を採用することができる。
【0031】
充放電器制御部560は、充放電器500について、電力量計510の測定結果を取得して中継局装置、及び親局装置210、310へ転送する機能、充放電設定器550及び時間条件設定部551の設定状態を取得して中継局装置、及び親局装置210、310へ転送する機能を有し、これらは充放電管理部561が実行する。充放電器制御部560は例えばプログラム可能なワンチップマイコン等によって構成することができ、充放電管理部561はそのマイコン上で実行される制御プログラムとして実現することができる。
【0032】
充放電器制御部560にはまた、EVインタフェース(EVI/F)562と通信インタフェース(通信I/F)563が設けられる。EVI/F562は、前記したようにEVから充放電電力情報等の接続機器情報を所定の通信規格によって受信するインタフェース回路であり、受信した接続機器情報は充放電管理部561によって中継局装置、親局装置210、310へ転送される。通信I/F563は、後述する中継局装置2110、2210、2310、3110、3210に通信回線400を介して接続される通信用インタフェース回路である。
【0033】
==親局装置210、310、中継局装置2110、2210、2310、3110、3210==
次に、親局装置210、310、及び中継局装置2110、2210、2310、3110、3210の構成と作用について説明する。なお、前記の充放電器500の場合と同様に、親局装置単体、中継局装置単体として言及する場合には、それぞれ親局装置2000、中継局装置3000と示すこととする。図3に親局装置2000、中継局装置3000として使用することができるコンピュータ10の構成例を示している。
【0034】
図3に示すように、コンピュータ10は、プロセッサ11、メモリ12、補助記憶装置13、入力装置14、出力装置15、及び通信インタフェース(以下「通信I/F」)16を備えている。プロセッサ11、メモリ12、補助記憶装置13、入力装置14、出力装置15、及び通信I/F16は、バス17によって相互に通信可能に接続されている。
【0035】
プロセッサ11は、後述する親局装置2000、中継局装置3000の機能を実現する各プログラムを実行するための中央処理装置であり、例えばCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)等として構成される。メモリ12は、プログラム、各種テーブル等を格納しておく記憶媒体であり、例えばRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)を含んで構成される。補助記憶装置13は、プログラム、各種データ等を格納するための記憶媒体であり、例えばハードディスクドライブ(Hard Disk Drive、HDD)、半導体記憶ドライブ(Solid State Drive、SSD)等で構成される。
【0036】
入力装置14は、例えば配電系統を管理する電力事業者の作業員等による操作入力を受け付けるためのユーザインタフェースであり、例えばキーボード、マウス、タッチパネル等のデバイスで構成される。出力装置15は、ユーザインタフェース用画面、各種データ等を出力するためのデータ出力部であり、例えば液晶モニタ、プリンタ等で構成される。通信I/F16は、他の親局装置2000、中継局装置3000との間での通信機能を提供する部分であり、例えばNIC(Network Interface Card)等を備えて構成される。通信I/F146は、無線LAN機能、あるいは移動体通信網とのデータ交換機能を備えることとしてもよい。
【0037】
なお、親局装置2000、あるいは中継局装置3000で稼働するオペレーティングシステム(Operating System、 OS、後出)は特に特定のシステムに限定されることはない。例えばWindows(登録商標)、UNIX(登録商標)系のオペレーティングシステム、例えばLinux(登録商標)がこのOSとして好適に用いられる。
【0038】
次に、本実施形態の親局装置2000、中継局装置3000のソフトウェア構成について説明する。図4に親局装置2000のソフトウェア構成の一例を、図5に中継局装置3000のソフトウェア構成の一例を示している。図4に示すように、親局装置2000は、データI/O部2100、OS2200、系統電力管理部2300、及び充放電設定管理部2400を備えている。また、親局装置2000は、充放電設定管理部2400が参照する充放電器情報テーブル2500を保持している。
【0039】
データI/O部2100は、OS2200の制御下で、プロセッサ11と、入力装置14、出力装置15、及び通信I/F16との間でのデータ入出力処理を実行する。
【0040】
OS2200は、データI/O部2100によるデータ入出力処理、系統電力管理部2300、及び充放電設定管理部2400の動作のための基盤を提供する基本ソフトウェアである。OS2200として、本親局装置2000として使用することができるコンピュータ10のハードウェア構成に関して前記例示したような各種ソフトウェアを採用することができる。
【0041】
系統電力管理部2300は、各配電系統(本実施形態では図1のx、y配電系統)における系統電力(配電系統の負荷へ流れる潮流電力、及び各需要家のPV2130、2230、2330、3130あるいは充放電器500から戻される逆潮流電力)の変動を各配変電所200、300において測定し、各需要家に設置されたPV2130、2230、2330、3130、3230の起電力急変等に起因して起こりうる系統電力の急減、急増を検出した場合に、後述する充放電設定管理部2400に対して系統電力を安定化させるための充放電器500の充放電状態制御を実行させる機能を有する。
【0042】
充放電設定管理部2400は、後述の中継局装置3000を介して各充放電器500の充放電状態を取得して、後述の充放電器情報テーブル2500に格納する。具体的には、充放電設定管理部2400は、各充放電器500における充放電設定器550の設定状態、時間条件設定部551の設定状態、充放電器制御部560が二次電池搭載機器から取得して格納している接続機器情報を各充放電器500から中継局装置3000を介して取得して充放電器情報テーブル2500に格納する。なお、これらの情報は、各充放電器500の充放電器制御部560又は充放電器制御部560から情報を取得する中継局装置3000が定期的に(例えば1分毎に)親局装置2000に送信するように構成してもよい。
【0043】
次に、充放電器情報テーブル2500について説明する。充放電器情報テーブル2500は、親局装置2000のメモリ12に親局装置2000の稼働開始時に生成されて以後保持される。後述する充放電器情報テーブル2500への記録データは、前記のように、親局装置2000が各充放電器500に指示して取得するように構成してもよいし、各充放電器500の充放電器制御部560又は充放電器制御部560から情報を取得する中継局装置3000が定期的に(例えば1分毎に)親局装置2000に送信するように構成してもよい。図6に、本実施形態での充放電器情報テーブル2500の構成の一例を示している。
【0044】
充放電器情報テーブル2500には、充放電器ID2510、充放電選択スイッチ設定情報2520、充電モード選択情報2530、充放電切替状態情報2540、及び接続機器情報2550の各項目について収集されたデータが記憶される。
【0045】
充放電器ID2510は、各配電系統に接続する需要家に設置されている充放電器500を互いに識別するための識別符号である。本実施形態では、図1に例示するように各配電系統毎に「A、B、C、…」と識別符号を付与しているが、他の態様で識別符号を付与してもよい。
【0046】
充放電選択スイッチ設定情報2520の項目には、各充放電器500に設けられている充放電選択スイッチ550について各需要家が設定している状態が、「充電」、「放電」、及び「充放電」のいずれかの情報として記録される。
【0047】
充電モード選択情報2530の項目には、各充放電器500に設けられている充放電選択スイッチ550の時間条件設定部551について各需要家が設定している状態が、「タイマー(充電許可時間帯情報を含む)」、「深夜」のいずれかの情報として記録される。充電許可時間帯情報は、例えば図6に例示するように、「タイマー(21:00〜04:00)」と記録され、この場合、需要家が「21:00〜04:00の時間帯のみ充放電器500に接続された二次電池搭載機器への充電を許可している」ことを示している。前記のように、緊急負荷創出が必要な状況では、充電許可時間帯の設定はオーバーライドされる。
【0048】
充放電切替状態情報2540の項目には、各充放電器500に設けられている切替スイッチ531、532、及び533の状態が、「充電」、「放電」のいずれかの情報として記録される。
【0049】
接続機器情報2550の項目には、各充放電器500に接続される二次電池搭載機器について、配電系統から充電、あるいは配電系統へ放電した場合に見込まれる潮流電力あるいは逆潮流電力の値がkVA単位で記録される。図6に例示するように、潮流電力には+符号が、逆潮流電力には−符号が付与される。後述するように、親局装置2000は、自身が管理する配電系統での電力変動を低減して安定化させる場合に、いずれの充放電器500に接続されている接続機器(EV等の二次電池搭載機器)について充電又は放電を実行するか、接続機器情報2550の記録内容に基づいて算出して決定する。
【0050】
次に、中継局装置3000の説明に戻ると、図5に示すように、中継局装置3000は、データI/O部3100、OS3200、データ中継処理部3300、及び充放電電力監視部3400を備えている。
【0051】
データI/O部3100は、OS3200の制御下で、プロセッサ11と、入力装置14、出力装置15、及び通信I/F16との間でのデータ入出力処理を実行する。
【0052】
OS3200は、データI/O部3100によるデータ入出力処理、データ中継処理部3300、及び充放電電力監視部3400の動作のための基盤を提供する基本ソフトウェアである。親局装置2000と同様に、OS3200として、本中継局装置3000として使用することができるコンピュータ10のハードウェア構成に関して前記例示したような各種ソフトウェアを採用することができる。
【0053】
データ中継処理部3300は、中継局装置3000が設けられている需要家において配電系統に接続されている各充放電器500から充放電器制御部560を介して送出される、充放電選択スイッチ設定情報2520、充電モード選択情報2530、充放電切替状態情報2540、及び接続機器情報2550の各情報を、親局装置2000に転送する処理を実行する。これらの情報を転送する際には、各充放電器500の充放電器制御部560から各情報に付随されている充放電器ID2510もともに転送される。なお、データ中継処理部3300は、定期的に各充放電器500の充放電器制御部560に指示を送って前記の各情報を取得するようにしてもよい。
【0054】
充放電電力監視部3400は、中継局装置3000が設けられている各需要家における潮流電力又は逆潮流電力を継続的に計測する。
【0055】
親局装置2000のデータI/O部2100、OS2200、系統電力管理部2300、及び充放電設定管理部2400、中継局装置3000のデータI/O部3100、OS3200、データ中継処理部3300、及び充放電電力監視部3400は、該当の機能を備えたコンピュータプログラムをコンピュータ10のプロセッサ11で実行することにより実現される。
【0056】
==系統電力安定処理フローの説明==
次に、以上の構成によって実現される系統電力安定化システム1で実行されるデータ処理について説明する。図7に、系統電力安定化システム1に設けられる親局装置2000、中継局装置3000、及び充放電器500によって実行される系統電力安定化処理フローの一例を示している。なお、図7において、各処理ステップに付した符号の「S」の文字は「Step」を表しており、以下同様である。図7は、一の配変電所(図1における配変電所200又は300)が電力を供給している配電系統に着目して、その配電系統において当該配電系統を管理している親局装置2000によって主として実行されるデータ処理を示している。
【0057】
まず、親局装置2000は、図6の充放電器情報テーブル2500に記録する情報(以下「充放電器情報」という。)を取得するために、中継局装置3000に充放電器情報取得要求を送出する(S701)。中継局装置3000は、この充放電器情報取得要求を各需要家の充放電器500に転送し、各充放電器500は充放電器制御部560でこの取得要求を受信する(S702、S703)。
【0058】
取得要求を受けた充放電器500の充放電器制御部560は、充放電選択スイッチ500、時間条件設定部551、及び切替スイッチ531、532、533から充放電管理部561を介して充放電選択スイッチ設定情報2520、充電モード選択情報2530、充放電切替状態情報2540、及び接続機器情報2550を取得し、自身の充放電器ID2510とともに充放電器情報として中継局装置3000へ送出する(S704)。中継局装置3000は、各充放電器500から受けた充放電器情報を親局装置2000へ転送し(S705)、親局装置2000は受信した充放電器情報を、充放電器情報テーブル2500に記録する。
【0059】
次に、親局装置2000は、系統電力管理部2300が監視している系統電力量について、その変動量ΔPの絶対値が系統電力量の1/2よりも大であるか判定する(S707)。例えば、図7の系統電力安定化処理フローが1分毎に実行される場合には、親局装置2000の系統電力管理部2300によって計測された前回系統電力量に対して、今回系統電力量が半減、又は倍増を超える変動を示したかどうかを判定する。変動量ΔPの絶対値が系統電力量の1/2以下であると判定した場合(S707、No)、本実施形態では系統電力安定化処理は不要であるため、系統電力管理部2300は処理をS701へ戻す。なお、この系統電力安定化処理の要否を判定するための基準は上記の例に限らず適宜設定することができる。
【0060】
一方、S707で変動量ΔPの絶対値が系統電力量の1/2よりも大であると判定した場合(S707、Yes)、系統電力管理部2300は、電力量変動が減少であるか判定し(S708)、減少であると判定した場合(S708、Yes)、電力減少時安定化処理を実行し(S709)、減少でない(増加である)と判定した場合(S708、No)、電力増加時安定化処理(S710)を実行する。電力減少時安定化処理S709、電力増加時安定化処理S710の処理内容については後述する。
【0061】
次いで、系統電力管理部2300は、電力減少時安定化処理S709、電力増加時安定化処理S710のいずれかを実行した後の系統電力量を計測し、系統電力変動量ΔPが低減されたか判定する(S711)。具体的には例えば、系統電力管理部2300は、今回計測した系統電力量と変動発生前の系統電力量との偏差が1%以下であれば系統電力変動量ΔPが低減されたと判定するように設定することができる。系統電力変動量ΔPが低減されたと判定した場合(S711、Yes)、自配電系統内での系統安定化処理によって系統電力量の安定化が達成できたため、系統電力管理部2300は処理をS701へ移行させる。
【0062】
一方、S711で系統電力変動量ΔPが低減されていないと判定した場合(S711、No)、系統電力管理部2300は、緊急負荷創出が必要な状況であるか判定する(S712)。緊急負荷創出は、充放電器500の時間条件設定部551に関して説明したように、自系統及び近隣他系統で充電時間帯条件に従った充電動作を開始させた場合にもなお系統電力変動が十分に安定しないと判定した場合に、充電許可時間帯外の充放電器500についても充電動作を開始させて新たな負荷を作り出すことをいう。S712で緊急負荷創出が必要であると判定した場合(S712、Yes)、系統電力管理部2300は、例えばメモリ12内の適宜のアドレスに緊急フラグをセットして緊急負荷創出が必要な状態を記憶させる(S713)。なお、緊急フラグがセットされるのは、近隣他配電系統の親局装置2000すべてに電力安定化処理を依頼してもなお自系統の電力変動が十分に安定化されないと判定された場合である。
【0063】
S712で緊急負荷創出が必要でないと判定した場合(S712、No)、他の配電系統の親局装置210又は310(2000)に系統電力安定化処理を実行するように依頼する通知を行う他系統通知処理を実行して(S714)、処理をS701に戻す。
【0064】
以上の系統電力安定化処理によれば、ある配電系統において発生した系統電力変動について、可能な限り上位の変電所等の設備に影響を与えることなく自配電系統内で安定を回復するように制御することができる。また自配電系統及び他配電系統の連携によっても十分な充電負荷が得られない場合には充放電器500側の充電可否設定を超えて緊急負荷の創出を行うので、自配電系統の系統電力変動の影響が上位の配変電系統に波及することを可及的に抑制することができる。
【0065】
次に、図7の系統電力安定化処理フローにおける電力減少時安定化処理S709と電力増加時安定化処理S710の処理内容について説明する。図8に、電力減少時安定化処理S709の処理フロー例を示している。系統電力の急減は、配電系統内のPVが発生する電力が急増する、あるいは配電系統内での電力消費が急減する、といった事象によって生じ、余剰電力が発生している状況を示している。したがって、電力減少時安定化処理S709では、配電系統内での消費電力を増加させるために、電力減少に見合った量の充電電力需要を配電系統内で発生させるように各充放電器500の制御を行う。
【0066】
まず、親局装置2000の系統電力管理部2300は、検出された系統電力減少量ΔPを算出し、その値を例えばメモリ12に一時的に記録しておく(S801)。
【0067】
次いで系統電力管理部2300は、充放電器情報テーブル2500を参照して自配電系統に接続されている充放電器500の中に、充放電選択スイッチ500が「充電」又は「充放電」に設定されているものがあるか判定する(S803)。これは、系統電力の減少を補完するために、あらたに充電を開始させることができる充放電器500があるかを調べるための処理である。充放電選択スイッチ500が「充電」又は「充放電」に設定されているものがないと判定した場合(S803、No)、あらたに充電を開始させることができる充放電器500がないため、そのまま処理を終了する。
【0068】
充放電選択スイッチ500が「充電」又は「充放電」に設定されているものがあると判定した場合(S803、Yes)、系統電力管理部2300は、次いで充電可能に設定されている各充放電器500について、時間条件設定部551による時間条件が設定されているかどうかを、充放電器情報テーブル2500の充電モード選択情報2530の記録内容によって調べ、親局装置2000が保持している現在時刻と対比して現在充電させることができるかを判定する(S804)。現在時刻と対比して現在充電させることができる充放電器500がないと判定した場合(S804、No)、系統電力管理部2300は、図7のS713に関して説明した緊急フラグの状態を参照して緊急負荷創出が必要な状況であるか判定する(S806)。緊急負荷創出が必要であると判定した場合(S806、Yes)、系統電力管理部2300は、充電時間帯条件を満たしていない充放電器500を含めて、S805の処理を実行する。
【0069】
S806で緊急負荷創出が必要でないと判定した場合(S806、No)、あらたに充電を開始させることができる充放電器500がないため、そのまま処理を終了する。
現在時刻と対比して現在充電させることができる充放電器500があると判定した場合(S804、Yes)、系統電力管理部2300は、充放電器情報テーブル2500に記録されている接続機器情報2550を調べ、系統電力減少量ΔPの値に最も近似する充電量となる充放電器500の組み合わせを決定する(S805)。
【0070】
次いで、系統電力管理部2300からの対象充放電器500の組み合わせにしたがって、充放電設定管理部2400は、充電を開始させる対象の充放電器500に対して、切替スイッチ532、533の切替指令を送信する(S807)。切替指令は中継局装置3000によって転送され(S808)、対象の充放電器500の充放電器制御部560によって受信される(S809)。切替指令を受けた充放電器制御部560は、自身が制御する切替スイッチ532、533を切替指令に従って切り替える(S810)。
【0071】
充放電器500の充放電器制御部560は、次に切替完了通知を送出し(S811)、中継局装置3000は受信した切替完了通知を親局装置2000に転送する(S812)。親局装置2000の充放電設定管理部2400は、切替完了通知を中継局装置3000から受信すると電力減少時安定化処理を終了し(S813)、処理を図7の電力安定化処理フローに戻す。
【0072】
以上の電力減少時安定化処理によれば、親局装置2000によって検出された配電系統の系統電力減少量に見合う充電電力を消費する充放電器500の組み合わせがある場合にそれら充放電器500に充電を開始させることができるので、減少した電力量を配電系統内で補完させることができる。また自配電系統及び他配電系統の連携によっても十分な充電負荷が得られない場合には充放電器500側の充電可否設定を超えて緊急負荷の創出を行うので、自配電系統の系統電力変動の影響が上位の配変電系統に波及することを可及的に抑制することができる。
【0073】
次に、図7の系統電力安定化処理フローにおける電力増加時安定化処理S710の処理内容について説明する。図9に、電力増加時安定化処理S710の処理フロー例を示している。系統電力の急増は、配電系統内のPVが発生する電力が急減する、あるいは配電系統内での電力消費が急増する、といった事象によって生じ、系統電力の供給が不足しつつある状況を示している。したがって、電力増加時安定化処理S710では、配電系統内での電力供給を増加させるために、電力増加に見合った量の放電電力を配電系統内で発生させるように各充放電器500の制御を行う。
【0074】
まず、親局装置2000の系統電力管理部2300は、検出された系統電力増加量ΔPを算出し、その値を例えばメモリ12に一時的に記録しておく(S901)。
次いで系統電力管理部2300は、充放電器情報テーブル2500を参照して自配電系統に接続されている充放電器500の中に、充放電選択スイッチ500が「放電」又は「充放電」に設定されているものがあるか判定する(S902、S903)。これは、系統電力の増加を吸収するために、あらたに放電させることができる充放電器500があるかを調べるための処理である。充放電選択スイッチ500が「放電」又は「充放電」に設定されているものがないと判定した場合(S903、No)、あらたに放電を開始させることができる充放電器500がないため、そのまま処理を終了する。
【0075】
充放電選択スイッチ500が「放電」又は「充放電」に設定されているものがあると判定した場合(S903、Yes)、系統電力管理部2300は、充放電器情報テーブル2500に記録されている接続機器情報2550を調べ、系統電力増加量ΔPの値に最も近似する放電量となる充放電器500の組み合わせを決定する(S904)。
【0076】
次いで、系統電力管理部2300からの対象充放電器500の組み合わせにしたがって、充放電設定管理部2400は、充電を開始させる対象の充放電器500に対して、切替スイッチ531、532の切替指令を送信する(S905)。切替指令は中継局装置3000によって転送され(S906)、対象の充放電器500の充放電器制御部560によって受信される(S907)。切替指令を受けた充放電器制御部560は、自身が制御する切替スイッチ531、532を切替指令に従って切り替える(S908)。
【0077】
充放電器500の充放電器制御部560は、次に切替完了通知を送出し(S909)、中継局装置3000は受信した切替完了通知を親局装置2000に転送する(S910)。親局装置2000の充放電設定管理部2400は、切替完了通知を中継局装置3000から受信すると電力増加時安定化処理を終了し(S911)、処理を図7の電力安定化処理フローに戻す。
【0078】
以上の電力増加時安定化処理によれば、親局装置2000によって検出された配電系統の系統電力増加量に見合う放電電力を供給する充放電器500の組み合わせがある場合にそれら充放電器500に放電を開始させることができるので、増加した電力量を配電系統内で吸収させることができる。
【0079】
次に、図7の系統電力安定化処理フローにおける他系統通知処理S712の処理内容について説明する。図10に、他系統通知処理S712の処理フロー例を示している。他系統通知処理S712は、図7に示しているいずれかの配電系統内での親局装置2000による充放電器500の制御によっては系統電力量の変動を吸収しきれないと判定された場合に、他の配電系統の充放電管理を行っている親局装置2000に自配電系統で吸収しきれない電力変動分を補完させるべく、必要な情報の通知を行う処理である。
【0080】
まず、親局装置2000の系統電力管理部2300は、自身が対処しようとしている系統電力変動が、電力量減少、電力量増加のいずれであるかを判定し、その種別を例えばメモリ12に一時的に記録しておく(S1001)。
次いで系統電力管理部2300は、検出された系統電力変動量ΔPに対して不足している電力量を算出し(S1002)、前記の電力量減少又は増加の種別とともに他のいずれかの配電系統を管理する親局装置2000に通知して処理を終了する(S1003)。
【0081】
なお、通知の対象となる他の親局装置2000は、あらかじめ定めておいてもよいし、他の親局装置2000との間で稼働状況に関する情報交換を行う等によりフレキシブルに決定するようにしてもよい。
【0082】
以上の他系統通知処理によれば、ある配電系統においてその配電系統にある充放電器500を管理する親局装置2000が当該配電系統内だけで系統電力の変動を吸収できないと判定した場合に、他の配電系統の親局装置2000に対して電力量変動補完に不足している電力量の補足を依頼することができる。
【0083】
次に、図7の系統電力安定化処理フローにおいて、S711の他系統通知処理により通知を受けた、他の配電系統の親局装置2000等により実行されるデータ処理について説明する。図11に、他の配電系統の親局装置2000から通知を受けた親局装置2000、中継局装置3000、及び充放電器500によって実行される系統電力安定化処理フローの一例を示している。なお、以下には図7の処理フローと相違する処理について主として説明する。
【0084】
まず、親局装置2000は、図7の場合と同様に、自配電系統に接続されている充放電器500から充放電器情報を受信して、充放電器情報テーブル2500に記録する(S1101〜S1106)。
【0085】
次に、親局装置2000は、他の配電系統にある親局装置2000によって実行された他系統通知処理により当該親局装置2000から電力量減少又は増加の種別と不足している電力量を含む通知を受信する(S1107)。次いで系統電力管理部2300は、受信した通知が電力量減少又は増加のいずれの種別であるかに基づいて、電力量変動が減少であるか判定し(S1108)、減少である場合(S1108、Yes)、電力減少時安定化処理を実行し(S1109)、減少でない(増加である)場合(S1108、No)、電力増加時安定化処理(S1110)を実行する。電力減少時安定化処理S1109、電力増加時安定化処理S1110の処理内容は、図7の処理フローに関して説明したのと同様である。
【0086】
次いで、系統電力管理部2300は、電力減少時安定化処理S1109、電力増加時安定化処理S1110のいずれかを実行した後の系統電力量を計測し、以下図7の処理フローにおけるS711、S712と同様の処理を行う(S1111、S1112)。S1112の他系統通知処理は、系統電力安定化処理を依頼してきた依頼元である親局装置2000からの通知に含まれていた電力変動量補完の不足分が、本配電系統での充放電器500の制御によってもなお補足することができない場合に、さらに他の配電系統の親局装置2000に系統電力安定化処理の実行を依頼するために実行される。
【0087】
以上の系統電力安定化処理依頼先の親局装置2000等で実行される系統電力安定化処理によれば、ある配電系統において発生した系統電力変動について、当該配電系統内で吸収しきれない場合でも、可能な限り上位の変電所等の設備に影響を与えることなく他の配電系統と協働して系統電力の安定を回復するように制御することができる。
【0088】
以上説明したように、本実施形態によれば、分散型電源が接続されている配電系統毎に、より上位の変電設備への影響を最小限に抑えつつ、生じた電力変動を吸収することを可能とし、また電力変動吸収用の二次電池に過度の負荷を与えない効果を奏する。
【0089】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0090】
1 系統電力安定化システム 10 コンピュータ
11 プロセッサ 12 メモリ
13 補助記憶装置 14 入力装置
15 出力装置 16 通信インタフェース
17 バス 100 変電所 110 管理装置
200、300 配変電所 210、310、2000 親局装置
2100、2200、2300、3100、3200 変圧器
2110、2210,2310、3110、3210 中継局装置
2120、2220、2320、3120 インバータ
2130、2230、2330、3130 太陽電池
2140、2240、2340、3140、3240、500 充放電器
400 通信回線 510 電力量計 520 交流直流変換器
531、532、533 切替スイッチ 540 逆流防止ユニット
550 充放電設定器 551 時間条件設定部
560 充放電器制御部 561 充放電管理部
562 EVインタフェース 563 通信インタフェース
570、PLG 充電用接続プラグ EV 電気自動車
2100、3100 データI/O部 2200、3200 OS
2300 系統電力管理部 2400 充放電設定管理部
3300 データ中継処理部 3400 充放電電力監視部
2500 充放電器情報テーブル 2510 充放電器ID
2520 充放電選択スイッチ設定情報 2530 充電モード選択情報
2540 充放電切替状態情報 2550 接続機器情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散型電源を有する配電系統内で発生する系統電力の変動を抑制するための系統電力安定化システムであって、
前記配電系統における供給電力を監視して、その供給電力の変動量を検出する電力管理装置と、
前記配電系統に接続され、二次電池を搭載した機器である二次電池搭載機器に対して前記配電系統からの充電又は前記配電系統への放電を行うための充放電器について、その充電又は放電動作の実行状態を制御する充放電器制御部と、
前記充放電器について、充電動作を行わせるか、放電動作を行わせるかを設定するための充放電動作設定部とを備え、
前記電力管理装置が、前記配電系統の前記供給電力に発生した前記変動量が所定の閾値を超えたと判定した場合、前記充放電器の前記充放電動作設定部の設定状態を調べ、前記変動量を最小化するために、接続された前記二次電池搭載機器の充電又は放電動作を実行させることが可能である前記充放電器があると判定した場合、当該充放電器から前記変動量を最小化する充電又は放電動作を可能とする充放電器の組み合わせを決定し、当該充放電機に対して充電又は放電動作の実施命令を送出する、
系統電力安定化システム。
【請求項2】
請求項1に記載の系統電力安定化システムであって、
前記電力管理装置は、前記充放電器制御部から当該充放電器制御部が属する前記充放電器が接続されている前記二次電池搭載機器に対して充電又は放電動作を実行した場合に得られる充電電力量又は放電電力量を取得して保持しており、前記充電又は放電を実行させる前記充放電器の組み合わせを決定した場合に、当該組み合わせにかかる前記充放電器について保持している前記充電電力量又は放電電力量を使用して得られる充電電力量又は放電電力量を算出する系統電力安定化システム。
【請求項3】
請求項1に記載の系統電力安定化システムであって、
前記充放電動作設定部は、前記充放電器が充電動作を実行することができる時間帯を設定することを可能とする時間条件設定部を備えており、前記電力管理装置から充電実行命令を受けたときに、前記充電動作実行可能な時間帯である場合に充電動作を実行する
系統電力安定化システム。
【請求項4】
請求項1に記載の系統電力安定化システムであって、
前記親局装置を備える前記配電系統が2つ以上設けられており、各配電系統が有する前記電力管理装置は相互に通信可能に接続されており、
一の前記電力管理装置が、自身が属する前記配電系統での前記供給電力の変動量を自身が管理する前記充放電器のみにより所定の基準値まで最小化することができないと判定した場合、他の前記配電系統に属する前記電力管理装置に対して、前記一の電力管理装置が検出した供給電力変動量が増加であるか減少であるかの別と、他の電力管理装置が管理する前記充放電器において、補完すべき充電電力量又は放電電力量とを通知して充電電力量又は放電電力量の補足を依頼する系統電力安定化システム。
【請求項5】
請求項1に記載の系統電力安定化システムであって、
前記充放電動作設定部は、前記充放電器が充電動作を実行することができる時間帯を設定することを可能とする時間条件設定部を備えており、前記電力管理装置から充電実行命令を受けたときに、前記充電動作実行可能な時間帯である場合に充電動作を実行し、
前記親局装置を備える前記配電系統が2つ以上設けられており、各配電系統が有する前記電力管理装置は相互に通信可能に接続されており、
一の前記電力管理装置が、自身が属する前記配電系統での前記供給電力の変動量を自身が管理する前記充放電器のみにより所定の基準値まで最小化することができないと判定した場合、他の前記配電系統に属する前記電力管理装置に対して、前記一の電力管理装置が検出した供給電力変動量が増加であるか減少であるかの別と、他の電力管理装置が管理する前記充放電器において、補完すべき充電電力量又は放電電力量とを通知して充電電力量又は放電電力量の補足を依頼し、
一の前記電力管理装置が前記充電電力量の補足が十分でないと判定した場合、当該一の電力管理装置が管理する前記充放電器のうち、前記充電動作可能な時間帯にないと判定された充放電器に対しても充電実行命令を送出する、
系統電力安定化システム。
【請求項6】
分散型電源を有する配電系統内で発生する系統電力の変動を抑制するための系統電力安定化方法であって、
前記配電系統における供給電力を監視して、その供給電力の変動量を検出する電力管理装置と、
前記配電系統に接続され、二次電池を搭載した機器である二次電池搭載機器に対して前記配電系統からの充電又は前記配電系統への放電を行うための充放電器について、その充電又は放電動作の実行状態を制御する充放電器制御部と、
前記充放電器について、充電動作を行わせるか、放電動作を行わせるかを設定するための充放電動作設定部とを設け、
前記電力管理装置が、前記配電系統の前記供給電力に発生した前記変動量が所定の閾値を超えたと判定した場合、前記充放電器の前記充放電動作設定部の設定状態を調べ、前記変動量を最小化するために、接続された前記二次電池搭載機器の充電又は放電動作を実行させることが可能である前記充放電器があると判定した場合、当該充放電器から前記変動量を最小化する充電又は放電動作を可能とする充放電器の組み合わせを決定し、当該充放電機に対して充電又は放電動作の実施命令を送出する、
系統電力安定化方法。
【請求項7】
配電系統に接続され、二次電池を搭載した機器である二次電池搭載機器に対して前記配電系統からの充電又は前記配電系統への放電を行うための充放電器であって、
その充電又は放電動作の実行状態を制御する充放電器制御部と、
前記充放電器について、充電動作を行わせるか、放電動作を行わせるかを設定するための充放電動作設定部であって、前記充放電器が充電動作を実行することができる時間帯を設定することを可能とする時間条件設定部を備えており、外部から充電実行命令を受けたときに、前記充電動作実行可能な時間帯である場合に充電動作を実行する充放電器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−95465(P2012−95465A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−241192(P2010−241192)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】