説明

紐留めクリップ

【目的】 紐留めクリップの部品点数の減少。クリップを構成する筒体の軸方向の内部スペースを可及的に確保する。
【構成】 筒体10と、ロック部材11と、圧縮コイルばね12とより構成される。筒体10に内装された前記ばね12によって、ロック部材11をその頭部11a側から突き出し方向に向けて付勢して、ロック部材11と筒体10とに夫々設けられた挿通穴11b’・10a、10aの穴縁で、該挿通穴11b’・10a、10aに挿通された紐を留め付ける。ばね12は、一方側をロック部材11の本体部11bに、他方側を弾性片11e、11eに夫々接しさせることで、圧縮状態に保持される。筒体10には、ロック部材11の先端側からの押し込みにより、弾性片11e、11eを内側に窄ませる凹部10bが備えられている。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
この考案は、例えば、衣服、かばん類等の開口箇所に巡らされている紐に対して、該紐を挿通して装着されると共に、該紐の適宜の位置に移動されて該移動位置で該紐を留め付けることにより、前記衣服等の開口箇所を巡る紐の長さを調節して、該開口箇所を絞ったり、あるいは、広げたりするために用いられる紐留めクリップの提供に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、衣服、かばん等の開口箇所に設けた玉縁縫い部内に、該開口を絞り込むために、該開口箇所を巡るように紐が挿通されている場合に、該紐自体を縛らなくても、該開口を絞り込めるようにするために、従来より図14に示されるような紐留めクリップが用いられていた。
【0003】
このクリップは、図14に示されるように、有底筒体100と、この有底筒体100内に差し入れられるロック部材200と、差し入れられている該ロック部材200を常時該筒体100から抜け出す方向に向けて付勢する圧縮コイルばね300とから構成されている。
そして、前記筒体100と前記ロック部材200とには、該筒体100に該ロック部材200を、前記ばね300による付勢に抗して、押し込むことによって、相互に連通可能な紐の挿通穴102、102・201が設けられている。
したがって、この挿通穴102、102・201を連通させるように前記ロック部材200を押し込むことにより、連通される該挿通穴102、102・201に紐を挿通することができ、この紐の挿通後、前記ロック部材200の押し込み操作を止めることにより、前記ばね300の付勢により該ロック部材200を抜け出す方向に向けて移動させて前記挿通穴102、102・201が連通しない状態として、該挿通穴102、102・201の穴縁で前記紐を挟み込ませて該紐に装着することができる。
そして、該紐に対する装着位置を変えたいとき、例えば該紐の端からこのクリップの装着位置までの寸法を長くして、該紐の巡る前記衣服等の開口を絞り込む場合には、前記ロック部材200を押し込み操作させて前記挿通穴102、102・201を再び連通させるようにして、挿通されている該紐に添ってこのクリップを移動させ、適当な位置で該ロック部材200の押し込み操作を止めることにより簡単に行える。
【0004】
しかるに、このような紐を備える衣服、かばん類等を製造する段階で、このクリップを該紐に最初に装着する作業を、前記のようにロック部材200を逐一押し込み操作しながら行っていたのでは、著しく作業効率が損なわれてしまう。また、こうした作業に継続的に従事する作業者の指を痛める不都合があった。
【0005】
そこで、従来のこの種のクリップでは、図13に示されるように、前記ロック部材200の下部に前記筒体100の内底面に向けて突き出す脚202と、この脚202の先端にあって該ロック部材200側に向けて突き出し状に設けられる一対の弾性片203、203を設けておくと共に、この弾性片203、203に外鍔のついたリング状のスペーサー400を係合させ、このスペーサー400の外鍔と前記ロック部材200の下部側との間に前記ばね300を圧縮状態に保持させた状態で、該ロック部材200を前記筒体100内に差し入れ、組み付ける構造が用いられていた。
こうしておけば、図13に示されるように、前記ロック部材200は前記筒体100内から抜き出す方向に向けられた付勢力を受けないので、前記のような製造段階では、前記クリップに容易に紐を挿通することができる。
そして、このクリップでは、挿通されている前記ロック部材200の前記弾性片203、203の直下に、該一対の弾性片203、203先端間の寸法よりも穴径を小さくする凹部101が形成してあり、紐の挿通後に、前記ロック部材200を前記筒体100に対して押し込み操作することにより、該凹部101に前記弾性片203、203を差し入れて内側に撓み込ませ、前記スペーサー400と該弾性片203、203との係合を解除可能とされていた。
これにより、図14に示されるように、前記ロック部材200を抜け出し方向に向けて前記ばね300により付勢させて、前記のように挿通した紐を挟み付けて、クリップを最終的に該紐に装着させていた。
【0006】
【考案が解決しようとする課題】
しかるに、この種のクリップはその性格上、全体の大きさが概ね定まっており、使い勝手を考慮すると不必要に大きくすることはできない。
このため、前記従来のクリップのスペーサー400が、このスペーサ400の厚さ寸法分、前記筒体100の筒軸方向の内部スペースを他の同種のクリップに比べて、相対的に減らす結果を招いていた。
【0007】
このように、前記筒体100の筒軸方向の内部スペースが減ってしまうと、その分だけ前記ロック部材200を該筒体100内より抜き出し方向に付勢する前記ばね300の長さを短くしてしまうことになるので、該ロック部材200を付勢する力が弱くなり、この結果、前記紐を挟み込む力が弱くなる不都合を生じさせていた。
【0008】
また、前記弾性片203、203の基部から先端までのストロークをこのスペーサー400の厚さ寸法分減らさざるをえないので、該スペーサー400との係合を解除するために必要な該弾性片203、203の先端部の内側に向けた撓み込み量を確保するためには、前記ストロークの減少に対応して、前記ロック部材200の押し込み量を多くしなければならない。こうしたことから、該スペーサ400を省略して直接前記弾性片203、203の先端と、前記ロック部材200下部との間で前記ばね300を保持できるようにして、該弾性片203、203を可能な限り長く構成し、圧縮状態に保持している前記ばね300の該圧縮状態を、前記ロック部材200をそれほど押し込まなくても解除できるようにして、前記製造段階での前記紐へのこうしたクリップの装着作業を一層容易にすることが望まれていた。
【0009】
また、この種のクリップの部品点数を減らす観点からも、前記スペーサー400の省略が望まれていた。
【0010】
とはいえ、単純に前記スペーサー400を省略し、前記弾性片203、203の先端を保持される前記ばね300の内径一杯にまで伸ばした場合、前記ロック部材200の押し込み操作により該弾性片203、203を撓み込ませて該ばね300の保持状態を解除しても、該ロック部材200の上下動の度毎に、該弾性片203、203の先端と前記ばね300の内側とが干渉し合うことになり、前記ロック部材200の上下動による前記紐の挟み込みおよび挟み込みの解除がスムーズにできなくなる不都合を生じさせてしまう。
【0011】
そこでこの考案は、第一に、相互に連通する紐の挿通穴を備えた筒体と、該筒体内に差し入れ、組み付けられるロック部材とを備え、このロック部材を抜き出し方向に常時付勢するばねを、該ロック部材と筒体の底部との間に介装させることにより、前記紐を前記挿通穴縁で挟み付けて該紐の適宜の位置に装着可能とされるクリップにおいて、該クリップを最初に前記紐に装着するに際して該ロック部材が抜き出し方向に付勢されないように、前記ばねをロック部材の先端に設けた弾性片により圧縮状態に保持させるにあたって、該弾性片に前記ばねを直接保持させることにより、該クリップの機能を損なうことなく、部品点数を減少させることを目的とする。
また第二に、前記筒体の軸方向の内部スペースを可及的に確保して、前記弾性片を比較的長く構成可能とし、該弾性片の弾性変形率を大きくして該弾性片による前記ばねの保持を解くための前記ロック部材の押し込み量を減少させることを目的とする。
また第三に、該ばねを可及的に長く構成できるようにして、該ばねによる前記ロック部材に対する付勢力を充分に確保することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、請求項1に係る考案では、紐留めクリップA・Bを、筒体10と、該筒体10内に差し込み組み付けられるロック部材11および圧縮コイルばね12とより構成すると共に、前記筒体10に内装された前記ばね12によって、前記ロック部材11をその頭部11a側から突き出し方向に向けて付勢して、このように付勢されている該ロック部材11と前記筒体10とに夫々設けられた挿通穴11b’・10a、10aの穴縁で、該挿通穴11b’・10a、10aに挿通された紐を留め付けるクリップであって、前記ばね12が、該ばね12の一方側を前記ロック部材11の本体部11bに、他方側を該ロック部材11の先端側に設けられている弾性片11e、11eに夫々接しさせることにより、該本体部11bと該弾性片11e、11eとの間で圧縮状態に保持されると共に、前記筒体10には、前記ロック部材11の先端側からの押し込みに伴って、該ロック部材11の前記弾性片11e、11eを内側に窄ませる手段が備えられている構造のものとした。
【0013】
また、請求項2に係る考案では、請求項1に係る紐留めクリップA・Bを構成する前記弾性片11e、11eを、前記ばね12が接して巻装される前記ロック部材11の巻装部11cに続いて延設される先細り状部11c’の先端側に設けていると共に、該弾性片11e、11eの先端を前記巻装部11cのなす側面の延長線内に位置させるように構成してあり、しかも、前記ばね12の径を、前記巻装部11c側の径が前記弾性片11e、11eに保持される側の径よりも太径となるように構成した。
【0014】
【作用】 請求項1に係る考案では、紐留めクリップA・Bを構成する前記ロック部材11を前記筒体10内よりその頭部側から突き出し方向に向けて付勢して、該ロック部材11と前記筒体10とに夫々設けられた挿通穴11b’・10a、10aの穴縁で、該挿通穴11b’・10a、10aに挿通された紐を留め付けさせるばね12を、該ばね12の一方側を前記ロック部材11の本体部11bに、他方側を該ロック部材11の先端側に設けられている弾性片11e、11eに夫々接しさせることにより、該本体部11bと該弾性片11e、11eとの間で圧縮状態に保持させる構造としているので、前記筒体10内に差し込まれたロック部材11はこの状態では前記突き出し方向に付勢されない。
したがって、前記ロック部材11を特に操作することなく、前記筒体10と前記ロック部材11の挿通穴11b’・10a、10aとが相互に連通した状態を維持でき、該挿通穴11b’・10a、10aに前記紐を挿入することができる。
【0015】
また、前記筒体10には、前記ロック部材11の先端側からの押し込みに伴って、該ロック部材11の前記弾性片11e、11eを内側に窄ませる手段が備えられているので、前記紐を前記挿通穴11b’・10a、10aに挿入した状態で、該ロック部材11を押し込むことにより、該ロック部材11の前記弾性片11e、11eと前記ばね12との接し合いを解くことができ、これにより該ばね12に前記ロック部材11を抜き出し方向に向けて付勢させることができる。
【0016】
また、請求項2に係る考案では、請求項1に係る紐留めクリップA・Bを構成する前記弾性片11e、11eを、前記ばね12が接して巻装される前記ロック部材11の巻装部11cに続いて延設される先細り状部11c’の先端側に設けていると共に、該弾性片11e、11eの先端を前記巻装部11cのなす側面の延長線内に位置させるように構成してあり、しかも、前記ばね12の径を、前記巻装部11c側の径が前記弾性片11e、11eに保持される側の径よりも太径となるように構成してあるので、該弾性片11e、11eに前記ばね12の先端を接し合わせた状態で該ばね12を該弾性片11e、11eと前記ロック部材11の本体部11bとの間で圧縮状態に保持できると共に、前記ロック部材11の押し込みにより前記弾性片11e、11eを内側に窄ませて該保持状態を解いた後に、該ばね12に付勢される前記ロック部材11が前記筒体10内で上下動しても、該ロック部材11の前記弾性片11e、11eが前記ばね12と干渉し合うことはない。
【0017】
【実施例】
以下、この考案に係る紐留めクリップの典型的な実施例を、図1ないし図12に基づいて説明する。
【0018】
なお、図1は、第一の実施例に係る紐留めクリップAを構成部品毎に分解して示している。
また、図2は、同クリップAの外観を示している。さらに、図3ないし図5は、同クリップAの機能を理解しやすいように、該クリップAを断面にして示している。また、図6は、同クリップAを構成する筒体10とロック部材11との組み付け状態を理解しやすいように、該クリップAの要部を拡大して断面で示している。
【0019】
また、図7は、第二の実施例に係る紐留めクリップBを構成部品毎に分解して示している。
また、図8は、同クリップBの外観を示している。さらに、図9ないし図11は、同クリップBの機能を理解しやすいように、該クリップBを断面にして示している。また、図12は、同クリップBを構成する筒体20とロック部材21との組み付け状態を理解しやすいように、該クリップBの要部を拡大して断面で示している。
【0020】
[第一の実施例]
まず、図1ないし図6に基づいて、第一の実施例に係る紐留めクリップAについて説明する。
【0021】
この実施例に係る紐留めクリップAは、図1に示されるように、一方端を開口10’とし、他方端を底部10”とする筒体10と、該筒体10内に差し込み組み付けられるロック部材11と、ばね12とから構成されている。
【0022】
図1に示されるように、前記ロック部材11は、一端に円板状の頭部11aを、該頭部11aが設けられていない側の先端部11dに一対の弾性片11e、11eを備えた桿状体として構成されている。
該ロック部材11は、前記頭部11a側から該ロック部材11の長さ寸法略中程の位置までを、該ロック部材11が差し込まれる前記筒体10の内径よりもやや小さい程度の径を備えた本体部11bとすると共に、この本体部11bと前記先端部11dとの間を、前記本体部11bに比べて小径の巻装部11cとしている。また、該巻装部11cと前記先端部11dとの間を、該先端部11d側に向けて先細り状に形成された先細り状部11c’としている。
【0023】
前記一対の弾性片11e、11eは、前記巻装部11cに続いて延設されている前記先細り状部11c’の直径にほぼ等しい幅寸法を備えて設けられている板状の前記先端部11dの両側面より、前記先細り状部11c’側に向けて突き出し状に設けられている。
図3に示されるように、該弾性片11e、11eの先端は、前記先細り状部11c’と前記先端部11dの連設位置よりやや下方に位置付けられている。また、該弾性片11e、11eの先端は、前記巻装部11cのなす側面の延長線内に位置されている。
さらに、該一対の弾性片11e、11eの先端には、前記巻装部11cの側を向いた係当面11e’、11e’が形成されている。
【0024】
次いで、この実施例に係るクリップAを構成する前記ばね12は、圧縮コイルばねであって、前記ロック部材11の前記巻装部11cの径よりもやや大径に構成されている。また、該ばね12の一方端は、図3に示されるように、前記一対の弾性片11e、11e間の寸法xよりもやや径x’を小さくする細径端部12aとされている。
したがって、前記ばね12を前記ロック部材11に対して、該ばね12の大径の端部を前記巻装部11cと前記本体部11bとの間に形成される段面11b”に、該ばね12の前記細径端部12aを前記一対の弾性片11e、11eの前記係当面11e’、11e’に、夫々接しさせることにより、該段面11b”、11b”と該係当面11e’、11e’との間で圧縮状態に保持させることができる。
【0025】
このように前記ばね12を圧縮状態に保持した前記ロック部材11を、図3に示されるように、該ロック部材11の前記先端部11d側から、前記筒体10の開口10’より該筒体10内に差し入れ、組み付けて、クリップAを構成する。
【0026】
ここで、図1および図6に示されるように、前記ロック部材11の前記本体部11bには、該ロック部材11の軸心方向に略直交する向きに、挿通穴11b’が透設してあると共に、該挿通穴11b’の両下部穴縁部には、前記筒体10内への差し入れを容易とする目的で設けられる前記先端部11d側より前記頭部11a側に向けて外広がり状に傾斜するテーパー面11f”と、このテーパー面11f”に続くと共に、前記頭部11a側に向いた前記本体部11bの外面にほぼ直交する向きの当接面11f’とを備えた突部11f、11fが設けられている。
したがって、図3に示されるように、前記筒体の10の内径よりもやや小さい径を備える前記本体部11bの該筒体10内へ差し入れは、前記突部11f、11f間の寸法が該筒体10の内径よりも大きいために、この突部11f、11fが前記筒体10の側面に開設されている一対の挿通穴10a、10aから外方に突き出される状態でしかなし得ない。
この結果、この実施例では、前記筒体10に対して前記ロック部材11を差し入れた場合、該ロック部材11の前記挿通穴11bと、該筒体の前記挿通穴10a、10aとが相互に必ず連通できる構成とされている。
また、図6に示されるように、該筒体10に対して前記ロック部材11を一旦差し込んだ後は、該ロック部材11が抜け出し方向に動かされても、前記突部11f、11fの前記当接面11f’、11f’が前記筒体10の前記挿通穴10a、10aの上部穴縁に当たるので、前記筒体10内から前記ロック部材11が抜け出されることはない。
【0027】
このように図3に示すように、単に、前記ばね12を圧縮状態に保持させた前記ロック部材11を前記筒体10に対して差し入れ組み付けた状態では、該ばね12は該ロック部材11を抜け出し方向に付勢し得ないので、該ロック部材11の挿通穴11bと前記筒体10の挿通穴10a、10aとは前記ロック部材11の先端部11dが該筒体10の前記底部10”に接した位置で連通され、しかも、この連通状態は該ロック部材11を該筒体10内から抜き出す方向に動かさない限り維持できる。
したがって、前記挿通穴11b・10a、10aへの留め付けるべき紐の挿通作業を容易に行うことができる。
【0028】
このように前記挿通穴11b・10a、10aに紐を挿通した後、図4および図5に示される操作を行って、前記ロック部材11の前記挿通穴11bと、前記筒体10の挿通穴10a、10aとの連通状態を解除して、両挿通穴11b・10a、10aの穴縁で、該紐の留め付けを行う。
【0029】
すなわち、図1および図4に示されるように、前記筒体10の前記底部10”には、差し込まれている前記ロック部材11の先端部11dの直下に、該先端部11dに設けられている前記一対の弾性片11e、11eの先端間の寸法xよりも穴径x”を小さく構成してある略円形の凹部10bが形成されているので、図3に示される状態より前記ロック部材11を前記筒体10の底部10”側に向けてさらに押し込むよう操作すると、この凹部10bの側壁10b’に当たって該一対の弾性片11e、11eは内側に撓み込まされる。
この結果、該弾性片11e、11eの前記係当面11e’、11e’と前記ばね12の細径端部12aとの係当状態が解除され、圧縮状態に保持されていた該ばね12は弾発して、該細径端部12aを前記筒体10の底部10”に押し当てる。
このように前記底部10”に押し当てられた前記ばね12は、該底部10”に対して前記ロック部材11を前記筒体10内からの抜き出し方向に付勢するので、図6に示されるように、該ロック部材11は前記挿通穴11b’の下部穴縁部に設けられている前記突部11fの当接面11f’を、該筒体10の前記挿通穴11b、11b上部穴縁に突き当てる位置まで、該筒体10内から押し上げられる。これにより、前記ロック部材11に設けられている前記挿通穴11b’と前記筒体10に設けられている前記挿通穴10a、10aとは、連通し合わなくなるので、両挿通穴11b・10a、10a穴縁で、前記挿通された紐は留め付けられることになる。
【0030】
なお、前記筒体10の底部10”には、前記ばね12の前記細径端部12aの径と略同径の円形状の周回溝10cが、前記凹部10bの外側に周設されているので、前記のように弾発された前記ばね12は、その細径端部12aをこの周回溝10c内に収め入れ、この位置でズレなく保持される。
【0031】
[第二の実施例]
次いで、図7ないし図12に基づいて、第二の実施例に係る紐留めクリップBについて説明する。
なお、この実施例に係るクリップBの構成のうち、前記第一の実施例に係るクリップAと構成を同一とする部分、および、若干形状は異なるが構成を実質的に同一とする部分については、前記第一の実施例に係るクリップAを表した図中の符号と同一の符号を図7ないし図12に付することにより、その説明を省略する。
【0032】
この実施例に係るクリップBも、図7に示されるように、前記第一の実施例に係るクリップA同様、筒体10と、ロック部材11と、ばね12とより構成されている。
【0033】
この実施例では、特に、前記ロック部材11の先端部11dの形状を前記第一の実施例に係るクリップAと異ならせている。
すなわち、図7および図9に示されるように、この実施例では、該ロック部材11の先端部11dに設けられている一対の弾性片11e、11eの係当面11e’、11e’の内側部と、巻装部11cの該先端部11d側の端部との間に連設部11g、11gを設けることにより、該一対の弾性片11e、11eの先端と前記巻装部11cとの間に間隔が開かない構成としてある。
このように、構成することにより、該ロック部材11の本体部11bと前記巻装部11cとの間に形成されている段面11b”と、前記一対の弾性片11e、11eの前記係当面11e’、11e’との間でばね12を圧縮状態に保持するに当たり、該ばね12の細径端部11dが該係当面11e’、11e’に適切に接しないで、前記弾性片11e、11eの基部と前記先端部11dとの間に誤って収まってしまう事態を充分に防止することができる。
【0034】
また、この実施例においては、図7および図12に示されるように、前記筒体10の対をなす挿通穴10a、10aの上部穴縁に接する該筒体10の底部10”に向けられた係当面10d’と、該筒体10の開口10’側に向けて内窄まり状に傾斜するテーパー面10d”とを備えた突部10d、10dを内面に備えており、この突部10d、10d間の寸法を、該筒体10内に差し入れられる前記ロック部材11の前記本体部11bの径よりも小さいものとしている。
したがって、前記筒体の10の内径よりもやや小さい径を備える前記本体部11bの該筒体10内へ差し入れは、前記突部10d、10dが前記ロック部材11の前記本体部11bに開設されている前記挿通穴11b’内に突き出される状態でしかなし得ない。
この結果、この実施例においても、前記筒体10内へ前記ロック部材11を差し入れた場合、該ロック部材11の挿通穴11b’と該筒体10の挿通穴10a、10aとは相互に連通させる。
【0035】
また、前記ロック部材11を前記筒体10から抜き出す方向に動かした場合、図12に示されるように、該ロック部材11の前記挿通穴11b’の下部穴縁内面に、前記筒体10に設けられた前記突部10d、10dがその係当面10d’を当接させて、該ロック部材11の抜け出しを阻止する。
【0036】
また、この実施例においては、前記ロック部材11の前記挿通穴11b’の両上部穴縁より、頭部11aに向けて、前記筒体10の内面に設けられた前記突部10d、10dを収め入れられる幅を持った凹部11h、11hが形成されており、前記筒体10内に収め入れられた状態での前記ロック部材11の上下動が、該突部10d、10dにより妨げられることがない構成とされている。
【0037】
なお、前記第一の実施例同様、図9は、前記ロック部材11に前記ばね12を圧縮、保持させた状態で、前記筒体10内に該ロック部材11を差し込み、組み付けた状態を示しており、図10は、該筒体10の底部10”に設けられた凹部10bに前記ロック部材11の先端部11dを押し込んで、該先端部11dに設けられている前記一対の弾性片11e、11eを内側に撓み込ませ、前記ばね12の圧縮、保持を解除した状態を示しており、さらに図11は、この圧縮、保持の解除されたばね12により、前記ロック部材11が抜き出し方向に付勢されるに至った状態を示している。
【0038】
以上説明した第一の実施例に係るクリップAも第二の実施例に係るクリップBも、前記筒体10の底部10”に対して前記ロック部材11を抜き出し方向に向けて付勢させる前記ばね12が巻装される前記巻装部11cに対して、一対の前記弾性片11e、11e間の寸法をこの巻装部11c幅内としているので、図5および図11に示される状態より、留め付けている紐の留め付け位置を変えるために前記ロック部材11を前記ばね12の付勢に抗して前記筒体10の底部10”側に押し込み操作する場合にも、この弾性片11e、11eの先端が前記ばね12の内側と干渉しあうことはなく、該押し込み動作はスムーズなものとされる。
【0039】
なお、以上に説明したクリップAおよびBを構成する前記ロック部材11は、その先端部11dに設けられている弾性片11e、11eに所要の弾性変形特性を持たせるために、プラスチック材料、ゴム材料を成形して構成することが好ましい。
また、該ロック部材11を金属材料をもって構成する場合には、該弾性片11e、11eに相当する金属性の片部を、前記筒体10の凹部10b内への押し込みにより塑性変形させて前記ばね12の圧縮、保持を解除する構成としてもよい。
また、前記クリップAおよびBを構成する筒体10の形状は、例えば、断面楕円形状の筒状、角筒状等、必要に応じて適宜変更してよく、これに対応させて、該筒体10に差し入れられる前記ロック部材11の形状を適宜変更して前記第一および第二の実施例に係るクリップAおよびBを構成して構わない。
【0040】
【考案の効果】
この考案に係る紐留めクリップA・Bによれば、前記ロック部材11を付勢させるばね12を、該ばね12の一端を該ロック部材11の弾性片11e、11eに直接接しさせ、また他端を本体部11bに接しさせて圧縮状態に保持させることにより、前記筒体10内に差し込み、組み付けられた該ロック部材11の前記弾性片11e、11eを窄ませるように該ロック部材11を押し込むまで、該ばね12により突き出し方向に付勢させない。
したがって、この押し込みを行うまでは該ロック部材11を特に操作することなく、前記筒体10の前記挿入穴10a、10aと前記ロック部材11の前記挿通穴11b’とが相互に連通した状態を維持することができ、衣服等の開口部等に巡らされている紐を前記挿通穴11b’・10a、10aに容易に挿入することができ、また、前記押し込みにより前記ロック部材11の挿入穴11b’と前記筒体10の挿入穴10a、10aとが連通しない状態として、両挿入穴11b’・10a、10a縁で該紐を挟み込み、該紐に装着することができる。この結果、衣服等の製造段階におけるこの種のクリップの装着作業を容易かつ効率的に行うことができる。
【0041】
しかも、前記弾性片11e、11eに直接前記ばね12を接しさせる構成としているので、この種クリップを前記筒体10と、前記ロック部材11と、前記ばね12の三点からなるシンプルな構成とすることができ、製造コストを低減することができる。
【0042】
また、前記弾性片11e、11eに直接前記ばね12を接しさせる構成としているので、使い勝手等の諸要因からその大きさがほぼ定まらざるをえないこの種クリップを構成する前記筒体10の軸方向のスペースを可及的に確保することができ、この結果、前記弾性片11e、11eを比較的長く構成可能とし、該弾性片11e、11eの弾性変形率を大きくして該弾性片11e、11eによる前記ばね12の保持を解くための前記ロック部材11の押し込み量を減少させることができる。
したがって、前記製造段階でのこの種クリップの装着作業を一層容易なものとすることができる。
【0043】
また、前記スペースの確保により、前記ばね12も可及的に長く構成することが可能となるので、該ばね12による前記ロック部材11に対する付勢力を充分に確保することができ、前記紐に対するこの種クリップの装着状態を確実ならしめることができる。
【0044】
また、請求項2に係る考案では、特に、前記ばね12の巻装される前記ロック部材11の巻装部11cの幅内に前記弾性片11e、11eを位置させており、前記ロック部材11の押し込みにより前記弾性片11e、11eを内側に窄ませて該保持状態を解いた後に、該ばね12に付勢される前記ロック部材11が前記筒体10内で上下動しても、該ロック部材11の前記弾性片11e、11eが前記ばね12と干渉し合うことはないので、前記紐との装着位置を変えるために前記ロック部材11の頻繁な上下動を必要とするこの種クリップの機能を一切損なうことがない特長を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】第一の実施例に係る紐留めクリップAの分解斜視図である。
【図2】同クリップAの側面図である。
【図3】同クリップAの側断面図である。
【図4】同クリップAの側断面図である。
【図5】同クリップAの側断面図である。
【図6】同クリップAの要部断面図である。
【図7】第二の実施例に係る紐留めクリップBの分解斜視図である。
【図8】同クリップBの側面図である。
【図9】同クリップBの側断面図である。
【図10】同クリップBの側断面図である。
【図11】同クリップBの側断面図である。
【図12】同クリップBの要部断面図である。
【図13】従来の紐留めクリップの側断面図である。
【図14】従来の紐留めクリップの側断面図である。
【符号の説明】
A 紐留めクリップ
B 紐留めクリップ
10 筒体
11 ロック部材
12 ばね

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 筒体と、該筒体内に差し込み組み付けられるロック部材および圧縮コイルばねとよりなり、前記筒体に内装された前記ばねによって、前記ロック部材をその頭部側から突き出し方向に向けて付勢して、このように付勢されている該ロック部材と前記筒体とに夫々設けられた挿通穴の穴縁で、該挿通穴に挿通された紐を留め付けるクリップであって、前記ばねが、該ばねの一方側を前記ロック部材の本体部に、他方側を該ロック部材の先端側に設けられている弾性片に夫々接しさせることにより、該本体部と該弾性片との間で圧縮状態に保持されると共に、前記筒体には、前記ロック部材の先端側からの押し込みに伴って、該ロック部材の前記弾性片を内側に窄ませる手段が備えられていることを特徴とする紐留めクリップ。
【請求項2】 前記弾性片は、前記ばねが接して巻装される前記ロック部材の巻装部に続いて延設される先細り状部の先端側に設けられていると共に、該弾性片の先端を前記巻装部のなす側面の延長線内に位置させるように構成してあり、前記ばねの径は、前記巻装部側の径が前記弾性片に保持される側の径よりも太径としてあることを特徴とする請求項1記載の紐留めクリップ。

【図1】
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【図2】
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【図6】
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【図12】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図13】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図14】
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