説明

純粋なI相中に存在する、Mo、Vおよびアルカリ金属を含有する多重金属酸化物材料

MoおよびVならびにランタン系列、周期律表の遷移元素および周期律表の第3主族ないし第6主族の元素を含む群から選択された1つまたは幾つかの場合により元素を含有する多重金属酸化物材料が開示されている。前記の多重金属酸化物材料は、Li以外のアルカリ金属の存在で製造され、i相構造を備えている。また、部分気相酸化のための触媒中の活性材料としての本発明による多重金属酸化物材料の使用が開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般式I:
[Mo5−b−c] (I)
〔式中、
Aは、NH、Na、K、Rb、CsおよびTlを含む群からの少なくとも1つの元素であり、
Xは、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、W、Mn、Re、Fe、Co、Ni、Cr、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、B、Al、Ga、In、C、Si、Ge、Sn、Pb、P、As、Sb、Bi、S、SeおよびTeを含む群からの1つ以上の元素であり、
aは、0.1〜1であり、
bは、0.25〜4.5であり、および
cは、0〜4.5であり、但し、
b+cは、4.5以下であるものとする〕で示される多重金属酸化物材料であって、この多重金属酸化物材料のX線回折図が次のX線回折パターンRMを、使用されるX線の波長に依存しない格子面間隔d[Å]
d[Å]
3.06±0.2
3.17±0.2
3.28±0.2
3.99±0.2
9.82±0.4
11.24±0.4
13.28±0.5
の形状で再現して有する、一般式Iの多重金属酸化物材料に関する。
【0002】
MoおよびVならびにランタン系列、周期律表の遷移元素および周期律表の第3主族ないし第6主族の元素を含む群から選択された少なくとも2つの元素を含有する多重金属酸化物材料、X線回折パターンRMを有する前記材料のX線回折図は、公知である(例えば、ドイツ連邦共和国特許出願公開第10248584号明細書、ドイツ連邦共和国特許出願公開第10254279号明細書、ドイツ連邦共和国特許出願公開第10051419号明細書、ドイツ連邦共和国特許出願公開第10046672号明細書、ドイツ連邦共和国特許出願公開第10261186号明細書、欧州特許出願公開第1090684号明細書、ドイツ連邦共和国特許出願公開第19835247号明細書、ドイツ連邦共和国特許出願公開第10254278号明細書、欧州特許出願公開第895809号明細書、ドイツ連邦共和国特許出願公開第10122027号明細書、特開平7−232071号公報および特開平11−169716号公報参照)。
【0003】
この場合、X線回折図RMは、特殊な結晶構造、即ち前記で採用された公知技術水準において”i相”と呼ばれる特殊な結晶相の指での刻印を形成する。
【0004】
前記の記載からは、i相が単に結晶相であることが公知であり、この場合には、このような多重金属酸化物材料が発生しうる。
【0005】
このような多重金属酸化物材料が発生しうる第2の特殊な結晶構造は、公知技術水準においてk相と呼ばれる。前記の結晶構造のX線回折図は、前記の記載によれば、なかんずく次の結晶格子面間隔d[Å]:
4.02±0.2
3.16±0.2
2.48±0.2
2.01±0.2および
1.82±0.1
を表わす回折反射を示すことによって特徴付けられる。
【0006】
i相とk相は、互いに類似しているが、しかし、なかんずくk相のX線回折図が通常、d≧4.2Åについての回折反射を示さないことによって区別される。また、通常、k相は、3.8Å≧d≧3.35Å範囲内での回折反射を含まない。更に、k相は、一般に2.95Å≧d≧2.68Å範囲内での回折反射も含まない。
【0007】
また、前記の公知技術水準の記載から、このような多重金属酸化物材料が低級の(殊に2、3および/または4個の炭素原子を有する)アルカン、アルケン、アルコールおよびアルデヒドの不均一に接触される部分気相酸化時および不均一に接触される部分気相アンモ酸化(本質的にアンモニアの付加的な存在による純粋な部分気相酸化とは区別される)時の触媒のための活性材料として適当であることは、公知である。この場合、部分酸化生成物は、なかんずくα,β−モノエチレン系不飽和アルデヒド(例えば、アクロレインおよびメタクロレイン)ならびにα,β−モノエチレン系不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸およびメタクリル酸)およびそのニトリル(例えば、アクリルニトリルおよびメタクリルニトリル)である。
【0008】
更に、前記の公知技術水準の記載から、i相構造を有する多重金属酸化物材料の触媒作用(活性、目的生成物の形成の選択性)が別の(例えば、k相)構造での触媒作用を比較して一般に卓越していることは、公知である。
【0009】
しかし、また、前記の公知技術水準の記載から、MoおよびVならびにランタン系列、周期律表の遷移元素および周期律表の第3主族ないし第6主族の元素を含む群から選択された少なくとも2つの元素を含有する多重金属酸化物材料をi相構造で製造することが極めて困難であることは、公知である。
【0010】
即ち、前記の公知方法によれば、一般に、或る程度のi相含量(例えば、k相と共に)だけを有し、かつi相含量の最適な触媒性能の視点下に、別の相(例えば、k相)を適当な液体で洗浄除去することによって単離されるような混合結晶系を得ることができる(例えば、WO 0206199、特開平7−232071号公報およびドイツ連邦共和国特許出願公開第10254279号明細書)。
【0011】
更に、引用された公知技術水準の記載から、これまで多重金属酸化物がMoおよびVと共になおNbならびにTeおよびSbの2つの元素の少なくとも1つを含有する場合のみ、公知の製造法により言うに値するi相含量を得ることができることは、公知である。
【0012】
従って、本発明の課題は、比較的簡単な方法で高められたi相含量で得ることができるかまたは純粋なi相として得ることができる、MoおよびVならびに場合によってはランタン系列、周期律表の遷移元素および周期律表の第3主族ないし第6主族の元素を含む群から選択された1つまたはそれ以上の元素を含有する多重金属酸化物材料を提供することであった。
【0013】
前記課題の解決のために、Ultramicroscopy 52 (1993)、第429〜435頁の記載により、Nb、WおよびOが空間的にi相構造内に配置されており、かつCsのトンネル状の空隙がi相の結晶構造内で確保されているような割合を有するCs(Nb,W)14が多重金属酸化物から公知であることから出発することができた。
【0014】
Journal of Solid State of Chemistry 163,第210頁〜第217頁 (2002)の記載から、K、RbまたはCsを含有するバナジウム−モリブデン青銅は、公知であり、この場合このバナジウム−モリブデン青銅は、i相含量を有しない。
【0015】
Journal of Solid State of Chemistry 162,第341頁〜第346頁 (2002)の記載から、KまたはCsを含有するタングステン−モリブデン青銅は、公知であり、この場合このタングステン−モリブデン青銅は、i相含量を有しない。
【0016】
米国特許第6428765号明細書B1の記載から、実際に元素状組合せ物MoおよびVならびにアルカリ金属および/またはMHを含有していてもよいが、しかし、実施例においてこの元素状組合せ物Mo/Vが添加されていない多重金属酸化物は、公知である。
【0017】
これとは異なり、米国特許第6171571号明細書B1の実施例は、実際に元素状組合せ物Mo/Vを含んでいるが、しかし、比較的小さな原子状アルカリ金属元素Liとの組合せ物でのみ前記の元素状組合せ物を含んでいる。
【0018】
i相含量の存在は、双方の場合には、確認することができない。
【0019】
また、Chemica Scripta 1988,28, 第77頁〜第80頁に開示された、カリウム含有のタングステン−ニオブ青銅は、i相含量を全く示さない。
【0020】
前記の公知技術水準に照らしてみて、本発明の課題の解決として、MoおよびVならびに場合によってはランタン系列、周期律表の遷移元素および周期律表の第3主族ないし第6主族の元素を含む群からの1つまたはそれ以上の元素を含有する多重金属酸化物がNHの存在でかまたはLiよりも大きな半径を有するアルカリ金属によって製造される場合に、前記の多重金属酸化物が高められた確率で言うに値するほどのi相含量で(かまたは専らi相の結晶構造で)得ることができることが見出されたことは、驚異的なことである。
【0021】
驚異的なことに、NbまたはTe、或いはSbが多重金属酸化物中の随伴元素として含有されている場合にも前記のことは当てはまる。
【0022】
実際に、欧州特許出願公開第1256381号明細書、欧州特許出願公開第1254708号明細書、欧州特許出願公開第1254709号明細書、欧州特許出願公開第1254707号明細書および欧州特許出願公開第1254706号明細書に記載の一般式は、アルカリ金属の存在を排除していないが、しかし、これらの特許明細書の実施例の1つもアルカリ金属を共用していない。その他の点では、前記特許明細書中でLiは、同等に可能なアルカリ金属随伴物質と見なされている。
【0023】
従って、前記の特許明細書で課された課題の解決として、一般式1の多重金属酸化物は、
[Mo5−b−c] (I)
〔式中、
Aは、NH、Na、K、Rb、CsおよびTlを含む群からの少なくとも1つの元素であり、
Xは、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、W、Mn、Re、Fe、Co、Ni、Cr、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、B、Al、Ga、In、C、Si、Ge、Sn、Pb、P、As、Sb、Bi、S、SeおよびTeを含む群からの1つ以上の元素であり、
aは、0.1〜1、特に0.2〜0.8、特に有利に0.3〜0.7、殊に有利に0.4〜0.6であり、
bは、0.25〜4.5であり、および
cは、0〜4.5であり、但し、
b+cは、4.5以下であるものとする〕で示される多重金属酸化物であって、この多重金属酸化物のX線回折図が次のX線回折パターンRMを、使用されるX線の波長に依存しない格子面間隔d[Å]
d[Å]
3.06±0.2(有利に±0.1)
3.17±0.2(有利に±0.1)
3.28±0.2(有利に±0.1)
3.99±0.2(有利に±0.1)
9.82±0.4(有利に±0.1)
11.24±0.4(有利に±0.1)
13.28±0.5(有利に±0.1)
の形状で再現して有する、一般式Iの多重金属酸化物が提供される。
【0024】
記載された回折反射状態から、本発明による多重金属酸化物材料のX線回折パターンRMは、多くの場合に(含有されている元素およびクリスタリットの幾何学的配置(例えば、針状形または小板形)に依存して)付加的に特徴を示す回折反射強度を有する。
【0025】
格子面間隔d[Å]=3.99±0.2を表わす回折反射の強度に関連して、前記の(相対的な)回折反射強度I(%)は、次の通りである:
d[Å] I(%)
3.06±0.2 5〜65
3.17±0.2 5〜65
3.28±0.2 15〜130、しばしば15〜95
3.99±0.2 100
9.82±0.4 1〜50、しばしば1〜30
11.24±0.4 1〜45、しばしば1〜30
13.28±0.5 1〜35、しばしば1〜15。
【0026】
本発明によれば、好ましくは、Aは、K、RbおよびCsを含む群からの少なくとも1つの元素である。特に好ましくは、Aは、Rbおよび/またはCsであり、殊に好ましくは、Aは、Csである。
【0027】
Xは、特にTi、Zr、Ta、Cr、W、Mn、Re、Fe、Co、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Al、Ga、In、Ge、Sn、Pb、P、Sb、Bi、SeおよびTeを含む群からの1つ以上の元素である。
【0028】
特に好ましくは、Xは、Ti、Cr、W、Mn、Re、Fe、Co、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Ga、Sn、SbおよびTeを含む群からの1つ以上の元素である。
【0029】
化学量論的係数cは、特に0を上廻り、特に有利には、0.05〜4.5であり、殊に有利には、0.05〜4.0である。化学量論的係数bは、有利には、0.5〜2.5である。更に、以下に記載されたことは、本発明による多重金属酸化物にとって一般的に好ましい。
【0030】
aは、0.2〜0.8、特に0.3〜0.7、特に有利に0.4〜0.6である。
酸素含量の実験による測定は、例えばLECO Corporation社 (USA)酸素測定器を用いて(例えば、LECO社のTC-436を用いて)行なうことができる。
【0031】
更に、多重金属酸化物中に含有されているVの25モル%以上、特に有利に50モル%以上、殊に有利に75モル%以上または100モル%が酸化段階+4であることは、本発明による多重金属酸化物にとって好ましい。Vの酸化段階の実験による試験は、欧州特許出願公開第774297号明細書の記載と同様に、滴定により行なうことができる。
【0032】
既に記載された特徴を示す回折反射と共に、本発明による多重金属酸化物に対してi相を表わすX線回折パターンにおいて、なおしばしば次の回折反射は、同様に使用されるX線の波長に依存しない格子面間隔d[Å]の形状で再現されて認識することができる:
d[Å]
8.19±0.3(有利に±0.15)
3.51±0.2(有利に±0.1)
3.42±0.2(有利に±0.1)
3.34±0.2(有利に±0.1)
2.94±0.2(有利に±0.1)
2.86±0.2(有利に±0.1)。
【0033】
格子面間隔d[Å]=3.99±0.2を表わす回折反射の強度に関連して、前記の(相対的な)回折反射強度I(%)は、次の通りである:
d[Å] I(%)
8.19±0.3(または±0.15) 0〜25
3.51±0.2(または±0.1) 2〜50
3.42±0.2(または±0.1) 5〜75
3.34±0.2(または±0.1) 5〜80
2.94±0.2(または±0.1) 5〜55
2.86±0.2(または±0.1) 5〜60。
【0034】
しばしばなお次の回折反射は、i相を表わすX線回折パターンを補足する:
d[Å]
2.54±0.2(有利に±0.1)
2.01±0.2(有利に±0.1)。
【0035】
上記の記載と同様に関連する(相対的な)回折反射強度は、前記の回折反射の場合には、しばしば次の通りである:
d[Å] I(%)
2.54±0.2(または±0.1) 0.5〜40
2.01±0.2(または±0.1) 5〜60。
【0036】
本発明によれば、好ましいのは、本発明による多重金属酸化物のX線回折図において、格子面間隔d[Å]=3.99±0.2(または±0.1)または格子面間隔d[Å]=3.28±0.2(または0.1)を表わす回折反射が最も強い(強度が最も高い)回折反射であるような本発明による多重金属酸化物である。
【0037】
更に、回折反射の2Θ半値幅がd[Å]=3.99±0.2(または±0.1) 1゜以下、特に0.5゜以下であるような多重金属酸化物が好ましい。別の記載された回折反射の2Θ半値幅は、通常3゜以下、特に1.5゜以下、特に有利に1゜以下である。
【0038】
本明細書中でX線回折図に関連した全ての記載は、Cu−Kα線(λ=1.54178Å)を使用しながらX線として発生されたX線回折図に帰因する(Siemens-Diffraktometer Theta-Theta D-5000、管電圧:40kV、管電流:40mA、アパーチャー絞りV20(可変)、散乱光絞りV20(可変)、二次モノクロメーター絞り(0.1mm)、検出器絞り(0.6mm)、測定間隔(2Θ):0.02゜、工程ごとの測定時間:2.4秒、検出器:シンチレーションカウンター管;X線回折図における回折反射の強度の定義は、本明細書中ではドイツ連邦共和国特許出願公開第19835247号明細書、ドイツ連邦共和国特許出願公開第10122027号明細書ならびにドイツ連邦共和国特許出願公開第10051419号明細書およびドイツ連邦共和国特許出願公開第10046672号明細書中に記載された定義に関連し;同様のことは、2Θ半値幅の定義にも当てはまる。
【0039】
回折に使用されるX線の波長Aおよび回折角度Θ(回折反射位置としては、本明細書中で2Θプロットにおける反射の頂点が使用されている)は、ブラッグ(Bragg)の関係式により次のように互いに関連付けられている:
2sinΘ = λ/d
この場合、dは、それぞれの回折反射に属する、原子状空間配置の格子面間隔である。
【0040】
本発明による多重金属酸化物材料の製造は、一般に多重金属酸化物材料の元素状成分の適当な源からできるだけ緻密な、特に微粒状の乾燥混合物(望ましい化学量論的構成成分)が製造され、この乾燥混合物は、350〜1000℃または400〜700℃または400〜650℃または400〜600℃で熱的に処理される。
【0041】
前記の熱的処理は、原理的に酸化の雰囲気下、還元の雰囲気下ならびに不活性の雰囲気下で行なうことができる。酸化の雰囲気としては、例えば空気、分子状酸素の含量が増加された空気または酸素含量が減少された空気がこれに該当する。しかし、有利には、熱的処理は、不活性の雰囲気下、即ち例えば分子状窒素および/または希ガスの下で実施される。通常、熱的処理は、常圧(1気圧)で行なわれる。勿論、熱的処理は、真空下または過圧下で行なうこともできる。
【0042】
熱的処理をガス状の雰囲気下で行なう場合には、この雰囲気は、静止していてもよいし、流動していてもよい。有利には、この雰囲気は、流動している。全体的に熱的処理は、24時間までまたはそれ以上で適用することができる。
【0043】
好ましくは、熱的処理は、最初に酸化(酸素を含有する)雰囲気下(酸素の下)で150〜400℃または250〜350℃の温度で行なわれる(=前分解工程)。これに続いて、熱的処理は、有利に不活性ガス下で350〜1000℃または400〜700℃または400〜650℃または400〜600℃の温度で進行される。
【0044】
出発化合物の緊密な混合は、乾式形または湿式形で行なうことができる。
【0045】
前記混合を乾式形で行なう場合には、出発化合物は、有利に微粒状の粉末として使用され、混合および場合による圧縮の後にか焼(熱的処理)に掛けられる。
【0046】
しかし、有利には、緊密な混合は、湿式形で行なわれる。この場合、通常は、出発化合物は、水溶液の形(場合によっては錯形成剤の共用下で;例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第10145958号明細書)および/または懸濁液の形で互いに混合される。引続き、この水性材料は、乾燥され、乾燥後にか焼される。好ましくは、水性材料は、水溶液または水性懸濁液である。特に、乾燥法は、直接に水性混合物(殊に、水溶液の場合に;例えば、特開平7−315842号公報参照)の製造に引き続いて、なかんずく噴霧乾燥することができる水性材料が水溶液または懸濁液である場合に、特に緊密な乾燥混合物を誘発する噴霧乾燥(出口温度は、一般に100〜150℃であり;噴霧乾燥は、並流または向流で実施されることができる)によって行なわれる。しかし、また、前記の水性材料は、真空中での蒸発濃縮、凍結噴霧、凍結乾燥または常用の蒸発濃縮によって乾燥されてもよい。
【0047】
また、好ましいのは、例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第10029338号明細書および特開平12−143244号公報の記載と同様に、熱水法での本発明による多重金属酸化物の製造である。
【0048】
元素状構成成分のための源として、本発明による多重金属酸化物材料の前記の製造方法の実施の範囲内で加熱の際(場合によっては空気を用いて)に酸化物および/または水酸化物を形成することができる全ての源がこれに該当する。このような出発化合物として、既に元素状の構成成分の酸化物および/または水酸化物を共用するかまたは専ら使用することができることは、自明のことである。即ち、殊に、正当に評価された公知技術水準の特許明細書中に記載された全ての出発化合物がこれに該当する。
【0049】
本発明により適した、元素Moのための源は、例えば酸化モリブデン、例えば三酸化モリブデン、モリブデン酸塩、例えばアンモニウムヘプタモリブデン酸塩四水和物およびモリブデンハロゲン化物、例えば塩化モリブデンである。
【0050】
本発明により共用することができる、元素Vのための適当な出発化合物は、例えばバナジウムオキシ硫酸塩水和物、バナジルアセチルアセトネート、バナジン酸塩、例えばアンモニウムメタバナデート、バナジン酸化物、例えば五酸化バナジン(V)、バナジンハロゲン化物、例えば四塩化バナジン(VCl)およびバナジンオキシハロゲン化物、例えばVOClである。この場合、バナジン出発化合物としては、バナジンを酸化段階+4で含有するようなバナジン出発化合物が共用されてもよい。
【0051】
本発明によれば、元素Vのための源として、元素Vを酸化段階+5で含有する化合物と元素状バナジンとからなる混合物を使用することは、有利である。更に、前記混合物から、遅くともか焼の際にVの本発明による好ましい平均的な酸化段階+4が形成されうる。
【0052】
Vの源として、専らVが酸化段階+5で含有されている化合物を使用する場合には、本発明によれば、元素状バナジウムとは異なる還元剤を含有する出発化合物を一緒に使用し(例えば、NHまたはその分解生成物NH)、かつV5+の出発化合物をV4+に還元することができることは、好ましい。また、このような還元剤は、蓚酸、蓚酸塩(例えば、ニオボキサレートとして)、ヒドラジン二塩酸塩、ヒドラジン硫酸塩、ヒドラジン(一水和物)、ヒドロキシルアミン、ヒドロキシルアミン塩酸塩またはその塩であってよい。特に、緊密な乾燥混合物の調製は、不活性ガス雰囲気(例えば、N)下で行なわれ、酸化工程により、よりいっそう良好な制御が保証される。
【0053】
元素のテルルの源としては、本発明による酸化テルル、例えば二酸化テルル、金属状テルル、テルルハロゲン化物、例えばTeClが適当であるが、しかし、テルル酸、例えばオルトテルル酸HTeOも適当である。また、元素状テルルまたは別の構成成分を元素(例えば、アンチモン、鉄、サマリウム、亜鉛、アルミニウム、砒素)の形で還元剤(例えば、V5+のための)として共用してもよいことは、自明のことである。
【0054】
更に、好ましいアンチモン出発化合物は、アンチモンハロゲン化物、例えばSbCl、アンチモン酸化物、例えば三酸化アンチモン(Sb)、アンチモン酸、例えばHSb(OH)であるが、しかし、アンチモン酸化物、例えば酸化アンチモン硫酸塩(SbO)SOも好ましい。
【0055】
本発明による適当なニオブ源は、例えばニオブ酸化物、例えば五酸化ニオブ(Nb)、酸化ニオブハロゲン化物、例えばNbOCl、ニオブハロゲン化物、例えばNbClであるが、しかし、ニオブと有機カルボン酸および/またはジカルボン酸、例えば蓚酸塩およびアルコラートとからなる錯体化合物も好ましい。ニオブ源として、欧州特許出願公開第895809号明細書中で使用されたNbを含有する溶液もこれに該当することは、自明のことである。
【0056】
全ての別の可能な元素(殊にFe、Pb、Ni、Cu、Co、BiおよびPdならびにアルカリ金属元素)に関連して、適当な出発化合物としては、なかんずく該化合物のハロゲン化物、硝酸塩、蟻酸塩、蓚酸塩、酢酸塩、炭酸水素塩、炭酸塩および/または水酸化物がこれに該当する。適当な出発化合物は、しばしばそのオキソ化合物、例えばタングステン酸塩またはこのオキソ化合物から誘導される酸である。出発化合物としては、しばしばアンモニウム塩も使用される。
【0057】
更に、出発化合物としては、例えばPolyhedron 第6巻, No. 2, 第213〜218頁,1987に記載されているようなアンダーソン(Anderson)型のポリアニオンもこれに該当する。アンダーソン型のポリアニオンに適したもう1つの刊行物源は、Kinetics and Catalysis, 第40巻, No. 3, 1999, 第401〜404頁である。
【0058】
出発化合物として適当な別のポリアニオンは、例えばドーソン構造型またはケギン構造型のポリアニオンである。有利には、高められた温度で酸素の存在下または酸素の遮断下で、場合によってはガス状化合物の放出下に酸化物に変換されるような出発化合物が使用される。
【0059】
本発明による多重金属酸化物材料に対しては、特開平8−57319号公報ならびに欧州特許出願公開第1254707号明細書の教示が使用可能であることは、自明なことであり、この教示によれば、MoおよびVを含有する多重金属酸化物材料の触媒性能(活性および目的生成物の形成の選択性)は、適当な液体、例えば酸での処理によって改善されうる。
【0060】
このような液体としては、例えば有機酸および無機酸ならびにこれらの水溶液がこれに該当する(例えば、蓚酸、蟻酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、硝酸、硫酸、過塩素酸、塩酸、テルル酸、硼酸およびその混合物ならびに水溶液)が、しかし、アルコール、前記酸のアルコール性溶液および過酸化水素水溶液もこれに該当する。
【0061】
注目すべきことに、このような洗浄は、本発明による多重金属酸化物が相不均質性である場合にi相含量を上昇させる(別の相、例えばk相は、有利には消去される)。
【0062】
更に、このような洗浄は、一般にMoの含量と相対的に元素Aに対して本発明による多重金属酸化物材料の含量を減少させ、この場合には、多重金属酸化物材料中で形成されたi相は、損なわれることがない。
【0063】
Moの含量と相対的に元素Aに対する本発明による多重金属酸化物材料の含量の事後の減少は、この多重金属酸化物材料が有利に元素Aを吸収することができる液体で抽出されることによっても可能である。このような液体は、例えば元素Aのために錯形成剤(例えば、クラウンエーテル)を含有する液体である。しかし、勿論、このような液体としては、無機塩の溶液または前記塩の溶融液またはイオン性液体が使用されてもよい。
【0064】
適当な液体または塩溶融液での本発明による多重金属酸化物の前記の処理は、20〜600℃、または400℃、または40〜380℃または45〜100℃の温度で行なうことができ、なかんずく次のような
a)Nbを含有しないか、または
b)Teを含有しないか、または
c)Sbを含有しないか、または
d)NbおよびTeを含有しないか、または
e)NbおよびSbを含有しない多重金属酸化物が重要である。通常、前記処理は、常圧下で行なわれ、数時間ないし数日が適用される。溶液での処理の場合には、特に還流下に作業される。最終的に、通常は、水で洗浄される。
【0065】
本発明によれば、好ましくは、[5−b−c]/aの比が少なくとも5%、特に少なくとも25%、特に有利に少なくとも50%、殊に有利に少なくとも75%増加する(出発値に対して;しばしば[5−b−c]/aの比は、200%以下または100%以下で増加する)限り、元素Aの含量は、本発明による多重金属酸化物から事後に除去される。元素Aは、事後に本発明による多重金属酸化物材料から前記の記載と同様に完全に除去されてもよく、この場合には、それによって言うに値するほどの構造的な変化を生じることはない。経済性の理由から、しばしば元素Aの完全な除去は、行なわれない。
【0066】
本発明による多重金属酸化物は、それ自体(材料1)としてかまたは該多重金属酸化物中に含有されている元素A(材料2)の部分的または完全な除去後に、即ち促進剤元素化合物の溶液(例えば、水性)での材料1または材料2の含浸、乾燥および再度の熱処理(有利に不活性ガス流中および特に空気での前分解なしに)の後に触媒のための活性材料として使用されてよい。有利なのは、元素Pb、Ni、Co、Bi、Pd、Ag、Pt、Cu、Au、Ga、Zn、Sn、In、Re、Ir、Sm、Sc、Y、Pr、NdおよびTbの塩の溶液での含浸である。最後のTbは、含浸すべき多重金属酸化物が前記元素をなお含有していない場合には、特に好ましい。好ましくは、このような含浸には、前記元素の硝酸塩水溶液および/またはハロゲン化物水溶液が使用されるか、或いは前記元素が有機化合物(例えば、酢酸塩またはアセチルアセトネート)と錯化して存在しているような水溶液が使用される。
【0067】
この場合、触媒のための活性材料としての使用は、粉末の形で行なわれてもよいし、成形体に変形して行なわれてもよい。この場合、触媒床は、固定床、移動床または渦動床であることができる。
【0068】
成形体への変形は、例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第10118814号明細書またはPCT/EP/02/04073またはドイツ連邦共和国特許出願公開第10051419号明細書中の記載と同様に、担持体上へもたらすことによって行なうことができる。
【0069】
そのために使用することができる担持体は、特に化学的に不活性である。即ち、前記の担持体は、部分接触的な気相酸化の経過中に本質的に影響を及ぼすこともないし、活性材料によって接触される、部分接触的な気相アンモ酸化の経過中に本質的に影響を及ぼすこともない。
【0070】
担持体のための材料としては、本発明によれば、殊に酸化アルミニウム、二酸化珪素、珪酸塩、例えば粘土、カオリン、ステアタイト(有利に水中で可溶性の僅かなアルカリ金属含量を有する)、軽石、珪酸アルミニウムおよび珪酸マグネシウム、炭酸珪素、二酸化ジルコニウムおよび二酸化トリウムがこれに該当する。
【0071】
担持体の表面は、平滑であってもよいし、粗面であってもよい。好ましくは、担持体の表面は、粗面である。それというのも、高められた表面粗さは、一般に施こされた活性材料外殻の高められた付着強さを引き起こすからである。
【0072】
しばしば担持体の表面粗さRzは、5〜200の範囲内、特に20〜100μmの範囲にある(Hommelwerke社、ドイツ連邦共和国、の”DIN-ISO表面測定値のためのHommel テスター”を用いてDIN 4768 1頁の記載により測定した)。
【0073】
更に、この担持材料は、多孔質であっても非多孔質であってもよい。好ましくは、担持材料は、非多孔質である(担持体の体積に対する細孔の全体積が1体積%以下であった)。
【0074】
本発明による外殻触媒上に存在する活性の酸化物材料外殻の厚さは、通常、10〜100μmである。しかし、前記の厚さは、50〜700μm、100〜600μmまたは150〜400μmであってもよい。また、可能な外殻厚さは、10〜500μm、100〜500μmまたは150〜300μmである。
【0075】
原理的に本発明による方法にとって担持体の任意の幾何学的寸法がこれに該当する。前記の幾何学的寸法の長手方向の伸びは、一般に1〜10mmである。しかし、有利には、球体または円筒体、殊に中空円筒体が担持体として使用される。担持球体にとって有利な直径は、1.5〜4mmである。円筒体を担持体として使用する場合には、この担持体の長さは、特に2〜10mmであり、その外径は、4〜10mmである。更に、環状体の場合には、肉厚は、通常1〜4mmである。本発明により適した環状担持体は、3〜6mmの長さ、4〜8mmの外径および1〜2mmの肉厚を有していてもよい。しかし、7mm×3mm×4mmまたは5mm×3mm×2mm(外径×長さ×内径)の担体の環状幾何学的寸法も可能である。
【0076】
このような外殻触媒の製造は、最も簡単な方法で、活性材料を予め形成させ、この活性材料を微粒状の形に変え、最終的に液状の結合を用いて担体の表面上に施こすようにして行なうことができる。そのために、担体の表面は、最も簡単な方法で液状の結合剤で湿潤され、微粒状の活性材料との接触によって活性材料の層は、湿潤された表面上に留められる。最終的に、被覆された担体は、乾燥される。高められた層厚を達成するために、前記方法を周期的に繰り返すことは、自明のことである。この場合、被覆された基体は、新たな”担体”等に変わる。
【0077】
担体の表面上に施すべき触媒活性の酸化物材料の微細度は、勿論、望ましい外殻の厚さに適合されている。例えば、粉末粒子の全体数の少なくとも50%が1〜20μmの目開きの篩を生じ、50μmを上廻る長手方向の伸びを有する粒子の数値的割合が10%未満であるような活性材料粉末は、100〜500μmの外殻厚さ範囲に適している。一般に、粉末粒子の長手方向の伸びの分布は、製造に応じてガウス分布に相当する。しばしば、粒径分布は、次のようになる:
【0078】
【表1】

【0079】
この場合:
Dは、粒子の直径であり、
xは、直径がD以上である粒子の百分率での割合であり;かつ
yは、直径がD未満である粒子の百分率での割合である。
【0080】
記載された被覆方法を工業的規模で実施するためには、例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第2909671号明細書に開示された方法の原理ならびにドイツ連邦共和国特許出願公開第10051419号明細書に開示された方法の原理の使用が望ましく、即ち被覆することができる担体は、特に傾斜されて(傾斜角度は、一般に0゜以上および90゜以下、多くの場合に30゜以上および90゜以下であり;傾斜角度は、水平方向に対する回転容器手段の軸線の角度である)回転する回転容器(例えば、回転ドラムまたは施糖衣用ドラム)中に装入される。回転する回転容器は、例えば球状または円筒体の担体を、一定の距離をもって連続して配置された2個の計量供給装置の下で通過させる。2個の計量供給装置の第1の計量供給装置は、有利にノズル(例えば、圧縮空気で運転される噴霧ノズル)に相当し、このノズルによって、回転する回転ドラム中で転動する担体は、液状の結合剤で噴霧され、制御されて湿潤される。第2の計量供給装置は、噴入される液状の結合剤の噴霧円錐体の外側に存在し、微粒状の酸化物活性材料を供給するために使用される(例えば、振盪溝または粉末スクリューにより)。制御されて湿潤された担持球体は、供給された活性材料粉末を吸収し、この活性材料粉末は、例えば円筒状または球状の担体の外側表面上で転動によって圧縮され、関連する外殻に変わる。
【0081】
必要に応じて、こうして基本的に被覆された担体が次に続く回転の進行中に再び噴霧ノズルを通過する場合には、再移動の経過中に微粒状の酸化物活性材料の他の層が収容等々されうるように制御されて湿潤される(中間乾燥は、一般に不必要である)。この場合、微粒状の酸化物活性材料および液所の結合剤は、一般に連続的に同時に供給される。
【0082】
液状の結合剤の除去は、被覆の終結後に、例えば熱いガス、例えばNまたは空気の作用によって行なうことができる。注目すべきことに、記載された被覆法は、連続層の互いの完全に満足した付着ならびに担体の表面上での基本層の完全に満足した付着を生じさせる。
【0083】
前記の被覆法にとって本質的なことは、担体の被覆すべき表面の湿潤が制御された方法で行なわれることである。これを簡略的に表現すれば、担体表面は、有利にこの担体表面が実際に液状の結合剤を吸収して有しているが、しかし、担体表面上に、液相それ自体は、可視的に現れていない。担体表面を湿潤させた場合には、微粒状の触媒活性酸化物材料は、表面上に吸い上げられる代わりに、凝集し、別々の凝集体に変わる。このための詳細な記載は、ドイツ連邦共和国特許出願公開第2909671号明細書およびドイツ連邦共和国特許出願公開第10051419号明細書中に見出される。使用された液状の結合剤の前記の最終的な除去は、制御された方法で、例えば蒸発および/または昇華によって行なわれうる。この除去は、最も簡単な場合には、相応する温度(しばしば50〜300℃、特に150℃)の熱いガスに作用によって行なうことができる。しかし、熱いガスの作用によって、前乾燥だけを生じさせることもできる。更に、最終的な乾燥は、任意の種類の乾燥炉(例えば、ベルト型乾燥機)中または反応器中で行なうことができる。この場合、作用する温度は、酸化物の活性材料の製造に使用される最大のか焼温度を上廻ってはならない。勿論、乾燥は、専ら乾燥炉中で実施されてもよい。
【0084】
被覆法のための結合剤としては、担体の種類および幾何学的寸法とは無関係に次のものが使用されてよい:水、一価アルコール、例えばエタノール、メタノール、プロパノールおよびブタノール、多価アルコール、例えばエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールまたはグリセリン、一価または多価の有機カルボン酸、例えばプロピオン酸、蓚酸、マロン酸、グルタル酸またはマレイン酸、アミノアルコール、例えばエタノールアミンまたはジエタノールアミンならびに一価または多価の有機アミド、例えばホルムアミド。また、有利な結合剤は、水20〜90質量%と水中で溶解した有機化合物10〜80質量%とからなる溶液であり、この場合この有機化合物の沸点または昇華温度は、常圧(1気圧)で100℃超、特に150℃超である。有利には、有機化合物は、前記の記載からの可能な有機結合剤から選択される。特に、前記の結合剤水溶液の有機含量は、10〜50質量%、特に有利に20〜30質量%である。この場合、有機成分としては、多糖類およびオリゴ多糖類、例えばグルコース、フラクトース、サッカロースまたはラクトースならびにポリエチレンオキシドおよびポリアクリレートがこれに該当する。
【0085】
重要なことは、外殻触媒の製造が湿潤された担体表面上への完成され微粉砕された活性酸化物材料の施与によってだけ行なわれるうることではないことである。
【0086】
むしろ、活性酸化物材料の代わりに、この活性酸化物材料の微粒状の前駆体材料が湿潤された担体表面上に(同じ被覆法および結合剤を使用しながら)施こされることができ、か焼は、被覆された担体の乾燥後に実施されうる(また、担体は、前駆体溶液で含浸されてもよく、次に乾燥されることができ、引続きか焼されうる。)。最終的に、必要な場合には、i相とは異なる相および/または元素Aは、洗浄除去されうる。
【0087】
このような微粒状の前駆体材料としては、例えば望ましい活性の酸化物材料の元素状成分の源から最初にできるだけ緊密で、特に微粒状の乾燥混合物を製造し(例えば、源の水性懸濁液または溶液の噴霧乾燥によって)、この微粒状の乾燥混合物を150〜350℃、特に250〜350℃の温度で酸化(酸素含有の)雰囲気下(例えば、空気下)で熱的に処理し(数時間)、最終的に必要に応じて微粉砕に掛けることによって得ることができる材料がこれに該当する。
【0088】
更に、担体を前駆体材料で被覆した後に、好ましくは、不活性ガス雰囲気(別の全ての雰囲気も当てはまる)下で350〜1000℃、または400〜700℃または400〜650℃または400〜600℃の温度でか焼される。
【0089】
勿論、活性材料は、微粒状の活性材料ならびに活性材料の微粒状の前駆体材料の押出および/またはペレット化によって成形されることができる(必要な場合には、i相とは異なる相および/または元素の洗浄除去が最終的に行なわれうる。)。
【0090】
この場合に得ることができる完全触媒の幾何学的形状としては、球体、中実円筒体および中空円筒体(環状体)がこれに該当する。この場合前記の幾何学的形状体の長手方向の伸びは、一般に1〜10mmである。円筒体の場合には、この円筒体の長さは、特に2〜10mmであり、その外径は、4〜10mmである。更に、環状体の場合には、肉厚は、通常1〜4mmである。本発明により適した環状の完全触媒は、3〜6mmの長さ、4〜8mmの外径および1〜2mmの肉厚を有していてもよい。しかし、7mm×3mm×4mmまたは5mm×3mm×2mm(外径×長さ×内径)の完全触媒の環状の幾何学的寸法も可能である。
【0091】
勿論、ドイツ連邦共和国特許出願公開第10101695号明細書に記載の幾何学的寸法もこれに該当する。
【0092】
勿論、活性材料は、微粒状の、例えばコロイド状の材料、例えば二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ニオブで希釈された形で触媒活性材料として使用されてもよい。この場合、希釈剤は、活性材料中または活性材料の前駆体材料中に混入されてもよい。
【0093】
本明細書中に記載された活性材料は、(粉末の形でかまたは幾何学的形状の成形体に変性され、希釈されないかまたは希釈されて)飽和炭化水素および/または不飽和炭化水素ならびに飽和アルデヒドおよび/または不飽和アルデヒドを不均一系触媒により部分気相酸化および/または部分気相アンモ酸化するための活性材料として適している。
【0094】
このような飽和炭化水素および/または不飽和炭化水素は、殊にエタン、エチレン、プロパン、プロピレン、n−ブタン、イソブタンおよびイソブテンである。この場合、目的生成物は、なかんずく酢酸、酢酸ビニル、アクロレイン、アクリル酸、メタクロレイン、メタクリル酸、アクリルニトリルおよびメタクリルニトリルである。しかし、前記の目的生成物は、化合物、例えばアクロレインおよびメタクロレインを不均一系触媒により部分気相酸化および/または部分気相アンモ酸化するためにも適している。
【0095】
しかし、エチレン、プロピレンならびにn−ブテンおよびイソブテンも目的生成物であってもよい。
【0096】
炭化水素の完全な酸化とは、本明細書中で、炭化水素中に全体的に含有されている炭素が炭素の酸化物(CO、CO)に変換されることである。
【0097】
これとは異なる、分子状酸素の反応作用下での炭化水素の全ての反応は、本明細書中で部分酸化の概念と副次的にまとめられる。アンモニアの付加的な反応作用は、部分アンモ酸化を示す。
【0098】
有利に、本明細書中に記載された活性材料は、n−ブタンから無水マレイン酸への変換、プロパンからアクロレインおよび/またはアクリル酸への変換、プロパンからアクリル酸および/またはアクリルニトリルへの変換、プロピレンからアクロレインおよび/またはアクリル酸への変換、プロピレンからアクリル酸への変換、イソブタンからメタクロレインおよび/またはメタクリル酸への変換、イソブタンからメタクリル酸および/またはメタクリルニトリルへの変換、イソブテンからメタクロレインおよび/またはメタクリル酸への変換、イソブテンからメタクリル酸および/またはメタクリルニトリルへの変換、エタンからエチレンへの変換、エタンから酢酸および/または酢酸ビニルへの変換ならびにエチレンから酢酸および/または酢酸ビニルへの変換のための触媒活性材料として適している。
【0099】
このような部分酸化および/または部分アンモ酸化(自体公知の方法で制御することができる、反応ガス混合物中でのアンモニアの含量の選択によって、この反応は、本質的に専ら部分酸化としてかまたは専ら部分アンモ酸化としてかまたは2つの反応の重なりとして形成させることができる;例えばWO 98/22421参照)の実施は、公知技術水準のi相/k相含有の多重金属酸化物材料によって自体公知であり、完全に相応する方法で実施されることができる。
【0100】
また、ドイツ連邦共和国特許出願公開第10254279号明細書に記載の方法と同様に行なうことができる。
【0101】
炭化水素として粗製プロパンまたは粗製プロピレンを使用する場合には、これらの炭化水素は、ドイツ連邦共和国特許出願公開第10246119号明細書またはドイツ連邦共和国特許出願公開第10118814号明細書、またはPCT/EP/02/04073の記載と同様に構成されている。同様に、好ましくは、前記明細書中の記載と同様に行なわれる。
【0102】
プロパンからアクリル酸への部分酸化は、多重金属酸化物材料欧州特許出願公開第608838号明細書、WO 0029106、特開平10−36311号公報および欧州特許出願公開第1192987号明細書中の記載と同様に実施されてよい。
【0103】
必要とされる分子状酸素のための源としては、例えば空気、酸素含量が増加された空気または酸素含量が減少された空気または純粋な酸素が使用されてよい。
【0104】
このような方法は、反応ガス出発混合物が空気の希ガス含量を上廻る、希ガスの含量、殊に不活性の希釈ガスとしてのヘリウムの含量を含有しない場合に好ましい。その他の点では、反応ガス出発混合物は、プロパンおよび分子状酸素と共に、勿論、不活性の希釈ガス、例えばN、COおよびCOを含むことができる。反応ガス混合物成分としての水蒸気は、本発明によれば、好ましい。
【0105】
即ち、本発明による活性材料を例えば200〜550℃、または230〜480℃の反応温度または300〜440度の反応温度および1〜10バールまたは2〜5バールの圧力で負荷することができる反応ガス出発混合物は、例えば次の組成を有することができる:
プロパン1〜15体積%、特に1〜7体積%、
空気44〜99体積%および
水蒸気0〜55体積%。
【0106】
好ましいのは、水蒸気を含有する反応ガス出発混合物である。
【0107】
反応ガス出発混合物の別の可能な組成としては、次のものがこれに該当する:
プロパン70〜95体積%、
分子状空気5〜30体積%および
水蒸気0〜25体積%。
【0108】
勿論、このような方法の場合には、専らアクリル酸から形成されているものではない生成物ガス混合物を得ることができる。むしろ、生成物ガス混合物は、未反応のプロパンと共に、副生成物、例えばプロペン、アクロレイン、CO、CO、HO、酢酸、プロピオン酸等を含有し、この副生成物の中からは、アクリル酸は、分離されなければならない。
【0109】
この分離は、プロペンからアクリル酸への不均一系触媒による気相酸化によって公知であるような方法により行なうことができる。
【0110】
しかし、本発明による多重金属酸化物材料は、別の多重金属酸化物材料中に組み込まれてもよい(例えば、この多重金属酸化物材料は、混合され、場合によっては圧縮され、か焼されるかまたは沈泥物(特に、水性)として混合され、乾燥され、か焼される(例えば、欧州特許出願公開第529853号明細書に記載の多重金属酸化物材料の記載と同様に))。好ましくは、再び不活性ガス下でか焼される。
【0111】
実施例および比較例
比較例1[Mo3.84+1.213.8
水6000ml中で、80℃で窒素洗浄下で攪拌しながらH.C. Starck社のメタバナジン酸アンモニウム115.5g(V含量=75.6質量%;V5+ 0.96モル)を溶解し、澄明な黄色の溶液に変えた。引続き、この溶液中で80℃ならびに窒素洗浄を維持しながら撹拌下にH.C. Starck社の七モリブデン酸アンモニウム四水和物671.1g(MoO含量=81.5質量%;Mo 3.8モル)を溶解した。この場合に得られた澄明の水溶液中に、窒素洗浄ならびに80℃を維持しながら撹拌下にChem Pur社、76204Karlsruhe在、の元素状V粉末12.23g(V100%;V±00.24モル)を添加し、引続き限界条件を維持しながら4時間さらに攪拌した。この場合に得られた暗青黒色の水系懸濁液を60℃に冷却し、この温度でなお12時間窒素洗浄を維持しながら攪拌した。引続き、Nitro社の噴霧乾燥機(Nitro社、DKの噴霧乾燥機 Niro A/S アトマイザー、運搬可能なMinor装置、遠心分離型噴霧器)中で噴霧乾燥した。装入物温度は、60℃であった。ガス入口温度Teinは、370℃であり、ガス出口温度Tausは、105℃であった。
【0112】
得られた噴霧粉末100gを、ドイツ連邦共和国特許出願公開第10122027号明細書の図1に記載の回転ボール炉(1 lの内部体積)中で50Nl/hの空気流の下で50分間で25℃の線状の傾斜路を用いて275℃に加熱し、次に空気流を維持しながら275℃で30分間維持した。引続き、空気流を窒素流50Nl/hによって替え、16分間で線状で275℃から575℃に加熱し、窒素流を維持しながら、この温度で360分間維持した。引続き、窒素流を維持しながら25℃に冷却した。図1は、属するX線回折図を示す。このX線回折図は、i相含量を有しない。
【0113】
実施例1 Cs0.5[Mo3.84+1.214.05
製造は、比較例1と同様に行なわれた。60℃での暗青黒色の水性懸濁液の12時間の攪拌の終結後、60℃を維持しながらChem Pur社、76204Karlsruhe在、のCsCO81.5g(100%;Cs 0.5モル)を添加して、引続きなお60℃で1時間、攪拌した(全て窒素洗浄下)。その後に、比較例1の記載と同様に噴霧乾燥し、熱処理した。図2は、生じる活性材料の実施例1に属するX線回折図を示す。この活性材料は、殆んど純粋なi相を示す。含有されているi相の回折反射の相対的な強度および状態は、次の通りである:
d[Å] I(%)
13.33 8
11.29 18
9.86 19
8.20 6
3.998 100
3.527 22
3.412 45
3.345 56
3.282 104
3.170 43
3.062 38
2.939 24
2.861 35。
【0114】
比較例2 [Mo3.54+0.514
水6000ml中で、80℃で窒素洗浄下で攪拌しながらH.C. Starck社のメタバナジン酸アンモニウム115.5g(V含量=75.6質量%;V5+ 0.96モル)を溶解し、澄明な黄色の溶液に変えた。引続き、この溶液中で80℃ならびに窒素洗浄を維持しながら撹拌下にH.C. Starck社の七モリブデン酸アンモニウム四水和物741.8g(MoO含量=81.5質量%;Mo 4.2モル)を溶解した。この場合に得られた澄明の水溶液中に、窒素洗浄ならびに80℃を維持しながら撹拌下にChem Pur社、76204Karlsruhe在、の元素状V粉末12.23g(V100%;V±00.24モル)を添加し、引続き限界条件を維持しながら4時間さらに攪拌した。この場合に得られた暗青黒色の水系懸濁液を60℃に冷却し、この温度でなお12時間窒素洗浄を維持しながら攪拌した。その後に、窒素洗浄の進行下に60℃を維持しながら、H.C. Starck社のパラタングステン酸アンモニウム七水和物156.5g(WO含量=88.90質量%;W0.6モル)を添加し、1時間攪拌した。
【0115】
得られた水性懸濁液を比較例1と同様に噴霧乾燥し、この場合に得られた噴霧粉末100gをドイツ連邦共和国特許出願公開第10122027号明細書の図1に記載の回転ボール炉(1 lの内部体積)中で50Nl/hの空気流の下で50分間で25℃の線状の傾斜路を用いて275℃に加熱し、次に空気流を維持しながら275℃で30分間維持した。引続き、空気流を窒素流50Nl/hによって替え、15分間で線状で275℃から600℃に加熱し、窒素流を維持しながら、この温度で360分間維持した。引続き、窒素流を維持しながら25℃に冷却した。図3は、属するX線回折図を示す。このX線回折図は、i相含量を有しない。
【0116】
実施例2 Cs0.5[Mo3.44+1.20.414
水6000ml中で、80℃で窒素洗浄下で攪拌しながらH.C. Starck社のメタバナジン酸アンモニウム115.5g(V含量=75.6質量%;V5+ 0.96モル)を溶解し、澄明な黄色の溶液に変えた。引続き、この溶液中で80℃ならびに窒素洗浄を維持しながら撹拌下にH.C. Starck社の七モリブデン酸アンモニウム四水和物600.5g(MoO含量=81.5質量%;Mo 3.4モル)を溶解した。この場合に得られた澄明の水溶液中に、窒素洗浄ならびに80℃を維持しながら撹拌下にChem Pur社、76204Karlsruhe在、の元素状V粉末12.23g(V100%;V±00.24モル)を添加し、引続き限界条件を維持しながら4時間さらに攪拌した。この場合に得られた暗青黒色の水系懸濁液を60℃に冷却し、この温度でなお12時間窒素洗浄を維持しながら攪拌した。その後に、窒素洗浄の進行下に60℃を維持しながら、H.C. Starck社のパラタングステン酸アンモニウム七水和物104.3g(WO含量=88.90質量%;W0.4モル)を添加し、1時間攪拌した。その後に、窒素洗浄ならびに60℃を維持しながらChem Pur社、76204Karlsruhe在、のCsCO81.46g(100%;Cs0.5モル)を添加し、さらに1時間攪拌した。生じる水性懸濁液を比較例1と同様に噴霧乾燥した。引続き、噴霧乾燥物100gを比較例2と同様に熱処理した。図4は、生じる活性材料の実施例に2に属するX線回折図を示す。この活性材料は、殆んど純粋なi相を示す。含有されているi相の回折反射の相対的な強度および状態は、次の通りである
d[Å] I(%)
13.29 11
11.19 24
9.79 24
8.16 8
3.966 100
3.524 20
3.405 39
3.345 48
3.283 90
3.173 39
3.060 38
2.937 28
2.859 35。
【0117】
実施例3 Cs0.5[Mo3.54+Te0.514
水6000ml中で、80℃で窒素洗浄下で攪拌しながらH.C. Starck社のメタバナジン酸アンモニウム96.2g(V含量=75.6質量%;V5+ 0.8モル)を溶解し、澄明な黄色の溶液に変えた。引続き、この溶液中で80℃ならびに窒素洗浄を維持しながら撹拌下にH.C. Starck社の七モリブデン酸アンモニウム四水和物618.2g(MoO含量=81.5質量%;Mo 3.5モル)を溶解した。この場合に得られた澄明の水溶液中に、窒素洗浄ならびに80℃を維持しながら撹拌下にChem Pur社、76204Karlsruhe在、の元素状V粉末10.19g(V100%;V±00.2モル)を添加し、引続き限界条件を維持しながら4時間さらに攪拌した。この場合に得られた暗青黒色の水系懸濁液を60℃に冷却し、この温度でなお12時間窒素洗浄を維持しながら攪拌した。その後に、窒素洗浄の進行下に60℃を維持しながら最初にFluka社のTe酸114.82g(CH-9471 Buchs,100%; Te 0.5モル)を添加し、1時間さらに攪拌した。次に、限界条件を維持しながらChem Pur社のCsCO81.5g(100%;Cs0.5モル)を添加し、さらに1時間攪拌した。
【0118】
得られた水性懸濁液を比較例1と同様に噴霧乾燥し、この場合に得られた噴霧粉末100gをドイツ連邦共和国特許出願公開第10122027号明細書の図1に記載の回転ボール炉(1 lの内部体積)中で50Nl/hの空気流の下で50分間で25℃の線状の傾斜路を用いて275℃に加熱し、次に空気流を維持しながら275℃で30分間維持した。
【0119】
引続き、空気流を窒素流50Nl/hによって替え、17分間で275℃から600℃に加熱し、窒素流を維持しながら、この温度で360分間維持した。引続き、窒素流を維持しながら25℃に冷却した。図5は、活性材料の実施例3に属するX線回折図を示す。このX線回折図は、重要なi相含量を示す。含有されているi相の回折反射の相対的な強度および状態は、次の通りである:
d[Å] I(%)
13.29 7
11.22 17
9.80 20
8.27 4
4.000 100
3.520 20
3.394 38
3.341 38
3.275 62
3.170 29
3.058 30
2.930 20
2.856 24。
【0120】
実施例4 Cs0.5[Mo3.74+1.2Se0.114
水6000ml中で、80℃で窒素洗浄下で攪拌しながらH.C. Starck社のメタバナジン酸アンモニウム115.5g(V含量=75.6質量%;V5+ 0.96モル)を溶解し、澄明な黄色の溶液に変えた。引続き、この溶液中で80℃ならびに窒素洗浄を維持しながら撹拌下にH.C. Starck社の七モリブデン酸アンモニウム四水和物653.5g(MoO含量=81.5質量%;Mo 3.7モル)を溶解した。この場合に得られた澄明の水溶液中に、窒素洗浄ならびに80℃を維持しながら撹拌下にChem Pur社、76204Karlsruhe在、の元素状V粉末12.23g(V100%;V±00.24モル)を添加し、引続き限界条件を維持しながら4時間さらに攪拌した。この場合に得られた暗青黒色の水系懸濁液を60℃に冷却し、この温度でなお12時間窒素洗浄を維持しながら攪拌した。その後に、窒素洗浄の進行下に60℃を維持しながら最初にFluka社のセレン酸(HSeO)12.9g(CH-9471 Buchs,100%; Se 0.1モル)を添加し、1時間さらに攪拌した。次に、限界条件を維持しながらChem Pur社のCsCO81.5g(100%;Cs0.5モル)を添加し、さらに1時間攪拌した。得られた水性懸濁液を比較例1と同様に噴霧乾燥し、この場合に得られた噴霧粉末100gをドイツ連邦共和国特許出願公開第10122027号明細書の図1に記載の回転ボール炉(1 lの内部体積)中で50Nl/hの空気流の下で50分間で25℃の線状の傾斜路を用いて275℃に加熱し、次に空気流を維持しながら275℃で30分間維持した。引続き、空気流を窒素流50Nl/hによって替え、20分間で275℃から650℃に加熱し、窒素流を維持しながら、この温度で360分間維持した。引続き、窒素流を維持しながら25℃に冷却した。活性材料の属するX線回折図は、重要なi相含量を示す。含有されているi相の回折反射の相対的な強度および状態は、次の通りである:
d[Å] I(%)
13.23 7
11.24 18
9.82 15
8.16 7
3.998 100
3.528 24
3.401 40
3.347 57
3.281 85
3.170 39
3.060 32
2.938 25
2.860 31。
【0121】
実施例5 Cs0.5[Mo3.54+Sb0.514
水6000ml中で、80℃で窒素洗浄下で攪拌しながらH.C. Starck社のメタバナジン酸アンモニウム120.3g(V含量=75.6質量%;V5+ 1モル)を溶解し、澄明な黄色の溶液に変えた。引続き、この溶液中で80℃ならびに窒素洗浄を維持しながら撹拌下にH.C. Starck社の七モリブデン酸アンモニウム四水和物618.2g(MoO含量=81.5質量%;Mo 3.5モル)を溶解した。この場合に得られた澄明の水溶液中に、窒素洗浄ならびに80℃を維持しながら撹拌下にChem Pur社、76204Karlsruhe在、の元素状V粉末12.23g(V100%;V±00.24モル)を添加し、引続き限界条件を維持しながら4時間さらに攪拌した。この場合に得られた暗青黒色の水性懸濁液を60℃に冷却し、この温度でなお12時間、窒素洗浄を維持しながら攪拌した。その後に、窒素洗浄の進行下に60℃を維持しながら、最初にMerck社、Darmstadt在、の酸化アンチモン(III)72.9g(100質量%;Sb0.5モル)を添加し、1時間さらに攪拌した。次に、限界条件を維持しながらChem Pur社、76204 Karlsruhe在、のCsCO81.5g(100%;Cs0.5モル)を添加し、さらに1時間攪拌した。得られた水性懸濁液を比較例1の記載と同様に噴霧乾燥し、この場合に得られた噴霧粉末100gを実施例3の記載と同様に熱処理した。活性材料の属するX線回折図は、重要なi相含量を示す。含有されているi相の回折反射の相対的な強度および状態は、次の通りである:
d[Å] I(%)
13.29 3
11.26 7
9.82 6
8.19 2
4.000 100
3.510 13
3.404 17
3.340 17
3.278 33
3.176 21
3.057 15
2.933 13
2.856 15。
【0122】
実施例6 Cs0.5[Mo3.74+1.2Bi0.113.9
水6000ml中で、80℃で窒素洗浄下で攪拌しながらH.C. Starck社のメタバナジン酸アンモニウム115.5g(V含量=75.6質量%;V5+ 0.96モル)を溶解し、澄明な黄色の溶液に変えた。引続き、この溶液中で80℃ならびに窒素洗浄を維持しながら撹拌下にH.C. Starck社の七モリブデン酸アンモニウム四水和物653.5g(MoO含量=81.5質量%;Mo 3.7モル)を溶解した。この場合に得られた澄明の水溶液中に、窒素洗浄ならびに80℃を維持しながら撹拌下にChem Pur社、76204Karlsruhe在、の元素状V粉末12.23g(V100%;V±00.24モル)を添加し、引続き限界条件を維持しながら4時間さらに攪拌した。この場合に得られた暗青黒色の水性懸濁液を60℃に冷却し、この温度でなお12時間、窒素洗浄を維持しながら攪拌した。その後に、窒素洗浄の進行下に60℃を維持しながらChem Pur社、76204Karlsruhe在、のCsCO81.5g(100%;Cs0.5モル)を添加し、さらに1時間攪拌した。次に、限界条件を維持しながらRiedel de Haen, D-30926Seelze在、の硝酸ビスマス五水和物48.5g(100%;Bi0.1モル)を添加し、さらに1時間攪拌した。得られた水性懸濁液を比較例1の記載と同様に噴霧乾燥し、この場合に得られた噴霧粉末100gを比較例2の記載と同様に熱処理した。活性材料の属するX線回折図は、重要なi相含量を示す。含有されているi相の回折反射の相対的な強度および状態は、次の通りである:
d[Å] I(%)
13.28 10
11.23 14
9.80 14
8.11 10
3.990 100
3.533 33
3.407 59
3.346 57
3.279 72
3.173 41
3.059 47
2.934 25
2.863 29。
【0123】
実施例7 Cs0.5[Mo3.24+Nb0.413.45
水6000ml中で、80℃で窒素洗浄下で攪拌しながらH.C. Starck社のメタバナジン酸アンモニウム120.3g(V含量=75.6質量%;V5+ 1.0モル)を溶解し、澄明な黄色の溶液に変えた。引続き、この溶液中で80℃ならびに窒素洗浄を維持しながら撹拌下にH.C. Starck社の七モリブデン酸アンモニウム四水和物565.2g(MoO含量=81.5質量%;Mo 3.2モル)を溶解した。この場合に得られた澄明の水溶液中に、窒素洗浄ならびに80℃を維持しながら撹拌下にH.C. Starck社の蓚酸ニオブ182.1g(Nb20.41質量%;Nb0.4モル)を添加し、引続き限界条件を維持しながら1時間さらに攪拌した。生じる暗緑色の溶液を60℃に冷却した。その後に、窒素洗浄の進行下に60℃を維持しながら最初にRiedel de Haen, D-30926Seelze在、の硝酸ビスマス五水和物(Bi(NO)-5HO)194.0g(100%;Bi0.4モル)を添加し、引続きChem Pur社,76204Karlsruhe在、のCsCO81.5g(100%;Cs0.5モル)を添加し、生じる懸濁液を20分間攪拌した。次に、比較例1の場合と同様に噴霧乾燥した。この場合に得られた噴霧粉末100gを実施例3の記載と同様に熱処理した。活性材料の属するX線回折図は、重要なi相含量を示す。含有されているi相の回折反射の相対的な強度および状態は、次の通りである
d[Å] I(%)
13.29 5
11.27 10
9.84 8
8.24 5
4.004 100
3.514 24
3.426 58
3.348 39
3.275 63
3.178 38
3.057 33
2.939 43
2.856 28。
【0124】
実施例8
実施例3からの多重金属酸化物材料Cs0.5[Mo3.5+4Te0.5 100gを20質量%のHNO水溶液1 l中で85℃に加熱し、この温度で常圧下に還流しながら5時間加熱した。
【0125】
水性懸濁液の冷却後に、固体含量を濾別し、5回水で洗浄し、110℃で24時間、真空乾燥箱中で乾燥した。
【0126】
固体の分析により、次の組成
Cs0.3[Mo3.6Te0.4
を生じた。このX線回折図は、Cs含量が硝酸水溶液での処理によって40%(相対的)だけ減少されたとしても、出発粉末のX線回折図と同一であった。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】i相含量を有しない、比較例1に属するX線回折図。
【図2】生じる活性材料の実施例1に属するX線回折図。
【図3】i相含量を有しない、比較例2に属するX線回折図。
【図4】生じる活性材料の実施例に2に属するX線回折図。
【図5】活性材料の実施例3に属するX線回折図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式I
[Mo5−b−c] (I)
〔式中、
Aは、NH、Na、K、Rb、CsおよびTlを含む群からの少なくとも1つの元素であり、
Xは、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、W、Mn、Re、Fe、Co、Ni、Cr、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、B、Al、Ga、In、C、Si、Ge、Sn、Pb、P、As、Sb、Bi、S、SeおよびTeを含む群からの1つ以上の元素であり、
aは、0.1〜1であり、
bは、0.25〜4.5であり、
cは、0〜4.5であり、但し、
b+cは、4.5以下であるものとする〕で示される多重金属酸化物材料であって、この多重金属酸化物材料のX線回折図が次のX線回折パターンRMを、使用されるX線の波長に依存しない格子面間隔d[Å]
d[Å]
3.06±0.2
3.17±0.2
3.28±0.2
3.99±0.2
9.82±0.4
11.24±0.4
13.28±0.5
の形状で再現して有することを特徴とする、一般式Iの多重金属酸化物材料。
【請求項2】
X線回折パターンRMが付加的に格子面間隔d[Å]=3.99±0.2を表わす回折反射の強度に関連した、次の相対的回折反射強度I(%):
d[Å] I(%)
3.06±0.2 5〜65
3.17±0.2 5〜65
3.28±0.2 15〜130
3.99±0.2 100
9.82±0.4 1〜50
11.24±0.4 1〜45
13.28±0.5 1〜35
を有する、請求項1記載の多重金属酸化物材料。
【請求項3】
Aが2つの元素RbおよびCsの少なくとも1つである、請求項1または2に記載の多重金属酸化物材料。
【請求項4】
XがTi、Cr、W、Mn、Re、Fe、Co、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Ga、Sn、SbおよびTeを含む群からの1つ以上の元素である、請求項1から3までのいずれか1項に記載の多重金属酸化物材料。
【請求項5】
cが0.05〜4.0である、請求項1から4までのいずれか1項に記載の多重金属酸化物材料。
【請求項6】
bが0.5〜2.5である、請求項1から5までのいずれか1項に記載の多重金属酸化物材料。
【請求項7】
aが0.2〜0.8である、請求項1から6までのいずれか1項に記載の多重金属酸化物材料。
【請求項8】
aが0.3〜0.7である、請求項1から7までのいずれか1項に記載の多重金属酸化物材料。
【請求項9】
多重金属酸化物材料中に含有されているVの25モル%超が酸化段階+4で存在する、請求項1から8までのいずれか1項に記載の多重金属酸化物材料。
【請求項10】
多重金属酸化物材料中に含有されているVの50モル%超が酸化段階+4で存在する、請求項1から9までのいずれか1項に記載の多重金属酸化物材料。
【請求項11】
多重金属酸化物材料のX線回折図が付加的になお次の回折反射:
d[Å]
8.19±0.3
3.51±0.2
3.42±0.2
3.34±0.2
2.94±0.2
2.86±0.2
を有する、請求項1から10までのいずれか1項に記載の多重金属酸化物材料。
【請求項12】
付加的な回折反射が格子面間隔d[Å]=3.99±0.2を表わす回折反射の強度に関連した、次の相対的回折反射強度I(%):
d[Å] I(%)
8.19±0.3 0〜25
3.51±0.2 2〜50
3.42±0.2 5〜75
3.34±0.2 5〜80
2.94±0.2 5〜55
2.86±0.2 5〜60
を有する、請求項11記載の多重金属酸化物材料。
【請求項13】
多重金属酸化物材料のX線回折図が付加的に次の回折反射
d[Å]
2.54±0.2
2.01±0.2
を有する、請求項1から12までのいずれか1項に記載の多重金属酸化物材料。
【請求項14】
付加的な回折反射が格子面間隔d[Å]=3.99±0.2を表わす回折反射の強度に関連した、次の相対的な回折反射強度I(%)
d[Å] I(%)
2.54±0.2 0.5〜40
2.01±0.2 5〜60
を有する、請求項13記載の多重金属酸化物材料。
【請求項15】
多重金属酸化物材料のX線回折図において格子面間隔d[Å]=3.99±0.2または格子面間隔d[Å]=3.28±0.2を表わす回折反射が最も強い回折反射である、請求項1から14までのいずれか1項に記載の多重金属酸化物材料。
【請求項16】
多重金属酸化物材料のX線回折図において格子面間隔d[Å]=3.99±0.2を表わす回折反射が1゜以下の2Θ半値幅を有する、請求項1から15までのいずれか1項に記載の多重金属酸化物材料。
【請求項17】
請求項1から16までのいずれか1項に記載の多重金属酸化物材料の製造法において、多重金属酸化物材料の元素状成分の適当な源から乾燥混合物を製造し、この乾燥混合物を350〜1000℃の温度で熱処理することを特徴とする、請求項1から16までのいずれか1項に記載の多重金属酸化物材料の製造法。
【請求項18】
熱処理が不活性ガス下で行なわれる、請求項17記載の方法。
【請求項19】
請求項1から18までのいずれか1項に記載の多重金属酸化物材料の製造法において、多重金属酸化物材料の元素状成分の適当な源から乾燥混合物を製造し、この乾燥混合物を最初に酸化雰囲気下に150〜400℃の温度で熱処理し、それに引き続いて不活性ガス下に350〜1000℃の温度で熱処理することを特徴とする、請求項1から18までのいずれか1項に記載の多重金属酸化物材料の製造法。
【請求項20】
乾燥混合物の製造のために、元素Vのための源として、元素Vを酸化段階+5で含有する少なくとも1つの化合物と元素状バナジウムとからなる混合物を使用する、請求項17から19までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
多重金属酸化物の製造法において、最初に請求項1から16までのいずれか1項に記載の多重金属酸化物を製造し、次にこの多重金属酸化物の元素Aの含量をMoの含量に関連して減少させることを特徴とする、多重金属酸化物の製造法。
【請求項22】
多重金属酸化物の製造法において、最初に請求項1から16までのいずれか1項に記載の多重金属酸化物を製造し、引続きこの多重金属酸化物を液体で処理することを特徴とする、多重金属酸化物の製造法。
【請求項23】
液体が有機酸、無機酸またはこのような酸の水溶液である、請求項22記載の方法。
【請求項24】
請求項21から23までのいずれか1項に記載の方法により得ることができる多重金属酸化物。
【請求項25】
a)Nbを含有しないか、または
b)Teを含有しないか、または
c)Sbを含有しないか、または
d)NbおよびTeを含有しないか、または
e)NbおよびSbを含有しない、請求項21から23までのいずれか1項に記載の方法により得ることができる多重金属酸化物。
【請求項26】
飽和炭化水素および/または不飽和炭化水素ならびに飽和アルデヒドおよび/または不飽和アルデヒドを不均一系触媒により部分気相酸化および/または部分気相アンモ酸化するための触媒活性材料としての請求項1から16までのいずれか1項に記載の多重金属酸化物材料の使用または請求項24または25記載の多重金属酸化物材料の使用、または請求項17から23までのいずれか1項に記載の方法により得ることができる直接的な方法生成物の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−525935(P2006−525935A)
【公表日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−505387(P2006−505387)
【出願日】平成16年5月6日(2004.5.6)
【国際出願番号】PCT/EP2004/004822
【国際公開番号】WO2004/099081
【国際公開日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】