説明

紙を製造するためのふるい装置及び不織繊維原料の処理方法

紙(27)、ボール紙又は厚紙を製造する際、繊維懸濁液(39)から媒体液を取り去るためのふるい装置(9)が記述されている。製紙の際の処理速度を高めるため、ふるい装置(9)はふるい領域の上方、中又は下方に高圧パルス発生器(46)と接続される第1の電極(43)を有し、その際繊維懸濁液(39)中又はそのすぐ周辺領域においてプラズマが発生可能である。それによって紙(27)の耐裂性も高められる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙、ボール紙又は厚紙を製造する際に繊維懸濁液から媒体液を取り去るためのふるい装置に関する。
【0002】
さらに本発明は、懸濁液がふるいにかけられるか、その媒体液が取り去られる間に、懸濁液、特にパルプ又は繊維スラリーとしての懸濁液中の不織繊維原料を、処理するための方法、特に本発明によるふるい装置の運転のための方法に関する。
【0003】
製紙設備又は製紙設備の一部においては、繊維懸濁液は原料ボックスを離れ、そこから、好ましくは循環しているふるい(無端ワイヤ又は円筒状スクリーン)に達する。ふるい上でシートは好ましくは16〜25%の乾燥度まで脱水される。脱水の間にシート形成の2つの異なる方式が発生する。即ち濾過と濃縮である。濾過は、既に形成された繊維マットとその上に存在する繊維懸濁液との間の急激な移行である。濃縮においては、繊維原料の濃度が上から下に向かい絶えず増大する。シートの強度は脱水の増加とともに増大する。紙繊維は好ましくは多くのOH基を持った多数のセルロース鎖からなる。紙の強度はその間に存在する水分子を介して生じ、その水分子は繊維を水素橋を介して互いに結合する。水素橋の数は、圧搾又は軽度の伸展によって、例えば圧搾バッチにおいて、高めることができる。
【0004】
国際特許出願第2004/101891 A1号パンフレットから、プラズマによって完結したシート形成後の紙の処理方法が知られている。
【0005】
独国特許出願公開第19836669 A1号明細書から、完結したシート形成後の固体紙への表面前処理のための方法が知られている。
【0006】
本発明は、製紙において処理速度を高めるための装置及び方法を提供することを課題とするものである。
【0007】
装置に関する課題は、本発明によれば、ふるい装置のふるい領域の上方、中、又は下方に高圧パルス発生器と接続される少なくとも1つの第1の電極が配置され、その際繊維懸濁液中又はそのすぐ周辺領域においてプラズマが発生可能であることによって解決される。
【0008】
ふるい上での、好ましくは本来のシート形成の前に、好ましくは冷コロナプラズマによって繊維を処理することによって、繊維表面の分子構造が変えられる。それによって以下の有利な効果が得られる。即ち、
・まだ圧搾バッチ前のシートの強度の上昇
・表面における有色の「分子基」の(特にリグニン及び残りの色素分子の循環水からの)除去及び同時の紙の漂白
【0009】
特にシートの強度の上昇によって、製紙においてより高い処理速度を得ることができる。同じように、紙裂けの確率が低下する。ふるい装置の領域において、まだシート形成完結前の繊維懸濁液が後の材料特性に関して有利にプラズマにより処理される。
【0010】
プラズマは繊維懸濁液から20cmより小さい、好ましくは10cmより小さい、さらに好ましくは5cmより小さい距離に発生されるのが目的にかなっている。繊維懸濁液、好ましくはセルロース繊維を冷プラズマによって直接処理することによって、繊維懸濁液のガス空間内で一定の基が発生される。この基は紙の強度上昇を助長する。
【0011】
本発明の特に有利な実施形態は、ふるいが電極として設けられることである。ふるい上での好ましくは冷プラズマによる処理によって、早期の時点にシート内に、プラズマ処理なしの場合より多くの水素橋結合が生じる。ふるい上のシートの強度はそれ故さらに増大する。シートのより早期に得られる強度が紙裂けの危険をさらに低下させる。
【0012】
プラズマを発生させるための少なくとも1つの第2の電極が存在するのが目的にかなっている。少なくとも2つの電極の配置が、繊維懸濁液又は圧搾されていないシートの両側の処理を可能にする。
【0013】
本発明の有利な実施形態においては、電極は吸収室領域、特に湿気吸収領域又は平面吸収領域のすぐ近くに配置されている。まだ圧搾されていない繊維スラリーのプラズマ処理がふるい上で吸収室領域(平吸収器、湿気吸収器)において有利に行われる。それによって、ふるいの上方のプラズマ反応器領域からの基を含む空気が繊維スラリー又は繊維懸濁液を通して吸収され、基を含む空気と繊維表面との間の特に内部結合が生じる。
【0014】
その際、第1の電極と第2の電極が、両電極間を繊維懸濁液が導かれるように吸収室領域のすぐ近くに配置されると目的にかなっている。繊維懸濁液の両側の処理は、本発明によるふるい装置を用いて達成される処理結果を改善する。電極は、ガス放電が電極を通して又は電極のわきを通って、特に繊維懸濁液を貫通して吸収可能であるように設けられると有利である。
【0015】
さらに、ガス、特に空気又は酸素、好ましくは純粋の酸素又はキャリアガスとして例えば希ガスを有する酸素を電極間又は電極のすぐ近くに導入するための手段を持った装置が形成され得る。この有利な配置によって、好ましくは微細に分散した気泡又は酸素又は例えばアルゴンのようなキャリアガスを有する酸素が繊維懸濁液内に流入される。この流入したガス及びプラズマによる同時の処理を使用して、紙の後の耐裂性がさらに高められる。
【0016】
さらに、少なくとも1つの電極が板として形成されるのが目的にかなっている。好ましくは流動性の懸濁液、特に懸濁液から落ちて来るカーテンにおいて、2つの板を持った電極配置は、懸濁液カーテンへプラズマを両側に適用するために有利に使用することができる。
【0017】
ふるい装置、特にふるい装置の電極配置の別の実施形態の特徴は、請求項10〜16に示されている。
【0018】
本発明の方法面に従えば、懸濁液が好ましくは非熱的、大きい広がりのプラズマと少なくとも大気圧下で接触せしめられ、プラズマが懸濁液のすぐ近くに発生されるか、又は懸濁液中又は懸濁液のすぐ周辺領域にガス放電、特にコロナ放電が少なくとも大気圧下で発生されることが行われる。
【0019】
未加工のまだ十分に結合されていない紙表面をふるいのすぐ前、ふるい上、又はふるいのすぐ後で、例えば圧搾バッチの第1の部分において冷プラズマにより処理する際、紙表面及び特に繊維懸濁液と化学的に反応する特定の基(例えばOH-、HOO-、O、O3)が発生される。
【0020】
別の有利な方法の特徴は、請求項18〜54に記載されている。これらにはなかんずく以下の考慮を基礎としている。
【0021】
基はなかんずく漂白性の化学反応を、特に自由酸素O、特に水酸基OH、特にオゾン O3を、例えばOH基、COOH基のような自由官能基として、起こすことができる。これらの官能基は再び、特に繊維相互の結合強度を高めるのに決定的に関与し、それによって紙の耐裂性及びそれに伴い可能な処理速度がさらに改善される。
【0022】
基を同時に発生させる場合、種々に酸化性で官能化した一連の基がガス相において発生され、圧搾されないシートにおいてふるいのまだ上又はふるいのすぐ後で圧搾バッチの第1の部分でこれらの繊維を基により処理するのに使用されるのが有利である。
【0023】
特に、この処理は75%から98%を越えるまでの媒体液の含有量で使用されるべきである。紙の強度及びそれに伴う最大可能な作業速度は、それによってすでに早期に高められる。さらにこの種の処理によって、表面にある有色性の物質は漂白され、例えば付着しているリグニン又は色素残部は酸化で脱色される。
【0024】
基はガス放電において、エネルギー豊富な電子が分子と衝突し、それによって分子を解離させるか又は励起し、そうして基形成に導くことによって発生される。解離の際は直接基が解離され、一方励起においては続く放射遷移によってUV光が発生され、このUV光は再び好ましくは空気及び水分子と反応し、水分子を解離する。約5eV(電子ボルト)から15eVより低い範囲の十分にエネルギー豊富な電子を得るため、極度に高い電界が必要である。この高い電界強度は特にいわゆるストリーマの頭部に生じる。ストリーマは構成にあり加えられた外部電界強度に基づいて形成される放電チャネルである。そのようなストリーマの構成はわずか10ns内に行われ、そして急速に熱的破裂放電チャネルに移行する。熱的破裂放電チャネルにおいてはエネルギー豊富な電子は形成されないから、この熱的破裂放電を回避するか又は最小限に制限することがなかんずく目標である。それ故、とりわけガス中の基の発生の良好なエネルギー効率を得るため、極めて短い高圧個別パルスで行うことが必要である。パルス継続時間が各媒体における完全な破裂放電の放電形成時間に相応するより明らかに短いのが有利である。
【0025】
電極の紙又は繊維懸濁液に対する距離及び紙の特性に依存して、数kVから100kVを越える電圧で、極端に短い、即ち10μsより短い、特に典型的には1μs、さらに特に有利には1μsより明らかに短い高圧パルスを使用して、紙の上方に直接又は繊維懸濁液に面した脈動するコロナ放電は、品質特性に関して紙又は繊維懸濁液上に有利に適用される。特にそのような短い高圧パルスの使用はとりわけ有利であることが実証された。これに対し、国際特許出願公開第2004/101891 A1号パンフレットに記載されているような、無線周波数(RF)パルス又はマイクロ波パルス又は10μsより長い継続時間を持った高圧個別パルスの使用ははるかに低い効率である。その理由はおそらく、大気圧において、特に紙表面に幾何学的な不規則性、例えば個々の繊維のような不規則性が存在して、そこで電界が著しく高められている場合に、ストリーマから破裂放電への急速な移行にあると思われる。
【0026】
紙帯又は繊維懸濁液がストリーマ形成のために用いられる電極間に存在する場合、このことは紙又は繊維懸濁液がそれによって部分的に誘電性の障壁として作用するから特に有利である。誘電性の障壁によって、ストリーマから破裂放電への移行をよりよく制御することができる。
【0027】
本発明の好ましい、しかし決してそれに限定されるものではない実施例を以下に図面に基づいて詳細に説明する。明確にするため、図は縮尺に従っては描かれておらず、特定の特徴が図解的に示されている。互いに対応する部分は同符号が付されている。
【0028】
図1は、製紙設備1を図解したもので、それが今日の製紙工場にどのように組み込まれるかを示す。その構成及び種々の機械ユニットの組合せについては、製造すべき紙、ボール紙及び厚紙の各品種並びに装入される原料の性質によって決定される。製紙設備1は幅約10m、長さ約120mの空間的な広がりを持っている。この製紙設備は毎分1400mまでの紙27を生産する。繊維懸濁液又はパルプ39のふるい装置9への最初のぶつかりから完成した紙27まではほんのわずかの秒数かかるだけであり、紙27は最終的に巻取り部15に巻き取られる。水で1:100の比に薄められて、繊維原料30が補助剤と共にふるい10を有するふるい装置9上に供給される。繊維はふるい10上に相並んでまた重なり合って沈積する。ふるい水23は複数の吸収室領域24を用いて流出又は吸出させることができる。このようにして均等な繊維の集まりが生じ、この繊維の集まりは圧搾装置11において機械的な圧力により、また蒸気熱を利用してさらに脱水される。その際全製紙プロセスは基本的に、材料選別、抄紙機、精製及び仕上げ加工の領域に区分される。
【0029】
古紙及び通例セルロースもまた、製紙工場に乾燥した形で届き、一方砕木パルプは通常同じ工場で製造され、繊維/水混合物として、従って不織繊維原料からなる懸濁液として原料センタ3へポンプで汲み込まれる。古紙及びセルロース30は同様に繊維槽35において水を添加して溶解される。紙に無関係の成分は種々の選別ユニットを介して導出される(図には示されていない)。原料センタ3において、所望の紙品質に応じて種々の原料の混合が行われる。ここで紙質の改善及び生産性の向上に役立つ填料及び補助剤も添加される。
【0030】
製紙設備1の原料ボックス7は、繊維原料懸濁液を全ふるい幅にわたって均等に分配する。ふるい装置9の終端において紙帯27は依然として約80%の水を含む。
【0031】
さらなる脱水プロセスが圧搾装置11において機械的圧力によって行われる。その際紙帯27は、吸湿性で継ぎ目なしのフェルト布地を用いて鋼、花崗岩又は硬質ゴム製のロール間を通して導かれ、それによって脱水される。吸収室領域24によって取り出されたふるい水23は、一部分については選別機5に、他の部分については材料捕集器17に戻される。圧搾装置11には乾燥設備13が続いている。まだ残っている残余水は乾燥設備13において気化される。紙帯27は複数の蒸気加熱された乾燥シリンダをスラローム状に走り抜ける。最後に紙27はわずかのパーセントの残余湿分を含むだけである。乾燥設備13において生じる水蒸気は吸収され、図示されていない熱回収設備へ導かれる。
【0032】
繊維懸濁液39の本発明による方法に従う処理のために、原料ボックス7と本発明に従うふるい装置9の開始領域との間に、第1の電極43がふるい装置9の下方に、そして第2の電極44がふるい装置9の上方に配置されている。電極43及び44は、平らに分散された繊維懸濁液39がそれらの間を走るように配置されている。繊維懸濁液39の処理のため大きな広がりのプラズマを大気圧のもとで繊維懸濁液のすぐ近くに発生させることができるようにするため、電極43及び44は高圧パルス発生器46と結ばれている。この高圧パルス発生器46を用いて、電極43と44との間に大きな断面と高い出力密度とを持った大容量のプラズマが造られる。その際プラズマ密度は、電極43及び44によって覆われる処理範囲にわたって均質に分布されている。本発明によれば、この高い出力密度を持った大容量のプラズマは、直流コロナ放電に、集中した、短く持続する高圧パルスが典型的には約1kHzの高いパルス繰返し率で重畳されることによって発生される。この運転モードにおいては、直流コロナ放電において知られるプラズマ狭窄になることなく、極めて均質で大容量のプラズマが高い出力密度をもって発生され得る。
【0033】
冷たい大きな広がりのプラズマを繊維懸濁液39上に及ぼす処理作用を支援するため、ガス分配器81を用いてガス導管80を介して酸素がキャリアガスとしてのアルゴンにより処理空間内へ電極43と44との間に導入される。酸素・アルゴン混合物を使用して水酸基が特に有利に発生される。水酸基は特に攻撃的かつ酸化性であり、それによってわずかの秒数処理領域において電極43と44との間にとどまる繊維懸濁液に、後のシート形成の際の高められた強度が得られる。
【0034】
前に述べたのと相応して、圧搾装置11の電極47、48によって紙帯27の処理のための大きい広がりを持ったプラズマが発生される。圧搾装置11の第1の電極47は半円形の格子電極として作成されている。電極47が半円形に形成されることによって、この電極は搬送ローラ12上の紙帯の経過に従うことができる。圧搾装置11の第2の電極48は板電極として形成され、搬送ローラ12が電極47と48との間で運転され得るように配置されている。ここでもプラズマ中での基形成を励起するため、プラズマ処理領域がガス導管80を有するガス分配器81を介して酸素・アルゴン混合物を流入せしめられる。
【0035】
圧搾工程は紙組織を圧縮し、強度はなお高められ、表面組織が決定的に影響を与えられる。圧搾された紙の冷たいプラズマによる、特に発生された基による、処理によって、紙表面の分子構造がさらに変えられる。紙27の強度に加えて印刷性が改善される。
【0036】
前述の電極配置43及び44並びに47及び48によって、本発明による方法に従えば紙帯27をストリーマ放電の間を導くことが可能である。
【0037】
ストリーマは、直線的に移動するプラズマ雲の特殊な形、又は発生に存在する放電チャネルであり、その放電チャネルは励起された高い外部電界に基づいて発達する。そのようなストリーマの構成は10ns以内に行われ、きわめて急速に熱的な破裂放電チャネルに移行する。電極システムの前述の配置は、その際紙帯27がストリーマ放電に利用される電極間に存在するものであるが、紙27がそれによって誘電性の障壁として機能し、それによってストリーマの破裂放電への移行を抑制することができるので特に有利である。
【0038】
セルロース繊維懸濁液39の冷プラズマによる直接の処理によって、懸濁液39内に有利に基OH-、HOO-、O、O3が発生される。強度上昇と並んで、これらの基は漂白性の化学反応を起こさせる。高圧パルス発生器46は、典型的には1マイクロ秒の継続時間を持った高圧パルスを電極43と44との間に発生させるように操作される。基及びオゾンをセルロース繊維懸濁液内に発生させるために必要な直流電圧は約数10kVから100kVを越える範囲にある。高圧パルスは直流電圧に重畳され、そうして典型的には約100kVの全振幅を形成する。冷電気放電、従ってプラズマによるセルロース繊維懸濁液39の処理によって、基が本来の場所に発生される。そして基の大なる総量を懸濁液39内へ取り込むことができる。電極47及び48に対して高圧パルス発生器は、典型的には0.1マイクロ秒からわずか数マイクロ秒までの継続時間を持った高圧パルスを発生するように操作される。
【0039】
図2は、別の実施例として基を発生させるための装置の断面図を示す。装置の中央には高圧電極50が配置されている。装置の外被が対電極51として設けられている。装置内にはふるいにかけるべきセルロース繊維懸濁液39が存在する。電極50と51との間にはストリーマ53が描かれている。基は、エネルギーの豊富な電子が分子と衝突し、それによって分子を解離又は励起することによって発生される。解離の場合には直接基59が遊離され、一方励起の場合には続く放射遷移によってUV光が発生される。この発生したUV光が再び水分子と反応し、水分子を解離する。
【0040】
図3は高圧パルスの適用される電圧経過を示す。それぞれパルス幅62を持った第1のパルス66及び第2のパルス67は、パルス繰返し時間63の距離を有する。横軸には時間がmsで、縦軸には電圧がkVで示されている。単位は任意に選ばれる。直流電圧の典型的には約100kVのレベルは横軸と一致する。図示のパルス電圧はしたがって直流電圧に重畳されている。パルス66及び67は1マイクロ秒より小さいパルス幅62を有し、その際個々のパルス66、67は立上り時間64を有する急勾配に立ち上がる側縁とそれよりは小さい勾配で立ち下がる側縁とを有する。パルス繰返し時間63は典型的には10μs〜100msの間にある。
【0041】
その際個々のパルス66、67は、あらかじめ与えられた直流電圧を越えて所定のエネルギー密度が得られるような全振幅を有する。述べたように、パルス立上り時間64はその際パルス立下り時間に比べて短い。パルスのそのような性質によって、等質なプラズマ密度分布における空間的かつ時間的な障害に導くであろう電気的破壊を避けることができる。
【0042】
図4〜図9は、特に水性媒体中にコロナ放電を発生させるための電極システムに対する例を示す。図4においては電極としての第1の板70aと電極としての第2の板70bの板-板配置が示されている。第1の板70a及び第2の板70bは互いに平行に配置されている。第1の板70aは高圧電極を形成し、高圧ケーブルを介して高圧パルス発生器46と接続されている。第2の板70bは対電極を形成し、接地電極として高圧パルス発生器46と結ばれている。
【0043】
特に平らな板電極を持った対応する配置が図5に示されている。再び2つの中実の板電極70a及び70cが固定した間隔で存在し、その際中心に高圧電極71が走っている。この板-線-板配置においては、高圧電極71は中実の線として形成され、高圧パルス発生器46の高圧出力と接続されている。接地された板70a、70bは同様に高圧パルス発生器と結ばれている。
【0044】
図6は電極システムとしての線-筒配置を示す。円筒形の電極72内には中心に高圧電極71が突出している。図5におけるように高圧電極71は中実の線として形成され、高圧パルス発生器46と接続されている。好ましくは金網として形成されている円筒形の電極72は接地され、高圧パルス発生器46と結ばれている。
【0045】
図7は電極システムとしての尖端-板配置を示す。3つの尖端73が高圧導線を介して高圧パルス発生器46と接続されている。尖端73は接地された板電極74に直角に配置されている。尖端電極73の板電極74に対する距離は調整可能であり、したがって種々のプロセス条件に適合させることができる。
【0046】
図8は3つの板70a、70d及び70eを含む電極システム配置を示す。高圧電極として高圧パルス発生器46と接続されている第1の板70aは、2つの中実の板70dと70eとの間の中心に配置されている。板70d及び70eは板結合体70fを介して結合されている。板70dは接地された対電極として高圧パルス発生器46と結ばれているので、板70eは板結合体70fを介して同様に接地された対電極の機能を持つ。
【0047】
図9は格子-格子配置としての電極システムを示す。図4に類似して、ここでは第1の格子75aと第2の格子75bが平行に向き合っている。第1の格子75aはその際高圧電極を形成し、高圧パルス発生器46と接続されている。第2の格子75bは接地された対電極を形成し、高圧パルス発生器46と結ばれている。
【0048】
ハイブリッド放電は、その際電極75aは完全に処理すべき繊維懸濁液39の外側にあり、第2の電極75bは完全に又は部分的に繊維懸濁液39中に浸されているが、ふるいが電極75aとして形成されている代替的な配置によって発生される。ふるいは格子電極として形成され、高圧パルス発生器46と結ばれた高圧電極を形成する。接地される対電極75bも格子電極として形成され高圧パルス発生器46と結ばれる。
【0049】
脈動する放電を繊維懸濁液39の上方の表面近くのガス空間において発生させるため、別の電極配置が可能である。複数の電気的に互いに結合された棒電極を含む高圧電極が繊維懸濁液39の表面近くのガス空間内に、それらの棒が表面に平行に走るように配置される。接地された対電極は中実の板として形成され、高圧電極に対し全表面にわたって配分された等間隔の距離に配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に従うふるい装置、圧搾装置、精製及び乾燥設備を有する製紙設備の図解図である。
【図2】パルプ又は空気中のコロナプラズマ中に基を発生させるための配置であって、脈動する高電圧が重畳される線を有する平行板又は筒状配置の断面図である。
【図3】高い繰返し率を有し短い(典型的には1μsより短い)高圧パルスを使用する際の、空気又は水性媒体におけるコロナ放電において基を発生させるためのパルスの原理図である。
【図4】コロナ放電を発生させるための電極配置及び電極システムである。
【図5】コロナ放電を発生させるための電極配置及び電極システムである。
【図6】コロナ放電を発生させるための電極配置及び電極システムである。
【図7】コロナ放電を発生させるための電極配置及び電極システムである。
【図8】コロナ放電を発生させるための電極配置及び電極システムである。
【図9】コロナ放電を発生させるための電極配置及び電極システムである。
【符号の説明】
【0051】
1 製紙設備
3 原料センタ
5 選別機
7 原料ボックス
9 ふるい装置
10 ふるい
11 圧搾装置
12 搬送ローラ
13 乾燥設備
15 巻取り部
17 材料捕集器
23 ふるい水
24 吸収室領域
27 紙帯(紙)
30 繊維原料
39 繊維懸濁液又はパルプ
43、44、47、48、50、51、70a、70b、70c、70d、70e、71、72、73、74、75a、75b 電極
46 高圧パルス発生器
53 ストリーマ
59 基
62 パルス幅
63 繰返し時間
64 立上り時間
66、67 パルス
70f 板結合体
80 ガス導管
81 ガス分配器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙(27)、ボール紙又は厚紙を製造する際の繊維懸濁液(39)から媒体液を取り去るためのふるい装置(9)において、ふるい装置(9)のふるい領域の上方、中又は下方に高圧パルス発生器(46)と接続される少なくとも1つの第1の電極(43)が配置され、その際繊維懸濁液(39)中又はそのすぐ周辺領域においてプラズマが発生可能であることを特徴とするふるい装置(9)。
【請求項2】
プラズマが繊維懸濁液(39)から20cmより小さい、好ましくは10cmより小さい、さらに好ましくは5cmより小さい距離に発生されることを特徴とする請求項1記載のふるい装置(9)。
【請求項3】
ふるい(10)が電極として設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載のふるい装置(9)。
【請求項4】
プラズマ発生のために少なくとも1つの第2の電極(44)が存在することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のふるい装置(9)。
【請求項5】
電極(43、44)が吸収室領域(24)、特に湿気吸収領域又は平吸収領域のすぐ近くに配置されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載のふるい装置(9)。
【請求項6】
第1の電極(43)及び第2の電極(44)が吸収室領域(24)のすぐ近くに、繊維懸濁液(39)が電極(43、44)間を導かれるように配置されていることを特徴とする請求項5記載のふるい装置(9)。
【請求項7】
ガス放電が電極を通して、又は電極のわきを通り、特に繊維懸濁液(39)を貫通して、吸収可能であるように、電極(43、44)が設けられていることを特徴とする請求項5又6記載のふるい装置(9)。
【請求項8】
ガス、特に空気又は酸素、好ましくは純粋の酸素又はキャリアガスとしての例えば希ガスを有する酸素を電極(43、44)の間又はすぐ近くに導入するための手段(81)を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載のふるい装置(9)。
【請求項9】
少なくとも1つの電極が板(70a、70b)として形成されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載のふるい装置(9)。
【請求項10】
少なくとも1つの電極が線(71)として形成されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載のふるい装置(9)。
【請求項11】
少なくとも1つの電極が金網として、特に針金格子(75a、75b)として、形成されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1つに記載のふるい装置(9)。
【請求項12】
少なくとも1つの電極が格子(75a、75b)として、特に直角又は斜めに交差したロッド及び/又はフラット桟の配置として、好ましくはふるい(10)として形成されていることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1つに記載のふるい装置(9)。
【請求項13】
少なくとも1つの電極が1つ又は複数の尖端(73)を有することを特徴とする請求項1〜12のいずれか1つに記載のふるい装置(9)。
【請求項14】
電極が少なくとも2つの対向する、好ましくは互いに平行に走る板(70a、70b)として配置されていることを特徴とする請求項4〜13のいずれか1つに記載のふるい装置(9)。
【請求項15】
電極が少なくとも2つの対向する、好ましくは互いに平行に走る格子(75a、75b)として配置されていることを特徴とする請求項4〜14のいずれか1つに記載のふるい装置(9)。
【請求項16】
少なくとも1つの板結合体(70f)を介して互いに結合され第1の電極を形成する2つの板(70d、70e)の間に、線(71)又は格子(75a)が第2の電極として配置されるようにして電極が配置されていることを特徴とする請求項3〜15のいずれか1つに記載のふるい装置(9)。
【請求項17】
懸濁液がふるいにかけられるか又はその媒体液が取り去られる間に、懸濁液、特にパルプ又は繊維スラリーとしての懸濁液中の不織繊維原料を処理するため、特に本発明によるふるい装置を運転するための方法であって、懸濁液が好ましくは非熱的で大きな広がりのプラズマと少なくとも大気圧下で接触され、プラズマが懸濁液のすぐ近くに発生されるか、又は懸濁液内又は懸濁液のすぐ周辺領域にガス放電、特にコロナ放電、が少なくとも大気圧下で発生されることを特徴とする繊維原料の処理方法。
【請求項18】
プラズマが懸濁液から20cmより小さい、好ましくは10cmより小さい、さらに好ましくは5cmより小さい距離に発生されることを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項19】
懸濁液が紙、ボール紙又は厚紙の製造に適していることを特徴とする請求項17又は18記載の方法。
【請求項20】
懸濁液として湿った又は濡れたシートが使用されることを特徴とする請求項17〜19のいずれか1つに記載の方法。
【請求項21】
電極(43、44)間にプラズマ又はガス放電を発生させるため、10μsより短い継続時間(62)を持った高圧パルス(66、67)が発生されることを特徴とする請求項17〜20のいずれか1つに記載の方法。
【請求項22】
プラズマ又はガス放電がシート形成の前又は後の少なくとも一方において懸濁液に、特にふるい装置(9)を貫いて又はふるい装置(9)の上方を通り抜ける際に適用されることを特徴とする請求項17〜21のいずれか1つに記載の方法。
【請求項23】
懸濁液が両側をプラズマと接触され、又はガス放電を用いて処理されることを特徴とする請求項17〜22のいずれか1つに記載の方法。
【請求項24】
プラズマ又はガス放電が、懸濁液、パルプ(39)又は繊維スラリーの漂白のため、特に煮沸器において、漂白タンク(37)において又は導管内で使用されることを特徴とする請求項17〜23のいずれか1つに記載の方法。
【請求項25】
懸濁液、パルプ(39)又は繊維スラリーが、プラズマ又はガス放電を発生させるための少なくとも1つの電極と接触されることを特徴とする請求項17〜24のいずれか1つに記載の方法。
【請求項26】
プラズマ又はガス放電が懸濁液中で発生されることを特徴とする請求項17〜25のいずれか1つに記載の方法。
【請求項27】
懸濁液中の媒体液、特に水、の含有量が40%〜99.9%の範囲、好ましくは80%〜98%の範囲、及び特に85%〜98%の範囲にあることを特徴とする請求項17〜26のいずれか1つに記載の方法。
【請求項28】
プラズマ中で、又はガス放電を用いて、繊維原料に作用する基(59)が発生されることを特徴とする請求項21〜27のいずれか1つに記載の方法。
【請求項29】
紙、ボール紙又は厚紙の製造プロセスにおける、特に様々なプロセスステップにおける、懸濁液の異なる状態に対し、様々な種類又は組成の基(59)が使用されることを特徴とする請求項28記載の方法。
【請求項30】
紙又は厚紙の製造プロセスにおけるプロセスステップ内で様々な種類又は組成の基(59)に、好ましくは時間的に順次続けて、懸濁液がさらされることを特徴とする請求項28又は29記載の方法。
【請求項31】
基(59)として、オゾン(O3)、過酸化水素(H2O2)、水酸基(OH)、HO2及び/又はHO2-が発生されることを特徴とする請求項28〜30のいずれか1つに記載の方法。
【請求項32】
漂白の際懸濁液において又はパルプ(39)において又は繊維スラリーにおいて、基(59)を増加させるものとしてオゾン(O3)又は過酸化水素(H2O2)の少なくとも一方が形成されるようにプラズマ又はガス放電が適用されることを特徴とする請求項28〜31のいずれか1つに記載の方法。
【請求項33】
ふるいにおいて、及び/又は平らに分散された懸濁液又はパルプ(39)又は繊維スラリーにおいて、又は形成し若しくは形成されまだ圧搾されていないシートにおいて、基(59)を増加させるものとして水酸基(OH)、HO2及び/又はHO2-が発生されるようにプラズマ又はガス放電が適用されることを特徴とする請求項28〜32のいずれか1つに記載の方法。
【請求項34】
基(59)の発生率又は発生された基(59)の組成の少なくとも一方が、高圧パルス(66、67)の振幅(U)、パルス継続時間(62)又はパルス繰返し率(63)の少なくとも1つの影響により制御されることを特徴とする請求項28〜33のいずれか1つに記載の方法。
【請求項35】
発生された基(59)の発生率又は性質の少なくとも一方の制御及び調節のために、発生された基(59)の濃度が測定されることを特徴とする請求項34記載の方法。
【請求項36】
発生された基(59)の発生率又は組成の制御及び調節のために、懸濁液の特性、好ましくは品質特性、特にその不透明度、光沢、白色、蛍光又は色点が測定されることを特徴とする請求項34又は35記載の方法。
【請求項37】
濃度又は特性がオンラインで測定されることを特徴とする請求項35又は36記載の方法。
【請求項38】
調節のために、一定の繰返し率(63)における高圧パルス(66、67)の振幅(U)が変えられることを特徴とする請求項34〜37のいずれか1つに記載の方法。
【請求項39】
調節のために、一定の振幅(U)における高圧パルス(66、67)の繰返し率(63)が変えられることを特徴とする請求項34〜38のいずれか1つに記載の方法。
【請求項40】
懸濁液、パルプ(39)又は繊維スラリーにおいて、特に漂白のため、プラズマが作用される領域において酸素が添加されることを特徴とする請求項17〜39のいずれか1つに記載の方法。
【請求項41】
懸濁液、パルプ(39)又は繊維スラリーにおいて、特に漂白のため、100μsより短い高圧パルス継続時間(62)が使用されることを特徴とする請求項34〜40のいずれか1つに記載の方法。
【請求項42】
平らに分散された懸濁液、パルプ(39)又は繊維スラリー又は形成し又は形成されまだ圧搾されていないシートが、特にふるいの際、プラズマが作用される領域において水蒸気を添加された大気によって囲まれることを特徴とする請求項17〜41のいずれか1つに記載の方法。
【請求項43】
平らに分散された懸濁液、パルプ(39)又は繊維スラリー又は形成し又は形成されまだ圧搾されていないシートにおいて、特にふるいの際、100ns〜1μsの高圧パルス継続時間(62)が使用されることを特徴とする請求項34〜42のいずれか1つに記載の方法。
【請求項44】
平らに分散された懸濁液、パルプ(39)又は繊維スラリー又は形成し又は形成されまだ圧搾されていないシートに、特にふるいの際、コロナ動作電圧の少なくとも2倍の値、好ましくは少なくとも3倍の値に相応する高圧振幅(U)が電極に加えられることを特徴とする請求項34〜43のいずれか1つに記載の方法。
【請求項45】
プラズマ又はコロナ放電を発生させるため、直流電圧コロナ放電が発生され、その直流電圧コロナ放電に高圧パルス(66、67)が重畳されることを特徴とする請求項34〜44のいずれか1つに記載の方法。
【請求項46】
10Hz〜5kHzの間の、特に10kHzのパルス繰返し率(63)が使用されることを特徴とする請求項34〜45のいずれか1つに記載の方法。
【請求項47】
電気エネルギーのプラズマへの出力結合が、主として、重畳された高圧パルスの振幅(U)、パルス継続時間(62)、及びパルス繰返し率(63)の調節を介して制御されることを特徴とする請求項34〜46のいずれか1つに記載の方法。
【請求項48】
3μsより短い、好ましくは1μsより短い、さらに好ましくは500nsより短い継続時間(62)を持った高圧パルス(66、67)が用いられることを特徴とする請求項21〜47のいずれか1つに記載の方法。
【請求項49】
高い出力密度を持った均質で大きな広がりのプラズマが、プラズマ狭窄又は破裂放電に至ることなく発生されることを特徴とする請求項21〜48のいずれか1つに記載の方法。
【請求項50】
プラズマにおいて、重畳された高圧パルスに関連してのみ安定な直流コロナ放電が形成されるような高さの直流電圧が使用されることを特徴とする請求項21〜49のいずれか1つに記載の方法。
【請求項51】
使用される直流電圧が、高圧パルス重畳なしに安定した運転のための直流電圧の下にあることを特徴とする請求項50記載の方法。
【請求項52】
使用される全振幅(直流電圧+パルス振幅)が電極配置の静的破壊電圧より上にあることを特徴とする請求項50又は51記載の方法。
【請求項53】
使用される全振幅が電極配置の静的破壊電圧の2〜5倍に相当することを特徴とする請求項50〜52のいずれか1つに記載の方法。
【請求項54】
高圧パルスの振幅(U)が使用される直流電圧の10%〜1000%の間の値にあることを特徴とする請求項50〜53のいずれか1つに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2008−544095(P2008−544095A)
【公表日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−516288(P2008−516288)
【出願日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際出願番号】PCT/EP2006/063025
【国際公開番号】WO2006/134069
【国際公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】