説明

紙容器

【課題】紙容器内面の殺菌に使用した殺菌薬剤が殺菌、乾燥後に胴貼り部内面に残留しにくい紙容器を提供する。
【解決手段】胴部用ブランクからなる筒状胴部2に胴貼り部3を有し、筒状胴部2の一端に底部4を有し、他端に開口部5を有する紙容器1において、該胴部用ブランクが少なくとも、紙基材層11の片面に単層若しくは多層の内面樹脂層12aを積層してなる本体部21の一方の端部に、前記内面樹脂層が紙基材層11より所定幅ではみ出して形成されてなる折り返し用樹脂板部22を設けたものからなり、該胴貼り部は、胴部用ブランクの一方の折り返し用樹脂板部22をその外端部側24が紙基材層上11の最外面に所定長さで重なるか、あるいは全く重ならないように紙基材層側11に折り返えして紙基材層端面11を被覆し、胴部用ブランクの他方の外端部側23の相対する内面樹脂層12aと所定幅で熱融着してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体内容物を充填密封する紙容器で、さらに詳しくは、内容物充填前に内面を殺菌薬剤で殺菌する用途に使用する紙容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、液体用紙容器は、紙容器用積層材料からなる所定形状の一枚又は二枚のブランクを用いて製函されており、充填する内容物の種類によっては、ブランクの内側の紙断面が直接内容物に接触しないような構造の胴貼り部を有する液体用紙容器が使用されている。前記構造の胴貼り部としては種々のものがあるが、例えば、図5(a)は従来の紙容器の胴貼り部の一実施形態を示す形状説明図であり、胴貼り部(6)は紙容器用積層材料からなるブランク(40)の一方の外端部側を所定厚さだけ削除し、削除後に残った部分を折り返して、ブランク(40)の他方の外端部側と所定幅で熱融着させた形状であり、(b)は従来の紙容器の胴貼り部の他の実施形態を示す形状説明図であり、胴貼り部(7)は紙容器用積層材料からなるブランク(41)の一方の外端部の端面をフィルムテープ(42)で覆い、ブランク(41)の他方の外端部側と封筒貼り形式で重ね合わせて所定幅で熱融着させた形状である。しかしながら、前記胴貼り部(6)は内面の接着面積が小さく、接着不良が生じ易い問題を有し、前記胴貼り部(7)は内面の段差が大きく、内面を殺菌薬剤で殺菌した場合、殺菌、乾燥後に胴貼り部(7)の内面の段差がある部分に殺菌薬剤が残留してしまう問題があり、無菌充填用の用途には不適であった。これらの問題を改善するために、接着不良が生じ難く、内面を殺菌、乾燥後も胴貼り部内面の段差部分に殺菌薬剤が残留し難い構造の胴貼り部を有する紙容器が求められていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、胴貼り部を有する筒状胴部の一端に底部を有し、他端に開口部を有する紙容器であって、紙容器内面の殺菌に使用した殺菌薬剤が殺菌、乾燥後に胴貼り部内面に残留しにくい紙容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の請求項1に係る発明は、胴部用ブランクからなる筒状胴部に胴貼り部を有し、前記筒状胴部の一端に底部を有し、他端に開口部を有する紙容器において、該胴部用ブランクが少なくとも、紙基材層の片面に単層若しくは多層の内面樹脂層を積層してなる所定形状の本体部の一方の端部に、前記内面樹脂層が紙基材層より所定幅ではみ出して形成されてなる折り返し用樹脂板部を設けたものからなり、該胴貼り部は、胴部用ブランクの一方の折り返し用樹脂板部をその外端部側が紙基材層上の最外面に所定長さで重なるように紙基材層側に折り返えして紙基材層端面を被覆し、胴部用ブランクの他方の外端部側の相対する内面樹脂層と所定幅で熱融着してなることを特徴とする紙容器である。
【0005】
本発明の請求項2に係る発明は、胴部用ブランクからなる筒状胴部に胴貼り部を有し、前記筒状胴部の一端に底部を有し、他端に開口部を有する紙容器において、該胴部用ブランクが少なくとも、紙基材層の片面に単層若しくは多層の内面樹脂層を積層してなる所定形状の本体部の一方の側端に、前記内面樹脂層が紙基材層より所定幅ではみ出して形成されてなる折り返し用樹脂板部を設けたものからなり、該胴貼り部は、胴部用ブランクの一方の折り返し用樹脂板部をその外端部側が紙基材層上の最外面に全く重ならないように紙基材層側に折り返えして紙基材層端面を被覆し、胴部用ブランクの他方の外端部側の相対する内面樹脂層と所定幅で熱融着してなることを特徴とする紙容器である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の紙容器は、胴部用ブランクからなる筒状胴部に胴貼り部を有し、前記筒状胴部の一端に底部を有し、他端に開口部を有する紙容器において、該胴部用ブランクが少なくとも、紙基材層の片面に単層若しくは多層の内面樹脂層を積層してなる所定形状の本体部の一方の端部に、前記内面樹脂層が紙基材層より所定幅ではみ出して形成されてなる折り返し用樹脂板部を設けたものからなり、該胴貼り部は、胴部用ブランクの一方の折り返し用樹脂板部をその外端部側が紙基材層上の最外面に所定長さで重なるか、あるいは全く重ならないように紙基材層側に折り返えして紙基材層端面を被覆し、胴部用ブランクの他方の外端部側の相対する内面樹脂層と所定幅で熱融着してなっているので、胴貼り部内面がスロープ状で段差がほとんど無く、紙容器内面を殺菌薬剤で殺菌し、乾燥した後に胴貼り部内面付近に殺菌薬剤が残留し難い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の紙容器を実施の形態に沿って以下に詳細に説明する。図4(a)は本発明の紙容器の胴部用ブランクに使用する積層材料の一実施形態を示す側断面図であり、積層材料(10)は、外側から厚み方向に順に、紙基材層(11)、内面樹脂層(12a)と内面樹脂層(12b)からなる内面樹脂層(12)を積層した構成で、内面樹脂層(12b)は紙基材層(11)より所定幅ではみ出している。(b)は胴部用ブランクに使用する積層材料の他の実施形態を示す側断面図であり、積層材料(10′)は、外側から厚み方向に順に、外面樹脂層(18)、紙基材層(11)、内面樹脂層(13a)と内面樹脂層(13b)からなる内面樹脂層(13)を積層した構成で、内面樹脂層(13a)は接着樹脂層(14a)、ガスバリア層(15a)、接着剤層(16a)、熱可塑性樹脂層(17a)を積層した構成で、内面樹脂層(13b)は接着樹脂層(14b)、ガスバリア層(15b)、接着剤層(16b)、熱可塑性樹脂層(17b)を積層した構成で、内面樹脂層(13b)は紙基材層(11)より所定幅ではみ出している。
【0008】
前記紙基材層(11)は、坪量200〜450g/m2 の板紙からなっている。
【0009】
前記内面樹脂層(12a、12b)及び熱可塑性樹脂層(17a、17b)に使用する樹脂は、シール性があり、臭気等が少ない樹脂であれば特に限定されないが、低温シール性などの点から低密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂等が好ましい。厚みは20μm〜80μmの範囲のものが好ましい。
【0010】
前記接着樹脂層(14a、14b)は、接着性を有する樹脂であれば特に限定されないが、例えば、厚さ5μm〜30μmの低密度ポリエチレン樹脂が好ましい。
【0011】
前記ガスバリア層(15a、15b)は、高いガスバリア性を付与するために積層するものであり、エチレン・ビニアルコール共重合フィルムや二軸延伸フィルムの片面に少なくとも、酸化珪素や酸化アルミニウムなどの無機酸化物薄膜層、あるいはアルミニウム金属薄膜層を積層したバリア性フィルムが使用される。
【0012】
前記接着剤層(16a、16b)は、ポリウレタン系接着剤からなっており、塗布量は1〜5g/m2(乾燥状態)である。
【0013】
前記外面樹脂層(18)には、通常、低密度ポリエチレン樹脂が使用される。
【0014】
図2は本発明の紙容器に使用する胴部用ブランクの一実施形態を示す平面図であり、胴部用ブランク(20)は、前記積層材料(10)又は前記積層材料(10′)からなっており、胴部用ブランク(20)は、扇状の本体部(21)の長手方向の一方の端部に折り返し用樹脂板部(22)を連設した形状であり、両側に外端部(23、24)を有してい
る。前記本体部(21)は積層材料の紙基材層(11)と内面樹脂層(12a)又は、外面樹脂層(18)と紙基材層(11)と多層構成の内面樹脂層(13a)からなっており、折り返し用樹脂板部(22)は積層材料の内面樹脂層(12b)又は多層構成の内面樹脂層(13b)からなっている。
【0015】
図3は本発明の紙容器に使用する底部用ブランクの一実施形態を示す平面図であり、底部用ブランク(30)は円形状のものからなっている。なお、底部用ブランク(30)には、前記胴部用ブランク(20)に使用した積層材料(10)又は積層材料(10′)のそれぞれ内面樹脂層(12b)又は内面樹脂層(13b)が無い積層構成のものが使用される。
【0016】
図1(a)は本発明の紙容器の一実施形態を示す斜視図であり、(b)は紙容器の胴貼り部の形状説明図であり、(c)は紙容器の底部の形状説明図である。紙容器(1)は、前記積層材料(10)からなる胴部用ブランク(20)と、積層材料(10)の内面樹脂層(12b)が無い積層材料からなる円形状の底部用ブランク(30)を用いて成形したもので、図1(a)に示すように、筒状胴部(2)に胴貼り部(3)が設けられ、筒状胴部(2)の下端に底部用ブランクからなる底部(4)が形成されており、上端に開口部(5)が設けられている。胴貼り部(3)は図1(b)に示すように、胴部用ブランク(20)の一方の外端部(23)側が胴貼り部(3)の外側に位置し、他方の外端部(24)側が胴貼り部(3)の内側に位置しており、さらに、折り返し用樹脂板(22)はその外端部(24)側が紙基材層(11)表面上に所定の長さで重なるように紙基材層(11)側に折り返えされて紙基材層(11)端面を被覆し、さらに、胴部用ブランク(20)の他方の外端部(23)側の相対する内面樹脂層(12a)と所定幅で熱融着されている。
【0017】
前記折り返し用樹脂板(22)はその外端部(24)側が紙基材層(11)表面上に全く重ならないように紙基材層(11)側に折り返えされて紙基材層(11)端面を被覆していても構わない。
【0018】
さらに、底部(4)は図1(c)に示すように、筒状胴部の下端側を内面樹脂層(12a)側に所定長さだけ折り返し、さらに円形状の底部用ブランクを外周より所定幅だけ内側の部分で紙基材層(11)に折り返し、筒状胴部の内面樹脂層(12a)と、底部の内面樹脂層(12a)及び紙基材層(11)とを熱融着している。従って、紙基材層(11)の端面が内容物に接触することが無い。
【0019】
本発明の紙容器は、上記記載の如く、胴貼り部内面はスロープ状になって、段差がほとんど無い状態になっているので、紙容器内面を殺菌薬剤で殺菌、乾燥後も胴貼り部内面付近に殺菌薬剤が残留し難い特徴を有している。
【0020】
本発明の紙容器を具体的な実施例を挙げて以下に説明する。
【実施例1】
【0021】
紙基材層(11)として坪量260g/m2 の板紙を使用し、外面樹脂層(18)、接着樹脂層(14a、14b)及び熱可塑性樹脂層(17a、17b)の樹脂として密度0.915g/cm3 の低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)を使用し、ガスバリア層(16a、16b)として、12μmの二軸延伸ポリエステフィルムに厚さ50nmの酸化珪素薄膜層、ポリビニルアルコールを主成分とする塗布被膜からなる厚さ5μmのガスバリア性被膜層を積層したバリアフィルムを使用して、(外面)LDPE、20μm/板紙/LDPE、15μm/バリアフィルム/ポリウレタン系接着剤、3g/m2/LDPE、50μm(内面)構成の積層材料(10′)を作成し、その積層材料(10′)を扇状に打ち抜いて胴部用ブランク(20)を作成し、さらに積層材料(10′)の紙基材層
(11)からはみ出した部分をカットした積層材料を用いて、円形状に打ち抜いて底部用ブランク(30)を作成し、その胴部用ブランク(20)及び底部用ブランク(30)を用いて、図1に示す形状と同一のカップ形状で、内容量200mlの本発明の紙容器を作成した。
【0022】
以下に本発明の比較用の実施例について説明する。
【実施例2】
【0023】
(外面)LDPE、20μm/板紙(坪量260g/m2) /LDPE、15μm/二軸延伸ポリエステルフィルム、12μm/酸化珪素薄膜層(50nm)/ポリウレタン系接着剤(3g/m2)/LDPE、50μm(内面)構成の積層材料を用いて、扇状に打ち抜いた胴部用ブランクと円形状に打ち抜いた底部用ブランクを作成し、それらのブランクを用いて、図5(a)に示す形状の胴貼り部を有する内容量200mlのカップ状の比較用の紙容器を作成した。
【0024】
〈評価〉
実施例1の本発明の紙容器及び実施例2の比較用の紙容器を用いて、以下の試験方法で紙容器内の殺菌薬剤の残留量を測定し、評価した。その結果を表1に示す。
(1)紙容器内の殺菌薬剤残留量の測定方法
試作した各紙容器内に35%過酸化水素水の蒸気を0.5ml/分スプレー噴射後、ホットエアーで乾燥した。その後に内面を蒸留水で洗浄し、洗浄後の蒸留水に含まれる過酸化水素濃度を測定した。
【0025】
【表1】

表1に示すように、実施例1の本発明の紙容器は内面殺菌後、殺菌薬剤の残留量は少なかった。一方、比較用の紙容器は内面殺菌後、殺菌薬剤の残留量が多かった。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】(a)は本発明の紙容器の一実施形態を示す斜視図であり、(b)は紙容器の胴貼り部の形状説明図であり、(c)は紙容器の底部の形状説明図である。
【図2】本発明の紙容器に使用する胴部用ブランクの一実施形態を示す平面図である。
【図3】本発明の紙容器に使用する底部用ブランクの一実施形態を示す平面図である。
【図4】(a)は本発明の紙容器の胴部用ブランクに使用する積層材料の一実施形態を示す側断面図であり、(b)は積層材料の他の実施形態を示す側断面図である。
【図5】(a)は従来の紙容器の胴貼り部の一実施形態を示す形状説明図であり、(b)は従来の紙容器の胴貼り部の他の実施形態を示す形状説明図である。
【符号の説明】
【0027】
1…紙容器
2…筒状胴部
3…胴貼り部
4…底部
5…開口部
6,7…胴貼り部
10,10′…積層材料
11…紙基材層
12,12a,12b…内面樹脂層
13,13a,13b…内面樹脂層
14a,14b…接着樹脂層
15a,15b…ガスバリア層
16a,16b…接着剤層
17a,17b…熱可塑性樹脂層
18…外面樹脂層
20…胴部用ブランク
21…本体部
22…折り返し用樹脂板部
23,24…外端部
30…底部用ブランク
40,41…胴部用ブランク
42…フィルムテープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴部用ブランクからなる筒状胴部に胴貼り部を有し、前記筒状胴部の一端に底部を有し、他端に開口部を有する紙容器において、該胴部用ブランクが少なくとも、紙基材層の片面に単層若しくは多層の内面樹脂層を積層してなる所定形状の本体部の一方の端部に、前記内面樹脂層が紙基材層より所定幅ではみ出して形成されてなる折り返し用樹脂板部を設けたものからなり、該胴貼り部は、胴部用ブランクの一方の折り返し用樹脂板部をその外端部側が紙基材層上の最外面に所定長さで重なるように紙基材層側に折り返えして紙基材層端面を被覆し、胴部用ブランクの他方の外端部側の相対する内面樹脂層と所定幅で熱融着してなることを特徴とする紙容器。
【請求項2】
胴部用ブランクからなる筒状胴部に胴貼り部を有し、前記筒状胴部の一端に底部を有し、他端に開口部を有する紙容器において、該胴部用ブランクが少なくとも、紙基材層の片面に単層若しくは多層の内面樹脂層を積層してなる所定形状の本体部の一方の側端に、前記内面樹脂層が紙基材層より所定幅ではみ出して形成されてなる折り返し用樹脂板部を設けたものからなり、該胴貼り部は、胴部用ブランクの一方の折り返し用樹脂板部をその外端部側が紙基材層上の最外面に全く重ならないように紙基材層側に折り返えして紙基材層端面を被覆し、胴部用ブランクの他方の外端部側の相対する内面樹脂層と所定幅で熱融着してなることを特徴とする紙容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−73553(P2009−73553A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−246811(P2007−246811)
【出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)