説明

紙幣処理装置

【課題】払い出す紙幣の管理が可能な紙幣処理装置を提供する。
【解決手段】紙幣処理装置(入出金機)1は、筐体11内に設けられた収納部15と、紙幣の、少なくとも正損を識別するよう構成された識別部14と、各々の紙幣に設けられたコード(記番号)を読み取って記憶するよう構成された読取部(識別部14及び記憶部34)と、紙幣を払い出す出金部13と、制御部31と、を備える。制御部31は、収納部15から繰り出された紙幣であって、識別部14によって正券であると識別されかつ、読取部によって読み取られたコードが記憶されている紙幣を、出金部13から払い出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示する技術は、紙幣を処理する紙幣処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、例えば銀行等の金融機関において、窓口業務を行うテラーが操作する紙幣入出金機を開示している。この入出金機は、紙幣の入金処理時及び出金処理時のそれぞれの処理時において、紙幣が、流通に適した正券であるか、流通に適さない損券であるかを識別するように構成されている。この入出金機はまた、入金処理時に収納した紙幣を、出金処理時に払い出し可能な、いわゆる循環式の入出金機であるが、損券であると識別した紙幣は、内部のリジェクト収納部に収納することによって、正券のみを出金するように構成されている。尚、損券とは損傷度合いの高い紙幣のことで、破れ券、汚れ券、折れ券、しわ券、よれ券等がある。
【0003】
特許文献2は、例えば銀行等の金融機関において利用される、紙幣整理機を開示している。この整理機は、多数の紙幣を、設定した分類条件に従って分類する装置であり、正券及び損券の識別に加え、その正券の内でも、正券の程度が相対的に高いATM正券と、正券の程度が相対的に低いテラー正券とを識別するように構成されている。ここで、ATM正券とは、ATM(Automated Teller Machine)やCD(Cash Dispenser)等の入出金機や出金機(以下、これらを総称してATMと呼ぶ)に装填しても、内部の紙幣搬送機構等を円滑に通過し得る紙幣(正券)であり、例えば「こし」が強く、汚れが少ない正券がATM正券となり得る。一方、テラー正券とは、ATM内の紙幣搬送機構等を円滑に通過し得ない虞がある一方で、人手による流通は十分に可能な程度の正券である。
【0004】
特許文献2に開示された紙幣整理機はまた、各紙幣の記番号を読み取って、それを記憶及び管理することが可能に構成されており、この整理機の動作モードの一つとして設定されている「ATM装填モード」時には、投入された紙幣を、ATM正券、テラー正券及び損券に分類すると共に、少なくともATM正券の記番号を記憶して管理する。こうした記番号管理機能付きの整理機を利用することにより、ATMに装填する紙幣を全てATM正券にしつつ、記番号をも管理することができるようになる。このことは、ATMから出金される紙幣全ての記番号を把握することを可能にするから、例えば「ATMから出金した紙幣に偽造紙幣が含まれていた」等とする、顧客の虚偽の申告や苦情に対して適切に対応することが可能になる点で極めて有効であり、ATMに装填する紙幣については、記番号の管理が必須となる場合もある。
【0005】
特許文献3は、前述した記番号の管理をATMが実行する、記番号管理機能付きのATMを開示している。すなわち、このATMは、紙幣の装填時に、その紙幣記番号を全て読み取って記憶すると共に、出金処理時には、払い出される紙幣の記番号を再度読み取って、装填時の情報と照合する機能を備えている。
【0006】
特許文献4は、例えばスーパーマーケットやコンビニエンスストア等の小売店舗を含む各種の施設において、売上金等を入金(収納)すると共に、入金した紙幣を釣銭準備金として出金可能な循環式の売上金入出金機を開示している。こうした売上金入出金機に収納した紙幣は、例えば契約する警送会社によって回収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2009/69200号
【特許文献2】国際公開第2010/32336号
【特許文献3】特許第3204967号公報
【特許文献4】特開2002−312833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、スーパーマーケット等の小売店舗にATMが設置されている場合、ATMに装填する紙幣は、前述の通りATM正券であることから、通常は、例えば警送会社が、売上金の回収の際等にATM装填用紙幣を配送することになる。これに対し、運用コストの低減等の観点から、当該小売店舗に設置している売上金入出金機に収納している紙幣を、ATMの装填紙幣に回す運用が考えられる。
【0009】
一方で、前述の通りATMから出金される紙幣は、記番号管理又はそれに準じた紙幣管理を行うことが望ましいことから、売上金入出金機に収納している紙幣をATMの装填に回す場合にも、紙幣の管理を行うことが求められる。この点につき、例えば特許文献3に開示されているように、店舗に設置されているATMが記番号管理機能を有しているのであれば、少なくともATM正券をATMに装填すれば記番号管理が可能になる。しかしながら、全てのATMが記番号管理機能を有しているとは限らないため、ATMに装填する紙幣の管理を、別途実現することが求められる。
【0010】
例えば特許文献4に開示されているような売上金入出金機は、記番号管理機能を有していない。同様に、特許文献1に開示されているような入出金機も、記番号管理機能を有していない。また、特許文献2に開示されているような整理機を利用することによって紙幣の管理は可能になるが、整理機は紙幣の分類を行うだけで、紙幣を安全に収納することはできないため、売上金の管理のための入出金機と組み合わせる必要がある。しかしながら、ATM装填用紙幣の管理のためだけに、入出金機とは別に、紙幣整理機を小売店舗等に設置することは、コスト、設置スペース、運用の各面で現実的ではない。
【0011】
ここに開示する技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、払い出す紙幣の管理が可能な紙幣処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
ここに開示する紙幣処理装置は、紙幣を処理する紙幣処理装置であって、前記紙幣を収納すると共に、収納している紙幣を繰り出すよう構成された、少なくとも1つの収納部と、前記紙幣の、少なくとも正損を識別するよう構成された識別部と、各々の紙幣に設けられた当該紙幣固有のコードを読み取って記憶するよう構成された読取部と、前記紙幣を払い出すよう構成された出金部と、前記収納部から繰り出された紙幣であって、前記識別部によって正券であると識別されかつ、前記読取部によって読み取られたコードが記憶されている紙幣を、前記出金部から払い出すよう構成された制御部と、を備えている。
【0013】
ここで、「コード」は、紙幣に設けられ当該紙幣を特定するための番号、符号、記号及び、それらに準じるものを含み、特定の形態に限定されるものではない。例えば数字及び文字の羅列であってもよいし、いわゆるバーコードや二次元コードのようなものであってもよい。さらに、紙幣に埋め込まれたRFタグのRFIDであってもよい。このコードの具体例の一つとして、紙幣の通し番号である記番号が挙げられる。また、コードを読み取る読取部は、コードの形態に応じて、光学的、電気的、又は磁気的に紙幣に設けられたコードを読み取ればよく、例えば紙幣に印刷された記番号は、光学的に読み取ることが可能であり、RFIDは電気的に読み取ることが可能である。
【0014】
前記の構成によると、紙幣処理装置は、少なくとも、収納部から繰り出された紙幣を出金部から払い出す処理を行う紙幣出金装置として構成され、制御部によって、その出金部からは、収納部に収納されている紙幣の内、識別部によって正券であると識別された紙幣であって、読取部によって読み取られたコードが記憶されている紙幣が払い出される。一方、識別部によって損券であると識別された紙幣や、例えば紙幣の局所的な汚れや折れ、損傷等に起因して、読取部によってコードを読み取ることができず、よってコードが記憶されていない紙幣は、出金部から払い出されない。
【0015】
従って、この紙幣処理装置から払い出された紙幣は、コードが記憶及び管理されている正券であり、ATM装填用の紙幣となり得るから、記番号管理機能を備えていないATMに装填しても、そのATMから出金される紙幣の管理が可能であり、前述したような顧客からの虚偽の申告等にも対応し得る。
【0016】
前記紙幣処理装置は、前記紙幣を受け入れるよう構成された入金部をさらに備え、前記識別部は、前記入金部が受け入れた紙幣の識別を行い、前記収納部は、前記識別部によって正券であると識別された紙幣を収納する、としてもよい。
【0017】
つまり、前記の紙幣処理装置は、紙幣の出金処理だけでなく、入金処理をも行う紙幣入出金装置として構成してもよい。こうすることで、例えば小売店舗等に設置される売上金入出金装置として利用することが可能になる。この売上金入出金装置から払い出された紙幣は、前述したように、正券でかつコードを記憶している紙幣であるため、例えば小売店舗等に設置されているATMに装填することが可能である。すなわち、小売店舗等の売上金を、売上金入出金装置を通じて、ATM装填用の紙幣に回す運用が実現し得る。このことは、例えば警送会社がATM装填用の紙幣を、別途配送する場合と比較して、小売店舗の運用コストを低減し得ると共に、小売店舗等に、売上金入出金機と紙幣整理機との双方を設置して運用する場合と比較して、運用の効率化、運用コストの低減が図られる。
【0018】
前記紙幣処理装置は、前記識別部によって正券であると識別されかつ、前記読取部によって読み取られたコードが記憶されている紙幣を、前記出金部を通じて払い出す第1の出金モードと、少なくとも前記識別部によって正券であると識別された紙幣を、前記出金部を通じて払い出す第2の出金モードと、を備えている、としてもよい。
【0019】
第1の出金モードと第2の出金モードとの2つのモードを備えることによって、前述したように、ATM装填用の紙幣を出金するモード(第1の出金モード)と、それとは別の、例えば釣銭準備金用の紙幣を出金するモード(第2の出金モード)と、を切り替えることが可能になる。このことは、例えばATM装填用の紙幣がすぐに無くなってしまうような事態を少なくし、ATM装填用の紙幣を出金する紙幣処理装置の運用を円滑にし得る。
【0020】
前記紙幣処理装置は、前記第1の出金モードによる処理の命令と、前記第2の出金モードによる処理の命令と、を区別して入力可能に構成された操作部をさらに備えている、としてもよい。
【0021】
こうすることで、前記の第1及び第2の出金モードの内から、所望の出金モードを容易に選択することが可能になり、紙幣処理装置の操作性が向上し得る。
【0022】
前記読取部は、前記第1の出金モードにおいて払い出される紙幣のコードを読み取って記憶し、前記第2の出金モードにおいて払い出される紙幣のコード読み取りを行わない、としてもよい。
【0023】
こうすることで、読み取り処理の負担が軽減し、処理が高速化し得ると共に、コードを記憶する記憶容量が節約される。ここで、例えばATMが出金する金種が特定の金種のみに限定されている場合は、「第1の出金モードにおいて払い出される紙幣」を、当該ATMが出金する「所定金種の紙幣」とすることが可能である。
【0024】
前記読取部は、前記出金部から払い出される全ての紙幣のコードを読み取ると共に、前記第1の出金モードにおいて払い出される紙幣のコードと、前記第2の出金モードにおいて払い出される紙幣のコードと、を区別して記憶する、としてもよい。こうすることで、ATMに装填され、そのATMから出金される紙幣のコードが管理可能になる。
【0025】
前記識別部は、正券の程度が相対的に高いATM正券と、正券の程度が相対的に低いテラー正券と、を識別し、前記出金部は、前記識別部によってATM正券であると識別されかつ、前記読取部によって読み取られたコードが記憶されている紙幣を払い出す、としてもよい。この構成によると、ATM正券を払い出し可能になるため、ATM装填用の紙幣として、より適合した紙幣が払い出し可能になる。
【0026】
前述した紙幣入出金装置においては、前記読取部は、前記入金部が受け入れた紙幣のコードを読み取って記憶し、前記収納部は、第1収納部と第2収納部とを含みかつ、前記識別部による識別結果及び前記読取部による読取結果に基づいて、前記入金部が受け入れた紙幣の内、ATM正券でかつコードが記憶されている紙幣を前記第1収納部に収納すると共に、正券でかつコードが記憶されていない紙幣を前記第2収納部に収納する、としてもよい。
【0027】
ここで、「コードが記憶されていない紙幣」は、読取部によってコードの読み取り処理を行ったものの、汚れ等に起因してコードを正確に読み取ることができず、その結果として、コードを記憶することができなかった紙幣や、コード管理の不要な金種の紙幣であって、読取部によってコードの読み取り処理を行っていない紙幣を含む。一方、「コードが記憶されている紙幣」は、読取部によってコードの読み取り処理を行うことによって、コードを正確に読み取って記憶することができた紙幣を含む。
【0028】
こうすることで、紙幣入出金装置において、その入金時に、紙幣の一枚一枚に対して、識別及び読み取り処理が実行され、その結果に基づき、第1又は第2収容部に分別して紙幣が収納される。従って、例えばATM装填用に紙幣を出金するときには、ATM正券でありかつ、コードが記憶及び管理されている、第1収納部内の紙幣を払い出すことによって、ATM装填に適合した紙幣を出金することが可能になる。一方、例えば釣銭準備金用に紙幣を出金するときには、第2収納部内の紙幣を払い出せばよい。
【0029】
紙幣入出金装置においては、前記の構成とは異なり、前記入金部は、投入された紙幣を一枚ずつ繰り出し、前記識別部は、前記入金部が繰り出した紙幣の識別を順次行いかつ、前記読取部は、前記紙幣のコードを順次読み取ると共に、前記識別結果及び前記コードの読取結果を、当該識別及びコード読取の処理順と対応付けて記憶し、前記収納部は、前記処理順に紙幣を収納すると共に、前記出金部からの払い出し時には前記処理順とは逆順で紙幣を繰り出し、前記制御部は、前記記憶されている、前記処理順と、前記識別結果及び前記コード読取結果との対応情報に基づいて、前記収納部から繰り出された紙幣の内、ATM正券でかつコードが記憶されている紙幣を選択して前記出金部から払い出す、としてもよい。
【0030】
ここで、前記の「読取結果」には、読み取ったコードの情報の他、前記と同様に、コードを正確に読み取ることができなかったときには読取不可とする情報も、読取結果に含まれる。また、例えばコードの読み取り対象の金種でないため、読み取り処理を行わなかったときの、読取不要とする情報も読取結果に含まれる。従って、「コードが記憶されている紙幣」は、コードを正確に読み取って記憶されている紙幣である一方、収納部には、コードが記憶されている紙幣の他に、コードが記憶されていない紙幣も収納され得る。
【0031】
また、「処理順に紙幣を収納する」と共に、「処理順とは逆順で紙幣を繰り出す」収納部としては、例えば先入れ後出しに構成されるテープ巻き取り式の収納部を、具体例として挙げることが可能である。但し、ここに適用可能な収納部は、テープ巻き取り式の収納部に限定されず、収納時及び繰出時の紙幣の順番を特定可能であれば、どのような方式を採用してもよい。
【0032】
前記の構成によると、入金処理時に、入金部に投入された紙幣に対する識別処理及び読取処理がそれぞれ行われる一方で、前記とは異なり、その識別及び読取結果に応じて分別せずに、収納部に紙幣を混合収納をする。但し、紙幣の処理順と、識別及び読取結果とを紐付けして記憶しておくことにより、出金処理時には、その記憶している紐付け情報に基づいて、収納部から繰り出された紙幣の内、ATM正券でかつ、コードが記憶されている紙幣を選択して、それを出金部を通じて払い出すことが可能になる。
【0033】
前記のように、紙幣を分別して収納する場合は、その分別数に相当する多数の収納部が必要となる一方で、前記の構成は、紙幣を分別せずに混合収納するため、収納部の数が少なくて済む、という利点がある。
【0034】
前記紙幣出金装置、又は、紙幣入出金装置においては、前記収納部の内の少なくとも1つは、ATM正券を収納しており、前記読取部は、前記ATM正券を収納している収納部から繰り出された紙幣のコードを読み取って記憶し、前記制御部は、前記収納部から繰り出された紙幣の内、前記コードが記憶された紙幣を選択して前記出金部から払い出す、としてもよい。
【0035】
この構成によると、出金処理時に、ATM正券を収納している収納部から繰り出された紙幣の一枚一枚について、読取処理が行われる。そうして、コードを正確に読み取って、それを記憶した紙幣は出金部を通じて払い出される一方、例えばコードを正確に読み取ることができなかった紙幣や、コードの読み取り対象の金種でなく(換言すれば出金対象の金種でなく)読み取り処理を行わなかった紙幣は、払い出されない。こうして、ATM正券でかつ、コードが記憶されている紙幣を、選択的に払い出すことが可能になる。またこの構成でも、収納部の数が少なくて済む、という利点がある。
【0036】
尚、払い出さない紙幣は、例えば一時保留部に保留した後に、収納部に戻してもよい。こうすることによって、当該紙幣は、例えば釣銭準備金用の紙幣として払い出すことが可能になる。
【発明の効果】
【0037】
以上説明したように、前記の紙幣処理装置は、正券であると識別した紙幣であって、読み取ったコードを記憶している紙幣を払い出すため、その払い出された紙幣は、ATM装填用の紙幣となり得るから、記番号管理機能を備えていないATMに装填しても、そのATMから出金される紙幣の管理が可能であり、例えば「ATMから出金した紙幣に偽造紙幣が含まれていた」等とする顧客からの虚偽の申告等にも対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】売上金入出金機の内部構成を示す図である。
【図2】売上金入出金機を含むリテールシステムの構成を示す図である。
【図3】売上金入出金機の動作制御に係る構成を示すブロック図である。
【図4】図1とは異なる、売上金入出金機の内部構成を示す図である。
【図5】(a)売上金入出金機の表示部に表示される店舗用メニューの一例、(b)表示部に表示されるATM出金メニューの一例、(c)表示部に表示される警送会社用メニューの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、紙幣処理装置の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。図1は、紙幣処理装置の例としての、売上金入出金機(以下、単に入出金機という)1の概略構成を示している。入出金機1は、図2に示すように、スーパーマーケット等の小売店舗(以下、単に店舗という)におけるリテールシステムの一部を構成する装置であり、店舗のバックオフィスに設置される。尚、入出金機1は、紙幣及び硬貨の入出金が可能であるが、以下では主として紙幣の処理について述べる。
【0040】
リテールシステムは、この実施形態では、入出金機1の他に、店舗の売り場内のレジコーナーに設置された、一つ又は複数のPOS(Point of Sale)ターミナル21、各POSターミナル21に対し一対一に接続されかつ、顧客からの預かり金である紙幣や硬貨を入金すると共に、釣銭である紙幣や硬貨を払い出す釣銭機22、売り場に設置されかつ、顧客が自らの口座からの現金の引き出しが少なくとも可能なATM(又はCD)23、及び、バックオフィスに設置された店舗サーバー24を含んで構成されている。入出金機1、各POSターミナル21及び釣銭機22、ATM23、並びに、店舗サーバー24は、この店舗内に構築されたネットワーク回線(例えば店舗LAN(Local Area Network)25)を介して、互いに信号の送受信が可能となるように接続されている。各POSターミナル21は、売り上げ情報を店舗LAN25を通じて店舗サーバー24に送信し、店舗サーバー24はその売り上げ情報を集計する。各釣銭機22から回収した売上金は、入出金機1に入金(収納)され、入出金機1は、その入金情報を店舗LAN25を通じて店舗サーバー24に送信する。店舗サーバー24は、入出金機1からの入金情報と、集計した売り上げ情報との照合を行う。
【0041】
入出金機1に入金した売上金は、契約した警送会社等の集配業者が回収する。店舗LAN25には、専用回線や公衆回線等の通信回線28を介して、この店舗から離れた警送会社の管理装置26が接続される。管理装置26は、入出金機1からの情報、例えば回収部16が満杯になって回収が必要である等の情報を受信する。管理装置26はまた、ATM23からの情報、例えばATM23に紙幣を装填する必要がある等の情報を受信するようにしてもよい。警送会社の現金輸送車27は、定期的に、又は、必要時に店舗に行き、入出金機1に収納されている売上金の回収や、入出金機1、釣銭機22及び/又はATM23に補充するための紙幣や硬貨の配送を行う。
【0042】
入出金機1は、詳しくは後述するが金庫部分の収納部15に、売上金を収納する入金機能を有していると共に、入金された売上金を含む、収納部15に収納している紙幣を、例えば釣銭準備金として払い出す出金機能を有しており、この入出金機1は、いわゆる循環式の入出金機である。そして、このリテールシステムにおいては、入出金機1が払い出した紙幣を、売り場に設置しているATM23に装填する運用が可能に構成な点が特徴である。
【0043】
入出金機1は、図1に示すように、筐体11の内部に、入金部12、出金部13、識別部14、収納部15、回収部16、及び、これらの各部12〜16を互いに連結する搬送路を含み、当該搬送路に沿ってこれらの各部12〜16の間で紙幣を一枚ずつ搬送する搬送部17を含んで構成されている。入出金機1は、相対的に上側の部分が本体部分、相対的に下側の部分が金庫部分として構成されており、入金部12、出金部13及び識別部14、並びに、後述する制御部31、操作・表示部32、通信部33及び記憶部34(図3参照)は本体部分に内蔵されており、収納部15及び回収部16は金庫部分に内蔵されている。
【0044】
入金部12は、詳細な図示は省略するが、筐体11外に開口すると共に、複数枚の紙幣を一度に受け入れ可能な入金口と、入金口に投入された複数枚の紙幣を一枚ずつ繰り出す繰り出し機構とを備えている。
【0045】
識別部14は、入金部12に対し、図1に実線の矢印で示す紙幣の搬送方向の下流側の搬送路上に配置されており、入金部12から繰り出された紙幣の一枚一枚について、その真偽、金種及び正損を識別するように構成されている(例えば、特許文献2)。ここで識別部14は、正損の識別に関しては、ATM正券、テラー正券、及び損券の識別を行う。識別部14はまた、この実施形態では、紙幣の真偽、金種及び正損の識別の他に、紙幣に印字されている記番号を、光学的に読み取る機能を有している。従ってこの識別部14は、読取部の機能の一部を有している。但し、識別部14が記番号の読み取り機能を有する代わりに、記番号の読み取り機能を有する読取部を、識別部14とは別に、搬送路上、例えば識別部14に対し紙幣搬送方向の下流側に設けてもよい。この識別部14において読み取られた記番号の情報は、詳細は後述するが、記憶部34において、その他の情報と紐付けされて記憶される。従って記憶部34は、読取部の機能の一部を有している。
【0046】
収納部15は、識別部14に対し紙幣搬送方向の下流側に配置されており、より詳細には、搬送路上に設けた第1分岐171において分岐し、上下に延びる分岐搬送路に接続されている。収納部15は、図例では8個のテープ巻き取り方式の収納ユニット151を含んで構成されているが、収納ユニット151の数は特に限定されず、1個以上で、適宜の数を設定すればよい。8個の収納ユニット151は、この例では、上下に4個並んで1列を構成すると共に、その列が横方向に2列並んでおり、その各々の収納ユニット151が、分岐機構を介して上下に延びる分岐搬送路に接続されている。各分岐機構は、後述する制御部31によって駆動制御され、そのことにより、紙幣が、識別部14によって識別された金種及び/又は正損等に応じて複数の収納ユニット151に振り分けられて収納されることになる。
【0047】
ここで、テープ巻き取り方式の収納ユニット151の構成は公知であるため(例えば、国際公開第2008/087095号、特開2005−293389号公報)、詳細な図示は省略するが、このテープ巻き取り方式の収納ユニット151は、紙幣をガイドする1枚のテープとガイド部材及び紙幣と共にテープを巻き取るドラムを備えて構成されるか、又は、紙幣を挟む2枚のテープ及び紙幣を挟み込んだ2枚のテープを巻き取るドラムを備えて構成されており、紙幣を一枚ずつ巻き取って収納すると共に、その収納した順番とは逆順で、紙幣を一枚ずつ繰り出す、いわゆる先入れ後出しとなるように紙幣を収納する。
【0048】
出金部13は、筐体11外に開口すると共に、複数枚の紙幣を一度に保持可能な出金口を備えており、搬送路において、実線の矢印で示される紙幣搬送方向の下流端が接続されている。これにより、出金部13には、識別部14を通過した紙幣がそのまま搬送されて、それを筐体11の外に払い出すか、又は、いずれかのテープ巻き取り方式の収納ユニット151から繰り出された紙幣が搬送されて、それを筐体11の外に払い出す。前者は、詳しくは後述するが、例えば入金処理において、入金部12に投入された紙幣の内、識別不可であった紙幣がリジェクトされる場合に相当し、後者は、例えば出金処理において紙幣を払い出す場合に相当する。
【0049】
回収部16は、第1分岐171と出金部13との間の搬送路上に設けられた第2分岐172において分岐した分岐搬送路に接続されている。これにより、回収部16には、出金部13と同様に、識別部14を通過した紙幣がそのまま搬送されるか、又は、いずれかのテープ巻き取り方式の収納ユニット151から繰り出された紙幣が搬送される。回収部16は、入出金機1の金庫部分に対し着脱可能に取り付けられるカセットにより構成される。つまり、警送会社が売上金を回収するときに、その売上金は回収部16に収納されており、警送会社の担当者が入出金機1の金庫部分からカセットを取り外すことによって、売上金が回収されることになる。カセットを取り外した後は、空のカセットが入出金機1に取り付けられることになる。尚、このリテールシステムの運用によっては、空のカセットではなく、釣銭準備金や後述するATM装填用紙幣が収納されているカセットが、入出金機1に取り付けられる場合もある。
【0050】
回収部(カセット)16は、詳細な図示は省略するが、テープ巻き取り式の収納ユニットとは異なり、その内部に昇降する集積台を備えており、この集積台上に紙幣を重ねて収納するように構成されている。さらに、収納している紙幣を繰り出し可能に構成してもよい。
【0051】
図3は、入出金機1の動作制御に係る構成を示している。入出金機1は、例えば周知のマイクロコンピュータをベースとした制御部31を備えており、前述した入金部12、出金部13、収納部15、回収部16、及び搬送部17はそれぞれ、制御部31に対し信号の送受信可能に接続されている。これらの各部12,13,15,16は、制御部31が出力する制御信号に従って動作をする。制御部31にはまた、識別部14が接続されており、識別部14は、識別結果及び記番号の読取結果を制御部31に提供する。
【0052】
制御部31にはさらに、図1等では図示を省略するが、この入出金機1を操作する、店舗の担当者や警送会社の担当者等の、操作者に対するヒューマンインターフェース部分としての操作・表示部32、入出金機1が、店舗LAN25及び通信回線28を通じて、店舗サーバー24や警送会社の管理装置26との間で信号の送受信を行うための通信部33、及び、前述したように、識別部14において読み取った記番号の情報を少なくとも記憶する記憶部34がそれぞれ接続されている。
【0053】
操作・表示部32は、図5に例示するような各種の画面を表示する、例えばタッチパネル機能付きの液晶パネルからなる表示部321と、図示は省略するが、この入出金機1における各種処理を実行するユーザ権限を確認するための認証処理を実行する、例えばカードリーダ等からなる認証部と、含んで構成されている。
【0054】
記憶部34は、例えばハードディスクドライブやフラッシュメモリ等の汎用のストレージデバイスにより構成され、前述したように、識別部14において読み取った記番号の情報を、その他の情報と紐付けして記憶する。具体的に記憶部34において記憶される情報は、入出金機1が処理した紙幣の通し番号である管理番号(シリアルナンバー)、その紙幣の記番号、その紙幣の金種情報、その紙幣の正損情報(ATM正券、テラー正券又は損券)を含み、記憶部34は、これらを互いに紐付けして記憶する。ここで、識別部14において撮像した紙幣の画像情報も紐付けして、記憶部34に記憶するようにしてもよい。
【0055】
また、記憶部34は、後述する出金処理のときには、当該出金処理において払い出された各紙幣の情報に、その出金処理に係る取引IDの情報を追加して紐付けし、記憶をする。
【0056】
そうして制御部31が、操作・表示部32を通じて受けた各種の指令、又は、店舗LAN25及び通信部33を通じて受けた店舗サーバー24からの指令に応じて、各部12,13,14,15,16,17,32,33,34の動作を制御することにより、入出金機1は、後述する入金処理、引渡処理、補充処理、回収処理及び出金処理を含む各種処理を実行することになる。
【0057】
ここで、この入出金機1が行う出金処理には2種類あり、一つは、売り場に設置されたATM23に装填するATM装填用紙幣を出金する処理であり(第1の出金モード)、もう一つは、売り場の釣銭機22に補充する釣銭準備金を出金する処理である(第2の出金モード)。入出金機1から出金した紙幣をATMの装填用に回す運用は、例えば警送会社がATM装填用紙幣を別途配送する運用と比較して、コストが低減するという利点がある。ここで、ATM装填用紙幣となり得る紙幣は、ATM23が出金する特定金種の、ATM正券であり、この例においてはさらに、後述する記番号管理がされている紙幣である。以下においては、特定金種のATM正券であって記番号管理がされている紙幣のことを、「ATM装填用紙幣」と呼ぶ場合がある。以下、入出金機1が実行する各処理について詳細に説明する。
【0058】
(入金処理)
入金処理は、店舗内の各釣銭機22から回収した売上金を、入出金機1に入金(収納)する処理であり、店舗の担当者が、入出金機1を操作することによって行う。入金した紙幣は、識別部14における識別結果に従って、収納部15又は回収部16、つまり入出金機1の金庫部分に収納される。それと共に、入金処理において入金された金額の情報は、店舗の売上金の情報として記憶されると共に、店舗LAN25を通じて店舗サーバー24に提供される。
【0059】
具体的に、店舗の担当者は、自身のカードを認証部に通して認証操作を完了する。このことにより、表示部321には、図5(a)に示すように、店舗用メニューが表示される。店舗の担当者は、この店舗用メニューの中から「入金」を選択操作すると共に、入金部12に売上金(紙幣)を投入する。入金部12(入金口)に投入された紙幣は一枚ずつ繰り出され、識別部14において識別される。またこの入出金機1では、前述の通り記番号管理を行うように構成されており、識別部14は、入金処理時に、紙幣の識別と共に、紙幣一枚一枚について、そこに印字されている記番号を読み取る処理を実行する。読み取られた記番号の情報は、前述したように、管理番号(シリアルナンバー)、金種情報、及び、正損情報(ATM正券、テラー正券又は損券)と紐付けられて、記憶部34に記憶される。ここで、記番号の読み取りに際し、例えば紙幣の汚れ等に起因して、識別部14において記番号の読み取りが不可であった紙幣については、「記番号読取不可」として記憶部34に記憶をすればよい。尚、以下においては、記憶部34に記番号が記憶されていることを、「記番号が管理されている」と言い、記憶部34に記番号が記憶されていないことを、「記番号が管理されていない」と言う場合がある。
【0060】
そうして、識別部14を通過した後の紙幣は、識別結果及び読取結果に応じて所定の収納ユニット151又は回収部16に収納される。具体的には、金種別、正損別(ATM正券、テラー正券及び損券の別)及び/又は記番号の記憶の有無に応じて、互いに異なる収納ユニット151又は回収部16に紙幣が収納される。例えば特定金種のATM正券でかつ、記番号管理有りの紙幣、つまり、ATMに装填される可能性のあるATM装填用紙幣は、特定の収納ユニット151に収納する一方、ATMに装填される金種でない、ATM正券でない(テラー正券である)、又は、記番号管理無し紙幣は、それとは別の収納ユニット151に収納される。例えばATM正券であっても記番号管理無し紙幣は、テラー正券として取り扱われる。その結果、同じ金種の紙幣であっても、ATM正券(記番号管理有り)の紙幣が収容される収納ユニット151と、テラー正券(記番号管理無し)の紙幣が収容される収納ユニット151と、が相異なる。こうすることによって、ATM装填用紙幣として出金され得る紙幣が収納されている収納ユニット151が、他とは区別されることになる。尚、識別部14において、真偽の識別ができない紙幣等、入出金機1がそのまま受け入れることができない紙幣は、例えば出金部13を通じてリジェクトされる。
【0061】
ここで、識別部14における記番号の読み取り処理は、所定金種の紙幣に限って行ってもよい。これは、この例において記番号の読み取りは主に、ATM23が出金する紙幣を管理するために行う処理であることに基づく。つまり、店舗に設置しているATM23が、特定の一種類又は複数種類の金種の紙幣のみを出金するように構成されているのであれば、そのATM23に装填される金種のみ記番号を読み取ってもよい。これは、処理の高速化に有利になる。また、記番号を読み取りを行わなかった紙幣については、「記番号読取不要」として記憶部34に記憶をしてもよいし、当該紙幣に関する情報の記憶を省略して、記憶部34の記憶容量を節約してもよい。尚、前述した記番号の読み取りが不可であった紙幣についても、当該紙幣に関する情報の記憶を省略してもよい。また、記番号の読み取りは全ての紙幣に対して行う一方で、読み取った記番号の記憶は特定金種の紙幣のみを対象としてもよい。記番号管理を所定の金種に限定して行う処理は、入出金機1の事前の設定に応じて行ってもよい。
【0062】
(引渡処理)
引渡処理は、店舗の売上金を警送会社に引き渡すための処理であり、店舗の担当者が、入出金機1を操作することによって行う。引渡処理によって、収納部15に収納されている紙幣の全て又は一部が、回収部16に収納されることになる。
【0063】
具体的に、店舗の担当者は、認証操作を行うことによって表示部321に表示された店舗用メニュー(図5(a)参照)の中から「引渡」を選択操作する。これにより、収納部15(収納ユニット151)に収納されている紙幣が繰り出されて、回収部16に収納される。引渡金額の情報は、店舗LAN25を通じて、入出金機1から店舗サーバー24に提供される。引渡金額の情報はまた、警送会社にも提供されるが、そのタイミングは、引渡処理を行う毎に提供してもよいし、定期的、又は、回収部16の回収時としてもよい。引渡金額の情報は、通信回線28を通じて警送会社の管理装置26に提供してもよいし、それと共に、又は、それに代えて、入出金機1が印字したジャーナルを通じて、警送会社に引渡金額の情報を提供してもよい。
【0064】
(店舗側による補充処理)
店舗側による補充処理は、入出金機1内に紙幣を補充するための処理であり、店舗の担当者が、入出金機1を操作することによって行う。この補充処理によって、収納部15に紙幣が収納されることになる。
【0065】
具体的に、店舗の担当者は、認証操作を行うことによって表示部321に表示された店舗用メニュー(図5(a)参照)の中から「補充」を選択操作すると共に、入金部12に補充用の紙幣を投入する。この補充処理では、前述した入金処理と同様に、入金部12から繰り出された紙幣の一枚一枚について、識別部14において識別、及び、記番号の読み取りが行われ、その識別結果及び読取結果に応じて所定の収納ユニット151又は回収部16に紙幣が収納される。また、記憶部34に、各種の情報と紐付けられて記番号が記憶される。
【0066】
尚、補充処理において補充された金額の情報は、補充金の情報として、店舗の売上金の情報とは区別して記憶されると共に、店舗LAN25を通じて店舗サーバー24に提供される。
【0067】
(警送会社側による補充処理)
警送会社側による補充処理は、入出金機1内に紙幣を補充するための処理である点で、前述した店舗側による補充処理と同じであるが、この処理は、警送会社の担当者が、入出金機1を操作することによって行う。この補充処理によって、収納部15に紙幣が収納されることになる。
【0068】
具体的に、警送会社の担当者は、自身のカードを認証部に通して認証操作を完了する。このことにより、表示部321には、図5(c)に示すように、警送会社用メニューが表示される。警送会社の担当者は、この警送会社用メニューの中から「補充」を選択操作すると共に、入金部12に補充用紙幣を投入する。この警送会社側による補充処理も、前述の店舗側による補充処理と同様に、入金部12から繰り出された紙幣の一枚一枚について、識別部14において識別、及び、記番号の読み取りが行われ、その識別結果及び読取結果に応じて所定の収納ユニット151又は回収部16に紙幣が収納される。また、記憶部34に、各種の情報と紐付けられて記番号が記憶される。
【0069】
尚、この警送会社側による補充処理において補充された金額の情報は、前述の店舗の売上金の情報及び店舗側による補充金の情報とは区別して記憶されると共に、店舗LAN25を通じて店舗サーバー24に提供される。
【0070】
(回収処理)
回収処理は、警送会社が店舗の売上金を回収するために、警送会社の担当者が入出金機1の回収部(カセット)16を取り外す処理である。
【0071】
具体的に、警送会社の担当者は認証操作を行うことによって表示部321に表示された警送会社用メニュー(図5(c)参照)の中から「回収」を選択操作する。これにより、詳細な図示は省略するが、通常は施錠されている入出金機1の金庫部分が解錠されて、回収部16が取り外し可能になる。警送会社の担当者は、回収部16を取り外した後に、新たな回収部16を金庫部分に取り付ける。
【0072】
ここで、金庫部分に取り付けられた新たな回収部16内に、釣銭準備金用又はATM装填用の紙幣が収納されている場合は、回収部16から紙幣が繰り出されて、図1において破線で示す搬送路に沿って搬送されると共に、その紙幣の一枚一枚に対して、識別部14において識別処理及び記番号の読取処理が行われ、その後に、識別結果及び読取結果に応じて所定の収納ユニット151に収納されることになる。
【0073】
(ATM装填用紙幣の出金処理)
ATM装填用紙幣の出金処理は、入出金機1に収納されている紙幣を、ATM装填用紙幣として払い出す処理であり、店舗の担当者が、入出金機1を操作することによって行う。この出金処理によって払い出された金額情報は、入出金機1において記憶されると共に、店舗サーバー24においても記憶される。後述するように、店舗内に複数台のATM23が設置されている場合は、その装填先のATM23の情報と共に、払い出された金額情報が記憶される。このときに払い出される紙幣には、前述した入金処理の際に、入出金機1に入金(収納)した紙幣や、補充処理によって補充された紙幣が含まれる。
【0074】
具体的に、店舗の担当者は、認証操作を行うことによって表示部321に表示された店舗用メニュー(図5(a)参照)の中から「ATM出金」を選択操作する。このように、店舗用メニューには、「ATM出金」の選択ボタンと、後述する釣銭準備金用の「出金」の選択ボタンとの2つが、予め用意されており、店舗の担当者はいずれかの操作ボタンを選択操作することだけで、ATM装填用紙幣を出金する第1の出金モードと、釣銭準備金を出金する第2の出金モードとを、容易かつ確実に指定することが可能である。これは、操作性を向上させる上で有効である。
【0075】
この出金処理においては、図示は省略するが、表示部321に表示される次画面において、例えば払い出す紙幣の金種と枚数とを指定するようにしてもよい。また、ATM装填用紙幣の出金処理時に払い出す紙幣の金種及び枚数を、予めデフォルトで設定しておいてもよく、この場合は金種や枚数の指定は省略し得る。さらに、金種と枚数との組み合わせからなる複数の選択肢を、予め設定しておき、担当者は、図示は省略するが、次画面に含まれる選択肢の内から所望の選択肢を、選択操作するようにしてもよい。また、入出金機1がATM23に対してATM23の在高を問い合わせ、その在高情報に応じて装填すべき紙幣の金種及び枚数を、入出金機1が決定するようにしてもよい。また、ATM23が、在高情報に基づいて装填すべき紙幣の金種及び枚数を決定し、それを入出金機1に提供してもよい。この場合は店舗の担当者が、金種及び枚数を指定しなくても、自動的に、適切な出金処理が実現し得る。
【0076】
また、例えば店舗内に複数台のATM23が設置されている場合には、「ATM出金」を選択操作したときの次画面として、図5(b)に示すような、装填先のATM23を選択し得る画面(図例では第1のATMと第2のATMとの2台を含む)を、表示部321に表示してもよい。この場合においても、前述したデフォルト設定や、選択肢を、装填先のATM23毎に、当該ATM23に対応して設けてもよい。例えば、複数台のATM23の内の一つ(第1のATM)が、所定の一種類の金種のみを出金する一方、別のATM23(第2のATM)が、所定の複数種類の金種を出金するように構成されている場合、第1のATMに装填する紙幣を出金するときの出金操作として、当該一種類の金種が出金されるようにデフォルト設定や選択肢を設けておけばよく、第2のATMに装填する紙幣を出金するときの出金操作として、当該複数種類の金種が出金され得るように、デフォルト設定や選択肢を設けておけばよい。また、前述したように入出金機1又はATM23が、ATM23の在高情報に応じて装填すべき紙幣の金種及び枚数を決定する構成を採用することも、当然可能である。
【0077】
ATM装填用紙幣は、特定の収納ユニット151に収納されているため、ATM出金操作を行うことによって、指定された条件を満足するATM装填用紙幣が収納されている収納ユニット151から紙幣が繰り出され、それが出金部13を通じて払い出される。こうして、ATM装填用紙幣の出金処理においては、ATM正券でありかつ、記番号が管理されている紙幣が払い出される。ATM装填用紙幣の出金処理ではまた、出金部13から払い出した紙幣について記憶部34に記憶されている各種の情報に対し、その出金処理に係る取引IDの情報を、追加で紐付けし、記憶をする。
【0078】
入出金機1から払い出されたATM装填用紙幣は、売り場に設置されているATM23に装填され、顧客がATM23を操作することに応じて、そのATM23から出金されることになる。ATM装填用紙幣として払い出す紙幣については、記番号の情報を含む各種の情報が入出金機1において管理されているため、例えば「ATM23から出金した紙幣に偽造紙幣が含まれていた」等とする、顧客の虚偽の申告や苦情に対しては、記番号の照合を行うことにより店舗側は適切な対応が可能である。
【0079】
(釣銭準備金の出金処理)
釣銭準備金の出金処理は、入出金機1に収納されている紙幣を、釣銭準備金として払い出す処理であり、店舗の担当者が、入出金機1を操作することによって行う。この出金処理によって払い出された金額情報は、前述したATM装填用紙幣として払い出した金額情報とは区別して、入出金機1において記憶されると共に、店舗サーバー24においても記憶される。このときに払い出される紙幣には、前述した入金処理の際に、入出金機1に入金(収納)した紙幣や、補充処理によって補充された紙幣が含まれる。
【0080】
具体的に、店舗の担当者は、認証操作を行うことによって表示部321に表示された店舗用メニュー(図5(a)参照)の中から「出金」を選択操作する。図示は省略するが、表示部321に表示される次画面において、例えば払い出す紙幣の金種と枚数とを指定すればよい。また、ATM装填用紙幣の出金処理と同様に、デフォルト設定や選択肢を予め設定してもよい。こうした出金操作を行うことに伴い、指定された条件を満足する紙幣が収納されている収納ユニットから紙幣が繰り出され、それが出金部13を通じて払い出される。ここで払い出される紙幣は、少なくとも正券であり、テラー正券に限定してもよいが、ATM正券が含まれていてもよい。例えばテラー正券を優先的に払い出し、テラー正券が足りない場合に、ATM正券を払い出すようにしてもよい。従って、釣銭準備金出金処理においては、基本的には、テラー正券が収納されている収納ユニットから紙幣が繰り出される。但し、ATM正券が収納されている収納ユニットから紙幣が繰り出されてもよい。
【0081】
尚、前述したATM装填用紙幣の出金処理では、出金部13から払い出した紙幣について記憶部34に記憶されている各種の情報に対し、その出金処理に係る取引IDの情報を、追加で紐付けし、記憶をしているが、釣銭準備金の出金処理では、そうした記番号の管理が不要であるため、この処理を省略してもよい。一方、ATM装填用紙幣の出金処理と同様に、釣銭準備金の出金処理においても、出金部13から払い出した紙幣について記憶部34に記憶されている各種の情報に対し、その出金処理に係る取引IDの情報を、追加で紐付けし記憶をしてもよい。この場合は、ATM装填用紙幣の出金処理で出金された紙幣の情報と、釣銭準備金の出金処理で出金された紙幣の情報と、が互いに区別可能に記憶されることになるため、ATM23から出金される紙幣の、記番号を含む各種情報を特定することが可能になる。
【0082】
ここで、ATM23に装填される紙幣は、入出金機1に入金されかつ、その入出金機1から出金される紙幣、つまり店舗の売上金に限らない。例えば警送会社が、ATM装填用紙幣を店舗に配送する場合もあり得る。その場合、配送されたATM装填用紙幣は、別途、記番号が管理されているのであれば、そのままATM23に装填してもよい。記番号の情報は、メモリカードのような携行可能な記憶装置を介して、店舗側に提供されてもよい。例えば入出金機1、ATM23又は店舗サーバー24がメモリカードに記憶されている情報を読み取ってもよい。また、警送会社の管理装置26から、通信回線28及び店舗LAN25を通じて、入出金機1、ATM23又は店舗サーバー24に記番号の情報が提供されてもよい。このようにATM23に装填される紙幣に、入出金機1から出金された紙幣と、それとは別に準備された紙幣とが混在している場合は、例えば店舗サーバー24において記番号の管理を一元化してもよい。つまり、入出金機1から出金したATM装填用紙幣に関する情報は、店舗LAN25を通じて店舗サーバー24に提供してもよい。
【0083】
また、配送されたATM装填用紙幣についての記番号管理が無い場合は、当該紙幣を、一旦、入出金機1に通すことによって、記番号管理を行うようにしてもよい。つまり、前述した入金処理とATM装填用紙幣の出金処理とを組み合わせた、記番号管理処理を行うモードを、さらに設けるようにしてもよい。具体的に記番号管理処理は、配送されたATM装填用紙幣を入出金機1の入金部12に投入し、その紙幣の一枚一枚について、識別部14において識別処理及び読取処理を実行する。そうして、ATM正券であって、記番号の管理が可能な紙幣は、そのまま出金部13に払い出す一方、記番号の読み取り不可等の理由により記番号の管理ができない紙幣は、例えば収納部15に収納して、釣銭準備金として利用するようにしてもよい。
【0084】
(混合収納の構成例)
前記の構成では、入金処理時に、記番号の管理の有無に従って、紙幣を互いに異なる収納ユニット151に収納しているが、これとは異なり、記番号の管理の有無に拘わらず、紙幣を同じ収納ユニット151に収納してもよい。前述したように収納部15を構成する収納ユニット151は、その収納時及び繰出時に、紙幣の順番が入れ替わることのないテープ巻き取り方式である一方で、記憶部34が管理番号(シリアルナンバー、言い換えると入金処理の処理順)と紐付けして記番号の情報を含む各種の情報を記憶していることにより、ATM装填用紙幣の出金処理の際には、収納ユニット151から順次繰り出した紙幣を、その繰り出し順に基づいて、記番号管理の有る紙幣と、記番号管理の無い紙幣とに区別することが可能である。従って、収納ユニット151から繰り出した紙幣の内、記番号管理の無い紙幣は、出金部13から払い出さずに、例えば図1に仮想的に示す一時保留部110を別途設けてそこに一時保留し、記番号を管理している紙幣のみを出金部13から払い出すようにすれば、記番号の管理の有無に拘わらず同じ収納ユニット151に紙幣を収納していても、ATM正券であって記番号を管理している特定金種の紙幣のみを、入出金機1から、ATM装填用紙幣として選択的に出金することが可能になる。この構成は、入出金機1が備える収納ユニット151の数が少なく、種々の条件に従って紙幣を分別して収納することができない場合に、特に有効である。また、入出金機1が備える収納ユニット151の数に応じて、記番号の管理の有無に限定されず、例えば金種や正損に拘わらず、紙幣を同じ収納ユニット151に収納するようにしてもよい。この場合でも、ATM装填用紙幣の出金処理の際には、所望の金種のATM正券であって、記番号が管理されている紙幣のみを選択的に出金することが可能である。同様に、釣銭準備金の出金処理の際には、所望の金種のテラー正券を選択的に出金することが可能である。尚、一時保留部110に一時保留した紙幣は、出金処理の完了後に、収納部15に戻せばよい。
【0085】
(記番号管理を出金時に行う構成例)
前記の構成では、識別を行う識別部14が記番号の読み取り機能を有しているが、これらの機能を分離すべく、識別部14と読取部とを相異ならせてもよい。その場合に、例えば図4に示す入出金機10のように、識別処理は入金処理時に行う一方で、記番号の管理を出金処理時に行うようにしてもよい。尚、入出金機10に関する以下の説明においては、前述した入出金機1と同様の構成については、その説明を省略する場合がある。
【0086】
すなわち、図4に示す入出金機10は、識別部14から機能を分離した読取部18をさらに備え、この読取部18を、第1分岐171と第2分岐172との間の搬送路上に配置している。また、この入出金機10では、第2分岐172から回収部16に至る分岐搬送路上に第3分岐173をさらに設け、その分岐搬送路の先端に一時保留部110を接続している。この一時保留部110は、この例ではテープ巻き取り式に構成しているものの、一時保留部110の構成はこれには限定されない。
【0087】
収納部19を構成する各収納ユニット191は、詳細な図示は省略するが、昇降する集積台の上に紙幣を上下に重ねて収納すると共に、紙幣を一枚ずつ繰り出す積み重ね方式の収納ユニット191とされている。但し、これに限定されず、前述したように、テープ巻き取り式の収納ユニットとしてもよい。収納部19を構成する収納ユニット191は、図例では7個であるが、その数に制限がないことは、前述した通りである。
【0088】
次に、入出金機10が実行する、入金処理、ATM装填用紙幣の出金処理、及び、釣銭準備金の出金処理について詳細に説明する。尚、引渡処理及び回収処理については、前述した入出金機1と同じであるため、その詳細な説明は省略する。
【0089】
(入金処理)
店舗の担当者は、操作・表示部32を通じて前述したような入金操作を行うと共に、入金部12に売上金(紙幣)を投入する。入金部12(入金口)に投入された紙幣は一枚ずつ繰り出され、識別部14において識別される。識別結果である金種情報、及び、正損情報(ATM正券、テラー正券又は損券)は、管理番号(シリアルナンバー)と紐付けられて、記憶部34に記憶される。前述したように、この入出金機10では、識別部14が記番号の読み取りを行わないため、入金処理時に、各紙幣の記番号の読み取り処理は行われない。
【0090】
識別部14を通過した後の紙幣は、識別結果に応じて所定の収納ユニット191又は回収部16に収納される。例えば特定金種のATM正券、つまり、ATM装填用紙幣となる可能性のある紙幣は、特定の収納ユニット191に収納する一方、ATMに装填される金種でない、又は、ATM正券でない(テラー正券である)紙幣は、それとは別の収納ユニット191に収納される。こうしてATM装填用紙幣として出金され得る紙幣が収納されている収納ユニット191を、他とは区別してもよい。
【0091】
(店舗側及び警送会社側による補充処理)
店舗の担当者又は警送会社の担当者は、操作・表示部32を通じて、前述したような補充操作を行うと共に、入金部12に補充用の紙幣を投入する。これらの補充処理では、入金処理と同様に、入金部12から繰り出された紙幣の一枚一枚について、識別部14において識別が行われ、その識別結果に応じて所定の収納ユニット191又は回収部16に紙幣が収納される。また、記憶部34に、互いに紐付けられた各種の情報が記憶される。
【0092】
(ATM装填用紙幣の出金処理)
店舗の担当者が、操作・表示部32を通じて、前述したような出金操作を行うことにより、ATM装填用紙幣の出金処理が行われる。つまり、指定された条件を満足するATM正券が収納されている収納ユニット191から紙幣が繰り出され、それが出金部13を通じて払い出されるが、そのときに搬送路上に配設された読取部18において、紙幣に印字されている記番号を読み取る処理を実行する。読み取られた記番号の情報及び、当該出金処理に係る取引IDの情報は、記憶部34に記憶されている、管理番号(シリアルナンバー)、金種情報、及び、正損情報(ATM正券、テラー正券又は損券)を含む情報に対して、追加で紐付けられて、記憶される。こうして、記番号が管理されることになる紙幣(ATM装填用紙幣)は、出金部13を通じて払い出される。
【0093】
これに対し、例えば紙幣の汚れ等に起因して、読取部18において記番号の読み取りが不可であった紙幣については、出金部13を通じて払い出すのではなく、一時保留部110に搬送し、そこに一時保留する。こうして、ATM装填用紙幣の出金処理においては、ATM正券でありかつ、記番号が管理されている紙幣を、選択的に払い出すことが可能になる。
【0094】
前述した入出金機1と同様に、この入出金機10においても、ATM装填用紙幣の出金処理で出金部13から払い出した紙幣は、記番号が管理されているため、例えば「ATM23から出金した紙幣に偽造紙幣が含まれていた」等とする、顧客の虚偽の申告や苦情に対しても、記番号の照合を行うことにより、店舗側は適切に対応し得ることになる。
【0095】
尚、記番号の読み取りが不可であった紙幣について、読み取り結果としての「記番号読取不可」の情報は、当該紙幣の他の情報と紐付けして記憶部34に記憶してもよいし、その処理を省略してもよい。また、入金処理時に識別部14によって識別された結果、ATM正券でないと識別された紙幣(テラー正券及び損券)についての情報の記憶は、省略してもよい。
【0096】
(釣銭準備金の出金処理)
店舗の担当者が、操作・表示部32を通じて、前述したような出金操作を行うことによって、指定された条件を満足する紙幣が収納されている収納ユニット191から紙幣が繰り出され、それが出金部13を通じて払い出される。つまり、ここで払い出される紙幣は、少なくとも正券であるため、少なくとも、テラー正券を収納している収納ユニット191から繰り出された紙幣が出金部13を通じて払い出される。尚、ここで払い出される紙幣にATM正券が含まれていてもよいことは、前述した通りである。
【0097】
この出金処理に際して、読取部18における記番号の読み取り処理は省略してもよい。これは、出金処理を単純化し、処理時間を短縮し得る。尚、読取部18における記番号の読み取り処理を実行してもよいし、読み取った記番号を記憶部34に記憶してもよい。
【0098】
(混合収納の構成例)
図4に示す入出金機10においても、金種情報及び正損情報に拘わらず、紙幣を同じ収納ユニット191に収納してもよい。すなわち、記憶部34が管理番号と紐付けして各種の情報を記憶していることを利用して、ATM装填用紙幣の出金処理の際に収納ユニット191から繰り出した紙幣の内から、所定金種のATM正券を選別することが可能である。そこで、選別した紙幣について、記番号の読取が可能な紙幣は、出金部13から払い出す一方、条件を満足しない紙幣や記番号の読取ができなかった紙幣は、出金部13から払い出さずに、一時保留部110に搬送すればよい。こうして、金種情報及び正損情報に拘わらず紙幣を同じ収納ユニット191に収納していても、ATM正券であって記番号を管理している特定金種の紙幣のみを、入出金機10から、ATM装填用紙幣として選択的に出金することが可能になる。尚、この構成を採用する場合、各収納ユニット191は、収納時及び繰出時に、紙幣の順番が入れ替わることを確実に回避し得るテープ巻き取り方式であることが、より望ましい。
【0099】
(その他の構成例)
尚、図4に示す入出金機10において、記番号の読み取りを行う読取部18に代えて、記番号読み取り機能付きの識別部を配置してもよい。こうすることで、入金処理時に紙幣の識別が行われると共に、出金処理時にも紙幣の識別及び記番号の読取が可能になる。また、図4に示す識別部14を省略してもよく、この場合は、出金処理時に紙幣の識別及び記番号の読取が可能になる。
【0100】
また、図4に示す入出金機10において、記番号の読み取りを行う読取部18に代えて、記番号読み取り機能付きの識別部を配置すると共に、入金部12及び識別部14を共に省略してもよい。この場合は、出金処理のみを行う出金機が構成されることになる。
【0101】
また、ここでは紙幣のみを処理する売上金入出金機を例示しているが、紙幣及び硬貨の双方の処理を行う売上金入出金機としてもよい。
【0102】
さらに、入出金機1,10が払い出したATM装填用の紙幣は、売り場に設置しているATM23に装填することに限定されない。例えば各釣銭機22が、顧客の口座からの現金の引き出し処理に使用される場合、具体的には、店舗のレジにおける決済処理と同時に、顧客の口座からの現金の引き出し処理が可能に構成されたシステムにおいては、入出金機1から払い出されたATM装填用紙幣を釣銭機22に装填するようにしてもよい。ここで、前記のシステムは、レジコーナーに、例えばキーパッド付カードリーダー(PINパット)を設置しておき、顧客がこのPINパッドを利用して暗証番号や口座からの引き出し金額を入力した場合には、引き出した現金を釣銭機22から払い出すようにして、それを店舗のレジ担当者から顧客に手渡しする構成としてもよい。
【0103】
各釣銭機22は、図示は省略するが、入出金機1,10と同様に、顧客からの預かり金を受け入れる入金部、釣銭を払い出す出金部、識別部、及び収納部を少なくとも備えた構成とすればよいが、前述したように、ATM装填用紙幣が装填される場合において釣銭機22は、釣銭準備金や顧客からの預かり金を収納する収納部(収納ユニット)とは別に、ATM装填用紙幣のみを収納する収納部(収納ユニット)を備えていてもよい。この構成は、顧客の口座からの現金の引き出しの際に、ATM正券であって記番号管理がされた紙幣を釣銭機22から払い出すことを実現可能にする。
【0104】
また、2種類の収納部(収納ユニット)を備えた釣銭機22に紙幣を補充する補充処理としては、釣銭準備金(テラー正券)を補充する補充モードと、ATM装填用紙幣を補充する補充モードとの2つの動作モードを設けるようにし、選択された動作モードに応じて紙幣を収納する収納部(収納ユニット)を切り替えるようにしてもよい。
【0105】
また、前述した入出金機1,10が有する記番号管理機能と同様の機能を、各釣銭機22が有するように構成してもよい。この場合、各釣銭機22の構成は、図1や図4に示す入出金機と同様に、入金部、出金部、識別部(及び読取部)、並びに、収納部を少なくとも含んで構成すればよい。記番号管理機能を有する釣銭機22から払い出したATM装填用紙幣は、ATM23に装填してもよいし、前述したように、当該釣銭機22が、口座からの現金の引き出し処理を行う機能を有している場合は、その引き出し処理の際に、ATM装填用紙幣を、釣銭機22から払い出してもよい。
【0106】
尚、前記の構成では、各紙幣に印字された記番号を、当該紙幣固有の「ユニークコード」として、光学的に読み取ってこれを管理しているが、紙幣を特定することができる「ユニークコード」であれば、数字と文字との羅列である記番号の管理に限定されるものではなく、例えば紙幣に印刷されたバーコードを管理したり、紙幣に埋め込まれたRFタグによるRFIDを利用してもよい。また、その「ユニークコード」の形態に応じて、光学的、電気的、又は磁気的に読み取り処理を行えばよい。
【産業上の利用可能性】
【0107】
以上説明したように、ここに開示した出金装置又は入出金装置は、払い出す紙幣の記番号管理が可能になる点で有用である。
【符号の説明】
【0108】
1 入出金機(紙幣処理装置)
10 入出金機(紙幣処理装置)
12 入金部
13 出金部
14 識別部(読取部)
15 収納部
18 読取部
19 収納部
151 収納ユニット
191 収納ユニット
32 操作・表示部(操作部)
34 記憶部(読取部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙幣を処理する紙幣処理装置であって、
前記紙幣を収納すると共に、収納している紙幣を繰り出すよう構成された、少なくとも1つの収納部と、
前記紙幣の、少なくとも正損を識別するよう構成された識別部と、
各々の紙幣に設けられた当該紙幣固有のコードを読み取って記憶するよう構成された読取部と、
前記紙幣を払い出すよう構成された出金部と、
前記収納部から繰り出された紙幣であって、前記識別部によって正券であると識別されかつ、前記読取部によって読み取られたコードが記憶されている紙幣を、前記出金部から払い出すよう構成された制御部と、を備えている紙幣処理装置。
【請求項2】
前記紙幣を受け入れるよう構成された入金部をさらに備え、
前記識別部は、前記入金部が受け入れた紙幣の識別を行い、
前記収納部は、前記識別部によって正券であると識別された紙幣を収納する請求項1に記載の紙幣処理装置。
【請求項3】
前記識別部によって正券であると識別されかつ、前記読取部によって読み取られたコードが記憶されている紙幣を、前記出金部を通じて払い出す第1の出金モードと、
少なくとも前記識別部によって正券であると識別された紙幣を、前記出金部を通じて払い出す第2の出金モードと、を備えている請求項1又は2に記載の紙幣処理装置。
【請求項4】
前記第1の出金モードによる処理の命令と、前記第2の出金モードによる処理の命令と、を区別して入力可能に構成された操作部をさらに備えている請求項3に記載の紙幣処理装置。
【請求項5】
前記読取部は、前記第1の出金モードにおいて払い出される紙幣のコードを読み取って記憶し、前記第2の出金モードにおいて払い出される紙幣のコード読み取りを行わない請求項3又は4に記載の紙幣処理装置。
【請求項6】
前記読取部は、前記出金部から払い出される全ての紙幣のコードを読み取ると共に、前記第1の出金モードにおいて払い出される紙幣のコードと、前記第2の出金モードにおいて払い出される紙幣のコードと、を区別して記憶する請求項3又は4に記載の紙幣処理装置。
【請求項7】
前記識別部は、正券の程度が相対的に高いATM正券と、正券の程度が相対的に低いテラー正券と、を識別し、
前記制御部は、前記識別部によってATM正券であると識別されかつ、前記読取部によって読み取られたコードが記憶されている紙幣を前記出金部から払い出す請求項1〜6のいずれか1項に記載の紙幣処理装置。
【請求項8】
前記読取部は、前記入金部が受け入れた紙幣のコードを読み取って記憶し、
前記収納部は、第1収納部と第2収納部とを含みかつ、前記識別部による識別結果及び前記読取部による読取結果に基づいて、前記入金部が受け入れた紙幣の内、ATM正券でかつコードが記憶されている紙幣を前記第1収納部に収納すると共に、正券でかつコードが記憶されていない紙幣を前記第2収納部に収納する請求項7に記載の紙幣処理装置。
【請求項9】
前記入金部は、投入された紙幣を一枚ずつ繰り出し、
前記識別部は、前記入金部が繰り出した紙幣の識別を順次行いかつ、前記読取部は、前記紙幣のコードを順次読み取ると共に、前記識別結果及び前記コードの読取結果を、当該識別及びコード読取の処理順と対応付けて記憶し、
前記収納部は、前記処理順に紙幣を収納すると共に、前記出金部からの払い出し時には前記処理順とは逆順で紙幣を繰り出し、
前記制御部は、前記記憶されている、前記処理順と、前記識別結果及び前記コード読取結果との対応情報に基づいて、前記収納部から繰り出された紙幣の内、ATM正券でかつコードが記憶されている紙幣を選択して前記出金部から払い出す請求項7に記載の紙幣処理装置。
【請求項10】
前記収納部の内の少なくとも1つは、ATM正券を収納しており、
前記読取部は、前記ATM正券を収納している収納部から繰り出された紙幣のコードを読み取って記憶し、
前記制御部は、前記収納部から繰り出された紙幣の内、前記コードが記憶された紙幣を選択して前記出金部から払い出す請求項7に記載の紙幣処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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