説明

紙搬送装置、および印刷装置

【課題】記録媒体の膨らみや皺を低減可能な紙搬送装置を提供する。
【解決手段】搬送される連続帳票Rに印刷ヘッド26を用いて情報を印刷する印刷装置100の紙搬送装置40であって、前記印刷ヘッド26が配置される領域に、前記連続帳票Rを搬送する紙搬送機構40と、前記紙搬送機構40によって搬送される前記連続帳票Rに面する2つのガイド面31,32を有するガイド部30と、を有し、前記2つのガイド面31,32の少なくとも一方に、前記連続帳票R側に突出するとともに、平面視において、紙搬送方向の上流側を頂点とし、下流側にいくに従って前記連続帳票Rとの接触範囲が徐々に大きくなる段差33面を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報が記録される記録媒体の紙搬送装置、および、それを備える印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報を記録する印刷装置は、産業用途を始め、さまざまな分野に用いられている。それに伴って、情報が記録される記録媒体の種類も多岐に亘っている。記録媒体は、例えば、複数のシートを重ね合わせたものがある。この種の記録媒体は、いわゆるファンホールド紙として供給される。ファンホールド紙は、搬送方向に沿ってスプロケットホール(係合孔)が設けられ、さらには、頁毎の境目がミシン目となって切断可能に構成され、ミシン目部位で交互に逆方向に折り畳まれた積層状態となっている。ファンホールド紙は、トラクターを備える紙搬送装置により搬送される。
【0003】
トラクターは、ファンホールド紙のスプロケットホールに挿入可能なトラクターピンと、外周面にトラクターピンが所定間隔で形成されたトラクターベルトとを備えている。ファンホールド紙は、そのスプロケットホールにトラクターピンが挿入状態となるようにトラクターにセットされる。トラクターは、駆動源からの駆動力によってトラクターベルトを回転させ、ファンホールド紙のスプロケットホールにトラクターピンを順次に係合させながら、ファンホールド紙を搬送する(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
連続帳票に情報を記録する業務用プリンターの紙搬送装置は、上述のトラクター以外に印刷ヘッド近傍に紙送りローラーおよび紙押さえローラーを備えており、紙送りローラーおよびトラクターを同期させ駆動制御することにより、連続帳票を所定送り量ずつ紙送りしている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
印刷装置は、搬送される記録媒体に対して印刷ヘッドを用いて情報を記録する。よい印刷品質を得るためには、記録媒体が適切に搬送されることが重要である。搬送される記録媒体に皺や膨らみ(紙浮き)が発生すると、印刷ヘッドと記録媒体との望ましい位置関係が保てず、印刷品質が損なわれる虞がある。記録媒体の皺や膨らみを防止するために、記録媒体の搬送経路全体にリブ等によって凸部や凹部を設け、記録媒体の浮きや膨らみを矯正するインクジェット記録装置が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−232470号公報
【特許文献2】特開2009−119574号公報
【特許文献3】特開平9−48161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、記録媒体の種類や印刷装置の種類が多岐に亘っている。記録媒体が、複数のシートを重ね合わせ、搬送方向の両端が糊付けされている場合は、環境、特に湿度の影響を受け、シートが伸縮し膨らみが発生する可能性がある。特に、異なる材質からなるシートを重ね合わせた場合は、シートの伸縮の程度が異なり一方向への膨らみが顕著になる。このような記録媒体を、例えばインクジェットプリンターのような印刷装置で印刷をしようとすると、印刷ヘッドと記録媒体とのギャップを適正に保てず、印刷品質が低下するとの課題がある。著しい場合は、印刷ヘッドと接触して正常な印刷ができない虞がある。また、印刷ヘッド近傍に、ローラータイプの紙送り機構を設け、紙押さえローラーで矯正しようとする場合は、膨らみ部分がつぶれてしまい折れ皺が発生する虞がある。
【0008】
特許文献3に示す全面リブのみによって紙の膨らみを矯正しようとするインクジェット記録装置は、単票用紙での膨らみを矯正する場合について述べている。上述の記録媒体のように複数のシートを重ね合わせた場合に発生する可能性のある著しい膨らみに対する矯正については言及していない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0010】
(適用例1)搬送される連続帳票に印刷ヘッドを用いて情報を印刷する印刷装置の紙搬送装置であって、前記印刷ヘッドが配置される領域に、前記連続帳票を搬送する紙搬送機構と、前記紙搬送機構によって搬送される前記連続帳票に面する2つのガイド面を有するガイド部と、を有し、前記2つのガイド面の少なくとも一方に、前記連続帳票側に突出するとともに、平面視において、紙搬送方向の上流側を頂点として、下流側にいくに従って前記連続帳票との接触範囲が徐々に大きくなる段差面を備えることを特徴とする紙搬送装置。
【0011】
この構成によれば、搬送される連続帳票の印刷面側の膨らみは、紙幅中央部付近に位置する、例えば、三角形形状の段差面の頂点を起点として、連続帳票側に突出するとともに、下流にいくに従って紙幅方向に徐々に広がる段差面によって、紙幅端部方向に押しやられる。すなわち、連続帳票の膨らみは、連続帳票の印刷領域である部分から非印刷領域である紙幅両端部に移動させられる。そのため、印刷領域において、印刷ヘッドと連続帳票とのギャップを適正に保つことができるとともに、膨らみがつぶされて折れ皺が発生することを防止することができる。その結果、連続帳票の膨らみや折れ皺による印刷品質の低下を防止することができる。
【0012】
(適用例2)前記段差は、前記ガイド部の前記2つのガイド面のうち、前記連続帳票の印刷面に対向する前記ガイド面に設けられることを特徴とする上記の紙搬送装置。
【0013】
この構成によれば、紙搬送装置は、連続帳票の印刷面の膨らみを紙幅両端部の2つの膨らみに分断することができる。そのため、印刷ヘッドと連続帳票の印刷面とのギャップを適正に保つことができる。
【0014】
(適用例3)前記連続帳票は、2つ以上のシートによって構成され、紙幅方向の両端が糊付けされることを特徴とする上記の紙搬送装置。
【0015】
(適用例4)前記連続帳票は、2つ以上の異なる材質のシートによって構成され、紙幅方向の両端が糊付けされることを特徴とする上記の紙搬送装置。
【0016】
これらの構成によれば、紙搬送装置は、環境、特に温湿度等の影響によって発生する上述の連続帳票の大きな膨らみを非印刷領域である紙幅両端部の2つの膨らみに分断することができる。そのため、2つ以上の異なる材質のシートによって構成される連続帳票であっても、印刷領域において、印刷ヘッドと連続帳票とのギャップを適正に保つことができるとともに、膨らみがつぶされて折れ皺が発生することを防止することができる。その結果、印刷品質の低下を防止することができる。
【0017】
(適用例5)上記の紙搬送装置と、前記紙搬送装置によって搬送される連続帳票にインク滴を吐出する印刷ヘッドと、前記印刷ヘッドを搭載するキャリッジと、前記キャリッジを、前記紙搬送装置による紙搬送方向と直交する方向に往復移動するキャリッジ移動機構と、を有する印刷装置。
【0018】
この構成によれば、印刷装置は、連続帳票の膨らみや折れ皺による印刷品質の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】インクジェットプリンターの外観斜視図。
【図2】プリンター本体の斜視図。
【図3】紙搬送装置の概略構成を示す図。
【図4】ガイド部を説明する図。
【図5】紙搬送装置の動力伝達機構の構成を示す図。
【図6】連続帳票の例を示す図。
【図7】インクジェットプリンターの主要構成を示すブロック図。
【図8】連続帳票の搬送状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明で参照する図面では、説明および図示の便宜上、部材ないし部分の縦横の縮尺を実際のものとは異なるように表す場合がある。なお、本実施形態では、印刷装置として、用紙にインク滴を吐出して印刷を行うインクジェットプリンターを例にとり説明する。
【0021】
(インクジェットプリンターの全体構成について)
まず、インクジェットプリンターの全体構成について、図1を参照して説明する。図1は、インクジェットプリンターの外観斜視図である。なお、図1に示すX方向は、連続帳票の紙搬送方向を示し、Y方向は、連続帳票の幅方向を示し、Z方向は、X方向およびY方向と直交する方向を示す。
【0022】
本実施形態のインクジェットプリンター100は、連続帳票としてのファンホールド紙をプリンター後側から給紙してプリンター前側に排紙するタイプの業務用プリンターである。図1に示すように、インクジェットプリンター100は、後述するプリンター本体110(図2参照)を、上ケース11と下ケース12とから構成されるケース10の内部に収容している。ケース10の図中前面中央には紙排出口14が開口し、紙排出口14のX方向後面には紙供給口15が開口している。紙排出口14には、印刷が終了した連続帳票を受ける排紙トレイ16が設けられている。ケース10の前面のY方向両側には、動作状態を表示するLEDランプ等からなる表示部17が設けられている。
【0023】
この表示部17のZ方向下方には、黒インクカートリッジ21a(図2参照)を収納するカートリッジ収納部22aの前方を覆うインクカバー18aと、複数のカラーインクカートリッジ21bを収納するカートリッジ収納部22bの前方を覆うインクカバー18bとがそれぞれ左右に設けられている。これらのインクカバー18a,18bは、それぞれ開閉可能に取り付けられており、それぞれのインクカバー18a,18bを開くことで、インクカートリッジ21a,21bを交換することができる。
【0024】
(プリンター本体の構成について)
次いで、ケースに収容されるプリンター本体の構成について、図2を参照して説明する。図2は、プリンター本体の斜視図である。なお、図2に示すX方向、Y方向およびZ方向は、図1に示すX方向、Y方向およびZ方向と同一な方向を示す。
図2に示すように、プリンター本体110は、インク供給機構20と、印刷機構25と、排液タンク19と、紙搬送装置40と、シャーシ50と、制御装置80とを有している。
【0025】
インク供給機構20は、インクカートリッジ21a,21bが収納されるカートリッジ収納部22a,22bと、図示しないインク加圧部と、同じく図示しないインク供給管とを有する。カートリッジ収納部22a,22bは、上述のインクカバー18a,18bの裏側のシャーシ50にそれぞれ設けられる。カートリッジ収納部22a,22bに収納されるインクカートリッジ21a,21bのインクは、インク加圧部により加圧されてインク供給管を介して印刷機構25に送られる。
【0026】
印刷機構25は、インクジェットヘッド26と、キャリッジ28と、キャリッジ送り機構60と、図示しないメンテナンス機構とを有する。インクジェットヘッド26は、インク供給機構20によって供給されるインクをインク滴として吐出する複数のノズル27(図3参照)を有し、ノズル27を図2中Z方向下方、すなわち用紙側に向けてキャリッジ28に搭載される。キャリッジ28は、用紙幅方向(Y方向)に延在するキャリッジ軸29に移動可能に支持され、キャリッジ送り機構60によってY方向に往復移動される。キャリッジ送り機構60は、キャリッジモーター24と、キャリッジモーター24によって駆動されるタイミングベルト23とを有する。キャリッジ28は、タイミングベルト23に固定されているため、タイミングベルト23の走行に応じて用紙幅方向(Y方向)に往復移動させられる。
【0027】
メンテナンス機構は、図示しない吸引ユニットと同じく図示しないワイピングユニットとを有している。メンテナンス機構は、キャリッジ28がY方向に移動することにより、キャリッジ28に搭載されたインクジェットヘッド26に対して、吸引ユニットおよびワイピングユニットを対向させることができる。吸引ユニットは、非稼働時にインクジェットヘッド26のノズル27面を封止してノズル27の乾燥を防止するとともに、インクジェットヘッド26のノズル27から増粘したインクを吸引除去する役割を果たす。ワイピングユニットは、インクジェットヘッド26のノズル27面に付着する汚れを払拭する役割を果たす。排液タンク19は、フェルト等の不織布を有し、プリンター本体110の下部に設けられ、吸引ユニットで吸引された排インクを収容する。
【0028】
(紙搬送装置の構成について)
ここで、紙搬送装置の構成について、図3〜図5を参照して説明する。図3は、紙搬送装置の概略構成を示す図である。図4は、ガイド部を説明する図であり、(a)はガイド部周辺の平面図、(b)は、ガイド部周辺の側面図である。図5は、紙搬送装置の動力伝達機構の構成を示す図である。なお、図3〜図5に示すX方向、Y方向およびZ方向は、図1に示すX方向、Y方向およびZ方向と同一な方向を示す。なお、この紙搬送装置は、スプロケットホールを有する連続帳票Rを搬送するものである。
【0029】
図3に示すように、紙搬送装置40は、紙搬送経路41と、ガイド部30と、第1搬送機構43と、第2搬送機構53と、第3搬送機構63と、動力伝達機構70(図5参照)とを備える。紙搬送経路41は、図1および図2に示すインクジェットプリンター100およびプリンター本体110の紙供給口15を起点とし、印刷機構25のインクジェットヘッド26による印刷位置Aを経由し紙排出口14を終点として図3中X方向に沿って延びるように形成されている。そして、紙搬送経路41に沿って、上流側から下流側に順次、第1搬送機構43、ガイド部30、第2搬送機構53、印刷機構25および第3搬送機構63が設けられている。
【0030】
第1搬送機構43は、紙供給口15近傍に設けられ、1対のトラクター44で構成される。トラクター44は、連続帳票RのスプロケットホールQ1に挿入可能なトラクターピン(係合部)45と、外周面にトラクターピン45が所定間隔で形成されたトラクターベルト46と、トラクターベルト46が架け渡されている駆動スプロケット47および従動スプロケット48を備えている。1対のトラクター44は、搬送される連続帳票Rの幅方向の両端にあるスプロケットホールQ1に対応するように紙搬送経路41のY方向両側に配置されている。また、1対のトラクター44の駆動スプロケット47のそれぞれは、1対のトラクター44が同期して駆動するように駆動スプロケット軸49によって連結されている。また、駆動スプロケット軸49の端部には、シャーシ50の一方の外面に露出するように駆動歯車42(図5参照)が取り付けられている。
【0031】
ガイド部30は、搬送される連続帳票Rの下面Raをガイドする下ガイド31と、下ガイド31に対してZ方向に一定の間隔を隔てて対向するとともに、連続帳票Rの上面Rbをガイドする上ガイド32とを有している。上ガイド32には、下ガイド31との間隔を小さくするように、段差面としての段差33が設けられている。図4(a)に示すように、本実施例では、段差33は、搬送される連続帳票Rの搬送方向上流側(X(+))の紙幅中央部付近を頂点33aとして搬送方向下流側(X(−))の端部付近を底辺33bとする三角形形状に形成されている。
【0032】
また、図4(b)に示すように、上ガイド32に設けられた段差33の面は、連続帳票Rの主な搬送方向であるX(+)方向からX(−)方向に向かうに従って、下ガイド31との間隙を狭くするように斜めに形成されている。
【0033】
図3に示すように、第2搬送機構53は、紙搬送経路41に沿って第1搬送機構43とインクジェットヘッド26による印刷位置Aとの間、詳しくは、上述のガイド部30の下流側に設けられている。第2搬送機構53は、第1紙送りローラー55と、第1紙押えローラー58とを有している。第1紙送りローラー55は、ゴム等の弾性体もしくは粒状体を塗布した焼結体等からなる円柱形状のローラー56とローラー56の軸方向を貫くローラー軸57とから構成され、紙搬送経路41を横断するように紙搬送経路41のZ方向下側に設けられている。ローラー軸57の一方の端部には、シャーシ50の一方の外面に露出するように駆動歯車52(図5参照)が取り付けられている。
【0034】
図4(a)に示すように、第1紙押えローラー58は、ゴム等の弾性体、またはプラステックからなる円柱形状の複数のローラー59と、複数のローラー59を軸方向に貫くローラー軸54とを有する。本実施例では、ローラー59は、Y方向に一定のピッチで、例えば、5つ設けられている。ここで5つのローラー59を、Y(+)側から順にローラー59a,59b,59c,59d,59eと呼ぶ。第1紙押えローラー58、すなわち、ローラー59a,59b,59c,59d,59eは、Z方向上方から付勢力によって、紙搬送経路41を搬送される連続帳票Rを第1紙送りローラー55に押し付けるように配置されている。
【0035】
図3に示すように、第3搬送機構63は、紙搬送経路41に沿ってインクジェットヘッド26による印刷位置Aと紙排出口14との間、詳しくは、ややインクジェットヘッド26側に設けられている。第3搬送機構63は、第2紙送りローラー65と第2紙押えローラー68とを有している。第2紙送りローラー65は、ゴム等の弾性体もしくは粒状体を塗布した焼結体等からなる円柱形状のローラー66とローラー66の軸方向を貫くローラー軸67とから構成され、紙搬送経路41を横断するように紙搬送経路41のZ方向下側に設けられている。ローラー軸67の一方の端部には、シャーシ50の一方の外面に露出するように駆動歯車62(図5参照)が取り付けられている。
【0036】
第2紙押えローラー68は、複数に分割され、金属板を星形に板金加工した、いわゆるギザローラーの形態を呈しており、Z方向上方から付勢力によって、紙搬送経路41を搬送される連続帳票Rを第2紙送りローラー65に押し付けるように配置されている。また、第2紙押えローラー68とインクジェットヘッド26との間には、紙検出器78が設置されている。紙検出器78は、例えば、反射型のフォトセンサーであり、紙搬送装置40によって紙搬送経路41内に搬送されてくる連続帳票Rの有無および先端もしくは後端を検出する。
【0037】
図5に示すように、動力伝達機構70は、モーター歯車71を有する駆動源としての紙送りモーター72と、歯車群73と、歯付ベルト74とを備え、シャーシ50のY方向一方の外面に設けられる。紙送りモーター72は、モーター歯車71がシャーシ50の一方の外面に露出するようにシャーシ50に固定される。その結果、シャーシ50の一方の外面には、モーター歯車71と、上述の駆動歯車42、駆動歯車52および駆動歯車62からなる歯車群73とが配置されている。歯付ベルト74は、内歯タイプの無端ベルトであり、モーター歯車71、第1搬送機構43の駆動歯車42および第2搬送機構53の駆動歯車52に一定のテンションで張架されている。また、第3搬送機構63の駆動歯車62は、第2搬送機構53の駆動歯車52と係合している。なお、歯付ベルト74は、適正な張力を確保するため、テンションローラーを用いてもよい。
【0038】
上述の構成を有する紙搬送装置40は、紙送りモーター72の駆動力をモーター歯車71から歯付ベルト74を介して、第1搬送機構43の駆動歯車42および第2搬送機構53の駆動歯車52に伝達する。また、第3搬送機構63の駆動歯車62には、第2搬送機構53の駆動歯車52を経由して伝達する。なお、紙送りモーター72は、後述する制御装置80からの制御信号に基づいて制御される。
【0039】
紙搬送装置40は、第1搬送機構43のトラクター44を回転動作させることによって、トラクターピン45に係合されたスプロケットホールQ1を有する連続帳票Rを紙搬送経路41に沿って搬送する。第1搬送機構43によって搬送される連続帳票Rは、ガイド部30を介して、詳しくは、上ガイド32面に形成された段差33によって矯正され、第2搬送機構53の回転動作する第1紙送りローラー55と第1紙押えローラー58との間に誘い込まれ、紙搬送経路41に沿ってさらに搬送される。第2搬送機構53によって搬送される連続帳票Rは、印刷機構25の印刷位置Aを経由して、第3搬送機構63の回転動作する第2紙送りローラー65と第2紙押えローラー68との間のニップ部に誘い込まれ、紙搬送経路41に沿って紙排出口14方向に順次搬送される。
【0040】
(連続帳票について)
ここで、上述のインクジェットプリンターで用いられる連続帳票について図6を参照して説明する。図6は連続帳票の例を示す図であり、(a)は1つの薬袋用紙を示す図であり、(b)は連続帳票としての薬袋用紙を示す図であり、(c)は連続帳票としてのファンホールド紙を示す図である。なお、図6に示すX方向、Y方向およびZ方向は、図1に示すX方向、Y方向およびZ方向と同一な方向を示す。
【0041】
薬袋(やくたい)用紙90とは、病院や薬局で処方された薬剤を収容するとともに、表面に患者名、薬剤の種類および服用回数等を表示して患者に提供する袋状の用紙である。図6(a)に示すように、本実施例の薬袋用紙90は、透明な合成樹脂フィルムシート91と紙シート92との材質の異なる2層構造からなり、Y方向両側縁90a,90bおよびX方向下縁90cの三方が接着剤により接着されX方向上部90dが開口している袋形状を呈している。この薬袋用紙90は、上述のインクジェットプリンター100によって紙シート92部分に患者名等の必要な項目が印刷されるとともに、透明な合成樹脂フィルムシート91を通して内部に収容される薬剤を視認可能となっている。
【0042】
図6(b)に示すように、この薬袋用紙90は、上記を1組として複数の薬袋用紙90が連続して形成され連続薬袋用紙90Aとして供給される。すなわち、合成樹脂フィルムシート91と紙シート92とは、それぞれ連続する1枚の長尺シート91a,92aであり、両側縁90a,90bが接着剤により接着されるとともに、X方向に沿って両側縁90a,90bに図3に示すトラクターピン45が係合可能なスプロケットホールQ1が所定のピッチで列状に形成されている。これら長尺シート91a,92aは、長手方向(X方向)に所定の間隔を隔てて設けられたミシン目(切り離し部)94により、1つずつ切り離し可能に構成されている。各ミシン目94を挟んで、一方側は幅方向に沿って接着剤で接着されている。この接着部が上記下縁90cに相当する。この連続薬袋用紙90Aは、ミシン目94で互い違いに折りたたまれ、いわゆるファンホールド状を呈している。連続薬袋用紙90Aは、このような形態になっていることによって、トラクター44を有するインクジェットプリンター100によって、紙送りされ連続印刷されることができる。
【0043】
インクジェットプリンター100で用いられる連続帳票Rは、上述の連続薬袋用紙90Aに限定されない。図6(c)に示すように、用紙のY方向両側縁96a,96bにスプロケットホールQ1がX方向に沿って所定のピッチで列状に形成されるとともに、X方向に所定の間隔を隔てて設けられたミシン目94により1つずつ切り離し可能に構成されている通常のファンホールド紙であってもよい。
【0044】
(インクジェットプリンターの制御について)
次に、インクジェットプリンターの制御系について、図7を参照して説明する。図7は、インクジェットプリンターの主要構成を示すブロック図である。図7に示すように、インクジェットプリンター100は、インクジェットヘッド26を有する印刷機構25、図示しないキャリッジモーターを有するキャリッジ送り機構60、紙搬送装置40、紙検出器78を含む検出部79を有するプリンター本体110と、これらを統括制御する制御装置80とを備えている。
【0045】
制御装置80は、制御系の主要部となる制御部81と、インクジェットヘッド26を駆動制御するヘッドドライバー82と、インク供給機構20、紙搬送装置40およびキャリッジ送り機構60を駆動するモータードライバー84と、インターフェイス部85とを備えている。制御部81は、CPU(Central Processing Unit)86と、情報処理部87と、記憶部88とを備えている。CPU86は、図示しない操作系や検出系からの入力信号処理、印刷処理等の各種処理を実行する。情報処理部87は各種情報を処理する。
【0046】
記憶部88は、図示しないRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を含んだ構成を有している。RAMは、ホストコンピューター89からインターフェイス部85を介して入力される印刷データ等の各種データを一時的に格納したり、CPU86によって実行される印刷処理等のプログラムを一時的に展開したりする。ここで、印刷データは、インクジェットヘッド26で連続帳票Rに印刷すべきパターンを指示するものである。
【0047】
ヘッドドライバー82は、CPU86からの指令に基づいて、インクジェットヘッド26を制御する。モータードライバー84は、CPU86からの指令に基づいて、紙搬送装置40およびキャリッジ送り機構60のそれぞれのモーターを個別に制御する。インターフェイス部85は、ホストコンピューター89から受け取った印刷データ等を制御部81に出力したり、制御部81から受け取った各種情報をホストコンピューター89に出力したりする。
【0048】
上述の構造を有するインクジェットプリンター100は、紙搬送装置40よって連続薬袋用紙90Aを図1に示すX方向に所定紙送り量ずつ搬送する紙送り動作と、キャリッジ送り機構60によってインクジェットヘッド26を紙搬送方向と直交するY方向に往復移動させて印刷を行なう印刷動作とを交互に行ないながら、連続薬袋用紙90Aに印刷を施す。印刷された薬袋用紙90は、ミシン目94により1つずつ切り離され発行される。
【0049】
(インクジェットプリンターの動作について)
次いで、上述のインクジェットプリンターの動作、特に連続帳票の搬送について図8を参照して説明する。図8は、連続帳票の搬送状態を示す図であり、(a)は図4(a)のG1断面を示す図、(b)は図4(a)のG2断面を示す図、(c)は図4(a)のG3断面を示す図、(d)は図4(a)のG4断面を示す図である。なお、図8に示すX方向、Y方向およびZ方向は、図1に示すX方向、Y方向およびZ方向と同一な方向を示す。また、以下の説明では、連続帳票Rとして連続薬袋用紙90Aを適用した場合を例にとり説明する。
【0050】
インクジェットプリンター100の動作は、用紙セット工程S1と、紙搬送工程S2と、印刷工程S3とを有する。
用紙セット工程S1では、図6(b)に示す連続薬袋用紙90Aをインクジェットプリンター100の紙搬送装置40にセットする。詳しくは、第1搬送機構43としてのトラクター44のトラクターベルト46に形成されたトラクターピン45に、連続薬袋用紙90Aの両側縁90a,90bに形成されたスプロケットホールQ1を係合させる。
【0051】
紙搬送工程S2では、図7に示す制御部81のモータードライバー84からの制御信号に基づいて、紙送りモーター72を駆動させ、図5に示すモーター歯車71から歯付ベルト74を介して第1搬送機構43の駆動歯車42および第2搬送機構53の駆動歯車52に駆動力を伝達する。また、第3搬送機構63の駆動歯車62には、第2搬送機構53の駆動歯車52を経由して駆動力を伝達する。このようにすることにより、トラクターベルト46が回動しトラクターベルト46に形成されたトラクターピン45が、順次、連続薬袋用紙90AのスプロケットホールQ1に係合して、連続薬袋用紙90Aを紙搬送経路41に沿って搬送させる。連続薬袋用紙90Aは、ガイド部30に到達する。
【0052】
上述のように、連続薬袋用紙90Aは、合成樹脂フィルムシート91と紙シート92との材質の異なる2層構造であり、しかも紙幅(Y方向)両側縁90a,90bが接着剤により接着されている。そのため、特に湿度が高い環境では、図8(a)に示すように、シートごとに伸び率が異なり伸び率の高いシート側に膨らみが発生する。一般に、湿度65〜80%では、印刷される紙シート92側(Z方向)に紙幅方向(Y方向)に沿って、凸部95bが発生する傾向にある。このような連続薬袋用紙90Aを、インクジェットプリンター100で印刷をしようとすると、凸部95bによって、インクジェットヘッド26とのギャップを適正に保てず、印刷品質が低下してしまう。また、連続薬袋用紙90Aの進行方向にローラータイプの紙送り機構があると、ローラーで凸部95bがつぶれて中央に折れ皺が発生してしまう。
【0053】
ガイド部30は、このような連続薬袋用紙90Aの膨らみを矯正する機能を有する。図8(a)に示すように、ガイド部30に到達した凸部95bを有する連続薬袋用紙90Aは、下ガイド31と上ガイド32との間をY方向に搬送される。搬送される連続薬袋用紙90Aは、図8(b)に示すように、上ガイド32のX方向中央に設けられた段差33の頂点33aに当たり、頂点33aを起点として段差面33cによって、凸部95bの頂点部分がつぶされ、Y方向両側に2つの凸部95a,95cが形成される。
【0054】
連続薬袋用紙90Aは、図8(c)に示すように、平面視三角形形状の段差33の段差面33cに当たりながら搬送される。そのため、上述の2つの凸部95a,95cは、連続薬袋用紙90Aが搬送されるに従い段差33の段差面33cによって、連続薬袋用紙90Aの両端側方向に押しやられる。さらに、搬送される連続薬袋用紙90Aの2つの凸部95a,95cは、図8(d)に示すように、段差33の段差面33cによって、連続薬袋用紙90Aの両端部に移動される。そのため、連続薬袋用紙90Aがガイド部30を通過するときには、連続薬袋用紙90Aは、印刷領域である中央部近傍は平らになり、非印刷領域である両端部に凸部95aおよび凸部95cが存在する。
【0055】
紙搬送経路41に沿って搬送される連続薬袋用紙90Aは、第2搬送機構53に到達する。第2搬送機構53に到達した連続薬袋用紙90Aは、第2搬送機構53の回動する第1紙送りローラー55と第1紙押えローラー58とによって挟持され搬送される。図4(a)に示すように、第1紙押えローラー58は、複数のローラー59と、複数のローラー59を軸方向に貫くローラー軸54とを有する。前述のように、ローラー59は、ローラー59a,59b,59c,59d,59eの5つのローラーに分けられている。
【0056】
第2搬送機構53によって搬送される連続薬袋用紙90Aは、インクジェットヘッド26による印刷位置Aを通過して、第3搬送機構63に到達する。第3搬送機構63に到達した連続薬袋用紙90Aは、第3搬送機構63の回動する第2紙送りローラー65と第2紙押えローラー68とによって紙排出口14方向に向けて搬送される。搬送される連続薬袋用紙90Aは、第1紙送りローラー55の紙排出口14側に配置される紙検出器78によって用紙の先端および有無が検出される。
【0057】
印刷工程S3では、印刷機構25のキャリッジ送り機構60によってインクジェットヘッド26を紙搬送方向と直交するY方向に往復移動させながら、紙搬送装置40によって搬送される連続薬袋用紙90Aの表面にインクジェットヘッド26のノズル27からインクをインク滴として吐出して文字や画像等の情報を印刷する。
【0058】
以下、本実施例の効果を記載する。
(1)上述の紙搬送装置40は、大きな膨らみである凸部95bを有する2層構造の連続薬袋用紙90Aであっても、平面視三角形形状の段差33面を有するガイド部30を通過することによって、印刷領域にある凸部95bを2つの凸部95a,95cに分断して非印刷領域である紙幅端部に移動させることができる。そのため、インクジェットヘッド26と連続薬袋用紙90Aとの印刷領域でのギャップを適正に保つことができる。その結果、インクジェットプリンター100は、良好な印刷品質を確保することができる。
【0059】
(2)上述の紙搬送装置40は、連続薬袋用紙90Aが搬送されるガイド部30に三角形形状の段差33を設けるという簡単な構造で、連続薬袋用紙90Aの膨らみである凸部95bを矯正することができる。
【0060】
以上、本発明の実施例について説明したが、上記実施例に対しては、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で様々な変形を加えることができる。例えば上記実施例以外の変形例は、以下の通りである。
【0061】
(第1変形例)
上記実施例で説明した段差33の形状や段差の高さは、例示でありこれに限定されない。記録媒体としての連続帳票Rのサイズや構成されるシートの種類によって適宜変更することができる。また、記録媒体として連続帳票Rが適用される場合を例にとり説明しているがこれに限定されない。薬袋用紙90のような単票用紙であってもよい。また、印刷装置として、インクジェットプリンター100を例にとり説明したが、これに限定されない。プリンターは、ドットインパクトプリンターであってもよいし、ソリッドフォントタイプのインパクトプリンターであってもよいし、サーマルプリンターであってもよい。
【符号の説明】
【0062】
10…ケース、20…インク供給機構、25…印刷機構、26…インクジェットヘッド、27…ノズル、30…ガイド部、31…下ガイド、32…上ガイド、33…段差、40…紙搬送装置、41…紙搬送経路、43…第1搬送機構、44…トラクター、53…第2搬送機構、55…第1紙送りローラー、58…第1紙押えローラー、60…キャリッジ送り機構、63…第3搬送機構、70…動力伝達機構、79…検出部、80…制御装置、81…制御部、82…ヘッドドライバー、84…モータードライバー、90…薬袋用紙、90A…連続薬袋用紙、100…インクジェットプリンター、110…プリンター本体、A…印刷位置、R…連続帳票。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される連続帳票に印刷ヘッドを用いて情報を印刷する印刷装置の紙搬送装置であって、
前記印刷ヘッドが配置される領域に、前記連続帳票を搬送する紙搬送機構と、
前記紙搬送機構によって搬送される前記連続帳票に面する2つのガイド面を有するガイド部と、を有し、
前記2つのガイド面の少なくとも一方に、前記連続帳票側に突出するとともに、平面視において、紙搬送方向の上流側を頂点とし、下流側にいくに従って前記連続帳票との接触範囲が徐々に大きくなる段差面を備えることを特徴とする紙搬送装置。
【請求項2】
前記段差面は、前記ガイド部の前記2つのガイド面のうち、前記連続帳票の印刷面に対向する前記ガイド面に設けられることを特徴とする請求項1に記載の紙搬送装置。
【請求項3】
前記連続帳票は、2つ以上のシートによって構成され、紙幅方向の両端が糊付けされることを特徴とする請求項1または2に記載の紙搬送装置。
【請求項4】
前記連続帳票は、2つ以上の異なる材質のシートによって構成され、紙幅方向の両端が糊付けされることを特徴とする請求項1または2に記載の紙搬送装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の紙搬送装置と、
前記紙搬送装置によって搬送される連続帳票にインク滴を吐出する印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドを搭載するキャリッジと、
前記キャリッジを、前記紙搬送装置による紙搬送方向と直交する方向に往復移動するキャリッジ移動機構と、を有する印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−56224(P2012−56224A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202775(P2010−202775)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】