説明

紙片付き印刷物の製造方法

【課題】見開くことができる紙片付き印刷物を生産効率よく製造し、しかも、横型に比べて視認性のよい縦型の紙片付き印刷物を得る。
【解決手段】連続用紙Aを搬送しながら、広幅の2つの連続体1,2と狭幅の1つの帯状体3とに3分割し、連続体2に帯状体3を重ねて接着糊で貼り合わせて二重領域4を形成し、次いで、2つの連続体1,2のうちのいずれかの面に対し、最終的に紙片部分10の外に位置する貼合せ領域5〜8と、最終的に紙片部分10の中に位置する仮止め領域11,12とに剥離糊を塗布してから、連続体1,2を重ね合わせて両者を貼り合わせた後、二重領域4に紙片部分10を区画するハーフカットを形成する。連続工程の搬送途中で折曲げ工程を行う必要がなく、見開いてから紙片部分を剥がして使用できる印刷物を生産効率を上げて製造することができる。しかも、横型に比べて視認性のよい縦型の紙片付き印刷物を製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、葉書、チケット、クーポン券などの紙片が切離し可能に一体化してなる印刷物の技術分野に属し、例えば、周囲に切込みのある葉書部分を備えたチラシなどの紙片付き印刷物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、広告の一手段として、全国紙等の新聞に折込みチラシを挟んで配達することが行われている。そして、例えば広告を見てすぐに応募したり資料請求が行えるようにとの観点から、切取り可能な葉書部分を一部に備えた印刷物が利用されており、それらの中でも、広告量の多い見開き状態とすることができるタイプであって、かつ葉書の付いたタイプの印刷物が知られている(例えば、特許文献1〜3等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3096910号公報
【特許文献2】特開2005−238503号公報
【特許文献3】特開2006−62131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような見開きが可能な紙片付き印刷物は、所定幅の連続用紙を搬送しながら、その搬送途中において接着糊や剥離糊の糊塗布工程、各種折り工程等を連続して行うというラインで製造されており、このうち糊塗布工程は、搬送方向に配置された糊付けローラにより行われている。したがって、例えば接着糊で貼着した境界部分の両側を見開くような印刷物は、長方形の短辺側が糊付けされ、その両側で見開くようになったいわゆる横型の印刷物になる。
【0005】
ところが一方では、通常の本や書類のように、縦長のものを左右に開く方が見やすいという視認性の観点から、長方形の長辺側を境にその両側で見開くようになった縦型の紙片付き印刷物に対する要望がある。また、見開きの紙片付き印刷物を製造するときに、連続用紙の搬送途中において、連続用紙を折り曲げて貼り合わせる工程があり、この工程で折曲げが失敗して生産性を下げてしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、上記のような背景や要望に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、見開くことができる紙片付き印刷物の生産工程で生じる連続用紙の折曲げ工程をなくして生産効率を上げる製造方法を提供し、さらには、見開くことができる紙片付き印刷物であって、横型に比べて視認性のよい縦型の紙片付き印刷物を得るための製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る紙片付き印刷物の製造方法は、印刷が施された所定幅の連続用紙を搬送しながら、見開きが可能で紙片部分の付いた印刷物を製造する方法であって、少なくとも次の工程を順次行うことを特徴とする。
(1)連続用紙を搬送方向に三分割することにより、広幅の2つの連続体と狭幅の1つの帯状体とに分断する切断工程。
(2)一方の連続体の一側端部に帯状体を重ねて接着糊で貼り合わせることにより、一方の連続体に紙片部分を区画するための二重領域を形成する重ね合わせ工程。
(3)2つの連続体のうちのいずれかの面に対し、最終的に前記紙片部分の外に位置する貼合せ領域と、最終的に少なくとも前記紙片部分の中に位置する仮止め領域とに剥離糊を塗布する糊塗布工程。
(4)一方の連続体と他方の連続体とを重ね合わせ、糊塗布工程で塗布したすべての剥離糊により両者を貼り合わせて連続貼合体を形成する貼着工程。
(5)連続貼合体における二重領域に前記紙片部分を区画するハーフカットを形成する抜き加工工程。
(6)連続貼合体を横方向に順次切断して個々の印刷物とする天地切断工程。
【0008】
そして、糊塗布工程において、最終的に印刷物を見開いたときに境となる長辺側の一辺に沿うライン部を少なくとも貼合せ領域の一部にすることが好ましい。
【0009】
また、抜き加工工程と天地切断工程の間で、連続貼合体におけるサイドを仕上げのために切断するサイド切断工程を行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造方法によれば、印刷された所定幅の連続用紙を搬送しながら、広幅の2つの連続体と狭幅の1つの帯状体とに分断し、一方の連続体の一側端部に帯状体を重ねて接着糊で貼り合わせることにより、一方の連続体に紙片部分を区画するための二重領域を形成し、次いで、2つの連続体のうちのいずれかの面に対し、最終的に前記紙片部分の外に位置する貼合せ領域と、最終的に少なくとも紙片部分の中に位置する仮止め領域とに剥離糊を塗布する糊塗布工程を行ってから、一方の連続体と他方の連続体とを重ね合わせ、糊塗布工程で塗布したすべての剥離糊により両者を貼り合わせて連続貼合体を形成する貼着工程を行った後、連続貼合体における二重領域に紙片部分を区画するハーフカットを形成する抜き加工を行うようにしたので、連続工程の搬送途中で折曲げ工程を行う必要がなくなることから、見開いてから紙片部分を剥がして使用できる印刷物を生産効率を上げて製造することができる。
【0011】
そして、糊塗布工程において、最終的に印刷物を見開いたときに境となる長辺側の一辺に沿うライン部を少なくとも貼合せ領域の一部にすることにより、上記の効果を奏することに加え、横型に比べて視認性のよい縦型の紙片付き印刷物を製造することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る紙片付き印刷物の製造方法に使用する連続用紙の一例を示す平面図である。
【図2】連続用紙を切断工程を経た状態で示す平面図である。
【図3】連続用紙を重ね合わせ工程を経た状態で示す平面図である。
【図4】二重領域を形成した一方の連続体における右サイドを切断した状態を示す平面図である。
【図5】二重領域を形成した一方の連続体に糊塗布工程を行った状態を示す平面図である。
【図6】一方の連続体と他方の連続体を貼り合わせて連続貼合体とした状態を示す平面図である。
【図7】図6の連続貼合体に抜き加工工程を行った状態を示す平面図である。
【図8】図7の連続貼合体にサイド切断工程を行った状態を示す平面図である。
【図9】図8の連続貼合体に天地切断工程を行って得られた紙片付き印刷物の表裏を示す平面図である。
【図10】図5に示す剥離糊の塗布パターンの変形例を例示した説明図である。
【図11】図5に示す剥離糊の塗布パターンの別の変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。ここでは、紙片付き印刷物として、新聞の折込み広告に用いられる葉書付きチラシを製造する場合を例に挙げて説明する。
【0014】
図1は葉書付きチラシの製造に使用する連続用紙Aを搬送方向に4区画分だけ図示したものである。すなわち、図示した4区画の一つずつがそれぞれ一つの葉書付きチラシに対応している。
【0015】
この連続用紙Aは既に所定の印刷が施された状態のもので、図の矢印で示す方向に搬送されながらインラインで各種の加工が施され、最終的に見開きが可能で葉書部分の付いたチラシが製造される。この図1に描かれた切断線a〜hは、連続用紙Aに対して順次行われる工程を説明する際に使用するものであり、以下に葉書付きチラシの製造方法の工程について順を追って説明する。
【0016】
まず、連続用紙Aをスリッターに通し、図1の切断線a,bで示すところを切断することで、連続用紙Aを搬送方向に三分割することにより、図2に示すように、広幅の2つの連続体1,2と狭幅の1つの帯状体3とに分断する。
【0017】
続いて、一方の連続体2の一側端部に帯状体3を重ねて接着糊で貼り合わせることにより、図3に示すように、一方の連続体2に葉書部分を区画するための二重領域4を形成する。この二重領域4は、葉書としての厚みを確保するためのものである。そして、二重領域4を形成した一方の連続体2をシェアスリッターに通し、図3で示す重なった切断線c,dのところを切断することで、図4に示すように、一方の連続体2の右サイドをあらかじめ化粧断ちする。
【0018】
このように、一方の連続体2に帯状体3を貼り合わせて二重領域4を形成した後、その一方の連続体2を2台の糊コーターに連続して通し、最終的に葉書部分10の外に位置する貼合せ領域と、最終的に葉書部分10の中に位置する仮止め領域とに剥離糊を塗布する糊塗布工程を行う。具体的には、図5に示すように、一方の連続体2に対し、最終的に印刷物を見開いたときに長辺側となる一辺に沿う横方向のライン部5にスポンジ版でパターン状に剥離糊を塗布するとともに、最終的に印刷物のもう一方の長辺側となる横方向のライン部6と、最終的に印刷物の短辺側となる2つの縦方向のライン部7,8と、最終的に葉書部分10となる区画の中の上下2箇所の仮止め領域11,12とに樹脂版でパターン状に剥離糊を塗布する。
【0019】
これにより、最終的に印刷物を見開いたときに境となる横方向のライン部5には剥がしにくいように多めに剥離糊が塗布され、横方向のライン部6と、2つの縦方向のライン部7,8と、葉書部分10の仮止め領域11,12には剥がしやすいように少なめに剥離糊が塗布される。このとき、図示のように、右下コーナー部に剥離糊の未塗布部分を設けておくことで、見開き時の取っ掛かりを形成する。
【0020】
なお、ここでは、剥離糊を塗布する糊塗布工程は、二重領域4を形成した一方の連続体2における帯状体3を貼り合わせた面に対して行ったが、二重領域4がない他方の連続体1に同様なパターンで剥離糊を塗布するようにしても構わない。
【0021】
このように糊塗布工程を終えた後、一方の連続体2と他方の連続体1とを重ね合わせ、糊塗布工程で塗布したすべての剥離糊により、図6に示すように、両者を貼り合わせて連続貼合体Bを形成する。
【0022】
次いで、図6に示す連続貼合体Bをダイカッターに通して抜き加工工程を行い、図7に示すように、連続貼合体Bにおける二重領域4に葉書部分10を区画するハーフカットαを形成する。このとき、必要に応じて、横方向のライン部5に隣接してミシン目線βを形成する。このミシン目線βを設けておくと、最終的な印刷物において見開きが容易になるとともに、見開いたページを簡単に破ることもできる。なお、このようなミシン目線βは、抜き加工工程の前にパーフォレーターを用いて形成するようにしても構わない。
【0023】
続いて、図7に示す連続貼合体Bをシェアスリッターに通し、図7の重なった切断線e,fのところで切断することにより、図8に示すように、連続貼合体Bにおける左サイドを仕上げのために切断する。
【0024】
ここで、連続用紙Aを上記のように搬送方向に三分割することなく、後工程で連続体1と連続体2を折り曲げて貼り合わせることで連続貼合体とし、さらに、サイドトリムを通して短辺側の両端を切断すれば図8に示す連続貼合体Bと同様のものを作成することができる。しかしながら、このような方法を採用すると、連続体1と連続体2を折り曲げて貼り合わせる工程で折曲げが失敗する場合があり、生産効率が下がってしまう。そこで、本実施例のように予め連続用紙Aを搬送方向に三分割し、後工程で貼り合わせるようにすれば、折曲げ工程による不具合が発生しないために生産効率の低下を防ぐことができる。
【0025】
上記のサイド切断工程を行った図8に示す連続貼合体Bをロータリーカッターに通して天地切断工程を行う。すなわち、図8に示す状態の連続貼合体Bを横方向の切断線g,hのところで順次切断して天地を仕上げる。これにより最終的に図9に示す葉書付きチラシCが得られる。
【0026】
この葉書付きチラシCは、図9(a)の右下コーナー部に剥離糊の未塗布部分があるので、この部分を取っ掛かりとして開くことができる。すなわち、取っ掛かりからめくって長辺側の1辺(横方向のライン部6)と短辺側の2辺(縦方向のライン部7,8)にある剥離糊を剥がし、残りの長辺側の1辺(横方向のライン部5)の貼着部分を境としてその両側を縦型に見開くことができる。このとき、残りの長辺側の1辺は剥離糊の量が多くて剥がれにくくなっているので、見開いても両方のページが外れることがない。また、残りの長辺側の1辺にはミシン目線βがあるので、チラシCは見開きやすくなっており、必要に応じてこのミシン目線βのところで破断することもできる。
【0027】
そして、表側の用紙を剥がして見開いた状態では、裏側の用紙の方に葉書部分10が仮止め領域11,12にて剥離糊で貼着された状態で残るので、この葉書部分10を剥がして応募用や注文用の葉書として利用することができる。
【0028】
図10は図5に示す剥離糊の塗布パターンの変形例を例示した説明図であり、図11は図5に示す剥離糊の塗布パターンの別の変形例を示す説明図である。すなわち、剥離糊の塗布位置は、図5に示す塗布パターンに限定されるものではなく、図10(a)〜(c)に例示するようパターンで塗布してもよいし、さらには、図11に示すようなパターンで塗布してもよい。
【0029】
図10(a)は横方向のライン部6を省略したものであり、図10(b)は縦方向のライン部7,8を省略したものであって、貼り合わせるといずれも縦型の紙片付き印刷物となり、剥離糊のない辺から手を入れて開けやすくなっている。このように、縦型にするのであれば、見開いたときに印刷物の境になる長辺側の一辺に多めの剥離糊を塗布するのが好ましい。図10(c)は四隅のコーナー部9を貼合せ領域とし、そこに剥離糊を塗布したパターンであり、葉書部分10の有る方と無い方の2枚の用紙に簡単に分離することができる。
【0030】
図11は最終的に葉書部分10となる区画の境界線を跨ぐ帯状部分を仮止め領域13とし、そこに樹脂版でパターン状に剥離糊を塗布したものである。このようなパターンで仮止め領域13を設けておくことにより、葉書部分10を取り囲む部分が誤って剥がれるのが防止される。
【0031】
以上、本発明を実施するための形態について詳細に説明してきたが、本発明による紙片付き印刷物の製造方法は、上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは当然のことである。
【0032】
例えば、上記の例では、二重領域を形成する帯状体は、最終的に印刷物の内面側に位置するようになっているが、外面側に位置させることも勿論可能である。いずれにするかは、デザイン、見栄え等に応じて適宜選択すればよいものである。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の紙片付き印刷物の製造方法は、上記した実施形態のような葉書付きチラシを製造する場合のほかに、チケット、クーポン券などの紙片を分離して使用するような印刷物にも適用が可能である。
【符号の説明】
【0034】
A 連続用紙
B 連続貼合体
C 葉書付きチラシ(紙片付き印刷物)
1 他方の連続体
2 一方の連続体
3 帯状体
4 二重領域
5,6 横方向のライン部(貼合せ領域)
7,8 縦方向のライン部(貼合せ領域)
9 コーナー部(貼合せ領域)
10 葉書部分
11,12 仮止め領域
13 仮止め領域
a〜h 切断線
α ハーフカット
β ミシン目線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷が施された所定幅の連続用紙を搬送しながら、見開きが可能で紙片部分の付いた印刷物を製造する方法であって、少なくとも次の工程を順次行うことを特徴とする紙片付き印刷物の製造方法。
(1)連続用紙を搬送方向に三分割することにより、広幅の2つの連続体と狭幅の1つの帯状体とに分断する切断工程。
(2)一方の連続体の一側端部に帯状体を重ねて接着糊で貼り合わせることにより、一方の連続体に紙片部分を区画するための二重領域を形成する重ね合わせ工程。
(3)2つの連続体のうちのいずれかの面に対し、最終的に前記紙片部分の外に位置する貼合せ領域と、最終的に少なくとも前記紙片部分の中に位置する仮止め領域とに剥離糊を塗布する糊塗布工程。
(4)一方の連続体と他方の連続体とを重ね合わせ、糊塗布工程で塗布したすべての剥離糊により両者を貼り合わせて連続貼合体を形成する貼着工程。
(5)連続貼合体における二重領域に紙片部分を区画するハーフカットを形成する抜き加工工程。
(6)連続貼合体を横方向に順次切断して個々の印刷物とする天地切断工程。
【請求項2】
糊塗布工程において、最終的に印刷物を見開いたときに境となる長辺側の一辺に沿うライン部分を少なくとも貼合せ領域の一部にすることを特徴とする請求項1に記載の紙片付き印刷物の製造方法。
【請求項3】
抜き加工工程と天地切断工程の間で、連続貼合体におけるサイドを仕上げのために切断するサイド切断工程を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の紙片付き印刷物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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