説明

紙管及び被覆材

【課題】紙管に巻き回すシート状製品に紙片が混入する不具合の発生を防ぐようにしつつ、前記紙管を再利用することないし廃紙としてのリサイクルに供することの便を図る。
【解決手段】紙管Pに、全体が紙製で筒状をなす紙管本体1と、無延伸の樹脂製シートにより形成している基材21及び前記基材21の一方の面に形成した粘着材層22を有するとともに粘着材層22を紙管本体1の少なくとも端部に対向させた状態で紙管本体1の端部を略全周にわたって被覆する被覆材2とを具備する構成を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体が紙製で筒状をなす紙管本体を有しシート状の製品を巻き回すための芯材として用いられる紙管、及びこの紙管の少なくとも端部を被覆する被覆材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シート状の製品を出荷する場合には、筒状をなす管状の芯材に巻き回しておくことが広く行われている。また、このような芯材に前記シート状の製品を巻き回す際には、中空部にチャッキング治具等の軸支用保持具を挿入し、この芯材の軸心を中心に回転可能に支持させるようにすることが多い。さらに、このような軸支用保持具は、この芯材の内径よりも大きな最大径を有するテーパー形状であるか、または芯材の内部に挿入された場合に一部が膨張してこの芯材の内径よりも大きな最大径を有するように構成していて、芯材に圧着することにより該芯材を変形させて該芯材との間に滑りが発生しないように保持していることが多い。
【0003】
しかして、このような芯材の全体を紙により構成した場合、前記軸支用保持具を芯材に圧着させて芯材を変形させた際に、変形した部位から紙片が発生し、このような芯材に巻き回すシート状の製品に混入することがある。さらに、このような軸支用保持具により芯材を保持した状態で芯材を回転させシート状の製品を巻き回す工程中に芯材と軸支用保持具との間の相対位置のズレが発生した際に、これらの間の摩擦に伴い変形部位から紙片が発生し周囲に飛散することがある。しかし、シート状の製品が、半導体工場内において用いるもの等、クリーンルーム内で巻き回し作業を行うことが必要な種類の製品である場合、紙片が混入すると商品としての価値が損なわれる。そこで、このような芯材の全体を樹脂により構成することや、紙にコーティングを施したものにより構成することや、紙管の端面に樹脂含浸処理を行い構成することが考えられている。(例えば、特許文献1、2、及び3を参照。)
【特許文献1】特開2002−384140号公報
【特許文献2】実開平6−20369号公報
【特許文献3】特開2005−231896号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかして、前記特許文献1記載のもののように芯材の全体を樹脂により構成した場合、芯材の製造コストが紙製の芯材よりも高く、また、芯材の再利用を行うにはこの芯材の洗浄を行う必要があるので、芯材の洗浄コストも発生する。
【0005】
一方、前記特許文献2記載のもののように紙に樹脂をコーティングして芯材を構成した場合、あるいは前記特許文献3記載のもののように紙管の端面に樹脂含浸処理を行い芯材を構成した場合、芯材が変形した部分の樹脂コーティングが破損し、又は樹脂を含浸させた部分が破損して、樹脂を含浸させていない紙製の部分が外部にさらされてしまうことがあり、このような破損部分と前記軸支用保持具とが再び圧着すると、この部分から紙片が飛散するおそれがあるのでそのまま再利用するには難がある。さらに、コーティングした樹脂を紙製部分と分離すること、又は含浸させた樹脂を紙から分離することが困難であるので、このような芯材を廃紙としてリサイクルに供することもまた困難である。
【0006】
本発明は、以上に述べた課題を解決すべく構成するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明に係る紙管は、全体が紙製で筒状をなす紙管本体と、無延伸の樹脂製シートにより形成している基材及び前記基材の一方の面に形成した粘着材層を有するとともに粘着材層を紙管本体の少なくとも端部に対向させた状態で紙管本体の端部を全周にわたって被覆する被覆材とを具備することを特徴とする。
【0008】
このような紙管を採用すれば、前記紙管本体の中空部に、この紙管を取り扱うべくチャッキング治具等の軸支用保持具を挿入した際には、前記紙管本体が前記軸支用保持具に圧着して塑性変形しこの部位から紙片が発生することがあるが、紙管本体の両端部を被覆材により略全周にわたって被覆していて、しかもこの被覆材の基材を無延伸の樹脂製シートにより形成しているとともにこの被覆材の前記粘着材層側を紙管本体の端部に対向させているので、被覆材がつれて変形しつつて粘着材層が紙管本体に圧着ないし接近する。従って、紙片は前記粘着材層に吸着され、紙片が周囲に飛散しこの紙管に巻き回すシート状製品に紙片が混入する不具合の発生を防ぐことができる。さらに、前記粘着材層を有する被覆材により紙管本体の端部を被覆させたまま紙管にシート状の製品を巻き回して該製品の需要先に出荷すれば、輸送の際に摩擦により発生する紙粉も前記粘着材層に吸着させることができ、輸送の際に紙粉が前記製品に混入することを防ぐこともできる。しかも、全体が紙製で筒状をなす紙管本体と別に、前記粘着材層を有する被覆材を具備させているので、前記被覆材を交換すれば前記紙管本体は洗浄等の手間を掛けることなくそのまま再利用することができ、さらに前記紙管本体を廃紙としてリサイクルに供することもできる。
【0009】
このような紙管の構成に係る効果をより好適に得ることができる構成として、前記紙管本体の両端部の中空部に、前記紙管本体の内径よりも大きな最大径を有するテーパー状のチャッキング治具を挿入して利用するものが挙げられる。このようなものであれば、前記テーパー状のチャッキング治具の挿入を受けて紙管本体の端部が変形するが、上述したように被覆材の粘着材層を紙管本体の少なくとも端部に対向させた状態で紙管本体の端部を略全周にわたって被覆するようにしているので、この変形した部位から発生する紙片を前記粘着材層により吸着して紙片の飛散を抑えることができるからである。
【0010】
さらに、前記基材を、オレフィン系樹脂を利用して形成しているものであれば、基材が塩素を含まないので、この基材を溶解して再利用することや焼却処分することを、環境上の大きな問題を発生させることなく容易に行うことができる。
【0011】
また、本発明に係る被覆材は、全体が紙製で筒状をなす紙管の端部を被覆可能なものであって、無延伸の樹脂製シートにより形成している基材及び前記基材の一方の面に形成した粘着材層を有するとともに、粘着材層を前記紙管の少なくとも端部に対向させた状態で紙管の端部を全周にわたって被覆可能であることを特徴とする。
【0012】
このような被覆材を採用すれば、従来の紙管と組み合わせることにより、上述した紙管と同様の効果を得ることができる。すなわち、従来の紙管の両端部をこの被覆材により被覆し、前記紙管本体にチャッキング治具等の軸支用保持具を挿入して軸支用保持具を紙管に圧着させた際には、紙片をこの被覆材の粘着材層に吸着させることにより、紙片が周囲に飛散しこの紙管に巻き回すシート状製品に紙片が混入する不具合の発生を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る紙管又は被覆材によれば、従来の紙管、ないし従来の紙管と同様の構成を有する紙管本体の両端部を被覆材により被覆し、前記従来の紙管ないし前記紙管本体に軸支用保持具を挿入して前記紙管ないし前記紙管本体に圧着させた際には、紙片をこの被覆材の粘着材層に吸着させることにより、紙片が周囲に飛散しこの紙管ないし紙管本体に巻き回すシート状製品に紙片が混入する不具合の発生を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の第一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0015】
本実施形態に係る紙管Pは、図1に斜視図、図2に正面図、図3に図2におけるX−X断面図、図4に図3におけるY−Y断面図をそれぞれ示すように、全体が紙製で筒状をなす紙管本体1と、紙管本体1の端部を全周にわたって被覆する被覆材2とを具備し、シート状の製品Sを巻き回すための芯材として用いられる。
【0016】
前記紙管本体1は、この種の紙管として従来用いられるものと同様の構成を有する。すなわち、紙テープを螺旋状に巻き、複数層に積層して形成している。
【0017】
一方、前記被覆材2は、前記図1及び図2に示すように、また、図5に紙管Pの分解斜視図を示すように、この紙管本体1の端部に着脱可能に取り付けられ、前記図3及び図4に示すように、無延伸の樹脂製シートにより形成している基材21と、前記基材21の一方の面に形成した粘着材層22と具備するとともに、粘着材層22を紙管本体1の少なくとも端部に対向させた状態で紙管本体1の端部を略全周にわたって被覆可能である。そして、本実施形態ではこの被覆材2の一端部を、前記紙管本体1の所定箇所に固定して取り付けるようにしている。なお、図5では、この被覆材2の一部を破断して示している。
【0018】
さらに詳述すると、前記基材21は、無延伸の樹脂製シート、具体的にはオレフィン系樹脂により形成したシートを所定の形状に切断して形成している。そして、実際の使用の際には、紙管本体1の両端縁をこの被覆材2により略全周にわたって被覆させた状態にするようにしている。また、使用の際にこの被覆材2が破損する不具合の発生を防ぐべく、また、紙管Pの使用の際にこの紙管Pを保持する後述するテーパー状のチャッキング治具Cとの間の滑りの発生を防ぐべく、この基材21の厚さ寸法は、20μm〜250μmの範囲に設定している。
【0019】
一方、前記粘着材層22は、例えばアクリル系粘着剤を前記基材21の一方の面に塗布して形成している。また、この粘着材層22の粘着強度は、本実施形態では紙管1の再利用の便を図るべく、この被覆材2を前記紙管本体1から剥離させた際にこの被覆材2に紙管本体1から剥がし取られた紙片が付着しない程度に設定している。
【0020】
そして、この紙管Pは、前記図5に示すように、紙管本体1の内径d1よりも大きな最大径d2を有するテーパー状のチャッキング治具Cを紙管Pの中空部1sに挿入し、このチャッキング治具Cに紙管Pの両端を支持させ、紙管本体1を軸として回転可能に支持させた状態で、この紙管Pにシート状の前記製品Sを巻き取る、あるいはシート状の前記製品Sを巻き出す際の芯材として使用する。前記チャッキング治具Cは、本実施形態では正八角形状の断面を有し、頂点部分が紙管Pに当接して紙管本体1を塑性変形させつつ紙管を保持する。なお、前記チャッキング治具Cは、紙管本体を保持する軸支用保持具であり、シャフトレス式巻き取り装置のアタッチメントとも呼ばれる部材である。
【0021】
前記チャッキング治具Cを紙管Pの中空部1sに挿入し、紙管本体1を塑性変形させた際、紙管本体1の塑性変形した部位からは紙片が発生する。しかし、紙管Pの端部は被覆材2により略全周にわたって被覆していて、基材21は無延伸のオレフィン系樹脂により形成したシートにより形成しているので、被覆材2もつれて変形する。しかも被覆材2の粘着材層22を紙管本体1に対向させているので、この粘着材層22が紙管本体1に圧着し、発生した紙片は前記粘着材層22により吸着される。すなわち、紙片を粘着剤層22に吸着させることにより、紙片が周囲に飛散して製品Sに付着しないようにしている。
【0022】
本発明に係る紙管Pは、以上に述べたように、全体が紙製で筒状をなす紙管本体1と、無延伸の樹脂製シートにより形成している基材21及び前記基材21の一方の面に形成した粘着材層22を有するとともに粘着材層22を紙管本体1の少なくとも端部に対向させた状態で紙管本体1の端部を全周にわたって被覆する被覆材2とを具備するので、上述したように、紙管本体1の塑性変形した部位から発生した紙片が前記粘着材層22に吸着され、紙片が周囲に飛散しロール状に巻き回した前記製品Sに紙片が混入する不具合の発生を防ぐことができる。さらに、前記粘着材層22を有する被覆材2により紙管本体1の端部を被覆させたまま紙管1に前記製品Sをロール状に巻き回して前記製品Sの需要先に出荷すれば、輸送の際に摩擦により発生する紙粉も前記粘着材層22に吸着させることができ、輸送の際に紙粉がロール状に巻き回した前記製品Sの端面又は表面に付着して混入することを防ぐこともできる。しかも、全体が紙製で筒状をなす紙管本体1と別に、前記粘着材層22を有する被覆材2を具備させているので、前記被覆材2を交換すれば前記紙管本体1は洗浄等の手間を掛けることなくそのまま再利用することができ、さらに前記紙管本体1を廃紙としてリサイクルに供することもできる。
【0023】
さらに、前記紙管本体1の両端部の中空部1sに、前記紙管本体1の内径d1よりも大きな最大径d2を有するテーパー状のチャッキング治具Cを挿入して利用するので、このチャッキング治具Cの挿入を受けて紙管本体1の端部が塑性変形し、このチャッキング治具Cにより紙管Pを確実に保持できるようにしつつ、上述したような被覆材2の粘着材層22を紙管本体1の少なくとも端部に対向させた状態で紙管本体1の端部を略全周にわたって被覆することによる効果を得ることができる。
【0024】
加えて、前記基材21を、オレフィン系樹脂を利用して形成しているので、基材21は塩素を含まず、この基材21を溶解して再利用することや焼却処分することを、環境上の大きな問題を発生させることなく容易に行うことができる。
【0025】
なお、本発明は以上に述べた実施の形態に限られない。
【0026】
例えば、上述した被覆材2のみを用意し、従来この種の用途に用いられている紙管の端部を略全周にわたって被覆して上述した紙管Pと同様のものを形成した上で、被覆材2に端部を被覆させた紙管を上述した紙管Pと同様に用いるようにしてもよい。
【0027】
また、紙管本体の少なくとも端部を被覆材により略全周にわたって被覆し、粘着材層を紙管本体に対向させるようにすれば、チャッキング治具は必ずしも正八角形状の断面を有するものである必要はなく、他の多角形状の断面や円錐状の形状を有するチャッキング治具であっても、最大径が紙管本体の内径よりも大きなテーパー状のものであれば紙管本体を塑性変形させて保持できるようにしつつ、紙片の製品への混入を粘着材層に紙片を吸着させることにより防ぐことができる。さらに、テーパー状のチャッキング治具に限らず、非使用時には全体が紙管の内径よりも小さな径を有し、紙管内部に挿入した後に一部が膨張して該紙管の内径よりも大きな最大径となり該紙管に圧着して該紙管を塑性変形させることにより該紙管を保持可能なチャッキング治具を軸支用保持具として使用する場合であっても、該紙管の端部及び前記チャッキング治具に圧着する部位を上述した被覆材2により被覆しておけば、上述した実施形態と同様に、塑性変形した部位から発生した紙片が前記粘着材層22に吸着されるので、紙片が周囲に飛散することによりロール状に巻き回した製品Sに紙片が混入する不具合の発生を防ぐことができる。
【0028】
加えて、紙管の全長にわたってエアシャフトを挿入し、エアシャフトから径方向にラグを突出させて紙管に圧着させる等の方法により紙管に圧着させてこのエアシャフトを軸支用保持具として使用する態様においても、このような紙管の内面全域、及び端部の外面を全周にわたって上述した被覆材2と同様の構成を有する被覆材により、粘着材層を紙管に対向させた状態で被覆してからエアシャフトを挿入するようにすれば、エアシャフトとの摩擦により発生する紙片を前記粘着材層に吸着させて、このような紙管に巻き回すシート状の製品への紙片の混入を防ぐことができる。
【0029】
そして、被覆材は、予め粘着材層を内面に配した円筒状に形成し、一端部を紙管本体に固定し、他端部を紙管本体の中空部に挿入する取り付け方法を採用するようにしてもよい。
【0030】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態に係る紙管を示す斜視図。
【図2】同実施形態に係る紙管を示す正面図。
【図3】図2におけるX−X断面図。
【図4】図3におけるY−Y断面図。
【図5】同実施形態に係る紙管を示す分解斜視図。
【符号の説明】
【0032】
P…紙管
1…紙管本体
2…被覆材
21…基材
22…粘着材層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体が紙製で筒状をなす紙管本体と、無延伸の樹脂製シートにより形成している基材及び前記基材の一方の面に形成した粘着材層を有するとともに粘着材層を紙管本体の少なくとも端部に対向させた状態で紙管本体の端部を略全周にわたって被覆する被覆材とを具備することを特徴とする紙管。
【請求項2】
前記紙管本体の両端部の中空部に、前記紙管本体の内径よりも大きな最大径を有するテーパー状のチャッキング治具を挿入して利用することを特徴とする請求項1記載の紙管。
【請求項3】
前記基材を、オレフィン系樹脂を利用して形成していることを特徴とする請求項1又は2記載の紙管。
【請求項4】
全体が紙製で筒状をなす紙管の端部を被覆可能なものであって、無延伸の樹脂製シートにより形成している基材及び前記基材の一方の面に形成した粘着材層を有するとともに、粘着材層を前記紙管の少なくとも端部に対向させた状態で紙管の端部を全周にわたって被覆可能であることを特徴とする被覆材。
【請求項5】
前記基材を、オレフィン系樹脂を利用して形成していることを特徴とする請求項4記載の被覆材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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