説明

紙粉及びダスティングを減少させるための添加物

本発明は、紙粉及びダスティングを減少させるのに有用な新規な製紙用組成物、製紙プロセスの間に所定のホスフェートエステルを繊維パルプに加える、紙粉及びダスティングを減少させる方法及びホスフェートエステルを含む、紙粉及びダスティングを減少させるための新規な添加物組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙粉及びダスティングを減少させるのに有用な新規な製紙用組成物、製紙プロセスの間に所定のホスフェートエステルを繊維パルプに加える、紙粉及びダスティングを減少させる方法及び使用する新規な添加物組成物に関する。
【0002】
紙粉及びダスティングは、紙表面における繊維の剥離に関する。それは、製紙における乾燥段階で並びに印刷装置のような紙を取り扱うために使用される機械及び装置において問題を引き起こす。例えば、印刷の間に紙表面から剥がれる繊維は、ブランケット、プレート、及びローラーのようなプレス上に繊維の蓄積を引き起こす。紙粉及びダスティングは、幾種かの印刷器の心配のたねになり得る;繊維は、インキ移動を妨げ、ブランケットを洗浄するためにプレスを止めることは、費用がかかる。
【0003】
紙粉及びダスティングを減少させるのに、機械的な方法及び化学的な添加物が通常、使用される。例えば、乾燥機シリンダー上のTeflon(登録商標)コーティングは、その上の繊維の付着を相当に低減させるが、Teflonは、絶縁材であるので、熱伝導もまた減少させる。その上に、それは、かき傷に敏感でありかつ急速に劣化する。印刷する間に、水流量を増大しかつブランケットのプレス速度を低減させることは、紙粉及びダスティングを減少させるが、それは、また、生産レベルを低下させる。紙粉及びダスティングの問題を解決するために、米国特許第6,398,912号は、でんぷんから作られる添加物について記載し、一方、米国特許第6,565,646号は、クレーから作られる添加物について記載している。これらの公知の解決法にもかかわらず、紙粉及びダスティングは重大な問題のままであり、製紙用の新規な添加物についての要求が存在する。
【0004】
本発明の目的は、紙粉及びダスティングを減少させる製紙用の新規な組成物を提供することである。
【0005】
本発明の目的はまた、少なくとも一種のホスフェートエステルを含む製紙用の新規な紙粉減少用組成物であって、これを繊維パルプに配合した後に、ウエブ形成する組成物を提供することである。
【0006】
本発明の目的はまた、紙保留及び排水並びにすべり角に影響を与えることのない、製紙用の新規な紙粉減少用添加物組成物も提供するにある。
【0007】
上記やその他の目的は、製紙において紙粉及びダスティングを減少させるのに使用するための、ホスフェートエステルを含む繊維パルプ組成物を提供することによって達成される。本発明に従う添加物組成物は、該ホスフェートエステルを含み、繊維パルプに加えた後にウエブ形成して紙粉及びダスティングを減少させる。本発明のホスフェートエステル成分は、また、リン酸の有機エステル又はアルコールホスフェートとも呼ぶことができ、アミン又はアルカリもしくはアルカリ土類に由来する塩基で中和してもよい。そのようなホスフェートエステル又は中和されたホスフェートエステルは、界面活性剤としての使用及びその他の用途用に市販されている。
【0008】
本発明の別の態様は、本発明のホスフェートエステル又は中和されたホスフェートエステルを繊維パルプに加えた後に、ウエブ形成することを含む、紙粉及びダスティングを減少させる方法を含む。
【0009】
本発明のホスフェートエステルを含有する配合物、すなわち本発明の添加物組成物を繊維パルプに加えた後に、ウエブ形成することを含む、紙粉及びダスティングを減少させる代わりの方法も提供する。
【0010】
本発明に従えば、ダスティング及び紙粉を減少させるために、少なくとも一種のホスフェートエステル及び繊維パルプを含む組成物を調製した後にウエブ形成する。ホスフェートエステルは、紙繊維を共に保持する界面活性剤である。それは、下記の一般式:
O[PO(OZ)]O 又は RO[PO(OZ)]OZ
式I 式II
(式中、
は、炭素原子2〜24のアルキル鎖、又は1個以上の>NRもしくは−O−基によって中断される該アルキル鎖であり或は該アルキル又は中断されるアルキルは、1個以上の−NRもしくはOH基によって置換され、ここで、R及びRは、独立に、H、炭素原子1〜8のアルキル鎖又は1個以上の−OH基によって置換される炭素原子2〜6のアルキル鎖であり、
Zは、独立に、H又は炭素原子1〜24のアルキル鎖、又は1個以上の>NRもしくは−O−基によって中断される該アルキル鎖であり或は該アルキル又は中断されるアルキルは、1個以上の−NRもしくは−OH基によって置換され、ここで、R及びRは、独立に、H、炭素原子1〜8のアルキル鎖又は1個以上の−OH基によって置換される炭素原子2〜6のアルキル鎖であり、
或は
及びZ基の内の1個は、G基によって結合され、
―R―G―Z―
隣接する酸素及び亜リン原子と一緒に炭素原子2〜8を含有する5〜12員複素環を形成し、ここで、Gは、直接結合、酸素原子又はN−Rであり、Rは、上に記載した通りであり、並びに
は、H、アミノカチオン又はアルカリ金属及びアルカリ土類金属の群から選択される金属カチオンである)
を有する。
【0011】
ホスフェートエステルは、例えば、
が炭素原子4〜18のアルキル鎖であり、
Zは、独立に、H又は炭素原子1〜18のアルキル鎖、又は1個以上の>NRもしくは−O−基によって中断される該アルキル鎖であり或は該アルキル又は中断されるアルキルは、1個以上の−NRもしくは−OH基によって置換され、ここで、R及びRは、独立に、H、炭素原子1〜8のアルキル鎖又は1個以上の−OH基によって置換される炭素原子2〜6のアルキル鎖であり、及び
は、H、アミノカチオン又はアルカリ金属及びアルカリ土類金属の群から選択される金属カチオンである
化合物である。
【0012】
例えば、Rは、炭素原子4〜18のアルキル鎖であり、
Zは、独立に、H又は炭素原子4〜18のアルキル鎖であり、及び
は、H、炭素原子4〜18のアルキル鎖又はアミノカチオンである
【0013】
例えば、Rは、炭素原子4〜18のアルキル鎖であり、
Zは、独立に、H又は炭素原子4〜18のアルキル鎖であり、及び
は、H又はアミノカチオンである。
【0014】
及びZがG基によって結合される時は、複素環は、例えば下記式:
【化1】


(式中、n及びmは、独立に、1〜4であり、かつ表されるメチレン基の数を表し、Gは、直接結合或は−NH−、−NR、又は−O−基から選択され、ここで、Rは、上に記載した通りであり、Mは、H又はアンモニウムカチオンである)
の化合物である。
【0015】
例えば、n及びmは、共に2又は3であり、Gは、−NY−であり、ここで、Yは、H、ヒドロキシエチル又はヒドロキシプロピルであり、Mは、H又はアンモニウムカチオンである。
【0016】
アルキル鎖は、特定の数の炭素原子の直鎖又は枝分れ鎖であり、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ヘキシル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、n−トリデシル、n−テトラデシル、n−ヘキサデシル又はn−オクタデシルである。
【0017】
窒素カチオンの例は、下記である:
− 非置換のアンモニウム、
− モノ−、ジ−、もしくはトリ−C1〜4アルキルアンモニウム、3−プロピルアンモニウム、イソプロピルアンモニウム、ブチルアンモニウム、sec−ブチルアンモニウム、イソブチルアンモニウム、1,2−ジメチルプロピルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、ジプロピルアンモニウム、ジイソプロピルアンモニウム、ジブチルアンモニウム、ジイソブチルアンモニウム、ジ−sec−ブチルアンモニウム、N―メチル―ブチルアンモニウム、N―エチル―ブチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、N,N−ジメチルエチルアンモニウム、N,N−ジメチルイソプロピルアンモニウム、
【0018】
− C1〜4アルコキシ−C1〜4アルキルアンモニウム、例えば2−メトキシエチルアンモニウム、ビス(2−メトキシエチル)アンモニウム、3−メトキシプロピルアンモニウム又はエトキシプロピルアンモニウム、
【0019】
− モノ−、ジ−、もしくはトリ−(ヒドロキシ−C1〜4アルキル)アンモニウム、例えばモノ−、ジ−、もしくはトリ−エタノールアンモニウム、モノ−、ジ−、もしくはトリ−プロパノールアンモニウム、モノ−、ジ−、もしくはトリ−イソプロパノールアンモニウム、N―メチル―もしくはN,N−ジメチル―エタノールアンモニウム、−プロパノールアンモニウム又は−イソプロパノールアンモニウム、N―メチル―ジエタノールアンモニウム、−ジプロパノールアンモニウム又は−ジイソプロパノールアンモニウム、N―エチル―ジエタノールアンモニウム、−ジプロパノールアンモニウム又は−ジイソプロパノールアンモニウム、N―プロピル―ジエタノールアンモニウム、−ジプロパノールアンモニウム又は−ジイソプロパノールアンモニウム。
【0020】
例えば、窒素カチオンは、非置換のアンモニウム、ジエタノールアンモニウム、トリエタノールアンモニウム、ジプロパノールアンモニウム、トリプロパノールアンモニウム、ジイソプロパノールアンモニウム及びトリイソプロパノールアンモニウムである。
【0021】
ホスフェートエステル、又はホスフェートエステルの混合物は、本発明の組成物中に、製造される紙1トン当り約0.01〜約5キログラムの量で存在する。例えば、ホスフェートエステルは、製造される紙1トン当り約0.01〜約2キログラムの量で存在する。例えば、ホスフェートエステルは、製造される紙1トン当り約0.01〜約1キログラムの量で存在する。
【0022】
「製造される紙のトン」とは、標準の製紙プロセスの工程を完了する際に繊維パルプ組成物から終局的に製造される紙のメートルトンを言う。
【0023】
ホスフェートエステルは、また、アミン又はアンモニウムもしくは金属カチオンを形成するアルカリ金属又はアルカリ土類金属に由来する塩基で中和することもできる。例えば、ホスフェートエステルは、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジプロパノールアミン又はトリプロパノールアミンで中和することができる。過剰のアミン、アルカリ又はアルカリ土類塩基を使用してよい。
【0024】
本発明の組成物は、また、ワックス粒子を含むこともできる。ワックスもまた、ダスティング及び紙粉を減少させるが、ホスフェートエステルに比べれば、その程度は小さい。ワックス粒子は、ミネラルワックス、スラックワックスか又は精製パラフィンのいずれか、又はポリエチレン合成ワックスに由来することができる。ワックスは、存在する場合、ワックス対ホスフェートエステルの重量:重量の比0.1:1〜9:1で存在する。例えば、ワックスは、ワックス対ホスフェートエステルの重量:重量の比1:1〜6:1で存在する。例えば、ワックスは、ワックス対ホスフェートエステルの重量:重量の比2:1〜5:1の比で存在する。組成物がワックス粒子を含有する時は、ワックスを適切な装置内でホスフェートエステル及びその他の適した配合材料と均質化した後に、繊維パルプに加える。均質化は、ワックスの粒度が約100μmより小さくなるまで行ってエマルションを得る。粒度は、エマルションを安定にしかつ繊維パルプ中の有効な紙粉及びダスティング低減剤の良好な分散を有するために重要である。
【0025】
本発明の組成物は、また、でんぷんを含むこともできる。例えば、でんぷんは、ジャガイモでんぷん、タピオカでんぷん及びコーンでんぷんからなる群から選択される。でんぷんは、存在する場合、でんぷん対ホスフェートエステルの重量:重量の比0.1:1〜9:1で存在する。例えば、でんぷんは、でんぷん対ホスフェートエステルの重量:重量の比1:1〜6:1で存在する。例えば、でんぷんは、でんぷん対ホスフェートエステルの重量:重量の比1:1〜3:1で存在する。でんぷんは、ジャガイモでんぷん、タピオカでんぷん又はコーンでんぷんからなることができる。添加物に加えられたでんぷんは、パルプ繊維への添加物の接着を容易にするために、パルプ繊維がアニオン性であるので、カチオン性にすることができる。
【0026】
組成物は、また、リグノスルフェートを含むこともできる。リグノスルフェートは、存在する場合、リグノスルフェート対ホスフェートエステルの重量:重量の比0.1:1〜6:1で存在する。例えば、リグノスルフェートは、リグノスルフェート対ホスフェートエステルの重量:重量の比1:1〜3:1で存在する。リグノスルフェートは、アンモニウムリグノスルフェート又はナトリウムリグノスルフェートからなることができる。リグノスルフェートは、エマルション安定性を保ちかつかつ繊維パルプ中の添加物の良好な分散をもたらす。
【0027】
製紙に一般的なその他の要素もまた、本発明のホスフェートエステル及び繊維パルプ組成物に加えることもできる。例えば、組成物は、また、カビの形成を防ぐのに通常用いられる殺生剤を少量エマルション中に含んでもよい。
【0028】
最後に、組成物は、でんぷんを有する場合でも又は有しない場合でも、カチオン性、中性又はアニオン性にすることができる。本組成物のホスフェートエステル及びその他の要素を繊維パルプに加えた後に、ウエブ形成する。
【0029】
本発明は、また、製紙において紙粉及びダスティングを減少させるのに有用な添加物組成物であって、
1)上に記載したホスフェートエステル約5〜約50%、
2)水約40〜約95%、
3)ワックス約0〜約50%、
4)でんぷん約0〜約50%、
5)リグノスルフェート約0〜約30%、
6)殺生剤約0〜約3%
を含み、パーセンテージは、最終配合物中の物質の重量パーセントを言う添加物組成物も提供する。
【0030】
例えば、添加物組成物は、
1)上に記載したホスフェートエステル約5〜約50%、
2)水約40〜約90%、
3)ワックス約5〜約30%、
4)でんぷん約0〜約50%、
5)リグノスルフェート約0〜約30%、
6)殺生剤約0〜約3%
を含む。
【0031】
例えば、添加物組成物は、
1)上に記載したホスフェートエステル約5〜約50%、
2)水約40〜約90%、
3)ワックス約0〜約50%、
4)でんぷん約5〜約50%、
5)リグノスルフェート約0〜約30%、
6)殺生剤約0.01〜約3%
を含む。
【0032】
例えば、添加物組成物は、
1)上に記載したホスフェートエステル約5〜約50%、
2)水約40〜約90%、
3)ワックス約0〜約50%、
4)でんぷん約0〜約50%、
5)リグノスルフェート約5〜約30%、
6)殺生剤約0〜約3%
を含む。
【0033】
添加物組成物は、アミンもしくはアルカリ金属又はアルカリ土類金属に由来する塩基で中和することができる。例えば、添加物は、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジプロパノールアミン又はトリプロパノールアミンで中和される組成物にすることができる。過剰のアミン、アルカリ又はアルカリ土類塩基を使用してよい。
【0034】
添加物組成物がワックス粒子を含有する時は、ワックスを適切な装置内でホスフェートエステル及びその他の適した配合材料と均質化した後に、繊維パルプに加える。均質化は、ワックスの粒度が約100μmより小さくなるまで行ってエマルションを得る。粒度は、エマルションを安定にしかつ繊維パルプ中の有効な紙粉及びダスティング低減剤の良好な分散を有するために重要である。
【0035】
添加物組成物は、カチオン性、中性又はアニオン性にすることができ:好ましくはパルプ繊維への添加物の接着を容易にするために、カチオン性にすることができる。
【0036】
添加物組成物を製造される紙1トン当り約0.05〜5kgの量で繊維パルプに加えた後に、ウエブ形成する。例えば、添加物を製造される紙1トン当り0.2〜1kgの投与量で加える。
【0037】
本発明は、また、繊維パルプ及びホスフェートエステル又は上記した中和されたホスフェートエステルを含む組成物を調製した後に、ウエブ形成する工程を含み、ホスフェートエステルを製造される紙1トン当り約0.01〜5キログラムの量で加える。例えば、ホスフェートエステルを約0.01〜2キログラムの間の量で加える。例えば、ホスフェートエステルを製造される紙1トン当り約0.01〜1キログラムの間の量で加える。上記の組成物のその他の要素も加えてよい。
【0038】
製紙において紙粉及びダスティングを減少させる方法は、また、ホスフェートエステル要素を、本発明において記載した通りのホスフェートエステルを含む予備成形した添加物組成物として繊維パルプに加えた後に、ウエブ形成することによって実施してもよい。添加物組成物を製造される紙1トン当り約0.05〜5kgの量で繊維パルプに加えた後に、ウエブ形成する。例えば、添加物を製造される紙1トン当り0.2〜1kgの投与量で加える。
【実施例】
【0039】
本発明を、今、下記の例によって例示することにするが、下記の例は制限するものではない。下記の例におけるすべてのパーセンテージは、記載するプロセスにおいて製造される混合物の合計の重量に基づく重量パーセンテージである。本明細書内のすべての比、パーセンテージ及び用量レベルは、挙げた範囲の直ぐ外側の濃度を補償するために先行する修飾語句「約」又は「およそ」を伴っていると理解されるべきである。
【0040】
下記の例のホスフェートエステルは、リン酸とアルキルアルコール、主に式I、II及びIII(式中、x、y及びzは、2〜16の範囲であり、存在するメチレン単位の数を表わす)のC及びC10アルキルアルコールの一般に入手し得る混合物とに由来するエステルの混合物であり、式I及びIIの化合物は、一緒にエステル混合物の90%よりも多くを構成する。
【0041】
【化2】

【0042】
下記の例における「中和されたホスフェートエステル」なる用語は、上記のホスフェートエステルの混合物をジエタノールアミンで中和することから生じる混合物を言う。
【0043】
例1
実験室において、本発明に従うホスフェートエステル含有組成物の性能を、紙粉及びダスティングを減少させるために一般的に使用される商用添加物を含有する繊維パルプ組成物の性能と比較する。
【0044】
幾種類かの繊維パルプ組成物を、上記した中和されたホスフェートエステル及び商用の紙粉減少剤の種々の組成、濃度及び投与量で調製した後に、ウエブ形成する。商用添加物を、製造される紙1トン当り1kgで加え、中和されたホスフェートエステルを商用有効物質の約半分の濃度で加える。紙シートを製造し、剥離された繊維のパーセンテージを、保護テープ(3M(登録商標)からの5126C)及び紙粉用Kaptra計量装置で測定する。得られた結果を、表に挙げる。
【0045】
配合物、繊維パルププラス: 剥離された繊維%
中和されたホスフェートエステル 11.8
商用カチオン性ワックスエマルションA 11.8
商用カチオン性ワックスエマルションB 11.2
商用カチオン性でんぷんベースの添加物 15.0
【0046】
結果を参照すると、中和されたホスフェートエステルにより投与量の半分で同様の性能が得られることが分かるものと思う。
【0047】
例2
実験室において、幾種類かの繊維パルプ組成物を、紙粉減少剤の種々の組成、濃度及び投与量で調製した後に、ウエブ形成する。本発明に従う組成物の性能を、商用添加物を使用して調製した組成物の性能と比較する。各々の組成物について、漂白された機械すきパルプ、クラフトパルプ及ぶ脱インキパルプの混合物から、ハンドシート1.2gを製造する。剥離された繊維のパーセンテージを、各々のハンドセットに関して保護テープ(3M(登録商標)からの5126C)及び紙粉用Kaptra計量装置で測定する。本発明の4個のサンプルを試験した。
【0048】
中和されたホスフェートエステル10%、カチオン性コーンでんぷん30%及び水60%の混合物Aを、繊維パルプに、製造される紙1トン当り混合物A1kgの投与量で加えた後に、ウエブ形成することによって、第一のサンプルを調製する。
【0049】
中和されたホスフェートエステル10%、スラックワックス40%及び水50%の混合物Bを、繊維パルプに、製造される紙1トン当り混合物B1kgの投与量で加えた後に、ウエブ形成することによって、第二のサンプルを調製する。
【0050】
中和されたホスフェートエステル20%、スラックワックス24%及び水56%の混合物Cを、繊維パルプに、製造される紙1トン当り混合物C1kgの投与量で加えた後に、ウエブ形成することによって、第三のサンプルを調製する。
【0051】
中和されたホスフェートエステル20%、スラックワックス24%、リグノスルフェート6%及び水50%の混合物Dを、繊維パルプに、製造される紙1トン当り混合物D0.75kgの投与量で加えた後に、ウエブ形成することによって、第四のサンプルを調製する。
【0052】
商用のカチオン性コーンでんぷんベースの添加物を、繊維パルプに、製造される紙1トン当り添加物1kgの投与量で加えた後に、ウエブ形成することによって、比較サンプルを調製する。
【0053】
配合物 剥離された繊維%
1 18
2 16
3 13
4 15
商用比較 19
【0054】
データから、商用添加物を含有する組成物を用いる場合に比べて、本発明の組成物を用いることにより、一層良好な性能が得られることが分かる。最良の性能、すなわち剥離される繊維の最も低いパーセンテージは、組成物中のホスフェートエステルの最も高い濃度で得られる。
【0055】
例3
実験室において、繊維パルプに加える本発明のホスフェートエステルのいくつかの用量について、紙保持、排液及びすべり角を測定するための試験を行う。表1は、中和されたホスフェートエステルを用い及び用いないで、紙保持及び排液について得られる結果の要約を挙げる。
【0056】
中和されたホスフェートエステル10%、スラックワックス30%及び水60%を含有する混合物Eを調製する。
【0057】
試験Aのサンプルは、添加物を含有せず、試験Bのサンプルに、混合物Eを製造される紙1トン当り添加物0.25kgの投与量で加え、試験Cのサンプルに、混合物Eを製造される紙1トン当り添加物0.5kgの投与量で加え、試験Dのサンプルに、混合物Eを製造される紙1トン当り添加物0.75kgの投与量で加える。各々のサンプルは、また、プラント抄紙機の実際の保持試験の成分である3種の生成物:製造される紙1トン当りカチオン性ポリマーエマルション500gr、製造される紙1トン当りPEO性能を改良する補助剤300gr及び製造される紙1トン当り保持及び排液を改良するための非イオン性ポリマー(ポリエチレンオキシド、PEO)50grも含有する。これらのパラメーターを、4つの試験の間一定に保つ。データによって分かる通りに、本発明の添加物を加えることによって排液時間が短縮され、一方、保持は一定に保たれる。
【0058】
試験 真空排液(s) 保持(%)
A 32.5 96.27
B 19 96.36
C 24.5 96.24
D 22.5 96.27
【0059】
摩擦試験係数を、標準化された方法Tappi T815によって実施した。添加物を用いないで、商用カチオン性でんぷんベースの添加物を用いかつ混合物Eを加えることにより、各々製造される紙1トン当り0.5gの用量で、同様のすべり角が得られる。
【0060】
パルプ繊維組成物 すべり角
添加物無し 31°
製造される紙1トン当り5gの商用カチオン性でんぷん 30°
製造される紙1トン当り5gの混合物E 34°
【0061】
例4
本発明の組成物を用い及び用いないで、剥離される繊維のパーセンテージを測定するための試験をプラントにおいて実施する。例3からの混合物Eを標準のプラント操作の間プラント繊維パルプに種々の用量で加えた後に、ウエブ形成する。剥離される繊維のパーセンテージを例1の通りにして測定する。最良の性能は、最も高い用量、すなわち製造される紙1トン当り0.4kgで得られる。特定の生成物の同じ用量について得られる結果の変化は、プラント内部の水循環によって引き起こされる。循環される水は、添加物の残留部分を含有し、これが用量に影響を与える。
【0062】
時間 混合物Eの用量(kg/紙1トン) 剥離された繊維%
0 0 2.3
2 0.08 1.8
5 0.2 1.1
10 0.2 1.3
12 0.2 1.3
15 0.2 1.8
20 0.33 1.0
24 0.33 1.1
25 0.40 0.5
28 0.40 0.6
30 0.33 1.1
35 0.33 1.0
【0063】
例5
本発明のホスフェートエステルの組成物を加えることによって紙粉を減少させる方法を、更にプラントにおいて立証する。
【0064】
例3からの混合物Eに、防腐剤としてのイソチアゾリン殺生剤0.01重量%を加えて混合物Fを造る。
【0065】
標準のプラント操作を用いて紙のロールを製造する。商用カチオン性ワックス含有紙粉減少剤をパルプ繊維スラリーに速度100mL/分で加えた後に、ウエブ形成する。混合物Fを同様に繊維パルプスラリーに同じ速度で加える。混合物Fもまた、混合物Fを含む繊維パルプ組成物を、製造される紙1トン当り0.5kgの濃度、すなわち製造される紙1トン当り中和されたホスフェートエステル0.05kgの濃度で生じるように加える。
【0066】
混合物Fを用いた試行の後に、商用カチオン性ワックス含有添加物の添加が再び始まる。
【0067】
紙ロールを製造し、剥離された繊維のパーセンテージを、保護テープ(3M(登録商標)からの5126C)及び紙粉用Kaptra計量装置で測定する。
【0068】
添加物 用量 紙粉%、上面側(3測定値の平均)
商用添加物 100mL/分 1.05
混合物F 100mL/分 0.80
混合物F 0.5kg/製造される紙1トン 0.55
商用添加物 100mL/分 1.05
【0069】
例6
本発明のホスフェートエステルの組成物を加えることによって紙粉を減少させる方法を、更に異なるプラントにおいて立証する。同じ商用カチオン性ワックス含有添加物をパルプ繊維スラリーに速度350mL/分で加えた後に、ウエブ形成する。混合物Fを同様に繊維パルプスラリーに同じ速度で加える。紙ロールを製造し、剥離される繊維のパーセンテージを、例5の通りにして測定する。3つの読みの平均を報告する。
【0070】
添加物 紙粉%、ワイヤー側 紙粉%、フェルト側
商用添加物 0.78 0.78
混合物Fラン1 0.53 0.62
混合物Fラン2 0.60 0.63
混合物Fラン3 0.47 0.61
【0071】
発明は、上記の好適な実施態様に限定されず、特許請求の範囲内の発明のすべての変更にわたることは理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製紙において紙粉及びダスティングを減少させるのに使用するための組成物であって、繊維パルプ及び製造される紙1トン当り下記の式I又はII:
O[PO(OZ)]O、 RO[PO(OZ)]OZ
I II
(式中、
は、炭素原子2〜24のアルキル鎖、又は1個以上の>NRもしくは−O−基によって中断される該アルキル鎖であり或は該アルキル又は中断されるアルキルは、1個以上の−NRもしくはOH基によって置換され、ここで、R及びRは、独立に、H、炭素原子1〜8のアルキル鎖又は1個以上の−OH基によって置換される炭素原子2〜6のアルキル鎖であり、
Zは、独立に、H又は炭素原子1〜24のアルキル鎖、又は1個以上の>NRもしくは−O−基によって中断される該アルキル鎖であり或は該アルキル又は中断されるアルキルは、1個以上の−NRもしくは−OH基によって置換され、ここで、R及びRは、独立に、H、炭素原子1〜8のアルキル鎖又は1個以上の−OH基によって置換される炭素原子2〜6のアルキル鎖であり、
或は
及びZ基の内の1個は、G基によって結合され、
―R―G―Z―
隣接する酸素及び亜リン原子と一緒に炭素原子2〜8を含有する5〜12員複素環を形成し、ここで、Gは、直接結合、酸素原子又はN−Rであり、Rは、上に記載した通りであり、並びに
は、H、アミノカチオン又はアルカリ金属及びアルカリ土類金属の群から選択される金属カチオンである)
の少なくとも一種のホスフェートエステル約0.01〜約5kgを含む、組成物。
【請求項2】
が炭素原子4〜18のアルキル鎖であり、
Zは、独立に、H又は炭素原子1〜18のアルキル鎖、又は1個以上の>NRもしくは−O−基によって中断される該アルキル鎖であり或は該アルキル又は中断されるアルキルは、1個以上の−NRもしくは−OH基によって置換され、ここで、R及びRは、独立に、H、炭素原子1〜8のアルキル鎖又は1個以上の−OH基によって置換される炭素原子2〜6のアルキル鎖であり、及び
は、H、アミノカチオン、又はアルカリ金属及びアルカリ土類金属の群から選択される金属カチオンである、
請求項1記載の組成物。
【請求項3】
が、炭素原子4〜18のアルキル鎖であり、Zが、H又は炭素原子4〜18のアルキル鎖であり、及びMが、H又はアミノカチオンである、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
が、アミノカチオンであり、かつアンモニウム、ジエタノールアンモニウム、トリエタノールアンモニウム、ジイソプロパノールアンモニウム及びトリイソプロパノールアンモニウムからなる群から選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
前記ホスフェートエステルを過剰のアミン塩基で中和する、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
更に、ワックス粒子を、重量によりワックス粒子対ホスフェートエステル約0.1:1〜約9:1の範囲の量で含む、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
前記ワックスが、ミネラルワックス、スラックワックス又は精製パラフィンワックス及びポリエチレン合成ワックスからなる群から選択される、請求項6記載の組成物。
【請求項8】
均質化される、請求項6記載の組成物。
【請求項9】
前記ワックスの粒度が約100μmより小さい、請求項6記載の組成物。
【請求項10】
更に、でんぷんを、重量によりでんぷん対ホスフェートエステル約0.1:1〜約9:1の範囲の量で含む、請求項1記載の組成物。
【請求項11】
前記でんぷんが、ジャガイモでんぷん、タピオカでんぷん及びコーンでんぷんからなる群から選択される、請求項10記載の組成物。
【請求項12】
前記でんぷんがカチオン性である、請求項10記載の組成物。
【請求項13】
更に、リグノスルフェートを、重量によりリグノスルフェート対ホスフェートエステル約0.1:1〜約6:1の範囲の量で含む、請求項1記載の組成物。
【請求項14】
前記リグノスルフェートが、アンモニウムリグノスルフェート及びナトリウムリグノスルフェートからなる群から選択される、請求項3記載の組成物。
【請求項15】
更に、有効量の殺生剤を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項16】
製紙において紙粉及びダスティングを減少させるのに有用な添加物組成物であって、
1)請求項1記載のホスフェートエステル約5〜約50%
2)水約40〜約95%
3)ワックス約0〜約50%
4)でんぷん約0〜約50%
5)リグノスルフェート約0〜約30%
6)殺生剤約0〜約3%
を含み、パーセンテージは、最終配合物中の物質の重量パーセントを言う添加物組成物。
【請求項17】
ワックス少なくとも約5%を含む、請求項16記載の製紙において紙粉及びダスティングを減少させるのに有用な添加物組成物。
【請求項18】
でんぷん少なくとも約5%を含む、請求項16記載の製紙において紙粉及びダスティングを減少させるのに有用な添加物組成物。
【請求項19】
リグノスルフェート少なくとも約5%を含む、請求項16記載の製紙において紙粉及びダスティングを減少させるのに有用な添加物組成物。
【請求項20】
ワックスが、ミネラルワックス、スラックワックス又は精製パラフィンワックス及びポリエチレン合成ワックスからなる群から選択され;でんぷんが、ジャガイモでんぷん、タピオカでんぷん及びコーンでんぷんからなる群から選択され;リグノスルフェートが、アンモニウムリグノスルフェート及びナトリウムリグノスルフェートからなる群から選択され及び添加物が均質化され、該ワックスの粒度が約100μmより小さい、請求項16記載の製紙において紙粉及びダスティングを減少させるのに有用な添加物組成物。
【請求項21】
過剰のアミン塩基を加えることによって中和される、請求項16記載の製紙において紙粉及びダスティングを減少させるのに有用な添加物組成物。
【請求項22】
カチオン性である、請求項16記載の製紙において紙粉及びダスティングを減少させるのに有用な添加物組成物。
【請求項23】
請求項1記載のホスフェートエステルを製造される紙1トン当り約0.01〜約5kgの量で繊維パルプに加える工程の後に、ウエブ形成する工程を含む、紙粉及びダスティングを減少させる方法。
【請求項24】
ホスフェートエステルを、過剰のアミン塩基を製造される紙1トン当り約0.01〜約5kgの量で繊維パルプに加えることによって中和した後に、ウエブ形成する、請求項23記載の紙粉及びダスティングを減少させる方法。
【請求項25】
請求項17記載の添加物組成物を製造される紙1トン当り約0.05〜約5kgの量で繊維パルプに加える工程の後に、ウエブ形成する工程を含む、紙粉及びダスティングを減少させる方法。
【請求項26】
請求項18記載の添加物組成物を製造される紙1トン当り約0.05〜約5kgの量で繊維パルプに加える工程の後に、ウエブ形成する工程を含む、紙粉及びダスティングを減少させる方法。
【請求項27】
請求項19記載の添加物組成物を製造される紙1トン当り約0.05〜約5kgの量で繊維パルプに加える工程の後に、ウエブ形成する工程を含む、紙粉及びダスティングを減少させる方法。
【請求項28】
請求項20記載の添加物組成物を製造される紙1トン当り約0.05〜約5kgの量で繊維パルプに加える工程の後に、ウエブ形成する工程を含む、紙粉及びダスティングを減少させる方法。

【公表番号】特表2007−508465(P2007−508465A)
【公表日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−530257(P2006−530257)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【国際出願番号】PCT/EP2004/052342
【国際公開番号】WO2005/038133
【国際公開日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(396023948)チバ スペシャルティ ケミカルズ ホールディング インコーポレーテッド (530)
【氏名又は名称原語表記】Ciba Specialty Chemicals Holding Inc.
【Fターム(参考)】