説明

紙葉類処理装置

紙幣が投入されると、その真贋を鑑別する(S11)。そして、該紙幣が雁券の疑いがあると判定されると(S12,Y)、その紙幣のスレッド位置は搬送方向と平行であったか判別し(S13)、平行であればその紙幣を投入口に戻して、投入方向を縦横変えて再度投入するように促すメッセージを表示する(S14)。そして、その紙幣の再投入画像を基にその紙幣のスレッドの有無を判断する(S15)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、紙葉類処理装置に係わり、特に、偽造券の鑑別を行う紙葉類処理装置に関する。
【背景技術】
近年、ATM(Automatic Teller’s Machine)や自動販売機などに代表される紙葉類処理装置においては、偽札などの偽造券による犯罪が多発している。
紙葉類処理装置には鑑別部が設けられており、この鑑別部において、システム投入口から投入された紙葉類(紙幣や切符など)の真贋を判定している。識別部は検査対象の紙葉類を微小領域に分割し、その各微小領域の模様形状やパターンを、光学センサ、磁気センサ、厚みセンサなどによって測定し、その測定値を諧調信号などに変換・記憶する。そして、この諧調信号に対して所定の画像処理を施して紙葉類全体の画像データを作成し、この画像データを予め真券から作成した作成した辞書データと比較・照合することによって投入された紙葉類の真贋を判定するような構成となっている。
ところで、従来の紙葉類処理装置は、投入された紙葉類の搬送方向は、機種によって、縦方向(紙葉類の長手方向)または横方向(紙葉類の短手方向)のいずれか一方に予め決まっており、その搬送方向を自由に設定できる機種は存在しなかった。しかしながら、縦方向に投入された紙葉類の真贋判定用の辞書と横方向に投入された紙葉類の真贋判定用の辞書は全く別物であり、その真贋アルゴリズムも異なるため、縦方向投入用の鑑別部と横方向投入用の鑑別部は別個に開発してメンテナンスする必要があり、開発費用及びメンテナンスコストが嵩んでいた。
また、昨今における偽造券事件の多発や複数国紙幣の同時鑑別等の要望から紙葉類の真贋判定の強化が望まれているという背景の下で、一部の国では、真贋判定の強化のために紙葉類にスレッドを組み込むようにしている。
ここで、スレッドについて説明する。スレッドは、紙葉類の内部もしくは表面に、特殊な繊維、プラスチックまたは金属状の帯をすき込むかまたは織り込んだものである。このスレッドは、海外紙幣には非常に多い特徴であり、近年、日本でも、図書券や新幹線の回数券等に偽造防止の一手法として採用されている。上述したように、スレッドは、その素材により繊維スレッド、金属スレッドまたはプラスチックスレッドに分類される。一般に、スレッドは帯状の細い直線であり、紙葉類の一部に短手方向または長手方向に平行な直線とし組み込まれている。
ところで、鑑別部に設けられる光学センサは一般にラインセンサであり、紙葉類の搬送方向に対し垂直に設けられている。このため、紙葉類の主走査方向の読み取り解像度は固定であるが、紙葉類の副走査方向の読み取り解像度は紙葉類の搬送速度を制御することにより可変である。また、上述したように、スレッドは細かい線であるため、光学センサがスレッドを縦方向に走査できる方向、つまり光学センサがスレッドを副走査方向に読み取れるように紙幣を搬送することが望ましい。
しかしながら、スレッドの配置は紙幣毎に異なるため、光センサによるスレッドの読み取り方向は紙幣の投入方向によって異なることになる。
また、紙葉類処理装置は無人で操作されるものであるため、偽造券(真券のカラーコピー、テープ貼り加工券、白紙切継ぎ券等)を使用した犯人を検挙することは非常に難しいという問題があった。また、従来の紙葉類処理装置では、顧客が偽造券を使用しようとした場合に何回かリジェクト動作を繰り返しても、そのことが係員には全く分からないという問題があった。
偽造券対応のための鑑別アルゴリズムや鑑別辞書は事あるごとに強化されリジェクト機能そのものは強化されているが、その現象を確認できるのは紙葉類処理装置の運用終了後であり、該当取引データの収納メモリをチェックしたときに、ある時間帯に怪しい取引があったという履歴を確認できるのみであり、偽造券を使用した犯人の特定に至ることはほとんど不可能であった。このような犯人は偽造券を使って長い時間、紙葉類処理装置を専有する特徴があるためその場にいる間に係員が犯人に対して何らかの対応を取れることが望まれていた。
本発明の目的は、紙葉類を縦方向または横方向のいずれの方向でも自由に搬送できる紙葉類処理装置を提供することである。本発明の別の目的は、偽造券の使用がなされた場合に係員が対応できる紙葉類処理装置を提供することである。また、本発明の別の目的は、使用された偽造券の詳細な分析情報を提供できる紙葉類処理装置を提供することである。
【発明の開示】
本発明の第1態様の紙葉類処理装置は、投入された紙葉類の鑑別を行う紙葉類処理装置を前提とし、センサ手段、鑑別手段、判別手段、搬送方向制御手段及び搬送速度制御手段を備える。
前記センサ手段は、投入された紙葉類の画像を取得する。前記鑑別手段は、該センサ手段によって得られた画像を基に、投入された紙葉類の真贋を鑑別する。前記判別手段は、該鑑別手段により偽造券と判定された紙葉がそのスレッド位置が搬送方向と平行となるように搬送されたか判別する。前記搬送方向制御手段は、該判別手段により前記スレッド位置が搬送方向と平行に搬送されたと判別されたとき、前記紙幣が前回の投入時とは縦横方向が入れ換わって再搬送されるように制御する。前記搬送速度制御手段は、前記再搬送される紙幣の搬送速度を最初の搬送時よりも低下させる。
紙葉類のスレッドは、通常は、紙葉類に帯状にすき込むかまたは織り込まれる。このため、スレッド位置が紙葉類の搬送方向に平行であると、センサ手段の主走査方向の解像度によってはスレッドを検知できない場合が生じる。本発明の第1態様の紙葉類処理装置は、投入された紙葉類が贋券と鑑別された場合、その紙葉類のスレッド位置がその搬送方向に平行であった場合には、該スレッド位置が搬送方向と直角な方向で再搬送されるように制御する。また、搬送速度も遅くさせて再搬送されるように制御する。この結果、前記センサ手段はスレッドの画像を取得でき、前記鑑別手段はスレッドの有無により前回贋券と鑑別した紙葉類の真贋をより正確に鑑別できる。
本発明の第2態様の紙葉類処理装置は、投入された紙葉類の鑑別を行う紙葉類処理装置を前提とする。そして、鑑別手段、判定手段及び制御手段を備える。
前記鑑別手段は、投入された紙葉類の真贋を鑑別する。前記判定手段は、該鑑別手段の鑑別結果を基に、1回または複数の取引で偽造券が投入されたか判定する。前記制御手段は、該判定手段によって偽造券が投入されたと判定されたとき、装置を休止させる。
本発明の第2態様の紙葉類処理装置によれば、1回または複数の取引で偽造券が投入されると装置を休止するので、係員が該偽造券を投入した人物に対して何らかの対応を取ることができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の第1実施形態のシステム構成を示すブロック図である。
図2は、第1実施形態において縦画像と横画像を共通の辞書データを用いて真贋鑑別する方法を説明する図である。
図3は、スレッド位置と搬送方向とスレッド検出との関係を説明する図である。
図4は、第1実施形態の動作を説明するフロチャートである。
図5は、第2実施形態のシステム構成を示すブロック図である。
図6は、第2実施形態による1取引内での偽造券使用に対する対処方法を説明するフロチャートである。
図7は、第2実施形態による連続する取引における偽造券使用に対する対処方法を説明するフロチャートである。
図8は、1取引内で偽造券使用を検出した際の再鑑別方法を説明するフロチャートである。
図9は、1取引内で偽造券使用を検出した際にその偽造券の詳細画像を撮影する方法を説明するフロチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
{第1実施形態}
図1は、本発明の第1実施形態である紙葉類処理装置の鑑別部のシステム構成を示すブロック図である。
同図に示す鑑別部10は、中央処理装置11、紙葉類突入センサ部12、光センサ部13、増幅部14、A/D(アナログ/デジタル)変換部15、画像処理部16、辞書比較部17、辞書データ部18及び記憶部19から構成されている。
中央処理装置11は、他の構成要素12、13、16,17と接続されており、これらの構成要素と信号の授受を行いながらシステム全体を制御する。
紙葉類突入センサ部12は、紙葉類処理装置の投入口から投入された紙葉類の搬送方向が縦方向または横方向のいずれであるか検知し、その搬送方向を通知する検知信号を中央処理装置11に出力する。中央処理装置11は、紙葉類突入センサ部12から上記検知信号を入力すると光センサ部13を起動し、その検知信号により通知された搬送方向に応じて、光センサ部13のサンプリング間隔とサンプリング回数を制御する。また、中央処理装置11は、上記検知信号が入力されると、画像処理部16に紙葉類の搬送方向を通知する。
光センサ部13は、搬送中の紙葉類の表面画像を光学的に読み取るセンサであり、その読み取った画像信号を増幅部14に出力する。光センサ部13は、例えば所定の解像度を有するラインセンサであり、中央処理装置11から指示されたサンプリング間隔とサンプリング回数に従がって、搬送される紙葉類の表面画像を光学的に読み取る。紙葉類の搬送速度を一定とした場合、光センサ部13のサンプリング間隔(サンプリング周波数)を変えることによって、光センサ部13による紙葉類の表面画像の搬送方向(副走査方向)における読み取り解像度を変化させることができる。例えば、上記サンプリング間隔を短くすることによって、紙葉類の表面画像を高解像度で読み取ることが可能となる。第1実施形態の鑑別部10は、紙葉類全体でのスレッドの配置位置と紙葉類の搬送方向の組み合わせに応じて、紙葉類の搬送速度と光センサ部13のサンプリング間隔及びサンプリング回数を制御して、スレッドを確実に検知できるようにしている。
増幅部14は、光センサ部13から入力される画像信号を増幅してA/D変換部15に出力する。A/D変換部15は、増幅部14から入力されるアナログ画像信号をデジタル画像信号に変換し、そのデジタル画像信号を画像処理部16に出力する。
画像処理部16は、A/D変換部15から入力される画像信号を基に紙葉類全体の画像信号(縦画像または横画像)を作成する。そして、その縦画像または横画像に座標変換・濃度調整等の正規化処理を施し、辞書データ部18に格納されている辞書データ(参照画像データ)と比較・照合する紙葉類の画像データを作成する。そして、その作成した画像データを辞書比較部17に出力する。
辞書比較部17は、画像処理部16から入力される画像データを辞書データ部18に格納されている辞書データと比較・照合して、前記投入された紙葉類の真贋を判定し、その判定結果を記憶部19に格納する。辞書比較部17は、投入された紙葉類のスレッドの有無についても辞書データ部18に格納されている辞書データを基に判定する。
辞書データ部18は、予め、各種真券の縦搬送(縦方向の搬送)及び横搬送(横方向の搬送)の両搬送の画像データを収集して作成した各種真券の真贋判定用の画像データを辞書データとして格納している。これらの各種真券の中にはスレッドを有する真券も含まれる。
記憶部19は、投入された真券の辞書比較部17による真贋結果を格納するメモリである。
図2は、第1実施形態における横搬送された紙葉類と縦搬送された紙葉類の双方を辞書データ部18に格納されている同一の辞書データで真贋鑑別する方法を説明する図である。
同図(a)は、横搬送された紙葉類(この場合は紙幣)21が斜行した場合に光センサ部13により読み取られた生画像データ20を示している。また、同図(b)は、縦搬送された紙葉類(この場合は紙幣)31が斜行した場合に光センサ部13により読み取られた生画像データ30を示している。尚、同図(a)に示すように、光センサ部13の画素センサの配列方向が主走査方向であり、紙葉類の搬送方向が副走査方向である。
第1実施形態においては、副走査方向解像度が主走査方向解像度の整数倍となるように、搬送部(不図示)の搬送速度と光センサ部13のサンプリング間隔を制御する。このような制御により得られた生画像データ20,30は、副走査方向解像度が主走査方向解像度の整数倍となっているので、画像処理部16は生画像データ20,30の主走査方向の解像度と副走査方向の解像度が等しくなるように、生画像データ20,30について副走査方向に画素データを間引く処理を施す。
また、同図(a),(b)の場合には、生画像データ30を時計回りに90度回転させると生画像データ30の座標系と生画像データ20の座標系が一致するので、画像処理部16は生画像データを時計回りに90度回転させ、生画像データ20と生画像データ30の座標系を一致させる。
次に、画像処理部16は同図(a),(b)において黒丸で示された基準点を起点として生画像データ20と生画像データ30から、それぞれ紙幣画像21、31を切り出し、その紙幣画像21,31に対して座標変換・濃度調整等を行い、同図(c)に示す正規化画像40を切り出す。この切り出し処理は、共通ルーチンによりソフトウェア処理できる。
続いて、辞書比較部17が正規化画像データ40を同図(d)に示す辞書データ部18に格納された複数の辞書データ50と画素単位でパターンマッチングし、投入された紙葉類の真贋を判定する。すなわち、正規化データ40と一致する辞書データ50があれば真券と判定し、一致する辞書データ50が無ければ偽造券と判定する。
以上の処理により、投入された紙葉類の真贋が判定されると共に、真券であっ場合にはその種類も特定される。また、生画像データ20,30から搬送方向も特定される。
このように、横搬送された紙葉類と横搬送された紙葉類の真贋を共通の辞書データで判定できる。
図3は、紙葉類のスレッド位置と紙葉類の搬送方向との関係を示したものである。同図においては、短手方向にスレッド61が存在している紙幣60の例を示している。また、同図(a)は紙葉類60が横向きで搬送される場合を示しており、同図(b)は紙葉類60が縦向きで搬送される場合を示している。
このような条件において、同図(a)ンサ部13の解像度が低い場合にはスレッド61bの画像を検知できない場合がありうる。一方、同図(b)に示す場合では、紙葉類60が縦方向に搬送されるので、紙葉類60の搬送速度を落とせば光センサ部13の副走査方向の解像度が高まるのでスレッド61を確実に検知できる。例えば、光センサ部13の解像度が主走査方向で1mm/本であるとすると、0.5mm幅のスレッド61が紙葉類60の搬送方向と平行に存在する場合(図3(a)の横搬送の場合)、光センサ部13の画素センサのピッチ間をスレッド61が通過する場合もありえる。このような場合、光センサ部13はスレッド61を検知できない。そして、これは光センサ部13の副走査方向の解像度をいくら高めても解決できない問題である。
これに対し、図3(b)に示すように、スレッド61が紙葉類60の搬送方向と垂直に存在する場合には、光センサ部13の副走査方向の解像度を高める(紙葉類60の搬送速度を落とす)ことにより、スレッド61を確実に検知できる。
第1実施形態では、以上のような考えに基づき、スレッド61が光センサ部13の主走査方向と平行となって搬送されるように、紙葉類60の搬送方向を限定させる。これは、顧客が紙葉類処理装置の投入口に紙葉類60を投入する際に、紙葉類60のスレッド61の存在位置に応じて紙葉類60を縦もしくは横に投入させるようにするか、または投入された紙葉類60の投入方向が不適切である場合、紙葉類60の搬送方向を装置内部で変えるようにすることにより対処する。
図4は、第1実施形態の紙葉類処理装置における紙葉類(ここでは、紙幣)の真贋鑑別動作を説明するフロチャートである。尚、この場合、紙幣のスレッド位置は予め分かっているものとする。
まず、鑑別部10が紙幣の真贋を1回目に投入された方向で鑑別し(ステップS11)、雁券の可能性が低く正常紙葉類(正常紙幣)と判定すれば処理を終了する。
一方、ステップS12で雁券の可能性有りと判定すると、スレッドが紙幣搬送方向と平行となるような方向で紙幣が投入されたか判別する(ステップS13)。そして、スレッドが紙幣搬送方向と平行となるような位置であれば(図3(a)のような場合)、投入された紙幣を投入口にいったん戻して、紙幣の投入方向(縦横方向)を変えるように促すメッセージをディスプレイに表示する(ステップS14)。尚、このとき、メッセージと共に音声で顧客に知らせるようにしてもよい。
その後、顧客が投入方向を変えて紙幣を投入すると、画像処理部16が再投入画像(再投入された紙幣の光センサ部13による読み取り画像を正規化した画像)を基に、投入された紙幣のスレッドの有無を判断する(ステップS1)。一方、ステップS13でスレッドの位置が紙幣の搬送方向と平行でなければ(図3(b)のような場合)、画像処理部16が投入された紙幣の正規化画像(図2(c)参照)を基に、該紙幣のスレッドの有無を判断する(ステップS16)。
このように、1回目に紙幣が投入されたとき、まずその紙幣の正規化画像を基に該紙幣の真贋を判断する。そして、雁券と疑わしい場合には、さらにスレッドが光センサ部13によって検知可能となるような方向で紙幣が投入されたか判断し、スレッドを光センサ部13が検知できないような方向で紙幣が投入されていればその紙幣を投入口に戻し、顧客に投入方向を入れ換えてその紙幣を再投入するように促す。これにより、雁券と疑わしい紙幣についてはスレッドを光センサ部13により確実に検知してスレッドの存在の有無を判断することにより投入された紙幣の真贋を確実に判定することができる。
{第2実施形態}
図5は、本発明の第2実施形態である紙葉類処理装置のシステム構成を示すブロック図である。
第2実施形態の紙葉類処理装置は、中央処理装置101、紙葉類繰り出し部102、搬送速度制御部103、アラーム発生部104、写真撮影部105及び鑑別部110から構成されている。
中央処理装置101は、他の構成要素101〜105,110と接続されており、それらの構成要素の制御やそれらの構成要素との間でメッセージをやり取りする。
紙葉類投入部102は、顧客が紙葉類100を投入するための投入口である。
搬送速度制御部103は、紙葉類投入部102に投入された紙葉類100が搬送部(不図示)を介して一枚づつ鑑別部110に搬送される際の速度(搬送速度)が、中央処理装置101により設定された搬送速度となるように制御する。
アラーム発生部104は、中央処理装置101からの指示を受けて、係員に通知するアラームを発生する。
写真撮影部105は、中央処理装置101からの指示を受けて、紙葉類投入部102に投入された紙葉類100の画像を撮影する。
鑑別部110は、紙葉類投入部102に投入された紙葉類100の真贋を鑑別する。鑑別部110は、光センサ部13、A/D変換部15、画像処理部16、辞書比較部17、辞書データ部18、識別結果判定部111及び記憶部19を備える。図1と
同一の構成要素には同一の名称と符号を付与しており、これらの構成要素の説明は省略する。
鑑別部110の構成上の特徴は、辞書比較部17と記憶部19との間に識別結果判定部111を設けたことである。
識別結果判定部111は、辞書比較部17から紙葉類投入部102に投入された紙葉類100の判定結果を入力し、その判定結果を基に、1取引内で所定枚数以上(例えば、連続して所定枚数以上)の偽造券(雁券)の投入が発生する、または所定回数以上の連続した取引で偽造券の投入が発生するなどの異常な事象を監視する。そして、識別結果判定部111は、それらの異常な事象を検出すると、中央処理装置101にする。そして、それらの異常な事象の発生を検出すると、中央処理装置101にアラームを通知する。
中央処理装置101は、識別結果判定部111から上記アラームの通知を受け取ると、紙葉類処理装置の稼動を休止させてアラーム発生部104にアラームの発生を指示する。アラーム発生部104は、その指示を受けると、異常の発生を係員に通知するアラームを発生させる。また、中央処理装置101は、偽造券と判定された紙葉類100を紙葉類投入部102に戻して顧客に返却する前に、その紙葉類100を紙葉類処理装置内のプール部(不図示)に一旦退避させて、搬送速度制御部103に搬送速度を低速に設定するように指示する。
これにより、搬送速度制御部103はプール部に退避されている前記紙葉類100が通常よりも低速で搬送されるように制御する。これにより、鑑別部110の光センサ部13は、投入時よりも詳細な前記紙葉類100の画像を取得する。また、中央処理装置101は、写真撮影部105に指示して前記プール部に退避されている紙葉類100の画像を撮影させる。この撮影された画像は不図示のメモリ等に保存される。
図6は、1取引内で偽造券の投入がN枚(Nは2以上の自然数)以上発生した場合における第2実施形態の紙葉類処理装置の動作を説明するフロチャートである。尚、同図において、Xは辞書比較部17が偽造券と判定(推定)した場合に出力する異常結果を示すコードである。また、N枚は、連続した偽造券の枚数であってもよいし、途中に真券が混じっている場合の偽造券の枚数でもよい。
まず、鑑別部110の識別結果判定部111は辞書比較部17から入力される識別結果が異常結果Xであるか判別し(ステップS21),異常結果Xであれば、1取引において異常結果Xと判定された紙葉類100の枚数がN枚以上となったか判別する(ステップS22)。ここで、識別結果判定部111は、1取引(紙葉類投入部102に何枚かの紙葉類100が投入され、紙葉類投入部102の蓋が閉じられる操作)において辞書比較部17から異常結果Xが出力する回数を計数する機能を備えているものとする。
識別結果判定部111は1取引において異常結果Xの出力がN回以上連続する(1取引で投入された紙葉類100がN枚以上連続して偽造券である)と判定すると、中央処理装置101に対して偽造券の異常発生のアラームを通知する(ステップS23)。
中央処理装置101は、該アラームの通知を受け取ると、必要に応じて、
1) アラーム発生部104を介して係員に紙葉類100の異常投入を知らせるアラームを発生させ、紙葉類処理装置を休止させる
2) 搬送速度制御部103に通常の稼動時よりも低速の搬送速度を設定し、前記プール部に退避されている紙葉類100を前回よりも低速で搬送させて、鑑別部110の光センサ部13に該紙葉類100の詳細画像を収集させる
3) 写真撮影部105を制御して、偽造券と判定された紙葉類100の画像を撮影させ、その撮影画像データをメモリに保存させる
などの処理を行う(ステップS24)。
また、ステップS21において紙葉類100の鑑別結果がXでないと判断された場合、またはステップS22において1取引で鑑別結果がXと判定された紙葉類100がN枚よりも少なければ、直ちに処理を終了する。
図7は、n回(nは2以上の自然数)以上の連続した取引で偽造券の投入が行われた場合における第2実施形態の紙葉類処理装置の動作を説明するフロチャートである。
まず、鑑別部110の識別結果判定部111は辞書比較部17から入力される識別結果が異常結果Xであるか判別し(ステップS31),異常結果Xであれば、異常結果Xの検出がn回以上の連続する取引で発生しているか判別する(ステップS32)。ここで、識別結果判定部111は、異常結果Xが検出される取引の連続回数を計数する機能を備えているものとする。
識別結果判定部111により、異常結果Xがn回以上の連続する取引で発生している(n回以上の連続する取引で偽造券の投入がある)と判定されると、前述した図6のフロチャートのステップS23.S24と同様のステップS3、S34の処理を実行する。
また、ステップS31において紙葉類100の鑑別結果がXでないと判断された場合、またはステップS32において鑑別結果Xの判定がn回以上の連続する取引で発生していなければ直ちに処理を終了する。
以上の処理により、図6のフロチャートでは見落とされてしまう「N枚よりも少ない枚数の偽造券を何回も繰返して入金しようとする悪質な行為」を
検出することができる。
図8は、1取引でN枚以上の偽造券が投入されたと判定された場合に該偽造券の再鑑別用の詳細画像を収集する第2実施形態の紙葉類処理装置の動作を説明するフロチャートである。
同図に示すステップS41〜S43の処理は、図6のステップS21〜S23の処理と同様であるので、ステップS44以降の処理について説明する。
中央処理装置101は、識別結果判定部111からアラームの通知を受け取ると、搬送速度制御部102に対して搬送速度を低速にするよう指示する、(ステップS44)。
搬送速度制御部102は該指示を受けて、プール部に退避されている紙幣(辞書比較部17により偽造券と判定された紙幣)を通常よりも遅い搬送速度で搬送させて鑑別部110に送る。鑑別部110では、低速の搬送速度で搬送されてくる前記紙幣の詳細画像を光センサ部13により取得し、それを収集する。また、この場合、前記プール部に退避されていた紙幣が通常の稼動時よりも低速で1枚づつ搬送されてくるため、鑑別部110はそれらの紙幣をゆっくり1枚づつ再鑑別する(ステップS45,46)。
通常、紙幣の生画像は紙葉類処理装置の出荷前の調整時、辞書データ部18に格納する辞書データを作成する場合などに収集する。光センサ部13によって取得された画像はデータ量が多く、画像処理部16の処理時間が紙幣の搬送速度に間に合わないため、紙幣によって得られた画像を間引き、それにより得られた縮小画像を用いて鑑別を行っている。
図8のフロチャートに示す処理では、紙幣の搬送速度を低下させて搬送させることにより、紙幣1枚当たりの鑑別処理時間を長く取れるので、光センサ部13によって得られた紙幣の詳細画像を用いて綿密に紙幣の真贋を鑑別することが可能となる。
図8のフロチャートに示すアルゴリズムは、n回以上の連続した取引でN枚より少ない枚数の偽造券を検出した場合の際鑑別にも適用できる。すなわち、この場合は、図8のフロチャートのステップS41〜S43を、図7のフロチャートのステップS31〜S33に置き換えればよい。
図9は、1取引にN枚以上の偽造券が検出された場合に再鑑別を行う第2実施形態の紙葉類処理装置の動作を説明するフロチャートである。
同図のステップS51〜S53の処理は、図8のステップS41〜S43の処理と同様であるので、ステップS54以降の処理について説明する。
中央処理装置101は、識別結果判定部111からアラームの通知を受け取ると、搬送速度制御部102に指示をして、プール部に退避させられている偽造券と判定された紙幣(紙葉類100)を指定した搬送速度で写真撮影部105まで移動(搬送)させ、写真撮影部105でその搬送を停止させる(ステップS54、S55)。
そして、写真撮影部105に設けられたカメラを制御してその紙幣を撮影させる(ステップS56)。該カメラは、例えばデジタルカメラであり、光センサ部13により得られる画像よりも高解像度のカメラである。したがって、該カメラによって撮影された画像は、紙幣固有の機番号を識別可能なほど高精細である。
このように、偽造券と判定された紙幣を高解像度のカメラで撮影することにより、該紙幣について紙幣固有の機番号をも識別可能な高精細画像を取得することができる。
図9のフロチャートに示すアルゴリズムは、n回以上の連続した取引でN枚より少ない枚数の偽造券を検出した場合の際鑑別にも適用できる。すなわち、この場合は、図9のフロチャートのステップS51〜S53を、図7のフロチャートのステップS31〜S33に置き換えればよい。
上述したように、本発明によれば、紙葉類を縦方向で搬送しても横方向で搬送しても、その紙葉類の真贋を同一の辞書で鑑別できるため、辞書の開発効率が向上すると共にその製造コストも低減できる。また、スレッド付きの紙葉類が偽造券の疑いがある場合、1回目の投入時にその紙葉類がスレッド位置が搬送方向と平行となるように搬送された場合には、該スレッド位置が該紙葉類の搬送方向と垂直となるように再度搬送されるようにしたので、スレッドを確実に検知可能となり、スレッドの有無を判断することにより紙葉類の真贋判定の精度を大幅に向上できる。
また、本発明によれば、1回の取引で所定枚数以上の偽造券が投入された場合または複数の連続した取引で偽造券が投入された場合に、係員に通報して装置を休止させるようにしたので、係員がその場で偽造券使用者に対処することが可能となる。また、上記のような不正行為が行われた場合、搬送速度を落として偽装券の疑いがある紙幣を1枚づつゆっくり搬送させて通常時よりも精細な紙幣画像を収集し、その詳細な画像を基に再鑑別を行うので真贋の鑑別精度を高めることができる。また、上記のような不正行為が行われた場合、偽造券と疑われる紙幣をカメラにより撮影するので、その紙幣の紙幣機番号を識別可能な高精細な画像を取得・保存することができる。
【産業上の利用可能性】
本発明は、市場で使用される紙幣、小切手、チケット、図書券、商品券、切符、回数券などの各種紙葉類の真贋鑑別に利用できる。応用分野としては、
ATM(現金自動預け払い機)、自動販売機などの上記紙葉類を取り扱う端末などがある。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
入された紙葉類の鑑別を行う紙葉類処理装置であって、
投入された紙葉類の画像を取得するセンサ手段と、
該センサ手段によって得られた画像を基に、投入された紙葉類の真贋を鑑別する鑑別手段と、
該鑑別手段により偽造券と判定された紙葉がそのスレッド位置が搬送方向と平行となるように搬送されたか判別する判別手段と、
該判別手段により前記スレッド位置が搬送方向と平行に搬送されたと判別されたとき、前記紙幣が前回の投入時とは縦横方向が入れ換わって再搬送されるように制御する搬送方向制御手段と、
前記再搬送される紙幣の搬送速度を最初の搬送時よりも低下させる搬送速度制御手段と、
を備えることを特徴とする紙葉類処理装置。
【請求項2】
前記搬送速度制御手段は、前記センサ手段の副走査方向解像度がその主走査方向解像度の整数倍となるように前記搬送速度を調整することを特徴とする請求項1記載の紙葉類処理装置。
【請求項3】
前記鑑別手段は、初回搬送時の前記紙幣の画像と再搬送時の前記紙幣の画像を共通の辞書を用いて鑑別することを特徴とする請求項2記載の紙葉類処理装置。
【請求項4】
前記鑑別手段により偽造券と判定された紙幣を投入部に返却する返却手段と、
前記投入部に返却され紙幣を前回とは縦横を入れ換えて投入するように促すメッセージを通知する通知手段を、
さらに備えることを特徴とする請求項1記載の紙葉類処理装置。
【請求項5】
投入された紙葉類の鑑別を行う紙葉類処理装置であって、
投入された紙葉類の真贋を鑑別する鑑別手段と、
該鑑別手段の鑑別結果を基に、1または複数の取引で偽造券が投入されたか判定する判定手段と、
該判定手段によって偽造券が投入されたと判定されたとき、装置を休止させる制御手段と、
を備えることを特徴とする紙葉類処理装置。
【請求項6】
前記判定手段により偽造券が投入されたと判定されたとき、アラームを報知する報知手段を、
さらに備えることを特徴とする請求項5記載の紙葉類処理装置。
【請求項7】
前記判定手段により偽造券が投入されたと判定されたとき、該偽造券と判定された紙葉類が投入時よりも低速で搬送されるように制御する制御手段と、
該低速で搬送される紙葉類の詳細画像を取得する画像センサ手段を、
さらに備えることを特徴とする請求項5記載の紙葉類処理装置。
【請求項8】
前記画像センサ手段により取得された詳細画像を基に、前記偽造券であると判定された紙葉類の真贋を再鑑別する再鑑別手段を、
さらに備えることを特徴とする請求項5記載の紙葉類処理装置。
【請求項9】
前記判定手段により偽造券が投入されたと判定されたとき、該偽造券と判定された紙葉類を撮影する撮影手段を、
さらに備えることを特徴とする請求項5記載の紙葉類処理装置。
【請求項10】
前記判定手段は、1取引内で所定枚数以上の偽造券が投入されたか判定することを特徴とする請求項5記載の紙葉類処理装置。
【請求項11】
前記判定手段は、1取引内で所定枚数以上の偽造券が連続して投入されたか判定することを特徴とする請求項5記載の紙葉類処理装置。
【請求項12】
前記判定手段は、複数の取引で連続して偽造券が投入されたか判定することを特徴とする請求項5記載の紙葉類処理装置。
【請求項13】
投入された紙葉類の鑑別を行う紙葉類処理方法であって、
投入された紙葉類の画像を取得し、
該得られた画像を基に、投入された紙葉類の真贋を鑑別し、
該鑑別により偽造券と判定された紙葉がそのスレッド位置が搬送方向と平行となるように搬送されたか判別し、
前記スレッド位置が搬送方向と平行に搬送されたと判別されたとき、前記紙幣が前回の投入時とは縦横方向が入れ換わって再搬送されるように制御すし、
前記再搬送される紙幣の搬送速度を最初の搬送時よりも低下させるように制御する、
ことを特徴とする紙葉類処理方法。
【請求項14】
投入された紙葉類を鑑別する紙葉類処理方法であって、
投入された紙葉類の真贋を鑑別し、
該鑑別結果を基に、1または複数の取引において偽造券が投入されたか判定し、
該判定により偽造券が投入されたと判定されたとき、装置を休止させるように制御する、
ことを特徴とする紙葉類処理方法。

【国際公開番号】WO2004/023401
【国際公開日】平成16年3月18日(2004.3.18)
【発行日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−534049(P2004−534049)
【国際出願番号】PCT/JP2002/008817
【国際出願日】平成14年8月30日(2002.8.30)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【出願人】(000237639)富士通フロンテック株式会社 (667)
【Fターム(参考)】