説明

紙葉類天地反転装置及びこれを備えた紙葉類整理装置

【課題】簡単な構成で迅速に紙葉類の天地を反転することのできる紙葉類天地反転装置及びこれを備えた紙葉類整理装置を提供する。
【解決手段】地状態の紙幣10は、紙幣天地反転装置3へ搬入されると、搬送部材6a〜6eによって、搬送路5を紙幣10が搬送される搬送方向Lと紙幣10の長手方向軸Lとのなす角度を変更する回転運動と、その角度を変えずに搬送方向Lに移動する直線運動とを組み合わせて搬送路5を搬送されて、天状態に反転される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、紙葉類天地反転装置及びこれを備えた紙葉類整理装置に係り、特に、紙幣や投票用紙等の紙葉類の天地(上下)を反転させて天地を整理する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紙葉類の天地を反転させる従来の装置として、紙葉類の搬送方向を逆転させて天地を逆転させるスイッチバック装置や、紙葉類を上下で挟みターンテーブルのように180°回転させる装置等が存在する。特許文献1には、前者に相当するスイッチバック装置が記載されている。このスイッチバック装置では、紙葉類の搬送方向先端をストッパに衝突させて当該紙葉類の搬送を一旦停止し、紙葉類の後端を先頭にして逆方向に送り出すことにより、紙葉類の搬送方向が逆転される。後者の装置では、ターンテーブル上に搬送された紙葉類をターンテーブル上で静止させると共にフリーな状態にし、ターンテーブルを180°回転させることによって天地を反転させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−95505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、スイッチバック装置やターンテーブルにより紙葉類の天地を逆転させるためには、紙葉類の動きを途中で一旦静止させる必要があり、天地の反転に時間がかかるといった問題点があった。また、スイッチバック装置では特に、非常に大がかりな装置になってしまうといった問題点もあった。
【0005】
この発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、簡単な構成で迅速に紙葉類の天地を反転することのできる紙葉類天地反転装置及びこれを備えた紙葉類整理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る紙葉類天地反転装置は、紙葉類が搬送される搬送路と、搬送路に沿って互いに間隔をあけて設けられた、紙葉類を搬送する複数の搬送部材とを備え、紙葉類は、搬送路を紙葉類が搬送される搬送方向と紙葉類の長手方向軸とのなす角度を変更する回転運動と、角度を変えずに搬送方向に移動する直線運動とを組み合わせて搬送路を搬送されることにより天地が反転される。
複数の搬送部材はそれぞれ、互いに接しながら回転する2つの回転部材からなり、2つの回転部材は、搬送方向と垂直な方向に関して一端側から他端側に向かって回転速度が増加するようになっていてもよい。
2つの回転部材のうちの少なくとも一方は円錐台形状を有してもよい。円錐台形状を有する回転部材は、複数の円錐台部分から構成されてもよい。
各搬送部材は、2つの回転部材によって紙葉類を把持する把持点を少なくとも2つ有し、隣り合う搬送部材の間隔は、隣り合う2つの搬送部材との間で2つの把持点において紙葉類が把持されるような間隔である。
複数の搬送部材はそれぞれ、互いに接しながら回転する2つの回転部材からなり、2つの回転部材はそれぞれ複数のローラからなり、複数のローラは、搬送方向と垂直な方向に関して一端側から他端側に向かって間隔をあけて設けられ、複数のローラの回転速度はそれぞれ、一端側から他端側に向かって増加するように異なっていてもよい。
この発明に係る紙葉類整理装置は、上記の紙葉類天地反転装置と、紙葉類天地反転装置をバイパスするバイパス経路と、紙葉類が紙葉類天地反転装置又はバイパス経路に搬入される前に紙葉類の天地を判別する天地判別装置とを備え、天地判別装置によって地状態と判定された紙葉類は、紙葉類天地反転装置に搬入されて天地が反転され、天地判別装置によって天状態と判定された紙葉類は、バイパス経路を通過する。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、紙葉類は、搬送部材によって、搬送路を紙葉類が搬送される搬送方向と紙葉類の長手方向軸とのなす角度を変更する回転運動と、角度を変えずに搬送方向に移動する直線運動とを組み合わせて搬送路を搬送されることにより天地が反転されるので、簡単な構成で迅速に紙葉類の天地を反転することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1に係る紙幣整理装置の概略構成図である。
【図2】実施の形態1に係る紙幣天地反転装置の主要部の断面図である。
【図3】実施の形態1に係る紙幣天地反転装置の搬送路を取り除いた状態の主要部の平面図である。
【図4】実施の形態1に係る紙幣天地反転装置が紙幣の天地を反転させる動作を説明するための平面図である。
【図5】実施の形態2に係る紙幣天地反転装置の搬送路を取り除いた状態の主要部の平面図である。
【図6】実施の形態2に係る紙幣天地反転装置が紙幣の天地を反転させる動作を説明するための平面図である。
【図7】実施の形態2に係る紙幣天地反転装置が紙幣の天地を反転させる動作を説明するための平面図である。
【図8】実施の形態2に係る紙幣天地反転装置が紙幣の天地を反転させる動作を説明するための平面図である。
【図9】実施の形態2に係る紙幣天地反転装置が紙幣の天地を反転させる動作を説明するための平面図である。
【図10】実施の形態2に係る紙幣天地反転装置が紙幣の天地を反転させる動作を説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1.
この発明の実施の形態1に係る紙葉類整理装置を、紙幣の天地を揃える装置を例にして説明する。図1に、この実施の形態1に係る紙葉類整理装置である紙幣整理装置1の概略構成図を示す。紙幣整理装置1は、紙幣の天地を判別する天地判別装置2と、天地判別装置2で地状態と判別された紙幣を天状態に反転させる紙幣天地反転装置3と、天地判別装置2で天状態と判別された紙幣を、紙幣天地反転装置3をバイパスさせるためのバイパス経路4とを備えている。
【0010】
図2に示されるように、紙幣天地反転装置3は、紙幣が搬送される搬送路5と、紙幣を搬送する5つの搬送部材6a〜6e(図2には、搬送部材6aのみが図示されている)とを備えている。搬送部材6aは、全体的に略円錐台形状の一体型ローラ7aと、搬送路5内で一体型ローラ7aに接しながら回転する5つの個別ローラ8とを備えている。図2には図示されていないが、搬送部材6b〜6eについても同様に、一体型ローラ7b〜7e(図3参照)のそれぞれと5つの個別ローラ8とが接しながら回転するようになっている。ここで、一体型ローラ7a〜7eと、5つの個別ローラ8からなる組とはそれぞれ、回転部材を構成する。
【0011】
一体型ローラ7aには、外径が異なる5つの円錐台部分11〜15が一端から他端に向かって間隔をあけて設けられ、円錐台部分11〜15のそれぞれの間には、隣接する円錐台部分の外径よりも小さな外径を有するくびれ部16〜19が設けられている。円錐台部分11〜15の外径はそれぞれ、円錐台部分11から円錐台部分15に向かって順次小さくなっており、くびれ部16〜19の外径もくびれ部16からくびれ部19に向かって順次小さくなっている。一体型ローラ7aの回転軸21は、水平方向に対して傾いて設けられており、これにより、円錐台部分11〜15のそれぞれの側面11a〜15aは、搬送路5内において、水平な同一平面に接するようになっている。5つの個別ローラ8はそれぞれ、水平な回転軸22に固定されており、搬送路5内において、円錐台部分11〜15のそれぞれと接している。図2には図示しないが、一体型ローラ7b〜7eについても同じ構成となっている。
【0012】
図3に示されるように、5つの一体型ローラ7a〜7eは、搬送路5(図2参照)に沿って、入口側から出口側に向かって間隔をあけて設けられている。一体型ローラ7a及び7b間の間隔をΔxとし、以下同様に、一体型ローラ7b及び7c間の間隔をΔx、一体型ローラ7c及び7d間の間隔をΔx、一体型ローラ7d及び7e間の間隔をΔxとする。尚、各間隔Δx〜Δxについては後述する。
【0013】
一体型ローラ7aの5つの円錐台部分11〜15のそれぞれは、5つの個別ローラ8(図2参照)のそれぞれと、把持点a〜aにおいて接している。以下同様に、5つの個別ローラ8と一体型ローラ7bの5つの円錐台部分のそれぞれとの接触点を把持点b〜bとし、5つの個別ローラ8と一体型ローラ7cの5つの円錐台部分のそれぞれとの接触点を把持点c〜cとし、5つの個別ローラ8と一体型ローラ7dの5つの円錐台部分のそれぞれとの接触点を把持点d〜dとし、5つの個別ローラ8と一体型ローラ7eの5つの円錐台部分のそれぞれとの接触点を把持点e〜eとする。尚、一体型ローラ7a〜7eの5つの円錐台部分のそれぞれと個別ローラ8との接触点を「把持点」とするのは、この接触点すなわち把持点において、個別ローラ8と円錐台部分との間で紙幣が挟まれることにより把持されながら搬送されるからである。
【0014】
次に、この実施の形態1に係る紙葉類整理装置及び紙葉類天地反転装置の動作について説明する。
図1に示されるように、紙幣整理装置1に投入された紙幣は、天地判別装置2において天地を判別され、天状態の紙幣はバイパス経路4へ送られ、地状態の紙幣は紙幣天地反転装置3へ送られる。紙幣天地反転装置3に送られた紙幣は、後述する動作によって天状態に反転され、バイパス経路4へ送られた紙幣はそのままの状態でバイパス経路4を通過する。紙幣天地反転装置3及びバイパス経路4のそれぞれを通過した紙幣は全て天状態になっており、天状態にそろった紙幣の束にまとめられる。
【0015】
次に、図4に基づいて、紙幣天地反転装置3が地状態の紙幣を天状態に反転する動作について説明する。
紙幣天地反転装置3に送られた地状態の紙幣10は、搬送部材6aの直前で、紙幣10が搬送路5を搬送される搬送方向Lと紙幣10の長手方向軸Lとのなす角度θが90°となっている。この状態で、紙幣10は、一体型ローラ7aと個別ローラ8(図2参照)とによって挟まれるようになる。このとき、紙幣10は、一体型ローラ7aの各円錐台部分11〜15と各個別ローラ8との接触点である5つの把持点a〜aにおいて把持される(状態C1)。円錐台部分11〜15の外径が順次小さくなっているので、把持点a〜aにおける回転速度は、把持点aから把持点aに向かって順次遅くなる。すなわち、一体型ローラ7aと個別ローラ8とが互いに接しながら回転することにより、把持点a〜aにおける紙幣10の搬送速度は、把持点aから把持点aに向かって順次遅くなる。これにより、紙幣10は、把持点a側から把持点a側に向かって単位時間当たりの移動距離が大きくなるので、紙幣10は、搬送路5において、搬送方向Lと長手方向軸Lとのなす角度θが小さくなるように回転運動を行う。
【0016】
紙幣10が回転運動を行い、搬送方向Lと長手方向軸Lとのなす角度がθ(0°<θ<90°)になると、紙幣10は、搬送部材6aにおける把持点aと搬送部材6bにおける把持点bとの2つの把持点によって把持されるようになる(状態C2)。実施の形態1において、搬送部材6a及び6b間の間隔Δxは、搬送方向Lと長手方向軸Lとのなす角度がθになったときに、紙幣10が2つの把持点a及びbによって把持され得る値となっている。2つの把持点a及びbによって把持されながら紙幣10が搬送されると、紙幣10は、搬送方向Lと長手方向軸Lとのなす角度θを変えずに、搬送方向Lに沿った直線運動を行う。
【0017】
紙幣10が搬送方向Lに沿った直線運動を行うと、やがて紙幣10は、把持点aによる把持が解消され、搬送部材6bにおける2つの把持点b及びbによって把持されるようになる(状態C3)。この状態で、一体型ローラ7bと個別ローラ8とが互いに接しながら回転すると、把持点b及びbにおける回転速度の違いにより、紙幣10は、搬送路5において、搬送方向Lと長手方向軸Lとのなす角度θが小さくなるように回転運動を行う。その後、回転運動が継続して搬送方向Lと長手方向軸Lとのなす角度がθ(0°<θ<θ)になると、紙幣10は、搬送部材6bにおける把持点bと搬送部材6cにおける把持点cとの2つの把持点によって把持されるようになる(状態C4)。実施の形態1において、搬送部材6b及び6c間の間隔Δxは、搬送方向Lと長手方向軸Lとのなす角度がθになったときに、紙幣10が2つの把持点b及びcによって把持され得る値となっている。2つの把持点b及びcによって把持されながら紙幣10が搬送されると、紙幣10は、搬送方向Lと長手方向軸Lとのなす角度θを変えずに、搬送方向Lに沿った直線運動を行う。
【0018】
紙幣10が搬送方向Lに沿った直線運動を行うと、やがて紙幣10は、把持点bによる把持が解消され、搬送部材6cにおける2つの把持点c及びcによって把持されるようになる(状態C5)。この状態で、一体型ローラ7cと個別ローラ8とが互いに接しながら回転すると、把持点c及びcにおける回転速度の違いにより、紙幣10は、搬送路5において、搬送方向Lと長手方向軸Lとのなす角度θが小さくなるように回転運動を行う。その後、回転運動が継続すると、搬送方向Lと長手方向軸Lとが平行な状態となり、さらに回転運動が継続すると、搬送方向Lと長手方向軸Lとのなす角度が180°から減少するように変化しながら回転運動を行う。最終的に、紙幣10は、搬送部材6cにおける把持点cと搬送部材6dにおける把持点dとの2つの把持点によって把持されるようになる(状態C6)。実施の形態1において、搬送部材6c及び6d間の間隔Δxは、搬送方向Lと長手方向軸Lとのなす角度がθ(90°<θ<180°)になったときに、紙幣10が2つの把持点c及びdによって把持され得る値となっている。2つの把持点c及びdによって把持されながら紙幣10が搬送されると、紙幣10は、搬送方向Lと長手方向軸Lとのなす角度θを変えずに、搬送方向Lに沿った直線運動を行う。
【0019】
紙幣10が搬送方向Lに沿った直線運動を行うと、やがて紙幣10は、把持点cによる把持が解消され、搬送部材6dにおける2つの把持点d及びdによって把持されるようになる(状態C7)。この状態で、一体型ローラ7dと個別ローラ8とが互いに接しながら回転すると、把持点d及びdにおける回転速度の違いにより、紙幣10は、搬送路5において、搬送方向Lと長手方向軸Lとのなす角度θが小さくなるように回転運動を行う。その後、搬送方向Lと長手方向軸Lとのなす角度がθ(90°<θ<θ)になると、紙幣10は、搬送部材6dにおける把持点dと搬送部材6eにおける把持点eとの2つの把持点によって把持されるようになる(状態C8)。実施の形態1において、搬送部材6d及び6e間の間隔Δxは、搬送方向Lと長手方向軸Lとのなす角度がθになったときに、紙幣10が2つの把持点d及びeによって把持され得る値となっている。2つの把持点d及びeによって把持されながら紙幣10が搬送されると、紙幣10は、搬送方向Lと長手方向軸Lとのなす角度θを変えずに、搬送方向Lに沿った直線運動を行う。
【0020】
紙幣10が搬送方向Lに沿った直線運動を行うと、やがて紙幣10は、把持点dによる把持が解消され、搬送部材6eにおける2つの把持点e及びeによって把持されるようになる(状態C9)。この状態で、一体型ローラ7eと個別ローラ8とが互いに接しながら回転すると、把持点e及びeにおける回転速度の違いにより、紙幣10は、搬送路5において、搬送方向Lと長手方向軸Lとのなす角度θが小さくなるように回転運動を行う。最終的に搬送部材6eから紙幣10が搬出されるときには、搬送方向Lと長手方向軸Lとのなす角度θが90°の状態となり、搬送部材6aに搬入された状態に対して紙幣10が180°回転されて、紙幣10は天状態に反転されることになる(状態C10)。
【0021】
このように、紙幣10は、搬送部材6a〜6eによって、搬送路5を紙幣10が搬送される搬送方向Lと紙幣10の長手方向軸Lとのなす角度を変更する回転運動と、その角度を変えずに搬送方向Lに移動する直線運動とを組み合わせて搬送路5を搬送されることにより天地が反転されるので、簡単な構成で迅速に紙葉類の天地を反転することができる。
【0022】
実施の形態1では、紙幣天地反転装置3は、5つの搬送部材6a〜6eを備えていたが、この形態に限定するものではない。一体型ローラ7a〜7eの形状により、紙幣10の回転運動が異なるので、一体型ローラ7a〜7eの形状に基づいて、搬送部材の個数が決定される。これとは逆に、紙幣天地反転装置3の大きさ、すなわち搬送路5の長さが先に決定されている場合には、その長さで紙幣10を天地反転できるように、一体型ローラの形状及び個数が決定される。また、隣り合う搬送部材間の間隔については、紙葉類の大きさに基づいて決定される。
【0023】
実施の形態1では、搬送部材6a〜6eは、下側に一体型ローラ7a〜7eを設けると共に上側に個別ローラ8を設けていたが、上下逆に設けてもよい。また、個別ローラ8の代わりに、2つの一体型ローラを互いに接するように設けてもよい。また、一体型ローラ7a〜7eには、隣り合う円錐台部分間にくびれ部が設けられていたが、くびれ部を設けずに全体として完全な円錐台形状を有してもよい。
【0024】
実施の形態2.
次に、この発明の実施の形態2に係る紙葉類天地反転装置について説明する。尚、実施の形態2において、図1〜4の参照符号と同一の符号は、同一又は同様な構成要素であるので、その詳細な説明は省略する。
この発明の実施の形態2に係る紙葉類天地反転装置は、実施の形態1に対して、複数のローラの回転速度を変えることにより回転部材の回転速度の違いを実現するようにしたものである。
【0025】
図5に示されるように、紙幣天地反転装置30は、搬入部材31と、2つの搬送部材32,33と、搬出部材34とを備えている。搬入部材31は、紙幣の搬送方向Lと垂直な方向に関して一端側から他端側に向かって間隔をあけて設けられた3つのローラ31a〜31cと、各ローラ31a〜31cに接しながら回転する図示しない3つのローラとからなる3つのローラ対を有している。搬出部材34も同様に、紙幣の搬送方向Lと垂直な方向に関して一端側から他端側に向かって間隔をあけて設けられた3つのローラ34a〜34cと、各ローラ34a〜34cに接しながら回転する図示しない3つのローラとからなる3つのローラ対を有している。
【0026】
搬送部材32,33は、紙幣の搬送方向Lに関して間隔をあけて設けられている。搬送部材32は、紙幣の搬送方向Lと垂直な方向に関して一端側から他端側に向かって間隔をあけて設けられた2つのローラ32a及び32bと、各ローラ32a及び32bに接しながら回転する図示しない2つのローラとを備えた2つのローラ対を有している。搬送部材33も同様に、紙幣の搬送方向Lと垂直な方向に関して一端側から他端側に向かって間隔をあけて設けられた2つのローラ33a及び33bと、各ローラ33a及び33bに接しながら回転する図示しない2つのローラとを備えた2つのローラ対を有している。ここで、ローラ32a及び32bと、これらに接しながら回転する2つのローラと、ローラ33a及び33bと、これらに接しながら回転する2つのローラとはそれぞれ、回転部材を構成する。
【0027】
ローラ32a及び33aは、ステッピングモータ51によって駆動されるようになっている。すなわち、ローラ32a及び33aそれぞれの回転軸35及び36の端部にはそれぞれスプロケット41及び42が設けられ、ステッピングモータ51の回転軸54の端部にはスプロケット55が設けられ、スプロケット41,42,55にベルト61が掛かる構成により、ステッピングモータ51の回転がローラ32a及び33aのそれぞれに伝達されるようになっている。ローラ32bは、ステッピングモータ52によって駆動されるようになっている。すなわち、ローラ32bの回転軸37の端部にはスプロケット43が設けられ、ステッピングモータ52の回転軸56の端部にはスプロケット57が設けられ、スプロケット43,57にベルト62が掛かる構成により、ステッピングモータ52の回転がローラ32bに伝達されるようになっている。ローラ33bは、ステッピングモータ53によって駆動されるようになっている。すなわち、ローラ33bの回転軸38の端部にはスプロケット44が設けられ、ステッピングモータ53の回転軸58の端部にはスプロケット59が設けられ、スプロケット44,59にベルト63が掛かる構成により、ステッピングモータ53の回転がローラ33bに伝達されるようになっている。尚、ローラ31a〜31c及びローラ34a〜34cもそれぞれ、モータによって駆動されるが、それらのモータについては、図示及び説明を省略する。
【0028】
紙幣の搬送方向Lに関してローラ32bの直前に、紙幣の通過を検知するセンサ71が設けられている。また、紙幣の搬送方向Lに関してローラ33a,33bのそれぞれの直前に、紙幣の通過を検知するセンサ72,73が設けられている。さらに、ローラ34bとローラ34cとの間の位置に、紙幣の通過を検知するセンサ74が設けられている。紙幣天地反転装置30は、図示しない制御装置を備えており、当該制御装置に、センサ71〜74のそれぞれと、ステッピングモータ51〜53のそれぞれとが電気的に接続されている。
【0029】
尚、実施の形態2に係る紙葉類整理装置である紙幣整理装置は、図1において、紙幣天地反転装置3を、上記構成を有した紙幣天地反転装置30に置き換えたものであり、その他の構成は、図1に示された構成と同じである。
【0030】
次に、図6〜11に基づいて、紙幣天地反転装置30が地状態の紙幣を天状態に反転する動作について説明する。
図6に示されるように、紙幣天地反転装置30に送られた地状態の紙幣10は、搬送方向Lと紙幣10の長手方向軸Lとのなす角度θが90°の状態で、搬入部材31によって搬送方向Lの方向に搬送される。このとき、ローラ32a及び32bはそれぞれ、同じ回転速度で回転している。また、ローラ33a及び33bもそれぞれ、同じ回転速度で回転している。センサ71が紙幣10を検知すると、図示しない制御装置は、ステッピングモータ52の回転数を変化させて、ローラ32bの回転速度をローラ32aの回転速度よりも大きくする。尚、ローラ32bの回転速度は、搬送される紙幣10の大きさに基づいて決定され、予め設定されている。
【0031】
紙幣10が搬送方向Lの方向に搬送されると、搬入部材31のローラ31a〜31c(図5参照)による紙幣10の把持が解消され、紙幣10が搬送部材32のローラ32a及び32bのみによって把持されるようになる。すると、図7に示されるように、紙幣10は、ローラ32a及び32bの回転速度の違いによって、角度θが小さくなるように回転運動を行う。紙幣10の回転運動により、センサ73が紙幣10を検知すると、図示しない制御装置は、ステッピングモータ53の回転数を変化させて、ローラ33bの回転速度をローラ33aの回転速度よりも大きくする。尚、ローラ33bの回転速度は、搬送される紙幣10の大きさに基づいて決定され、予め設定されている。さらに紙幣10の回転運動が継続し、センサ72が紙幣10を検知すると、すなわち紙幣10の長手方向軸Lが搬送方向Lと平行な状態になると、図示しない制御装置は、ステッピングモータ52の回転数を変化させて、ローラ32bの回転速度をローラ32aの回転速度と同じにする。これにより、紙幣10は、図8に示されるように、紙幣10の長手方向軸Lが搬送方向Lと平行な状態で、搬送方向Lの方向に搬送される。すなわち、紙幣10は、搬送方向Lに移動する直線運動を行う。
【0032】
この状態での紙幣10の搬送が継続されると、搬送部材32のローラ32a及び32bによる紙幣10の把持が解消され、紙幣10が搬送部材33のローラ33a及び33bのみによって把持されるようになる。すると、図9に示されるように、紙幣10は、ローラ33a及び33bの回転速度の違いによって、搬送方向Lと紙幣10の長手方向軸Lとのなす角度θが小さくなるように回転運動を行う。紙幣10の回転運動により、センサ74が紙幣10を検知すると、すなわち、図10に示されるように角度θが90°の状態になると、図示しない制御装置は、ステッピングモータ53の回転数を変化させて、ローラ33bの回転速度をローラ33aの回転速度と同じにする。これにより、紙幣10は、角度θが90°の状態で、搬送方向Lの方向に搬送される。搬出部材34から搬出された紙幣10は、最初の状態から180°回転されて、天状態に反転されることになる
【0033】
このように、ローラ32a及び32bそれぞれの回転速度と、ローラ33a及び33bそれぞれの回転速度とを異なるようにすることによっても、紙幣10は、搬送方向Lと紙幣10の長手方向軸Lとのなす角度θを変更する回転運動と、その角度θを変えずに搬送方向Lに移動する直線運動とを組み合わせて搬送路5を搬送されるので、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0034】
実施の形態2では、搬送部材32及び33はそれぞれ、2つのローラ対を備えているが、2つに限定するものではなく、3つ以上のローラ対を設け、それぞれの回転速度を異なるようにしてもよい。また、搬送部材も2つに限定するものではなく、3つ以上設けてもよい。
【0035】
実施の形態1及び2では、紙葉類整理装置として、紙幣の天地を揃える紙幣整理装置1を例にして説明したが、これに限定するものではない。紙葉類は紙幣に限定するものではなく、投票用紙等、任意のものであってもよく、従って、紙葉類整理装置は、紙葉類の種類に応じて、投票用紙整理装置等、紙葉類の天地を揃えることのできる任意のものであってもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 紙幣整理装置(紙葉類整理装置)、2 天地判別装置、3,30 紙幣天地反転装置(紙葉類天地反転装置)、4 バイパス経路、5 搬送路、6a〜6e,32,33 搬送部材、7a〜7e 一体型ローラ(回転部材)、8 個別ローラ(回転部材)、10 紙幣(紙葉類)、11〜15 円錐台部分、32a,32b ローラ(回転部材)、33a,33b ローラ(回転部材)、L 搬送方向、L (紙幣の)長手方向軸、Δx〜Δx 間隔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉類が搬送される搬送路と、
該搬送路に沿って互いに間隔をあけて設けられた、前記紙葉類を搬送する複数の搬送部材と
を備え、
前記紙葉類は、
前記搬送路を前記紙葉類が搬送される搬送方向と前記紙葉類の長手方向軸とのなす角度を変更する回転運動と、
前記角度を変えずに前記搬送方向に移動する直線運動と
を組み合わせて前記搬送路を搬送されることにより天地が反転される紙葉類天地反転装置。
【請求項2】
前記複数の搬送部材はそれぞれ、互いに接しながら回転する2つの回転部材からなり、
該2つの回転部材は、前記搬送方向と垂直な方向に関して一端側から他端側に向かって回転速度が増加するようになっている、請求項1に記載の紙葉類天地反転装置。
【請求項3】
前記2つの回転部材のうちの少なくとも一方は円錐台形状を有する、請求項2に記載の紙葉類天地反転装置。
【請求項4】
円錐台形状を有する前記回転部材は、複数の円錐台部分からなる、請求項3に記載の紙葉類天地反転装置。
【請求項5】
各搬送部材は、前記2つの回転部材によって前記紙葉類を把持する把持点を少なくとも2つ有し、
隣り合う搬送部材の間隔は、隣り合う2つの搬送部材との間で2つの前記把持点において前記紙葉類が把持されるような間隔である、請求項2〜4のいずれか一項に記載の紙葉類天地反転装置。
【請求項6】
前記複数の搬送部材はそれぞれ、互いに接しながら回転する2つの回転部材からなり、該2つの回転部材はそれぞれ複数のローラからなり、該複数のローラは、前記搬送方向と垂直な方向に関して一端側から他端側に向かって間隔をあけて設けられ、前記複数のローラの回転速度はそれぞれ、前記一端側から前記他端側に向かって増加するように異なっている、請求項1に記載の紙葉類天地反転装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の紙葉類天地反転装置と、
該紙葉類天地反転装置をバイパスするバイパス経路と、
前記紙葉類が前記紙葉類天地反転装置又は前記バイパス経路に搬入される前に、前記紙葉類の天地を判別する天地判別装置と
を備え、
該天地判別装置によって地状態と判定された紙葉類は、前記紙葉類天地反転装置に搬入されて天地が反転され、前記天地判別装置によって天状態と判定された紙葉類は、前記バイパス経路を通過する紙葉類整理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−101880(P2012−101880A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−250861(P2010−250861)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【出願人】(592221908)武蔵エンジニアリング株式会社 (30)
【Fターム(参考)】