説明

紙葉類搬送装置

【課題】紙葉類に切れ目部などがあっても、所望する分岐搬送路に確実に紙葉類を振り分けることができるようにする。
【解決手段】紙葉類を主搬送路に沿って搬送する搬送手段と、この搬送手段によって搬送される紙葉類を正方向に回動することにより、第1のガイド面24aに沿って第1の方向、或いは、逆方向に回動することにより第2のガイド面24bに沿って第2の方向に振り分ける振分ゲート24と、この振分ゲート24に設けられ、前記第1のガイド面24a、或いは第2のガイド面24bとによって前記紙葉類を前記第1或いは第2の方向にガイドするガイド片28と、前記振分ゲート24によって前記第1或いは第2の方向に振り分けられた紙葉類を第1或いは第2の分岐搬送路に沿って搬送する分岐搬送手段とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、例えば、紙幣などの紙葉類を搬送する紙葉類搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の紙葉類搬送装置には、主搬送路に沿って搬送される紙葉類を振分ゲートの回動によって第1或いは第2の方向に振り分け、この振り分けられた紙葉類を第1或いは第2の分岐搬送路に沿って搬送するものがある。
【0003】
振分ゲートは、紙葉類を第1の方向にガイドする第1のガイド面、或いは、第2の方向にガイドする第2のガイド面を有している。
【0004】
ところで、近時においては、紙葉類を高速処理するために、振分ゲートを高速で回動させることが求められている。このため、振分ゲートは薄型化が図られ、例えば、板厚2.5mmの板材を三角形状に形成してその一方の斜辺部を第1のガイド面、他方の斜辺部を第2のガイド面としている。
【0005】
しかしながら、第1及び第2のガイド面の幅寸法は、2.5mmと狭いため、例えば、紙葉類にその搬送方向に沿う切れ目部があった場合には、切れ目部を境とする一方側がガイド面にガイドされ、他方側がガイド面から外れてしまうことがある。このような場合には、紙葉類を上手く振り分けることができず、紙葉類の切れ目部を境とする一方側が第1の分岐搬送路に送られ、他方側が第2の分岐搬送路に送られて別々に搬送されて切断されてしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−87647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
実施形態が解決しようとする課題は、紙葉類に切れ目部などがあっても、所望する分岐搬送路に確実に紙葉類を振り分けることができるようにした紙葉類搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、実施形態は、紙葉類を主搬送路に沿って搬送する搬送手段と、この搬送手段によって搬送される紙葉類を正方向に回動することにより、第1のガイド面に沿って第1の方向、或いは、逆方向に回動することにより第2のガイド面に沿って第2の方向に振り分ける振分ゲートと、この振分ゲートに設けられ、前記第1のガイド面、或いは第2のガイド面とによって前記紙葉類を前記第1或いは第2の方向にガイドするガイド部と、前記振分ゲートによって前記第1或いは第2の方向に振り分けられた紙葉類を第1或いは第2の分岐搬送路に沿って搬送する分岐搬送手段とを具備する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施の形態である紙葉類処理装置を示す全体構成図。
【図2】図1の紙葉類処理装置における紙葉類搬送装置を示す正面図。
【図3】図2の紙葉類搬送装置を示す斜視図。
【図4】図2の紙葉類搬送装置の搬送ベルトによって紙葉類を挟持した状態を示す斜視図。
【図5】図2の紙葉類搬送装置における振分装置を示す斜視図。
【図6】図5の振分装置の振分ゲートを示す斜視図。
【図7】図2の紙葉類搬送装置におけるピンチローラを示す斜視図。
【図8】図2の紙葉類搬送装置における搬送ローラを示す斜視図。
【図9】図6の振分ゲートの駆動制御系を示すブロック図。
【図10】図6の振分ゲートの振分動作を示す図。
【図11】図6の振分ゲートの振分動作を示す図。
【図12】図6の振分ゲートの振分動作時におけるガイド部の機能を示す斜視図。
【図13】図6の振分ゲートの振分動作時におけるガイド部の機能を示す正面図。
【図14】従来の振分ゲートの振分動作を示す斜視図。
【図15】従来の振分ゲートの振分動作を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
図1は本発明の一実施の形態である紙葉類処理装置を示す概略的構成図である。
【0012】
この紙葉類処理装置は、紙葉類Pを取り出す取出部1、取り出された紙葉類Pを搬送する搬送部2、搬送される紙葉類Pを処理する処理部3、処理された紙葉類Pを第1の方向とこの第1の方向と異なる第2の方向に振り分ける振分ゲート4,5、これら振分ゲート4,5によって振り分けられて搬送される紙葉類を集積する集積部6,7から構成される。
【0013】
取出部1は積層状態で載置された紙葉類Pを上部側のものから順次、1枚ずつ取り出して搬送部2へ受け渡す。搬送部2は搬送手段としての主搬送路2aと、この主搬送路2aに接続される分岐搬送手段としての第1及び第2の分岐搬送路2b、2cと、第2の分岐搬送路2cに接続される第3及び第4の分岐搬送路2d、2eとによって構成され、後述するように紙葉類Pをベルト間に挟んで一定の速度で搬送するようになっている。処理部3は紙葉類Pに対し各種の処理を施す。
【0014】
振分ゲート4は、処理部3からの情報に基づいて正逆方向に動作されることにより紙葉類Pを第1或いは第2の分岐搬送路2b、2cに振り分け、また、振分ゲート5は、第2の分岐搬送路2cに振り分けられた紙葉類Pを第3或いは第4の分岐搬送路2d、2eに振り分けて集積部6,7へ案内する。
【0015】
集積部6は第1および第2の集積ユニット6a,6bを有し、搬送されてきた紙葉類Pを受け止めて停止させ、再び束状に積層する。集積部(以後、リジェクト庫という)7は排除用紙葉類を集積するもので、搬送されてきた紙葉類を受け止めて停止させ、再び束状に積層する。
【0016】
振分ゲート4によって集積部6側に振り分けられた紙葉類は、第2の分岐搬送路2cに設けられた光学式センサ10により通過枚数がカウントされる。通過枚数が100枚カウントされる毎に振分ゲート5が正逆方向に動作され、紙葉類が100枚ずつ交互に第1及び第2の集積ユニット6a,6bに集積されるようになっている。
【0017】
図2は図1中A部を拡大して示す正面図で、図3はその斜視図である。
【0018】
主搬送路2aは所定間隔を存して平行に配設される上搬送ベルト11aと、これら上搬送ベルト11aの下面に重ね合わされる下搬送ベルト11bとによって構成されている。上、下の搬送ベルト11a,11bは、搬送ローラ12に掛け渡されて屈曲され、紙葉類を図4に示すようにクランプして搬送するようになっている。主搬送路2a上には搬送されてくる紙葉類Pが通過することを監視する光学センサ9が設置されている。
【0019】
主搬送路2aの搬出側は搬送ローラ14とピンチローラ15とによって挟持されている。搬送ローラ14はベース(図示じない)に取り付けられ、ピンチローラ15はバネ力によって搬送ローラ14に押付けられている。搬送ベルト11a,11bの挟持は搬送ローラ14とピンチローラ15を越えた位置で一旦なくなる。
【0020】
上搬送ベルト11aは搬送ローラ17に掛け渡され、ベルト18が重ね合わされることにより第1の分岐搬送路2bが構成されている。下搬送ベルト11bは搬送ローラ20に掛け渡され、ベルト21が重ね合わされることにより第2の分岐搬送路2cが構成されている。
【0021】
図5は、上記した振分ゲート4を示す斜視図である。
【0022】
この振分ゲート4は駆動用のロータリソレノイド23のシャフト23aに所定間隔を存して並行に取り付けられている。駆動用ロータリソレノイド23は通電方向が切り替えられることにより時計回り、あるいは反時計回りに回転する。
【0023】
振分ゲート24は、処理の高速化に伴って高速で回動する必要があるため、極力、慣性モーメントを小さくし、また、紙葉類の摩擦に対する耐磨耗性が必要とされている。このため、振分ゲート24は合成樹脂製の薄板、例えば、グラスファイバーレインフォーストプラスチック、或いは、カーボンファイバーレインフォーストプラスチックによって三角形状に形成されている。
【0024】
これら振分ゲート24はその上部側の傾斜面が第1のガイド面24a、下部側の傾斜面が第2のガイド面24bとなっている。振分ゲート24の後端部には二股部24cが形成され、これら二股部24c内には振分ゲート24の回動量を規制するストッパ26が挿入されている。ストッパ26は搬送ローラ17,20とともに、ベース(図示しない)に取付けられている。
【0025】
ところで、振分ゲート24の一側面部には、図6にも示すように、紙葉類をガイドするガイド部としてのガイド片28が取り付けられている。ガイド片28は金属製の薄板、例えば、ステンレス材によって形成されている。ガイド片28は中央部から鋭角(振分ゲート24の先端角度よりは大きい)に折曲され、その上面部28aは振分ゲート24の第1のガイド面24aに沿うように傾斜され、下面部28bは振分ゲート24の第2のガイド面24bに沿うように傾斜されている。
【0026】
ガイド片28は高性能のエポキシ系接着剤によって振分ゲート24に接着されている。ガイド片28の一側部には折曲部28cが形成され、ガイド片28は折曲部28cを振分ゲート24の一側面部に接合して接着されている。ガイド片28の折曲部28cには通孔28dが穿設され、この通孔28から接着剤を内側に回り込ませることができるようになっている。ガイド片28の折曲部28cの周囲部28eは接着剤で肉盛りされて接着強度を高めるとともに、紙葉類が振分ゲート24とガイド片28の接合面に入り込むことを防止している。
【0027】
図7は上記したピンチローラ15を示すもので、このピンチローラ15の周面部には所定間隔を存して溝部15aが周方向に沿って形成されている。振分ゲート24の上方への回動時には、その先端部がピンチローラ15の溝部15aに入り込んで紙葉類と干渉することのないようになっている。
【0028】
図8は上記した搬送ローラ14を示すもので、この搬送ローラ14の周面部には所定間隔を存して溝部14aが周方向に沿って形成されている。振分ゲート24の上方への回動時には、その先端部が搬送ローラ14の溝部14aに入り込んで紙葉類と干渉することのないようになっている。
【0029】
図9は、振分ゲート24の駆動制御系を示すブロック図である。
【0030】
主搬送路2aに配設された処理部3及び光学センサ9は、送信回路を介してコントローラ30に接続され、コントローラ30には制御回路を介して振分ゲート駆動用のロータリソレノイド23が接続されている。
【0031】
次に、紙葉類の振分動作について説明する。
【0032】
取出部1から取り出された紙葉類Pが主搬送路2aに沿って搬送されて処理部3によって処理されると、その処理情報がコントローラ30に送信される。この処理情報に基づいて、例えば、紙葉類がリジェクトすべきものであるか否かが判別され、リジェクトすべきであると判別された紙葉類Pが光学センサ9によって検出されると、コントローラ30によって駆動用のロータリソレノイド23が時計方向に回転される。この回転により図10に示すように振分ゲート24が下方に回動され、その二股部24cがストッパ26に当接することにより回転が停止される。このとき、振分ゲート24の先端は紙葉類Pと干渉しないようにピンチローラ15の溝部15aに入り込む。この振分ゲート24の回動により、紙葉類Pは矢印で示すように振分ゲート24の第1のガイド面24aに沿って第1の方向にガイドされ、第1の分岐搬送路2bによってリジェクト庫7へ搬送される。
【0033】
また、処理部3によって処理された紙葉類Pがリジェクトすべきものではなく、集積庫6a(6b)に集積すべきものであると判別された場合には、紙葉類が光学センサ9によって検出されると、コントローラ30は駆動用のロータリソレノイド23を反時計方向に回転させる。これにより、振分ゲート24は図11に示すように上方に回動され、その二股部24cがストッパ26に当接することにより停止される。このとき、振分ゲート24の先端は紙葉類Pと干渉しないように搬送ローラ14の溝部14aに入り込む。
【0034】
このように振分ゲート24が回動することにより、紙葉類Pは矢印で示すように振分ゲート24の第2のガイド面24bに沿って第2の方向にガイドされ、第2の分岐搬送路2cによって集積庫6a(6b)に向かって搬送される。
【0035】
ところで、上記した紙葉類Pの振分動作時において、例えば、図12、図13に示すように先端部側に搬送方向に沿う切れ目部が形成された紙葉類Pが搬送されてくることがある。このとき、紙葉類Pの先端部の切れ目部を境とする一方側Paが振分ゲート24,24の第1のガイド面24a,24aに沿ってガイドされ、他方側Pbが振分ゲート24,24の第1のガイド面24a,24aから外れることがある。このような場合には、紙葉類Pの他方側Pbは例えば、下方に垂れ下がって第2の分岐搬送路2cの方向へ向かおうとするが、振分ゲート24の側面部には上記したようにガイド片28が設けられているため、紙葉類Pの他方側Pbはガイド片28の上面部によって支持され、下方への垂れ下がりが規制される。
【0036】
従って、紙葉類Pは振分ゲート24の第1のガイド面24a及びガイド片28の上面部に沿ってガイドされ確実に第1の分岐搬送路2bに送り込まれる。
【0037】
よって、従来のように、紙葉類Pの一方側Paが第1の分岐搬送路2bに送り込まれ、他方側Pbが第2の分岐搬送路2cに送り込まれて分断してしまうようなことがなく、良好に紙葉類Pを搬送することが可能となる。
【0038】
なお、図14及び図15に示す従来の振分装置では、振分ゲート24にガイド片28がないため、上記したように紙葉類Pの先端側が切れた状態で送られてくると、切れ目を境とする一方側Paが振分ゲート24の第1のガイド面24aに沿ってガイドされて第1の分岐搬送路2bに搬送され、他方側Pbは振分ゲート24の横を通って第2の分岐搬送路2cに搬送されてしまう。この場合には、紙葉類Pはその他方側Pbが第2の分岐搬送路2cの搬送ベルトに引っ張られ、一方側Paは第1の分岐搬送路2bの搬送ベルトに引っ張られ、2つに分断してしまう恐れがある。
【0039】
上記したように、この実施の形態によれば、振分ゲート24にガイド片28を設けるため、紙葉類Pに切れ目部があった場合でも、確実に同一の分岐搬送路に案内して振り分けることができ、紙葉類の破損を防止するとともに、誤区分を低減することが可能となる。
【0040】
なお、実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0041】
P…紙葉類、2a…主搬送路(搬送手段)、24a…第1のガイド面、24b…第2のガイド面、24…振分ゲート、28…ガイド片(ガイド部)、2b…第1の分岐搬送路(分岐搬送手段)、2c…第2の分岐搬送路(分岐搬送手段)、28c…折曲部、28d…通孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉類を主搬送路に沿って搬送する搬送手段と、
この搬送手段によって搬送される紙葉類を正方向に回動することにより、第1のガイド面に沿って第1の方向、或いは、逆方向に回動することにより第2のガイド面に沿って第2の方向に振り分ける振分ゲートと、
この振分ゲートに設けられ、前記第1のガイド面、或いは第2のガイド面とによって前記紙葉類を前記第1或いは第2の方向にガイドするガイド部と、
前記振分ゲートによって前記第1或いは第2の方向に振り分けられた紙葉類を第1或いは第2の分岐搬送路に沿って搬送する分岐搬送手段と
を具備することを特徴とする紙葉類搬送装置。
【請求項2】
前記振分ゲートは、合成樹脂製であることを特徴とする請求項1記載の紙葉類搬送装置。
【請求項3】
前記振分ゲートは、薄板を三角形状に形成してなり、一方の傾斜面を第1のガイド面、他方の傾斜面を第2のガイド面とすることを特徴とする請求項1記載の紙葉類搬送装置。
【請求項4】
前記ガイド部は金属製であることを特徴とする請求項1記載の紙葉類搬送装置。
【請求項5】
前記ガイド部は、三角形状に折曲形成され、一方の傾斜面を前記振分体の第1のガイド面、他方の傾斜面を前記振分体の第2のガイド面に沿わせた状態で前記振分体の側面部に取り付けられることを特徴とする請求項3記載の紙葉類搬送装置。
【請求項6】
前記ガイド部は、その側緑部に折曲部を有し、この折曲部を前記振分ゲートの側面部に接着剤によって取り付けられることを特徴とする請求項5記載の紙葉類搬送装置。
【請求項7】
前記ガイド部の折曲部には接着剤を通過させて回り込ませる通孔が形成されたことを特徴とする請求項6記載の紙葉類搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−212400(P2012−212400A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78681(P2011−78681)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】