説明

紙葉類識別装置

【課題】紙葉類に施された凹版印刷に基づいて識別を行うことにより、偽造された紙葉類に対して有効に識別することができる紙葉類識別装置を提供すること。
【解決手段】紙葉類Wの識別を行う紙葉類識別装置10であって、紙葉類Wの凹凸を検出する感圧センサ11と、感圧センサ11により検出されたデータを予め決められた閾値に基づいて二値化する二値化回路13と、二値化回路13により二値化されたデータから特徴情報を抽出し、抽出した特徴情報と、予め入力された紙葉類Wの識別情報とを照合して、該紙葉類を識別する制御部15とを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙葉類識別装置に関し、より詳細には、凹版印刷が施された紙葉類の識別を行う紙葉類識別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば紙幣等の紙葉類を識別する紙葉類識別装置として、紙葉類の被認識パターンである模様パターンを画像入力し、入力された画像データの各画素に対して重み付け画素からなる複数のマスクを用いて演算することにより画像データの各画素から濃度勾配方向成分および濃度勾配強度成分でなる画素成分を抽出し、抽出された濃度勾配方向ごとの濃度勾配強度の総和を特徴量として抽出し、抽出された模様パターンの特徴量と、予め記憶してある標準パターンの特徴量とを比較照合することにより模様パターンがどの標準パターンであるかを識別するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特許第2985893号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記紙葉類識別装置は、紙葉類に印刷されている模様パターンについて標準パターンとの照合を行うことにより該紙葉類の識別を行っているため、近年の高精度カラーコピー等により容易に偽造された模様パターンについては、有効に識別することができない。
【0005】
ところで、例えば紙幣等の偽造防止技術として、凹版印刷が施された紙葉類が知られている。凹版印刷は、凹版を用いて印刷を行う技術であり、該凹版印刷が施された個所は、表面にインクが凸状に付着して凸部が形成される。一方、通常印刷は、例えばオフセット印刷等のようなものであり、該通常印刷が施された個所に凸部が形成されることはない。そのような凹板印刷に基づいて紙葉類の識別を行う技術が求められている。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みて、紙葉類に施された凹版印刷に基づいて識別を行うことにより、偽造された紙葉類に対して有効に識別することができる紙葉類識別装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を解決するために、本発明の請求項1に係る紙葉類識別装置は、紙葉類の識別を行う紙葉類識別装置であって、前記紙葉類の被検出領域における凹凸を検出する検出手段と、前記検出手段による検出結果と、予め入力された前記紙葉類の識別情報とを照合して前記紙葉類を識別する識別手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項2に係る紙葉類識別装置は、上述した請求項1において、前記検出手段は、前記紙葉類の被検出領域の凹凸を検出し、検出したデータを予め決められた閾値に基づいて二値化して出力し、前記識別手段は、前記検出手段の検出結果から特徴情報を抽出し、抽出した特徴情報と、予め入力された前記紙葉類の識別情報とを照合して、該紙葉類を識別することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項3に係る紙葉類識別装置は、上述した請求項1または請求項2において、前記検出手段は、前記紙葉類の被検出領域において通常印刷の上になされた凹版印刷により生じる凹凸を検出することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項4に係る紙葉類識別装置は、上述した請求項1〜3のいずれか一つにおいて、前記検出手段は、前記凹凸を検出する感圧センサと、前記感圧センサに前記紙葉類を押し付ける押付部材と、前記感圧センサにより検出されたデータを予め決められた閾値に基づいて二値化する二値化回路とを有してなることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項5に係る紙葉類識別装置は、上述した請求項1〜4のいずれか一つにおいて、前記識別手段は、前記検出手段による検出結果から特徴情報を抽出する特徴情報抽出部と、前記特徴情報抽出部により抽出された特徴情報と、予め入力された前記紙葉類の識別情報とを照合して、該紙葉類を識別する識別部とを有してなることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項6に係る紙葉類識別装置は、上述した請求項5において、前記特徴情報抽出部は、前記二値化されたデータにおける分岐点または終点を特徴点として特徴情報を抽出することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項7に係る紙葉類識別装置は、上述した請求項5または請求項6において、前記識別部は、前記紙葉類の真贋を識別することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の紙葉類識別装置によれば、検出手段が紙葉類の被検出領域における凹凸を検出し、識別手段が検出手段による検出結果と、予め入力された紙葉類の識別情報とを照合して紙葉類を識別するので、紙葉類に施された凹版印刷に基づいて識別を行うことにより、高精度カラーコピー等により容易に偽造された紙葉類に対して有効に識別することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る紙葉類識別装置の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施の形態における紙葉類識別装置を模式的に示したものである。この図1における紙葉類識別装置10は、図示しない搬送手段により搬送路Rをその延在方向(図1中のY方向)に沿って搬送される紙葉類Wの真贋を識別するものであり、紙葉類識別装置10は、感圧センサ11と、押付ローラ(押付部材)12と、二値化回路13と、記憶部14と、制御部15と、出力部16とを備えて構成してある。
【0017】
ここに、本実施の形態における紙葉類識別装置10の識別対象となる紙葉類Wは、図2に示すように、凹版印刷が施された紙幣、より詳細には、通常印刷による模様W1の上に凹版印刷が施された紙幣である。このように通常印刷の模様の上に凹版印刷が施されることにより、通常印刷による模様W1と、凹版印刷による模様W2とが重なっている部位(以下、データ取得領域とも称する)Eが存在することになる。
【0018】
感圧センサ11は、例えば静電容量型のセンサ等であり、紙葉類Wの凹凸を検出し、検出したデータ(検出データ)を検出信号として出力するものである。この感圧センサ11は、搬送路Rを搬送される紙葉類Wの表面を臨む態様で配設してある。より詳細に説明すると、この感圧センサ11は、図3に示すように、搬送路Rを搬送される紙葉類Wのデータ取得領域Eに接触することが可能な位置に位置決めされて配設してある。従って、図3中の符号Lは、紙葉類Wが搬送される結果、感圧センサ11により検出される被検出領域となる検出ラインである。
【0019】
押付ローラ12は、搬送路Rにおいて感圧センサ11の配設個所の対向側となる個所に配設してある。この押付ローラ12は、搬送路Rを搬送される紙葉類Wを感圧センサ11に向けて押し付けるものである。
【0020】
二値化回路13は、感圧センサ11から出力された検出データを、予め決められた閾値に基づいて二値化し、二値化したデータ(二値化データ)を二値化信号として出力するものである。
【0021】
記憶部14は、制御部15による各種処理に必要なデータやプログラムを格納する格納手段(記憶手段)であり、特に、紙葉類Wの識別情報を格納している。この識別情報は、各種紙葉類Wの特徴情報であり、図は異なるが、例えば図6に示すようなものである。
【0022】
制御部15は、パターン化処理部151と、特徴情報抽出部152と、識別部153とを有してなるものである。
【0023】
パターン化処理部151は、二値化回路13から出力された二値化データをパターン化処理するものである。このようにパターン化処理することにより、図4に示すような、紙葉類Wの凹版印刷による模様W2、すなわちデータ取得領域Eにおける凹版印刷による模様W2と同一のパターンを出力することができる。すなわち、凹版印刷により形成された凸部の模様W2と、印刷されていない部分および通常印刷による模様W1とに切り分けられる。
【0024】
特徴情報抽出部152は、パターン化処理部151によりパターン化処理されたデータから特徴情報を抽出するものである。より詳細には、図5に示すように、特徴情報抽出部152は、パターン化処理されたデータにおいて終点P1または分岐点P2を特徴点として特徴情報を抽出するものである。このように特徴情報抽出部152で抽出された特徴情報は、図6に示すように現される。
【0025】
識別部153は、特徴情報抽出部152により抽出された特徴情報と、記憶部14に格納してある識別情報との照合を行って、紙葉類Wを識別、すなわち紙葉類Wの真贋を識別し、識別信号を出力するものである。ここに、識別信号としては、紙葉類Wが真券であるとする旨のものと、紙葉類Wが偽物であるとする旨のものとがある。
【0026】
出力部16は、例えばプリンタや報知器等の各種出力機器から構成されるものであり、制御部15からの識別信号に基づき、紙葉類Wの真偽を出力するものである。
【0027】
以上のような構成を有する紙葉類識別装置10は、搬送路Rにおいて、搬送ローラや搬送ベルト等の搬送手段により搬送される紙葉類Wの真贋を次のようにして識別する。
【0028】
押付ローラ12が、搬送手段により搬送される紙葉類Wを感圧センサ11に向けて押し付けることにより、感圧センサ11は、紙葉類Wの検出ラインLに接した状態で相対的に移動し、データ取得領域Eにおける凹凸を検出して、検出データを検出信号として二値化回路13に出力する。
【0029】
感圧センサ11から検出信号を出力された二値化回路13は、該検出信号に含まれる検出データを、予め決められた閾値に基づいて二値化し、二値化データを二値化信号として制御部15に出力する。
【0030】
図7は、図1に示した紙葉類識別装置の制御部の処理内容を示したフローチャートである。この図7を用いて、制御部15の処理内容について説明する。
【0031】
制御部15は、二値化回路13から出力された二値化信号を入力したか否かを判断し(ステップS101)、二値化信号を入力した場合には、パターン化処理部151を通じて、二値化回路13から出力された二値化データをパターン化処理する(ステップS102)。このようにパターン化処理することにより、図4に示したような、紙葉類Wの凹版印刷による模様W2、すなわちデータ取得領域Eにおける凹版印刷による模様W2と同一のパターンを出力することができる。すなわち、凹版印刷により形成された凸部の模様W2と、印刷されていない部分および通常印刷による模様W1とに切り分けることができる。
【0032】
パターン化処理部151を通じてパターン化処理を行った制御部15は、特徴情報抽出部152を通じて、パターン化処理部151によりパターン化処理されたデータから特徴情報を抽出する(ステップS103)。より詳細には、図5に示すように、特徴情報抽出部152は、パターン化処理されたデータにおいて終点P1または分岐点P2を特徴点として特徴情報を抽出する。このように特徴情報抽出部152で抽出された特徴情報は、図6に示したようなものになる。
【0033】
特徴情報抽出部152を通じて特徴情報を抽出した制御部15は、記憶部14から識別情報を読み込み(ステップS104)、該識別情報を読み込んだ後に識別部153を通じて、特徴情報抽出部152により抽出された特徴情報と、記憶部14から読み込んだ識別情報との照合を行って、紙葉類Wの真贋を識別する(ステップS105)。そして、制御部15は、識別部153を通じて、紙葉類Wが真券であるとする識別信号、あるいは紙葉類Wが偽物であるとする識別信号を出力部16に出力して(ステップS106)、制御部15での処理を終了する。
【0034】
制御部15(識別部153)から識別信号を出力された出力部16は、識別結果、すなわち搬送された紙葉類Wは真券であるか、偽物であるかについての結果を出力して、今回の処理を終了する。
【0035】
ここで、比較のため、搬送される紙葉類Wが偽物のである場合、具体的には、凹版印刷が施されたものではなく、コピーにより偽造された紙葉類(以下、コピー偽造券ともいう)、並びにスキャナー取り込んだ画像データをもとにインクジェットプリンタを用いて偽造された紙葉類(以下、プリント偽造券ともいう)である場合について説明する。
【0036】
搬送された紙葉類がコピー偽造券の場合、表面に凹版印刷による凸部が形成されていないため、感圧センサ11では凹凸を検出することができず、二値化回路13を通じて二値化されたデータがパターン化処理部151でパターン化処理されても、図8に示すように、データ取得領域E1が全面黒色になってしまう。そのため、特徴情報抽出部152を通じて特徴情報を取得できず、結果的に、識別部153を通じて偽物であることを識別して、出力部16を通じてその旨を出力することになる。
【0037】
一方、搬送された紙葉類がプリント偽造券の場合、凹版印刷による模様W2と、通常印刷による模様W1とがともに凸部に形成されてしまう。そのため、感圧センサ11で検出して二値化回路13で二値化し、さらにパターン化処理部151を通じてパターン化処理したものは、図9に示すように、データ取得領域E2における凹版印刷による模様W2と、通常印刷による模様W1とのパターンを出力することになる。そうすると、特徴情報抽出部152を通じて終点P1や分岐点P2を特徴点として抽出した特徴情報は、図10に示したようなものになる。かかる特徴情報と、記憶部14から読み込んだ識別情報とを照合する結果、特徴点がすべて一致せず、識別部153を通じて偽物であることを識別して、出力部16を通じてその旨を出力することになる。
【0038】
以上説明したように、本実施の形態における紙葉類識別装置10によれば、感圧センサ11で紙葉類Wの凹凸を検出し、二値化回路13で予め決められた閾値に基づいて感圧センサ11の検出結果を二値化し、制御部15において、二値化したものをパターン化処理し、パターン化処理したデータから特徴情報を抽出し、さらに抽出した特徴情報と記憶部14に格納してある識別情報とを照合して紙葉類Wの真贋を識別するので、紙葉類Wに施された凹版印刷に基づいて識別を行うことにより、高精度カラーコピー等により容易に偽造された紙葉類Wに対して有効に識別することができる。特に、紙葉類Wの凹凸を検出して行うので、通常印刷による模様W1の上に凹版印刷が施された模様を対象にして紙葉類Wの真贋を識別することができ、高精度な識別が可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明に係る紙葉類識別装置は、凹版印刷が施された紙葉類の識別を行うのに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施の形態における紙葉類識別装置を模式的に示した模式図である。
【図2】図1に示した紙葉類識別装置の識別対象となる紙葉類を示した説明図である。
【図3】図1に示した紙葉類識別装置の識別対象となる紙葉類を示した説明図である。
【図4】図1に示したパターン化処理部を通じてパターン化処理されたものを示した説明図である。
【図5】図1に示したパターン化処理部を通じてパターン化処理されたものを示した説明図である。
【図6】図1に示した特徴情報抽出部を通じて抽出された特徴情報の一例を示した説明図である。
【図7】図1に示した紙葉類識別装置の制御部の処理内容を示したフローチャートである。
【図8】パターン化処理部を通じてパターン化処理されたものの比較例を示した説明図である。
【図9】パターン化処理部を通じてパターン化処理されたものの比較例を示した説明図である。
【図10】特徴情報抽出部を通じて抽出された特徴情報の比較例を示した説明図である。
【符号の説明】
【0041】
10 紙葉類識別装置
11 感圧センサ
12 押付ローラ
13 二値化回路
14 記憶部
15 制御部
151 パターン化処理部
152 特徴情報抽出部
153 識別部
16 出力部
R 搬送路
W 紙葉類

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉類の識別を行う紙葉類識別装置であって、
前記紙葉類の被検出領域における凹凸を検出する検出手段と、
前記検出手段による検出結果と、予め入力された前記紙葉類の識別情報とを照合して前記紙葉類を識別する識別手段と
を備えたことを特徴とする紙葉類識別装置。
【請求項2】
前記検出手段は、前記紙葉類の被検出領域の凹凸を検出し、検出したデータを予め決められた閾値に基づいて二値化して出力し、
前記識別手段は、前記検出手段の検出結果から特徴情報を抽出し、抽出した特徴情報と、予め入力された前記紙葉類の識別情報とを照合して、該紙葉類を識別することを特徴とする請求項1に記載の紙葉類識別装置。
【請求項3】
前記検出手段は、前記紙葉類の被検出領域において通常印刷の上になされた凹版印刷により生じる凹凸を検出することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の紙葉類識別装置。
【請求項4】
前記検出手段は、
前記凹凸を検出する感圧センサと、
前記感圧センサに前記紙葉類を押し付ける押付部材と、
前記感圧センサにより検出されたデータを予め決められた閾値に基づいて二値化する二値化回路と
を有してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の紙葉類識別装置。
【請求項5】
前記識別手段は、
前記検出手段による検出結果から特徴情報を抽出する特徴情報抽出部と、
前記特徴情報抽出部により抽出された特徴情報と、予め入力された前記紙葉類の識別情報とを照合して、該紙葉類を識別する識別部と
を有してなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の紙葉類識別装置。
【請求項6】
前記特徴情報抽出部は、前記二値化されたデータにおける分岐点または終点を特徴点として特徴情報を抽出することを特徴とする請求項5に記載の紙葉類識別装置。
【請求項7】
前記識別部は、前記紙葉類の真贋を識別することを特徴とする請求項5または請求項6に記載の紙葉類識別装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2007−213175(P2007−213175A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−30478(P2006−30478)
【出願日】平成18年2月8日(2006.2.8)
【出願人】(000237710)富士電機リテイルシステムズ株式会社 (1,851)
【Fターム(参考)】