説明

紙送りローラ

【課題】 表面層に画像の不具合を生じないシリコーンゴムを用いたとき、その表面層と内層との間の密着性を向上させることができる紙送りローラを提供する。
【解決手段】 紙送りローラ10は、コア材11の外周部に軟質ポリウレタン発泡体よりなる内層12と、その内層12の外周部に液状シリコーンの接着層13を介して接着されたシリコーンゴム成形品よりなる表面層14とから構成されている。液状シリコーンを構成するシリコーンとしては、シリコーンゴム成形品を構成するシリコーンと相溶性を有するものが好ましい。また、液状シリコーンの粘度は、50〜60Pa・s(25℃)であることが好ましい。軟質ポリウレタン発泡体よりなる内層12の表面には、内層12への液状シリコーンの染み込みを抑えるための目止め層を設けることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば複写機(コピー機)、プリンタ、ファクシミリ等の、電子写真の原理を利用して記録用紙に画像又は文字を印刷する画像形成装置に備えられている給紙ローラ、排紙ローラ等の紙送りローラ(リタードローラ)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置においては、感光体(像担持体)の表面を、帯電装置でコロナ放電により一定電位に帯電させた上で、これに対して記録されるべき画像や文字に対応するパターンがレーザー発振器で光照射されることにより静電潜像が形成される。得られた静電潜像は、現像装置の現像ローラから供給されるトナー(現像剤)により現像され、可視化される。そして、給紙ローラから供給される記録用紙に、そのトナー像が転写され、定着される。続いて、その記録用紙が排紙ローラによって排出される。
【0003】
このような給紙ローラや排紙ローラ等の紙送りローラとしては、例えば合成樹脂発泡体よりなる円筒状の成形物の外周面に、液状シリコーンゴム等の液状ゴム原料を供給して液状被膜を形成し、それを乾燥硬化させた成形物が知られている(例えば、特許文献1を参照)。また、所要長の芯材と、その外周部に設けられ樹脂発泡体を材質とするローラ基材と、そのローラ基材の外周面を被覆するEPDMゴムとからなるものが知られている(例えば、特許文献2を参照)。この場合、ローラ基材とEPDMゴムとはエポキシ樹脂、ウレタン樹脂等の湿気硬化型1液系接着剤やホットメルト接着剤によって接着されている。
【特許文献1】特公平6−7949号公報(第1頁及び第2頁)
【特許文献2】特開2005−82376号公報(第2頁及び第4頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来の特許文献1に記載された円筒状の成形物(ローラ)においては、紙送り時に液状ゴム原料に含まれるフリーオイルが記録用紙に付着し、記録用紙がローラに接触した部分で画像の色があせる(変色する)等の不具合が生ずるという問題があった。さらに、特許文献2に記載された紙送りローラにおいては、表面のEPDMゴムに可塑剤や油が配合されることが多く、その場合可塑剤や油が表面にブリードし、記録用紙に付着したり、給紙が適正に行われなくなったりする等の不具合が生ずるという問題があった。
【0005】
そこで、紙送りローラの表面層を形成する材料として上記のような不都合が生じないシリコーンゴムを用いることが考えられるが、その場合にはシリコーンゴムが接着性に乏しい材料であるため、表面層のシリコーンゴムと内層のポリウレタン発泡体との密着性が不足するという問題がある。
【0006】
本発明は、このような従来技術の問題点に着目してなされたものであり、その目的とするところは、表面層に画像の不具合を生じないシリコーンゴムを用いたとき、その表面層と内層との間の密着性を向上させることができる紙送りローラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明の紙送りローラは、コア材の外周部に軟質ポリウレタン発泡体よりなる内層を設け、その内層の外周部に接着剤としての液状シリコーンによりシリコーンゴム成形品よりなる表面層を接着して構成することを特徴とするものである。
【0008】
請求項2に記載の発明の紙送りローラは、請求項1に係る発明において、前記液状シリコーンを構成するシリコーンと、シリコーンゴム成形品を構成するシリコーンとは相溶性を有するものであることを特徴とするものである。
【0009】
請求項3に記載の発明の紙送りローラは、請求項1又は請求項2に記載の、前記液状シリコーンの粘度は、50〜60Pa・s(25℃)であることを特徴とするものである。
請求項4に記載の発明の紙送りローラは、請求項1から請求項3のいずれかに係る発明において、前記軟質ポリウレタン発泡体よりなる内層の表面には、液状シリコーンの内層への染み込みを抑えるための目止め層を設けることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、次のような効果を発揮することができる。
請求項1に記載の発明の紙送りローラにおいては、表面層がシリコーンゴム成形品で構成されていることから、可塑剤や油が実質上含まれておらず、それらによる画像の不具合や紙送りの不具合を解消することができる。さらに、そのシリコーンゴム成形品はポリウレタン発泡体よりなる内層の外周部に接着剤としての液状シリコーンによって接着されている。この液状シリコーンはシリコーンゴムに良好な親和性を示し、表面層のシリコーンゴム成形品と内層の軟質ポリウレタン発泡体との間の密着性を向上させることができる。
【0011】
請求項2に記載の発明の紙送りローラでは、液状シリコーンを構成するシリコーンと、シリコーンゴム成形品を構成するシリコーンとは相溶性を有するものであることから、請求項1に係る発明の効果に加えて、シリコーンゴム成形品と軟質ポリウレタン発泡体との間の密着性をより向上させることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明の紙送りローラにおいては、液状シリコーンの粘度が50〜60Pa・s(25℃)という高い粘度を有している。従って、軟質ポリウレタン発泡体よりなる内層への液状シリコーンの染み込みを抑えることができ、請求項1又は請求項2に係る発明の効果に加えて、シリコーンゴム成形品と軟質ポリウレタン発泡体との間の密着性を一層向上させることができる。
【0013】
請求項4に記載の発明の紙送りローラでは、軟質ポリウレタン発泡体よりなる内層の表面には目止め層が設けられ、液状シリコーンの内層への染み込みを抑えることができる。このため、請求項1から請求項3のいずれかに係る発明の効果に加え、シリコーンゴム成形品と軟質ポリウレタン発泡体との間の密着性を一段と高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面に基づき詳細に説明する。
図1の断面図に示すように、紙送りローラ10は、合成樹脂製のコア材11の外周部に軟質ポリウレタン発泡体よりなる内層12が設けられ、その外周部に液状シリコーンよりなる接着層13を介してシリコーンゴム成形品よりなる表面層14が設けられている。コア材11は機械的強度の良好な合成樹脂(エンジニアリングプラスチック)が用いられ、そのような合成樹脂としてポリアセタール樹脂(POM)、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0015】
内層12を形成する軟質ポリウレタン発泡体は、連続気泡構造を有し、柔軟性があって復元性を有するポリウレタンの発泡体である。このような柔軟性のある軟質ポリウレタンを紙送りローラ10の内層12として用いることにより、紙送り時に十分なニップ幅をとることができる。係る軟質ポリウレタン発泡体は、ポリオール類、ポリイソシアネート類、触媒及び発泡剤を含むポリウレタン発泡体の原料を反応させ、発泡及び硬化させることにより得られる。
【0016】
ポリオール類としては、ポリエーテルポリオール又はポリエステルポリオールが用いられるが、ポリエーテルポリオールはポリエステルポリオールに比べ、ポリイソシアネート類との反応性が良く、得られるポリウレタン発泡体の歪みが小さく、かつ加水分解しにくいことから、ポリエーテルポリオールを用いることが好ましい。ポリエーテルポリオールとしては、多価アルコールにプロピレンオキシドを付加重合させた重合体、エチレンオキシドを付加重合させた重合体、プロピレンオキシドとエチレンオキシドとを付加重合させた重合体、或いはそれらの変性体等が用いられる。上記多価アルコールは1分子中にヒドロキシル基を複数個有する化合物であり、例えばグリセリン、ジプロピレングリコール等が挙げられる。
【0017】
ポリエーテルポリオールの平均分子量は2000〜6000であることが好ましい。この平均分子量が2000未満の場合には得られるポリウレタンの発泡体の成形時における安定性が低下し、6000を越える場合にはポリウレタン発泡体の反発性能が著しく大きくなり、クッション性が低下する傾向を示す。このポリエーテルポリオールは、原料成分の種類、分子量、縮合度等を調整することによって、ヒドロキシル基の官能基数やヒドロキシル基価を変えることができる。
【0018】
上記のポリオール類と反応させるポリイソシアネート類はイソシアネート基を複数有する化合物であって、具体的にはトリレンジイソシアネート(TDI)、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)等の芳香族ポリイソシアネート類、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂環族ポリイソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等の脂肪族ポリイソシアネート類、又はこれらとポリオールとの反応による遊離イソシアネートプレポリマー類、カルボジイミド変性ポリイソシアネート類等の変性ポリイソシアネート類、さらにはこれらの混合ポリイソシアネート等が用いられる。これらのうち、トリレンジイソシアネート及びその誘導体、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート及びその誘導体が好ましく、これらを混合して使用することもできる。
【0019】
ポリイソシアネート類のイソシアネートインデックスは100以下又は100を越えてもよいが、ポリウレタン発泡体の柔軟性を紙送りローラ10に適するようにするために、100〜110の範囲であることが好ましい。イソシアネートインデックスが100未満の場合、ポリウレタン発泡体が柔らかくなって紙送りローラ10の紙送り機能が低下する。一方、イソシアネートインデックスが110を越える場合、ポリウレタン発泡体が硬くなる傾向を示し、紙送りローラ10としての弾力性が低下する。ここで、イソシアネートインデックスは、ポリオール類、発泡剤等の活性水素基に対するポリイソシアネート類のイソシアネート基の当量比を百分率で表したものである。
【0020】
触媒はポリオール類とポリイソシアネート類とのウレタン化反応(樹脂化反応)、ポリイソシアネート類と水との泡化反応、それらの反応生成物とポリイソシアネート類との硬化反応(架橋反応)等の各反応を促進させるためのものである。係る触媒として具体的にはトリエチレンジアミン(TEDA)、ジメチルエタノールアミン、N,N´,N´−トリメチルアミノエチルピペラジン等の3級アミン、オクチル酸スズ(スズオクトエート)等の有機金属化合物、酢酸塩、アルカリ金属アルコラート等が用いられる。また、その他の触媒として、発泡体表面における硬化性を向上させるために、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン等のモルホリン系の触媒を用いることもできる。触媒の配合量は、ポリオール類100質量部当たり0.05〜0.5質量部程度である。
【0021】
発泡剤は、ポリウレタンを発泡させてポリウレタン発泡体を得るためのもので、代表的には化学的発泡剤としての水が挙げられる。水は主にポリイソシアネート類と反応(泡化反応)して炭酸ガスを発生する。発泡剤としては、水以外にその他の化学的発泡剤又は物理的(機械的)発泡剤を用いることができる。化学的発泡剤としては、有機酸、無機酸類、炭酸アルカリ金属塩等が挙げられる。これらの化学的発泡剤は、軟質ポリウレタン発泡体の原料成分との反応又は加熱による分解によってガスを発生する。一方、物理的発泡剤としては、ペンタン、塩化メチレン等のガスが挙げられる。発泡剤としての水の配合量は、ポリオール類100質量部当たり1〜7質量部程度であることが好ましい。水の配合量が1質量部未満の場合には泡化反応が不十分となって発泡体のクッション性が損なわれやすくなり、7質量部を越える場合には泡化反応が過剰になって発泡体が柔らかくなり過ぎるおそれがある。
【0022】
整泡剤はポリウレタン発泡体の原料に通常配合されるもののいずれも使用することができるが、例えばオルガノシロキサン−ポリオキシアルキレン共重合体等の非イオン系界面活性剤、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤、フェノール系化合物等が挙げられる。整泡剤の配合量は、ポリオール類100質量部当たり0.1〜2.0質量部程度であることが好ましい。その他軟質ポリウレタン発泡体の原料として、ポリアルキレンオキシドポリオール等のセルオープナー、縮合リン酸エステル等の難燃剤、酸化防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、着色剤等を用いることができる。
【0023】
このような原料から得られる軟質ポリウレタン発泡体は、骨格が三次元に網目状に延び、その間には多数のセルが形成され、セルが三次元的に連続して延びる三次元の連通構造を有している。また、軟質ポリウレタン発泡体は、ハードセグメントとソフトセグメントとにより構成されるポリウレタンの性質に基づいて一定の強度と所要の弾力性を有し、良好な歪み性(復元性)を発揮することができる。軟質ポリウレタン発泡体のJIS K6400に基づく平均セル径は100〜700μmであることが好ましい。平均セル径が10μm未満のときには骨格部分が多くなり、表面が硬くなる傾向を示し、700μmを越えるときにはセルが大きくなって空間部分が増え、強度が低下して耐久性が不足する。
【0024】
また、軟質ポリウレタン発泡体のJIS K7222:1999に基づく密度(見掛け密度)は20〜300kg/mであることが好ましい。密度が20kg/m未満の場合にはセルを形成する骨格部分が少なくなるとともに、セルが大きくなって強度が低下する。一方、密度が300kg/mを越える場合には、セルを形成する骨格部分が多くなって硬くなり過ぎるおそれがある。さらに、軟質ポリウレタン発泡体のJIS K6400−1:2004に基づく平均セル数は、20〜250個/25mmであることが好ましい。平均セル数が20個/25mm未満のときには、セルを形成する骨格部分が少なくなり、またセルが大きくなって強度が低下する。一方、250個/25mmを越えるときには、セルを形成する骨格部分が多くなって硬くなり過ぎるおそれがある。
【0025】
前記表面層14を形成するシリコーンゴム成形品は、可塑剤や油成分を実質上含まず、それらの成分によるブリードの問題を生じないシリコーンゴムの成形品である。また、シリコーンゴム成形品は、表面の摩擦係数が大きく、しかも表面が平滑であり、紙送りローラ10としての紙送り機能を良好に発揮することができる。そのようなシリコーンゴムとしては、ミラブル型シリコーンゴム、室温硬化型シリコーンゴム等が挙げられる。ミラブル型シリコーンゴムは、直鎖状で高重合度のポリオルガノシロキサンを主原料とし、それに充填剤、分散剤、加硫剤等を配合して混練し、加熱硬化させて得られるものである。ポリオルガノシロキサンとしては、メチルビニルシリコーン等が用いられる。一方、室温硬化型シリコーンゴムは、末端反応性のジオルガノポリシロキサンを主成分とし、架橋剤、触媒、補強剤等を配合し、1液で或いは硬化剤を別にした2液で常温硬化させて得られるものである。この表面層14の厚さは、紙送りローラ10の紙送り機能を適正に発揮させるために、通常0.7〜2mmに設定される。
【0026】
前記接着層13を形成する液状シリコーンは、シリコーンゴム成形品と軟質ポリウレタン発泡体との間を接着接合するための化合物である。液状シリコーンには、1液タイプと2液タイプとがあり、1液タイプとしては脱アルコール型、脱オキシム型、脱酢酸型等が挙げられ、2液タイプとしては縮合型と付加型とが挙げられる。これらのうち、表面層14を形成するシリコーンゴム成形品と内層12を形成する軟質ポリウレタン発泡体の双方に対して接着性に優れ、取扱いの良好な1液タイプで、脱オキシム型の液状シリコーンが好ましい。また、液状シリコーンを構成するシリコーンと、前記シリコーンゴム成形品を構成するシリコーンとは相溶性を有するものが、シリコーンゴム成形品に対する接着層13の接着性を高めるために好ましい。
【0027】
さらに、液状シリコーンの粘度は50〜60Pa・s(25℃)であることが好ましい。この粘度が50Pa・s未満の場合には、液状シリコーンの粘度が低くなって軟質ポリウレタン発泡体中へ染み込みやすくなり、軟質ポリウレタン発泡体に対する接着性が低下する。一方、粘度が60Pa・sを越える場合には、粘度が高くなって軟質ポリウレタン発泡体表面への塗布性が悪くなって軟質ポリウレタン発泡体に対する接着性が低下するとともに、取扱性も悪くなる。
【0028】
液状シリコーンによる接着層13の厚さは、0.5〜2mm程度であることが好ましい。この厚さが0.5mm未満の場合には、液状シリコーンが軟質ポリウレタン発泡体に染み込んで接着に寄与することができる液状シリコーンが不足する傾向にある。一方、2mmを越える場合には、内層12と表面層14との間に存在する液状シリコーンの量が多くなり過ぎて、硬化が遅くなる傾向を示して好ましくない。
【0029】
前記軟質ポリウレタン発泡体よりなる内層12の表面には、液状シリコーンの内層への染み込みを抑えるための目止め層を設けることが好ましい。この目止め層により、液状シリコーンがシリコーンゴム成形品と軟質ポリウレタン発泡体との間に存在して接着機能を十分に発現することができる。目止め層を形成する材料としては、ポリウレタン等が用いられる。
【0030】
次に、紙送りローラ10の製造方法について説明する。
図2(a)に示すように、円筒状の軟質ポリウレタン発泡体よりなる内層12を図示しない支持具で支持して一定速度で回転させ、その状態で内層12の外周部には、内層12の軸線方向に沿って一定速度で移動する塗布用ノズル15より液状シリコーン16をスプレー(噴霧)する。この操作により、内層12の外周部に一定厚さの液状シリコーン16による接着層13が形成される。次いで、円筒状のシリコーンゴム成形品よりなる表面層14を内層12の外周部に嵌挿することにより、図2(b)に示す状態となる。その状態で所定時間放置することによって、表面層14が内層12の外周部に接着されて一体化される。その後、図2(b)の二点鎖線に示すように、紙送りローラ10として必要な一定幅に切断される。
【0031】
別の製造方法について説明すると、図3に示すように、円筒状の軟質ポリウレタン発泡体よりなる内層12とシリコーンゴム成形品よりなる表面層14とを、予め紙送りローラ10の幅に切断しておく。次いで、表面層14の内周面に液状シリコーン16を塗布し、その後内層12を表面層14の内周部に嵌入する。その状態で所定時間放置することによって、表面層14が内層12の外周部に接着されて一体化される。その後、図4に示すように、内層12の挿通孔17にコア材11を挿通することにより、紙送りローラ10が製造される。
【0032】
以上の紙送りローラ10は、主に画像形成装置において使用されるので、画像形成装置について簡単に説明する。感光体の上方には帯電ローラが一定圧力で感光体に押圧された状態で回転し、感光体表面をコロナ放電により一定電位に帯電させるようになっている。感光体の回転方向において、帯電ローラの隣接位置には露光部が設けられ、その露光部において記録されるべき画像や文字に対応するパターンがレーザー発振器にて光照射されて静電潜像として形成される。露光部の隣接位置には現像部が設けられ、トナーが感光体上に供給され、感光体上の静電潜像がトナーにより現像され、そのトナー像により可視化される。感光体の下方には転写ローラが設けられ、感光体と転写ローラとの間には紙送りローラから記録用紙が挟着された状態で送られる。
【0033】
すなわち、図5に示すように、上下一対の紙送りローラ10が接触するように配置され、それぞれ逆方向に回転するように構成される。そして、記録用紙18の先端が両紙送りローラ10の間に到ると、記録用紙18は両紙送りローラ10の回転速度に応じた速度で前方へ送り出される。そして、感光体上のトナー像が記録用紙18に転写される。転写ローラより記録用紙18の進行方向には定着部が設けられ、その定着部を構成するヒートローラ及び加圧ローラが記録用紙18を挟んで上下位置に配設され、記録用紙18に転写されたトナー像が定着される。その後、記録用紙18は排紙ローラによって排出され、印刷を完了するようになっている。
【0034】
さて、本実施形態の作用を説明すると、軟質ポリウレタン発泡体の原料を金型内に注入して反応させ、発泡及び硬化させることにより、円筒状の軟質ポリウレタン発泡体よりなる内層12が成形される。一方、シリコーンゴムを金型に注入して加熱硬化させ、円筒状のシリコーンゴム成形品よりなる表面層14を形成する。そして、内層12の外周面に液状シリコーン16を塗布して接着層13を形成した後、表面層14を嵌合させることによって紙送りローラ10が得られる。
【0035】
この場合、接着剤として用いられる液状シリコーン16は、表面層14を形成するシリコーンゴムとは同種のシリコーンであり、両者は相溶性を発現することができ、化学的結合性が高められる。同時に、液状シリコーン16は一定の粘性を示し、内層12の軟質ポリウレタン発泡体への染み込みが抑えられ、内層12と表面層14との間に存在して両者間における十分な接着性が発現される。従って、液状シリコーン16を接着剤として用いることで、表面層14のシリコーンゴム成形品と内層12の軟質ポリウレタン発泡体との間が良好に接着される。
【0036】
以上の実施形態によって発揮される効果について、以下にまとめて記載する。
・ 本実施形態における紙送りローラ10においては、表面層14がシリコーンゴム成形品で構成されていることから、可塑剤や油が実質上含まれておらず、それらによる画像の不具合や紙送りの不具合を解消することができる。さらに、そのシリコーンゴム成形品は軟質ポリウレタン発泡体よりなる内層12の外周部に接着剤としての液状シリコーン16によって接着されている。この液状シリコーン16はシリコーンゴムと良好な親和性を示し、表面層14のシリコーンゴム成形品と内層12の軟質ポリウレタン発泡体との間の密着性を向上させることができる。
【0037】
・ 前記液状シリコーン16を構成するシリコーンと、シリコーンゴム成形品を構成するシリコーンとは相溶性を有するものであることにより、表面層14のシリコーンゴム成形品と内層12の軟質ポリウレタン発泡体との間の密着性をより向上させることができる。
【0038】
・ また、液状シリコーン16の粘度が50〜60Pa・s(25℃)であることにより、軟質ポリウレタン発泡体への液状シリコーン16の染み込みを抑えることができ、シリコーンゴム成形品と軟質ポリウレタン発泡体との間の密着性を一層向上させることができる。
【0039】
・ 軟質ポリウレタン発泡体よりなる内層12の表面には、目止め層を設けることにより、軟質ポリウレタン発泡体への液状シリコーン16の染み込みをさらに抑えることができ、シリコーンゴム成形品と軟質ポリウレタン発泡体との間の密着性を一層高めることができる。
【実施例】
【0040】
以下に、実施例及び比較例を挙げて、前記実施形態をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
図4に示す紙送りローラ10を、前記図2(a)、(b)に示す方法により製作した。すなわち、円筒状の軟質ポリウレタン発泡体製の内層12の外周部に接着剤としての液状シリコーン16をスプレーして接着層13を形成し、それにシリコーンゴム成形品よりなる表面層14を嵌合接着した。その後、一定幅に切断し、コア材11を挿通孔17に挿通して紙送りローラ10を得た。コア材11としては、ポリアセタール樹脂(POM)を用いた。内層12は、軟質ポリウレタン発泡体の原料を金型内に供給して反応させ、発泡及び硬化させることにより製造した。この軟質ポリウレタン発泡体は、ポリオール類としてポリエーテルポリオール、ポリイソシアネート類としてトリレンジイソシアネート、発泡剤として水、その他常法に従って原料を調製し、反応、発泡及び硬化して得た。その見掛け密度は、55kg/mであった。
【0041】
液状シリコーン16としては、1液タイプの脱オキシム型シリコーン〔ジーイー(GE)東芝シリコーン(株)製、TSE387〕を用いた。この液状シリコーン16の粘度は、60Pa・s(25℃)であった。そして、内層12の外周面に30g塗布した(内層12は、直径31.5mm、長さ310mm)。一方、表面層14を形成するシリコーンゴム成形品としては、ミラブル型シリコーンゴムを用いた。そして、その原料を170℃、10分の条件で、プレス成形にて一次加硫を行った。続いて、200℃、4時間二次加硫を行った。得られたシリコーンゴム成形品は、比重1.07(25℃)、JIS A硬さ31度、引張強さ3.2MPa(32kgf/cm)、伸び240%、引裂強さ80N/cm(8kgf/cm)であった。シリコーンゴム成形品による表面層14の厚さは、約1.5mmであった。
【0042】
そして、前記液状シリコーン16が塗布された内層12に表面層14を嵌合し、常温で硬化させて紙送りローラ10を得た。液状シリコーン16による接着層13の厚さは、約1mmであった。この紙送りローラ10について、表面層14と内層12との間の接着性を次に示す方法によって測定した。その結果を表1に示した。
(接着性の測定方法)
紙送りローラ10の表面層14を手でつまんで、表面層14の外周面における接線方向と直交する方向(半径方向)に引っ張り、接着性を次の基準により評価した。
【0043】
○:内層12の軟質ポリウレタン発泡体が破壊した。
×:表面層14と接着層13との間又は接着層13と内層12との間で界面破壊した。
(実施例2)
実施例1において、接着剤の液状シリコーン16として、1液タイプの脱オキシム型シリコーン〔ジーイー(GE)東芝シリコーン(株)製、TSE382〕を用いた以外は、実施例1と同様にして実施した。得られた紙送りローラ10について、表面層14と内層12との間の接着性を実施例1と同様にして測定し、その結果を表1に示した。
(比較例1)
実施例1において、接着剤としてエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)よりなるホットメルト接着剤を用いた以外は、実施例1と同様にして実施した。得られた紙送りローラについて、表面層と内層との間の接着性を実施例1と同様にして測定し、その結果を表1に示した。
(比較例2)
実施例1において、接着剤としてα−シアノアクリレート系接着剤(瞬間接着剤)を用いた以外は、実施例1と同様にして実施した。得られた紙送りローラについて、表面層と内層との間の接着性を実施例1と同様にして測定し、その結果を表1に示した。
(実施例3)
実施例1において、内層12を構成する軟質ポリウレタン発泡体の表面に下記に示す目止め剤を塗布し、有機溶媒を揮発させて目止め層を形成した。その他は実施例1と同様にして実施した。得られた紙送りローラ10について、表面層14と内層12との間の接着性を実施例1と同様にして測定し、その結果を表1に示した。
【0044】
目止め剤:1液型コーティング用ポリウレタン(MDI系)、有機溶媒としてメチルエチルケトン(MEK)を用い、固形分35質量%に調整し、その粘度を400P(25℃)とした。
【0045】
【表1】

表1に示したように、実施例1〜3では内層12の軟質ポリウレタン発泡体が破壊し、表面層14と内層12との間に十分な接着力が得られた。これは、液状シリコーン16を構成するシリコーンとシリコーンゴム成形品を形成するシリコーンとが相溶性を有するとともに、液状シリコーン16の粘性が高く、軟質ポリウレタン発泡体への染み込みが抑えられた結果であると推測される。さらに、実施例3では内層12表面に目止め層を設けたことから、軟質ポリウレタン発泡体中への液状シリコーン16の染み込み(浸透)が抑制され、実施例1及び2に比べて一層高い接着力が得られた。一方、比較例1ではホットメルト接着剤を用いたことから、接着性の低いシリコーンゴム成形品に接着せず、界面破壊をした。比較例2ではα−シアノアクリレート系接着剤を使用したが、その粘度が低いため軟質ポリウレタン発泡体中に染み込んで、その軟質ポリウレタン発泡体に対して接着しない結果となった。
【0046】
なお、本実施形態は、次のように変更して実施することも可能である。
・ 軟質ポリウレタン発泡体よりなる内層12の外周面又はシリコーンゴム成形品よりなる表面層14の内周面に、両者間の接着性を高めるための接着促進剤(プライマー)を塗布することも可能である。
【0047】
・ 内層12の軟質ポリウレタン発泡体として、その表面が内部より密度の高いスキン層を有し、液状シリコーンの染み込みを抑えるように構成することもできる。
・ 前記目止め層を形成する材料として、ポリエステル等を使用することもできる。
【0048】
・ 軟質ポリウレタン発泡体又はシリコーンゴム成形品の表面に接着性を高めるための水酸基等の官能基をもたせるように構成することも可能である。
さらに、前記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
【0049】
・ 前記液状シリコーンは、1液タイプで脱オキシム型のものであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の紙送りローラ。このように構成した場合、請求項1から請求項4のいずれかに係る発明の効果に加え、シリコーンゴム成形品及び軟質ポリウレタン発泡体の双方に対する接着性を向上させることができる。
【0050】
・ 画像形成装置の給紙ローラ又は排紙ローラとして用いられることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の紙送りローラ。このように構成した場合、画像形成装置の給紙ローラ又は排紙ローラについて、請求項1から請求項4のいずれかに係る発明の効果を良好に発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】実施形態における紙送りローラを示す拡大断面図。
【図2】(a)は紙送りローラを製造する工程の部材を示す分解斜視図、(b)は(a)の後工程の部材を示す斜視図。
【図3】図2とは別の製造工程の部材を示す分解斜視図。
【図4】紙送りローラを示す斜視図。
【図5】紙送りローラの使用状態を示す正面図。
【符号の説明】
【0052】
10…紙送りローラ、11…コア材、12…内層、14…表面層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア材の外周部に軟質ポリウレタン発泡体よりなる内層を設け、その内層の外周部に接着剤としての液状シリコーンによりシリコーンゴム成形品よりなる表面層を接着して構成することを特徴とする紙送りローラ。
【請求項2】
前記液状シリコーンを構成するシリコーンと、シリコーンゴム成形品を構成するシリコーンとは相溶性を有するものであることを特徴とする請求項1に記載の紙送りローラ。
【請求項3】
前記液状シリコーンの粘度は、50〜60Pa・s(25℃)であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の紙送りローラ。
【請求項4】
前記軟質ポリウレタン発泡体よりなる内層の表面には、液状シリコーンの内層への染み込みを抑えるための目止め層を設けることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の紙送りローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−15832(P2007−15832A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−200849(P2005−200849)
【出願日】平成17年7月8日(2005.7.8)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】